特許第5661036号(P5661036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661036
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】表面官能化ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   B82B 3/00 20060101AFI20150108BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20150108BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20150108BHJP
   C01B 25/08 20060101ALI20150108BHJP
   C08G 65/338 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   B82B3/00
   B82Y40/00
   H01L29/06 601N
   C01B25/08 A
   C08G65/338
   H01L29/06 601D
【請求項の数】15
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2011-521634(P2011-521634)
(86)(22)【出願日】2009年8月5日
(65)【公表番号】特表2011-530187(P2011-530187A)
(43)【公表日】2011年12月15日
(86)【国際出願番号】GB2009001928
(87)【国際公開番号】WO2010015824
(87)【国際公開日】20100211
【審査請求日】2012年6月21日
(31)【優先権主張番号】0814458.6
(32)【優先日】2008年8月7日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/088,100
(32)【優先日】2008年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509295262
【氏名又は名称】ナノコ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100066728
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100100099
【弁理士】
【氏名又は名称】宮野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100114
【弁理士】
【氏名又は名称】西岡 伸泰
(74)【代理人】
【識別番号】100119596
【弁理士】
【氏名又は名称】長塚 俊也
(74)【代理人】
【識別番号】100141841
【弁理士】
【氏名又は名称】久徳 高寛
(72)【発明者】
【氏名】ピケット,ナイジェル
(72)【発明者】
【氏名】マクケアン,マーク,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエルズ,スティーブン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ムシュタック,イムラナ
(72)【発明者】
【氏名】グラーベイ,ポール
【審査官】 秋田 将行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−121549(JP,A)
【文献】 特開2004−346177(JP,A)
【文献】 特開2005−200643(JP,A)
【文献】 特開2005−220435(JP,A)
【文献】 特開2005−272795(JP,A)
【文献】 特開2006−083414(JP,A)
【文献】 国際公開第02/018080(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/021150(WO,A2)
【文献】 国際公開第2007/020416(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/065362(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B82B 1/00 − 3/00
B82Y 5/00 −99/00
C01B 25/08
C08G 65/00 −65/48
H01L 29/00 −29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面官能化半導体ナノ粒子を生成する方法であって、次の式3のナノ粒子表面結合配位子の存在下で第1のナノ粒子前駆体種と第2のナノ粒子前駆体種を反応させることを含み
【化14】
上記式中、Xはナノ粒子表面結合基であり、Yは結合基であり、Zは官能基であり、Yはポリエチレングリコール基を含み、および/または、Zは末端不飽和基を含む脂肪族基を含んでおり
前記反応は、成長するナノ粒子に前記ナノ粒子表面結合配位子を結合させる条件下で実施されて、前記表面官能化半導体ナノ粒子を生成し、
前記第1のナノ粒子前駆体種及び前記第2のナノ粒子前駆体種の一方は、コアナノ粒子であり、前記第1のナノ粒子前駆体種及び前記第2のナノ粒子前駆体種の他方は、第1のイオンを含んでおり、前記コアナノ粒子の表面に付着するシェルの一部を形成する方法。
【請求項2】
前記第1のナノ粒子前駆体種は、前記第1のナノ粒子前駆体種を前記第2のナノ粒子前駆体種と反応させる前に、前記ナノ粒子表面結合配位子に接触して、前記ナノ粒子表面結合配位子を前記第1のナノ粒子前駆体種に結合させる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ粒子表面結合配位子のナノ粒子結合基は前記ナノ粒子表面結合配位子の官能基と異なる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応時、前記第1のナノ粒子前駆体種は1または複数部加えられ前記第2のナノ粒子前駆体種は1または複数部加えられる請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1のナノ粒子前駆体種及び前記第2のナノ粒子前駆体種を第2のイオンを含む第3のナノ粒子前駆体種と反応させて、前記コアナノ粒子の表面に付着するシェルの一部を形成することをさらに含請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記反応時に、前記第3ナノ粒子前駆体種は1または複数部加えられる請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記ナノ粒子表面結合配位子の官能基および/またはナノ粒子表面結合基は、硫黄、窒素、酸素およびリンから成る群から選択される1または複数の原子を含む請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ナノ粒子表面結合配位子の官能基は、ヒドロキシド、アルコキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、ニトロ、ポリエチレングリコール、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸およびリン酸エステルから成る群から選択される請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記ナノ粒子表面結合配位子の官能基は、荷電基もしくは極性基または架橋基もしくは重合基である請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ナノ粒子表面結合配位子の官能基は、ヒドロキシド塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩およびリン酸塩から成る群から選択される請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ナノ粒子表面結合配位子のナノ粒子表面結合基は、チオ基、アミノ基、オキソ基およびホスホ基から成る群から選択される種を含む請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記ナノ粒子表面結合配位子はポリマー化合物であって、前記ポリマー化合物ポリエーテルであり、アルコキシド基およびカルボキシラート基含む請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記末端不飽和基はビニル基であって、および/またはXは少なくとも1個のカルボン酸基または少なくとも1つのチオール基を含み、および/またはYは直鎖脂肪族基もしくは分岐脂肪族基または芳香族基を更に含む請求項1乃至のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ナノ粒子表面結合配位子はポリ(オキシエチレングリコール)モノメチルエーテル酢酸であり、nは1〜5000であるか、10−ウンデシレン酸であるか、11−メルカプトウンデセンであるか、または次の式
【化15】
を有する請求項1乃至のいずれかまたは請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応は、前記ナノ粒子表面結合配位子と異なる溶媒で実施される請求項1乃至14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表面官能化ナノ粒子の製造方法に関し、特に、溶媒、インク、ポリマー、ガラス、金属、電子材料およびデバイス、生体分子および細胞に組み込むなど、ただしこれに限らない利用時にドットをさらに容易に使用できる表面結合官能基を含む半導体の量子ドットナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノ粒子の大きさが物質の電子特性に影響を及ぼし、バンドギャップエネルギーは、量子閉じ込め効果の結果として半導体ナノ粒子の大きさに反比例する。さらに、ナノ粒子の容積比に対して表面積が大きい場合、ナノ粒子の物理化学特性に対して大きな影響を与える。
【0003】
個々の半導体ナノ粒子の大きさに関する2つの基本的要素が、その特有の特性に関与している。ひとつは、表面積対体積率が大きい。粒子が小さくなると、内部原子の数に対する表面原子の数の比は増加する。これにより、物質の総合特性に対して重要な役割を果たす表面特性が得られる。もうひとつは、多くの物質が半導体ナノ粒子を含むことによって、その物質の電子特性が変化し、さらに量子閉じ込め効果によって、粒子の大きさが小さくなるとバンドギャップが徐々により大きくなる。この効果は、対応するバルク半導体物質で観察される連続的なバンドよりむしろ、原子および分子で観察されるものと同じようなとびとびのエネルギー準位を生じさせる「箱の中に電子」を閉じ込めた結果である。このようにして、半導体ナノ粒子に関しては、物理パラメータのために、電磁放射、光子の吸収によって生じ、エネルギーが第1の励起子遷移より大きい「電子とホール」は、マクロ結晶の物質中にあると考えられるものより接近しており、さらにクーロン力の相互作用は無視することができない。これにより、ナノ粒子物質の粒径および組成物に依存する狭帯域放射が発生する。このため、量子ドットでは、対応するマクロ結晶の物質より運動エネルギーが高く、結果的には粒子径が減少し、第1の励起子遷移(バンドギャップ)はエネルギーが増大する。
【0004】
コア型半導体ナノ粒子が、外側の有機不動態化層とともに単一の半導体物質から成り、欠陥箇所で発生する電子正孔再結合や、非放射型の電子正孔再結合が生じうるナノ粒子表面に位置するダングリングボンドによって、量子効率が比較的低くなる傾向がある。
【0005】
量子ドットの無機表面の欠陥およびダングリングボンドを除去する一方法では、コア粒子の表面のエピタキシャルに形成されたコア材よりバンドギャップが大きく、格子不整合が小さい第2の無機物質を成長させて「コアシェル」粒子を生成する。コアシェル粒子がほかに非発光再結合中心として作用する表面状態からコアに閉じ込められたあらゆる担体を分離する。一例には、CdSeコアの表面で成長するZnSがある。
【0006】
別の方法では、「電子正孔」対が、量子ドット量子井戸構造などの特定の物質のいくつかの単分子層から成る単一のシェル層に完全に閉じ込められるコアマルチシェル構造を形成する。ここで、コアは、バンドギャップが大きい物質、次にシェルが薄く、バンドギャップが小さい物質、さらにバンドギャップが大きい層でキャッピングしたものであり、コアナノ結晶の表面のCdをHgで置換し、単分子層のCdSによって成長するいくつかの単分子層のHgSを付着させて成長させるCdS/HgS/CdSなどがある。得られた構造は、HgS層に光励起担体が閉じ込められ、欠陥がないことを示した。
【0007】
量子ドットに安定性をさらに加え、電子正孔対を閉じ込めるために、最もよくみられる方法のひとつが、コアで傾斜組成合金層をエピタキシ成長させることによるものであり、これにより、ほかに欠陥を生じさせると考えられる緊張を軽減することができる。さらに、CdSeコアに関して、構造安定性と量子収量を改善するためには、直接コアのZnSのシェルを成長させるよりむしろ、Cd1-xZnxSe1-yyの傾斜合金層を使用することができる。これにより、量子ドットのフォトルミネッセンス放射を大いに増大させることがわかっている。
【0008】
また、量子ドットに原子不純物とドーピングすることは、ナノ粒子の放射特性および吸収特性を操作する効果的な方法である。マンガンおよび銅をセレン化亜鉛および硫化亜鉛(ZnSe:MnまたはZnS:Cu)などのバンドギャップが大きい材料にドーピングする方法は明らかである。さまざまなルミネッセンス活性剤を半導体ナノ結晶にドーピングすると、バルク物質のバンドギャップよりさらに低いエネルギーで、フォトルミネッセンスおよびエレクトロルミネセンスを調整することができるが、量子サイズ効果は、活性剤による放射のエネルギーを大きく変化させずに、ナノ結晶の大きさによって励起エネルギーを調整することができる。
【0009】
粒子表面の反応性が高く、配位が不完全な原子である、「ダングリングボンド(dangling bonds)」によって、あらゆるコア型、コアシェル型またはコアマルチシェル型でドーピングされたナノ粒子または傾斜したナノ粒子の最終無機表面原子の配位は不完全となり、粒子凝集を引き起こしうる。この問題は、「剥き出し(bare)」の表面原子を不動態化させ(「キャッピングする」とも呼ばれる)、有機基を保護することによって克服される。
【0010】
有機材料またはシース材(「キャッピング剤」と呼ばれる)の最外層が、粒子凝集を阻害し、その周囲の電子環境および化学環境からナノ粒子を保護する。図1に、そのようなナノ粒子に関する略図を示す。多くの場合、キャッピング剤は、ナノ粒子が生成される溶媒であり、ルイス塩基化合物または炭化水素などの不活性溶媒で希釈されたルイス塩基化合物を含む。ルイス塩基のキャッピング剤の孤立電子対には、ナノ粒子の表面に対する供与型配位能がある。好適なルイス塩基化合物には単座配位子または多座配位子が挙げられ、ホスフィン(トリオクチルホスフィン、トリフェノールホスフィン、t−ブチルホスフィン)、ホスフィンオキシド(トリオクチルホスフィンオキシド)、アルキルホスホン酸、アルキルアミン(ヘキサデシルアミン、オクチルアミン)、アリールアミン、ピリジン、長鎖脂肪酸およびチオフェン誘導体などが挙げられるが、このような物質に限らない。
【0011】
量子ドットナノ粒子を広範囲にわたって開発しようとしても、物理的にも化学的にも安定しておらず、多くの用途に適合していないことから制限されてきた。その結果、量子ドットを安定化させ、所望の用途に適合させるようにするために、表面修飾法が次々と採用された。これは主に、キャッピング剤を二官能性または多官能性にするか、他の化学結合に使用できる官能基を有する別の有機層でキャッピング層を被覆することによって実現しようとしてきた。
【0012】
最も広く用いられる量子ドット表面修飾法は、「配位子交換(ligand exchange)」として知られている。コア合成シェル化法を実施時に予想外に量子ドットの表面に対して配位する配位子分子は、のちに所望の特性または官能基をもたらす配位子化合物と交換される。本質的に、この配位子交換法は量子ドットの量子収量をかなり減少させる。図2に、この過程を概略的に示す。
【0013】
別の表面修飾法では、離散分子またはポリマーとシェル化法を実施時に量子ドットの表面に対してすでに配位される配位子分子を相互キレート化する。このような合成後の相互キレート化法によって、量子収量を保持することが多いが、量子ドットの大きさがかなり大きくなる。図3に、この過程を概略的に示す。
【0014】
現在の配位子交換法および相互キレート化法では、量子ドットナノ粒子をその所望の用途にさらに適合させることが可能であるが、通常量子ドットの無機表面に損傷を与えることから、量子収量が減少し、および/または、最終ナノ粒子の大きさが増大する。
【0015】
本発明の目的は、上に記載する問題の1または複数を取り除くか、改善することである。
【発明の概要】
【0016】
一般に、本発明は、表面官能化ナノ粒子を生成する方法であって、ナノ粒子結合基と官能基を含むナノ粒子表面結合配位子の存在下で第1および第2のナノ粒子前駆体種を反応させることを含み、前記反応は、成長するナノ粒子に前記表面結合配位子を結合させる条件下で実施して、前記表面官能化ナノ粒子を生成する方法に関する。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、表面官能化ナノ粒子を生成する方法であって、次の式3のナノ粒子表面結合配位子の存在下で第1および第2のナノ粒子前駆体種を反応させることを含み、前記反応は、成長するナノ粒子に前記表面結合配位子を結合させる条件下で実施して、前記表面官能化ナノ粒子を生成する方法を提供する。
【化1】
上記式中、Xはナノ粒子表面結合基であり、Yは結合基であり、Zは官能基であり、Yはポリエチレングリコール基を含み、および/または、Zは末端不飽和基を含む脂肪族基を含む。
【0018】
一般に、本発明は、表面官能化ナノ粒子を生成する方法であって、ナノ粒子結合基と官能基を含むナノ粒子表面結合配位子の存在下で第1および第2のナノ粒子前駆体種を反応させることを含み、前記反応は、成長するナノ粒子に前記表面結合配位子を結合させる条件下で実施して、前記表面官能化ナノ粒子を生成する方法に関する。
【0019】
本発明は、ナノ粒子前駆体種を最終ナノ粒子の物質に変えると同時に最終ナノ粒子の外側表面に官能化された層を形成する方法を提供する。図4に、本発明の方法を概略的に示す。ナノ粒子の表面に官能化された配位子を備えるために、ナノ粒子の生成にかかわる第1のステップと、配位子交換または相互キレート(図2および3を参照)にかかわりる、別の第2のステップの少なくとも2つの別々の連続ステップで、この過程を予め実施する必要がある。しかし、ナノ粒子前駆体種は、ナノ粒子前駆体が一緒に結合反応する能力や、表面結合配位子が最終ナノ粒子の表面に結合する能力を阻害せずに、官能化されたナノ粒子表面結合配位子の存在下で結合することができることを予想外にも示した。
【0020】
さらに、本発明の第1の態様の方法は、(任意に、出願人の同時係属中の欧州特許出願公開第1743054(A)号明細書および英国特許出願第0714865.3号明細書に記載される分子クラスタ化合物の存在下で)成長するナノ粒子に含まれる2つ以上のイオン源から、表面官能化されたコアナノ粒子の生成のほか、表面結合配位子の存在下で外側シェル層を付着させることができる表面官能化されたコアシェルナノ粒子の生成に利用することができる。
【0021】
これにより、本発明は、ナノ粒子のコア成長および/またはシェル化時に、in−situで量子ドットナノ粒子の表面に、選択された予め化学官能化された配位子を意図的に配位する方法を提供する。この方法によれば、ナノ粒子合成後の表面修飾法の必要性を回避し、これにより、操作ステップを少なくして量子ドットナノ粒子を生成し、この操作ステップは、物理的にも化学的にも堅固であり、量子収量が高く、粒径が小さく、その意図される用途に適合し、溶媒、デバイス、インク、ポリマー、ガラスに前記ナノ粒子を含むか、直接結合を形成する化学反応を介して細胞、生体分子、金属、分子またはポリマーに量子ドットナノ粒子を付着させること含んでもよいが、これに限定されない。
【0022】
本発明は、ナノ粒子の表面を不動態化できるナノ粒子結合基と、ナノ粒子に関する架橋やポリマー物質中への組み込みなどの他の化学結合能を有する別の配位子とを有するキャッピング剤中でのナノ粒子の合成を容易にする。
【0023】
配位子の存在下で第1および第2の前駆体が反応する場合、第1および第2の前駆体種ならびに表面結合配位子をあらゆる望ましい順序で一緒に結合することができる。前記第1のナノ粒子前駆体種は、前記第1の前駆体種を前記第2のナノ粒子前駆体種と反応させる前に、前記ナノ粒子表面結合配位子に接触して、前記表面結合配位子を前記第1の前駆体種に結合させるのが好ましい。
【0024】
<ナノ粒子コアを生成する方法の利用>
本発明の第1の態様を形成する方法の第1の好適な実施形態では、第1のナノ粒子前駆体種は、成長するナノ粒子に含まれる第1のイオンを含み、第2のナノ粒子前駆体種は、成長するナノ粒子に含まれる第2のイオンを含む。
【0025】
本発明の第2の態様は、表面官能化されたコア半導体ナノ粒子を生成する方法であって、成長するナノ粒子に含まれる第1のイオンを含む第1のナノ粒子前駆体種を、、成長するナノ粒子に含まれる第2のイオンを含む第2のナノ粒子前駆体種に反応させ、前記反応は、ナノ粒子結合基および官能基を含むナノ粒子表面結合配位子の存在下で、成長するナノ粒子に前記表面結合配位子を結合させる条件下で実施され、表面官能化ナノ粒子を生成する方法を提供する。
【0026】
本発明の第2の態様で用いられるナノ粒子表面結合配位子は、本発明の第1の態様に基づいて用いられる配位子と一致するものであってよい。一例として本発明の第2の態様の好適な実施形態では、ナノ粒子表面結合配位子は、本発明の第1の態様に関して上に記載する式3のものである。
【0027】
第1および第2のイオンは、周期表の第11、12、13、14、15または16族など、ただしこれに限らない周期表のあらゆる望ましい族から選択されてもよい。第1および/または第2のイオンは、遷移金属イオンまたはd−ブロック金属イオンであってよい。第1のイオンは、第11、12、13または14族から選択され、第2のイオンは、周期表の第14、15または16族から選択されるのが好ましい。
【0028】
以下に実施例1で示すように、第1および第2の(コア)ナノ粒子前駆体種は、分子クラスタ化合物の存在下で反応するのが特に好ましい。この方法では、出願人の同時係属中の欧州特許出願公開第1743054(A)号明細書に記載される方法を利用してもよい。分子クラスタ化合物は、第3および第4のイオンを含んでもよい。前記第3および第4のイオンの少なくとも1つが第1および第2(コア)ナノ粒子前駆体種にそれぞれ含まれる前記第1および第2のイオンと異なるのが好ましい。第3および第4のイオンは、周期表の第11、12、13、14、15または16族など、ただしこれに限らない周期表のあらゆる望ましい族から選択されてもよい。第3および/または第4のイオンは、遷移金属イオンまたはd−ブロック金属イオンであってよい。第3のイオンは、第11、12、13または14族から選択され、第4のイオンは、周期表の第14、15または16族から選択されるのが好ましい。一例として、分子クラスタ化合物は、周期表の第12および16族から第3および第4のイオンをそれぞれ含んでもよく、第1および第2(コア)ナノ粒子前駆体種に由来する第1および第2のイオンは、周期表の第13および15族からそれぞれ選択してもよい。そこで、本発明の第1および第2の態様による方法は、出願人の同時係属中である未公開の英国特許出願第0714865.3号明細書から抜粋した方法を用いることができる。
【0029】
第1および第2(コア)ナノ粒子前駆体種、分子クラスタ化合物ならびに表面結合配位子は、あらゆる望ましい順序で一緒に結合してもよい。第1および第2(コア)ナノ粒子前駆体種の1つが、第1および第2(コア)ナノ粒子前駆体種のもう一方との反応前または反応時に分子クラスタ化合物に接触してもよい。第1の(コア)ナノ粒子前駆体種は、最初に表面結合配位子に接触して第1の混合物を生成し、次に分子クラスタ化合物に接触して第2の混合物を生成し、次に第2の混合物は第2の(コア)ナノ粒子前駆体種に接触するのが特に好ましい。
【0030】
第1および第2(コア)ナノ粒子前駆体種の反応時に、第1の(コア)ナノ粒子前駆体種は、1または複数の部加えられてよく、第2の(コア)ナノ粒子前駆体種は、1または複数の部加えられてよいことは明らかである。第1の(コア)ナノ粒子前駆体種は2つ以上の部加えられるのが好ましい。この場合、第1および第2(コア)ナノ粒子前駆体種とナノ粒子表面結合配位子を含む反応混合物の温度は、第1の(コア型)前駆体種の各部が加えられる間に上げるのが好ましい。さらに、または、その代わりに、第2の(コア)ナノ粒子前駆体種は2つ以上の部加えられてよく、第1および第2(コア)ナノ粒子前駆体種とナノ粒子表面結合配位子を含む反応混合物の温度は、第2の(コア)前駆体種の各部が加えられる間に上げてもよい。
【0031】
<ナノ粒子シェルを形成する方法の利用>
本発明の第1の態様の第2の好適な実施形態では、第1のナノ粒子前駆体種はコアナノ粒子であり、第2のナノ粒子前駆体種は第1のイオンを含み、前記コアナノ粒子の表面に付着するシェルの一部を形成する。
【0032】
本発明の第1の態様の第3の好適な実施形態では、第2のナノ粒子前駆体種はコアナノ粒子であり、第1のナノ粒子前駆体種は第1のイオンを含み、前記コアナノ粒子の表面に付着するシェルの一部を形成する。
【0033】
第2および第3の好適な実施形態は、以下に実施例2および3で示す方法を示し、これにより、本発明の第1の態様に記載される一般的な方法を用いて、コアナノ粒子の外部の物質で外側のシェルまたは層を形成し、外側のシェルは、化学官能化された外側表面を備える。
【0034】
本発明の第1の態様の第2および第3の好適な実施形態に関する本発明の第3の態様では、表面官能化されたコアシェル型半導体ナノ粒子を生成する方法であって、コア型半導体ナノ粒子を第1のイオンを含む第1のナノ粒子前駆体種と反応させて、前記コア型半導体ナノ粒子の表面に付着するシェルの一部を形成し、前記反応は、ナノ粒子結合基および官能基を含むナノ粒子表面結合配位子の存在下で実施され、前記反応は、成長するコアシェル型半導体ナノ粒子の表面に前記表面結合配位子を結合させる条件下で実施され、前記表面官能化されたコアシェル型半導体ナノ粒子を生成する方法を提供する。
【0035】
本発明の第3の態様で用いられるナノ粒子表面結合配位子は、本発明の第1の態様に基づいて用いられる配位子と一致するものであってよい。一例として本発明の第3の態様の好適な実施形態では、ナノ粒子表面結合配位子は、本発明の第1の態様に関して上記に記載する式3のものである。
【0036】
本発明の第3の態様に関して、表面結合配位子は、コアナノ粒子および第1の前駆体種の1つに接触してからもう一方に接触してもよいし、同時に両方に接触してもよい。このため、以下の実施例2に記載される方法に従って、コアナノ粒子は、前記コアナノ粒子を前記第1の前駆体種と反応させる前に、結合配位子に接触して、前記配位子を前記コアナノ粒子に結合させてもよい。あるいは、以下の実施例3に記載される方法に従って、第1の前駆体種は、前記第1の前駆体種を前記コアナノ粒子と反応させる前に、配位子に接触して表面結合配位子を第1のナノ粒子前駆体種に結合させてもよい。本発明の第3の態様による方法は、前記コアナノ粒子および前記第1の前駆体種を第2のイオンを含む第2のナノ粒子前駆体種と反応させて、前記コア型半導体ナノ粒子の表面に付着するシェルの一部を形成することをさらに含むのが好ましい。
【0037】
本発明の第1の態様および第3の態様の第2および第3の実施形態では、コアナノ粒子は、第1および第2のコアイオンを含むのが好ましく、このようなイオンは、周期表の第11、12、13、14、15または16族など、ただしこれに限らない周期表のあらゆる望ましい族から選択されてもよい。コアナノ粒子は、遷移金属イオンおよび/またはd−ブロック金属イオンを含んでもよい。コアナノ粒子は、第11、12、13または14族から選択されるイオンと、周期表の第14、15または16族から選択されるイオンを含むのが好ましい。
【0038】
ナノ粒子シェルの一部を形成するナノ粒子前駆体種に含まれる第1のイオンは、周期表の第11、12、13、14、15および/または16族をなど、ただしこれに限らない周期表のあらゆる望ましい族から選択されてもよい。さらに、第1のイオンは、遷移金属イオンまたはd−ブロック金属イオンであってよい。
【0039】
ナノ粒子前駆体種および/またはコアナノ粒子は、必要に応じて1または複数の部加えられてよい。前駆体種およびコアナノ粒子の少なくとも1つが反応時に2つ以上の部加えられるのが好ましい。前駆体種、コアナノ粒子および/またはナノ粒子表面結合配位子を含む反応混合物の温度は、前駆体種とコアナノ粒子の各部が加えられる間に上げてもよい。
【0040】
本発明の第1の態様および本発明の第3の態様の第2および第3の好適な実施形態による方法は、前記コアナノ粒子および前記前駆体種を第2のイオンを含む第3のナノ粒子前駆体種と反応させて、前記コアナノ粒子の表面に堆積するシェルの一部を形成することをさらに含むのが特に好ましい。前記第2のイオンは、周期表の第11、12、13、14、15および/または16族をなど、ただしこれに限らない周期表のあらゆる望ましい族から選択されてもよい。さらに、第2のイオンは、遷移金属イオンまたはd−ブロック金属イオンであってよい。
【0041】
ナノ粒子前駆体種に含まれる第1および/または第2のイオンは、前記第1および第2のコアイオンと異なるのが特に好ましい。一例として、コアシェルナノ粒子は、主にIII‐V族半導体物質(たとえばInP)から作製されるコアと、主にII−VI半導体物質(たとえばZnS)から作製されるシェルとを含んでもよい。この場合、第1および第2のコアイオンは、インジウムイオンおよびホスフィドイオンであると考えられ、ナノ粒子前駆体種に由来する第1および第2のイオンは、亜鉛イオンおよびスルフィドイオンであると考えられる。好適なナノ粒子前駆体種は、Zn(Ac)などと(TMS)3Pであってよい。
【0042】
第3のナノ粒子前駆体種が表面結合配位子を含む反応混合物に加えられる場合、第3のナノ粒子前駆体は、1または複数の部加えられてもよい。第3のナノ粒子前駆体種は2つ以上加えられるのが好ましい。この場合、コアナノ粒子、前駆体種およびナノ粒子表面結合配位子を含む反応混合物の温度は、第3の前駆体種の各部が加えられる間に上げるのが好ましい。
【0043】
<本発明の方法に使用する好適な溶媒>
ナノ粒子前駆体(および適切なコアナノ粒子)間の反応は、あらゆる適切な溶媒で実施してもよい。反応は、前記ナノ粒子表面結合配位子と異なる溶媒で実施されるのが好ましいが、このような事例にする必要はないことが明らかである。別の実施形態では、表面結合配位子は、反応が実施される溶媒または溶媒の1つであってよい。溶媒は、配位溶媒(言わば、成長するナノ粒子を配位する溶媒)または非配位溶媒(言わば、成長するナノ粒子を配位しない溶媒)であってよい。溶媒はルイス塩基化合物であるが好ましく、HDA、TOP、TOPO、DBS、オクタノールなどから成る群から選択されてもよい。
【0044】
<ナノ粒子表面結合配位子>
表面結合配位子のナノ粒子結合基は表面結合配位子の官能基と異なるのが好ましい。官能基は、ナノ粒子成長時および/または後に選択的に除去可能となるように選択される保護基を含んでも、含まなくてもよい。
【0045】
表面結合配位子の官能基の性質は、最終表面官能化ナノ粒子にあらゆる望ましい化学特性または物理特性をもたらすように選択されてもよい。たとえば、特定の試薬に所定の反応性を有する表面官能化ナノ粒子をもたらす官能基を含む配位子を選択してもよい。また、表面官能化ナノ粒子に水相溶性(言わば、水媒体への安定した分散能または溶解能)をもたらす官能基を含む配位子を選択してもよい。さらに、官能基では、同じナノ粒子の表面周囲の表面結合配位子、隣接ナノ粒子および/または相溶性を示す架橋基を含む他の周囲の物質(たとえばポリマー)に結合する配位子の架橋能を備えてもよい。このような官能基は、ナノ粒子に結合する前記ビニル基間および/またはナノ粒子に結合するビニル基と周囲の物質中に含まれるビニル基間での架橋を容易にするために、単一のビニル基またはさらに好ましくは2、3個またはそれ以上のビニル基を含んでもよい。
【0046】
表面結合配位子の官能基は硫黄、窒素、酸素およびリンから成る群から選択される1または複数の原子を含んでもよい。官能基は、ヒドロキシド、アルコキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、ニトロ、ポリエチレングリコール、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸およびリン酸エステルから成る群から選択されもよい。また、官能基は、荷電基または極性基であってよく、ヒドロキシド塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩またはリン酸塩などが挙げられるが、これに限らない。
【0047】
表面結合配位子は、成長するナノ粒子、言わば、第1の好適な実施形態による成長するコアナノ粒子または第2/第3の好適な実施形態によるコアナノ粒子で成長するシェルに結合するあらゆる適切なナノ粒子結合基も含んでもよい。ナノ粒子結合基は、硫黄、窒素、酸素およびリンから成る群から選択される原子を含むのが好ましい。ナノ粒子結合基は、チオ基、アミノ基、オキソ基およびホスホ基から成る群から選択される種を含んでもよい。ナノ粒子結合基は、ヒドロキシド、アルコキシド、カルボン酸、カルボン酸エステル、アミン、ニトロ、ポリエチレングリコール、スルホン酸、スルホン酸エステル、リン酸およびリン酸エステルから成る群から選択されもよい。また、ナノ粒子結合基は、荷電基または極性基であってよく、ヒドロキシド塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩またはリン酸塩などが挙げられるが、これに限らない。
【0048】
表面結合配位子の結合基と官能基は、リンカーによって結合されるのが好ましく、あらゆる望ましい形態をとってもよい。前記結合は、共有結合と、炭素、窒素、酸素もしくは硫黄原子と、置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和の脂肪族基または脂環基と、置換もしくは無置換の芳香族基とからなる群から選択されるのが特に好ましい。
【0049】
ナノ粒子表面結合配位子は、アルコキシド基とカルボキシラート基を任意に含むポリエーテルなどのポリマー化合物であってもよい。配位子は、末端アルコキシド基および反対側の末端に結合されるカルボキシラート基を有するポリエーテルであるのが好ましい。特に好適な配位子は、ポリエチレングリコールとその誘導体を含み、ポリエチレングリコールの末端ヒドロキシド基の少なくとも1つ、さらに好ましくは両方が誘導体化され、アルコキシド基および/またはカルボキシラート基などの別の官能基を備えている。
【0050】
本発明は、表面官能化ナノ粒子を生成する方法であって、物理的にも化学的にも堅固であり、量子収量が高く、粒径が小さく、その意図される用途に適合する方法を提供する。本発明に従って生成されるナノ粒子を以下の式1によって表すことができる。
【化2】
【0051】
式中、QDはコアナノ粒子またはコア(マルチ)シェルナノ粒子であり、X−Y−Zはナノ粒子表面結合配位子であり、Xはナノ粒子表面結合基であり、YはXとZを結合する結合基であり、Zは官能基である。
【0052】
Xおよび/またはZは、置換もしくは無置換のアルキル、置換もしくは無置換のアリール、置換もしくは無置換の複素環、置換もしくは無置換のポリエチレングリコールであってよい。(置換基の例として、ハロゲン、エーテル、アミン、アミド、エステル、ニトリル、イソニトリル、アルデヒド、カルボナート、ケトン、アルコール、カルボン酸、アジド、イミン、エナミン、無水物、酸塩化物、アルキン、チオール、スルフィド、スルホン、スルフォキシド、ホスフィン、ホスフィンオキシドが挙げられるがこれに限定されない)または架橋/重合基(例としてカルボン酸、アミン、ビニル、アルコキシシラン、エポキシドが挙げられる。)
【0053】
Xおよび/またはZは、ヒドロキシド塩、アルコキシド塩、カルボン酸塩、アンモニウム塩、スルホン酸塩またはリン酸塩などの荷電基または極性基であってよい。
【0054】
Xおよび/またはZは、−SR1(R1=H、アルキル、アリール)と、−OR2(R2−H、アルキル、アリール)と、−NR34(R3および/またはR4=H、アルキル、アリール)と、−CO25(R5=H、アルキル、アリールl)と、−P(=O)OR6OR7(R6および/またはR7=H、アルキル、アリール)と、−OR8(式中、R8は置換もしくは無置換および/または飽和もしくは不飽和でありうる水素またはアルキル基である)と、−C(O)OR9(式中、R9は水素であり、置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和の脂肪族基もしくは脂環基または置換もしくは無置換の芳香族基である)と、−NR1011(式中、R10およびR11は、独立して水素、置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和の脂肪族基もしくは脂環基または置換もしくは無置換芳香族基であるか、R10およびR11は結合され、−NR1011があらゆる望ましい大きさ、たとえば5、6または7員環の含窒素複素環も生成してもよい)と、−N+121314(式中、R12、R13およびR14は、独立して水素であり、置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和の脂肪族基もしくは脂環基または置換もしくは無置換の芳香族基である)と、−NO2と、−(OCH2CH2)n−OR15(式中、R15は水素であり、置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和の脂肪族基もしくは脂環基または置換もしくは無置換の芳香族基である)と、−S(O)2OR16(式中、R16は水素であり、置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和の脂肪族基もしくは脂環基または置換もしくは無置換の芳香族基である)と、−P(OR17)(OR18)O(式中、R17およびR18は、独立して水素であり、置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和の脂肪族基もしくは脂環基または置換もしくは無置換の芳香族基である)とからなる群から選択されてもよい。
【0055】
Zは、あらゆる適切な保護基も含んでもよい。一例として、Zは、t−ブチル、ベンジル、トリチル、シリル、ベンゾイル、フルオレニル、アセタール、エステルまたはエーテル、たとえばメトキシメチルエーテル、2−メトキシ(エトキシ)メチルエーテルなどの酸不安定保護基を含んでもよい。また、Zは核酸親和性の不安定保護基を含んでもよく、カルボン酸、アルコール、チオールなどを保護するカルボン酸エステル、スルホニウム塩、アミド、イミド、カルバメート、N−スルホンアミド、トリクロロエトキシメチルエーテル、トリクロロエチルエステル、トリクロロエトキシカルボニル、アリリックエーテル/アミン/アセタール/カルボナート/エステル/カルバメートが挙げられる。さらに、Zはベンジルアミン保護基を含んでもよく、脱保護してアミン基を備えることができる。あるいは、Zは、さらに反応させるために、Zを脱保護してジオールを与えるのが最終的に望ましい場合に環状カルボナートを含んでもよい。
【0056】
Yは、単結合、アルキル、アリール、複素環、ポリエチレングリコール、置換もしくは無置換アルキル、置換もしくは無置換アリール、置換もしくは無置換複素環、置換もしくは無置換ポリエチレングリコール、(置換基の例として、ハロゲン、エーテル、アミン、アミド、エステル、ニトリル、イソニトリル、アルデヒド、カルボナート、ケトン、アルコール、カルボン酸、アジド、イミン、エナミン、無水物、酸塩化物、アルキン、チオール、スルフィド、スルホン、スルフォキシド、ホスフィン、ホスフィンオキシドが挙げられる)、架橋/重合基(例として、カルボン酸、アミン、ビニル、アルコキシシラン、エポキシドが挙げられる)または以下の式2によって表される基であってよい。
【0057】
【化3】
上記式中、k、mおよびnは、それぞれ独立して0〜約10,000のあらゆる数である。
【0058】
本発明のさらに好適な実施形態では、Xは、カルボン酸基などの酸基もしくはエステル基またはカルボン酸エステルもしくはカルボン酸塩などのその誘導体または塩であってよい。別の実施形態では、Xはスルホン酸基、スルホン酸エステルもしくはスルホン酸塩、リン酸基、リン酸エステルもしくはリン酸塩またはアミノ基であってよい。Zは、1または複数のアルキル基を含むのが好ましく、それぞれが少なくとも1個の不飽和基を含む。その、または、各炭素−炭素の二重結合または三重結合は、末端不飽和基であってよく(言わば、炭素鎖の末端で原子を含む)、炭素鎖内に備えられてもよい。Zが1または複数のアルキル基を含む場合、その、または、各アルキル鎖はあらゆる望ましい置換基を担持してもよい。結合基Yは、XとZを結合し、あらゆる好都合な形態を取ってもよい。たとえば、Yは、1または複数の脂肪族基および/または芳香族基を含んでもよい。脂肪族基は、直鎖炭素鎖、分岐炭素鎖を含んでもよく、脂環基であってよい。Yは、1または複数のエーテル基をさらに含んでもよい。特に好適な実施形態では、Yは、少なくとも1個、さらに好ましくは2または3個の不飽和アルキル基に、任意にエーテル結合によって結合するフェニル基を含む。特に好適なナノ粒子表面結合配位子(配位子1)には、以下に示す構造があり、3個のビニル基によって、他の配位子および/または周囲の種(たとえば、相溶性ポリマーまたは重合性モノマー)に架橋することができる。
【化4】
【0059】
本発明による方法に使用できるさらに好ましい式1の架橋配位子を以下に示し、この架橋配位子は、上に記載するように、あらゆる望ましい構造のナノ粒子結合配位子Xに結合される脂肪族または芳香族のリンカーYに結合される1または複数のビニル基を含む官能基Zを含む。好適な配位子は、1個のビニル基、さらに好ましくは2個のビニル基、最も好ましくは3個以上のビニル基を含む。Zは、2個以上ビニル基を含み、そこで、ビニル基は同じ炭素原子または異なる炭素原子にそれぞれのアルキル基を介して結合してもよい(たとえば、同じ炭素環または複素環の異なる炭素原子は、それ自体が飽和してもよく、部分的に飽和してもよく、あるいは芳香族基であってよい)。上に記載されるように、ナノ粒子結合基Xは単座配位または多座配位であってよい。一例として、Xは配位子1などに1個のカルボン酸基を含んでもよく、Xは2、3個以上のカルボン酸基を含んでもよい。2個以上カルボン酸基が存在する場合、各基はアルキル基を介して同じまたは異なる炭素原子に結合してもよい。
【0060】
典型的な単座配位の脂肪族配位子には、次の式のものがあり、式中、Xはカルボン酸基であり、Zは1、2または3個のビニル基を含み、Yは直鎖脂肪族基または分鎖脂肪族基であり、各xはあらゆる整数(たとえば0、1、2、3など)である。
【化5】
【0061】
典型的な単座配位の芳香族配位子には、次の式のものがあり、式中、Xはカルボン酸基であり、Zは1、2または3個のビニル基を含み、Yは芳香族基を含み、各xはあらゆる整数(たとえば0、1、2、3など)である。
【化6】
【0062】
典型的な二座配位の脂肪族配位子には、次の式のものがあり、 式中、Xは2個のカルボン酸基を含み、Zは1、2または3個のビニル基を含み、Yは直鎖脂肪族基または分鎖脂肪族基であり、各xはあらゆる整数(たとえば0、1、2、3など)である。
【化7】
【0063】
典型的な三座配位の脂肪族配位子には、次の式のものがあり、式中、Xは3個のカルボン酸基を含み、Zは1、2または3個のビニル基を含み、Yは直鎖脂肪族基または分鎖脂肪族基であり、各xはあらゆる整数(たとえば0、1、2、3など)である。
【化8】
【0064】
上記の典型的な構造のいずれかの1または複数のカルボン酸基が、カルボン酸塩もしくはカルボン酸エステル、スルホン酸、スルホン酸エステルもしくはスルホン酸塩、リン酸、リン酸エステルもしくはリン酸塩またはアミノ基など、ただしこれに限らない別のナノ粒子結合基に置換されてもよいことは明らかである。また、結合基Yは上に示す特定の不飽和脂肪族または不飽和芳香族基以外の基を含んでもよい。例えば、Yは1または複数のエーテル基、炭素−炭素二重結合および/または多環式芳香族基もしくは多環式非芳香族基を含んでもよい。
【0065】
好適な実施形態では、本発明の第1の態様による方法が提供され、末端不飽和基はビニル基である。換言すれば、ナノ粒子表面結合配位子は、ナノ粒子表面から最も遠い位置にある配位子の末端で炭素−炭素二重結合を含む。
【0066】
式3では、Xは少なくとも1個のカルボン酸基または少なくとも1つのチオール基を含むのが好ましい。Yは直鎖脂肪族基もしくは分岐脂肪族基または芳香族基を含むのが好ましい。
【0067】
本発明の第1の態様に関して、ナノ粒子表面結合配位子はポリ(オキシエチレングリコール)モノメチルエーテル酢酸であってよく、式中nは約1〜約5000である。nは好ましくは約50〜3000、さらに好ましくは約250〜2000、最も好ましくは約350〜1000である。また、ナノ粒子表面結合配位子は、10−ウンデシレン酸と11−メルカプトウンデセンから成る群から選択されてもよい。さらに好適な変形例として、ナノ粒子表面結合配位子は、上に示す配位子1である。
【0068】
以下の実施例に使用される式1による典型的な表面結合配位子には、ポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテル酢酸、ポリ(オキシエチレングリコール)750モノメチルエーテル酢酸、ポリ(オキシエチレングリコール)2000モノメチルエーテル酢酸、10−ウンデシレン酸、上に示す配位子1および11−メルカプトウンデセンなどが挙げられる。
【0069】
<表面官能化ナノ粒子>>
本発明の第4の態様では、本発明の第1、第2または第3の態様による方法を用いて生成した表面官能化ナノ粒子を提供し、前記表面官能化ナノ粒子は、ナノ粒子の表面結合配位子に結合するナノ粒子を含み、前記配位子は、ナノ粒子結合基および官能基を含む。
【0070】
本発明の前述の態様のいずれかに従って生成されるナノ粒子は、半導体ナノ粒子、たとえば、コアナノ粒子、コアシェルナノ粒子、傾斜したナノ粒子またはコアマルチシェルナノ粒子であるのが好ましい。前記ナノ粒子は、周期表の第11、12、13、14、15または16族など、ただしこれに限らない周期表のあらゆる好適な族から選択される1または複数のイオン、遷移金属イオン 及び/または、d-ブロック 金属イオンを含むのが好ましい。ナノ粒子コアおよび/またはシェル(必要な場合)は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、InP、InAs、InSb、AlP、AlS、AlAs、AlSb、GaN、GaP、GaAs、GaSb、PbS、PbSe、Si、Ge、MgS、MgSe、MgTeとその組み合せから成る群から選択される1または複数の半導体物質を含んでもよい。
【0071】
本発明は、保護基が使用された場合は有機層をさらに化学処理直後または後に、他の機能性を有する第1の有機層を生成することと同じ反応で量子ドットナノ粒子の最終無機物層を成長させることに関し、これにより、他の化学物質との化学結合能を有する。
【0072】
本発明は、ナノ粒子のコア成長および/またはシェル化時に、insituで量子ドットナノ粒子の表面に、選択された予め化学官能化された配位子を意図的に配位する方法を示す。この方法によれば、合成後の表面修飾法の必要性を回避し、操作ステップを少なくして量子ドットナノ粒子を生成し、それは物理的にも化学的にも堅固であり、量子収量が高く、粒径が小さく、その意図される用途に適合し、溶媒、デバイス、インク、ポリマー、ガラスに前記ナノ粒子を組み込むか、直接結合を形成する化学反応によって細胞、生体分子、金属、分子またはポリマーに量子ドットナノ粒子を付着させること含んでもよいが、これに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
本発明は、以下の非限定実施例および図面を参照して説明する。
【0074】
図1】相互キレート化された表面配位子を含む従来技術のコアシェル型量子ドットナノ粒子を示す概略図である。
図2】従来技術の配位子交換過程を示す概略図である。
図3】従来技術の配位子交互キレート化過程を示す概略図である。
図4】表面官能化ナノ粒子を提供する本発明の方法を示す概略図である。
図5】実施例7で生成されるInPコアナノ結晶のIRスペクトルである。
図6】実施例7で生成されたウンデシレン酸でキャッピングされたInPコアナノ結晶のクロマトグラムである。
図7】実施例7で本発明に従って生成されたInP/ZnSコアシェルナノ結晶のIRスペクトルである。
図8】実施例7で本発明に従って生成されたInP/ZnSコアシェルナノ結晶のクロマトグラムである。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は、本発明による方法を用い、コア型半導体ナノ粒子を生成し、前記コアに半導体のシェルを付着させる方法を示す。
【0076】
実施例1および4は、分子クラスタ化合物を使用し、出願人の同時係属中の欧州特許出願第1743054(A)号明細書に記載の発明に従って、ナノ粒子をシード成長させるInPコアナノ粒子量子ドットの生成法を示す。実施例1および4に使用されるクラスタは、出願人の同時係属中である英国特許出願第0714865.3号明細書に記載の発明に従って、周期表の第12および16族からのイオン(それぞれZnおよびSイオン)を含む。
【0077】
実施例2および3は、本発明の様態による方法を用い、実施例1で生成されたInPコアナノ粒子にZnSのシェルを付着させる方法を示す。実施例5および6は、本発明の態様による方法を用い、実施例4で生成されたInPコアナノ粒子にそれぞれZnSおよびZnS/ZnOのシェルを付着させる方法を示す。実施例7は、InP/ZnSコア/シェルナノ粒子を生成する方法を示し、InPコアナノ粒子にZnSのシェルを付着させるステップは、本発明の態様による方法を用いる。
【0078】
{実施例1}
<ポリ(オキシエチレングリコール)750モノメチルエーテル酢酸で官能化されるInP量子ドット>
【0079】
3口丸底フラスコ(250ml)にセバシン酸ジブチル(100ml)を加え、高真空下の90℃で1時間30分置いた。別の3口丸底フラスコ(100ml)では、セバシン酸ジブチル(45ml)および酢酸インジウム(5.036g、17.25mmol)を高真空下の110℃で置いた。
【0080】
反応フラスコでは、ポリ(オキシエチレングリコール)750モノメチルエーテル酢酸(51.76mmol)を高真空(約90℃)下で1時間加熱した。1時間後に反応フラスコを冷却し、窒素下の反応フラスコにセバシン酸ジブチルと酢酸インジウムの混合物を移した。次に、反応フラスコを高真空下の110℃で16時間置き、存在する過剰量の水分を確実に除去した。16時間後に透明淡黄色の溶液が生成された。
【0081】
3口丸底フラスコ(250ml)にセバシン酸ジブチル(100ml)を入れ、80℃で1時間30分脱気させた。次に、温度を90℃まで上げ、(Et3NH)4[Zn104(SPh)16]クラスタ(0.47g)を添加し、30分間攪拌した。30分後に温度を100℃まで上げ、以下のステップを実施した。100℃で、インジウムポリ(オキシエチレングリコール)750モノメチル酢酸エーテル(0.25M、6ml)を滴加した。この6ml滴加後に、反応混合物を5分間攪拌し、続いて(TMS)3P(0.25M、6ml)を滴加し、反応温度を150℃まで上げ、In(PEG−OMe−750)(0.25M、8ml)の再度滴加し、5分間攪拌し、(TMS)3P(0.25M、8ml)を再度滴加した。反応混合物を180℃に上げた。インジウムポリ(オキシエチレングリコール)750モノメチル酢酸エーテル(0.25M、10ml)を滴加し、5分後に(TMS)3Pを添加した(0.25M、7ml)。反応温度を200℃まで上げ、次に、200℃で45分間アニールし、その後、温度を160℃に下げ、反応混合物をアニールし、3日間激しく攪拌した。
【0082】
3日後に温度を室温に戻し、粒子の凝集が起きるまで、アセトニトリルを添加して反応混合物を分離した。沈殿が生成したら、フィルターを取り付けたカニューレによって溶媒を除去した。残渣固体は、無水のクロロホルム(約94ml)に再溶解し、窒素下のシュレンク管に注入した。
【0083】
{実施例2}
<キャッピング剤としてポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテル酢酸を使用してInPコアナノ粒子にZnSシェルを形成>
【0084】
3口フラスコに、セバシン酸ジ−n−ブチルエステル(11ml)とポリ(オキシエチレングリコール)350モノメチルエーテル酢酸(3.53g、7.618mmol)を入れ、50℃で15分間脱気し、次に室温に戻した。次に、実施例1に従って生成されたリン化インジウム量子ドット(3.3ml、約100mg)を添加し、さらに15分間脱気した。無水酢酸亜鉛(0.71g、3.87mmol)を固体で添加し、フラスコを何回か窒素置換した。次に、溶液を180℃まで上げ、5時間加熱して亜鉛を豊富に含む量子ドット表面を形成した。(TMS)2S(1M、1ml、1mmol)を180℃で滴加し、溶液を30分間静置させZnS層を完成させた。ZnSシェルを有するInPコアを含むナノ粒子量子ドットをジエチルエーテルおよびヘキサン(50:50)を使用して単離し、洗浄した。
【0085】
{実施例3}
<キャッピング剤としてポリ(オキシエチレングリコール)2000モノメチルエーテル酢酸を使用してInPコアにZnSシェルを形成>
【0086】
実施例1に従って生成されたリン化インジウム量子ドット(3.3ml、約100mg)を丸底フラスコに移し、回転蒸発させてクロロホルムを留去した。クロロホルム除去後、ドットを真空下で乾燥した。3口丸底フラスコでは、セバシン酸ジブチル(10ml)、ポリ(オキシエチレングリコール)2000モノメチルエーテル酢酸配位子(17.07g、7.74mmol)および酢酸亜鉛(0.71g、3.87mmol)を真空下の110℃に置いた。ドットおよびセバシン酸ジブチル(5ml)をシュレンク管に入れ、15分間脱気した。ポリ(オキシエチレングリコール)2000モノメチルエーテル酢酸配位子および酢酸亜鉛を溶解して透明溶液を調製後、温度を110℃から30℃に下げた。ポリ(オキシエチレングリコール)モノメチルエーテル酢酸および酢酸亜鉛の反応混合物に、セバシン酸ジブチル中のドットを添加し、温度を180℃まで上げた。オクタンチオール(0.175g、1mmol)を滴加し、次に溶液を220℃まで上げて90分間加熱し、チオールを硫化物イオンに容易に分解して、ZnSシェルを完成した。ZnSシェルを有するInPコアを含むナノ粒子量子ドットをジエチルエーテルおよびヘキサン(50:50)を使用して単離し、洗浄した。
【0087】
{実施例4}
<10−ウンデシレン酸で官能化されたInP量子ドット>
【0088】
3口丸底フラスコ(250ml)に10−ウンデシレン酸(4.146g)およびセバシン酸ジブチル(100ml)を加え、高真空下の100℃で1時間40分置いた。次に、温度を80℃まで下げ、(Et3NH)4[Zn104(SPh)16]クラスタ(0.47g)を添加し、溶液を真空下で30分間置いた。その後、温度を100℃まで上げ、100℃でトリエチルインジウム(セバシン酸ジブチル中に0.5M、3ml)を滴加した。この3ml滴加後、反応混合物を5分間攪拌し、次に(TMS)3P(セバシン酸ジブチル中0.5M、3ml)を滴加した。反応温度を160℃まで上げ、トリエチルインジウム(0.5M、0ml)を再度滴加し、5分間攪拌し、次に(TMS)3P(0.5M、4ml)を再度滴加した。反応混合物を200℃まで上げ、1時間アニールし、その後、温度を150℃に下げ、反応混合物をアニールし、3日間激しく攪拌した。
【0089】
3日後に温度を室温に戻し、アセトニトリル(150ml)を添加して反応混合物を分離した。沈殿が生成したら、溶媒を遠心分離法によって除去した。残渣固体を無水クロロホルムに再溶解し、三角フラスコに移し、10−ウンデシレン酸(2g)を添加した。
【0090】
<操作後処理InP量子ドット>
InP量子ドットのHF酸エッチング
フッ化水素酸水溶液8ml(58〜62重量%溶液)とTHF(32ml)を混合することによってフッ化水素酸溶液を調製した。
【0091】
クロロホルムに分散されたInP粒子にHF原液を一部添加した。反応混合物に、500Wハロゲンランプから560nmのフィルターを通過した光を連続照射した。この後、溶媒を留去した。残渣をクロロホルムで分散させ、アセトニトリルで再沈殿させ、遠心分離法で分離した。固体はセバシン酸ジブチルに分散させた。
【0092】
{実施例5}
<キャッピング剤として10−ウンデシレン酸を使用してInPのZnS/ZnOのシェル化>
【0093】
コンデンサを装備し、枝管、温度計、Suba−Seal(登録商標)およびスターラーバーを備えた火力乾燥した三口フラスコ(250ml)に、セバシン酸ジブチル(15ml)および10−ウンデシレン酸(2.6g)を入れ、80℃で1時間30分脱気する。フラスコを窒素置換し、実施例4に従って生成されたリン化インジウムコア粒子(1セバシン酸ジブチル5ml中に1.3g)を添加し、混合物を80℃で40分間脱気し、次に窒素置換した。
【0094】
酢酸亜鉛(1.4g)を添加し、混合物を80℃で30分間脱気し、3回間窒素置換した。反応温度を120℃まで上げ、次に1−オクタンチオール(0.41ml)を滴加した。次に、温度を220℃まで上げ、90分間維持した。温度を190℃に下げ、1−オクタンチオール(1.09ml)のさらに一部を添加し、温度を220℃まで上げ、90分間維持した。これにより、ZnSシェルが完成した。次に、反応溶液を190℃に冷却した。1−オクタノール(1.0ml)を素早く添加し、温度を30分間維持し、残留した亜鉛塩を分解することによってZnO層を形成した。1−オクタノール(1.74ml)の一部をさらに添加し、ZnO層を完成させ、同じ温度で30分間維持した。次に、反応混合物を室温に戻した。
【0095】
InP/ZnS/ZnOコアマルチシェルナノ粒子を、N2下で無水アセトニトリルによって単離し、遠心分離法によって回収した。粒子をトルエンに分散し、無水アセトニトリルで再沈殿させ、次に遠心分離を実施した。粒子をトルエンに再分散し、次に遠心分離した。上澄液をシュレンク管に移した。
【0096】
次に、以下の典型的な反応スキームに示すように、キャッピング剤として10−ウンデシレン酸でコーティングして得られたコアマルチシェルナノ粒子は、配位子が非環式ジエン重合および/または環化複分解して隣接した10−ウンデシレン酸基に架橋する標準条件下でホベイダ−グラブス触媒で処理してもよい。
【化9】
【0097】
{実施例6}
<キャッピング剤として配位子1を使用するInPコアにZnSシェルの形成>
【化10】
【0098】
配位子1は以下に示すスキームに従って生成した。
【化11】
【0099】
コンデンサを装備し、枝管、温度計、Suba−Seal(登録商標)およびスターラーバーを備えた火力乾燥した三口フラスコ(100ml)に、リン化インジウムコアナノ粒子(セバシン酸ジブチル4.4ml中に0.155g)を入れ、100℃で1時間30分脱気する。室温に戻し、次に、フラスコに窒素置換した。次に、酢酸亜鉛(0.7483g)および配位子1(0.5243g)を添加し、混合物を55℃で1時間脱気し、窒素置換した。反応温度は190℃まで上げ、tert−ノニルメルカプタン(0.29ml)を滴加し、温度を190℃まで上げ、1時間30分維持した。温度を180℃に下げ、1−オクタノール(0.39ml)を添加し、温度を30分間維持した。反応混合物を室温に戻した。
【0100】
2下で遠心分離法によって酢酸エチルでInP/ZnSコアシェルナノ粒子を単離した。粒子をアセトニトリルで沈殿させ、次に遠心分離を実施した。粒子をクロロホルムに分散し、アセトニトリルで再沈殿させ、次に遠心分離を実施した。クロロホルムおよびアセトニトリルを使用するこの分散沈殿法を計4回繰り返した。最終的に、InP/ZnSコアシェル粒子をクロロホルムに分散した。
【0101】
次に、以下の典型的な反応スキームに示すように、キャッピング剤として配位子1でコーティングして得られたコアマルチシェルナノ粒子は、隣接した末端ビニル基に架橋する標準条件下でホベイダ−グラブス触媒で処理してもよい。
【化12】
【0102】
また、以下に示すように、ナノ粒子に配位する前に配位子1の末端ビニル基を架橋してもよい。
【化13】
【0103】
{実施例7}
<InPコアの合成>
【0104】
ミリスチン酸(5.125g)、セバシン酸ジブチル(100ml)およびウンデシレン酸亜鉛(4.32g)を一緒に混合し、マントルヒーターにスターラーバーを備え、熱電対(および温度調節器)を取り付けた三口丸底フラスコを真空下の80℃で1時間脱気した。反応容器を窒素置換し、固体クラスタ[Et3NH]4[Zn104(SPh)16](0.47g)を側面の口から添加した。反応容器を真空下の80℃で30分脱気し、この間にフラスコを3回窒素置換した。反応容器を100℃まで加熱し、In(MA)3溶液3ml(セバシン酸ジブチル中で1M)、次にP(TMS)3溶液3ml(セバシン酸ジブチル中で11M)をガラススポイトで滴下して注入した。粒子の発光極大が680nmに達するまで、160℃、190℃、220℃および250℃で、In(MA)3溶液およびP(TMS)3溶液の再度滴加した。反応容器を160℃に戻し、72時間加熱を継続した。反応容器を30℃に冷却し、アセトニトリルを添加して、赤色粉体としてナノ結晶を凝集した。粉体をクロロホルム(650ml)に再分散し、ウンデシレン酸(10g)を添加した。スターラーバーを装着した透明容器200mlに得られた溶液を入れ、連続攪拌および450Wキセノンランプ光照射下でHF水溶液(5%)をゆっくりと添加することによって、空気中でエッチングした。エッチング処理は約15時間で終了し、その後、メタノールを添加してInPコアを単離し、クロロホルムに再分散した(図5および6を参照)。図5は、InPコアナノ結晶のIRスペクトルであり、O−H伸縮(3500〜2500cm-1)、C−H伸縮(2931〜2885cm-1)、カルボキシルC=O伸縮(1641cm-1)およびカルボキシルC−0伸縮(1082cm-1)の幅が広いことが観察することができる。
【0105】
PLmax=611nm、UVmax=522nm、FWHM=65nm、PLQY=22%、TGAによる無機物含有量=74%
【0106】
<InP/ZnSコア/シェルの合成>
【0107】
クロロホルム(100mg)中のInPコアおよびTherminol(登録商標)(10ml)を一緒に混合し、マントルヒーターにスターラーバーを備え、熱電対(および温度調節器)を取り付けた三口丸底フラスコを真空下の50℃で30分脱気した。窒素急流下で酢酸亜鉛(380mg)を側面の口から添加し、得られた混合物を30分で230℃まで加熱し、この温度で2時間維持した。この後、ビニルチオール化合物、11−メルカプトウンデセン(0.5ml、ZnSシェルおよび量子ドット表面結合配位子の硫黄源として作用)をオクタデセン(0.5ml)と混合し、得られた溶液をガラススポイトで注入した。ルミネッセンスがかなり増大する間、反応溶液を230℃で1時間30分維持した。溶液が50℃に冷却し、トルエン/アセトン/メタノールの混合物を添加してナノ結晶を単離し、トルエンに再分散させ、アセトニトリルの添加によって再沈殿させた。ナノ結晶を無水トルエンに再溶解し、窒素下に保存した(図7および8を参照)。図7は、 InP/ZnSコアシェルナノ結晶のIRスペクトルであり、C−H伸縮(2918cm-1)、C=O伸縮(1558cm-1)およびC−0伸縮およびC=C変角(1200〜1118cm-1)を観察することができる。
【0108】
PLmax=597nm、FWHM=72nm、PLQY=54%、UVmax=536nm、TGAによる無機物含有量=55%
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8