【文献】
橋本守, 吉木啓介, 荒木勉,ビーム断面内偏光分布制御と顕微観測への応用,光アライアンス,日本,2009年 4月 1日,Vol.20,No.4,p.21-25,ISSN 0917-026X
【文献】
西山達, 吉田典央, 辰田寛和, 沼田孝之, 大谷幸利, 梅田倫弘,液晶ラジアル偏光子を用いたワンショット複屈折計測,第53回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集,日本,2006年 3月22日,Vol.53,No.3,p.1067
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光軸に沿って配置され、所定の波長を持つ入射光の一部の位相を反転する位相反転素子と、前記所定の波長を持つ直線偏光をラジアル偏光に変換する偏光面回転素子とを有する偏光変換素子であって、
前記偏光面回転素子は、液晶分子が含まれる液晶層と、該液晶層を挟んで対向するように配置された二つの第1の透明電極とを有し、
前記液晶層は、前記偏光面回転素子と前記光軸との第1の交点を中心とする円周方向に沿って配置された複数の領域を有し、前記複数の領域のそれぞれに含まれる前記液晶分子の配向方向は互いに異なり、
前記液晶層の前記複数の領域のそれぞれは、前記二つの第1の透明電極間に前記所定の波長に応じた電圧が印加されることにより、前記直線偏光のうちの当該領域を透過した成分の偏光面を、当該領域に含まれる前記液晶分子の配向方向に応じて前記第1の交点を中心とする放射方向に平行となるように回転させ、
前記位相反転素子は、該位相反転素子と前記光軸との第2の交点を中心とした放射方向に沿って交互に配置された第1の輪帯部分及び第2の輪帯部分を有し、前記第1の輪帯部分に入射した前記直線偏光または前記ラジアル偏光の位相を、前記第2の輪帯部分に入射した前記直線偏光または前記ラジアル偏光の位相に対して反転させる、
ことを特徴とする偏光変換素子。
前記複数の領域のそれぞれに含まれる前記液晶分子の配向方向は、前記偏光面回転素子に入射した直線偏光の偏光面となす角度が、前記第1の交点及び当該領域を通る所定の直線と前記偏光面との間の角度の1/2となる方向であり、
前記二つの第1の透明電極間に前記所定の波長に応じた電圧が印加されることにより、前記偏光面回転素子は、前記直線偏光のうち、前記複数の領域のそれぞれを透過した成分の偏光面を、前記直線偏光の偏光面と前記配向方向のなす角の2倍の角度回転させて前記所定の直線と平行にする、請求項1に記載の偏光変換素子。
前記所定の波長に応じて前記電圧を変えるとともに、該電圧を前記二つの第1の透明電極間及び前記二つの第2の透明電極間に印加する駆動回路をさらに有する、請求項5〜7の何れか一項に記載の偏光変換素子。
前記残留複屈折補償素子は、前記複数の第2の領域を有する第3の液晶層を有し、かつ当該第3の液晶層中の前記複数の第2の領域のそれぞれは、前記偏光面回転素子が有する前記液晶層中の前記複数の領域のうちの光軸方向の投影位置が一致する領域における前記液晶分子の配向方向と直交するように配向された第3の液晶分子を有する、請求項9に記載の偏光変換素子。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図を参照しつつ、一つの実施形態による、偏光変換素子について説明する。この偏光変換素子は、入射する直線偏光の輪帯状の一部の位相を反転させる液晶層を持つ位相反転素子と、位相反転素子の出射側に配置され、直線偏光を光軸を中心とするラジアル偏光に変換する液晶層を持つ偏光面回転素子とを有する。これにより、この偏光変換素子は、直線偏光をラジアル偏光に変換するとともに、ラジアル偏光に含まれる放射状に分布する各直線偏光成分の一部の位相を反転させる。またこの偏光変換素子は、各液晶層に印加される電圧を調節することにより、所定の波長域内の任意の波長を有する直線偏光をラジアル偏光に変換する。
【0021】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る偏光変換素子の概略構成図である。偏光変換素子1は、入射した直線偏光をラジアル偏光に変換する液晶素子4と、液晶素子4を駆動する駆動回路5と、駆動回路5から液晶素子4に印加される電圧を調節する電圧調節器6と、偏光変換素子1に電力を供給する電源7とを有する。
そして液晶素子4と、駆動回路5及び電圧調節器6とは、例えば、フレキシブルプリント基板(以下、FPCと呼ぶ)のような、導電線を有する基板を介して接続される。なお、駆動回路5及び電圧調節器6は、FPC上に配置されてもよい。
【0022】
図2は、偏光変換素子1が有する液晶素子4の概略正面図である。また
図3(A)及び
図3(B)は、それぞれ、
図2に示された矢印X、X′で示された線における液晶素子4の概略側面断面図である。このうち、
図3(A)は、液晶素子4に電圧が印加されていないときの液晶素子4に含まれる液晶分子の状態を表し、
図3(B)は、液晶素子4に電圧が印加されたときの液晶素子4に含まれる液晶分子の状態を表す。
図2及び
図3(A)に示すように、この液晶素子4は、位相反転素子2と、光軸OAに沿って位相反転素子2に隣接して配置された偏光面回転素子3とを有する。
なお、偏光変換素子1の液晶素子4に入射する光は、直線偏光であり、位相反転素子2側から入射する。そしてその直線偏光は、位相反転素子2及び偏光面回転素子3を透過することによってラジアル偏光に変換され、偏光面回転素子3から出射する。
また、説明の便宜上、偏光変換素子1の液晶素子4に入射する光の偏光面は、
図2の矢印Aに示されるように、
図2が表された面に直交し、かつ縦方向の面にあるものとする。
【0023】
位相反転素子2は、入射した直線偏光のうち、
図2に示された領域2a内に含まれる、光軸OAを中心とする少なくとも一つの輪帯状の部分の位相を他の部分の位相に対して反転させる。そのために、位相反転素子2は、液晶層20と、光軸OAに沿って液晶層20の両側に略平行に配置された透明基板21、22を有する。そして液晶層20に含まれる液晶分子27は、透明基板21及び22と、シール部材28との間に封入されている。また位相反転素子2は、透明基板21と液晶層20の間に配置された透明電極23と、液晶層20と透明基板22の間に配置された透明電極24とを有する。なお、透明基板21、22は、例えば、ガラスまたは樹脂など、所定の波長域に含まれる波長を持つ光に対して透明な材料により形成される。また透明電極23、24は、例えば、ITOと呼ばれる、酸化インジウムに酸化スズを添加した材料により形成される。透明電極23と液晶層20の間に配向膜25が配置される。また透明電極24と液晶層20の間に配向膜26が配置される。これら配向膜25、26は、液晶分子27を所定の方向に配向させる。なお、液晶分子27が、光配向など、配向膜を用いない方法によって配向される場合、配向膜25、26は省略されてもよい。
さらに、各基板、各透明電極及び各配向膜の外周には鏡枠29が配置され、この鏡枠29が、各基板を保持している。
【0024】
図3(A)に示されるように、液晶層20に封入された液晶分子27は、例えば、ホモジニアス配向となり、かつ、入射する直線偏光の偏光面と略平行な方向に配向されている。すなわち、液晶分子27の長軸方向が、
図2に示された矢印Aと略平行に、液晶分子が配向される。
【0025】
図4は、入射側に配置される位相反転素子2に設けられた透明電極23の概略正面図である。一方、透明電極24は、液晶層20全体を覆うように形成される。なお、透明電極24も、
図4に示された透明電極23の形状と同様の形状を有してもよく、あるいは、透明電極24が
図4に示された電極形状を有し、透明電極23が液晶層20全体を覆うように形成されてもよい。
透明電極23は、光軸OAと位相反転素子2の交点c
0を中心とする、同心円状の少なくとも一つの輪帯状の電極を有する。本実施形態では、透明電極23は、4個の輪帯状電極23a〜23dを有する。これにより、液晶層20には、輪帯状電極23a〜23dの何れかと透明電極24に挟まれた第1の輪帯状部分と、一方の側にのみ透明電極24が存在する第2の輪帯状部分とが、同心円状に交互に形成される。なお、輪帯状電極23dの外周が、
図2に示された領域2aの外周に対応する。また、ここでは輪帯状電極23a〜23d間に電極を設けていないが、基準電位を印加するための輪帯状電極を輪帯状電極23a〜23d間に別途設けてもよい。
【0026】
図3(B)に示されるように、これら輪帯状電極23a〜23dと、液晶層20を挟んで対向して配置された透明電極24との間に、駆動回路5によって電圧が印加されると、それら第1の輪帯状部分20aに含まれる液晶分子の長軸方向が、光軸OAに直交する方向から光軸OAに平行な方向に近づくように液晶分子が傾く。一方、透明電極間に挟まれていない第2の輪帯状部分20bに含まれる液晶分子は、その長軸が光軸OAに直交する方向を向いたままとなる。
一般に、液晶分子の長軸方向に平行な偏光成分(すなわち、異常光線)に対する屈折率n
eは、液晶分子の短軸方向に平行な偏光成分(すなわち、常光線)に対する屈折率n
oよりも高い。ここで、透明電極23と24との間に電圧が印加されたときの、第1の輪帯状部分20aに含まれる液晶分子の長軸方向と、電圧が印加された方向、すなわち光軸OAの方向とがなす角をψとすれば、液晶層20を透過する光は、液晶分子27の長軸方向に対して角ψをなす。このとき、液晶分子27が配向された方向と平行な偏光成分に対する液晶分子の屈折率をn
ψとすると、n
o≦n
ψ≦n
eとなる。そのため、液晶層20に含まれる液晶分子27がホモジニアス配向されており、液晶層20の厚さがdであると、液晶層20のうち、輪帯状電極23a〜23dと透明電極24間に挟まれた第1の輪帯部分20aを通る偏光成分と、第2の輪帯部分20bを通る偏光成分との間に、光路長差Δnd(=n
ψd−n
od)が生じる。そしてそれら二つの偏光成分間に生じる位相差Δは、2πΔnd/λとなる。なお、λは、液晶層20に入射する光線の波長である。
このように、透明電極23と透明電極24との間に印加する電圧を調節することにより、位相反転素子2は、液晶層20を透過する光の位相を変調することができる。従って、透明電極23と透明電極24との間に入射光の波長に応じた所定の電圧が印加されると、位相反転素子2は、第1の輪帯部分20aを通る光の位相を、第2の輪帯部分20bを通る光の位相に対してπだけずらすことができる。
【0027】
偏光面回転素子3は、位相反転素子2を透過した後に入射した直線偏光を、光軸OAと偏光面回転素子3との交点c
1を中心とした、放射状の直線偏光分布を持つラジアル偏光に変換する。そのために、偏光面回転素子3は、液晶層30と、光軸OAに沿って液晶層30の両側に略平行に配置された透明基板31、32を有する。なお、透明基板31と位相反転素子2の透明基板22のうちの何れか一方が省略されてもよい。この場合、例えば、透明基板22の一方の面に液晶層20が形成され、透明基板22の他方の面に液晶層30が形成される。
また偏光面回転素子3は、透明基板31と液晶層30の間に配置された透明電極33と、液晶層30と透明基板32の間に配置された透明電極34とを有する。そして液晶層30に含まれる液晶分子37は、透明基板31及び32と、シール部材38との間に封入されている。なお、透明基板31、32は、例えば、ガラスまたは樹脂など、所定の波長域に含まれる波長を持つ光に対して透明な材料により形成される。また透明電極33、34は、例えば、ITOにより形成される。さらに、透明電極33と液晶層30の間に配向膜35が配置される。また透明電極34と液晶層30の間に配向膜36が配置される。これら配向膜35、36は、液晶分子37を所定の方向に配向させる。なお、液晶分子37が、光配向など、配向膜を用いない方法によって配向される場合、配向膜35、36は省略されてもよい。
さらに、各基板、各透明電極及び各配向膜の外周には鏡枠39が配置され、この鏡枠39が、各基板を保持している。なお、鏡枠29と鏡枠39とは、一体的に形成されてもよい。
【0028】
液晶層30に封入された液晶分子は、例えば、ホモジニアス配向される。また液晶層30は、交点c
1を中心として、光軸OAに直交する面内で円周方向に沿って配置された複数の扇形領域を含む。そして各扇形領域に含まれる液晶分子37は、入射する直線偏光の偏光面が、光軸OAを中心とした放射方向に略平行となるようにその偏光面を回転させるように配向される。
【0029】
図5は、液晶層30の各扇形領域における液晶の配向方向と、各扇形領域を透過した直線偏光の偏光方向を示す液晶層30の概略正面図である。
本実施形態では、液晶層30は、時計回りに配置され、互いに配向方向が異なる8個の扇形領域30a〜30hを有し、各扇形領域30a〜30hの中心角は等しくなるように設定される。また
図5において、矢印40a〜40hは、それぞれ、各扇形領域30a〜30hに含まれる液晶分子の配向方向を表す。また、矢印50a〜50hは、それぞれ、各扇形領域30a〜30hから出射する直線偏光の偏光面を表す。なお、矢印50a〜50hのうち、矢印の先端が反対方向を向いている二つの矢印は、それら矢印で表される直線偏光の位相が互いにπだけずれていることを表す。
なお、交点c
1を通って扇形領域を2等分する直線を、その扇形領域の中心線と呼ぶ。
【0030】
各扇形領域30a〜30hの配向方向は、例えば、各扇形領域を透過した後の直線偏光成分の偏光面が、その透過した扇形領域の中心線と平行となるように決定される。そこで、光軸OAと液晶層30との交点c
1を通り、入射する直線偏光の偏光面Aに平行な面と交差する扇形領域30aを1番目の領域とし、扇形領域30aから時計回りまたは反時計回りに第n番目の扇形領域について、その扇形領域の配向方向と、扇形領域30aを通る偏光成分の偏光面Aとがなす角θは次式に従って設定される。
θ=360°×(n−1)/(2N) (n=1,2,...,N) (1)
ただし、Nは扇形領域の総数であり、本実施形態ではN=8である。
【0031】
例えば、n=1である扇形領域30aでは、θ=0となる。すなわち、扇形領域30aでは、入射する直線偏光の偏光面が回転することなく直線偏光が透過するように、液晶分子の配向方向は、入射する直線偏光の偏光面Aと略平行に設定される。
【0032】
また、第n番目の扇形領域を、扇形領域30aを1番目の領域として時計回りにn番目の領域としたとき、各扇形領域30b〜30hの配向方向と扇形領域30aを通る偏光成分の偏光面Aとがなす角は、それぞれ、時計回りを正として、22.5°、45°、67.5°、90°、112.5°、135°、157.5°となるように、各扇形領域30b〜30hの配向方向は設定される。
あるいは、第n番目の扇形領域を、扇形領域30aから反時計回りにn番目の領域としたとき、各扇形領域30b〜30hの配向方向と扇形領域30aを通る偏光成分の偏光面Aとがなす角は、それぞれ、時計回りを正として、−157.5°、−135°、−112.5°、−90°、−67.5°、−45°、−22.5°となるように、各扇形領域30b〜30hの配向方向は設定される。
【0033】
透明電極33、34は、液晶層30全体を挟んで対向するように配置される。そして透明電極33と34との間に、所定の波長域に含まれる波長に対して液晶層30の扇形領域30a〜30hが半波長板として機能するように、駆動回路5によって所定の電圧が印加される。
ここで、透明電極33と34との間に電圧が印加されると、液晶分子がその電圧に応じて電圧が印加された方向に対して平行になる方向に傾く。液晶分子の長軸方向と、電圧が印加された方向とがなす角をψとすれば、液晶層30を透過する光は、長軸方向に対して角ψをなす。このとき、上記のように、液晶分子が配向された方向と平行な偏光成分に対する液晶分子の屈折率をn
ψとすると、n
o≦n
ψ≦n
eとなる。ただし、n
oは液晶分子の長軸方向に直交する偏光成分に対する屈折率であり、n
eは液晶分子の長軸方向に平行な偏光成分に対する屈折率である。
そのため、液晶層30に含まれる液晶分子がホモジニアス配向されており、液晶層30の厚さがdであると、液晶分子の配向方向に平行な偏光成分と液晶分子の配向方向に直交する偏光成分との間に、光路長差Δnd(=n
ψd−n
od)が生じる。したがって、透明電極33と34との間に印加する電圧を調節することにより、液晶分子の配向方向に平行な偏光成分と、液晶分子の配向方向に直交する偏光成分との光路長差を調節できる。そのため、偏光変換素子1が透明電極33と34との間に印加する電圧を調節することにより、所望の波長に対して扇形領域30a〜30hが、それぞれ半波長板として機能する。
【0034】
各扇形領域30a〜30hが半波長板として機能する場合、液晶分子37の配向方向に対して角度θをなす偏光面を有する直線偏光がそれら扇形領域を透過すると、その偏光面は、透過した扇形領域の配向方向に対して角度−θをなすように回転する。すなわち、偏光面は、配向方向を中心として、角度2θだけ回転する。
【0035】
図5に示した例では、各扇形領域30a〜30hにおける液晶分子の配向方向は、扇形領域30aに入射する直線偏光の偏光面Aに対する角度が、各扇形領域の中心線と液晶層30の扇形領域30aに入射する直線偏光の偏光面Aとの角度の1/2となるように設定されている。そのため、交点c
1から入射直線偏光の偏光面Aに沿って上方を向く方向を基準とし、時計回り方向を正とすると、各扇形領域30a〜30hを透過した直線偏光成分の偏光面の角度は、それぞれ、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315°となる。このように、偏光面回転素子3から出射する光線は、光軸OAを中心として放射状の直線偏光成分を持つ。
【0036】
図6は、偏光変換素子1から出射するラジアル偏光61の概略を示す図である。
図6において、各矢印61a〜61hは、それぞれ、直線偏光成分を表す。また、各矢印のうち、矢印の先端が反対方向を向いている二つの矢印は、それら矢印で表される直線偏光の位相が互いにπだけずれていることを表す。さらに、輪帯状の領域62a〜62dは、それぞれ、位相反転素子2の第1の輪帯部分を透過した偏光成分を表す。また輪帯状の領域62e〜62gは、それぞれ、位相反転素子2の第2の輪帯部分を透過した偏光成分を表す。
図6に示されるように、このラジアル偏光61は、光軸OAに対して放射状に偏光面を持つ8種類の直線偏光成分61a〜61hを有する。そして各直線偏光成分61a〜61hは、放射方向に沿って、位相反転素子2の透明電極23、24間に挟まれた第1の輪帯部分を透過した成分62a〜62dと、透明電極に挟まれていない第2の輪帯部分を透過した成分62e〜62gに対応して7つに区分され、隣接する区分間で位相がπずれる。
【0037】
なお、各扇形領域30a〜30hを透過した偏光成分の偏光面は、交点c
1を中心とした放射状に分布すればよく、その偏光面は、透過した扇形領域の中心線と平行でなくてもよい。各扇形領域30a〜30hの配向方向は、各扇形領域30a〜30hを透過した偏光の偏光面が当該扇形領域及び交点c
1を通る所定の直線と平行となるように設定されればよい。例えば、各扇形領域30a〜30hの配向方向と、扇形領域30aに入射した直線偏光の偏光面Aとのなす角が、上記の(1)式で求められる値に所定のオフセット値を加えた値となるように、各扇形領域30a〜30hの配向方向が設定されてもよい。この場合、所定のオフセット値は、各扇形領域30a〜30hの中心線と偏光面Aとのなす角にそのオフセット値の2倍を加算した角度(すなわち、扇形領域を透過した偏光成分の偏光面と扇形領域30aに入射する直線偏光の偏光面とがなす角)が、隣接する扇形領域との境界が偏光面Aとなす角度を超えないように、例えば、±5°に設定される。
【0038】
また、偏光面回転素子3の液晶層30が有する、配向方向の異なる領域の数は、8個に限られない。液晶層30が有する配向方向が異なる領域の数は、ラジアル偏光による効果が得られるために必要な数であればよい。例えば、液晶層30は、4、5、6あるいは16個の互いに配向方向が異なる領域を有していてもよい。
【0039】
図7は、液晶層30が6個の扇形領域30i〜30nを含むときの各扇型領域における液晶の配向方向と、各領域を透過した直線偏光の偏光方向を示す概略正面図である。なお、この変形例においても、透明電極33、34は、液晶層30全体を挟んで対向するように配置される。
この変形例において、矢印40i〜40nは、それぞれ、各扇形領域30i〜30nに含まれる液晶分子の配向方向を表す。また、矢印50i〜50nは、それぞれ、各扇形領域30i〜30nから出射する直線偏光の偏光面を表す。なお、矢印50i〜50nのうち、矢印の先端が反対方向を向いている二つの矢印は、それら矢印で表される直線偏光の位相が互いにπだけずれていることを表す。
【0040】
各扇形領域30i〜30nのうち、光軸OAと液晶層30の交点c
1の上方に位置する扇形領域30iでは、入射する直線偏光の偏光面Aと、扇形領域30iの中心線とが一致する。そのため、扇形領域30iを1番目の領域とする。このとき、時計回り方向にn番目の扇形領域の配向方向は、例えば、その配向方向と偏光面Aとがなす角が上記の(1)式に従って算出される角度となるように設定される。
この場合、各扇形領域30i〜30nの配向方向と扇形領域30aを通る偏光成分の偏光面Aとがなす角は、それぞれ、時計回りを正として、0°、30°、60°、90°、120°、150°となる。
【0041】
この場合も、各扇形領域30i〜30nを透過した直線偏光に対して液晶層30が半波長板として機能するように、扇形領域30i〜30nを挟む透明電極33、34間には入射光の波長に応じた電圧が印加される。
これにより、交点c
1から入射直線偏光の偏光面に沿って上方を向く方向を基準とし、時計回り方向を正とすると、各扇形領域30i〜30nを透過した直線偏光成分の偏光面の角度は、それぞれ、0°、60°、120°、180°、240°、300°となる。このように、偏光面回転素子3から出射する光線は、光軸OAを中心として放射状の直線偏光成分を持つ。
【0042】
駆動回路5は、位相反転素子2の透明電極23と24の間、及び偏光面回転素子3の透明電極33と34の間に駆動電圧を印加する。上記のように、位相反転素子2が入射光の一部の位相を反転させるために、一部の液晶分子27の長軸方向を光軸OA方向に傾ける角度と、偏光面回転素子3が、直線偏光をラジアル偏光に変換するために、透明電極33と34間に印加された電圧によって、液晶分子37の長軸方向を光軸OA方向に傾ける角度が等しくなるよう設定する。よって、駆動回路5は、各々適切な駆動電圧を用いて、液晶層20及び液晶層30を駆動することができる。
また、駆動電圧は、例えば、パルス高さ変調(PHM)またはパルス幅変調(PWM)された交流電圧であってもよい。後述するように、電圧調整器6が駆動回路5と液晶素子4の各透明電極との間に接続される場合、駆動回路5は、各々適切なパルス高さ及びパルス幅を持つ駆動電圧を出力する。一方、駆動回路5は、電圧調整器6から電圧調整信号を受け取る場合、その電圧調整信号に応じて、駆動電圧のパルス高さまたはパルス幅を調節してもよい。
さらに駆動回路5は、他の機器(図示せず)と接続するためのインターフェース回路を有していてもよい。この場合、駆動回路5は、他の機器からインターフェース回路を介して受信した電圧調整信号に応じて、駆動電圧のパルス高さまたはパルス幅を調節してもよい。
【0043】
電圧調整器6は、偏光変換素子1に入射する直線偏光の波長に応じて、位相反転素子2の透明電極23と24の間、及び偏光面回転素子3の透明電極33と34の間に印加される駆動電圧を調節する。そのために、例えば、電圧調整器6は、駆動回路5と透明電極23及び透明電極33との間に接続された可変抵抗器と、その可変抵抗器の抵抗値を調節するための操作部とを有する。操作部は、例えば、目盛り付きダイアルとすることができる。この場合、目盛り付きダイアルには、偏光変換素子1に入射させる直線偏光の波長に応じた目盛りが付される。そして特定の波長に対応する目盛りを、所定の基準位置に合わせたとき、可変抵抗器の抵抗値は、偏光変換素子1がその特定の波長を持つ直線偏光をラジアル偏光に変換するための駆動電圧となるように調節される。
あるいは電圧調整器6は、操作部と電圧調整信号を生成する回路とを有し、その回路と駆動回路5とが接続されていてもよい。この場合、電圧調整器6は、操作部が操作されることにより、所定の波長に応じた電圧調整信号を駆動回路5へ出力する。
【0044】
図8は、透明電極33、34間の液晶層30に印加される電圧と液晶層30により生じる常光線と異常光線の光路長差の一例を示す図である。
図8において、横軸は液晶層30に印加される電圧を表し、縦軸は光路長差を表す。グラフ801は、波長405nmを持つ光について、印加電圧と光路長差の関係を表す。グラフ802は、波長650nmを持つ光について、印加電圧と光路長差の関係を表す。グラフ803は、波長780nmを持つ光について、印加電圧と光路長差の関係を表す。
例えば、波長405nmを持つ光に対して液晶層30を半波長板として機能させるために、透明電極33、34間には、405nmの整数倍に202.5nmを加えた光路長差が生じる電圧が印加されればよい。そこでグラフ801を参照すると、透明電極33、34間に、光路長差1012.5nmに相当する約1.4Vrmsの電圧が印加されればよい。
また、例えば、波長650nmを持つ光に対して液晶層30を半波長板として機能させるために、透明電極33、34間には、650nmの整数倍に325nmを加えた光路長差が生じる電圧が印加されればよい。そこでグラフ802を参照すると、透明電極33、34間に、光路長差975nmに相当する約1.5Vrmsの電圧が印加されればよい。
さらに、例えば、波長780nmを持つ光に対して液晶層30を半波長板として機能させるために、透明電極33、34間には、780nmの整数倍に390nmを加えた光路長差が生じる電圧が印加されればよい。そこでグラフ803を参照すると、透明電極33、34間に、光路長差1170nmに相当する約1.1Vrmsの電圧が印加されればよい。
【0045】
電源7は、駆動回路5と接続され、駆動回路5に所定の電圧を持つ直流電力を供給する。そのために、電源7は、例えば、リチウムイオン電池、アルカリマンガン電池などの蓄電池とすることができる。
あるいは、電源7は、商用電源などの外部電源から供給された電力を、所定の電圧を持つ直流電力に変換するコンバータ回路を有し、その直流電力を駆動回路5に供給してもよい。
【0046】
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態に係る偏光変換素子は、直線偏光をラジアル偏光に変換できる。またこの偏光変換素子は、入射した光線の偏光面を回転させるために液晶を利用しているので、入射した光線の波長に応じて液晶層に印加する電圧を調節することで、所定の波長域にわたってラジアル偏光を生成できる。
さらにこの偏光変換素子は、輪帯状に、ラジアル偏光を形成する各直線偏光の一部の位相を他の部分の位相に対して反転させることができるので、そのラジアル偏光を集光することにより、効率的にz偏光効果を生じさせることができる。
【0047】
なお、位相反転素子2の液晶層20について、第2の輪帯部分に含まれる液晶分子27を、光軸OAに平行な方向に配向させてもよい。この場合において、液晶層20と液晶層30の厚さが同一であり、液晶層20に含まれる液晶分子の光学特性及び電気特性と、液晶層30に含まれる液晶分子の光学特性及び電気特性とが同一とすることができる。そのため、このように液晶分子27が配向された場合も、液晶変換素子1は、一つの駆動回路5から出力される、同一の波形及び振幅を持つ駆動電圧を用いて、液晶層20及び液晶層30を駆動することができる。
また、液晶層20に印加する電圧を液晶層30に印加する電圧と同一とする場合には、第1の輪帯部分では液晶分子27の長軸方向が、第2の輪帯状部分では液晶分子27の短軸方向が、位相反転素子2に入射する直線偏光の偏光面と平行となるように、液晶分子27を配向してもよい。
【0048】
また他の変形例によれば、位相反転素子2の第1の輪帯状部分を透過する光と第2の輪帯状部分を透過する光の間に、透明電極による光路長差が生じないように、第2の輪帯状部分についても、液晶層20の両側に透明電極が形成されてもよい。
【0049】
図9(A)及び
図9(B)は、それぞれ、この変形例による、位相反転素子2の入射側に設けられた透明電極23の概略正面図である。なお、透明電極24は、上記の実施形態と同様に、液晶層20全体を覆うように基板全面に形成される。なお、透明電極24も、
図9(A)または
図9(B)に示された透明電極23の形状と同様の形状を有してもよく、あるいは、透明電極24が
図9(A)または
図9(B)に示された電極形状を有し、透明電極23が液晶層20全体を覆うように形成されてもよい。
【0050】
透明電極23は、光軸OAと位相反転素子2の交点c
0を中心とする、円状の電極23aと、同心円状の少なくとも一つの輪帯状の電極とを有する。この変形例では、透明電極23は、円状の電極23aの周囲に、5個の輪帯状電極23b〜23fを有する。また、各電極間の隙間は小さい方が好ましい。なお、輪帯状電極23fの外周が、
図2に示された領域2aの外周に対応する。
【0051】
図9(A)に示した例では、各輪帯電極は独立に制御可能なように、各輪帯電極から配線がそれぞれ引き出されており、その配線が駆動回路5と接続されている。また
図9(B)に示した例では、円状の電極23aから順に偶数番目の輪帯状電極同士、及び奇数番目の輪帯状電極同士がそれぞれ同一の配線で電気的に接続され、偶数番目の輪帯状電極と接続された配線及び奇数番目の輪帯状電極と接続された配線がそれぞれ駆動回路5と接続される。これにより、偶数番目の各輪帯状電極は同一の電位で駆動可能となっている。同様に、奇数番目の各輪帯状電極も同一の電位で駆動可能となっている。また
図9(B)では、奇数番目の輪帯状電極群と偶数番目の輪帯状電極群のうち、一方の電極群は電気的に制御されなくてもよい。この場合、他方の電極群と透明電極24との間に電圧を印加することで、その他方の電極群と透明電極24との間に挟まれた液晶層により、光の位相を反転可能である。なお、輪帯状電極も厚さがあるので、輪帯状電極を通った光の位相は、輪帯状電極を透過しない光の位相に対してずれる。そこで、
図9(A)及び
図9(B)に示されるように、電圧制御に利用される輪帯状電極だけでなく、電圧制御が不要な輪帯状電極も配置することで、位相反転素子2は、液晶層20に電圧が印加されない場合に位相反転素子2を透過する光束のほぼ全体を同位相にすることができる。
【0052】
さらに、電気的に制御する必要がない偶数番目、あるいは奇数番目の輪帯状電極群の電位を、その輪帯状電極群と対向する側の透明基板に設けられた透明電極24と同一の基準電位、あるいは液晶層20内の液晶分子が動作しない電位の最大値である閾値電位に設定することが好ましい。閾値電位は、一般には実効電圧で約1V〜2Vである。このように電気的に制御する必要がない輪帯状電極群の電位を設定することで、位相反転素子2は、液晶層20の電位を一定に制御できるので、静電気等のノイズにより液晶層20の液晶が誤動作することを防止できる。また電気的に制御する必要がない輪帯状電極群の電位を閾値電位とすることで、液晶層20の熱揺らぎも抑制できる。
【0053】
さらに、位相反転素子の位置と、偏光面回転素子の位置を入れ換えてもよい。
図10(A)は、位相反転素子の位置と偏光面回転素子の位置を入れ替えた、第2の実施形態に係る偏光変換素子が有する液晶素子4’の概略背面図である。
図10(B)は、
図10(A)に示された矢印Y、Y′で示された線における液晶素子4’の概略側面断面図である。
図10(A)及び
図10(B)において、第2の実施形態に係る偏光変換素子の各構成要素に対して、
図2及び
図3に示された第1の実施形態に係る偏光変換素子1の対応する構成要素と同様の参照番号を付した。
【0054】
この偏光変換素子は、偏光面回転素子3と、光軸OAに沿って偏光面回転素子3に隣接して配置され、ラジアル偏光に含まれる、光軸OAを中心として放射状に分布した各直線偏光成分の一部の位相を反転する位相反転素子2’とを有する。
このうち、偏光面回転素子3の構成は、上記の実施形態による偏光面回転素子3の構成と同様である。液晶素子4’に入射する光は、直線偏光であり、偏光面回転素子3側から入射する。そしてその直線偏光は、偏光面回転素子3により、ラジアル偏光に変換された後、位相反転素子2’へ入射する。位相反転素子2’は、入射したラジアル偏光に含まれる各直線偏光成分の一部の位相を反転する。
【0055】
ここで、
図10(A)及び
図10(B)に示されるように、位相反転素子2’は、液晶層20と、光軸OAに沿って液晶層20の両側に配置された透明基板21、22を有する。そして液晶層20に含まれる液晶分子27は、透明基板21及び22と、シール部材28との間に封入されている。また位相反転素子2’は、透明基板21と液晶層20の間に配置された透明電極23と、液晶層20と透明基板22の間に配置された透明電極24とを有する。さらに、透明電極23と液晶層20の間に配向膜25が配置される。また透明電極24と液晶層20の間に配向膜26が配置される。これら配向膜25、26は、液晶分子27を所定の方向に配向させる。
さらに、各基板、各透明電極及び各配向膜の外周には鏡枠29が配置され、この鏡枠29が、各基板を保持している。
【0056】
図10(A)に、液晶層20に封入された液晶分子の配向方向を示す。液晶層20に封入された液晶分子は、例えば、ホモジニアス配向される。また、液晶層20は、光軸OAと液晶層20との交点c
0を中心として、円周方向に配置される複数の扇形領域20a〜20hを有する。
矢印は21a〜21hは、各扇形領域に含まれる液晶分子の配向方向を示す。矢印21a〜21hに示されるように、各扇形領域20a〜20hに封入された液晶分子は、その長軸方向が、交点c
0を中心とした放射方向を向くように配向される。そのため、偏光面回転素子3から出射した光の偏光面は、各扇形領域20a〜20hを透過しても回転しない。
【0057】
各扇形領域20a〜20hは、それぞれ、
図5に示される、偏光面回転素子3の液晶層30の各扇形領域30a〜30hと光軸OA方向に投影した位置が等しくなるように設定されることが好ましい。この場合、扇形領域30aを透過し、交点c
1に対して放射状の偏光成分を持つ直線偏光は、扇形領域20aを透過する。同様に、扇形領域30b〜30hを透過した直線偏光は、それぞれ、扇形領域20b〜20hを透過する。
【0058】
また、透明電極23は、交点c
0を中心とした同心円状に配置された少なくとも1本の輪帯状の電極を有する。例えば、透明電極23は、
図4、
図9(A)または
図9(B)に示された透明電極と同様の構造を有する。一方、透明電極24は、液晶層20全体を覆うように配置される。そして透明電極に挟まれた第1の輪帯部分20aを透過する光の位相が、透明電極に挟まれていない第2の輪帯部分20bを透過する光の位相とπだけずれるように、透明電極23、24間に所定の電圧が印加される。
これにより、位相反転素子2’を透過したラジアル偏光において、そのラジアル偏光に含まれる各直線偏光成分のうち、第1の輪帯部分を透過した成分の位相が第2の輪帯部分を透過した成分の位相に対して反転する。したがって、この偏光変換素子も、入射した直線偏光を、
図6に示されるような偏光面の分布と位相分布を持つラジアル偏光に変換できる。
【0059】
また、この第2の実施形態に係る偏光変換素子では、位相反転素子2’の液晶分子が、光軸と位相反転素子2’の交点を中心とした放射状に配向されているので、偏光変換素子に入射する直線偏光の偏光面と位相反転素子2’の液晶分子の配向方向を合わせる必要がない。また、入射する直線偏光の偏光面と、偏光面回転素子3の基準となる扇形領域(例えば、
図5における領域30a)の中心線とがずれていても、偏光面回転素子3は入射する直線偏光をラジアル偏光に変換できる。そのため、この偏光変換素子は、光学系への組み込みの際のアライメント調節を簡単化できる。
なお、液晶層20に印加する電圧を液晶層30に印加する電圧と同一とする場合には、第1の輪帯部分では液晶分子27の長軸方向が交点c
0を中心とした放射方向を向くように、かつ、第2の輪帯状部分では液晶分子27の長軸方向が交点c
0を中心とする円周方向を向くように、液晶分子27を配向してもよい。
【0060】
本発明による偏光変換素子は、様々な光照射装置に組み込んで利用することができる。例えば、上記の各実施形態の何れかによる偏光変換素子は、光照射装置の一例である光ピックアップ装置に組み込むことができる。
図11は、偏光変換素子を有する光ピックアップ装置の概略構成図である。
図11に示されるように、光ピックアップ装置10は、光源11と、コリメートレンズ12と、ビームスプリッタ13と、対物レンズ14と、結像レンズ15と、受光素子16と、偏光変換素子17と、コントローラ18と、アクチュエータ19とを有する。
【0061】
光源11、コリメートレンズ12、偏光変換素子17、ビームスプリッタ13及び対物レンズ14は、光軸OAに沿って一列に配置される。そしてコリメートレンズ12、偏光変換素子17、ビームスプリッタ13及び対物レンズ14は、光源11から放射された光を記録媒体100上に焦点を結ばせる。一方、結像レンズ15及び受光素子16は、ビームスプリッタ13の側面において光軸OAと直交する方向に配置される。そして、記録媒体100により反射または散乱された光は、対物レンズ14を通った後、ビームスプリッタ13により反射され、結像レンズ15によって受光素子16上に結像される。なお、理解を容易にするために図示していないが、光ピックアップ装置1は、光路上に、球面収差用補償光学系など、各種の補償光学系を有していてもよい。
【0062】
光源11は、例えば半導体レーザを有し、直線偏光を出力する。
コリメートレンズ12は、その前側焦点に光源11が位置するように配置され、光源11から出力された直線偏光を平行光にする。
偏光変換素子17は、上記の各実施形態の何れかによる偏光変換素子であり、対物レンズ14の前側瞳面に配置されることが好ましい。本実施形態では、偏光変換素子17は、コリメートレンズ12とビームスプリッタ13の間に配置される。そして偏光変換素子17は、コリメートレンズ12を透過した後に偏光変換素子17に入射した直線偏光をラジアル偏光に変換する。偏光変換素子17は、例えば、直線偏光をラジアル偏光に変換する偏光面回転素子が有する液晶層の各領域のうち、直線偏光の偏光面を回転させない領域(例えば、
図5に示した扇形領域30a)に含まれる液晶分子の配向方向が、偏光変換素子17に入射する直線偏光の偏光面と略一致し、他の領域の液晶分子の配向方向と入射する直線偏光の偏光面との間の角が、偏光面を回転させる角度の1/2となるように配置されることが好ましい。
【0063】
対物レンズ14は、偏光変換素子17から出射したラジアル偏光に、記録媒体100上に焦点を結ばせる。この場合、焦点近傍では、対物レンズ14により集光された光はz偏光となる。そのため、焦点近傍における光のスポット径は、回折限界により規定されるスポット径よりも小さくすることができる。例えば、本実施形態によるスポット径は、回折限界により規定されるスポット径の約1.5〜約1.7分の1となる。また、この光ピックアップ装置10は、集光された光の焦点深度も大きくすることができる。
【0064】
さらに、対物レンズ14には、トラッキング用のアクチュエータ19が取付けられている。アクチュエータ19が、図中の矢印Zの方向に対物レンズ14を移動させることによって、対物レンズ14によって集光される光ビームが、記録媒体100のトラックに正確に追従する。またアクチュエータ19は、コントローラ18と接続され、コントローラ18からの制御信号に応じて対物レンズ14を移動させる。
【0065】
記録媒体100により反射または散乱された光は、記録媒体100のトラック面上に記録されている情報(ピット)によって振幅変調されている。この光は、再度対物レンズ14を透過して平行光となる。そしてその光は、ビームスプリッタ13により反射され、結像レンズ15に入射する。そして結像レンズ15は、入射した光を受光素子16上に結像する。
【0066】
受光素子16は、例えば、アレイ状に配列された複数のCCDまたはC−MOSなどの半導体受光素子を有する。そして各半導体受光素子は、受光した光の強度に応じた電気信号を出力する。そして受光素子16は、各半導体受光素子が出力した電気信号を平均し、その平均値に相当する電気信号を、受光した光の強度を表す光強度信号としてコントローラ18へ伝達する。
【0067】
コントローラ18は、受光素子16から受信した光強度信号から記録情報を読み出す。またコントローラ18は、偏光変換素子17及びアクチュエータ19を制御する。そのために、コントローラ18は、偏光変換素子17が有する駆動回路と接続される。またコントローラ18は、受光素子16と接続され、受光素子16から光強度信号を受信する。そしてコントローラ18は、偏光変換素子17が光源11から出力された直線偏光をラジアル偏光に変換できるように、偏光変換素子17の各液晶層に印加する電圧を調節する。具体的には、コントローラ18は、偏光変換素子17が有する駆動回路へ出力する電圧調整信号を変えることにより、偏光変換素子17の各液晶層に印加する電圧を調節しながら、光強度信号を取得し、電圧値と光強度信号値を対応付けて内蔵するメモリに記憶する。そして、コントローラ18は、メモリに記憶した光強度信号及び電圧値から、光強度信号が最大値となる電圧値を決定し、その電圧に応じた電圧調整信号を偏光変換素子17の駆動回路へ送信する。そして偏光変換素子17の駆動回路は、コントローラ18から受信した電圧調整信号に応じた駆動電圧を、各液晶層に印加する。
【0068】
以上説明してきたように、偏光変換素子を用いた光ピックアップ装置は、ラジアル偏光に記録媒体上に焦点を結ばせるので、z偏光効果によりその焦点近傍におけるスポット径を回折限界により規定されるスポット径よりも小さくできる。そのため、この光ピックアップ装置は、回折限界により規定される分解能よりも高い分解能を有することができる。したがって、この光ピックアップ装置は、回折限界により規定される分解能で決められた記録密度よりも高い記録密度を持つ記録媒体に記録された情報を読み取ることができる。また、この光ピックアップ装置は、記録媒体近傍における焦点深度を大きくすることができるので、記録媒体と光ピックアップ装置間の距離変動による読取エラーの発生を抑制することができる。
【0069】
ピックアップ装置は、互いに波長が異なる光を出力する複数の光源を有してもよい。例えば、光ピックアップ装置10は、光源11とは別個に第2の光源(図示せず)と、各光源から出力された光を偏光変換素子17へ向ける第2のビームスプリッタ(図示せず)をさらに有していてもよい。この場合、光源11から出力された光が記録媒体100に集光されるだけでなく、第2の光源から出力された光も、第2のビームスプリッタによって反射された後、ビームスプリッタ13、偏光変換素子17及び対物レンズ14を介して記録媒体100に集光されるように、例えば、コリメートレンズ12とビームスプリッタ13の間に第2のビームスプリッタが配置され、その第2のビームスプリッタの側方に、第2の光源が配置される。
【0070】
コントローラ18は、光源または第2の光源の何れか一方に出力させるとともに、
図8で説明したように、光を出力中の光源に応じた電圧調整信号を偏光変換素子17の駆動回路へ送信することにより、偏光変換素子17がその光源からの光をラジアル偏光に変換することを可能にする。これにより、光ピックアップ装置は、複数の光源の何れから出力された光も、回折限界により規定されるスポット径よりも小さいスポット径を持つように記録媒体100上に集光できる。
また、偏光変換素子17は、記録媒体100で反射または散乱された光も透過するように、ビームスプリッタ13と対物レンズ14との間に配置されてもよい。
【0071】
なお、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記の実施形態に係る偏光変換素子は、光照射装置の他の一例である、レーザメス、レーザ加工機といった光を用いて対象物を加工する光加工装置にも好適に用いられる。この場合、偏光変換素子は、上記の光ピックアップ装置と同様に、直線偏光を出力する光源と、光を集光する対物レンズの間、特に、対物レンズの光源側の瞳面に配置されることが好ましい。これにより、対物レンズの焦点近傍において、集光された光はz偏光となる。そのため、偏光変換素子を用いた光加工装置は、加工可能な最小サイズを回折限界よりも小さくすることができる。
【0072】
同様に、上記の実施形態に係る偏光変換素子は、様々な光照射装置、例えば、レーザ顕微鏡、あるいは干渉計といった、光を用いて対象物を観察または対象物の形状を測定する装置にも好適に用いられる。この場合も、偏光変換素子は、直線偏光を出力する光源と、光を集光する対物レンズの間、特に、対物レンズの光源側の瞳面に配置されることが好ましい。そして偏光変換素子が共焦点型レーザ顕微鏡に用いられる場合、ラジアル偏光が照射される被照射物であるサンプルは、例えば、XYステージに載置され、そのXYステージが移動することによって、サンプル上の異なる点にラジアル偏光が集光される。あるいは、共焦点型レーザ顕微鏡は、ガルバノミラー等を用いて光源から発したレーザビームの向きを変えることにより、偏光変換素子を透過することによりラジアル偏光化されたそのビームでサンプルを走査してもよい。
【0073】
また、偏光変換素子がレーザ顕微鏡に用いられる場合、偏光変換素子の各液晶層に印加する駆動電圧を調節することにより、サンプルの深さ方向、すなわち、光軸OAに沿った方向の解像度を高くするか、あるいは、サンプルの表面に平行な方向、すなわち、光軸OAに直交する方向の解像度を回折限界により規定される解像度よりも高くするかを切り替えることができる。
【0074】
サンプルの深さ方向の解像度を高くする場合、偏光変換素子の各液晶層に印加する駆動電圧は、偏光変換素子が入射する直線偏光をラジアル偏光に変換しない電圧に設定される。例えば、偏光面回転素子の液晶層の各領域において常光線に対する光路長と異常光線に対する光路長の差が、レーザ顕微鏡の光源から出力される光の波長の整数倍となるように、液晶層に印加する駆動電圧が調節される。また、位相反転素子の液晶層の第1の輪帯部分を透過する光の光路長と第2の輪帯部分を透過する光の光路長との差が光源から出力される光の波長の整数倍となるように、その液晶層に印加する駆動電圧が調節される。この場合、サンプルの表面に平行な方向、すなわち、光軸OAに直交する方向の解像度は、回折限界により規定される解像度となる。
【0075】
一方、サンプルの表面に平行な方向の解像度を回折限界により規定される解像度よりも高くする場合には、上記のように、偏光変換素子が入射した直線偏光をラジアル偏光に変換できるように偏光変換素子の各液晶層に印加する駆動電圧が調整される。ただしこの場合には、直線偏光がサンプルの物体面に集光されるときよりも、サンプルの物体面に集光される光のスポット径が小さい範囲が深さ方向に長くなる。そのため、ラジアル偏光がサンプルの物体面に集光されるときの深さ方向の解像度は、直線偏光がサンプルの物体面に集光されるときの深さ方向の解像度よりも低下する。
【0076】
このように、上記の実施形態による偏光変換素子を用いたレーザ顕微鏡は、偏光変換素子の各液晶層に印加する駆動電圧を調節することで、ラジアル偏光をサンプルへ集光させてサンプルの表面に平行な方向の解像度を向上させるか、あるいは非ラジアル偏光をサンプルへ集光させて深さ方向の解像度を向上させることができる。
さらに、このレーザ顕微鏡は、サンプルへ集光させる光を切り替えるために、各液晶層に対する駆動電圧を変更するだけよい。そのため、例えば、フォトニック結晶のような偏光面の回転量を調節できない素子を用いて作成された偏光変換素子が用いられる場合と異なり、サンプルに照射する光をラジアル偏光とするか否かを切り替えるのに機械的にレーザ顕微鏡の一部または全てを移動させる必要がない。そのため、このレーザ顕微鏡は、その光の切り替えの際に焦点位置がずれることを防止できる。
【0077】
上記のように、偏光変換素子が入射した直線偏光をラジアル偏光に変換する場合と、直線偏光をそのまま出力する場合の何れかが切り替えて使用されることがある。このような場合において、偏光変換素子の偏光面回転素子が有する液晶層に印加する電圧を実質的に利用可能な電圧の範囲内で調整しても、全ての液晶分子が一定の方向、例えば、光軸に平行な方向を向くわけではないので、偏光面回転素子の液晶層の複屈折が完全になくならないことがある。複屈折が有る、すなわち、常光線に対する屈折率と異常光線に対する屈折率との差がゼロでなければ、偏光面回転素子の液晶層を円周方向に分割した複数の領域のうち、液晶の配向方向が入射する直線偏光の偏光面と平行でない領域を透過した直線偏光の偏光方向は回転する。その結果として、偏光面回転素子から出射した光は直線偏光でなくなってしまう。
【0078】
そこで、一つの変形例では、調整可能な電圧の範囲内の所定の電圧を偏光面回転素子の液晶層に印加した場合に、その液晶層を透過する常光線と異常光線の光路長差(以下では、便宜上残留複屈折と呼ぶ)を打ち消す複屈折を持つ残留複屈折補償素子が、偏光面回転素子の入射側または出射側に配置される。なお、所定の電圧には、電圧値0、すなわち、偏光面回転素子の液晶層に電圧が印加されないことも含まれる。またこの所定の電圧は、偏光面回転素子が入射した直線偏光をラジアル偏光に変換する際に、偏光面回転素子の液晶層に印加される電圧とは異なる電圧であり、例えば、調整可能な電圧の範囲内で、残留複屈折が最小となる電圧とすることができる。
【0079】
図12(A)は、この変形例による偏光変換素子が有する残留複屈折補償素子を入射側から見た概略正面図であり、
図12(B)は、
図12(A)の矢印yy′で示された線における偏光変換素子の概略側面断面図である。
図12(A)及び
図12(B)において、偏光面回転素子の各構成要素に対して、
図2及び
図3(A)に示された偏光面回転素子3の対応する構成要素と同様の参照番号を付した。また
図12(B)では、説明の明瞭化のために、位相反転素子の図示は省略されていることに留意されたい。
【0080】
この変形例では、
図3(A)に示された偏光面回転素子3の出射側に、偏光面回転素子3と同様の構成を有する残留複屈折補償素子300が配置されている。そして、残留複屈折補償素子300が有する液晶層310の光軸方向の厚さ、及び液晶層310に含まれる液晶分子の物理特性は、偏光面回転素子3の液晶層30の厚さ、及び液晶層30に含まれる液晶分子の物理特性とそれぞれ同一である。また、残留複屈折補償素子310が有する液晶層310は、光軸OAとの交点c
2を中心として円周方向に配置される8個の扇形領域310a〜310hを有する。各扇形領域310a〜310hは、それぞれ、光軸OAに平行な方向に投影した位置及び形状が、
図5に示される液晶層30が有する各扇形領域30a〜30hの位置及び形状と略一致するように配置される。したがって、例えば、扇形領域30aを透過した光軸OAに平行な光束は、扇形領域310aを透過する。
【0081】
図12(A)に示される、点線の矢印311a〜311hは、それぞれ、扇形領域310a〜310h内の液晶分子の配向方向を表す。また実線の矢印40a〜40hは、液晶層30の扇形領域30a〜30h内の液晶分子の配向方向を表す。
図12(A)から明らかなように、残留複屈折補償素子300の各扇形領域310a〜310hについて、その扇形領域内の液晶分子は、偏光面回転素子30の対応する扇形領域、すなわち、光軸OA方向に沿った位置が一致する扇形領域内の液晶分子の配向方向と直交するように配置される。したがって、液晶層30の各扇形領域における進相軸と液晶層310の対応する各扇形領域における進相軸は、光軸OAに直交する面内で直交している。そのため、液晶層30及び液晶層310の何れにも電圧が印加されないか、あるいは同じ電圧が印加されれば、液晶層30の複屈折と液晶層310の複屈折は等しく、互いに打ち消すことになるので、偏光変換素子を透過する直線偏光の偏光面は回転しない。
【0082】
一方、偏光面回転素子3の液晶層30に印加する電圧を、液晶層30に電圧が印加されない場合よりも、液晶層30の各扇形領域において常光線に対する光路長と異常光線に対する光路長との差が入射する直線偏光の波長の1/2に相当する分だけ多くなるように調節することで、偏光変換素子は入射した直線偏光をラジアル偏光に変換できる。
【0083】
なお、残留複屈折補償素子310は、液晶層の代わりに、複屈折性を持つ他の複屈折素子、例えば、水晶のような複屈折結晶、フォトニック結晶、あるいは高分子フィルムを延伸加工した位相差フィルムを有してもよい。この場合も、残留複屈折補償素子310の各扇形領域について、複屈折素子の進相軸が偏光面回転素子3の液晶層30の対応する扇形領域における進相軸と直交するように複屈折素子は配置される。また、残留複屈折補償素子310の複屈折素子を透過する常光線と異常光線の光路長の差が、所定の電圧が印加された場合の液晶層30の残留複屈折と等しくなるように、各複屈折素子の光軸方向の厚さは設定される。
【0084】
また、偏光面回転素子3の液晶層30に含まれる液晶分子は垂直配向されてもよい。これにより、残留複屈折が最小となる場合の液晶層30に印加される電圧は小さくなるので、偏光変換素子が直線偏光をそのまま透過させる場合における偏光変換素子の消費電力を抑制できる。
【0085】
さらに、顕微鏡装置に組み込まれる対物レンズなど、偏光変換素子と組み合わせて用いられる対物レンズは交換可能なものであってもよい。この場合、対物レンズによって瞳径が異なることがある。そこで、異なる瞳径の対物レンズが用いられても同様の超解像効果が得られるように、偏光変換素子の位相反転素子は、対物レンズの瞳径によらず、位相反転素子を透過した光束に光軸を中心とする同心円状の所定数の輪帯状部分を形成させ、隣接する輪帯状部分同士で位相を反転させることが好ましい。なお、所定数は2以上の整数であり、例えば3以上8以下の整数である。
なお、上記の実施形態による偏光面回転素子は、その構造上、瞳径の異なる様々な対物レンズにもそのまま適用可能である。
【0086】
図13(A)は、このような課題を解決する変形例による位相反転素子の光の入射側の透明電極23’の構造を示す概略正面図であり、
図13(B)は、変形例による位相反転素子の光の出射側の透明電極24’の構造を示す概略背面図である。なお、
図13(A)及び
図13(B)において、透明電極23’のサイズと透明電極24’のサイズが異なることを理解し易くするために、位相反転素子の液晶層内のシール部材の内側境界281が示される。透明電極以外の位相反転素子の構造は、上記の実施形態の何れかによる位相反転素子の構造と同様とすることができる。そのため、ここでは、透明電極についてのみ説明する。
【0087】
この変形例では、透明電極23’は、光軸OAと位相反転素子の交点c
0を中心とする、同心円状の7本の輪帯状の電極231a〜231gを有する。そして各輪帯電極により、交点c
0を中心とする半径r
1(すなわち、交点c
0から透明電極23’の最外周の輪帯電極231gの外縁までの距離)の円形領域のほぼ全体が覆われている。この半径r
1は、例えば、相対的に大きな瞳径を持つ対物レンズが使用された場合に位相反転素子を透過する光束の半径と略等しくなるように設定される。
【0088】
同様に、透明電極24’も、交点c
0を中心とする、同心円状の7本の輪帯状の電極241a〜241gを有する。また各輪帯電極により、交点c
0を中心とする半径r
2(すなわち、交点c
0から透明電極24’の最外周の輪帯電極241gの外縁までの距離)の円形領域のほぼ全体が覆われている。この半径r
2は、例えば、相対的に小さな瞳径を持つ対物レンズが使用された場合に位相反転素子を透過する光束の半径と略等しくなるように設定される。すなわち、半径r
2は、半径r
1よりも小さな値に設定される。
なお、透明電極23’、24’の何れについても、隣接する二つの輪帯電極同士は、それら輪帯電極の幅よりも狭い間隔を空けて配置され、互いに絶縁されている。
【0089】
瞳径が相対的に大きい対物レンズが使用される場合、透明電極24’が有する全ての輪帯電極に等電位となるよう通電され、一方、透明電極23’については、輪帯電極1本おきに通電される。例えば、輪帯電極231a、231c、231e及び231gに通電され、輪帯電極231b、231d及び231fには通電されない。透明電極23’のうちの通電された輪帯電極と透明電極24’間の電圧を適切に調節することにより、その電極間に挟まれた液晶層を透過する光線の位相は、透明電極23’中の通電されていない輪帯電極と透明電極24’との間に挟まれた液晶層を透過する光線の位相に対してπだけずれる。
【0090】
また、瞳径が相対的に小さい対物レンズが使用される場合、透明電極23’が有する全ての輪帯電極に等電位となるよう通電され、一方、透明電極24’については、輪帯電極1本おきに通電される。例えば、輪帯電極241a、241c、241e及び241gに通電され、輪帯電極241b、241d及び241fには通電されない。透明電極24’のうちの通電された輪帯電極と透明電極23’間の電圧を適切に調節することにより、その電極間に挟まれた液晶層を透過する光線の位相は、透明電極24’中の通電されていない輪帯電極と透明電極23’との間に挟まれた液晶層を透過する光線の位相に対してπだけずれる。
【0091】
ここで、透明電極23’が有する輪帯電極の数と透明電極24’が有する輪帯電極の数は等しく、両透明電極の半径は異なる。そのため、この変形例による位相反転素子は、瞳径の異なる二つの対物レンズの何れが使用される場合にも、光束中に、隣接する部分同士で位相が反転している、光軸を中心とする同心円状の輪帯状部分を同数だけ形成させることができる。
【0092】
なお、各透明電極が有する輪帯電極の数は、互いに異なっていてもよい。例えば、透明電極24’は、透明電極23’の半径と透明電極24’の半径が等しくなるように、輪帯電極241gの外側にさらに1本以上の輪帯電極を有してもよい。
【0093】
位相反転素子のさらに他の変形例によれば、位相反転素子の液晶層の一方に設けられる透明電極は、
図3(A)に示された透明電極24のように、液晶層全体を覆うように配置され、液晶層の他方に設けられる透明電極は、
図13(A)に示された透明電極23’のように、液晶層のほぼ全体を覆うように設けられた同心円状の複数の輪帯電極を有してもよい。ただしこの変形例では、各輪帯電極の幅は、透明電極23’の輪帯電極の幅よりも狭く、例えば、透明電極23’の輪帯電極の幅の略1/10〜略1/2に設定されることが好ましい。この場合、隣接する複数の輪帯電極を一つの組として、光軸との交点を中心とした放射方向に沿って、交互に通電する輪帯電極の組と通電しない輪帯電極の組が配置される。これにより、光束中に、隣接する部分同士で位相が反転している輪帯状部分が形成される。そして対物レンズの瞳径に応じて通電される輪帯電極の組を適切に選択することで、その瞳径によらず、所定数の輪帯状部分が形成される。
【0094】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。