(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、改善された熱収縮特性、すなわち高温でのよりよい寸法安定性を有する微多孔膜の発見に関する。熱収縮特性の改善は、比較的低い温度(例えば、従来のリチウムイオン電池の作動温度範囲内である約110℃以下)においてのみならず、比較的高温(例えば、125℃以上、または135℃以上、例えば、リチウムイオン電池用の従来の電池用セパレータフィルムのシャットダウン温度付近)においても認められる。
多層微多孔膜の構造および組成
【0013】
ある実施形態においては、微多孔膜は、第1および第2の層を含む。第1の層は、第1の層材料を含み、第2の層は、独立して選択される第2の層材料を含む。第1および第2の層材料は、例えば、独立して選択されるポリオレフィンであってもよい。例えば、膜は、膜の長さおよび幅に沿った平面軸とほぼ垂直の軸方向上方から見た場合に平坦な最上層、およびこの最上層と平行またはほぼ平行である平坦な最下層を有する。別の実施形態においては、多層微多孔膜は、3つ以上の層、例えば、第1および第3の層ならびに第1の層と第3の層の間に位置する第2の層を有する膜を含む。第3の層は、独立して選択される第3の層材料を含んでもよいが、これは必須ではない。多層微多孔膜が3つ以上の層を有する場合、少なくとも1つの層は、第1の微多孔性層材料を含み、少なくとも1つの層は、第2の微多孔性層材料を含む。ある実施形態においては、第1および第3の層は、実質的に同じポリマーまたはポリマーの混合物から製造される(かつ、一般にそれらを含む)(例えば、両方とも第1の層材料から製造される)。
【0014】
ある実施形態においては、多層微多孔膜は、第1および第3の層(「表面」層または「スキン」層とも呼ぶ)が膜の外層を構成し、第2の層が第1の層と第3の層の間に位置する中間層(または「コア」層)である、3つの層を含む。関連する実施形態においては、多層微多孔膜は、さらなる層、すなわち2つのスキン層およびコア層以外の層を含んでもよい。例えば、膜は、第1の層と第3の層の間にさらなるコア層を含有してもよい。膜は被覆された膜であってもよく、すなわち、第1および第3の層の上に1つまたは複数のさらなる層があってもよいし、第1および第3の層に1つまたは複数の層が塗布されていてもよい。一般に、膜の第2の層は、膜の全厚さの5%〜15%の厚さを有し、膜の第1および第3の層は、同じ厚さを有し、第1および第3の層の厚さは、それぞれ膜の全厚さの42.5%〜47.5%の範囲である。
【0015】
所望により、コア層は、例えばA/B/Aといった配置で層が対面で積み重ねられたスキン層の1つまたは複数と平面接触している。膜がポリオレフィンを含有する場合、膜を「ポリオレフィン膜」と呼んでもよい。膜はポリオレフィンのみを含有してもよいが、これは必須ではなく、ポリオレフィン膜が、ポリオレフィン、およびポリオレフィンではない材料を含有することは本発明の範囲内である。好適なポリオレフィンは、種々の好適なプロセス、例えばクロム触媒、チーグラー・ナッタ触媒の存在下での重合、または1種または複数のシングルサイト重合触媒による重合によって製造することができる。
【0016】
以下、第1および第2の層材料についてさらに詳細に説明する。
【0017】
ある実施形態においては、第1の層は、ポリエチレンを含む。本明細書で用いるポリエチレンという用語は、エチレン由来の繰返し単位を含有するポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマーを指す。このようなポリエチレンとしては、限定するものではないが、ポリエチレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がエチレン由来であるコポリマーが挙げられる。ポリエチレンは、2種以上のポリエチレンの混合物等の、個々のポリエチレンの混合物またはリアクタブレンドであってもよい。一実施形態においては、ポリエチレンは、1.0×10
6以下の重量平均分子量(「Mw」)を有する第1のポリエチレンおよび1.0×10
6超のMwを有する第2のポリエチレンを含む。第3の層材料は、1.0×10
6以下のMwを有する第1のポリエチレンおよび1.0×10
6超のMwを有する第2のポリエチレンを含む。第2の層材料は、ポリプロピレンを含む。本明細書で用いるポリプロピレンという用語は、プロピレン由来の繰返し単位を含有するポリオレフィンホモポリマーまたはコポリマーを指す。このようなポリプロピレンとしては、限定するものではないが、ポリプロピレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がプロピレン由来であるコポリマーが挙げられる。ポリプロピレンは、2種以上のポリプロピレンの混合物等の、個々のポリプロピレンの混合物またはリアクタブレンドであってもよい。例えばある実施形態においては、第2の層材料は、1.0×10
6以下のMwを有する第1のポリエチレン、1.0×10
6超のMwを有するポリプロピレン、および所望により1.0×10
6超のMwを有する第2のポリエチレンを含む。所望により、第2および/または第3の層材料の第1のポリエチレンは、第1の層材料の第1のポリエチレンと同じである。所望により、第2および/または第3の層材料の第2のポリエチレンは、第1の層材料の第2のポリエチレンと同じである。ある実施形態においては、第1および第3の層材料のいずれも、0.5重量%超の量のポリプロピレンを含有しない。関連する実施形態においては、第1および/または第3の層材料は、本質的に、ポリエチレン、例えば実質的に同じポリエチレンまたはポリエチレンの組合せからなる。
【0018】
ある実施形態においては、第1の層材料は、例えば92.5重量%〜約97.5重量%といった、約80重量%〜約99重量%の第1のポリエチレン、および約1重量%〜約20重量%、特に約1重量%〜約5重量%の第2のポリエチレンを含んでおり、重量パーセントは第1の層材料の重量が基準である。ある実施形態においては、第3の層材料のポリエチレンは、第1の層材料とほぼ同じ濃度範囲の実質的に同じポリエチレンの中から選択される。
【0019】
ある実施形態においては、第2の層材料は、第1のポリエチレン、ポリプロピレン、例えば40重量%以下のポリプロピレン、および所望により第2のポリエチレンを含む。例えば第2の層材料は、約60重量%〜約95重量%の第1のポリエチレン、約5重量%〜約40重量%のポリプロピレン、および約0重量%〜約10重量%の第2のポリエチレンを含んでもよく、重量パーセントは第2の層材料の重量が基準である。別の実施形態においては、第2の層材料は、約60重量%〜約75重量%の第1のポリエチレン、約25重量%〜約35重量%のポリプロピレン、および約0.5重量%〜約5重量%の第2のポリエチレンを含んでおり、重量パーセントは第2の層材料の重量が基準である。ある実施形態においては、微多孔膜は、1.5〜5重量%のポリプロピレン、75〜98重量%の第1のポリエチレン、および0より多く5重量%以下の第2のポリエチレンを含んでおり、重量パーセントは第2の層材料の重量が基準である。
【0020】
微多孔膜は、コポリマー、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)、ならびに/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを含有してもよいが、これらは必須ではない。ある実施形態においては、膜は、かかる物質を実質的に含まない。この文脈における実質的に含まないとは、微多孔膜中のかかる物質の量が、微多孔膜の製造に用いるポリマーの全重量を基準として1重量%未満であることを意味する。
【0021】
最終微多孔膜は、通常は、押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、一般に、微多孔膜の重量を基準として1重量%未満の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ある実施形態においては、膜中のポリマーのMwは、膜の製造に用いるポリマーのMwの例えばわずか約10%以下、わずか約1%以下、またはわずか約0.1%以下だけ低下する。
【0022】
以下、ポリプロピレン、第1および第2のポリエチレン、ならびに押出物および微多孔膜の製造に用いる希釈剤についてさらに詳細に説明する。
微多孔膜の製造に用いる材料
【0023】
ある実施形態においては、第1および第3の層材料は、第1の希釈剤ならびに第1および第2のポリエチレンから調製され、第2の層材料は、第2の希釈剤、第1のポリエチレン、ポリプロピレン、および所望により第2のポリエチレンから調製される。所望により、無機種(ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)、ならびに/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174(共にその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーを用いて、第1、第2、および/または第3の層材料を調製してもよい。ある実施形態においては、これらの任意である種は使用しない。
A.第1のポリエチレン
【0024】
第1のポリエチレンは、例えば約1.0×10
5〜約9×10
5、例えば約4×10
5〜約8×10
5の範囲といった、1.0×10
6以下のMwを有する。所望により第1のポリエチレンは、例えば約3〜約20といった、約1〜約100の範囲の分子量分布(「MWD」)を有する。例えば第1のポリエチレンは、高密度ポリエチレン(「HPDE」)、中密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンの1種または複数であってもよい。
【0025】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、例えば炭素原子10,000個当たり5以上または炭素原子10,000個当たり10以上といった、炭素原子10,000個当たり0.2以上の末端不飽和基量を有する。末端不飽和基量は、例えばPCT公開WO97/23554に記載の手順に従って測定することができる。
【0026】
ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、(i)エチレンホモポリマー、または(ii)エチレンと、10モル%以下のα−オレフィン等(例えばプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1等)のコモノマーとのコポリマーの少なくとも1つである。かかるポリマーまたはコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒プロセス、クロム触媒プロセス、またはシングルサイト触媒プロセス等のいずれかの都合のよい重合法により製造することができる。所望によりコモノマーは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、もしくはスチレン、または他のモノマー、の1つまたは複数である。
B.第2のポリエチレン
【0027】
第2のポリエチレンは、例えば1.1.0×10
6〜約5×10
6の範囲、例えば約1.2×10
6〜約3×10
6、例えば約2×10
6といった、1.0×10
6超のMwを有する。第2のポリエチレンは、例えば約3〜約10といった、約2〜約100の範囲のMWDを有する。例えば第2のポリエチレンは、超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)であってもよい。ある実施形態においては、第1のポリエチレンは、(i)エチレンホモポリマー、または(ii)エチレンと、10モル%以下のα−オレフィン等のコモノマーとのコポリマーの少なくとも1つである。所望によりコモノマーは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、もしくはスチレン、または他のモノマー、の1つまたは複数である。かかるポリマーまたはコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒プロセス、クロム触媒プロセス、またはシングルサイト触媒プロセス等のいずれかの都合のよい重合法により製造することができる。
C.ポリプロピレン
【0028】
所望によりポリプロピレンは、プロピレンと、10.0モル%以下のコモノマー(1種または複数のα−オレフィン等)、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、およびスチレン等;ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィン;ならびに他のコモノマー、とのコポリマーを含む。
【0029】
ある実施形態においては、ポリプロピレンは、それ自体が1つまたは複数のポリプロピレンホモポリマーまたはプロピレンのコポリマー(ランダムまたはブロック)を含む、第1のポリプロピレンを含む。第1のポリプロピレンは、例えば約5.0×10
5〜約2.0×10
6、例えば約1.1×10
6〜約1.5×10
6といった、5×10
5以上のMwを有する。所望によりポリプロピレンは、例えば約1〜約50、もしくは2.0〜6.0といった、100以下のMWD、および/または例えば110.0J/g〜120.0J/g、例えば約113.0J/g〜119.0J/gもしくは114.0J/g〜約116.0J/gといった、100.0J/g以上の融解熱(「ΔHm」)を有する。ΔHmは、PCT特許公開第WO2007/132942号に記載のように、JIS K7122に従って示差走査熱量測定を用いて測定する。
【0030】
所望によりポリプロピレンは、以下の特性の1つまたは複数を有する:(i)ポリプロピレンは、アイソタクチックである;(ii)230℃の温度および25秒
−1のひずみ速度において少なくとも約50,000Pa秒の伸張粘度;(iii)少なくとも約160℃の融解ピーク(第二融解);ならびに/または(iv)約230℃の温度および25秒
−1のひずみ速度において測定した場合に少なくとも約15のトルートン比。
【0031】
ポリエチレンおよびポリプロピレンのMwおよびMWDは、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定する。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No. 19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行う。MwおよびMWDを決定するために、3本のPLgel Mixed-Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。ポリエチレンに関しては、公称流量は0.5cm
3/分であり、公称注入量は300μLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、145℃に維持されたオーブン内に含まれている。ポリプロピレンに関しては、公称流量は1.0cm
3/分であり、公称注入量は300μLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、160℃に維持されたオーブン内に含まれている。
【0032】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。SEC溶離液として同じ溶媒を用いる。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量のTCB溶媒を加え、次いでこの混合物を160℃で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより、ポリマー溶液を調製する。ポリマー溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2μmフィルターでオフラインろ過する。
【0033】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義する)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正する。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
微多孔膜の製造方法
【0034】
ある実施形態においては、本発明の多層微多孔膜は二層膜である。別の実施形態においては、多層微多孔膜は少なくとも3つの層を有する。本発明はそれらに限定されるものではないが、主に、第1の層材料を含む第1および第3の層と、第1の層と第3の層の間に位置する第2の層材料を含む第2の層とを有する三層膜に関して微多孔膜の製造方法を説明する。
【0035】
本発明の多層微多孔膜の製造方法の1つには、押出物または膜、例えば単層押出物または単層微多孔膜、を積層または共押出しすることによる多層化が含まれる。例えば、第1の層材料を含む1つまたは複数の層は、第2の層材料を含む1つまたは複数の層、例えば第2の層材料を含む層(または複数の層)の片側または両側に位置する第1の層材料を含む層とともに共押出ししてもよい。
【0036】
膜の製造プロセスでは、第1の平面方向(例えば押出しの機械方向または「MD」)および直交する第2の平面方向(例えばMDに横行する方向、横方向または「TD」と呼ぶ)を有する多層押出物の冷却が行われる。押出物は、第2の層が第1の層と第3の層の間に位置する、少なくとも第1、第2、および第3の層を含んでもよい。押出物の第1および第3の層は、第1の層材料および少なくとも第1の希釈剤を含み、押出物の第2の層は、第2の層材料および少なくとも第2の希釈剤を含む。第1および第3の層は、スキン層とも呼ばれる、押出物の外層であってもよい。当業者であれば、押出物の第3の層は、異なる層材料、例えば第3の層材料から形成することができ、かつ第1の層とは異なる厚さを有してもよいということが理解できよう。このプロセスではまた、冷却押出物のMDおよび/またはTDへの延伸、ならびに第1および第2の希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去することによる、第1の平面方向の第1の乾燥長さおよび第2の平面方向の第1の乾燥幅を有する乾燥膜の製造も行われる。次にこのプロセスでは、TD、および所望によりMDに沿って乾燥膜を延伸することによる、最終膜の形成が行われる。以下、三層膜を製造するための実施形態をさらに詳細に説明する。
第1の層材料と第1の希釈剤との混合
【0037】
第1の層材料は、第1のポリエチレンおよび所望により第2のポリエチレンを、例えばドライブレンドまたは溶融ブレンドにより混合することによって製造する。混合したポリマーを1種または複数の希釈剤と混合してポリマーと希釈剤との混合物を形成してもよい。ポリマーは、ポリマー樹脂の形態であってもよい。希釈剤は、例えば、第1の層材料のポリマー用の溶媒であってもよい。希釈剤がこのような溶媒である場合、希釈剤は膜形成溶媒と呼ぶことができ、ポリマーと希釈剤との混合物は、ポリマー溶液、例えばポリオレフィン溶液と呼ぶことができる。合わせた第1の層材料と希釈剤とは、所望により1種または複数の酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。ある実施形態においては、かかる添加剤の量は、ポリマーと希釈剤との混合物の重量を基準として1重量%を超えることはない。
【0038】
所望により、第1の希釈剤は室温で液体の溶媒である。いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、液体溶媒を用いて第1のポリオレフィン溶液を形成することにより、比較的高い延伸倍率で押出物(通常はゲル状シート)の延伸を行うことが可能になると考えられる。
【0039】
本発明の希釈剤としては、押出温度にて樹脂と合わさって単相を形成することが可能ないずれの種を用いてもよい。希釈剤としては、ノナン、デカン、デカリン、およびパラフィン油等の脂肪族または環状炭化水素、ならびにフタル酸ジブチルおよびフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステルが挙げられる。40℃での動粘度が20〜200cstであるパラフィン油を用いてもよい。第1の希釈剤、混合条件、押出し条件等の選択は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。
【0040】
第1のポリオレフィン溶液中における、希釈剤と第1の層材料との混合物中の第1の希釈剤の量は重要ではない。ある実施形態においては、第1の希釈剤の量は、第1の希釈剤と第1の層材料とを合わせた重量を基準として、20重量%〜99重量%、好ましくは60重量%〜80重量%の範囲である。希釈剤の濃度がより高いと、本明細書に記載のいくつかの膜の熱収縮特性の向上に少なくとも一部は寄与すると考えられる。
第2の層材料と第2の希釈剤との混合
【0041】
第2の層材料と第2の希釈剤とは、第1の層材料と第1の希釈剤との混合に用いた方法と同様の方法で混合してもよい。例えば、第2の層材料を含むポリマーは、第1のポリエチレンと、ポリプロピレンと、所望により第2のポリエチレンとを溶融ブレンドすることにより混合してもよい。第2の希釈剤は、第1の希釈剤と同じ希釈剤の中から選択してもよい。また、第2の希釈剤は第1の希釈剤とは独立して選択してもよい(また通常は独立して選択される)が、希釈剤は第1の希釈剤と同じであってもよく、また第1の希釈剤を第1のポリオレフィン溶液中で使用するのと同じ相対濃度で使用してもよい。
【0042】
ある実施形態においては、第2のポリオレフィン溶液の調製方法は、混合温度がポリプロピレンの融点(Tm2)からTm2+90℃の範囲であることが好ましいという点において、第1のポリオレフィン溶液の調製方法とは異なっている。
押出し
【0043】
ある実施形態においては、合わせた第1の層材料と第1の希釈剤とは、第1の押出機から第1および第3のダイへと導かれ、合わせた第2の層材料と第2の希釈剤とは、第2の押出機から第2のダイへと導かれる。シート状の層状押出物(すなわち、厚さ方向よりも平面方向の方が有意に大きい物体)を第1、第2、および第3のダイから押し出して(例えば、共押出し)、合わせた第1の希釈剤と第1の層材料とのスキン層、および合わせた第2の層材料と第2の希釈剤とのコア層を有する多層押出物を製造することができる。
【0044】
ダイまたは複数のダイおよび押出し条件の選択は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。
多層押出物の冷却
【0045】
多層押出物を15℃〜25℃の範囲の温度にさらして冷却押出物を形成することができる。冷却速度はとくに重要ではない。例えば、押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約30℃/分の冷却速度で冷却してもよい。冷却の処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/01617号に開示されているものと同じであってもよい。ある実施形態においては、冷却押出物は、例えば0.1mm〜10mm、または0.5mm〜5mmの範囲といった、10mm以下の厚さを有する。通常は、冷却押出物の第2の層は、冷却押出物の全厚さの5%〜15%の厚さを有し、冷却押出物の第1および第3の層は、実質的に同じ厚さを有し、第1および第3の層の厚さは、それぞれ冷却押出物の全厚さの42.5%〜47.5%の範囲である。
冷却押出物の延伸
【0046】
次に、冷却押出物を少なくとも一つの方向(例えばMDまたはTD等の少なくとも1つの平面方向)に延伸(「湿式」延伸と呼ぶ)して延伸押出物を製造する。所望により押出物は、4〜6の範囲の倍率に、横方向および機械方向に同時に延伸する。好適な延伸方法は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載されている。必須ではないが、MDおよびTDの倍率は同じであってもよい。ある実施形態においては、延伸倍率はMDおよびTDにおいて5に等しい。特定の実施形態においては、延伸は、約850%/分以下、800%/分以下、775%/分以下、または700%/分以下の変形速度にて行われる。600%/分〜約800%/分、または700%/分〜800%/分の範囲の変形速度が有用である。二軸延伸されるフィルムはMD寸法およびTD寸法の両方において延伸されるが、本明細書で用いる用語「変形速度」は、フィルムの少なくとも1つの平面寸法(例えばMD、TD、またはそれらの組合せ)が増大する速度を指す。例えば、1分間の二軸延伸プロセスの過程にMDおよびTDに5倍の倍率に延伸されるフィルムは、MDおよびTDの両方に500%/分の変形速度を有することになり、500%の変形速度で延伸されたと記載することができる。
【0047】
必須ではないが、延伸は、押出物をおよそTcd温度からTmの範囲の温度にさらしながら行ってもよい。TcdおよびTmは、結晶分散温度、および押出物の製造に用いるポリエチレンの中で最も融点の低いポリエチレン(すなわち第1および第2のポリエチレン)の融点、と定義する。結晶分散温度は、ASTM D 4065に従って動的粘弾性の温度特性を測定することにより決定する。Tcdが約90〜100℃の範囲である実施形態においては、延伸温度は、約90〜125℃、好ましくは約100〜125℃、より好ましくは105〜125℃、さらにより好ましくは119〜約125℃であってもよい。延伸温度がより高いと、動作条件において収縮が少ない膜が得られる可能性があると考えられる。
【0048】
ある実施形態においては、延伸押出物は、希釈剤除去の前に所望により熱処理にかけられる。熱処理では、延伸押出物は、押出物が延伸中にさらされる温度より高い(温かい)温度にさらされる。ある実施形態においては、延伸押出物は、1秒〜100秒の範囲の時間、120℃〜125℃の範囲の温度にさらされるが、その間は、例えば、テンタークリップを用いて延伸押出物をその外周に沿って保持することにより、湿潤長さおよび湿潤幅は一定に保たれる。別の実施形態においては、延伸押出物は、押出物が延伸中にさらされる温度より高くない、好ましくは低い(冷たい)温度にさらされる。ある実施形態においては、延伸押出物は、1秒〜100秒の範囲の時間、90℃〜120℃、延伸温度が119〜120℃の場合は特に約90℃〜100℃の範囲の温度にさらされるが、その間は、例えば、テンタークリップを用いて延伸押出物をその外周に沿って保持することにより、湿潤長さおよび湿潤幅は一定に保たれる。延伸押出物がそのより高い温度にさらされている間、延伸押出物の平面寸法(MDの長さおよびTDの幅)は一定に保つことができる。押出物はポリマーおよび希釈剤を含有しているため、その長さおよび幅は、「湿潤」長さおよび「湿潤」幅と呼ばれる。言い換えれば、熱処理の間、MDまたはTDへの延伸押出物の拡大または縮小(すなわち寸法変化)はない。
【0049】
この工程、および試料(例えば、押出物、乾燥押出物、膜等)を高温にさらす乾燥延伸および熱セット等のその他の工程において、こうした暴露は、空気を熱し、次いでこの加熱空気を試料の近くに運ぶことにより行うことができる。加熱空気の温度は、通常は所望の温度と等しい設定値に制御され、次いでプレナム等を通して試料に向けて導かれる。試料を加熱面にさらす方法、オーブンでの赤外線加熱等の従来の方法を含む、試料を高温にさらすその他の方法を、加熱空気とともに、または加熱空気の代わりに用いてもよい。
【0050】
いかなる特定の理論にもとらわれることを望まないが、比較的より高い延伸温度によってポリマー鎖の絡み合いの緩和が可能になり、そのことによって、より高い温度における熱収縮が減少すると考えられる。任意である熱処理は、より高い温度における熱収縮特性の向上に寄与するとも考えられる。
第1および第2の希釈剤の除去
【0051】
ある実施形態においては、第1および第2の希釈剤(例えば膜形成溶媒)の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)して乾燥膜を形成する。置換(または「洗浄」)溶媒を用いて第1および第2の希釈剤を除去(洗浄、または置換)してもよい。第1および第2の希釈剤を除去するための処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。用語「乾燥膜」は、希釈剤の少なくとも一部が除去されている押出物を指す。全ての希釈剤を延伸押出物から除去する必要はないが、希釈剤を除去すると最終膜の空孔率が増加するのでそうすることが望ましいと言える。
【0052】
ある実施形態においては、洗浄溶媒等の残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部を、希釈剤除去後のいずれかの時点において乾燥膜から除去してもよい。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/016174号および同第WO2007/132942号に開示されているものと同じであってもよい。
乾燥膜の延伸
【0053】
乾燥膜を、少なくともTDに延伸する(「乾燥延伸」と呼ばれる)。乾燥延伸した乾燥膜は「延伸」膜と呼ばれる。乾燥延伸の前には、乾燥膜はMDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)およびTDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)を有する。本明細書で用いる用語「第1の乾燥幅」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜の横方向への大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜の機械方向への大きさを指す。例えば、国際公開第2008/016174号に記載の種類のテンター延伸装置を用いることができる。
【0054】
乾燥膜は、第1の乾燥幅から、約1.1〜約1.8の範囲の倍率(「TD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥幅より広い第2の乾燥幅へ、TDに延伸してもよい。所望により、乾燥延伸を使用する場合、乾燥膜は、第1の乾燥長さから、ある倍率(「MD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥長さより長い第2の乾燥長さへ、MDに延伸してもよい。延伸(希釈剤を含有した押出物をすでに延伸しているため再延伸とも呼ばれる)は、MDおよびTDに逐次または同時に行ってもよい。通常はTD熱収縮率はMD熱収縮率よりも電池の特性に与える影響が大きいため、通常はTD乾燥倍率の大きさはMD乾燥倍率の大きさを超えることはない。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥延伸は、MDおよびTDに同時、または逐次に行ってもよい。乾燥延伸が逐次の場合、通常はMD延伸を最初に行い、続いてTD延伸を行う。
【0055】
乾燥延伸は、通常は乾燥膜を例えばおよそTcd−30℃〜Tmの範囲といったTm以下の温度にさらしながら行う。膜が、ポリエチレンを含む第1および第3の層と、第1の層と第3の層の間に位置するポリプロピレンを含む第2の層とを有する多層膜である実施形態においては、延伸温度は、通常は、例えば約80℃〜約132℃、特に125℃〜132℃または128℃〜131℃といった、約70〜約135℃の範囲の温度にさらした膜で行う。
【0056】
ある実施形態においては、MDの乾燥延伸倍率は、例えば1.2〜1.4といった、約1.1〜約1.5の範囲であり、TDの乾燥延伸倍率は、例えば1.15〜1.25といった、約1.1〜約1.3の範囲であり、MD延伸を最初に行い、続いてTD方向への延伸を行う。
【0057】
延伸率は、延伸方向(MDまたはTD)に3%/秒以上であることが好ましく、この率は、MDおよびTD延伸について独立して選択してもよい。延伸率は、好ましくは5%/秒以上、より好ましくは10%/秒以上、例えば5%/秒〜25%/秒の範囲である。特に重要ではないが、延伸率の上限は、膜の破裂を防ぐために50%/秒であることが好ましい。
制御された膜幅の縮小
【0058】
乾燥延伸に続き、乾燥膜に、第2の乾燥幅から第3の幅への制御された幅の縮小を施すが、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅から第1の乾燥幅の約1.1〜約1.6倍、特に1.3〜1.5倍の範囲である。幅の縮小は、通常は、膜をTcd−30℃以上であるがTm未満である温度にさらしながら行う。例えば、幅の縮小中に、膜を、例えば約127℃〜約132℃、例えば約128℃〜約131℃といった、約70℃〜約135℃の範囲の温度にさらしてもよい。ある実施形態においては、膜幅の減少は、膜をTmよりも低い温度にさらしながら行う。特定の実施形態においては、第3の乾燥幅は、第1の乾燥幅の1.0〜約1.6倍、または1.2倍〜1.5倍の範囲である。
【0059】
制御された幅の縮小中に、TD延伸中に膜がさらされた温度以上の温度に膜をさらすと、最終膜の熱収縮への耐性がより高くなると考えられる。
任意の熱セット
【0060】
所望により、希釈剤の除去後、例えば乾燥延伸の後、制御された幅の縮小の後、またはその両方の後、一回または複数回、膜を熱的に処理(熱セット)する。熱セットにより、結晶が安定化して膜中に均一なラメラ層が形成されると考えられる。ある実施形態においては、熱セットは、膜を、例えば約100℃〜約135℃、例えば約127℃〜約132℃、または約129℃〜約131℃の範囲の温度といった、TcdからTmの範囲の温度にさらしながら行われる。一般に、熱セットは、膜中に均一なラメラ層を形成するのに十分な時間、例えば1〜100秒の範囲の時間行う。ある実施形態においては、熱セットは、一般的な熱セット「熱固定」条件下で実施する。用語「熱固定」は、例えば熱セット中に膜の外周をテンタークリップで保持すること等によって膜の長さおよび幅をほぼ一定に維持しながら行う熱セットを指す。
【0061】
所望により、熱セット工程の後にアニーリング処理を行ってもよい。アニーリングは、膜には荷重をかけない加熱処理であり、例えばベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型(air-floating-type)加熱室等を用いて行ってもよい。アニーリングは、熱セットの後にテンターを緩めた状態で連続的に行ってもよい。アニーリング中、膜を、例えば約60℃〜およそTm−5℃の範囲といった、Tmまたはそれ以下の範囲の温度にさらしてもよい。アニーリングによって微多孔膜の透過性および強度が向上すると考えられる。
【0062】
任意である、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理、およびコーティング処理を、例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載されているように、所望により行ってもよい。
【0063】
所望により、熱セットの前、間、または後にアニーリング処理を行ってもよい。アニーリングは、膜には負荷をかけない加熱処理であり、例えば、ベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型加熱室を用いて行ってもよい。アニーリングは、例えば熱セットの後にテンターを緩めた状態で連続的に行ってもよい。アニーリング中に膜がさらされる温度(アニーリング温度)は、例えば約126.9℃〜128.9℃の範囲であってもよい。アニーリングによって微多孔膜の熱収縮および強度が向上すると考えられる。
【0064】
任意である、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理、およびコーティング処理を、例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載されているように、所望により行ってもよい。
多層微多孔膜の特性
【0065】
ある実施形態においては、膜は、多層微多孔膜である。膜の厚さは、通常は3μm以上の範囲である。例えば膜は、例えば約10μm〜約50μmといった、約5μm〜約200μmの範囲の厚さを有してもよい。膜の厚さは、例えば、縦方向に1cm間隔で10cmの幅にわたって接触式厚さ計(contact thickness meter)により測定することができ、次いで平均値を出して膜厚さを得ることができる。株式会社ミツトヨ製ライトマチック等の厚さ計が好適である。この方法は、後述の通り、熱圧縮後の厚さの変化を測定するのにも好適である。例えば光学的厚さ測定法等の、非接触式厚さ測定方法もまた好適である。
【0066】
所望により、膜は、以下の特性の1つまたは複数を有する。
A.空孔率
【0067】
ある実施形態においては、膜は、例えば約25%〜約80%、または30%〜60%の範囲といった、25%以上の空孔率を有する。膜の空孔率は、膜の実重量と、同じ組成の同等の非多孔膜(同じ長さ、幅、および厚さを有するという意味において同等)の重量とを比較することにより従来法で測定する。次に、以下の式を用いて空孔率を求める:空孔率%=100×(w2−w1)/w2。式中、「w1」は微多孔膜の実重量であり、「w2」は、同じ大きさおよび厚さを有する、同等の非多孔性膜の重量である。
B.正規化透気度
【0068】
ある実施形態においては、膜の正規化透気度(ガーレー値)は400秒/100cm
3/20μm以下である。正規化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=20μm*(X)/T
1の式を用いて、20μmの厚さを有する同等の膜の透気度値に正規化する。式中、Xは、実厚さT
1を有する膜の透気度の実測値であり、Aは、20μmの厚さを有する同等の膜の正規化透気度である。透気度値は、20μmのフィルム厚さに正規化するため、透気度値は「秒/100cm
3/20μm」の単位で表す。ある実施形態においては、正規化透気度は、20.0秒/100cm
3/20μm〜約400秒/100cm
3/20μm、または150秒/100cm
3/20μm〜250秒/100cm
3/20μmの範囲である。
C.正規化突刺強度
【0069】
ある実施形態においては、膜は、例えば130mN/μm〜250mN/μmの範囲といった、130mN/μm以上の突刺強度を有する。突刺強度は、厚さT
1を有する微多孔膜を、末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1mmの針で2mm/秒の速度で突き刺した時に測定した最大荷重、と定義される。この突刺強度を、S
2=1μm*(S
1)/T
1の式(式中、S
1は突刺強度の実測値であり、S
2は正規化突刺強度であり、T
1は膜の平均厚さである)を用いて、1μmの膜厚さにおける値に正規化する。
D.引張強度
【0070】
ある実施形態においては、膜は、例えば58,000〜90,000kPaの範囲といった、55,000kPa以上のMD引張強度、および/または例えば75,000kPa〜110,000kPaの範囲といった、70,000kPa以上のTD引張強度を有する。引張強度は、ASTM D−882Aに従って、MDおよびTDにおいて測定する。
E.引張伸度≧100%
【0071】
引張伸度は、ASTM D−882Aに従って測定する。ある実施形態においては、膜のMDおよびTD引張伸度は、それぞれ例えば150%〜350%の範囲といった、150%以上である。別の実施形態においては、膜のMD引張伸度は、例えば150%〜250%の範囲であり、TD引張伸度は、例えば150%〜250%の範囲である。
F.シャットダウン温度
【0072】
ある実施形態においては、膜は、例えば約132℃〜約138℃の範囲といった、140℃以下のシャットダウン温度を有する。微多孔膜のシャットダウン温度は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2007/052663に開示されている方法により測定する。この方法に従い、微多孔膜を上昇していく温度(5℃/分)にさらし、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン温度は、微多孔膜の透気度(ガーレー値)が100,000秒/100cm
3の時の温度と定義される。微多孔膜の透気度は、透気度計(旭精工株式会社製、EGO-1T)を用いてJIS P8117に従って測定する。
G.破膜温度
【0073】
ある実施形態においては、膜の破膜温度は、例えば171℃〜200℃、または172℃〜190℃の範囲といった、170℃以上である。破膜温度は次のようにして測定する。5cm×5cmの微多孔膜を、それぞれが直径12mmの円形の開口部を有するブロックで挟み、直径10mmの炭化タングステンの球を、円形の開口部内の微多孔膜上に置いた。次いで、膜を5℃/分の速度で上昇する温度にさらす。膜の破膜温度は、球が最初に膜を突き破る時の温度と定義される。膜のメルトダウン温度は、球が試料を完全に貫通する温度、すなわち試料が破壊する温度と定義される。
【0074】
ある実施形態においては、破膜温度は180℃〜190℃の範囲である。膜は、望ましいほどに高い破膜温度を有するため、電気自動車およびハイブリッド電気自動車に動力を供給するために用いる電池等の高出力で大容量のリチウムイオン電池における電池用セパレータとして使用するのに好適である。
H.メルトダウン温度
【0075】
メルトダウン温度は以下の手順で測定する:3mm×50mmの長方形の試料を、試料の長軸がTDと一直線になり、かつ短軸がMDと一直線になるように液体透過性微小層膜から切り出す。この試料を、チャック間距離10mmで、熱機械分析装置(TMA/SS6000 セイコーインスツル株式会社製)にセットする。すなわち、上部チャックから下部チャックまでの距離が10mmである。下部チャックを固定し、上部チャックで試料に19.6mNの荷重をかける。両チャックおよび試料を、加熱可能な管に封入する。30℃で開始し、管の内部の温度を5℃/分の速度で上昇させ、19.6mNの荷重下における試料の長さの変化を0.5秒間隔で測定し、温度の上昇とともに記録する。温度は200℃まで上昇させる。試料のメルトダウン温度は、試料が破壊する時の温度と定義され、通常は約145℃〜約200℃の範囲の温度である。ある実施形態においては、メルトダウン温度は、例えば180℃〜200℃、例えば185℃〜約195℃の範囲といった、180℃以上である。
I.約1%以下の少なくとも1つの平面方向への105℃における熱収縮率
【0076】
ある実施形態においては、膜は、例えば0.5%以下、例えば0.1%〜0.25%の範囲といった、1%以下の少なくとも1つの平面方向(例えばMDまたはTD)への105℃における熱収縮を有する。MDおよびTDへの105℃における膜の収縮は、次のようにして測定する:(i)周囲温度における微多孔膜の試験片の大きさをMDおよびTDの両方について測定し、(ii)微多孔膜の試験片を、荷重をかけずに8時間105℃の温度にて平衡化させ、次いで(iii)膜の大きさをMDおよびTDの両方について測定する。MDおよびTDへの熱(すなわち「熱による」)収縮は、測定結果(i)を測定結果(ii)で割り、得られた商を百分率で表すことによって得ることができる。
J.130℃における熱収縮率
【0077】
ある実施形態においては、膜は、130℃において測定したTD熱収縮率が、例えば1%〜7.5%といった、8%以下である。130℃というのは、一般に充電中および放電中のリチウムイオン二次電池の作動温度範囲内であるが、この温度範囲の上端(シャットダウン)に近いため、例えば8%以下といった比較的低い熱収縮率の値は特に重要性を持ち得る。
【0078】
測定値は、105℃における熱収縮率の測定値とはわずかに異なるが、これは、膜のTDと平行である膜の端が、通常は電池内で固定され、特に膜のMDと平行である端の中心付近においてはTDへの拡大または縮小(収縮)を可能にする自由度が限られている、という事実を反映している。したがって、TDに沿って50mm、MDに沿って50mmの正方形の微多孔性フィルムの試料を、TDと平行である端を(テープ等により)フレームに固定して、MDに35mmでありTDに50mmである開放口を残し、フレームに設置する。次に、試料を取り付けたフレームを30分間130℃の温度で(オーブン等で)熱平衡状態で加熱し、次いで冷却する。一般に、TD熱収縮率によって、MDと平行であるフィルムの端が内側に(フレームの開口の中心に向かって)わずかに弓なりに曲がる。TDへの収縮率(パーセントで表す)は、加熱前の試料のTDの長さを加熱後の試料のTDの(フレーム内の)最短長さで割り100パーセントを掛けたものと等しい。
K.溶融状態における最大熱収縮率
【0079】
膜の平面方向への溶融状態における最大収縮率は以下の手順で測定する。
【0080】
メルトダウン温度の測定において記載したTMA手順を用いて、135℃〜145℃の温度範囲で測定した試料の長さを記録する。膜が収縮し、膜が収縮するにつれてチャック間の距離が減少する。溶融状態における最大収縮率は、23℃で測定したチャック間の試料の長さ(L1:10mmに等しい)から通常は約135℃〜約145℃の範囲で測定した最小長さ(L2に等しい)を引きL1で割ったもの、すなわち[L1−L2]/L1*100%と定義される。TD最大収縮率を測定する場合、使用する3mm×50mmの長方形の試料を、微多孔膜が本プロセスで製造されると同時に、試料の長軸が微多孔膜の横方向と一直線になり、かつ短軸が機械方向と一直線になるように微多孔膜から切り出す。MD最大収縮率を測定する場合、使用する3mm×50mmの長方形の試料を、微多孔膜が本プロセスで製造されると同時に、試料の長軸が微多孔膜の機械方向と一直線になり、かつ短軸が横方向と一直線になるように微多孔膜から切り出す。
【0081】
ある実施形態においては、溶融状態における膜の最大MD熱収縮率は、例えば1%〜25%または2%〜20%の範囲といった、25%以下または20%以下である。ある実施形態においては、溶融状態における膜の最大TD熱収縮率は、例えば1%〜10%または2%〜5.5%の範囲といった、11%以下または6%以下である。
電池
【0082】
本発明の微多孔膜は、例えばリチウムイオン一次電池および二次電池等における、電池用セパレータとして有用である。かかる電池は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2008/016174に記載されている。
【0083】
図1は、2枚の電池用セパレータを備える円筒型リチウムイオン二次電池の例を示す。本発明の微多孔膜は、このタイプの電池の電池用セパレータとして使用するのに好適である。この電池は、第1のセパレータ10と、第2のセパレータ11と、正極シート13と、負極シート12とを備えた巻回型電極アセンブリ1を有する。セパレータの厚さの縮尺は一定の比率ではなく、図示するために大きく拡大してある。巻回型電極アセンブリ1は、例えば、第2のセパレータ11が正極シート13の外側に配置され、第1のセパレータ10が正極シートの内側に配置されるようにして巻回されていてもよい。この例では、
図2に示すように、第2のセパレータ11は巻回型電極アセンブリ1の内面側に配置されている。
【0084】
この例では、
図3に示すように、負極活物質層12bが集電体12aの両側に形成されており、正極活物質層13bが集電体13aの両側に形成されている。
図2に示すように、負極シート12の端部に負極リード20が取り付けられ、正極シート13の端部に正極リード21が取り付けられている。負極リード20は電池蓋27に接続され、正極リード21は電池缶23に接続されている。
【0085】
円筒型の電池について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明のセパレータは、例えば、積層された負極と正極の間に位置するセパレータと平行に交互に接続された負極(1つまたは複数)12および正極(3)13の積層プレートの形態の電極を含有する電池等の、角柱型電池における使用に好適である。
【0086】
電池を組み立てる際、負極シート12、正極シート13、ならびに第1および第2のセパレータ10、11に電解液を含浸させて、セパレータ10、11を通過するイオンの移動を可能にする。含浸処理は、例えば電極アセンブリ1を室温で電解液に浸漬すること等により行うことができる。円筒型リチウムイオン二次電池は、底部に絶縁板22を有する電池缶23に巻回型電極アセンブリ1(
図1参照)を挿入し、電池缶23に電解液を注入し、電極アセンブリ1を絶縁板22で覆い、ガスケット28を介して電池蓋(24、25、26、および27)を電池缶23にかしめることにより製造することができる。電池蓋は、負極端子として機能する。
【0087】
図3(
図1の電池蓋、すなわち負極端子が右側にあるものとする)は、電池の温度が上昇するにつれての(セパレータ製造プロセスに関する)横方向への収縮傾向が少ないセパレータを用いることの利点を図示している。セパレータの役割の1つに、負極活物質層と正極活物質層との接触を防ぐことがある。有意な量のTD熱収縮があった場合、セパレータ10および11の薄い端が電池蓋から剥がれ(
図3の左側に動く)、それにより負極活物質層と正極活物質層とが接触するようになり短絡が生じる。セパレータは、通常は200μm未満とかなり薄い場合があるため、負極活物質層と正極活物質層はかなり接近する場合がある。このため、電池が高温の時のセパレータのTD収縮量をわずかに減少させるだけで、内部短絡に対する電池の耐性を大幅に向上させることができる。よって、シャットダウンが近い温度でのセパレータの熱収縮特性は重要である。
【0088】
電池は、1つまたは複数の電気部品または電子部品からの電源として有用であり、かかる部品としては、例えば変圧器等を含む、抵抗器、コンデンサ、誘導器等の受動素子、電動機および発電機等の電動デバイス、ならびにダイオード、トランジスタ、および集積回路等の電子デバイスが挙げられる。これらの部品を、直列および/または並列電気回路にて電池に接続して電池システムを形成することができる。回路は、直接的または間接的に電池に接続してもよい。例えば、電池から流れる電気は、これらの部品の1つまたは複数の中で電気が消散または蓄積される前に、(例えば二次電池または燃料電池によって)電気化学的に、かつ/または(例えば発電機を動かしている電動機によって)電気機械的に変換することができる。電池システムは、例えば、電気自動車またはハイブリッド電気自動車を動かすための電源として用いることができる。一実施形態においては、電池は、電気自動車またはハイブリッド電気自動車に動力を供給するための電動機および/または発電機に電気的に接続されている。
【0089】
本発明を、本発明の範囲を制限することを意図することなく、下記実施例を参照してより詳細に説明する。
【実施例】
【0090】
実施例1
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
(a)5.62×10
5のMw、4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂68.6重量%と、(b)1.95×10
6のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂1.4重量%と、(c)1.1×10
6のMw、114J/gの融解熱、および5のMWDを有するポリプロピレン樹脂30重量%とをドライブレンドすることにより、第1のポリオレフィン組成物を調製する。パーセンテージは第1のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0091】
得られた第1のポリオレフィン組成物30重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第1の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)70重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第1のポリオレフィン溶液を作成する。重量パーセントは第1のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは210℃および200rpmにて行う。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
【0092】
上記と同様の方法で、(a)5.62
×105のMwおよび4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂82重量%と、(b)1.95×10
6のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂18重量%とをドライブレンドすることにより、第2のポリオレフィン溶液を調製する。パーセンテージは、第2のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0093】
得られた第2のポリオレフィン組成物25重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第2の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)75重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第2のポリオレフィン溶液を作成する。重量パーセントは第2のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは210℃および200rpmにて行う。
(3)膜の製造
【0094】
第1および第2のポリオレフィン溶液を、それぞれの二軸スクリュー押出機から三層押出Tダイへと供給し、そこから押し出して第2のポリオレフィン溶液層/第1のポリオレフィン溶液層/第2のポリオレフィン溶液層の層厚さ比が45.3/9.4/45.3である層状押出物(積層物とも呼ぶ)を製造する。押出物を、20℃に制御された冷却ローラーに通しながら冷却させ、三層ゲル状シートの形態の押出物を製造する。ゲル状シートを、150秒間119.5℃の温度に加熱した後、119.5℃の温度(「二軸延伸温度」)にさらしながら、テンター延伸機で、750%/分の平均変形速度でMDおよびTDのそれぞれに5倍の倍率に(同時に)二軸延伸する。延伸したゲル状シートを120.0℃で18秒間熱処理する。延伸した三層ゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に3分間浸漬して流動パラフィンを除去し、室温で風乾させて乾燥膜を製造する。
【0095】
乾燥延伸の前には、乾燥膜は、最初の乾燥長さ(MD)および最初の乾燥幅(TD)を有する。乾燥膜を、129.5℃の温度にさらしながら1.6倍の倍率にTDに乾燥延伸し、第2の乾燥幅を得る。膜の長さ(MD)は、TD乾燥延伸中、最初の乾燥長さとほぼ等しいままである。TD乾燥延伸に続いて、膜を、129.5℃の温度(「幅縮小温度」)にさらしながら、第2の乾燥幅から1.4倍の最終倍率への制御された幅の縮小(TD)にかける。最終倍率は、乾燥延伸の開始時における最初の膜の幅が基準である。膜の長さ(MD)は、幅の縮小中、第2の乾燥長さとほぼ等しいままである。膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、次いでこの膜を、10分間129.5℃の温度(「熱セット温度」)にさらしながら熱セットし、最終多層微多孔膜を製造する。次いで乾燥膜を乾燥延伸する。
実施例2
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
【0096】
(a)5.62×10
5のMw、4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂68.6重量%と、(b)1.95×10
6のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂1.4重量%と、(c)1.1×10
6のMw、114J/gの融解熱、および5のMWDを有するポリプロピレン樹脂30重量%とをドライブレンドすることにより、第1のポリオレフィン組成物を調製する。パーセンテージは第1のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0097】
得られた第1のポリオレフィン組成物30重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第1の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)70重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第1のポリオレフィン溶液を作成する。重量パーセントは第1のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは210℃および200rpmにて行う。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
【0098】
上記と同様の方法で、(a)5.62×10
5のMwおよび4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂98重量%と、(b)1.95×10
6のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂2重量%とをドライブレンドすることにより、第2のポリオレフィン溶液を調製する。パーセンテージは、第2のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0099】
得られた第2のポリオレフィン組成物30重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第2の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)70重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第2のポリオレフィン溶液を作成する。重量パーセントは第2のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは210℃および200rpmにて行う。
(3)膜の製造
【0100】
第1および第2のポリオレフィン溶液を、それぞれの二軸スクリュー押出機から三層押出Tダイへと供給し、そこから押し出して第2のポリオレフィン溶液層/第1のポリオレフィン溶液層/第2のポリオレフィン溶液層の層厚さ比が45.5/9.0/45.5である層状押出物(積層物とも呼ぶ)を製造する。押出物を、20℃に制御された冷却ローラーに通しながら冷却させ、三層ゲル状シートの形態の押出物を製造する。ゲル状シートを、150秒間119.3℃の温度に加熱した後、119.3℃の温度(「二軸延伸温度」)にさらしながら、テンター延伸機で、710%/分の平均変形速度でMDおよびTDのそれぞれに5倍の倍率に(同時に)二軸延伸する。延伸したゲル状シートを95.0℃で18秒間熱処理する。延伸した三層ゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に3分間浸漬して流動パラフィンを除去し、室温で風乾させて乾燥膜を製造する。
【0101】
乾燥延伸の前には、乾燥膜は、最初の乾燥長さ(MD)および最初の乾燥幅(TD)を有する。乾燥膜を、129.0℃の温度にさらしながら1.5倍の倍率にTDに乾燥延伸し、第2の乾燥幅を得る。膜の長さ(MD)は、TD乾燥延伸中、最初の乾燥長さとほぼ等しいままである。TD乾燥延伸に続いて、膜を、129.0℃の温度(「幅縮小温度」)にさらしながら、第2の乾燥幅から1.3倍の最終倍率への制御された幅の縮小(TD)にかける。最終倍率は、乾燥延伸の開始時における最初の膜の幅が基準である。膜の長さ(MD)は、幅の縮小中、第2の乾燥長さとほぼ等しいままである。膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、次いでこの膜を、10分間129.0℃の温度(「熱セット温度」)にさらしながら熱セットし、最終多層微多孔膜を製造する。次いで乾燥膜を乾燥延伸する。
比較例1
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
【0102】
(a)5.62×10
5のMw、4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂68.6重量%と、(b)1.95×10
6のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂1.4重量%と、(c)1.1×10
6のMw、114J/gの融解熱、および5のMWDを有するポリプロピレン樹脂30重量%とをドライブレンドすることにより、第1のポリオレフィン組成物を調製する。パーセンテージは第1のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0103】
得られた第1のポリオレフィン組成物30重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第1の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)70重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第1のポリオレフィン溶液を作成する。重量パーセントは第1のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは210℃および200rpmにて行う。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
【0104】
上記と同様の方法で、(a)5.62
×105のMwおよび4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂82重量%と、(b)1.95×10
6のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂18重量%とをドライブレンドすることにより、第2のポリオレフィン溶液を調製する。パーセンテージは、第2のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0105】
得られた第2のポリオレフィン組成物25重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第2の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)75重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第2のポリオレフィン溶液を作成する。重量パーセントは第2のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは210℃および200rpmにて行う。
(3)膜の製造
【0106】
第1および第2のポリオレフィン溶液を、それぞれの二軸スクリュー押出機から三層押出Tダイへと供給し、そこから押し出して第2のポリオレフィン溶液層/第1のポリオレフィン溶液層/第2のポリオレフィン溶液層の層厚さ比が45.8/8.4/45.8である層状押出物(積層物とも呼ぶ)を製造する。押出物を、20℃に制御された冷却ローラーに通しながら冷却させ、三層ゲル状シートの形態の押出物を製造する。ゲル状シートを、120秒間117.0℃の温度に加熱した後、117.0℃の温度(「二軸延伸温度」)にさらしながら、テンター延伸機で、940%/分の変形速度でMDおよびTDのそれぞれに5倍の倍率に(同時に)二軸延伸する。延伸したゲル状シートを95.0℃で15秒間熱処理する。延伸した三層ゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に3分間浸漬して流動パラフィンを除去し、室温で風乾させて乾燥膜を製造する。
【0107】
乾燥延伸の前には、乾燥膜は、最初の乾燥長さ(MD)および最初の乾燥幅(TD)を有する。乾燥膜を、128.7℃の温度にさらしながら1.6倍の倍率にTDに乾燥延伸し、第2の乾燥幅を得る。膜の長さ(MD)は、TD乾燥延伸中、最初の乾燥長さとほぼ等しいままである。TD乾燥延伸に続いて、膜を、128.7℃の温度(「幅縮小温度」)にさらしながら、第2の乾燥幅から1.4倍の最終倍率への制御された幅の縮小(TD)にかける。最終倍率は、乾燥延伸の開始時における最初の膜の幅が基準である。膜の長さ(MD)は、幅の縮小中、第2の乾燥長さとほぼ等しいままである。膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、次いでこの膜を、10分間128.7℃の温度(「熱処理温度」)にさらしながら熱処理し、最終多層微多孔膜を製造する。次いで乾燥膜を乾燥延伸する。
比較例2
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
【0108】
(a)5.62×10
5のMw、4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂68.6重量%と、(b)1.95×10
6のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂1.4重量%と、(c)1.1×10
6のMw、114J/gの融解熱、および5のMWDを有するポリプロピレン樹脂30重量%とをドライブレンドすることにより、第1のポリオレフィン組成物を調製する。パーセンテージは第1のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0109】
得られた第1のポリオレフィン組成物30重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第1の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)70重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第1のポリオレフィン溶液を作成する。重量パーセントは第1のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは210℃および200rpmにて行う。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
【0110】
上記と同様の方法で、(a)5.62×10
5のMwおよび4.05のMWDを有する第1のポリエチレン樹脂82重量%と、(b)1.95×10
6のMwおよび5.09のMWDを有する第2のポリエチレン樹脂18重量%とをドライブレンドすることにより、第2のポリオレフィン溶液を調製する。パーセンテージは、第2のポリオレフィン組成物の重量が基準である。組成物中の第1のポリエチレン樹脂は、135℃のTmおよび100℃のTcdを有する。
【0111】
得られた第2のポリオレフィン組成物25重量%を、58mmの内径および42のL/Dを有する第2の強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)70重量%を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、第2のポリオレフィン溶液を作成する。重量パーセントは第2のポリオレフィン溶液の重量が基準である。溶融ブレンドは210℃および200rpmにて行う。
(3)膜の製造
【0112】
第1および第2のポリオレフィン溶液を、それぞれの二軸スクリュー押出機から三層押出Tダイへと供給し、そこから押し出して第2のポリオレフィン溶液層/第1のポリオレフィン溶液層/第2のポリオレフィン溶液層の層厚さ比が45.3/9.4/45.3である層状押出物(積層物とも呼ぶ)を製造する。押出物を、20℃に制御された冷却ローラーに通しながら冷却させ、三層ゲル状シートの形態の押出物を製造する。ゲル状シートを、129秒間115.5℃の温度に加熱した後、115.5℃の温度(「二軸延伸温度」)にさらしながら、テンター延伸機で、880%/分の変形速度でMDおよびTDのそれぞれに5倍の倍率に(同時に)二軸延伸する。延伸したゲル状シートを95.0℃で16秒間熱処理する。延伸した三層ゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に3分間浸漬して流動パラフィンを除去し、室温で風乾させて乾燥膜を製造する。
【0113】
乾燥延伸の前には、乾燥膜は、最初の乾燥長さ(MD)および最初の乾燥幅(TD)を有する。乾燥膜を、127.3℃の温度にさらしながら1.6倍の倍率にTDに乾燥延伸し、第2の乾燥幅を得る。膜の長さ(MD)は、TD乾燥延伸中、最初の乾燥長さとほぼ等しいままである。TD乾燥延伸に続いて、膜を、127.3℃の温度(「幅縮小温度」)にさらしながら、第2の乾燥幅から1.3倍の最終倍率への制御された幅の縮小(TD)にかける。最終倍率は、乾燥延伸の開始時における最初の膜の幅が基準である。膜の長さ(MD)は、幅の縮小中、第2の乾燥長さとほぼ等しいままである。膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、次いでこの膜を、10分間127.3℃の温度(「熱セット温度」)にさらしながら熱セットし、最終多層微多孔膜を製造する。次いで乾燥膜を乾燥延伸する。
比較例3
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
【0114】
(a)5.6×10
5のMwおよび4.05のMw/Mnを有する第1のポリエチレン82%、(b)1.9×10
6のMwおよび5.09のMw/Mnを有する第2のポリエチレン18%を含む第1のポリオレフィン組成物を、ドライブレンドにより調製する。組成物中のポリエチレン樹脂は、135℃の融点および100℃の結晶分散温度を有する。
【0115】
得られた第1のポリオレフィン組成物25重量部を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)65質量部を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給して、ポリオレフィン溶液を作成する。溶融ブレンドを210℃および200rpmにて行って第1のポリオレフィン溶液を調製する。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
【0116】
第2のポリオレフィン溶液を、以下のことを除いて上記と同様の方法で調製する。第2のポリオレフィン組成物の重量で、(a)63.7%の、5.6×10
5のMwおよび4.05のMw/Mnを有する第1のポリエチレン、(b)1.3%の、1.9×10
6および5.09のMw/Mnを有する第2のポリエチレン、ならびに(c)35%の、1.6×10
6のMw、5.2のMw/Mn、および114.0J/gのΔHmを有するポリプロピレン樹脂を含む第2のポリオレフィン組成物を、ドライブレンドにより調製する。組成物中のポリエチレン樹脂は、135℃の融点および100℃の結晶分散温度を有する。得られた第2のポリオレフィン組成物30重量部を、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、流動パラフィン(40℃で50cst)70質量部を、サイドフィーダー溶融ブレンドを210℃および200rpmにて行って第2のポリオレフィン溶液を調製する。
(3)膜の製造
【0117】
第1および第2のポリオレフィン溶液を、それぞれの二軸スクリュー押出機から三層押出Tダイへと供給し、そこから押し出して第1のポリオレフィン溶液層/第2のポリオレフィン溶液層/第1のポリオレフィン溶液層の層厚さ比が46.45/7.1/46.45である押出物(積層物とも呼ぶ)を形成する。押出物を20℃に制御された冷却ローラーに通しながら冷却し、三層ゲル状シートを形成し、これを、テンター延伸機で、機械(縦)および横方向の両方に5倍の倍率に119.3℃にて同時二軸延伸する。延伸した三層ゲル状シートを、20cm×20cmのアルミニウムフレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレン浴に浸漬して3分間の100rpmの振動で流動パラフィンを除去し、室温の気流で乾燥させる。乾燥膜を、127.3℃の温度にさらしながら、バッチ延伸機で横方向(TD)に1.5倍の倍率に再延伸した後、同じ温度で1.3倍のTD倍率に緩和する(テンタークリップはより狭い幅に再調整)(倍率は、再延伸前の乾燥延伸前の膜の幅(TD)が基準)。再延伸した膜はバッチ延伸機に固定されたままであるが、これを127.3℃で10分間熱セットして三層微多孔膜を製造する。
【0118】
多層微多孔膜の実施例および比較例の組成および処理条件を、表1に示す。実施例および比較例の多層微多孔膜の特性を、表2に示す。
【表1】
【表2】
【0119】
表2から、実施例1および2の微多孔膜は、9.5%以下の130℃における熱収縮率、特に9.5%以下の130℃におけるTD熱収縮率等のバランスの良い重要な特性を示していることがわかる。比較例1および2の膜と比較すると、本発明の実施例1および2は、130℃および溶融状態において熱収縮率を改善させながらも良好な105℃の熱収縮率を維持している。一方比較例3は、溶融状態において熱収縮率が小さく105℃の熱収縮率は良好であるが、130℃における特性は比較的劣っている。実施例1および2は、透過度および突刺等の他の特性を維持しながらも比較例では達成されない条件の範囲で熱収縮特性を実現する膜を提供している。
【0120】
バランスの良い特性を有する本発明の多層微多孔膜、およびかかる多層微多孔膜の電池用セパレータとしての使用により、優れた安全性、耐熱性、保持特性、および生産性を有する電池が提供される。
【0121】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての権限について、完全に組み込まれる。
【0122】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0123】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。