【実施例】
【0039】
実施例において適用された塩は、Sanal
(登録商標) SQ(AkzoNobel社)である。塩化ナトリウム組成物のpHは、塩化ナトリウム組成物10gを90gの水中に溶解させた後、従来法において21℃で測定する。塩中の粘着性の水は、35℃及び相対湿度40%で4日間、または120℃で2時間のいずれかで乾燥させた後の重量損失測定によって決定する。
【0040】
固結化は、3連にて、粉体流分析装置(Powder Flow Analyzer)、又は略して流量計(TA−XT21型、Stable Micro Systems社)で測定される。容器には約50gの塩サンプルを充填し、1kgの重りを用いて圧縮し、乾燥空気を用いて2時間パージする工程によって予備調節する。その後、スクリュー様動翼を塩中に進入させる。流動計は連続的に、動翼によって塩に適用された力及びトルクを測定する。力が生成物中の移動深さに対してプロットされる場合、曲線下の積分は消費エネルギーの量と同等である。CE4値は、およそ4mmの動翼移動後の4mmの床高さの明確な範囲に渡って測定されたNmmでの固結化エネルギーである。固結化エネルギーが高いほど、固結化が大きくなる(そこで固結化エネルギーが低いほど、結果は良好である)。この方法の精度は、2s=35%であると推定されている。結果に及ぼすその他の影響、例えば空気湿度を排除するためには、相対固結化エネルギーによって表されるものと同一の連続した測定内の傾向に着目することが推奨される。
【0041】
相対固結化エネルギーに対する固結防止添加物の作用を測定するための標準化試験
Sanal SQ塩は1gの水を添加すると49±0.5gであると計量されたので、そこで塩上では2重量%に達する。そこで、所望量の抗固結化剤を添加した。抗固結化剤を含む塩を、小さなプラスチック袋内でおよそ5分間手動で塩を混練する工程によってしっかりと混合した。サンプルを、流動計上で1kgの重りを用いて圧縮し、解放した。サンプルを、底部を介して導入された乾燥空気(90L/時)で少なくとも2時間パージした。蒸発した水の量を、計量によって測定した。Nmmでの固結化エネルギーを、流量計によって測定した。
【0042】
(比較例A)
従来型固結防止添加物の固結化エネルギー
従来型の固結防止剤である既知量の濃フェロシアン化ナトリウム(Na
4Fe(II)(CN)
6)溶液を上述したSanal SQ塩に加え、2.5ppmのフェロシアン化物、即ち0.7ppmのFe(II)が塩上に生じた。29Nmmの固結化エネルギーを測定した。フェロシアン化ナトリウムは、Sigma社から入手した。
【0043】
(実施例1と比較例B及びC)
相対
固結化エネルギーに対する
固結防止添加物の効果
本発明による
固結防止添加物の固結防止の性能を試験するために、
固結化エネルギーを、上述したように標準化試験を使用して測定した。先に説明したように、
固結化エネルギーが低いほど、
抗固結剤は良好に機能する。各実験では、FeCl
3として加えた3ppm Fe(III)を塩化ナトリウムに適用したが、酒石酸(TA)の量及び異性体比は相違した(表1を参照されたい)。TAの量が大きいほど、塩に適用された有機物質(「有機物質負荷」)の量が多いことを意味する。これらの結果を従来型用量レベルでの従来型
抗固結剤(2.5ppmのフェロシアン化物)の性能と比較した(=100%相対
固結化エネルギー)。比較例Aを参照されたい。
【表1】
【0044】
本発明による、酒石酸の65重量%がメソ異性体である固結防止添加物が最善の結果をもたらすことは明白である(実施例1)。本発明による固結防止剤を用いると、従来型フェロシアン化物を用いた場合(比較例A)よりはるかに低い固結化エネルギーが測定される。
【0045】
比較例Cによる、即ち酒石酸の量は同一であるが、100重量%がメソ異性体からなる固結防止添加物を用いると、固結化エネルギーは実施例1の固結防止添加物を用いた場合の約2倍となる。比較例Bによる酒石酸の総量の33重量%がメソ異性体である固結防止添加物を用いると、実施例1で得られたエネルギーと同様の低い固結化エネルギーに達するには2倍量のTAが必要とされることが見いだされた。
【0046】
(実施例2及び3と比較例D及びE)
固結防止添加物中のDL/メソ比の効果
固結防止添加物の最適組成を上述した標準方法によって調製した4種の塩サンプル中の
固結化エネルギーを測定する工程によってさらに実証した。各サンプル中において、Fe(III)=2ppm及びモル比Fe:TA=1:1.5であった(TAは総TAを指す)。添加物の量は、全4種のサンプルについて同一であった;しかしメソ−酒石酸:DL−酒石酸の比率は相違した。以下の相対
固結化エネルギー値は、100%相対固
結化エネルギーとして選択された実施例3を用いて得た。
【表2】
【0047】
本発明による、酒石酸の80重量%がメソ異性体である固結防止添加物は、最良の結果をもたらす(実施例3)。比較例Dによる、酒石酸の33重量%がメソ異性体である固結防止添加物を用いると、固結化エネルギーは実施例3の固結防止添加物を用いた場合の約2倍となる。比較例Eによる、100重量%がメソ異性体からなる固結防止添加物を用いると、固結化エネルギーは実施例2及び3について得られたエネルギーより高くなる。
【0048】
(実施例4)
本発明による固結防止添加物の調製
実施例4a:L−酒石酸を用いた固結防止添加物の調製
容量200Lの蒸気加熱されたジャケット付き容器内で、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液156.6kg(Sigma社製、分析NaOH濃度:49.6重量%)を脱塩水18.4kgの及びL−酒石酸106.1kg(Caviro Distillerie社、イタリア)と混合した。中和が起こり、48.7重量%のL−酒石酸二ナトリウム塩、7.5重量%の遊離NaOH、及び43.7重量%の水を含有する溶液が生じた。この混合物を大気圧下での全還流下で沸騰させ、計24時間攪拌した。この期間中にサンプルを採取し、L−酒石酸塩からメソ−酒石酸塩への転化率を
1H−NMRによって決定した。結果を表3に示す。合成工程中に、メソ−酒石酸塩の一部はさらに反応してD−酒石酸塩となった。
【表3】
【0049】
沸騰からおよそ4.0〜4.5時間後、混合物は濁り、溶液から固体が沈降していた。残りの実験期間中にはスラリー密度が上昇した。
【0050】
キラルHPLCによって、D−酒石酸、L−酒石酸及びメソ−酒石酸の絶対量を決定した(使用したカラム:Chirex 3126 (D)−ペニシラミン(配位子交換)(表4を参照されたい。)。
HPLC条件:
ガードカラム:なし
分析カラム:Chirex 3126 (D)50×4.6mm ID;d
p=5μm
移動相:90%溶離剤Aと10%溶離剤Bとの混合液。濾過及び脱気した。
溶離剤A:1mM 酢酸銅(II)及び0.05M 酢酸アンモニウム
pH=4.5(酢酸を使用する)
溶離剤B:イソプロパノール
分離モード:定組成
流量:2.0mL/分
温度:50℃
注入量:2μL
検出:280nmでのUV
【表4】
【0051】
HPLCの結果は、
1H−NMR結果を確認するものである。
塩化ナトリウム組成物を固結防止性にするために塩化ナトリウム組成物上にスプレーするために適切な固結防止処理溶液は、以下のように調製した:
実施例4aの反応生成物40.126kgに脱塩水15.241kg及びL−酒石酸3.00kgを加えると酒石酸の全量の66%がメソ−酒石酸である透明な溶液が得られた。この混合物99.98gに40重量%のFeCl
3水溶液49.55gを加えた。50重量%の水酸化ナトリウム水溶液16.6gを使用して、pHを4.35に設定した。最後に、脱塩水1163.6gを加えると、所望の最終鉄濃度が得られた。
【0052】
得られたこの固結防止処理溶液は、0.56重量%のFe(III)、1.55重量%のメソ−酒石酸及び0.79重量%のDL−酒石酸から構成された。塩化ナトリウム組成物1トン当たり0.5Lの量で塩化ナトリウム組成物上にスプレーすると、結果として生じた固結防止塩化ナトリウム組成物中には3ppmの鉄及び12ppmの酒石酸が存在した。
【0053】
実施例4b:DL−酒石酸を用いた固結防止添加物の調製
容量30Lの蒸気加熱したジャケット付き容器内で、50重量%の水酸化ナトリウム水溶液15.41kg(Sigma社製)を脱塩水1.815kg及びラセミDL−酒石酸10.592kg(Jinzhan社製、寧海化学工場、中国)と混合した。この混合物を大気圧下で還流させながら沸騰させ、計190時間攪拌した。この期間中にサンプルを反応混合物から採取し、DL−酒石酸からメソ−酒石酸への転化率を
1H−NMRによって決定した(表5を参照されたい)。
【表5】
【0054】
固体は、全実験を通して存在した。
キラルHPLCによって、メソ−酒石酸及びDL−酒石酸の絶対量を測定した(使用したカラム:Chirex(登録商標) 3126(D)−ペニシラミン(配位子交換))(表6を参照されたい)。
【表6】
【0055】
両方の原料(実施例4a及び4b)も同一最終生成物である、主としてメソ−酒石酸及びD体とL体とをいくらか含有する酒石酸混合物をもたらすことが認められ、D体:L体の比は経時的に50:50(熱力学的平衡)に近付く。出発材料としてのL−酒石酸は、より迅速な転化を生じさせる。その他のプロセスパラメーター、例えばNaOH濃度は同様に転化率に影響を及ぼす。
【0056】
実施例4aに記載した方法と同一方法で作業を実施した。
【0057】
(比較例F)
より高いNaOH含量及び低い酒石酸二ナトリウム含量が及ぼす作用
比較例F(i):出発材料としてのL−酒石酸
容量1Lの反応容器内で、NaOH溶液606.04g(50重量%のNaOH及び50重量%の水を含有)を水414.40g及びL−酒石酸96.70gと混合した。混合すると、11.2重量%のL−酒石酸二ナトリウム、22.5重量%のNaOH、及び66.3重量%の水を含む混合物が得られた。この混合物を加熱し、継続的に攪拌しながら還流下の大気圧沸騰条件(T
boil:約110℃)で26時間維持した。透明な溶液が得られた。この液体から規則的な間隔でサンプルを採取し、メソ−酒石酸含量、DL−酒石酸含量、及び酢酸含量について
1H−NMRによって分析した(D−及びL−エナンチオマーの識別を
1H−NMRによって実施することはできなかった)。
【0058】
1H−NMR分析は、約40重量%(酒石酸の総量に基づく)のメソ体が得られるまでL−酒石酸がメソ−酒石酸に転化されることを示した(
表7を参照されたい)。その後、さらなる長時間の沸騰はメソ−酒石酸への転化の増加を生じさせなかった。しかし、副生成物の酢酸塩の量は、時間と共に約1重量%まで増加した。
【0059】
およそ6時間沸騰させた後、少量の固体が出現した。
1H−NMR分析及びIR分析は、この固体が主として酒石酸分解生成物であるシュウ酸ナトリウムであることを示した。
【表7】
【0060】
比較例F(ii):出発材料としてのメソ−酒石酸塩とDL−酒石酸塩との混合物
11.4重量%の酒石酸二ナトリウム(それらの内78重量%はメソ−酒石酸塩であり、22重量%はDL−酒石酸塩であった)、21.8重量%のNaOH、及び66.8重量%の水を含有する1,470gの混合物を調製した。実際的な理由から、この混合物は、NaOH溶液、水、及び実施例4aに記載の方法によって調製した反応混合物から調製した。これは、出発材料が、酒石酸二ナトリウムのメソ体:DL体の比を除いて、全ての面において
比較例F(i)の出発混合物と類似することを意味している。この混合物を加熱し、継続的に攪拌しながら還流下の大気圧沸騰条件(T
boil:約110℃)で26時間維持した。透明な溶液が得られた。定期的な間隔にて液体からサンプルを採取し、メソ−酒石酸含量、DL−酒石酸含量、及び酢酸含量について
1H−NMRによって分析した(D−及びL−エナンチオマーの識別をNMRによって実施することはできなかった)。
【0061】
1H−NMR分析は、メソ−酒石酸が、約40重量%(酒石酸の総量に基づく)のメソが得られるまでDL−酒石酸に転化されることを示した(
表8を参照されたい)。およそ22時間沸騰させた後に平衡に達した。しかし、副生成物の酢酸塩の量は、時間と共に約1重量%まで増加した。
【0062】
およそ6時間沸騰させた後、少量の固体が出現した。
1H−NMR分析及びIR分析は、この固体が主として酒石酸分解生成物であるシュウ酸ナトリウムであることを示した。
【表8】
【0063】
詳細に例示するために、両方の実験の進行を
図1に示した。
比較例F(i)の結果は、実線で表示した(−◇−はメソ−酒石酸の量を表し、−■−はD−及びL−酒石酸の結合量を表す)。
比較例F(ii)の結果は点線で表示した(- -◇- -はメソ−酒石酸の量を表し、- -■- -はD−酒石酸及びL−酒石酸の結合量を表す)。
約6時間後に平衡に達し、のメソ−酒石酸が約40重量%であり、D−酒石酸及びL−酒石酸が60重量%のであることが認められた。
【0064】
(比較例G)
少ない酒石酸二ナトリウム含量が及ぼす作用
比較例G(i):出発材料としてのL−酒石酸
比較例F(i)に類似する実験において、1,616gのNaOH溶液(50重量%のNaOH及び50重量%の水を含有)を水2,964.5g及びL−酒石酸759.5gと混合した。混合後、この酸を中和すると、18.4重量%のL−酒石酸二ナトリウム、7.5重量%のNaOH、及び74.1重量%の水を含有する混合物が得られた。この混合物を加熱し、46時間に渡って継続的に攪拌しながら還流下の大気圧沸騰条件(T
boil:約110℃)で維持した。透明な溶液が得られた。定期的な間隔にて液体からサンプルを採取し、メソ−酒石酸、DL−酒石酸、及び酢酸含量について
1H−NMRによって分析した(D−及びL−エナンチオマーの識別をNMRによって実施することはできなかった)。
【0065】
1H−NMR分析は、L−酒石酸が、約35重量%(酒石酸の総量に基づく)のメソが得られるまでメソ−酒石酸に転化されることを示した(
表9を参照されたい)。およそ25時間沸騰させた後、メソ−酒石酸への転化の増加は観察されなかった。副生成物の酢酸塩の量は、時間と共に約0.2重量%まで増加した。
【表9】
【0066】
比較例G(ii):出発材料としてのメソ酒石酸塩とDL−酒石酸との混合物
18.6重量%の酒石酸二ナトリウム(それらの内78重量%はメソ−酒石酸塩であり、22重量%はDL−酒石酸塩であった)、7.6重量% NaOH、及び73.7重量%の水を含有する混合物6.30kgを調製した。実際的な理由から、この混合物は、実施例4aに記載の方法に従って、NaOH溶液(50%の水中の50% NaOH)、水、及び実施例4aに記載の方法によって調製した反応混合物から調製した。この出発混合物は、酒石酸中のメソ:DL異性体比を除いて、全ての面において
比較例G(i)の出発混合物と類似する。この混合物を加熱し、継続的に攪拌しながら還流下の大気圧沸騰条件(T
boil:約110℃)で53時間維持した。透明な溶液が得られた。定期的な間隔にて液体からサンプルを採取し、メソ−酒石酸含量、DL−酒石酸含量、及び酢酸含量について
1H−NMRによって分析した(D−及びL−エナンチオマーの識別をNMRによって実施することはできなかった)。
【0067】
1H−NMR分析は、約34重量%(酒石酸の総量に基づく)のメソが得られるまでメソ−酒石酸がDL−酒石酸に転化されることを示した(
表10を参照されたい)。およそ31時間後、平衡に達した。しかし、副生成物の酢酸塩の量は時間と共に増加し、46時間後に約0.4重量%まで増加した。
【表10】
【0068】
さらに例示するために、
比較例G(i)及びG(ii)からの実験を
図2に示した。
比較例G(i)の結果は実線で表示した(−◇−はメソ−酒石酸の量を表し、−■−はD−及びL−酒石酸の合算量を表す)。
比較例G(ii)の結果は点線で表した(- -◇- -はメソ−酒石酸の量を表し、- -■- -はD−酒石酸及びL−酒石酸の合算量を表す)。
【0069】
このより少量のNaOH含量では、平衡は約34重量%のメソ−酒石酸及び66重量%のDL−酒石酸(酒石酸の総量中)に位置する;副生成物の酢酸塩の生成は、
比較例Fにおけるものよりもかなり少なかった。反応はより緩徐であった。