(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
i)単量体である3,3’−ジアミノベンジジン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、及び共単量体である芳香族ジカルボン酸をアルゴンガス雰囲気下で重合溶媒に溶解させて、130〜150℃で2〜5時間撹拌する段階と、
ii)前記i)段階の反応物を170〜180℃に昇温して、12〜15時間重縮合する段階と、
iii)前記ii)段階で得られた重合体溶液を脱イオン水に沈澱させた後、残存する重合溶媒を除去する段階と、
iv)60〜100℃の真空オーブンで乾燥させて、重合体粉末を収得する段階と、
を含むカルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造方法。
前記i)段階の共単量体である芳香族ジカルボン酸は、4,4’−オキシビス(安息香酸)、ジフェン酸(diphenic acid)、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(安息香酸)、テレフタル酸、及びイソフタル酸からなる群から選択された何れか1つのことを特徴とする請求項2に記載のカルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造方法。
前記i)段階の重合溶媒は、ポリリン酸、または五酸化リンとメタンスルホン酸との混合溶媒であることを特徴とする請求項2に記載のカルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造方法。
前記i)段階の有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN−メチルピロリドン(NMP)からなる群から選択された何れか1つのことを特徴とする請求項6に記載のカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリベンズイミダゾール系高分子は、他の芳香族高分子に比べて高密度を有し、500℃以上の熱分解温度、400℃以上のガラス転移温度を表わすものであって、現在まで知られた高分子のうち、熱的、化学的、物理的の安定性が最も優れて、多様な分野に活用されている。
【0003】
しかし、このようなポリベンズイミダゾールは、結晶性が非常に高くて機械的強度に優れる一方、有機溶媒に対する溶解度が落ち、ほとんどのガスに対する透過性が低くて、ガス分離膜に使用が制限的であるが、これは、高分子鎖に存在するイミダゾール環の水素分子によって鎖間の水素結合が起こり、これにより、高分子構造は、堅固になって高分子鎖のパッキングが起こるためであると知られている。したがって、一部の研究者は、高分子鎖のパッキングを阻害し、高分子鎖の回動を減少させる努力をしており、高分子鎖間の自由体積を増加させて、ガス透過度を向上させるために、高分子主鎖の改質を研究した。
【0004】
このような研究のうちからポリベンズイミダゾールの固有の低溶解度の特性によって、加工性が落ち、応用に限界があった問題点を乗り越えようとポリベンズイミダゾールの溶解度を増加させるための試みがあったが、P.R.Srinivasanらは、ポリベンズイミダゾール主鎖にカルド基としてフルオレンを導入したポリベンズイミダゾールを合成して溶解度を向上させながらも、熱的安定性はそのまま保持することを報告しているが(非特許文献1)、その合成されたポリベンズイミダゾールをフィルム状に成形してガス分離膜として使った例はなかったが、これは、たぶんポリベンズイミダゾールをフィルム状に成形することはできても、ポリベンズイミダゾールの構造的の特性上、成形されたフィルムがあまりにも壊れやすくて、応用が難しかった点に起因したと予想することができる。
【0005】
また、ポリベンズイミダゾールをステンレス鋼鉄支持層の外部表面にコーティングした複合膜(中問層:ジルコニア)を使って、ガス透過度を測定した結果が報告されたことがあるが(非特許文献2)、これは、高温の合成ガスから水素、二酸化炭素の透過度−選択度に関するものであって、ポリベンズイミダゾール系単一膜を使った酸素透過度に対しては、研究がなされていない。
【0006】
一方、Guey−Sheng Liouらは、高分子主鎖にカルド基として、フルオレンを導入した全芳香族ポリアミド(アラミド)、ポリエステル(ポリアリレート)、及びポリ(1,3,4−オキサジアゾール)を合成して、高分子の溶解度を向上させ、その合成された高分子をフィルムで成形することによって、発光特性に優れることを確認し、高分子発光素子の青色発光物質として応用されうることを報告しているが(非特許文献3)、ガス分離膜として使うことができることについては、示唆も暗示もされていない。
【0007】
また、ポリベンズイミダゾールと熱的特性、機械的物性が類似したポリイミド主鎖にカルド基を導入したポリイミド系単一膜を使って、ガス透過度を考察した例もあるが、これは、窒素及び二酸化炭素の透過度−選択度に限定されている(特許文献1)。
【0008】
したがって、本発明では、高耐蝕性及び熱的・化学的安定性を保持しながらも、ポリベンズイミダゾール鎖間の間隔を広げて酸素透過度が大きく向上したポリベンズイミダゾールを合成し、製膜してガス分離膜を製造した。特に、On Board Inert Gas Generation System(OBIGGS)に使われる高分子は、航空機エンジンの空気温度である最小90℃以上で耐熱性が要求され、航空機の燃料タンク内に不活性ガスである窒素に対する酸素透過度及び選択度に優れていなければならないので、本発明によって製造されたポリベンズイミダゾールガス分離膜は、OBIGGSに適した素材として活用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記問題点を勘案して案出されたものであって、本発明の目的は、従来のポリベンズイミダゾールに比べて溶解度が向上し、熱的安定性を保持しながらも、機械的物性に優れて、フィルム状に製膜が可能であり、従来のポリベンズイミダゾールの低いガス透過度を向上させて、ガス分離膜として使用できるように、ガス透過度、その中でも、酸素透過度が大きく向上したカルドポリベンズイミダゾール共重合体、それを利用したガス分離膜及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記のような目的を果たすための本発明は、下記の化学式1で表される反復単位を有するカルドポリベンズイミダゾール共重合体を提供する。
【0013】
【化1】
前記化学式1で、0.05≦x≦0.5、0.5≦y≦0.95であり、x+y=1である。
【0014】
また、本発明は、i)単量体である3,3’−ジアミノベンジジン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、及び共単量体である芳香族ジカルボン酸をアルゴンガス雰囲気下で重合溶媒に溶解させて、130〜150℃で2〜5時間撹拌する段階と、ii)前記i)段階の反応物を170〜180℃に昇温して、12〜15時間重縮合する段階と、iii)前記ii)段階で得られた重合体溶液を脱イオン水に沈澱させた後、残存する
重合溶媒を除去する段階と、iv)60〜100℃の真空オーブンで乾燥させて、重合体粉末を収得する段階と、を含むカルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造方法を提供する。
【0015】
前記i)段階の共単量体である芳香族ジカルボン酸は、4,4’−オキシビス(安息香酸)、ジフェン酸(diphenic acid)、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(安息香酸)、テレフタル酸、及びイソフタル酸からなる群から選択された何れか1つのことを特徴とする。
【0016】
前記i)段階の重合溶媒は、ポリリン酸、または五酸化リンとメタンスルホン酸との混合溶媒であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記化学式1で表される反復単位を有するカルドポリベンズイミダゾール共重合体を利用したガス分離膜を提供する。
【0019】
また、本発明は、i)カルドポリベンズイミダゾール共重合体粉末を有機溶媒に溶解させて、カルドポリベンズイミダゾール共重合体溶液を準備する段階と、ii)前記i)段階のカルドポリベンズイミダゾール共重合体溶液を気孔が形成された注射器フィルターで濾す段階と、iii)前記ii)段階で得た溶液を平らなガラスに塗布する段階と、iv)60〜100℃の真空オーブンで乾燥させて、透明なカルドポリベンズイミダゾール共重合体膜を得る段階と、を含むカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜の製造方法を提供する。
【0020】
前記i)段階の有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、及びN−メチルピロリドン(NMP)からなる群から選択された何れか1つのことを特徴とする。
【0021】
前記i)段階のカルドポリベンズイミダゾール共重合体溶液は、2〜15重量%濃度であることを特徴とする。
【0022】
前記iv)段階で得られる透明なカルドポリベンズイミダゾール共重合体膜は、その厚さが30〜60μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によって製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体は、従来のポリベンズイミダゾール重合体に比べて溶解度が向上し、熱的安定性を保持しながらも、機械的物性に優れて、フィルム状に製膜が可能であり、ガス透過度、その中でも、酸素透過度が顕著に向上したガス分離膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明によるカルドポリベンズイミダゾール共重合体とその製造方法について詳しく説明する。
【0026】
まず、本発明では、ポリベンズイミダゾール反復単位を構成するための反応物であるテトラアミン単量体としては、下記の化学式Iの3,3’−ジアミノベンジジンを、芳香族ジカルボン酸単量体としては、下記の化学式IIの9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンを使った。
【0028】
【化3】
前記化学式IIの9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンは、ポリベンズイミダゾール反復単位内のカルド基であって、ポリベンズイミダゾール鎖間の間隔を広げて溶解度及びガス透過度の向上に寄与する。
【0029】
また、反応物である共単量体として、下記の化学式IIIの4,4’−オキシビス(安息香酸)を使って、本発明のカルドポリベンズイミダゾール共重合体を合成する。
【0030】
【化4】
前記化学式IIIの4,4’−オキシビス(安息香酸)からポリベンズイミダゾール主鎖に芳香族エーテル基が導入されることによって、ポリベンズイミダゾールの固有の壊れやすい特性が改善されて、機械的物性が大きく向上する。
【0031】
本発明では、下記の化学式1で表される反復単位を有するカルドポリベンズイミダゾール共重合体を提供する。
【0032】
【化5】
前記化学式1で、0.05≦x≦0.5、0.5≦y≦0.95であり、x+y=1である。
【0033】
ここで、x、yは、それぞれカルドポリベンズイミダゾール共重合体反復単位内の構造単位のmol含量であって、前記化学式Iの3,3’−ジアミノベンジジン1molに対して反応する化学式IIIの4,4’−オキシビス(安息香酸)と化学式IIの9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンとのmol比に相応する。
【0034】
本発明では、従来のポリベンズイミダゾール単一重合体とは異なって、ポリベンズイミダゾール共重合体を提供するものであって、共単量体である化学式IIIの4,4’−オキシビス(安息香酸)に起因するxのmol含量を調節することが重要であるので、xの値が0.05未満であれば、カルドポリベンズイミダゾール共重合体の機械的物性が落ち、0.5以上であれば、機械的物性が向上するが、ガス透過度が落ちることができるので、前記化学式1で限定したx、yの範囲が望ましい(x+y=1であるために、xの値によって、yの値は、そのまま決定される)。
【0035】
次いで、本発明によるカルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造方法を詳しく説明する。
【0036】
本発明は、i)単量体である3,3’−ジアミノベンジジン、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン、及び共単量体である芳香族ジカルボン酸をアルゴンガス雰囲気下で重合溶媒に溶解させて、130〜150℃で2〜5時間撹拌する段階と、
ii)前記i)段階の反応物を170〜180℃に昇温して、12〜15時間重縮合する段階と、
iii)前記ii)段階で得られた重合体溶液を脱イオン水に沈澱させた後、残存する
重合溶媒を除去する段階と、
iv)60〜100℃の真空オーブンで乾燥させて、重合体粉末を収得する段階と、を含むカルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造方法を提供する。
【0037】
前記i)段階の共単量体である芳香族ジカルボン酸は、4,4’−オキシビス(安息香酸)以外にも、ジフェン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビス(安息香酸)、テレフタル酸、及びイソフタル酸からなる群から選択された何れか1つのものを使うことができる。
【0038】
前記i)段階の重合溶媒は、ポリリン酸を使うことが望ましいが、五酸化リンとメタンスルホン酸との混合溶媒も使われる。
【0040】
また、本発明は、前記化学式1で表される反復単位を有するカルドポリベンズイミダゾール共重合体を利用したガス分離膜を提供する。
【0041】
また、本発明は、i)カルドポリベンズイミダゾール共重合体粉末を有機溶媒に溶解させて、カルドポリベンズイミダゾール共重合体溶液を準備する段階と、
ii)前記i)段階のカルドポリベンズイミダゾール共重合体溶液を気孔が形成された注射器フィルターで濾す段階と、
iii)前記ii)段階で得た溶液を平らなガラスに塗布する段階と、
iv)60〜80℃のオーブンで乾燥させて、透明なカルドポリベンズイミダゾール共重合体膜を得る段階と、を含むカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜の製造方法を提供する。
【0042】
前記i)段階の有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を使うことが望ましいが、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはN−メチルピロリドン(NMP)も何らの制限なしに使うことができる。
【0043】
前記i)段階のカルドポリベンズイミダゾール共重合体溶液は、その濃度が2〜15重量%であることが望ましいが、濃度が2重量%未満であれば、製膜能が落ち、合成されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体の分子量によって変わることはあるが、15重量%を超過する溶液は製造しにくいだけではなく、製膜されても、膜が厚くてガス透過度が著しく落ちる問題点が発生する恐れがある。
【0044】
前記iv)段階で得られる透明なカルドポリベンズイミダゾール共重合体膜は、厚さが30〜60μmであることが望ましいが、その厚さが30μm未満であれば、機械的強度が落ちって、ガス分離膜として機能を行うことが難しく、60μmを超過すれば、膜が厚くなってガス透過度が落ちるので望ましくない。
【0045】
以下、本発明によるカルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造方法及びそれを利用したガス分離膜の製造方法に関する実施例及び比較例を具体的に記載する。
【0046】
[実施例1]カルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造
単量体として、3,3’−ジアミノベンジジン3.0g(14mmol)、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン2.85g(7mmol)、共単量体として、4,4’−オキシビス(安息香酸)1.81g(7mmol)、及び重合溶媒として、ポリリン酸125gを丸底フラスコに入れてアルゴンガス雰囲気下で150℃で5時間撹拌させた。単量体と共単量体とを十分に溶かした後、反応温度を180℃に徐々に上げて15時間反応させた。引き続き重合体溶液を脱イオン水に沈澱させて残存するリン酸を除去するために、12%アンモニア水で50℃で3日間洗浄した。最後に、脱イオン水で中性酸度まで洗浄した後、60℃の真空オーブンで乾燥させて、カルドポリベンズイミダゾール共重合体を製造した。下記に実施例1から製造されるカルドポリベンズイミダゾール共重合体の合成経路を表示した。
【0047】
【化6】
[実施例2]カルドポリベンズイミダゾール共重合体の製造
単量体として、3,3’−ジアミノベンジジン3.0g(14mmol)、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン5.13g(12.6mmol)、共単量体として、4,4’−オキシビス(安息香酸)0.36g(1.4mmol)を使ったものを除いては、実施例1のような方法でカルドポリベンズイミダゾール共重合体を製造した。下記に実施例2から製造されるカルドポリベンズイミダゾール共重合体の合成経路を表示した。
【0048】
【化7】
[比較例1]カルドポリベンズイミダゾール単一重合体の製造
単量体として、3,3’−ジアミノベンジジン3.0g(14mmol)、9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン5.6g(14mmol)を使い、共単量体を使っていないものを除いては、実施例1のような方法でカルドポリベンズイミダゾール単一重合体を製造した。下記に比較例1から製造されるカルドポリベンズイミダゾール単一重合体の合成経路を表示した。
【0049】
【化8】
[比較例2]ポリベンズイミダゾール単一重合体の製造
前記比較例1の9,9−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン5.6g(14mmol)の代りにイソフタル酸2.33g(14mmol)を使ったものを除いては、比較例1のような方法でポリベンズイミダゾール単一重合体を製造した。
【0050】
下記に比較例2から製造されるポリベンズイミダゾール単一重合体の合成経路を表示した。
【0051】
【化9】
図1は、実施例1から合成されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体の
1H−NMRスペクトルを表わすものであって、4,4’−オキシビス(安息香酸)に存在する水素の特性ピークが化学シフト(chemical shift)7.86ppm、8.3ppmで確認されて、共重合体が合成されたことを確認することができた。また、実施例2からも合成されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体の
1H−NMRスペクトルで、4,4’−オキシビス(安息香酸)に存在する水素の特性ピークを確認した。
【0052】
図2から見るように、比較例1からは、ポリベンズイミダゾール鎖の特性ピークであるイミダゾール環のN−Hの水素を化学シフト12.99ppm、ベンゼン環の芳香族陽子を化学シフト7.38〜8.15ppm範囲で確認して、ポリベンズイミダゾール単一重合体が合成されたことが分かった。
【0053】
[実施例3]カルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜の製造
実施例1から合成されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体1gを有機溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)49gに溶かして、2重量%濃度のカルドポリベンズイミダゾール共重合体溶液を準備した。この重合体溶液を気孔が0.45μmである注射器フィルターで濾した後、平らなガラスに塗布して80℃のオーブンで乾燥させて、厚さ40〜50μmの透明なカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜を製造した。
【0054】
[実施例4]カルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜の製造
実施例2から合成されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体を使ったものを除いては、実施例3のような方法でカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜を製造した。
【0055】
[比較例3]カルドポリベンズイミダゾール単一重合体ガス分離膜の製造
比較例1から合成されたカルドポリベンズイミダゾール単一重合体を使ったものを除いては、実施例3のような方法でカルドポリベンズイミダゾール単一重合体ガス分離膜を製造した。
【0056】
[比較例4]ポリベンズイミダゾール単一重合体ガス分離膜の製造
比較例2から合成されたポリベンズイミダゾール単一重合体を使ったものを除いては、実施例3のような方法でポリベンズイミダゾール単一重合体ガス分離膜を製造した。
【0057】
図3は、実施例3から製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜のFT−IRスペクトルを表わすものであるが、芳香族エーテル基の伸縮振動(stretching vibration)ピークを1241cm
−1付近で確認し、これは、共単量体である4,4’−オキシビス(安息香酸)に起因するものであって、所望のポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜が製造されたことが分かり、実施例4から製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜のFT−IRスペクトルでも、同じ結果が得られた。
【0058】
図4は、比較例3から製造されたカルドポリベンズイミダゾール単一重合体ガス分離膜のFT−IRスペクトルであって、3300cm
−1(NH)、1610cm
−1(C=N)、1250cm
−1、及び810cm
−1付近でイミダゾール基の特性ピークを確認して、カルドポリベンズイミダゾール単一重合体ガス分離膜が製造されたことが分かった。
【0059】
一方、
図5は、それぞれ実施例3、4及び比較例3から製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体及び単一重合体ガス分離膜の熱重量分析(TGA)の結果であって、1,000℃まで測定した結果、熱分解後、重量残留率が実施例3によっては、70.07重量%、実施例4によっては、69.41重量%、比較例3によっては、74重量%で確認された。
【0060】
そして、初期熱分解温度は、実施例3から比較例3に至るまで300℃ないし350℃の範囲を示すので、本発明によって製造されたカルドベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜は、共重合体の反復単位内で共単量体である4,4’−オキシビス(安息香酸)に起因する芳香族エーテル基のmol含量が高くなるほど初期熱分解温度が低くなる傾向を表わし、従来のカルドポリベンズイミダゾール単一重合体に比べては、初期熱分解温度は多少低いが、総括的な熱的安定性は、そのまま保持していることが分かった。
【0061】
同時に、本発明によって製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜のガス透過度を、
図6に示したガス透過測定装置からタイムラグ(time−lag)法によって測定した。
【0062】
一般的に、ガスの高分子膜透過は、拡散度Dと溶解度Sとの関数として解析することができる。拡散度は、高分子膜の内部の部分的空き空間(Fractional FreeVolume、FFV)と鎖の運動性(chain mobility)とによって決定され、溶解度は、ガス分子と高分子との間の相互作用によって決定される。FFVは、ガス分子の輸送に関与する空間であって、全体高分子膜の体積中に高分子が占めていない空き空間の比率と定義され、鎖の運動性の増減と高分子集積度(packing density)、鎖周辺の作用基(side groups)によって影響を受け、これは、拡散度と直接的な関係を有する。溶解度もFFVの増加による増加を示し、鎖周辺の作用基による溶解度の変化を示すが、全体透過度の側面では、拡散度の関数が支配的であると知られている。
【0063】
高分子膜は、透過セルに装着されて、膜の両側面に真空ポンプによる減圧状態で膜に残存するあらゆるガスを除去する。実験初期時間t=0で、膜の上側に一定ガス(酸素あるいは窒素)を一定圧力P
feedで注入すると同時に、ガス透過測定が始まり、膜の下側の圧力を時間関数で測定して、タイムラググラフが得られる。下記のグラフの定常状態(steady−state)の部分を外挿法によってタイムラグθが得られ、式(1)によって膜の厚さdを用いて拡散度Dを計算する。
【0064】
【数1】
ガス透過度Pは、式(2)とタイムラググラフの定常状態の直線区間の傾きを用いて計算される。P
feedは、膜上部に適用されたガス圧力(cmHg)、V
dは、膜下部のガス透過装置の容積(cm
3)、M
gasは、透過ガスの分子量(g/mol)、ρは、透過ガスの密度(cm
3/g)、Aは、ガスの膜透過面積(cm
2)を表わす。
【0065】
P=(1/P
feed)・(V
dM
gasd/ρRTA)・(dp
d/dt) (2)
ガスの溶解度Sは、拡散度Dと透過度Pとの関係を用いて、式(3)から計算され、透過度の単位は、Barrer[10−
10cm
3(STP)cmcm
−2s
−1cmHg
−1]と表現される。
【0066】
P=D・S (3)
2つのガス(ガスA、ガスB)が混合ガスからなって分離膜を透過する時、ガスBに対するガスAの選択度(α
AB)は、式(4)のように定義される。P
AとP
Bは、それぞれガスAとBとの透過度を言う。
【0067】
α
AB=P
A/P
B (4)
ガスの透過度は、運転条件(温度、圧力など)、ガスの溶解度(ガスの可塑性(condensibility)が増加すれば、溶解度増加)、高分子−透過ガス間の反応性、高分子のmorphology(crystallinity、orientationなど)によって影響を受ける。したがって、実験に利用されたあらゆる分離膜試料と透過実験は、同じ条件と合成過程とによって準備された。
【0068】
[ガス透過度測定実験]
本ガス透過度測定実験で、一定温度(30℃)を保持させるために、有効な膜面積14.52cm
2を有するガス透過セルをオーブン内に装置し、分離膜の上下部のあらゆるガス分子を除去するために、真空ポンプを用いて減圧した。分離膜の上部にガス貯蔵容器の圧力を1000torrで適用圧力として注入すると同時に、タイムラグ測定は始まる。透過されるガスの圧力によって変化する圧力差は、MKS Baratron gaugeと連結されたコンピュータで単位時間別に自動記録された。もし、膜下部の圧力が膜上部の圧力と比較して、無視できるほどに低い場合、透過ガス間の反応と膜素材の可塑化はないと仮定することができる。
【0069】
表1に実施例3、4及び比較例4から製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体及びカルドポリベンズイミダゾール単一重合体ガス分離膜のガス透過度を表わした。
【0070】
【表1】
比較例3:製造された膜があまりにも壊れやすいので、ガス透過度測定実験は不可した。
【0071】
表1から確認できるように、実施例3から製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜の酸素と窒素透過度は、比較例4から製造されたカルド基を含まない従来のポリベンズイミダゾール単一重合体ガス分離膜に比べて、酸素透過度は、約17倍、窒素透過度は、約20倍向上したことが分かる。
【0072】
特に、実施例4から製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜の場合、酸素透過度は、約46倍、窒素透過度は、約66倍まで向上したことを確認することができる。
【0073】
本発明によるカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜の酸素透過度が顕著に向上した結果は、ポリベンズイミダゾール主鎖にカルド基としてフルオレン単位が導入され、それに加えて、共単量体である4,4’−オキシビス(安息香酸)に起因する芳香族エーテル基まで導入されることによって、機械的物性の向上と相俟ってポリベンズイミダゾール鎖構造の折りと反りとを誘導し、これが、鎖間の空間、すなわち、自由体積を増加させると解析される。
【0074】
したがって、本発明によって製造されたカルドポリベンズイミダゾール共重合体ガス分離膜は、酸素透過度が大きく向上して、OBIGGSでO
2/N
2分離に適した素材として使用可能である。