(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態について説明する。なお、
図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、
図1を含め、以下の図面において、同一の符号を付したものは、同一又はこれに相当するものであり、このことは明細書の全文において共通することとする。さらに、明細書全文に表わされている構成要素の形態は、あくまでも例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器100の構成の一例を概略的に示す概略構成図である。
図1に基づいて、炊飯器100の構成について説明する。
【0013】
この炊飯器100は、被加熱物(米や水等の食品)が入れられた炊飯釜1を加熱コイル2で加熱することで被加熱物を炊き上げるものである。具体的には、炊飯器100は、
図1に示すように、内部に被加熱物が入れられる炊飯釜1と、炊飯釜1を加熱する加熱コイル2と、炊飯釜1の温度を検出する温度検知手段3と、加熱コイル2に電流を供給する駆動部4と、入力電流検出手段5と、表示操作部6と、制御部7と、を備えている。
【0014】
加熱コイル2は、
図1に示すように、炊飯釜1の底部及び外周部に設けられている。
温度検知手段3は、炊飯釜1の底部中央部に炊飯釜1に接するように設けられている。この温度検知手段3は、例えばサーミスタで構成するとよい。駆動部4は、商用交流電源8から印加された交流電圧を直流電圧に変換する整流部9、加熱コイル2に高周波電流を供給するインバータ回路10等を少なくとも有し、加熱コイル2を介して炊飯釜1を誘導加熱する。なお、インバータ回路10の詳細を特に図示しないが、インバータ回路10には、例えばパワースイッチング素子、共振コンデンサ等で構成される一石電圧共振インバータや、ハーフブリッジインバータ等が用いられる。
【0015】
入力電流検出手段5は、交流入力電流が流れる経路に設けられ、入力電流の大きさに対応した信号、つまり炊飯釜1の加熱電力に対応した信号を検出し、出力するものである。入力電力は、入力電圧と入力電流との積であるが、入力電圧は一定であるので、入力電流は入力電力に対応した信号となる。そして、入力電力と加熱電力はほぼ同じであるため、本発明においては、入力電流を、炊飯釜1の加熱電力に対応した信号としている。
【0016】
この入力電流検出手段5は、電流検出素子11と、電流検出素子11の信号を増幅する増幅回路12と、を少なくとも有している。電流検出素子11は、交流入力電流が流れる経路の入力電流を検出するものであり、例えばカレントトランスで構成するとよい。増幅回路12は、電流検出素子11から出力される信号を増幅するものである。そして、電流検出素子11から出力される信号が交流信号である場合は、増幅回路12には整流・平滑回路も含まれる。増幅回路12で増幅された信号は、制御部7に入力される。
【0017】
表示操作部6は、使用者からの炊飯指示や炊飯条件の設定を受け付ける操作部と、動作状態や使用者に対するメッセージ等を表示する表示部と、を有している。表示操作部6は、使用者からの設定に基づく信号を制御部7に出力するものであり、制御部7からの出力に基づいてメッセージ等を表示するものである。なお、ここでは、表示部と操作部とをまとめて表示操作部6としている場合を例に示しているが、表示部と操作部とが別々に設けられていてもよい。
【0018】
制御部7は、マイクロコンピュータ(マイコン)や制御回路を備えており、表示操作部6からの信号に基づいて所定の制御シーケンスに従ってインバータ回路10を駆動制御するものである。
【0019】
なお、入力電流検出手段5が本発明の「加熱電力検出手段」に相当し、制御部7が本発明の「炊飯量判定手段」に相当する。すなわち、炊飯器100では、温度検知手段3と入力電流検出手段5から出力される信号を制御部7に入力し、演算処理することにより炊飯量を判定するようになっている。この制御部7には、時間を計測するタイマー/カウンター機能と、アナログ電圧信号をデジタル信号に変換するA/D変換器と、が搭載されているものとする。
【0020】
次に、炊飯器100の動作について説明する。
図2は、炊飯器100の炊飯量判定動作の際の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3は、理想的な炊飯温度推移の一例を示すグラフである。
図4は、炊飯器100の炊飯量判定時の温度検知手段3の出力信号の推移を示したグラフである。以下、炊飯器100の炊飯量判定動作を、適宜
図1〜4を参照して説明する。
【0021】
炊飯器100を動作させる前に、使用者は、まず所定量の米と水を入れた炊飯釜1を炊飯器本体にセットする。そして、使用者は、蓋体を閉じ、電源を入れ、表示操作部6で炊飯メニューを選択し、炊飯スイッチ(図示せず)を押下して、炊飯器100に動作指示を与える。炊飯器100は、炊飯スイッチが使用者によって押下され、動作指示が与えられることで、炊飯を開始する。つまり、使用者により表示操作部6が操作されて炊飯指示等の炊飯開始の指示がなされると、制御部7は、炊飯量判定動作に移行する。
【0022】
ここでは、炊飯量を少量(例えば1合)、中量(例えば3合)、多量(例えば5合)の3段階で判定する例について述べる。炊飯量判定動作は、大きく2ステップに分かれており、それぞれ判定の方法が異なる。最初の1ステップ目の動作で炊飯量が少量であるかどうかを判定し(少量判定アルゴリズム)、次の2ステップ目の動作で炊飯量が中量であるかどうか、多量であるかどうかを判定する(中量・多量判定アルゴリズム)。炊飯量判定動作が終了すると、その後、各炊飯量に応じた炊飯制御が適用され、各炊飯量に適した電力投入が行われる。
【0023】
図3に示すように、理想的な炊飯温度を表す曲線(
図3に示す線(A))に対しての炊飯量検知を行わないと、炊飯量が少ない場合、理想温度と比較して炊飯温度が高めに推移する(
図3に示す線(B))。
一方、理想的な炊飯温度を表す曲線(
図3に示す線(A))に対しての炊飯量検知を行わないと、炊飯量が多い場合、理想温度と比較して炊飯温度が低めに推移する(
図3に示す線(C))。
すなわち、炊飯量が予め判明していれば、炊飯量に合わせて加熱電力を投入できるので、炊飯量によらず理想的な温度での炊飯が可能となる。
【0024】
まず、「少量判定アルゴリズム」について説明する。
炊飯器100では、制御部7が、駆動部4を動作させ、炊飯釜1を所定時間加熱する(
図2のステップS1、S2)。このとき、炊飯釜1の内部の米が少量である場合に、内部の米が炊飯時に影響を及ぼさない温度(例えば60℃)以下となるように加熱電力及び加熱期間を予め制御部7にプログラムしておく。少量時に炊飯性能に影響を及ぼさない温度以下であれば、炊飯量が中量・多量時は少量時以上に米の温度が上昇することはないので問題ない。
【0025】
所定時間経過後(
図2のステップS2;Yes)、制御部7は、駆動部4を停止させ、加熱動作を停止する(
図2のステップS3)。加熱動作停止中は加熱により蓄えられた炊飯釜1の熱が内部の水と米に伝わるため、炊飯釜1の温度は徐々に低下する。このとき、炊飯量が少ない場合、炊飯釜1と水の接触面積が小さく、炊飯釜1の上部は熱伝導率の小さい空気層で占められ、炊飯釜1の温度降下は小さい。一方、炊飯量が多い場合、炊飯釜1の上部まで米と水で占められるため、炊飯釜1と水の接触面積が大きく、炊飯釜1の温度降下は大きい。
【0026】
したがって、炊飯量が少ない場合、炊飯釜1の温度変化の傾きが緩やかになり、炊飯量が多い場合、炊飯釜1の温度変化の傾きが大きくなる。
図4に示すグラフは、本発明の発明者が行った実験から得られた温度検知手段3の信号波形を示しており、炊飯量を多量、中量、少量として一定時間炊飯釜1を加熱し、その後通電を停止して温度検知手段3の信号を測定したときに得られたものである。なお、傾きを比較しやすいようにここでは温度低下開始時点の温度検知手段3の信号をすべて一致させて表示している。
【0027】
図4に示すように、炊飯量が少量の場合のみ、中量、多量と比較して信号の傾きすなわち温度変化の傾きが緩やかとなり、差が現れていることが分かる。一方で、炊飯量が中量と多量とでは、信号の傾きすなわち温度変化の傾きがほぼ同じとなり、差が小さいことがわかる。これは、今回、少量時の米温度が炊飯工程に影響を及ぼさない温度以下となるように投入電力及び投入時間を設定したからである。
【0028】
炊飯釜1は、釜底に設置された加熱コイル2により誘導加熱されるため、釜底近傍が加熱される。炊飯釜1の釜底の熱は、熱伝導により釜の上部に伝わるが、投入電力及び投入時間を制限しているため、釜上部まで伝わる熱は小さい。従って、炊飯釜1の釜上部まで米と水が投入される多量炊飯の場合、釜上部では釜から水へ伝わる熱は小さい。よって、炊飯釜1の中間高さまで米と水が投入される中量炊飯の場合と比較して温度検知手段3の信号波形に差が出にくい。
【0029】
加熱動作停止中、温度検知手段3から出力された信号は制御部7に入力され、マイコン内部のA/D変換器によりアナログ値からデジタル値に変換される。制御部7は、同時に時間をカウントし、温度検知手段3から出力された信号の時間変化量(ΔT/Δt)を求め(
図2のステップS4)、炊飯量が少量かどうかを判定する(
図2のステップS5)。ここでΔTは温度検知手段3の信号変化幅、Δtはこのときの時間変化幅を表す。
【0030】
すなわち、制御部7は、ΔT/Δtが予めプログラムにて設定された所定の値よりも小さい場合は、炊飯量を少量と判断する(
図2のステップS5;少量)。
また、制御部7は、ΔT/Δtが予めプログラムにて設定された所定の値よりも大きい場合は、炊飯量が少量ではないと判断する(
図2のステップS5;中量・多量)。
ここで、少量炊飯と判断されれば、炊飯工程に移行し、少量炊飯に適した制御で炊飯が行われる(
図2のステップS6)。少量炊飯ではないと判定した場合、引き続き2ステップ目の炊飯量判定動作に移行する。
【0031】
次に、「中量・多量判定アルゴリズム」について説明する。
制御部7は、少量炊飯ではないと判定すると再び電力を投入し、炊飯釜1を加熱する(
図2のステップS7)。このとき、制御部7は、駆動部4を動作させる際、電力フィードバック制御を無効化する。通常、炊飯器100は、所望の加熱電力を炊飯釜1に投入するため、加熱電力を検出し、所望の電力となるように電力フィードバック制御を行い、駆動部4にて加熱電力を調整する。それに対し、「中量・多量判定アルゴリズム」では、インバータ回路10のスイッチング素子を例えば固定周波数や固定デューティ比、あるいはスイッチングオン幅固定で動作させ電力フィードバック制御は行わない。すなわちオープンループ制御で駆動部4を動作させる。
【0032】
炊飯釜1は、通常ステンレス等の金属が使用されるが、金属の電気抵抗は正の温度特性を持ち、温度が上昇すると電気抵抗も上昇する特性を持つ。したがって、誘導加熱により炊飯釜1の温度が上昇すると炊飯釜1の電気抵抗値は上昇する。炊飯器100は、誘導加熱により炊飯釜1を加熱する方式であるため、炊飯釜1に渦電流が発生する。炊飯釜1の温度上昇に伴い炊飯釜1の電気抵抗値が上昇するため、炊飯釜1に発生する渦電流は減少し、加熱電力は減少する方向となる。そこで、炊飯器100では、「中量・多量判定アルゴリズム」にこの原理を利用する。
【0033】
炊飯釜1に投入された水及び米、つまり炊飯量が中量の場合、炊飯量が多量の場合と比較して炊飯釜1と水の接触面が小さいため、炊飯釜1の熱が水へ伝わりにくく、炊飯釜1の温度上昇が大きい。
反対に、炊飯釜1に投入された水及び米、つまり炊飯量が多量の場合、炊飯量が中量の場合と比較して炊飯釜1と水の接触面が大きいため、炊飯釜1の熱が水へ伝わりやすく、炊飯釜1の温度上昇が小さい。
【0034】
従って、駆動部4を電力フィードバック制御を無効として動作させた場合、炊飯釜1の温度の上昇が大きい中量炊飯では加熱電力の減少が大きく、炊飯釜1の温度の上昇が小さい多量炊飯では加熱電力の減少が小さい。炊飯器100では、この加熱電力の変化を捉えるために、入力電流検出手段5を備えるようにしている。入力電流検出手段5は、入力電流の大きさに比例して信号を出力する。つまり、加熱電力が減少すれば入力電流も減少するため、加熱電力の変化を間接的に入力電流で検出することができる。
【0035】
入力電流検出手段5から出力される信号は制御部7に入力され、マイコンのA/D変換器によりアナログ値からデジタル値に変換される。制御部7は、同時に時間をカウントし、入力電流検出手段5から出力された信号の時間変化量(ΔI/Δt)を求め(
図2のステップS8)、炊飯量が中量か多量かを判定する(
図2のステップS9)。ここでΔIは入力電流検出手段5の信号変化幅、Δtはこのときの時間変化幅を表す。
【0036】
すなわち、制御部7は、ΔI/Δtが予めプログラムにて設定された所定の値よりも大きい場合は、炊飯量を中量と判断する(
図2のステップS9:中量)。
また、制御部7は、ΔI/Δtが予めプログラムにて設定された所定の値よりも小さい場合は、炊飯量を多量と判断する(
図2のステップS9:多量)。
ここで、中量と判断されれば、中量炊飯に適した炊飯制御工程に移行し(
図2のステップS10)、多量炊飯と判断されれば、多量炊飯に適した炊飯制御工程に移行する(
図2のステップS11)。これにより、炊飯器100では、各炊飯量に適した最適な制御で炊飯を実行できる。
【0037】
図5は、炊飯器100の炊飯量判定時の入力電流検出信号の推移を示したグラフである。この
図5は、本発明の発明者が行った実験から得られた入力電流検出手段5の出力信号波形を示しており、炊飯量を中量、多量として一定時間、炊飯釜1を加熱したときに得られたものである。
【0038】
図5から、電力フィードバック制御を無効としているため、炊飯釜1の温度上昇に伴い入力電流検出手段5の信号が減少するが、炊飯釜1の温度上昇が大きい中量炊飯で信号の変化量が大きいことがわかる(
図5に示す線(D))。
また、
図5から、電力フィードバック制御を無効としているため、炊飯釜1の温度上昇に伴い入力電流検出手段5の信号が減少するが、炊飯釜1の温度上昇が小さい多量炊飯で信号変化量が小さいことがわかる(
図5に示す線(E))。
なお、傾きを比較しやすいように、ここでは電力投入時点の入力電流検出手段5の信号を中量と多量で一致させて表示している。
【0039】
「中量・多量判定アルゴリズム」では炊飯釜1の温度変化を入力電流の変化から捉え、炊飯量判定を行っている。これは、温度検知手段3により炊飯釜1の1箇所の温度を計測する方式と比較して、炊飯釜1の全体の平均的な温度変化を捉えられるからである。米を炊飯釜1に投入した場合、内容物が水のみの場合と比較して炊飯釜1の内部で対流が発生しにくく、更に炊飯釜1の内部の米の偏りなど、米と水の投入状況により炊飯釜1自体に温度ムラが発生し易くなる。そのため、炊飯釜1の温度を任意の1点のみで計測する場合、炊飯釜1の温度ムラの影響により炊飯量を誤判定する可能性がある。それに対し、炊飯器100では、炊飯釜1の温度変化を炊飯釜1全体の抵抗変化を利用して検出するため、局所的な温度ムラの影響を受け難いという利点がある。
【0040】
また、炊飯器100の構成は、釜底に設けられた温度検知手段3、入力電流検出手段5、制御部7を構成するマイコンを使用するが、これらは、炊飯器100の多くに予め装備された部品であるため、これらを流用することにより、追加部材なしでマイコンプログラムの対応のみで実現することができる。これにより、小型且つ安価な製品として炊飯器100を提供することができる。
【0041】
以上のように、炊飯器100では、少量炊飯を判定するアルゴリズムと、中量・多量炊飯を判定するアルゴリズムと、を個別に設けている。「少量判定アルゴリズム」では、所定期間炊飯釜1を加熱し、所定時間経過後、加熱動作を停止する。そして、炊飯釜1の温度降下を温度検知手段3により検出し、時間変化量(ΔT/Δt)を求め、その変化量から少量炊飯か否かを判別する。少量炊飯であれば、次に炊飯工程に移行し、少量炊飯ではないと判断した場合、引き続き「中量・多量判定アルゴリズム」に移行する。
【0042】
「中量・多量判定アルゴリズム」では、炊飯釜1を電力フィードバック制御を無効として再び加熱し、加熱中の入力電流を入力電流検出手段5で検出し時間変化量(ΔI/Δt)を求め、その変化量から炊飯量を中量か多量かを判定する。そして、その後炊飯工程に移行し、各炊飯量に適した炊飯制御が実施される。「少量判定アルゴリズム」では少量かどうかのみを判定するので、加熱時の投入電力量が少なくてすみ、炊飯量が少量でも内部の米が炊飯時に影響を及ぼさない温度以下に抑えることができる。
【0043】
一方、炊飯量が中量または多量の場合は「中量・多量判定アルゴリズム」で少量の場合が除かれた状態で再度加熱するため、比較的大きな投入電力量でも米の温度を炊飯に影響を及ぼさない温度以下に抑えることができる。また、「中量・多量判定アルゴリズム」では、温度検知手段3を使用せず、炊飯釜1全体の抵抗変化から炊飯量を判定するので、炊飯釜1の温度ムラの影響を小さくすることができる。よって、炊飯器100によれば、より正確に炊飯量の判定を可能にすることができる。
【0044】
なお、ここでは炊飯量が少量、中量、多量の3段階で判定する例で説明したが、炊飯量を3段階に限定するものではなく、温度検知手段3による炊飯釜1の温度の時間変化量及び入力電流の時間変化量から、炊飯量を更に細かく分けて判定してもよい。例えば炊飯量を5段階に判別する場合、炊飯量が少ない方から1段階(例えば1合)と2段階(例えば2合)を「少量判定アルゴリズム」を用いて判定し、3段階(例えば3合)と4段階(例えば4合)と5段階(例えば5合)を「中量・多量判定アルゴリズム」を用いて判定することもできる。
【0045】
また、実施の形態1では、「中量・多量判定アルゴリズム」において、炊飯釜1の抵抗変化を入力電流から間接的に検出したが、これに限定するものではなく、例えば入力電力や加熱電力(インバータ回路10の出力電力)、出力電流(加熱コイル2電流)の変化など、炊飯釜1の抵抗変化に応じて変化する信号であれば、それを用いて判定してもよい。
【0046】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器110の構成の一例を概略的に示す概略構成図である。
図6に基づいて、炊飯器110の構成について説明する。なお、実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
【0047】
この炊飯器110は、実施の形態1に係る炊飯器100と同様に、被加熱物(米や水等の食品)を入れた炊飯釜1を加熱コイル2で加熱することで被加熱物を炊き上げるものである。炊飯器110の炊飯器100と異なる部分は、入力電流検出手段5を構成する増幅回路12の増幅率を切り替え可能としたことである。
【0048】
増幅回路12は、例えば増幅器14aと増幅器14bを有し、増幅器14aの増幅率をx、増幅器14bの増幅率をyとして、x>yとする。また、増幅回路12は、整流・平滑回路13及び切り替え手段15を有している。そして、増幅回路12は、電流検出素子11からの出力信号を整流・平滑回路13を介して増幅器14aと増幅器14bとに伝送し、信号を増幅する。切り替え手段15は、制御部7の指令により制御部7に入力する増幅器(増幅器14a又は増幅器14b)の選択を行う。その他の構成については、炊飯器100と同様である。なお、増幅器14a及び増幅器14bが本発明の「増幅率切り替え手段」に相当する。
【0049】
次に、炊飯器110の動作について説明する。
炊飯器110の炊飯量判定動作について、実施の形態1に係る炊飯器100と共通動作部分については説明を省略する。
【0050】
使用者により表示操作部6が操作されて炊飯指示等の炊飯開始の指示がなされると、制御部7は、炊飯量判定動作に移行する。ここでは、「少量判定アルゴリズム」を経て、「中量・多量判定アルゴリズム」に移行したものとする。制御部7は、「中量・多量判定アルゴリズム」移行時に、切り替え手段15に増幅器14aからの信号を入力するように指示し、増幅器14aの信号が制御部7に入力される。すなわち、電流検出素子11の信号は増幅率xで増幅される。増幅率xで増幅された入力電流の検出信号は、制御部7のマイコンに入力され、実施の形態1と同様の方法で炊飯量が中量であるか多量であるかの炊飯量判定が行われる。
【0051】
「中量・多量判定アルゴリズム」が終了すると、炊飯器は炊飯工程に移行し、各炊飯量に応じた最適な加熱制御により炊飯が行われる。ところで、炊飯器110では、炊飯工程移行時、制御部7は、切り替え手段15に増幅器14bの出力信号を制御部7に入力するように指示する。これにより増幅器14bの出力信号が制御部7に入力される。すなわち、電流検出素子11の信号は、増幅率yで増幅される。増幅率yで増幅された検出信号は、制御部7のマイコンに入力され、炊飯時の電力フィードバック制御用の信号として使用される。
【0052】
つまり、入力された信号をA/D変換器によりアナログ値からデジタル値に変換し、マイコンプログラムにより予め設定された目標電流に対応する目標値と比較する。そして、制御部7は、入力された信号が目標値よりも小さければ駆動部4に加熱電力を増加する指令を出し、入力された信号が目標値よりも大きければ加熱電力を減少させる指令を出す。これにより、炊飯器110では、炊飯量に応じた最適加熱電力で炊飯が行われる。
【0053】
ここで、入力電流検出手段5の増幅率切り替えの効果について説明する。通常、炊飯器では、低火力(例えば入力電力300W)から高火力(例えば入力電力1200W)まで幅広い電力制御が行われる。そのため、マイコンのA/D変換器の最大入力を例えば5Vとすると、炊飯器の最大入力電力(例えば1200W)がフルスケールとなるように増幅器の増幅率を決定する。
【0054】
炊飯器110では入力電流検出手段5でフィードバック制御を行うため、最大入力電力時の入力電流を12Aとすると、A/D変換器の分解能を10bitとして、1LSB幅は12A/1024=11.7mAとなる。一方、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時において、中量と多量との入力電流変化量の差が例えば100mAであったとすると、100mAの変化量に対して分解能が11.7mAとなり分解能が非常に粗くなり、誤判定する可能性がある。また、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時、炊飯釜1の加熱電力が大きすぎると、炊飯釜1のみの温度が急上昇してしまい、炊飯量が中量と多量とで炊飯釜1の温度の差異が現れず、判定が困難となる。
【0055】
そこで、炊飯器110では、加熱電力を小さくして、徐々に加熱して炊飯釜1の熱が炊飯釜1の内部の水と米に伝わるようにする。これにより、中量と多量とで炊飯釜1の温度に差異が現れ、炊飯量の判別が可能となる。したがって、例えば「中量・多量判定アルゴリズム」実施時の入力電力を500Wとして加熱電力を小さくした場合、マイコンのA/D変換器のフルスケールを入力電流12Aとする必要はない。そのため、炊飯器110では、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時、増幅器14bよりも増幅率の大きい増幅器14aに切り替える。
【0056】
例えば入力電力500Wに対応する入力電流を5Aとすると、5Aの時、マイコンのA/D変換器の最大電圧5Vとなる増幅率xで電流検出素子11の信号を増幅する。これによりA/D変換器の分解能を10bitとすると1LSB幅は5A/1024=4.9mAとなり、フルスケール12Aと比較して分解能を向上することができる。したがって、炊飯器110によれば、炊飯量の誤判定を抑制することができる。
【0057】
図7は、炊飯器110の増幅回路12の具体的な構成の一例を示した回路図である。
図8は、炊飯器110の増幅回路12の具体的な構成の別の一例を示した回路図である。
図7及び
図8に基づいて、増幅回路12の回路構成について説明する。
【0058】
図7は、オペアンプ20a、20bと周辺抵抗からなる2つの非反転増幅器を用いた増幅回路12を示している。オペアンプ20a、20bでは、それぞれ異なる増幅率が設定されている。オペアンプ20a、20bの各出力が制御部7の入力部に入力されるが、マイコンプログラムにてどちらかの増幅された信号を使用するかが決められる。なお、オペアンプ20a及びオペアンプ20bが本発明の「増幅率切り替え手段」に相当する。
【0059】
図8は、1つのオペアンプ21と周辺抵抗からなる非反転増幅器を使用し、スイッチ手段24により外付け抵抗の合成抵抗値を切り替えることにより増幅率を切り替える増幅回路12を示している。オペアンプ21では、外付け抵抗22、23a、23bによりその増幅率が設定されている。外付け抵抗22の抵抗値をR1、外付け抵抗23aの抵抗値をR2、外付け抵抗23bの抵抗値をR3とすると、例えばスイッチ手段24がオフしているとき、増幅率は1+(R1/R2)で表される。一方、スイッチ手段24がオンしているとき、増幅率は1+(R1/((R2・R3)/(R2+R3)))で表される。よって、外付け抵抗23aと外付け抵抗23bが並列接続され、合成抵抗値が外付け抵抗23a単体の時より小さくなるため、増幅率が増加する。
【0060】
したがって、制御部7は、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時において、スイッチ手段24をオンして増幅率を増加させ、炊飯工程時はスイッチ手段24をオフすることにより増幅率を低下させる。このように、スイッチ手段24により容易に増幅率を切り替えることができる。つまり、オペアンプ21及びスイッチ手段24が本発明の「増幅率切り替え手段」に相当する。
【0061】
図9は、炊飯器110の増幅回路12の具体的な構成の更に別の一例を示した回路図である。
図9を用いて、検出信号の分解能を更に向上する方法について述べる。
【0062】
図9は、1つのオペアンプ25及び抵抗26a、26b、27a、27bで構成された差動増幅回路を用いた増幅回路12を示している。
図9において、電流検出素子11から出力された信号は、オペアンプ25及び抵抗26a、26b、27a、27bで構成された差動増幅回路の反転入力端子側に接続される。なお、ここでは入力される電圧をV1とする。
【0063】
一方、オペアンプ25の非反転入力端子側には、電圧源28が接続される。なお、ここでは所定電圧をV2とする。抵抗26aと抵抗27aの抵抗値をR1、抵抗26bと抵抗27bの抵抗値をR2とすると、差動増幅回路の出力電圧VoはVo=R2/R1・(V2−V1)となり、V1とV2の電位差だけを増幅する。すなわち入力電流に対応した信号電圧V1は所定電圧V2との差分だけが増幅される。差動増幅回路からの出力信号は制御部7に入力される。
【0064】
ここで、
図10を用いて所定電圧V2について説明する。
図10は、炊飯器110の差動増幅回路(
図9に示す増幅回路12)への入力信号V1の推移を示したグラフである。
【0065】
「中量・多量判定アルゴリズム」において、入力電力500W(入力電流5A)で動作開始し、時間経過後、入力電力を中量が450W(入力電流4.5A)、多量が460W(入力電流4.6A)であったとする。よって、上記同様、中量判定時と多量判定時とで入力電流変化量の差が100mAであったとする。所定電圧V2は、「中量・多量判定アルゴリズム」の開始時、すなわち入力電流5A入力時にオペアンプ25の反転入力端子側に入力される信号電圧V1以上に設定する。ここでは例として、入力電流6A時に反転入力端子側に入力される信号電圧V1と同等電圧を所定電圧V2として非反転入力端子側に入力するものとする。
【0066】
これにより、差動増幅回路は「中量・多量判定アルゴリズム」実施時、中量のとき、入力電流6Aと入力電流4.5Aの差1.5Aに相当する信号を増幅して出力し、多量のときは入力電流6Aと入力電流4.6Aの差1.4Aに相当する信号を増幅して出力する。ここでは余裕をみて、電流差2Aのとき差動増幅回路から出力される信号をマイコンのA/D変換器の最大入力電圧(例えば5V)に設定する。すなわち、入力電流4Aに相当する信号がV1の下限入力となり、入力電流6Aから4Aまでの範囲内で信号増幅が可能となる。これより、1LSB幅は2A/1024=2.0mAとなり、さらに分解能を向上することができる。
【0067】
また、実施の形態2では所定電圧V2を、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時の最大入力電流5A時に差動増幅回路に入力される信号電圧V1以上に設定し、V2との差を増幅する方式について説明したが、所定電圧V2を、例えば「中量・多量判定アルゴリズム」実施時の最低入力電流(ここでは4.5A)時に差動増幅回路に入力される信号電圧V1以下としてV2との差を増幅する方式を用いてもよい。
【0068】
以上のように、炊飯器110では、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時と炊飯工程でそれぞれ異なる増幅率を設定することで、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時の分解能を向上することができる。また、炊飯器110では、差動増幅回路を用いることにより、さらに高精度に炊飯量判定を行うことができる。これにより、炊飯器110は、炊飯量の誤判定を防止できるとともに、さらに細かく炊飯量を判別でき、各炊飯量に適した炊飯制御を適用できる。なお、「少量判定アルゴリズム」においても、炊飯釜1の温度降下を温度検知手段3を用いて検出する際、温度検知手段3からの出力信号を同様に差動増幅回路を用いて増幅することにより、分解能を向上でき、炊飯量の判定精度を向上することができる。
【0069】
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3に係る炊飯器120の構成の一例を概略的に示す概略構成図である。
図11に基づいて、炊飯器120の構成について説明する。なお、実施の形態3では実施の形態1、2との相違点を中心に説明し、実施の形態1、2と同一部分には、同一符号を付して説明を省略するものとする。
【0070】
この炊飯器120は、実施の形態1に係る炊飯器100と同様に、被加熱物(米や水等の食品)を入れた炊飯釜1を加熱コイル2で加熱することで被加熱物を炊き上げるものである。炊飯器120の炊飯器100と異なる部分は、入力電圧検出手段30を設けたことである。なお、入力電圧検出手段30が本発明の「電源電圧検出手段」に相当する。
【0071】
入力電圧検出手段30は、駆動部4の一部を構成する整流部9の直流側に設けられ、分圧抵抗30a、30bにより構成される。そして、分圧抵抗30aと分圧抵抗30bとの接続点が制御部7に接続される。
【0072】
次に、炊飯器120の動作について説明する。
実施の形態3では、「中量・多量判定アルゴリズム」において、電源電圧が定格電圧より低下、あるいは上昇した場合の動作について述べる。なお、炊飯器120の「中量・多量判定アルゴリズム」について、実施の形態1に係る炊飯器100と共通動作部分については説明を省略する。
【0073】
通常、炊飯工程時は電力フィードバック制御により所定の目標電力が投入されるように駆動部4が制御されるため、例えば電源電圧が低下したり上昇したりした状態で動作しても炊飯釜1に投入される加熱電力はほぼ一定に保たれる。しかしながら、「中量・多量判定アルゴリズム」では、実施の形態1で説明した通り、炊飯釜1の抵抗変化を入力電流変化として検出するため、電力フィードバック制御を無効としている。このため、電源電圧が低下または上昇すると炊飯釜1の加熱電力に影響を受ける。
【0074】
例えば電源電圧が定格電圧よりも低い状態で「中量・多量判定アルゴリズム」を実施すると、炊飯釜1の加熱電力も定格電圧値で動作させた場合と比較して低下する。また、電源電圧が定格電圧よりも高い状態で「中量・多量判定アルゴリズム」を実施すると、炊飯釜1の加熱電力も定格電圧で動作させた場合と比較して上昇する。このように電力フィードバック制御を無効としているため、インバータ回路10のスイッチング素子は周波数やオン時間、あるいはオンデューティ比が固定状態で動作し、電源電圧に応じて加熱電力は変化する。
【0075】
例えば、加熱電力が定格電圧動作時と比較して低い場合、炊飯釜1の温度の時間変化量ΔT/Δtが小さくなる。したがって、炊飯量の判定要素となる入力電流の時間変化量ΔI/Δtも小さくなる。一方、加熱電力が定格電圧動作時と比較して高い場合、炊飯釜1の温度の時間変化量ΔT/Δtは大きくなる。したがって、入力電流の時間変化量ΔI/Δtも大きくなる。このように電源電圧が定格電圧よりも低下したり上昇したりすると入力電流の時間変化量ΔI/Δtも変動するため、正常に炊飯量判定ができない可能性がある。
【0076】
そこで、炊飯器120では、入力電圧検出手段30により電源電圧を検出し、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時の電源電圧を測定するようにしている。制御部7は、予めフログラムで設定された、電源電圧に対応する入力電流の時間変化量の閾値が規定されたテーブルを参照し、入力された電源電圧に対応した入力電流の時間変化量の閾値が選択される。
【0077】
図12は、炊飯器120の電源電圧に対応する入力電流時間変化量の炊飯量判定閾値を規定したテーブルである。
図12を用いて、入力電流の時間変化量の閾値について説明する。
【0078】
電源電圧が高いほど入力電流の時間変化量が大きくなるので、入力電流の時間変化量の閾値はA<B<C<D<Eの関係にある。例えば、定格電圧を100Vとして、入力された電源電圧が95Vであったとすると94V−97Vで設定される閾値Bが選択される。そして、測定された入力電流の時間変化量が閾値Bよりも大きければ炊飯量が中量であると判定し、閾値B以下であれば炊飯量が多量であると判定する。
【0079】
このように、炊飯器120では、電源電圧に応じて炊飯量が中量である場合と多量である場合との判定閾値を補正するため、炊飯量判定時に電源電圧が定格電圧よりも低下、あるいは上昇した状態においても炊飯量を正確に判定することができる。なお、実施の形態3においては、テーブルを用いて電源電圧に対応した判定閾値を決定したが、例えばマイコンプログラムに予め数式を設定しておき、入力電圧検出手段30により検出された入力電圧検出信号をその数式に代入することにより判定閾値を算出してもよい。
【0080】
次に、「中量・多量判定アルゴリズム」実施時、電源電圧が定格電圧より低下、あるいは上昇した場合の別の対策方法について述べる。入力電圧検出手段30は入力電圧を測定し、制御部7は予めマイコンプログラムにて設定された、電源電圧に対応する駆動部4の動作条件が規定されたテーブルを参照し、駆動部4の動作条件を決定する。駆動部4の動作条件とは、炊飯釜1への加熱電力を調整するパラメータの設定値のことで、例えばインバータ回路10のスイッチング素子のスイッチング周波数やスイッチングのオン時間、またはデューティ比の設定値のことである。
【0081】
図13は、炊飯器120の電源電圧に対応するスイッチング素子のオン時間の一例を規定したテーブルである。
図13を用いて、マイコンプログラムにて予め設定された、電源電圧に対するスイッチング素子のオン時間について説明する。なお、ここでは、オン時間を長くすると炊飯釜1への加熱電力は増加するものとする。
【0082】
「中量・多量判定アルゴリズム」実施時の電源電圧が定格電圧100Vより低い電圧、例えば95Vであるとする。制御部7はオン時間をテーブル参照により94−97Vで設定される16[μs]に決定する。これにより、駆動部4は制御部7より指令を受けて、オン時間を16[μs]としてスイッチング素子を駆動する。したがって、定格電圧100Vの動作時よりオン時間が長く設定されるので、電源電圧低下に伴う加熱電力低下を抑制することができる。同様に、電源電圧が定格電圧より高い場合、例えば105Vで「中量・多量判定アルゴリズム」を実施する場合、テーブル参照によりスイッチング素子のオン時間は14[μs]が選択される。これにより、定格電圧100Vの動作時よりスイッチング素子のオン時間が短く設定されるので、電源電圧上昇に伴う加熱電力増加を抑制することができる。
【0083】
以上のように、炊飯器120では、電源電圧が低下、あるいは上昇した状態で「中量・多量判定アルゴリズム」を実施する場合でも、電源電圧に応じて加熱電力を調整し、定格電圧100Vで動作させた場合とほぼ同等の加熱電力を投入できる。そのため、炊飯器120では、電源電圧の影響による入力電流の時間変化率ΔI/Δtのばらつきが発生しにくく、炊飯量の誤判定を防止することができる。なお、実施の形態3においては、電源電圧に対応したスイッチング素子のオン時間をテーブルを用いて規定したが、例えばマイコンプログラムに予め数式を設定し、入力電圧検出手段30により検出された電源電圧検出信号を代入することによりオン時間を算出してもよい。
【0084】
また、スイッチング素子のオン幅に限定するものではなく、スイッチング周波数やスイッチング素子のオンデューティ比など、インバータ回路10において、投入電力を調整できるパラメータであれば他のパラメータでもよい。なお、入力電圧検出手段30は、整流部9の直流側に設けたが、これに限定するものではなく、例えば整流部9の交流側に設けてもよい。
【0085】
次に、「中量・多量判定アルゴリズム」動作において、電源電圧が定格電圧より低下、あるいは上昇した場合の、電源電圧を検出しないで対策する方法について説明する。「中量・多量判定アルゴリズム」開始前の所定期間、電力フィードバック制御を有効として炊飯釜1を加熱する。これにより、炊飯器120では、駆動部4が制御部7の制御を受けて予め設定された所定の加熱電力となるように動作する。加熱電力が所定の電力に達すると、制御部7は駆動部4の動作条件をその状態で固定させ、電力フィードバック制御を無効化し、「中量・多量判定アルゴリズム」動作を実施する。
【0086】
駆動部4の動作条件とは、前述のとおり、炊飯釜1への加熱電力を調整するスイッチング素子のスイッチング周波数やオン時間の設定値のことである。例えば、加熱電力調整をスイッチング素子のオン時間で調整する場合、「中量・多量判定アルゴリズム」開始前の所定期間は制御部7で設定された目標加熱電力となるように電力フィードバック制御を行い、スイッチング素子のオン時間を調整する。
【0087】
次に、目標加熱電力に達すると、スイッチング素子のオン時間をその状態で固定し、電力フィードバック制御を無効化する。これ以降は実施の形態1で述べた「中量・多量判定アルゴリズム」と同様、炊飯釜1の温度上昇に伴う入力電流変化を入力電流検出手段5で検出し、その時間変化量ΔI/Δtから少量か多量かを判定する。
【0088】
以上のように、炊飯器120では、「中量・多量判定アルゴリズム」開始前の所定期間、電力フィードバック制御を有効として、加熱電力を調整する期間を設けたので、電源電圧に関係なく判定開始時の加熱電力をほぼ一定にすることができる。また、炊飯器120では、その状態から駆動部4を電力フィードバック制御なしの固定動作として、「中量・多量判定アルゴリズム」を実施するので、電源電圧の影響による入力電流の時間変化量ΔI/Δtのばらつきを抑制し、炊飯量の誤判定を防止することができる。
【0089】
なお、本発明の具体的な適用例を実施の形態1〜3に分けて説明したが、これらの内容を適宜組み合わせて炊飯器を構成することもできる。