【実施例】
【0028】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0029】
本実施例は、断熱二重葺き折板屋根を施工可能な屋根板取付金具に適用している。
【0030】
具体的には、折板屋根Rを屋根下地1として、この折板屋根Rの頂部のハゼ部14を締め付け挟持固定する挟持部15を設けた金具本体2の上部に合成樹脂製の断熱材6から成る吊子付設部6を設け、この吊子付設部6の上部に、前記折板屋根Rの更に上側に設ける屋根板3(外装用上側折板3)を取り付け可能な金属製の吊子4をスライド自在に設けて、吊子4に外装用上側折板3のハゼ19をハゼ締めすることで外装用上側折板3を取り付けると共に、前記吊子付設部6(断熱材6)により前記吊子4とこの金具本体2とを断熱して下側の折板屋根Rと外装用上側折板3とを断熱すると共に、この吊子4に取り付けた外装用上側折板3が熱伸縮した際に、この外装用上側折板3の熱伸縮に伴って吊子4が金具本体2に対しスライド移動することで、屋根板3の熱伸縮(歪み)が原因で発生する音鳴り現象を防止できる構成としている(
図3,
図4参照)。尚、本発明は、本実施例の断熱二重葺き折板屋根用の屋根板取付金具に限らず、金具本体2の屋根下地1への取付構造を適宜変更することによって一重葺きの屋根板取付金具にも適用可能である。
【0031】
本実施例の金具本体2は、
図1,
図2,
図4に示すように、板材を折曲して構成する一対の板材折曲体20同士を左右に対向配設し、この各板材折曲体20の対向内側に設けた突き合わせ用立板部23に形成した貫通孔を介して締付ボルト21を水平貫通配設し、この締付ボルト21にナット22を螺着して、例えばこのナット22を締め付け回動することで各板材折曲体20の立板部23の下部に設けた挟持対向部29を締め付け接近させて前記ハゼ部14を締め付け挟持する挟持部15を構成している。
【0032】
また、前記板材折曲体20は、平面視略コ字状に折曲した折曲板部24の中間板部を前記立板部23とし、この立板部23の両側から折曲突出した側方突出板部25の先端部を更に折曲して折り返し補強板26を設けた構成とし、また更にこの折曲板部24の前記対向する各側方突出板部25の上端間に架設して上部側開口部を閉塞する天板部27を折曲板部24の上部に折曲形成した構成としている。
【0033】
また、この板材折曲体20の折曲板部24の内側の前記立板部23の下側寄り位置には、前記ハゼ部14の逃げ口となる開口部28を、この立板部23から両側の側方突出板部25の途中に至る範囲まで形成して、この開口部28の下側に立板部23の板幅で上下幅をも有する帯板状の前記挟持対向部29を形成すると共に、この開口部28より上側の立板部23を側方へ傾斜するように構成して、前記板材折曲体20間に下方へ行く程対向間隔が狭くなる中央対向間隔30を設け、この中央対向間隔30に前記断熱材6を介在している。
【0034】
従って、前記締付ボルト21とナット22により各板材折曲体20に形成した各挟持対向部29を締め付け接近し前記ハゼ部14の根本部を締め付け挟持して本金具本体2を前記折板屋根Rの頂部に取り付けるように構成している。
【0035】
また、この左右一対の板材折曲体20は、高さを異ならせた構成として、低い方の板材折曲体20の天板部27に吊子4取付用の取付ボルト8を立設状態に固定して、この取付ボルト8により断熱材6を介して天板部27上に吊子4を取り付けする構成としている。
【0036】
また、前記断熱材6は、
図4に示すように、前記板材折曲体20の前記立板部23間の前記中央対向間隔30の形状に合致する正断面V形状のV形断熱部31と、前記左右一対の板材折曲体20の夫々の天板部27上に重合配設する平板状の上部断熱板部32とから成る形状に一体成形したものとしている。
【0037】
また、この上部断熱板部32は、高さの異なる各板材折曲体20に対応させた段差板形状とし、低い方の上部断熱板部32を前記吊子付設部6としてこの吊子付設部6の平坦上面を、前記吊子4の底板部5を載置して前記取付ボルト8により固定する載置面7としている。即ち、低い方の板材折曲体20の上部に前記上部断熱板部32を貫通させて取付ボルト8を載置面7上に立設突設し、この載置面7に吊子4の底板部5を載置すると共に、底板部5に設けたボルト挿通孔12に取付ボルト8を挿通させ、これにナット33を螺着することで吊子4を取り付けるように構成し、外装用上側折板3を取り付ける吊子4と下側の折板屋根Rに載置固定する金具本体2(板材折曲体20)とを断熱材6により断熱するように構成している。
【0038】
また、本実施例の吊子4は、
図1,
図2,
図4に示すように金属板を折曲形成して、底板部5と立設板部34とが直角に連設し、更にこの立設板部34の上端部に屋根板3(外装用上側折板)のハゼ19を掛止してハゼ締めするための鉤形の掛止部35が直角に連設する形状に形成している。
【0039】
また、底板部5の上面とこれに連設する立設板部34の一側面の中ほどに至るまでの範囲に補強板36を付設重合して、吊子4の耐変形強度を向上させている。
【0040】
また、この吊子4の底板部5の下面に、前記載置面7に載置接触する合成樹脂製の摺動接触部11を設け、更にこの底板部5に、前記取付ボルト8のボルト被覆部10を挿通取付する長孔状のボルト挿通孔12を設けると共に、このボルト挿通孔12の孔縁に、後述するボルト被覆部10に接触する合成樹脂製のスライドガイド13を設けている。
【0041】
具体的には、底板部5と前記補強板36とを上下方向に貫通するようにして、吊子4の幅方向に沿った(前記掛止部35の長さ方向に沿った)長さを有する長孔状の前記ボルト挿通孔12を形成し、このボルト挿通孔12の孔内縁の全周に、このボルト挿通孔12と同形状の平面視長環状体であってこのボルト挿通孔12の孔内縁とその上下部を覆う縦断面コ字状体に一体成形した合成樹脂製のスライドガイド13を付設した構成としている。
【0042】
また、このスライドガイド13は、その下部が吊子4の底板部5の下面より下方へやや突出する形状に一体成形して、このスライドガイド13の下側突出部を、前記載置面7に載置接触する前記摺動接触部11としている。即ち、摺動接触部11は、前記ボルト挿通孔12の孔縁に沿った環状に形成して、この環状の摺動接触部11を介して吊子4の底板部5を載置面7に安定的に載置し得、且つ前記吊子4に取り付けた前記屋根板3が熱伸縮することによりこの吊子4がボルト挿通孔12を介して前記ボルト被覆部10に対しスライド移動した際には、この摺動接触部11と載置面7のスライド接触が、合成樹脂同士のスライド接触となるように構成している。
【0043】
また、このスライドガイド13は、その上部が底板部5の上面より上方へやや突出する形状に一体成形して、このスライドガイド13の上側突出部を、後述する押え込み接触部17が接触する被押え込み部18としている。
【0044】
また、本実施例では、前記取付ボルト8に、この取付ボルト8のボルト軸部9の外周面を被覆する合成樹脂製のボルト被覆部10を設けて、前記吊子4に取り付けた前記屋根板3が熱伸縮することによりこの吊子4が前記ボルト挿通孔12を介してボルト被覆部10に対しスライド移動した際に、前記スライドガイド13とボルト被覆部10のスライド接触とが、合成樹脂同士のスライド接触となるように構成している。
【0045】
具体的には、ボルト被覆部10は、前記取付ボルト8のボルト軸部9の外周面の全周を被覆する円筒形状であって且つ横断面楕円形に一体成形し、この横断面楕円形のボルト被覆部10の短径寸法が前記スライドガイド13の短内径寸法と略同径若しくはやや小さい径寸法となるように構成して、このボルト被覆部10をスライドガイド13に挿通取付し得るように構成している。
【0046】
また、本実施例では、このボルト被覆部10の上部に、前記吊子4の底板部5の上面の上方に配設する押え部16を設けている。
【0047】
具体的には、押え部16は、
図2,
図5に示すように、短い金属製帯板をL字状に折曲して水平方向に面方向を有する押え板部38と、この押え板部38から直角に垂下するガイド板部39とから成る構成であって、この押え板部38の下面に前記ボルト被覆部10を垂設状態に付設すると共に、このボルト被覆部10と連通して前記取付ボルト8を挿通する連通孔37を押え板部38に貫通形成している。そして、このボルト被覆部10を前記ボルト挿通孔12(スライドガイド13内)に挿通すると、前記ガイド板部39が前記吊子4の底板部5と前記天板部27の外方に位置し、この押え板部38から連通孔37を介して押え板部38の上方へ突出する取付ボルト8のボルト軸部9の先端側にナット33を螺着することで、ボルト被覆部10を有する押え部16を取付ボルト8に対し上方へ抜け止め状態とすると共に、ナット33を締め付けることによって押え部16で吊子4の底板部5を上方から押え込んで吊子4を金具本体2の上部に取り付けする構成としている。
【0048】
また、押え部16は、前記押え板部38の下面に合成樹脂製の押え込み接触部17を設けて、この押え込み接触部17が前記スライドガイド13の前記被押え込み部18に接触する構成としている。即ち、前記吊子4に取り付けた前記屋根板3が熱伸縮することによりこの吊子4が前記ボルト挿通孔12を介して前記ボルト被覆部10に対しスライド移動した際に、前記押え込み接触部17と前記被押え込み部18のスライド接触が、合成樹脂同士のスライド接触となるように構成している。
【0049】
更に詳しくは、押え込み接触部17は、ボルト被覆部10の上部全周を外方へ薄板状に延出させたこの延出板部17で構成して、この薄板状の押え込み接触部17を前記押え板部38の下面に沿設状態に設けている。即ち、押え込み接触部17は、ボルト被覆部10と一体成形した構成としている。また、この押え込み接触部17は、その両端部に前記スライドガイド13の長手方向の外縁部の外側に配設するガイド片を一体的に垂設した構成としている。
【0050】
従って、このように構成した本実施例によれば、吊子4に取り付けた屋根板3が熱伸縮した際に、この屋根板3の熱伸縮に伴って屋根板3を取り付けた吊子4が金具本体2に対しスライド移動するため、屋根板3が歪まず、従って屋根板3の熱伸縮(歪み)が原因で発生する音鳴り現象が抑制されると共に、吊子4がボルト挿通孔12を介して前記載置面7及び前記ボルト被覆部10(金具本体2)に対しスライド移動すると、吊子4側の前記摺動接触部11と金具本体2側の前記載置面7のスライド接触と、吊子4側の前記スライドガイド13と金具本体2側の前記ボルト被覆部10のスライド接触と、吊子4側の前記被押え込み部18と金具本体2側の前記押え込み接触部17のスライド接触とが、いずれも合成樹脂同士のスライド接触となるので、この合成樹脂同士のスライド接触は摩擦が低減されて吊子4のスムーズなスライド移動が可能となると共に、耳障りな騒音(摩擦音)の発生も防止できることとなる。
【0051】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。