特許第5661153号(P5661153)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5661153
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】排気処理装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   B23Q11/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-159234(P2013-159234)
(22)【出願日】2013年7月31日
【審査請求日】2014年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503158992
【氏名又は名称】株式会社 宇都宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】桑原 浩之
【審査官】 足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−192362(JP,A)
【文献】 特開平6−335839(JP,A)
【文献】 特開2002−320809(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102059160(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00
B24B 55/08
B24C 9/00
F24F 7/06
B01D 46/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の仕切られた作業エリア内の塵埃や有害物質等の汚染物質を含んでいる汚染排気を導入し、この導入した前記汚染排気から前記汚染物質を除去してこの汚染排気を浄化し、この浄化した浄化排気を前記工作機械内へ排出する排気処理装置であって、前記工作機械の汚染排気を吸引導入する吸引駆動部と、この吸引駆動部の吸引により導入した前記汚染排気から前記汚染物質を除去してこの汚染排気を浄化し排出する排気浄化部を備え、この排気浄化部の排気側に、この排気浄化部で浄化した浄化排気を前記工作機械内に排出するための第一排出路と、前記浄化排気を囲み部材で囲み形成した閉空間内に排出するための第二排出路と、前記第一排出路から排出する浄化排気と前記第二排出路から排出する浄化排気の夫々の排出量を調整する排出量調整弁とを設け、前記排気浄化部の吸気側に、前記汚染排気をこの排気浄化部に導入するための第一導入路と、前記第二排出路から前記閉空間内に排出された浄化排気をこの排気浄化部に導入するための第二導入路と、前記第一導入路から導入する汚染排気と前記第二導入路から導入する浄化排気の夫々の導入量を調整する導入量調整弁とを設け、前記排出量調整弁及び前記導入量調整弁を制御する調整弁制御部を設けたことを特徴とする排気処理装置。
【請求項2】
前記排気浄化部は、サイクロン方式若しくはフィルタ方式を採用した第一排気浄化部と、気液接触方式を採用した第二排気浄化部とから成る構成としたことを特徴とする請求項1記載の排気処理装置。
【請求項3】
前記第一排出路の長さ方向途中で且つ前記閉空間内に、前記第一排出路から分岐する前記第二排出路を設け、前記第一導入路の長さ方向途中で且つ前記閉空間内に、前記第一導入路に合流する前記第二導入路を設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の排気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の加工処理によって生じる塵埃や有害物質等の汚染物質を含んだ汚染排気を処理する排気処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドリルやフライス等の切削工具を加工する工作機械においては、ミストのみの発生で、有害物質の発生が無かったため、排気装置の接続が不要であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このドリルやフライス等の切削工具は、高温時の硬度や耐摩耗性に優れたコバルト添加の高速度鋼(コバルト・ハイス)や超硬合金が材料として用いられており、いずれの材料にもコバルトが含まれている。
【0004】
従来、このコバルトは、有害物質として認定されていなかったため、このコバルトを含有する材料を加工する工作機械は、上述したように排気装置の接続が不要であったが、近年、このコバルトが、作業者に対して健康障害を及ぼす恐れがあることが確認され、管理第2類物質及び特別管理物質に指定されたため、このコバルトを含有する材料を加工する工作機械は、排気装置の接続が必須となり、多くの工場は、この切削工具を加工する工作機械を複数台所有しているので、このような工作機械を複数台所有している工場では、集中排気装置等の大掛かりな排気装置の設置が必要となった。
【0005】
しかしながら、この集中排気装置の設置には多額の設備投資が必要で、また、この集中排気装置を設置することにより、この集中排気装置に不具合が生じた場合、これにつながる全ての工作機械の作業を停止しなくてはならず、更に、各工作機械が位置決めされてしまい、レイアウト変更の際、設備の移動が困難となる等、様々な問題点があった。
【0006】
本発明は、このような現状に鑑み、安価で、且つ工作機械毎に設置可能で、しかも、排気を室外、室内のいずれにも排出しなくても工作機械の汚染排気を処理することができる実用性に優れた画期的な排気処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
工作機械1の仕切られた作業エリア1A内の塵埃や有害物質等の汚染物質を含んでいる汚染排気を導入し、この導入した前記汚染排気から前記汚染物質を除去してこの汚染排気を浄化し、この浄化した浄化排気を前記工作機械1内へ排出する排気処理装置であって、前記工作機械1の汚染排気を吸引導入する吸引駆動部2と、この吸引駆動部2の吸引により導入した前記汚染排気から前記汚染物質を除去してこの汚染排気を浄化し排出する排気浄化部3を備え、この排気浄化部3の排気側に、この排気浄化部3で浄化した浄化排気を前記工作機械1内に排出するための第一排出路4と、前記浄化排気を囲み部材5で囲み形成した閉空間6内に排出するための第二排出路7と、前記第一排出路4から排出する浄化排気と前記第二排出路7から排出する浄化排気の夫々の排出量を調整する排出量調整弁8とを設け、前記排気浄化部3の吸気側に、前記汚染排気をこの排気浄化部3に導入するための第一導入路9と、前記第二排出路7から前記閉空間6内に排出された浄化排気をこの排気浄化部3に導入するための第二導入路10と、前記第一導入路9から導入する汚染排気と前記第二導入路10から導入する浄化排気の夫々の導入量を調整する導入量調整弁11とを設け、前記排出量調整弁8及び前記導入量調整弁11を制御する調整弁制御部を設けたことを特徴とする排気処理装置に係るものである。
【0009】
また、前記排気浄化部3は、サイクロン方式若しくはフィルタ方式を採用した第一排気浄化部3Aと、気液接触方式を採用した第二排気浄化部3Bとから成る構成としたことを特徴とする請求項1記載の排気処理装置に係るものである。
【0010】
また、前記第一排出路4の長さ方向途中で且つ前記閉空間6内に、前記第一排出路4から分岐する前記第二排出路7を設け、前記第一導入路9の長さ方向途中で且つ前記閉空間6内に、前記第一導入路9に合流する前記第二導入路10を設けたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の排気処理装置に係るものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述のように構成したから、工作機械の作業エリア内の塵埃や有害物質等の汚染物質を含んでいる汚染排気を室内、室外のいずれにも排出せずに処理することができ、室外へ排気するための集中排気装置の設置が不要となって設備投資を抑えることができると共に、工作機械毎に設置するので、排気装置に不具合が生じても全ての工作機械の作業が停止する恐れが無く、また、工作機械のレイアウトの自由度も規制されない実用性に優れた画期的な排気処理装置となる。
【0012】
しかも、本発明は、工作機械から汚染排気を吸引導入する導入量及び浄化した浄化排気を工作機械へ排出する排出量を自在に調整でき、この汚染排気の導入量、浄化排気の排出量の調整により、工作機械の仕切られた作業エリア内を外部に対して陰圧状態や陽圧状態に調整することができるので、例えば、作業エリア内の汚染排気を効率的に吸引し急速にこの作業エリア内の汚染物質濃度を低下することが可能となったり、被加工物の出し入れのために作業エリアの扉を開けた際、この作業エリア内の汚染排気を室内に放出させない状態にして、作業室内が汚染排気で汚染されないようにすることが可能となる実用性に優れた画期的な排気処理装置となる。
【0013】
また、請求項2記載の発明においては、より一層効率良く汚染排気を浄化することができる実用性に優れた排気処理装置となる。
【0014】
また、請求項3記載の発明においては、簡易な構成で一層容易に設計実現可能となると共にコスト安に製造可能となる実用性且つ経済性に優れた排気処理装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例を示す説明正面図である。
図2】本実施例を示す説明概略図である。
図3】本実施例の使用状態を示す説明概略図である。
図4】本実施例の使用状態を示す説明概略図である。
図5】本実施例の別例を示す説明概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
吸引駆動部2を作動すると、この吸引駆動部2の吸気側で吸引作用が生じ、この吸引作用により工作機械1の仕切られた作業エリア1A内の塵埃や有害物質等の汚染物質を含んでいる汚染排気を、第一導入路9を通じて排気浄化部3に導入し、この排気浄化部3で、導入した汚染排気中に含まれる塵埃や有害物質などの汚染物質を除去して、汚染排気中の汚染物質の含有濃度を規定値以下にした後、浄化排気として排出し、この排気浄化部3から排出した浄化排気を、第一排出路4を通じて工作機械1内へ排出する。
【0018】
即ち、本発明は、工作機械1から排出された汚染排気を、工作機械1→第一導入路9→排気浄化部3→第一排出路4→工作機械1の経路で循環し、室外、室内のいずれにも排出しない構成とし、これにより、例えば、集中排気装置等を設置して工作機械1の汚染排気を室外に排出しなくても汚染排気を処理することができることとなり、よって、設備投資を抑えることができ、しかも、工作機械1毎に設置するので、排気装置に不具合が生じても全ての工作機械の作業が停止する恐れが無く、また、工作機械1のレイアウトの自由度も規制されない実用性に優れた排気処理装置となる。
【0019】
また、本発明は、第一導入路9を通じて排気浄化部3に導入する汚染排気の導入量、即ち工作機械1から排出される汚染排気の排出量と、第一排出路4を通じて本発明の排気処理装置12から工作機械1へ排出する浄化排気の排出量、即ち工作機械1内へ供給する浄化排気の供給量とを夫々自在に調整でき、この工作機械1から排出される汚染排気の排出量と、工作機械1内へ供給する浄化排気の供給量とに差を設けることで、工作機械1の作業エリア1A内の内圧を外部、例えば、本発明の排気処理装置12や作業現場となる室内に対して陰圧状態或いは陽圧状態にすることができ、これにより、例えば、工作機械1内の汚染排気を急速排気することができ、作業終了後、直ぐに被加工物を取り出すことが可能となって作業性を向上することができたり、例えば、被加工物を作業エリア1A内から取り出す際、この作業エリア1A内に滞留している汚染排気が工作機械1の外部、即ち、作業者がいる室内空間に放出してゆくことを防止することができ、汚染排気による作業現場(室内)の環境汚染を防止し、作業者が安心して作業できる環境を保持することができるようになり、実用性に優れた画期的な排気処理装置となる。
【実施例】
【0020】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0021】
本実施例は、工作機械1の仕切られた作業エリア1A内の塵埃や有害物質等の汚染物質を含んでいる汚染排気を導入し、この導入した前記汚染排気から前記汚染物質を除去してこの汚染排気を浄化し、この浄化した浄化排気を前記工作機械1内へ排出する排気処理装置であって、前記工作機械1の汚染排気を吸引導入する吸引駆動部2と、この吸引駆動部2の吸引により導入した前記汚染排気から前記汚染物質を除去してこの汚染排気を浄化し排出する排気浄化部3を備え、この排気浄化部3の排気側に、この排気浄化部3で浄化した浄化排気を前記工作機械1内に排出するための第一排出路4と、前記浄化排気を囲み部材5で囲み形成した閉空間6内に排出するための第二排出路7と、前記第一排出路4から排出する浄化排気と前記第二排出路7から排出する浄化排気の夫々の排出量を調整する排出量調整弁8とを設け、前記排気浄化部3の吸気側に、前記汚染排気をこの排気浄化部3に導入するための第一導入路9と、前記第二排出路7から前記閉空間6内に排出された浄化排気をこの排気浄化部3に導入するための第二導入路10と、前記第一導入路9から導入する汚染排気と前記第二導入路10から導入する浄化排気の夫々の導入量を調整する導入量調整弁11とを設け、前記排出量調整弁8及び前記導入量調整弁11を制御する調整弁制御部を設けた排気処理装置である。
【0022】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細に説明する。
【0023】
本実施例の吸引駆動部2は、送風機を用いた構成とし、この送風機の吸引作用により工作機械1から汚染排気を吸引導入し、送風作用により工作機械1へ浄化排気を排出する構成としている。
【0024】
また、この吸引駆動部2は、インバータ制御により吸排気能力を自在に調整し得る構成としている。
【0025】
また、本実施例の排気浄化部3は、二段階式の排気浄化部3に構成し、サイクロン方式若しくはフィルタ方式を採用した第一排気浄化部3Aと、気液接触方式を採用した第二排気浄化部3Bとから成る構成としている。
【0026】
具体的には、サイクロン方式を採用した第一排気浄化部3Aを一段目の排気浄化部3とし、水槽(水を貯溜した槽)を採用した第二排気浄化部3Bを二段目の排気浄化部3としている。
【0027】
即ち、本実施例は、一段目の第一排気浄化部3Aで、遠心分離作用でコバルト等を含む切削粉塵等の有害物質の大半を汚染排気中から分離処理し、二段目の第二排気浄化部3Bで、この第一排気浄化部3Aで分離しきれず、なお排気汚染中に含まれている前記有害物質を水中で捕集し、この第二排気浄化部3Bから放出される汚染排気が、コバルト濃度が規定値以下に低減された浄化排気として排出される構成としている。
【0028】
また、本実施例は、この第二排気浄化部3Bに汚染排気を流通することで、この第二排気浄化部3Bに貯溜した水で汚染排気の温度を低下させ(冷却し)、工作機械1に温度の高い浄化排気が供給されないように構成している。
【0029】
即ち、温度の高い浄化排気が工作機械1の作業エリア1Aに供給されると、作業エリア1A内の温度が上昇してゆき作業環境が変化し加工精度にバラツキが生じてしまうので、本実施例は、この作業エリア1A内に供給する浄化排気を水槽である第二排気浄化部3Bを流通させることでこの浄化排気を冷却し、作業エリア1A内の温度上昇を抑制して加工精度にバラツキが生じない構成としている。
【0030】
尚、より加工精度の向上を図るため、作業エリア1A内に供給する手前に温度調節器を設けて、浄化排気の温度を一定温度に調整した後、作業エリア1A内に供給する構成としても良い。
【0031】
また、第二排気浄化部3Bは、水槽内にコバルト吸着繊維を配設し、このコバルト吸着繊維でコバルトを吸着し、捕集したコバルトをリサイクル可能とした構成としても良い。
【0032】
尚、本実施例では、図1,2に示すように、この第一排気浄化部3Aと第二排気浄化部3Bとの間に吸引駆動部2を配設した構成としている。
【0033】
また、本実施例の排気浄化部3は、吸気側となる汚染排気導入側に第一導入路9と第二導入路10とを連設し、排気側となる浄化排気排出側に第一排出路4と第二排出路7とを連設した構成としている。
【0034】
具体的には、図2に示すように、一段目の第一排気浄化部3Aに第一導入路9と第二導入路10とを接続し、第二排気浄化部3Bに第一排出路4と第二排出路7とを接続した構成としている。
【0035】
より具体的に説明すると、第一導入路9は、一端部を工作機械1と連設し、他端部を第一排気浄化部3Aと連設する構成とし、工作機械1の汚染排気を排気浄化部3まで導入するための流路となる構成としている。
【0036】
また、第二導入路10は、第一導入路9の長さ方向途中に設けた構成とし、更に、この第二導入路10は、少なくても導入口を囲み部材5で囲み形成した閉空間6内(例えば上下面及び前後左右の四面を有する筺体内)に設けた構成とし、この閉空間6内の浄化排気を導入する構成としている。
【0037】
また、第一排出路4は、一端部を工作機械1と連設し、他端部を第二排気浄化部3Bと連設する構成とし、排気浄化部3から排出する浄化排気を工作機械1に排出するための流路となる構成としている。
【0038】
また、第二排出路7は、第一排出路4の長さ方向途中に設けた構成とし、更に、第二導入路10同様、少なくても排出口を囲み部材5で囲み形成した閉空間6内に設けた構成とし、この閉空間6内に浄化排気を排出する構成としている。
【0039】
尚、本実施例では、吸引駆動部2、排気浄化部3、第二排出路7、第二導入路10の全てを囲み部材5で囲み形成した閉空間6内に設けた構成とし、第二排出路7を通じて閉空間6内に浄化排気を排出し、この第二排出路7から排出し閉空間6内に滞留する浄化排気を、第二導入路10を通じて排気浄化部3へ導入する構成としている。
【0040】
即ち、本実施例は、工作機械1→第一導入路9→排気浄化部3→第一排出路4→工作機械1の第一の循環経路と、閉空間6→第二導入路10→排気浄化部3→第二排出路7→閉空間6の第二の循環経路との、二つの循環経路を形成し、汚染排気及び浄化排気をこれらの循環経路で循環させて、外部、即ち、室内、室外のいずれにも汚染排気及び浄化排気を排出しない構成としている。
【0041】
また、本実施例は、排気浄化部3の二段目の第二排気浄化部3Bに気液接触方式を採用しているので、この第二排気浄化部3Bから排出される浄化排気は水分含有量が多く、このまま工作機械1へ供給すると、この供給した浄化排気の水分により、工作機械1の作業エリア1A内に錆等を生じさせる不具合が発生する可能性があるため、この第二排気浄化部3Bの下流側、具体的には、この第二排気浄化部3Bに連設した第一排出路4の、第二排出路7を設けた箇所の手前に水分除去部13を設けて、この水分除去部13を通過することで浄化排気中に含まれる水分が除去される構成としている。
【0042】
この水分除去部13は、フィルタで水分をトラップする構成や、ヒータで加熱し水分を蒸発する構成等、浄化排気中の水分除去若しくは低減が可能な構成であれば適宜採用し得るものである。
【0043】
また、本実施例は、排気浄化部3の吸気側、具体的には第一排気浄化部3Aの吸気側に導入量調整弁11を設けて工作機械1からこの第一排気浄化部3Aに導入する汚染排気の導入量を自在に調整し得る構成、言い換えると、工作機械1から排出される汚染排気の排出量を自在に調整し得る構成としている。
【0044】
具体的には、第一導入路9に第一導入量調整弁11A、第二導入路1に第二導入量調整弁11Bを設けた構成とし、例えば、工作機械1から排出される汚染排気の排出量を少なくする場合は、第一導入路9側の第一導入量調整弁11Aの開口度を小さくし、第二導入路10側の第二導入量調整弁11Bの開口度を大きくして、第一導入路9を通じて工作機械1から排出される汚染排気の排出量を少なくし、この汚染排気の排出量、即ち、排気浄化部3に導入する汚染排気の導入量が少なくなった分、第二導入路10から導入する浄化排気の導入量を多くし、排気浄化部3へ導入する汚染排気と浄化排気のトータル導入量が変動しない構成、即ち、排気浄化部3には、常に吸引駆動部2の吸引能力に応じた一定の導入量を導入する構成としている。
【0045】
また、本実施例は、排気浄化部3の排気側、具体的には第二排気浄化部3Bの排気側に排出量調整弁8を設けて本実施例の排気処理装置12から排出する浄化排気の排出量を自在に調整し得る構成、言い換えると、工作機械1内へ供給される浄化排気の供給量を自在に調整し得る構成としている。
【0046】
具体的には、第一排出路4に第一排出量調整弁8A、第二排出路7に第二排出量調整弁8Bを設けた構成とし、例えば、工作機械1内へ供給される浄化排気の供給量を少なくする場合は、第一排出路4側の第一排出量調整弁8Aの開口度を小さくし、第二排出路7側の第二排出量調整弁8Bの開口度を大きくして、第一排出路4を通じて工作機械1へ供給する浄化排気の供給量を少なくし、この浄化排気の供給量、即ち、排気浄化部3から工作機械1へ排出する浄化排気の排出量が少なくなった分、第二排出路7を通じて閉空間6内へ排出する浄化排気の排出量を多くし、排気浄化部3から排出する浄化排気のトータル排出量が変動しない構成としている。
【0047】
このように、工作機械1から排出される汚染排気の排出量と、工作機械1内へ供給される浄化排気の供給量とを調整し、且つ、閉空間6へ排出する浄化排気の排出量と、閉空間6から導入する浄化排気の導入量とを調整することで、工作機械1内を、本実施例の排気処理装置12(閉空間6)や作業現場となる室内に対して、陰圧状態若しくは陽圧状態とすることができる構成としている。
【0048】
尚、本実施例では、第一排出路4、第二排出路7の夫々に排出量調整弁8A,8Bを設け、第一導入路9、第二導入路10の夫々に導入量調整弁11A,11Bを設けた構成としたが、図5に示すように、第一排出路4と第二排出路7との連設部(分岐地点)に排出量調整弁8を設け、第一導入路9と第二導入路10との連設部(合流地点)に導入量調整弁11を設けた構成としても良い。
【0049】
また、本実施例では、この第一排出路4に設けた第一排出量調整弁8A及び第二排出路7に設けた第二排出量調整弁8B、並びに第一導入路9に設けた第一導入量調整弁11A及び第二導入路10に設けた第二導入量調整弁11Bは、調整弁制御部で作動制御する構成としている。
【0050】
尚、この調整弁制御部を工作機械1側の処理プログラムで制御するように構成すれば、所定のタイミングで第一排出量調整弁8A、第二排出量調整弁8B及び第一導入量調整弁11A、第二導入量調整弁11Bを夫々作動させて、工作機械1を所定のタイミングで陰圧状態若しくは陽圧状態とすることが可能となる。
【0051】
上述のように構成した本実施例の作用・効果について以下に説明する。
【0052】
本実施例は、吸引駆動部2を作動すると、この吸引駆動部2の吸気側で吸引作用が生じ、この吸引駆動部2の吸気側に配設した排気浄化部3の一段目の第一排気浄化部3Aに、工作機械1の仕切られた作業エリア1A内の塵埃やコバルト等の有害物質等を含んでいる汚染排気を、第一導入路9を通じて吸引導入する。
【0053】
この第一排気浄化部3Aに導入した汚染排気を、この第一排気浄化部3A内で遠心分離作用により、塵埃やコバルト等の有害物質を分離し、有害物質含有濃度を低減した汚染排気として、吸引駆動部2の排気側から送出する。
【0054】
この吸引駆動部2から送出した有害物質含有濃度を低減した汚染排気を、この吸引駆動部2の排気側に配設した排気浄化部3の二段目の第二排気浄化部3Bに導入する。
【0055】
この第二排気浄化部3Bに導入した有害物質含有濃度を低減した汚染排気を、この第二排気浄化部3B内に貯溜した水の中に排出し、この水で残留しているコバルト等の有害物質を捕集し、更に汚染排気中の有害物質含有濃度を低減して、有害物質含有濃度、具体的には、コバルト含有濃度を規定値以下とした状態で、浄化排気としてこの第二排気浄化部3Bから排出する。
【0056】
この第二排気浄化部3Bから排出した浄化排気を、この第二排気浄化部3Bに連設した第一排出路4を通じて工作機械1内へ供給する。
【0057】
このように、本実施例は、工作機械1の汚染排気を、工作機械1→第一導入路9→第一排気浄化部3A→吸引駆動部2→第二排気浄化部3B→第一排出路4→工作機械1の経路で循環し、室外、室内のいずれにも排出することなく処理をすることが可能となる。
【0058】
よって、室外排気用の集中排気装置等の設置が不要となって、設備投資を抑えることができ、しかも、工作機械1毎に設置するので、排気処理装置12に不具合が生じても全ての工作機械1の作業が停止する恐れが無く、また、工作機械1のレイアウトの自由度も規制されない実用性に優れた排気処理装置となる。
【0059】
また、本実施例は、上述したように、第一導入路9を通じて排気浄化部3に導入する汚染排気の導入量、即ち工作機械1から排出される汚染排気の排出量と、第一排出路4を通じて本実施例の排気処理装置12から排出する浄化排気の排出量、即ち工作機械1内へ供給する浄化排気の供給量とを夫々自在に調整できるように構成したので、この工作機械1から排出される汚染排気の排出量と、工作機械1内へ供給する浄化排気の供給量とに差を設けることで、工作機械1の作業エリア1A内の内圧を、外部の排気処理装置12や作業現場となる室内に対して陰圧状態或いは陽圧状態に調整することができ、この内圧調整によって、例えば、工作機械1内の汚染排気を急速排気することができたり、また、被加工物を作業エリア1A内から取り出すためにこの作業エリア1Aと外部とを仕切る扉14を開けた際に、この作業エリア1A内に滞留している汚染排気がこの扉14から工作機械1の外部、即ち、作業者がいる室内空間に放出してゆくことを防止したりすることができる。
【0060】
具体的に説明すると、急速排気する場合は、排気直前に、図3に示すように、先ず、第一導入路9の導入量調整弁11の開口度を小さくし、第一排出路4の排出量調整弁8の開口度を大きくして、工作機械1から排出される汚染排気の排出量よりも、工作機械1内へ供給する浄化排気の供給量を多くし、これにより、工作機械1の作業エリア1A内を加圧して、陽圧状態にする。
【0061】
この際、循環する排気のトータル流量を保持するために、第二導入路10の導入量調整弁11の開口度を大きくし、第二排出路7の排出量調整弁8の開口度を小さくするので、閉空間6は、第二排出路7から排出される浄化排気の排出量よりも、第二導入路10から導入する(吸い込む)浄化排気の導入量の方が多くなって陰圧状態となり、工作機械1(作業エリア1A)と排気処理装置12(閉空間6)との間に圧力差が生じる。
【0062】
この工作機械1(作業エリア1A)が陽圧状態となり、排気処理装置12(閉空間6)が陰圧状態となった状態で、第一導入路9の導入量調整弁11の開口度を大きくし、第一排出路4の排出量調整弁8の開口度を小さくすると共に吸引駆動部2の吸排気能力をアップし、この生じた圧力差と吸引駆動部2の吸引作用の増加の相乗効果によって、作業エリア1A内の汚染排気が勢いよく工作機械1から排出され、この作業エリア1A内に滞留する汚染排気を短時間で排気することができ、従って、作業終了後、直ぐに被加工物を取り出すことができるようになり、排気待ちの時間が短縮でき、作業性が向上する。
【0063】
また、被加工物を作業エリア1A内から取り出すためにこの作業エリア1Aと外部とを仕切る扉14を開けた際に、この作業エリア1A内に滞留している汚染排気がこの扉14から工作機械1の外部、即ち、作業者がいる室内空間に放出してゆくことを防止する場合は、作業終了後、図4に示すように、第一導入路9の導入量調整弁11の開口度を大きくし、第一排出路4の排出量調整弁8の開口度を小さくして、工作機械1から排出される汚染排気の排出量よりも、工作機械1内へ供給する浄化排気の供給量を少なくし、これにより、工作機械1の作業エリア1A内を減圧して、外部(作業現場となる室内)よりも陰圧状態にする。
【0064】
この作業エリア1A内を外部よりも陰圧状態にすることで、扉14を開けても、外部、即ち、室内の空気が作業エリア1Aに流入することとなり、作業エリア1A内の汚染排気は作業者がいる室内へは放出されないこととなる。
【0065】
また、加工処理中も同様に、作業エリア1A内の内圧が外部よりも若干陰圧となるよう、工作機械1から排出される汚染排気の排出量と、工作機械1内へ供給する浄化排気の供給量とを調整することで、扉14の隙間などから汚染排気が室内にリークする恐れも無くなり、コバルト等有害物質を含有する汚染排気により作業現場が汚染されることを防止することが可能となる。
【0066】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0067】
1 工作機械
1A 作業エリア
2 吸引駆動部
3 排気浄化部
3A 第一排気浄化部
3B 第二排気浄化部
4 第一排出路
5 囲み部材
6 閉空間
7 第二排出路
8 排出量調整弁
9 第一導入路
10 第二導入路
11 導入量調整弁
【要約】
【課題】工作機械の汚染排気を室外、室内のいずれにも排出することなく処理することができる排気処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】汚染排気を吸引する吸引駆動部2と、汚染排気を浄化する排気浄化部3を備え、この排気浄化部3の吸気側に、浄化排気を工作機械1内に排出するための第一排出路4と、浄化排気を閉空間6内に排出するための第二排出路7と、工作機械内に排出する浄化排気量を調整する排出量調整弁8とを設け、排気浄化部3の吸気側に、汚染排気を排気浄化部3に導入するための第一導入路9と、閉空間6内の浄化排気を排気浄化部3に導入するための第二導入路10と、汚染排気の導入量を調整する導入量調整弁11とを設け、排出量調整弁8及び導入量調整弁11を制御する調整弁制御部を設けた排気処理装置。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5