(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661185
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ガス発生装置およびシートベルトプリテンショナ
(51)【国際特許分類】
B60R 22/46 20060101AFI20150108BHJP
B60R 21/26 20110101ALI20150108BHJP
B60R 21/264 20060101ALI20150108BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
B60R22/46
B60R21/26 100
B60R21/264
B01J7/00 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-530008(P2013-530008)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(86)【国際出願番号】JP2012070954
(87)【国際公開番号】WO2013027691
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2013年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2011-182434(P2011-182434)
(32)【優先日】2011年8月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】503175047
【氏名又は名称】オートリブ株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 亮一
(72)【発明者】
【氏名】笹原 隆臣
【審査官】
水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2011−509861(JP,A)
【文献】
特表2001−514120(JP,A)
【文献】
特開2005−112302(JP,A)
【文献】
特開平5−168905(JP,A)
【文献】
特開2000−168487(JP,A)
【文献】
特開2001−114064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/46
B01J 7/00
B60R 21/26
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体となるホルダと、
一端が端面によって閉じている円筒形状であり内部にガス発生剤が充填され、他端側が前記ホルダに接続されたハウジングと、
前記ハウジングの内部にて前記ホルダに取り付けられていて、外部から受けた信号に起因して前記ガス発生剤に点火するスクイブとを備え、
前記ハウジングは、前記端面に設けられ、ガス発生時に該端面にき裂を誘発させる溝部を有し、
前記溝部は、前記端面の中心からはずれた位置に開裂の起点を有し、
前記ハウジングは、ガス発生時に前記起点から開裂し、該開裂した箇所からガスが噴出することを特徴とするガス発生装置。
【請求項2】
基体となるホルダと、
一端が端面によって閉じている円筒形状であり内部にガス発生剤が充填され、他端側が前記ホルダに接続されたハウジングと、
前記ハウジングの内部にて前記ホルダに取り付けられていて、外部から受けた信号に起因して前記ガス発生剤に点火するスクイブとを備え、
前記ハウジングは、前記端面に設けられ、ガス発生時に該端面にき裂を誘発させる溝部を有し、
前記溝部は、中心である1点から放射状に形成された複数の溝を有し、
前記溝部の中心は前記端面の中心からはずれた位置になるよう設けられていて、
前記ハウジングは、ガス発生時に前記溝部の前記中心から開裂し、該開裂した箇所からガスが噴出することを特徴とするガス発生装置。
【請求項3】
基体となるホルダと、
一端が端面によって閉じている円筒形状であり内部にガス発生剤が充填され、他端側が前記ホルダに接続されたハウジングと、
前記ハウジングの内部にて前記ホルダに取り付けられていて、外部から受けた信号に起因して前記ガス発生剤に点火するスクイブとを備え、
前記ハウジングは、前記端面に設けられ、ガス発生時に該端面にき裂を誘発させる溝部を有し、
前記溝部は複数の溝を有し、
前記複数の溝の交点は前記端面の中心からはずれた位置になるよう設けられていて、
前記ハウジングは、ガス発生時に前記複数の溝の交点から開裂し、該開裂した箇所からガスが噴出することを特徴とするガス発生装置。
【請求項4】
前記ハウジングは、幅方向の断面および前記端面が、円弧と弦とで囲まれる形状となっていて、
前記端面の中心は、前記円弧が描く円の中心であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のガス発生装置。
【請求項5】
前記溝部の中心は、前記端面の重心に設けられることを特徴とする請求項4に記載のガス発生装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のガス発生装置を備えたことを特徴とするシートベルトプリテンショナ。
【請求項7】
当該シートベルトプリテンショナは、
前記ガス発生装置の長手方向と交差する方向へ伸びる管状のガス案内部材であって一端側にて該ガス発生装置に接続され前記端面から噴き出すガスを一端側から他端側へと導くガス案内部材と、
前記他端側に設けられてガス圧によって移動する可動部材と、
前記可動部材に連動してウェビングを巻きとるスピンドルとをさらに備え、
前記溝部は、前記ガス案内部材の前記一端側へ片寄るよう前記端面の中心からはずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のシートベルトプリテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス発生装置と、このガス発生装置を利用してウェビングを引き締めるシートベルトプリテンショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シートベルト装置は、急停止や衝突などによって車両に大きな減速度が作用した際に、慣性力による乗員の前方への飛出しを防ぐための安全装置である。シートベルト装置は、帯状のウェビングを利用して乗員を座席に拘束する。ウェビングはその根元側が座席横の車室側面下方に設置されたリトラクタに巻かれて収納され、先端側が車室側面上方に設置されたスルーアンカに通されて車室内に繰り出されている。この先端側にはタングプレートが備えられていて、乗員はタングプレートを引っ張って座席の反対側に設けられたバックルに挿し込むことでシートベルト装置を装着することができる。
【0003】
近年のリトラクタにはプリテンショナが備えられている。プリテンショナは車両衝突などの緊急時においてウェビングをリトラクタ内に巻き込む機構であって、ウェビングを引き締めて乗員の身体に密着させ拘束力を高める働きを有している。通常のプリテンショナにはガス発生装置が含まれていて、ガス圧を利用することでウェビングを瞬時に巻き取ることが可能になっている。
【0004】
一般的な上記ガス発生装置では、ガスの発生源として、専用のハウジングに充填されたガス発生剤を有している。このハウジングは、ガス発生剤の燃焼と共に高まるガス圧によって開裂する構成となっている。例えば特許文献1に記載されているガス発生器では、ACカップ(ハウジング)にスコア(溝)を設けることで、ハウジングが開裂する際に生じる破断片がより大きくかつ数が少なくなるよう、き裂が生じる方向を誘導している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−137245号公報
【発明の概要】
【0006】
近年では、車両の小型化や軽量化に伴って、プリテンショナやそこに含まれるガス発生装置に対しても小型で簡潔な構成が望まれている。これらをその性能を低下させることなく小型化するためには、ガス発生装置から噴出するガスの流れをさらに整える必要がある。しかし上述したように、ガスはハウジングの開裂した部位から噴出するため、ガスの整流化は簡単ではない。
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような課題に鑑み、小型化および性能の向上を図ることが可能なガス発生装置およびシートベルトプリテンショナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるガス発生装置の代表的な構成は、一端が端面によって閉じている円筒形状であり内部にガス発生剤が充填されたハウジングと、ハウジングにその他端に取り付けられ外部から受けた信号に起因してガス発生剤に点火するスクイブとを備え、ハウジングは、端面に設けられてガス発生時において端面にき裂を誘発させる溝部を有し、ガス発生時に、溝部の開裂の起点が端面の中心からはずれた位置になるよう設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記の溝部はその開裂の起点が端面の中心からはずれた隅に位置するよう設けられているため、ハウジングは端面の隅から開裂しそこからガスを噴出する。ここで、「開裂の起点」とは、より具体的には、例えば複数の溝が交差する点など、ガス発生時にハウジングが破れ始める点を意味している。従来のガス発生装置におけるハウジングでは、溝部は端面の中心に対してその周囲に均等なき裂を誘発させるよう設けられていた。しかし上記構成では、溝部は端面上の片寄った位置にき裂を誘発させる。この構成によると、ガスの噴出位置をあえて片寄らせて設定しているため、ガス発生装置はシートベルトプリテンショナに対する設置位置を変えなくてもその向きを変えることでガスの供給方向を調節することができる。これによってシートベルトプリテンショナの性能向上を図ることができ、ひいてはその小型化に資することも可能になる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるガス発生装置の他の代表的な構成は、一端が端面によって閉じている円筒形状であり内部にガス発生剤が充填されたハウジングと、ハウジングにその他端に取り付けられ外部から受けた信号に起因してガス発生剤に点火するスクイブとを備え、ハウジングは、端面に設けられてガス発生時において端面にき裂を誘発させる溝部を有し、溝部は、中心である1点から放射状に形成された複数の溝を有し、溝部の中心が端面の中心からはずれた位置になるよう設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記の溝部の中心とは、開裂の起点のことを示している。すなわち、上記構成においても、ガスの噴出位置が端面上の片寄った位置に設けられている。特に、溝部は、中心の一点から放射状に形成された複数の溝を有する形状になっている。この形状の溝部であれば、中心の一点(複数の溝の交点)が起点となって開裂し、ガスは溝部の中心点を中心にして噴出する。したがって、この形状の溝部であれば、任意の位置に設けることによってガスの噴出位置や噴出方向も任意かつ容易に設定することが可能になる。また、複数のガス発生装置におけるそれぞれの開裂の仕方のばらつきを抑え、ガス発生装置の品質を安定させることができる。
【0012】
上記課題を解決するために、本発明にかかるガス発生装置の他の代表的な構成は、一端が端面によって閉じている円筒形状であり内部にガス発生剤が充填されたハウジングと、ハウジングにその他端に取り付けられ外部から受けた信号に起因してガス発生剤に点火するスクイブとを備え、ハウジングは、端面に設けられてガス発生時において端面にき裂を誘発させる溝部を有し、溝部は複数の溝を有し、複数の溝の交点が端面の中心からはずれた位置になるよう設けられていることを特徴とする。
【0013】
上記の溝部の交点も、開裂の起点となる点であり、ガスの噴出の中心となる点である。この溝部の交点を端面上の片寄った任意の位置に設けることで、ガスの噴出位置や噴出方向も任意かつ容易に設定することが可能になる。また、複数のガス発生装置におけるそれぞれの開裂の仕方のばらつきを抑え、ガス発生装置の品質を安定させることができる。
【0014】
上記のハウジングは、幅方向の断面および端面が、円弧と弦とで囲まれる形状となっていて、端面の中心は、円弧が描く円の中心であってもよい。このような構成によって溝部を端面上の片寄った位置に設けることでも、ガス発生装置はシートベルトプリテンショナに対する設置位置を変えなくてもその向きを変えることでガスの供給方向を調節することが可能になる。これによってシートベルトプリテンショナの性能向上を図ることができ、ひいてはその小型化に資することも可能になる。
【0015】
上記の溝部の中心は、端面の重心(図心)に設けられてもよい。重心(図心)であればガスの圧力が集まりやすいため、端面上の片寄った位置であったとしても効率よく開裂してガスを噴出させることが可能になる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明にかかるシートベルトプリテンショナの代表的な構成は、上記のガス発生装置を備えたことを特徴とする。上記ガス発生装置はガスの噴出位置をあえて片寄らせて設定しているため、ガス発生装置の設置位置を変えなくてもその向きを変えることによって、より効率のよい方向へガスを供給するよう調節することが可能になる。したがって、当該シートベルトプリテンショナの性能向上を図ることができ、ひいてはその小型化に資することも可能になる。
【0017】
上記のシートベルトプリテンショナは、ガス発生装置の長手方向と交差する方向へ伸びる管状のガス案内部材であって一端側にてガス発生装置に接続され端面から噴き出すガスを一端側から他端側へと導くガス案内部材と、他端側に設けられてガス圧によって移動する可動部材と、可動部材に連動してウェビングを巻きとるスピンドルとをさらに備え、溝部は、ガス案内部材の一端側へ片寄るよう端面の中心からはずれた位置に設けられているとよい。
【0018】
上記構成によれば、ガス発生装置の溝部はガス案内部材の一端側へ片寄るように設けられているため、ガス案内部材の他端側に設けられている可動部材に対して、ガスの経路をより長く確保することができる。このようにして、さらなる小型化が許容できるよう当該シートベルトプリテンショナの性能を向上または維持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型化および性能の向上を図ることが可能なガス発生装置およびシートベルトプリテンショナを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態にかかるシートベルトプリテンショナを備えたシートベルトを例示した図である。
【
図3】
図2のシートベルトプリテンショナの概略的な内部構成を例示した図である。
【
図4】
図3のガス発生装置を単独で例示した図である。
【
図5】
図4のガス発生装置の第1の変形例を例示した図である。
【
図6】
図4のガス発生装置の第2の変形例を例示した図である。
【
図7】
図4のガス発生装置の第3の変形例を例示した図である。
【
図8】
図7(a)のガス発生装置を備えたシートベルトプリテンショナの概略的な内部構成を例示した図である。
【符号の説明】
【0021】
R1・R2・R3・R4 …矢印、P1 …中心点、C1 …中心、E1 …円弧が描く円、100 …シートベルト、102 …座席、104 …ウェビング、106 …リトラクタ、108 …スルーアンカ、110 …タングプレート、112 …バックル、114 …フレーム、116 …スピンドル、118 …プリテンショナ、120・200・300・400 …ガス発生装置、122 …ガス案内部材、122a …ガス案内部材の一端側、122b …ガス案内部材の他端側、124・204・304・404 …端面、126 …ピストン、128 …歯すじ、130 …ピニオンギヤ、134 …ガス発生剤、136・202・302・402 …ハウジング、136a …ハウジングの一端側、136b …ハウジングの他端側、140 …スクイブ、141 …ホルダ、142a・142b …ピン、144 …溝部、406 …円弧、408 …弦
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
(シートベルト)
図1は、本発明の実施形態にかかるシートベルトプリテンショナを備えたシートベルト100を例示した図である。シートベルト100は、座席102に備えられた安全装置であって、帯状のウェビング104を使用して乗員を座席102に拘束する。ウェビング104は、根元側がリトラクタ106に巻き取られていて、先端側は上方のスルーアンカ108を通って下方へ折り返されてアンカプレート(図示省略)に固定されている。スルーアンカ108から折り返された先のウェビング104にはタングプレート110が備えられていて、乗員はこのタングプレート110をバックル112に挿し込むことでシートベルト100を装着することができる。
【0024】
(リトラクタ)
図2は、
図1のリトラクタ106の概略的な分解図である。
図2に例示するように、リトラクタ106は、フレーム114と、ウェビング104(
図1参照)を巻き取る際の軸となるスピンドル116と、緊急時に作動するシートベルトプリテンショナ(プリテンショナ118)とを備えている。
【0025】
スピンドル116は円筒形状であって、フレーム114に回転可能に取り付けられる。スピンドル116は、バネ類やモータ類(共に図示省略)の力を利用してウェビング104(
図1参照)を巻き取る。
【0026】
プリテンショナ118は、不図示のセンサが車両衝突等による衝撃を検知した際に作動するウェビング104(
図1参照)の巻取り装置である。プリテンショナ118は内部にガス発生剤134(
図4参照)を有していて、ガス圧を利用することで、スピンドル116をウェビング104の巻き取り方向に瞬時に回転させてウェビング104を引き締める。これにより、ウェビング104の乗員の拘束力を高め、乗員のより十全な保護が可能になる。
【0027】
(シートベルトプリテンショナ)
図3は、
図2のシートベルトプリテンショナ118の概略的な内部構成を例示した図である。
図3に例示するように、プリテンショナ118にはガスの発生源として、ガス発生装置120が備えられている。ガス発生装置120は、管状のガス案内部材122の一端側122aに取り付けられている。ガス案内部材122はL字形状であって、ガス発生装置120の長手方向と交差する方向へ伸びている。ガス案内部材122は、ガス発生装置120の端面124から噴出したガス(矢印R1)を、一端側122aから他端側122bへと導く。
【0028】
ガス案内部材122の他端側122bには、第1の可動部材としてピストン126が設けられている。ガス発生装置120からガスが噴出されると、ピストン126はガス圧によって他端側122b(矢印R2方向)へと移動する。ピストン126は直線に並んだ歯すじ128を有していて、ラック(直線歯車)として機能する。ピストン126の歯すじ128は、第2の可動部材であるピニオンギヤ130とかみ合っている。ピニオンギヤ130は、ピストン126が矢印R2方向へと移動することで図中右方向(矢印R3)に回転する。
【0029】
ピニオンギヤ130の中心側はスピンドル116と連結している。ピニオンギヤ130の回転方向(矢印R3)は、スピンドル116におけるウェビング104(
図1参照)の巻き取り方向への回転と一致している。したがって、ピニオンギヤ130が回転すると、スピンドル116はウェビング104を巻き取る。以上説明したように、プリテンショナ118が作動すると、可動部材であるピストン126およびピニオンギヤ130に連動してスピンドル116がウェビング104を巻き取るため、ウェビング104は引締められて乗員をさらに拘束する。このようにして、プリテンショナ118はシートベルト100の乗員保護性能を高めている。
【0030】
(ガス発生装置)
図4は、
図3のガス発生装置120を単独で例示した図である。
図4(a)は
図3と同様に、ガス発生装置120を断面図として表わしている。
図4(a)に例示するように、ガス発生装置120の内部には顆粒上のガス発生剤134が充填されている。ガス発生剤134は、燃焼によってガスを発生させる。なお、ガス発生剤134の形状等の具体的な構成はここに記載した事項に限られず、様々な種類のガス発生剤134を用いることができる。
【0031】
ガス発生剤134はハウジング136に充填されている。ハウジング136は円筒形状であって、一端側136aが端面124によって閉じている。ハウジング136は、ガス発生剤134の燃焼時においてガス圧によって開裂する構成となっている。ハウジング136の材質には主に金属が用いられるが、これに限ることなく様々な材質が用いられる。ハウジング136の他端側136bは、基体となるホルダ141に接続している。
【0032】
ハウジング136の内部には、他端側136bからスクイブ140が取り付けられている。スクイブ140はいわゆる着火装置であって、内部に着火薬(図示省略)を有している。スクイブ140には導電性のピン142a・142bが設けられていて、外部から受けた信号に起因して電気が流れて着火薬が発火する仕組みとなっている。そしてこの着火薬の燃焼によって、ガス発生剤134に点火がなされる。
【0033】
図4(b)は、
図4(a)のガス発生装置120の矢視A図であって、主に端面124を例示した図である。
図4(b)に例示するように、ハウジング136には溝部144が設けられている。溝部144は、ハウジング136がガス圧によって開裂する際に、端面124にき裂を誘発させる働きを有している。
【0034】
溝部144は、一点(中心点P1)から複数の溝が放射状に形成された形状を有している。この形状であると、溝部144の中心である中心点P1は複数の溝の交点でもあって、この中心点P1が開裂の起点となってそこから周囲に向かってき裂が生じて開裂する。そして、ガスは溝部144の中心点P1を中心にして噴出する。したがって、この形状の溝部144であれば、任意の位置に設けることによってガスの噴出位置や噴出方向も任意かつ容易に設定することが可能である。また、複数のガス発生装置におけるそれぞれの開裂の仕方のばらつきを抑え、ガス発生装置の品質を安定させることができる。
【0035】
本実施形態では、溝部144をあえて端面124の中心C1からはずれた位置に設けていて、ハウジング136は端面124の隅から開裂しそこからガスを噴出する構成となっている。具体的には、溝部144は、その中心である中心点P1が、端面124の中心C1からはずれた位置となるよう設けられている。本実施形態では、溝部144が放射状であるため形状の中心が分かりやすいが、溝部144が他の形状の場合、例えば溝部が直線形状であったり不規則な形状であったりした場合は、「溝部の中心」すなわち開裂の起点には重心(図心)や長さ方向の中心などが該当する。
【0036】
従来のガス発生装置120におけるハウジング136では、溝部144は端面124の中心C1に対してその周囲に均等なき裂を誘発させるよう設けられていた。しかし本実施形態では、溝部144は端面124の片寄った位置にき裂を誘発させる。
【0037】
ここで再び
図3を参照する。本実施形態では、ガス発生装置120の溝部144を、ガス案内部材122の一端側122aすなわちピストン126とは反対側に片寄るように設けている。これによって、仮に端面124の中心C1からガスを噴出させた場合と比べて、ピストン126に対してのガスの経路がより長くなっている(L2>L1(L1は端面124の中心C1とピストン126との距離。L2は溝部144の中心点P1とピストン126との距離))。このようにして、当該プリテンショナ118では、小型化された構成であっても十分なガスの経路を確保している。なお、ガス発生装置120の溝部144を設ける位置は、ガスを効率よく供給できる位置であればよい。また、ガス発生装置120は、プリテンショナ118の構成に応じて溝部144の配置位置を変えるよう向き(姿勢)を変えて設置することもできる。
【0038】
これら説明したように、本実施形態では、ガス発生装置120のガスの噴出位置をあえて片寄らせて設定している。そのためガス発生装置120は、プリテンショナ118に対する設置位置を変えなくても、その向きを変えることでガスの供給方向を調節することが可能できる。このようにしてガス発生装置120はプリテンショナ118の性能向上を図ることができる。そしてプリテンショナ118は、性能が向上したことでさらなる小型化を許容することも可能になっている。
【0039】
(変形例1)
図5は、
図4のガス発生装置120の第1の変形例(ガス発生装置200)を例示した図である。
図5は、
図4(a)と同様にガス発生装置200の断面図である。
図5ガス発生装置200は、ハウジング202の形状において
図4のガス発生装置120と異なっている。
【0040】
図5に例示するように、ハウジング202の端面204は、断面視において中央に向かって傾斜しながら突出した形状、すなわち立体視すると三角錐状に突出した形状となっている。本例の開裂の起点(溝部の中心)は、この三角錐形状の斜面上において、端面204の中心からはずれた位置に形成されている。端面204がこのような形状であれば、溝部144が開裂した場合においてガスを斜め方向に噴出させることができる。このような構成のガス発生装置200は、ガスを
図4のガス発生装置120とは異なる方向へ供給させたい場合に好適に利用することができる。
【0041】
(変形例2)
図6は、
図4のガス発生装置120の第2の変形例(ガス発生装置300)を例示した図である。
図6もまた、
図4(a)と同様にガス発生装置300の断面図であって、ハウジング302の形状において
図4のガス発生装置120と異なっている。
【0042】
図6に例示するように、ハウジング302の端面304は湾曲して突出した形状となっている。本例の開裂の起点(溝部の中心)もまた、この湾曲した斜面上において、端面304の中心からはずれた位置に形成されている。このような形状の端面304であっても、溝部144が開裂した場合においてガスを斜め方向に噴出させることができる。このような構成のガス発生装置300は、ガスを
図4のガス発生装置とは異なる方向へ供給させたい場合に好適に利用することができる。
【0043】
(変形例3)
図7は、
図4のガス発生装置120の第3の変形例(ガス発生装置400)を例示した図である。
図7(a)もまた、
図4(a)と同様にガス発生装置400の断面図であって、ハウジング402の形状において
図4(a)のガス発生装置120と異なっている。
【0044】
ハウジング402は、円筒形でありつつも、側部の形状の一部が変化している。
図7(b)は、
図7(a)のガス発生装置400の端面404を上方から例示した図である。
図7(b)に例示するように、ハウジング402は、その端面404が、円弧406と弦408とで囲まれた、D字に近い形状をしている。
図7(c)は
図7(a)のB−B断面図であって、ハウジング402の長手方向に直交する幅方向の断面図である。
図7(c)に例示するように、ハウジング402は、端面404のみならず、所定の個所(詳細には、
図7(a)のスクイブ140よりも先端側)にて幅方向の断面がD字形状になるよう形成されている。
【0045】
図7(b)に例示するように、端面404上において溝部144は複数の溝からなり、その中心である中心点P1すなわち溝部の交点(開裂の起点)が、円弧406が描く円E1の中心C1からはずれて設けられている。好ましくは、本例のように、溝部144はその中心点P1が端面404の重心G1(図心)に重なるように設けてもよい。このような構成であれば溝の交点から開裂しやすくなり、溝部144は端面404上の片寄った位置に設けられているものの、効率よく開裂してガスを噴出させることが可能になっている。
【0046】
図8は、
図7(a)のガス発生装置400を備えたシートベルトプリテンショナ118の概略的な内部構成を例示した図である。
図8に例示するように、ガス発生装置400もまた
図3のガス発生装置120と同様に、溝部144がピストン126とは反対側に片寄るように設けられる。これによって、仮に端面404の円弧406(
図7(b)参照)が描く円E1の中心C1からガスを噴出させた場合と比べて、ピストン126に対してのガス(矢印R4)の経路がより長くなっている(L3>L1(L1は中心C1とピストン126との距離。L3は溝部144の中心点P1とピストン126との距離))。このようにして、当該プリテンショナ118では、小型化された構成であっても十分なガスの経路を確保している。そして、ガス発生装置400は、プリテンショナ118に対する設置位置を変えなくても、回転させて溝部144が移動するように向きを変えることでガスの供給方向が調節できる。これによってシートベルトプリテンショナ118の性能向上を図ることができ、ひいてはその小型化に資することも可能になる。
【0047】
なお、上記各実施例におけるシートベルトプリテンショナ118は、ラックアンドピニオン方式の構造のものとして例示したが、これに限らず、ボール等の回転体を用いた構造のものであっても本発明の技術的思想が応用できることは、いうまでもない。
【0048】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0049】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ガス発生装置と、このガス発生装置を利用してウェビングを引き締めるシートベルトプリテンショナに利用することができる。