特許第5661197号(P5661197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5661197有価金属を含有する精鉱粒子の処理工程および設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661197
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】有価金属を含有する精鉱粒子の処理工程および設備
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/10 20060101AFI20150108BHJP
   C22B 11/00 20060101ALI20150108BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20150108BHJP
   C22B 19/00 20060101ALI20150108BHJP
   F27B 15/12 20060101ALI20150108BHJP
   F27B 15/16 20060101ALI20150108BHJP
   F27B 15/14 20060101ALI20150108BHJP
   F27D 17/00 20060101ALI20150108BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C22B1/10ZAB
   C22B11/00
   C22B15/00
   C22B19/00
   F27B15/12
   F27B15/16
   F27B15/14
   F27D17/00 104K
   F27D17/00 104G
   F27D17/00 101A
   F23G7/06 M
   F23G7/06 D
【請求項の数】28
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-543841(P2013-543841)
(86)(22)【出願日】2010年12月14日
(65)【公表番号】特表2014-506288(P2014-506288A)
(43)【公表日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】FI2010051022
(87)【国際公開番号】WO2012080558
(87)【国際公開日】20120621
【審査請求日】2013年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】507221324
【氏名又は名称】オウトテック オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】ホルムストロム、 アケ
(72)【発明者】
【氏名】ルンドホルム、 カリン
(72)【発明者】
【氏名】ベルグ、 グンナル
(72)【発明者】
【氏名】グントナー、 ヨッヘン
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−013036(JP,A)
【文献】 米国特許第05123956(US,A)
【文献】 米国特許第06482373(US,B1)
【文献】 米国特許第03791812(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−1/10
C22B 11/00−11/02
C22B 15/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有価金属を含有し、さらに少なくともヒ素および硫黄を含む成分を有する精鉱粒子を処理する工程であり、
−低酸素ポテンシャルで作動する第1の焙焼ステップで前記精鉱粒子を焙焼して前記精鉱を脱ヒ素し、
−第1の焙焼ステップから放出されるオフガスを処理して、か焼物および硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分を分離し、
−第1の焙焼ステップから送られる前記か焼物を、過剰の酸素で作動する第2の焙焼ステップで焙焼し、
−第2の焙焼ステップから放出されるオフガスを処理して、か焼物および第2のプロセスガス成分を分離し、
−前記プロセスガス成分を二次燃焼し、
−前記プロセスガスを後続のガス冷却ステップおよび粉塵除去ステップで処理する精鉱粒子の処理工程において、該処理工程はさらに、
−第1のプロセスガス成分および酸素を含有する温暖な酸化剤ガスである第2のプロセスガス成分の気体混合物を形成し、
−前記気体混合物のSO3を分解して、二次燃焼チャンバから流出する流出ガスに含まれるSO3の含有量を減らし、さらに前記二次燃焼チャンバ内および後続ステップにおける付着物形成および腐食の危険性を減らすために、二次燃焼チャンバで前記気体混合物を二次燃焼し、該二次燃焼は、還元性があり硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分および酸化剤ガスとしての第2のプロセスガス成分を用いて行われ、
−前記流出ガスを後続のガス冷却ステップおよび粉塵除去ステップにさらすことを特徴とする精鉱粒子の処理工程。
【請求項2】
請求項1に記載の工程において、追加の二次燃焼空気を、二次燃焼反応主領域を経て前記二次燃焼チャンバ内に入れ、SO3の形成を防ぐことを特徴とする処理工程。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工程において、前記二次燃焼チャンバ内の気体の滞留時間を、気体混合物に存在する硫化水素、元素硫黄、硫化ヒ素および元素ヒ素が確実に完全燃焼するに十分な長さとなるように設定することを特徴とする処理工程。
【請求項4】
請求項3に記載の工程において、前記十分に長い滞留時間は、前記二次燃焼チャンバを十分な容積に構成することによって得られることを特徴とする処理工程。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の工程において、該工程は前記二次燃焼チャンバ内の温度を制御するステップを有することを特徴とする処理工程。
【請求項6】
請求項5に記載の工程において、前記二次燃焼チャンバ内の温度を制御するステップは、前記二次燃焼チャンバ内への冷却水の直接注入を含むことを特徴とする処理工程。
【請求項7】
請求項5または6に記載の工程において、前記二次燃焼チャンバ内の温度を制御するステップは、蒸気を用いて前記二次燃焼チャンバの壁を間接冷却し、前記二次燃焼チャンバの壁の温度をAs2O3またはSO3の凝縮温度を上回るようにしておくことを含むことを特徴とする処理工程。
【請求項8】
請求項7に記載の工程において、前記間接冷却を前記二次燃焼チャンバの壁の二重殻構造によって形成される放射冷却器によって実施し、前記蒸気は前記壁の二重殻構造の内部を流れ、前記チャンバの内部における熱ガスの放射によって飽和蒸気を過熱蒸気に変換することを特徴とする処理工程。
【請求項9】
請求項8に記載の工程において、熱を前記過熱蒸気から回収してエネルギーを内部または外部使用することを特徴とする処理工程。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の工程において、第1の焙焼ステップを第1の流動層反応炉によって実施し、第2の焙焼ステップを第2の流動層反応炉によって実施することを特徴とする処理工程。
【請求項11】
請求項10に記載の工程において、該工程は、第1の流動層反応炉の流動層から熱を抽出することを特徴とする処理工程。
【請求項12】
請求項10または11に記載の工程において、該工程は、第2の流動層反応炉の流動層から熱を抽出することを特徴とする処理工程。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の工程において、第1の焙焼ステップから放出される前記オフガスを、少なくとも1つの第1のサイクロン分離器によって分離することを特徴とする処理工程。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の工程において、第2の焙焼ステップから放出される前記オフガスを、少なくとも1つの第2のサイクロン分離器によって分離することを特徴とする処理工程。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載の工程において、第1のプロセスガス成分と混合される第2のプロセスガス成分の温度は650℃〜700℃であることを特徴とする処理工程。
【請求項16】
請求項2に記載の工程において、前記追加の二次燃焼空気を、少なくとも200℃まで予熱することを特徴とする処理工程。
【請求項17】
請求項16に記載の工程において、前記追加の二次燃焼空気を、空冷コンベヤまたはか焼物冷却器によって予熱することを特徴とする処理工程。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載の工程において、第2の焙焼ステップで前記か焼物を完全に焙焼することを特徴とする処理工程。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の工程において、前記有価金属は、白金族金属、金、銀、銅または亜鉛のいずれかであることを特徴とする処理工程。
【請求項20】
有価金属を含有し、さらに少なくともヒ素および硫黄を含む成分を有する精鉱粒子を処理する設備であり、
−低酸素ポテンシャルで作動し前記精鉱を脱ヒ素する第1の焙焼反応器と、
−第1の焙焼反応器からオフガスを受け取り、該オフガスからか焼物および硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分を分離するよう構成された第1の分離器と、
−第1の焙焼反応器および第1の分離器からか焼物を受け取り、過剰の酸素で作動するよう構成された第2の焙焼反応器と、
−第2の焙焼反応器からオフガスを受け取り、該オフガスからか焼物および第2のプロセスガス成分を分離するよう構成された第2の分離器と、
−前記プロセスガス成分の二次燃焼手段と、
−前記プロセスガスをさらに処理するガス冷却装置および粉塵除去装置とを有する精鉱粒子の処理設備において、
該処理設備はさらに、第1のプロセスガス成分および酸素を含有する温暖な酸化剤ガスである第2のプロセスガス成分の気体混合物の形成手段を有し、前記二次燃焼手段は、前記気体混合物を二次燃焼する二次燃焼チャンバを有し、該二次燃焼チャンバは、前記気体混合物のSO3を分解して、二次燃焼チャンバから流出する流出ガスに含まれるSO3の含有量を減らし、さらに前記二次燃焼チャンバ内および後続のガス冷却装置および粉塵除去装置内における付着物形成および腐食の危険性を減らすために、還元性があり硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分および酸化剤ガスとしての第2のプロセスガス成分を用いて稼動することを特徴とする精鉱粒子の処理設備。
【請求項21】
請求項20に記載の設備において、該設備は第1のプロセスガス成分を第1の分離器から前記二次燃焼チャンバに案内する第1のパイプラインを有し、前記気体混合物の形成手段は第1のパイプラインに沿った複数の位置に複数の連結部を有し、該連結部を経由して第2のプロセスガス成分を第1のプロセスガス成分の流れに導くことを特徴とする処理設備。
【請求項22】
請求項20または21に記載の設備において、前記二次燃焼チャンバは、前記気体混合物が供給される反応チャンバを形成する第1のチャンバ部と、追加の燃焼空気を入れる挿入手段を含む第2のチャンバ部と、気体が前記二次燃焼チャンバから流出する第3のチャンバ部とを有することを特徴とする処理設備。
【請求項23】
請求項20ないし22のいずれかに記載の設備において、前記二次燃焼チャンバは、該チャンバ内の温度を制御する冷却手段を有することを特徴とする処理設備。
【請求項24】
請求項23に記載の設備において、前記冷却手段は、冷却水を前記二次燃焼チャンバの中に注入して直接冷却する水噴霧ノズルを有することを特徴とする処理設備。
【請求項25】
請求項23または24に記載の設備において、前記冷却手段は前記二次燃焼チャンバの壁の二重殻構造によって形成される放射冷却器を有し、前記殻の間を流れる蒸気によって前記二次燃焼チャンバの壁を間接冷却することを特徴とする処理設備。
【請求項26】
請求項20ないし25のいずれかに記載の設備において、該設備は、第1の流動層反応炉の流動層から熱を抽出する第1の熱交換器を有することを特徴とする処理設備。
【請求項27】
請求項20ないし26のいずれかに記載の設備において、該設備は、第2の流動層反応炉の流動層から熱を抽出する第2の熱交換器を有することを特徴とする処理設備。
【請求項28】
請求項25に記載の設備において、該設備は、前記放射冷却器によって生成される過熱蒸気から熱を回収しエネルギーを内部または外部利用する第3の熱交換器を有することを特徴とする処理設備。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、請求項1に係る工程に関するものである。また、本発明は請求項20に係る設備に関するものである。より具体的には、本発明は当該工程および設備におけるオフガス管理および処理に関するものである。
【発明の背景】
【0002】
当該技術分野における公知技術は、例えば、論文「Roasting developments - especially oxygenated roasting, Developments in Mineral Processing 第15巻、2005年、第403〜432頁、K.G. Thomas、A.P. Cole」、「Roasting of gold ore in the circulating fluidized-bed technology Developments in Mineral Processing 第15巻、2005年、第433〜453頁、J. Hammerschmidt、J. Guntner、B. Kerstiens」や、国際公開第2010/003693号、米国特許第6,482,373号明細書、オーストラリア国特許第650783号明細書、米国特許第4,919,715号明細書に示されている。
【0003】
ヒ素を含有する銅や金の精鉱は、好ましくは脱ヒ素焙焼を、銅プラントにおける製錬またはシアン化物浸出による後処理の前に行うことによって処理される。
【0004】
脱ヒ素焙焼は、ヒ素揮発中の酸素ポテンシャルを制御することによってなされ、鉄を磁鉄鉱や磁硫鉄鉱として保持する。その後、か焼物は、原材料が銅含有精鉱からなる場合には、従来的なマット製錬によってさらに処理される。金を豊富に含むか焼物は、大抵の場合シアン化物浸出によって処理される。しかしながら、浸出が効率的であるのは、か焼物が完全に焙焼されているかまたは硫酸化焙焼されている場合のみである。ゆえに、ヒ素を豊富に含む金精鉱を処理する従来的な方法は、両段階ともに流動層からなる2段階の焙焼工程である。
【0005】
第1の流動層は脱ヒ素段階であり、非常に低い酸素ポテンシャルで働く。そして、第2の流動層は完全焙焼または硫酸化の段階であり、過剰の酸素とともに働く。
【0006】
脱ヒ素焙焼にするプロセスガスは、元素硫黄、硫化水素および硫化ヒ素などの、硫黄が豊富な気体化合物を含有するものである。その一方で、第2の酸化焙焼にするプロセスガスは、酸素やSO3などの酸化化合物を含有するものである。
【0007】
焙焼プロセスガスは通常、か焼物およびサイクロン内のプロセスガスの分離、二次燃焼、ガス冷却、電気集塵装置や場合によりフィルタバッグの粉塵清浄、ならびに最終的にはSO2から硫酸への転換によってさらに処理される。
【0008】
さらなる工程における公知の問題は次の通りである。
【0009】
−降り積もって機器を傷め、または気体の通路を塞ぎ得る付着物の形成。付着物は例えば、プロセスガスにより冷却中の箇所または機器の低温表面上に形成される。
【0010】
−付着物を形成し得る、低温表面上におけるヒ素の凝縮。
【0011】
−腐食を引き起こし付着物の形成の一因となり得る、低温表面上における酸性霧の凝縮。
【0012】
−酸性霧の量が多い場合には、廃液処理のための費用も高くつくこととなる。
【0013】
−システムの熱回収は大抵、電気エネルギーの生産よりも有利さに欠ける飽和蒸気の生産に限定されてきた。
【0014】
これらの問題は、以前は以下の方法で解決されていた。
【0015】
二次燃焼空気を、例えばサイクロンの出口に加えてもよい。しかしながら、場合によっては、二次燃焼はガス導管内における付着の原因となり、これは雰囲気温度で大量の空気を用いて燃焼を行う場合に起こりやすい。
【0016】
機器の低温表面上における付着物の形成は、通常は予熱空気の使用により解決され、高い投資費用や操業費用(維持および大抵は加熱燃料)をかけた独立した加熱装置を必要となる。機器への付着物の形成は、通常は低温表面ができないように機器を断熱することによって避けられる。しかしながら、断熱が損傷したり、適切になされなかった箇所に付着物が生じるとも考えられる。
【0017】
2段階焙焼に際する気体冷却は、冷却塔内の水噴射を用いた直接冷却もしくは流動層内の冷却コイルを介する直通の間接冷却か、または従来型の蒸気ボイラのいずれか一方によってなされてもよい。精鉱における鉛やヒ素の含有量およびプロセスガスにおけるSO3の濃度は、適切な冷却方法に影響を与える。なぜならば、これらの成分によって低温表面上に付着物が生成されるからである。
【0018】
付着物を形成する化合物の例は、第1の脱ヒ素段階では冷却コイルでの元素鉛であり、蒸気ボイラのボイラ管でのSO3または三酸化ヒ素である。今日では一般的に、SO3の濃度が高いと廃液処理プラントの費用がより上がると考えられている。
【0019】
機器の腐食は一般的に、SO3の凝縮が全くまたはほとんど生じないように機器を断熱することによって回避できる。しかしながら、腐食は時間の経過につれて、また例えば断熱が損傷したり、適切になされなかった箇所に生じるとも考えられる。プロセスガスのSO3の濃度の上昇を避けることができれば最善であろう。これは今日では、現代的な制御システムを用いて工程を制御することによってある程度はなされる。さらなる低下がなされると好都合となる。
【0020】
蒸気の形状での熱回収は、今日では流動層自体の蒸気発生コイルによって大抵は過熱することなく行われる。通常の蒸気ボイラは時としてプロセスガス通路内で使用されるが、上述したように付着物形成や腐食について同様の危険性を伴う。
【発明の目的】
【0021】
本発明の目的は、上述の欠点を取り除くことである。
【0022】
本発明の具体的な目的は、二次燃焼中におけるガス清浄システム下流での腐食や付着物の形成のおそれを減らす工程および設備を提供することである。さらに、本発明の目的は、プロセスガスのSO3の濃度を下げることができ、SO3による腐食損傷のおそれを減らす工程および設備を提供することである。さらに、本発明の目的は、廃液処理費用を減らす工程および設備を提供することである。さらに、本発明の目的は、プロセスガスの総量を減らして、投資費用および操業費用の両方を節約することである。
【発明の概要】
【0023】
本発明に係る工程は、請求項1に記載されている事項によって特徴付けられる。また、本発明に係る設備は、請求項20に記載されている事項によって特徴付けられる。
【0024】
本発明は、有価金属を含有し、さらに少なくともヒ素および硫黄を含む成分を有する精鉱粒子を処理する工程に関する。本工程では、低酸素ポテンシャルで作動する第1の焙焼ステップで精鉱粒子を焙焼して精鉱を脱ヒ素する。第1の焙焼ステップから放出されるオフガスを処理して、か焼物および硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分を分離する。さらに、本工程では、第1の焙焼ステップから送られるか焼物を、過剰の酸素で作動する第2の焙焼ステップで焙焼する。第2の焙焼ステップから放出されるオフガスを処理して、か焼物および第2のプロセスガス成分を分離する。さらに、本工程では、プロセスガス成分を二次燃焼し、プロセスガスを後続のガス冷却ステップおよび粉塵除去ステップで処理する。
【0025】
本発明によると、本工程ではさらに、第1のプロセスガス成分および酸素を含有する温暖な酸化剤である第2のプロセスガス成分の気体混合物を形成し、気体混合物のSO3を分解して、二次燃焼チャンバから流出する流出ガスに含まれるSO3の含有量を減らし、さらに二次燃焼チャンバ内および後続ステップにおける付着物形成および腐食の危険性を減らすために、二次燃焼チャンバで気体混合物を二次燃焼し、二次燃焼は、還元性があり硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分および酸化剤ガスとしての第2のプロセスガス成分を用いて行われる。最終的に本工程では、流出ガスを後続のガス冷却ステップおよび粉塵除去ステップにさらす。
【0026】
本工程の一実施例では、追加の二次燃焼空気を、二次燃焼反応主領域を経て二次燃焼チャンバ内に入れ、SO3の形成を防ぐ。
【0027】
本工程の一実施例では、二次燃焼チャンバ内の気体の滞留時間を、気体混合物に存在する容易に酸化する化合物、例えば硫化水素、元素硫黄、硫化ヒ素および元素ヒ素のすべてが確実に完全燃焼するに十分な長さとなるように設定する。
【0028】
本工程の一実施例では、十分に長い滞留時間は、二次燃焼チャンバを十分な容積に構成することによって得られる。
【0029】
本工程の一実施例では、本工程は二次燃焼チャンバ内の温度を制御するステップを有する。
【0030】
本工程の一実施例では、二次燃焼チャンバ内の温度を制御するステップは、二次燃焼チャンバ内への冷却水の直接注入を含む。
【0031】
本工程の一実施例では、二次燃焼チャンバ内の温度を制御するステップは、蒸気を用いて二次燃焼チャンバの壁を間接冷却し、二次燃焼チャンバの壁の温度をAs2O3またはSO3の凝縮温度を上回るようにしておくことを含む。
【0032】
本工程の一実施例では、間接冷却を二次燃焼チャンバの壁の二重殻構造によって形成される放射冷却器によって実施し、蒸気は壁の二重殻構造の内部を流れ、チャンバの内部における熱ガスの放射によって飽和蒸気を過熱蒸気に変換する。
【0033】
本工程の一実施例では、熱を過熱蒸気から回収してエネルギーを内部または外部使用する。
【0034】
本工程の一実施例では、第1の焙焼ステップを第1の流動層反応炉によって実施し、第2の焙焼ステップを第2の流動層反応炉によって実施する。
【0035】
本工程の一実施例では、本工程は、第1の流動層反応炉の流動層から熱を抽出する。
【0036】
本工程の一実施例では、本工程は、第2の流動層反応炉の流動層から熱を抽出する。
【0037】
本工程の一実施例では、第1の焙焼ステップから放出されるオフガスを、少なくとも1つの第1のサイクロン分離器によって分離する。
【0038】
本工程の一実施例では、第2の焙焼ステップから放出されるオフガスを、少なくとも1つの第2のサイクロン分離器によって分離する。
【0039】
本工程の一実施例では、第1のプロセスガス成分と混合される第2のプロセスガス成分は熱く、望ましくは第2のプロセスガス成分の温度は約650℃〜700℃であり、第1のプロセスガス成分との迅速な反応を確保する。
【0040】
本工程の一実施例では、追加の二次燃焼空気を、望ましくは空冷コンベヤまたはか焼物冷却器によって、少なくとも200℃まで予熱する。
【0041】
本工程の一実施例では、か焼物を第2の焙焼ステップで完全に焙焼する。
【0042】
本工程の一実施例では、有価金属は、白金族金属、金、銀、銅または亜鉛のいずれかである。
【0043】
本発明はまた、有価金属を含有し、さらに少なくともヒ素および硫黄を含む成分を有する精鉱粒子を処理する設備に関する。本設備は、低酸素ポテンシャルで作動し精鉱を脱ヒ素する第1の焙焼反応器と、第1の焙焼反応器からオフガスを受け取り、オフガスからか焼物および硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分を分離するよう構成された第1の分離器とを有する。さらに本設備は、第1の焙焼反応器および第1の分離器からか焼物を受け取り、過剰の酸素で作動するよう構成された第2の焙焼反応器と、第2の焙焼反応器からオフガスを受け取り、オフガスからか焼物および第2のプロセスガス成分を分離するよう構成された第2の分離器とを有する。さらに本設備は、プロセスガス成分の二次燃焼手段と、プロセスガスをさらに処理するガス冷却装置および粉塵除去装置とを有する。
【0044】
本発明によると、本設備はさらに、第1のプロセスガス成分および酸素を含有する温暖な酸化剤ガスである第2のプロセスガス成分の気体混合物の形成手段を有し、二次燃焼手段は、気体混合物を二次燃焼する二次燃焼チャンバを有する。二次燃焼チャンバは、気体混合物のSO3を分解して、二次燃焼チャンバから流出する流出ガスに含まれるSO3の含有量を減らし、さらに二次燃焼チャンバ内および後続のガス冷却装置および粉塵除去装置内における付着物形成および腐食の危険性を減らすために、還元性があり硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分および酸化剤ガスとしての第2のプロセスガス成分を用いて稼動する。
【0045】
本設備の一実施例では、本設備は第1のプロセスガス成分を第1の分離器から二次燃焼チャンバに案内する第1のパイプラインを有し、気体混合物の形成手段は第1のパイプラインに沿った複数の位置に複数の連結部を有し、連結部を経由して第2のプロセスガス成分を第1のプロセスガス成分の流れに導く。
【0046】
本設備の一実施例では、二次燃焼チャンバは、気体混合物が供給される反応チャンバを形成する第1のチャンバ部と、追加の燃焼空気を入れる挿入手段を含む第2のチャンバ部と、気体が二次燃焼チャンバから流出する第3のチャンバ部とを有する。
【0047】
本設備の一実施例では、二次燃焼チャンバは、チャンバ内の温度を制御する冷却手段を有する。
【0048】
本設備の一実施例では、冷却手段は、冷却水を二次燃焼チャンバの中に注入して直接冷却する水噴霧ノズルを有する。
【0049】
本設備の一実施例では、冷却手段は二次燃焼チャンバの壁の二重殻構造によって形成される放射冷却器を有し、殻の間を流れる蒸気によって二次燃焼チャンバの壁を間接冷却する。
【0050】
本設備の一実施例では、本設備は、第1の流動層反応炉の流動層から熱を抽出する第1の熱交換器を有する。
【0051】
本設備の一実施例では、本設備は、第2の流動層反応炉の流動層から熱を抽出する第2の熱交換器を有する。
【0052】
本設備の一実施例では、本設備は、放射冷却器によって生成される過熱蒸気から熱を回収しエネルギーを内部または外部利用する第3の熱交換器を有する。
【0053】
本発明の利点は、二次燃焼中におけるガス冷却の他に、二次燃焼中におけるガス清浄システム下流での付着物の問題をも解決することである。SO3によって生じる腐食損傷のおそれもまた減少する。プロセスガスの推奨される混合によりSO3の量が減少し、したがって、腐食のおそれや廃液処理費用が減少する。プロセスガスの推奨される混合により、コストのかからない予熱された二次燃焼ガス(酸素を含む)が得られる。場合により、別の方法で加熱される必要があるのは、ほんの少しの部分のみである。事前の加熱によって、二次燃焼チャンバでも、また下記の機器でも、余分で高価な予熱装置を必要とせずに付着物が形成されなくなる。推奨される二次燃焼ユニットにより、付着物の形成またはSO3による腐食のおそれなく、二次燃焼ユニットの後に蒸気過熱コイルを挿入することが可能となる。システムは、外部で蒸気過熱する(独立して燃焼される過熱器)必要なく、蒸気を過熱することができる。蒸気の生産および過熱は、プロセスガスによる冷却の必要性に対して十分に均衡がとれている。これによって、(外部の過熱器では必要とされるような)高価で複雑な制御システムを避けることが可能になることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
本発明のさらなる理解をもたらすために盛り込まれ、この明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の実施例を図解し、明細書とともに本発明の原理を説明する手助けとなる。
図1】本発明に係る工程および設備の一実施例の概略的なフローシート図である。
【発明の詳細な説明】
【0055】
図面のフローシートは、オフガス処理システムを備えた2段階焙焼設備を示す。このような処理過程の配置は、原材料がヒ素で汚染された硫化鉱精鉱であり、有価粒子が金や銀のような貴金属を含有する場合に適している。銅や亜鉛も大量または少量存在していてもよい。精鉱は、注入口29から、第1の焙焼反応器16内で実施される第1の焙焼段階1へ供給される。第1の焙焼反応器16は第1の流動層反応炉である。第1の焙焼段階1は、非常に低い酸素ポテンシャルで作動する脱ヒ素段階である。第1のサイクロン分離器18は、第1の焙焼反応器16から大量のか焼物とともにプロセスガスを受け取るように配置され、プロセスガスからか焼物、およびか焼物は少なく硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分2を分離する。か焼物は有価金属を含有し、ヒ素の含有量は少ない。脱ヒ素焙焼で残った第1のプロセスガス成分2は、元素硫黄、硫化水素および硫化ヒ素のように、硫黄を豊富に含む気体化合物である。
【0056】
第2の焙焼反応器17は、第1の焙焼反応器16および第1の分離器18からか焼物を受け取るように配置される。第2の焙焼段階3は、か焼物が十分に焙焼され、すなわち完全焙焼または硫酸化焙焼され、過剰の酸素で作動する第2の流動層反応炉である第2の焙焼反応器17内でなされる。完全焙焼または硫酸化焙焼した原料とは、すべての硫化物硫黄が取り除かれ、残留硫黄は硫酸塩から成ることを意味する。第2のサイクロン分離器19は、第2の焙焼反応器17からプロセスガスを受け取るように配置され、プロセスガスからか焼物および第2のプロセスガス成分4を分離する。第2の酸化焙焼で残った第2のプロセスガス成分4は、酸素およびSO3のような酸化化合物を含有することとなる。
【0057】
第2の焙焼反応器17および第2のサイクロン分離器19からのか焼物は、排出口30を経由して、か焼、冷却、浸出などの後処理(図示せず)へ供給される。
【0058】
本設備および工程はさらに、第1のプロセスガス成分2および酸素を含有する温暖な酸化剤プロセスガスとなる第2のプロセスガス成分4の気体混合物の形成手段を有する。
【0059】
気体混合物の形成手段は、第1のプロセスガス成分2を第1の分離器18から二次燃焼チャンバ6へ導く第1のパイプライン20に沿った複数の位置に複数の連結部21を配置するようにして設けられてもよい。第2のプロセスガス成分4を、複数の連結部21を経由して第1のプロセスガス成分2の流れに導いてもよい。これによって混合が増進され、燃焼時間が減少する。
【0060】
第2のプロセスガス成分4は熱く、通常は650〜700℃であり、焙焼ガスとの迅速な反応を確保する。温暖な追加の二次燃焼空気12を使用するときには、空冷コンベヤ(図示せず)またはか焼物冷却器(図示せず)を空気予熱器として使用し、空気を約200℃まで予熱してもよい。
【0061】
気体混合物の二次燃焼は、二次燃焼チャンバ6で実施される。二次燃焼チャンバ6は、還元性があり硫化物を豊富に含む第1のプロセスガス成分2および第2のプロセスガス成分4を用いて、さらに必要ならば温暖な空気12を用いて作動する。二次燃焼中の状態、すなわち上昇した気体温度および還元ガス成分の存在によってSO3を分解することが可能となり、したがって、プロセスガスに含有されるSO3は二次燃焼出口7で還元されることとなる。このことは重要な特徴である。なぜならば、特にSO3の露点に近づいてまたは露点を下回って作動する調整塔10およびフィルタバッグ11において、酸凝縮およびそれに続く粘着性のある粉塵の形成の危険性を減らすからである。
【0062】
二次燃焼チャンバ6は、気体混合物が供給される反応チャンバを形成する第1のチャンバ部22を有する。さらに、二次燃焼チャンバは、追加の燃焼空気12の挿入手段付きの第2のチャンバ部23を有する。追加の二次燃焼空気12は、二次燃焼反応主領域Zを経て二次燃焼チャンバ6の中に吹き込まれ、SO3の形成を防ぐ。気体は二次燃焼チャンバ6から第3のチャンバ部24を経由して流出する。二次燃焼チャンバ6を出た流出ガス7は、標準的なガス冷却および粉塵除去段階8ないし11へと導かれる。これらの段階では流出ガス7を、冷却塔8を介して電気集塵装置9に、次いでフィルタバッグ11に導いてもよい。
【0063】
二次燃焼チャンバ6は、気体混合物に存在する容易に酸化する化合物、例えば硫化水素、元素硫黄、硫化ヒ素および元素ヒ素のすべてが確実に完全燃焼するために滞留時間が十分とれるように、かなりの容積を有する必要がある。
【0064】
二次燃焼中の反応温度は発熱反応のために上昇するが、過熱を防ぐべく制御される必要がある。なぜならば、過熱は二次燃焼チャンバ6内で部分的に溶解したり粘着質になったりした原料の形成の原因となるからである。
【0065】
二次燃焼の温度制御は、水噴霧ノズル25を介して二次燃焼チャンバ6の中に冷却水を直接注入するか、蒸気過熱によって二次燃焼チャンバ6の壁15を間接冷却するか、または両方の組合せによって行われる。
【0066】
冷却水の直接注入は、エネルギー回収装置が焙焼器のフローシート内に含まれていない場合に用いられる。他方、間接的な蒸気冷却は、エネルギー回収装置28が含まれている場合に用いられる。
【0067】
蒸気冷却による間接的な冷却と組み合わせた直接的な水注入は、燃焼中の炎の温度を制御して粘着性のある材料の形成を防ぐために必要となり得る。二次燃焼壁15の間接蒸気冷却は、3つの目的にかなう。壁は、付着物が形成されずまた腐食が起こらない程度に十分に熱を帯びること、壁と二次燃焼ガスの両方の過熱を防ぐ程度に壁は十分に冷たいこと、さらに、壁は同時に過熱蒸気を生成することである。
【0068】
間接冷却手段は、二次燃焼チャンバ6の壁15の二重殻構造によって形成される放射冷却器14を有し、殻の間の蒸気の流れによって二次燃焼チャンバの壁を間接的に冷却する。壁15は冷却パネルで作られていてもよく、冷却パネルは、チャンバ6の内部での熱ガス放射によって、壁15の内部の飽和蒸気を過熱蒸気に変換する。蒸気を使用することによって、二次燃焼チャンバ6の壁温度は凝縮が壁に形成される水準までは下がらないことが確実なものとなる。
【0069】
二次燃焼チャンバ6の第3の部分24内または後続の煙道内のガス流に過熱コイルを挿入することによって、部分的にまたはもっぱら間接蒸気冷却を行うことも可能である。SO3の濃度が下がると、焙焼ガスの金属鉛蒸気は酸化し、凝縮していないPbOのような鉛化合物となる。また、プロセスガスは二次燃焼チャンバに粘着性のある材料を全くまたはほとんど生み出さない水準に制御される温度になる。それゆえに、二次燃焼チャンバの正しい断熱が必要とされる。
【0070】
鉛を含まない精鉱を取り扱う場合には、第1の熱交換器26を備え、熱を第1の流動層反応炉16の流動層から抽出してもよい(図面に一点鎖線で示される蒸気回路)。さらに、熱を第2の流動層反応器17の流動層から抽出する第2の熱交換器27を備えてもよい(図面に実線で示される蒸気回路)。熱交換器26、27は、上述のように同様の過熱実現性を有する蒸気コイル26、27であってもよい。
【0071】
鉛を含む精鉱が焙焼される場合には、第2の流動層反応炉17のみが蒸気コイル27を備えてもよい。なぜならば、鉛蒸気が第1の反応器16の蒸気コイル26上に凝縮して、付着の原因となるとともに焙焼作業に損害を与え得るからである。その場合、熱は第2の流動層反応炉17の流動層からのみ抽出される。
【0072】
望ましくは、放射冷却器14によって生成される過熱蒸気は、第3の熱交換器28に送られ、例えば浸出タンクの蒸気加熱のように工程自身の内部利用および/またはエネルギーの外部利用のために、熱を過熱蒸気から回収する。外部使用は、例えばタービンによる電気エネルギーの生産を含んでいてもよい。
【0073】
技術の進歩に伴い、本発明の基礎的な着想はさまざまな方法で実施可能であることは当業者にとっては自明である。例えば、2段階の焙焼工程について述べてきたが、工程は2以上、例えば3つかそれ以上の焙焼工程を含んでもよい。さらに、それぞれの設備は2以上、例えば3つかそれ以上の焙焼反応器を有していてもよいことを理解すべきである。したがって、本発明およびその実施例は上述の例に限定されることなく、請求項の範囲内で変更可能である。
図1