(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661242
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】硬化したコンクリート構造の処理のための耐蝕性組成物
(51)【国際特許分類】
C04B 41/62 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
C04B41/62
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2008-538038(P2008-538038)
(86)(22)【出願日】2006年10月27日
(65)【公表番号】特表2009-513477(P2009-513477A)
(43)【公表日】2009年4月2日
(86)【国際出願番号】US2006042134
(87)【国際公開番号】WO2007053483
(87)【国際公開日】20070510
【審査請求日】2009年10月21日
(31)【優先権主張番号】11/262,201
(32)【優先日】2005年10月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506124284
【氏名又は名称】ハイクリエイト インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】ロード フィリップ エス
(72)【発明者】
【氏名】ローゼンバーグ デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウォヤコウスキ ジョン
【審査官】
正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0237834(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0237835(US,A1)
【文献】
特開2003−155582(JP,A)
【文献】
特開平04−055379(JP,A)
【文献】
特開2005−193142(JP,A)
【文献】
特開2005−015307(JP,A)
【文献】
特開2000−042485(JP,A)
【文献】
特開2002−241974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/46
C04B 41/62
C23F 11/00 − 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式、
【化1】
(式中、M
+は、Na
+およびK
+からなる群より選択され、R
1は、C
1−C
24の分枝鎖または直鎖脂肪族化合物であり、R
2は、C
1−C
10の分枝鎖または直鎖脂肪族化合物である。)を有する、既に腐蝕している補強棒を含む硬化した建設後の材料に適用するための、耐蝕性をもたらす
水溶液組成物、および、
既に腐蝕している補強棒を含む硬化した建設後の材料の組合せであって、
前記建設後の材料の少なくとも1つの表面に前記組成物が適用されその内部領域まで浸透する、組合せ。
【請求項2】
前記組成物が、減粘剤を約5重量%〜約70重量%の量でさらに含む、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記減粘剤が、イソプロピルアルコール、エタノール、キシレンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
前記組成物が、二酸の金属塩の水溶液である、請求項1から3のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項5】
前記建設後の材料が、鉄筋または無筋コンクリートからなる群より選択される、請求項1から4のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項6】
前記建設後の材料がコンクリートを含む構造であり、前記組成物がコンクリートを含む構造の外面に直接適用されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項7】
前記組成物が適用された建設後の材料の既に腐蝕している補強棒が、マクロセル電流試験において、36週間を通じて0.1mVを下回る電圧レベルを示す、請求項1から6のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項8】
前記組成物を前記建設後の材料に少なくとも2回以上適用するための、請求項1から7のいずれか1項に記載の組合せ。
【請求項9】
既に腐蝕している補強棒を含む硬化した建設後の材料を処理する方法であって、
式、
【化2】
(式中、M
+は、Na
+およびK
+からなる群より選択され、R
1は、C
1−C
24の分枝鎖または直鎖脂肪族化合物であり、R
2は、C
1−C
10の分枝鎖または直鎖脂肪族化合物である。)を有する
水溶液組成物を提供する段階と、
前記組成物を前記既に腐蝕している補強棒を含む硬化した建設後の材料の表面に直接適用しその内部領域まで浸透させる段階と、
を含む、方法。
【請求項10】
前記組成物を前記表面に適用するより前に、約5重量%〜約70重量%の量の減粘剤を前記組成物に添加する段階をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記減粘剤が、イソプロピルアルコール、エタノール、キシレンおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、二酸の金属塩の水溶液である、請求項9から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記建設後の材料が既存の鉄筋または無筋コンクリートを含む、請求項9から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物を適用するより前に、前記建設後の材料の表面を洗浄する段階をさらに含む、請求項9から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物と塗料を混合する段階をさらに含む、請求項9から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物を前記建設後の材料の表面に再び適用する段階をさらに含む、請求項9から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記再適用により建設後の材料に関して防蝕機能を維持する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記建設後の材料に、コンクリート、モルタル、スタッコおよび鋼からなる群より選択される少なくとも1種類の構成要素が含まれる、請求項9から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記適用が、前記建設後の材料の腐蝕速度を低下させるために効果的である、請求項9から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記建設後の材料への前記適用が、スプレ塗布、刷毛塗り、ミスト塗布、およびそれらの組合せからなる群より選択される適用機構によって達成される、請求項9から19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が適用された建設後の材料のすでに腐蝕している補強棒が、マクロセル電流試験において、36週間を通じて0.1mVを下回る電圧レベルを示す、請求項9から20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、建設後の材料とともに使用するための組成物またはシステムに関し、より特には、建設後の鉄筋および無筋コンクリート構造に耐蝕性および/または耐湿性を提供する組成物またはシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
材料の腐蝕にかかるコストは、人間の死亡者に対して計り知れない。財政的観点から、腐蝕にかかるコストは毎年米国において3000億ドルを上回ると推定される。腐蝕を防ぐという問題には、建設および保守業界が直面している課題がなお残っている。
【0003】
一般に、建造物はコンクリート材料から造られている。従来のコンクリートは引っ張り強さが非常に低いため、コンクリートが相当の負荷を受ける適用ではコンクリートを鋼棒で補強することが慣例である。そのような場合、コンクリートは少なくとも2つの機能を有する。このような機能の1つは、補強鋼棒を腐蝕から保護することである。もう一つの顕著な機能は、剪断および圧縮応力への耐性を向上させることである。一般的な状態として、補強鋼による気候および環境条件に対する硬化したコンクリートの保護効果は、例えば、セメントの量および種類、水/セメント係数ならびにコンクリートの結合性に依存する。しかし、コンクリートは浸透性のある吸収性材料でもあるため、多くの場合、水分およびその他の物質、例えば塩化物、硫酸塩など、さらには二酸化炭素の望ましくない侵入をもたらし、その全てが補強鋼の腐蝕をもたらし得る。補強鋼が腐蝕すると膨張し、従ってコンクリートに亀裂が入り、それが次にはさらに多くの不純物の侵入、例えば、水および塩化物の移入を許し、それが次にはサイクルが築かれるにつれて腐蝕を進める。さらに、一定期間の敷設の後に蓄積されたさまざまな損傷(少なくとも剪断および圧縮応力を含む環境条件など)の結果として、最終的にコンクリートに亀裂が入り、破損することがある。これらの過程は、多くの場合、コンクリート構造の早期の劣化およびそれに続く破損をもたらす。
【0004】
このような構造の早期の劣化を解決するための努力がこれまでになされている。例えば、Jaklinの米国特許第4,869,752号は、修飾された無機ケイ酸塩、例えば修飾されたアルカリケイ酸塩の、鋼構造または補強鋼の腐蝕を防ぐためのコンクリート添加剤としての使用を記載している。Katootの米国特許第6,277,450号は、修飾されて、完全に架橋した様々な厚さのポリマを受容する金属水酸化物の活性部分となる金属表面を被覆するための塗布プロセスの使用を記載している。これまでに用いられたその他のプロセスには、建築業および建設業で用いられる金属の表面を下塗りすることが含まれる。しかし、このような方法は、一般に費用がかかり、効果がなく、非能率的/非実用的である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,869,752号明細書
【特許文献2】米国特許第6,277,450号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これまでの努力にも関わらず、効果的、効率的、かつ信頼できる耐蝕処理、材料およびプロセスに対する必要性が依然としてある。例えば、硬化した鉄筋および無筋コンクリートに耐蝕性および/または耐湿性をもたらすために建設後の材料に用いることのできる、効果的、効率的であり、望ましい費用/効果特性をもたらす組成物/システムに対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、建設後の材料を処理する際に用いるための組成物およびシステムが提供される。本開示の組成物およびシステムは、硬化したコンクリート構造を有利な耐蝕および/または耐湿材料/システムの1回以上の適用に付す処理様式において特に有用である。本開示の処理様式は、コンクリートを含む構造における、またはコンクリートを含む構造のための腐蝕の速度および/または影響を低減する際に有利に効果的である。従って、例えば、本開示の腐蝕を阻害する組成物/システムは、種々の処理技法、例えば、有効量の本開示の腐蝕を阻害する組成物/システムの、コンクリートを含む構造の1つ以上の表面への例えばスプレ、刷毛塗りまたは噴霧によって、硬化したコンクリートを含む構造に適用することができる。処理された構造(1つまたは複数)は、有利には、向上した腐蝕特性、例えば、実質的に低下した腐蝕速度を実証する。
【0008】
本開示の例示的な実施形態では、二酸のアルカリ金属塩の水溶液を用いて所望の耐蝕および/または耐湿特性をもたらす(例えば、そのアルカリナトリウム塩(alkali sodium salt))。本開示の水溶液/組成物は、硬化したコンクリート、例えば、建設後の材料および構造を含む構造および/または表面に耐蝕性および耐湿性をもたらす。本開示の水溶液/組成物は一般に、以下の式、
【化1】
(式中、M
+は、Na
+およびK
+からなる群より選択され、R
1は、C
1−C
24の分枝鎖または直鎖脂肪族化合物であり、R
2は、C
1−C
10の分枝鎖または直鎖脂肪族化合物である。)の二酸のアルカリ塩を含む。
【0009】
本開示の例示的な腐蝕を阻害する、および水分を阻害する溶液およびシステムは、減粘剤および/または本開示の溶液/システムの粘度を低下させるために効果的なキャリアをさらに含んでもよい。例えば、減粘剤を本開示の溶液/システムに約5重量%〜約70重量%の量で組み込んでもよい。減粘剤は、本開示の腐蝕を阻害する溶液/システムの、コンクリートを含む構造、例えば、コンクリートを含む構造に形成されたかまたは規定された孔隙、亀裂および/または割れ目への浸透を有利に促進する。例示的な減粘剤としては、イソプロピルアルコールまたは同様の溶媒(またはその組合せ)が挙げられる。注目される本開示の減粘剤は、さらに、不純物が本開示の腐蝕を阻害する溶液/システムと反応する可能性(例えば、コンクリートを含む構造におけるCa
+イオンとの反応可能性)を減らす働きをし、それにより本開示の腐蝕を阻害する溶液/システムの安定性および/または全体的な有効性を高めることができる。
【0010】
本開示の溶液/システムで処理することのできる建設後の材料および構造は幅広く異なり、鉄筋または無筋コンクリートの集成体または要素、モルタル、スタッコなどの構造が含まれる。本開示の例示的な実施形態では、本開示の溶液/システムを鉄筋および/または無筋コンクリート構造の外面に直接適用し、例えば、毛管作用によりその内部領域まで浸透させることができる。
【0011】
本開示のさらなる例示的な実施形態では、建設後の構造および集成体、特に硬化したコンクリート成分を含む建設後の構造および集成体を処理するための有利な方法および/または技術が提供される。本開示の方法の例示的な実施形態によれば、組成物は、建設後の構造または集成体に適用されるか、そうでなければ加えられ、組成物は、
【化2】
(式中、M
+は、Na
+およびK
+からなる群より選択され、R
1は、C
1−C
24の分枝鎖または直鎖脂肪族化合物であり、R
2は、C
1−C
10の分枝鎖または直鎖脂肪族化合物である。)を有する。組成物は一般に、腐蝕を阻害するおよび/または水分を阻害する効果を達成するために効果的な量で建設後の表面に直接適用され、それによって処理後の腐蝕の有害作用を低減する。
【0012】
例示的な実施形態によれば、本開示の方法は、減粘剤を組成物に添加する段階をさらに含み、このような減粘剤は一般に、約5重量%〜約70重量%の量で添加される。減粘剤は、イソプロピルアルコールまたは同様の溶媒(またはその組合せ)であってもよい。本開示の方法のなおさらなる実施形態では、本開示の組成物を適用するより前に洗浄段階を行って建設後表面の、表面の不純物を取り除くかまたは不純物のレベル低下させてもよい。実際に、本開示の組成物は適用より前に塗料と混合してもよい。
【0013】
本開示の腐蝕を阻害する溶液/システムに関連するさらなる特徴、機能性および有益な結果、ならびにそれに関連する処理様式は、以下の詳細な説明から、特に添付の図面と併せて読むと明らかとなるであろう。
【0014】
本開示の腐蝕を阻害する溶液/システムを作成および使用する当業者をアシストするため、添付の図面が参照される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本開示は、一般に、耐蝕性および耐湿性の保護を建設後の材料、例えばコンクリート、モルタル、スタッコ、鋼などにもたらす添加剤組成物またはシステムに関する。特に、添加剤組成物は、例えば、コンクリート中の、腐蝕しやすい材料を安定させる働きをし、亀裂、孔隙および割れ目を通過する水分の流れを遮断または阻害する働きもする。本明細書の開示は主に建設後のコンクリート材料に用いる添加剤組成物を考察しているが、コンクリート材料の使用は単に説明のためであり、添加剤組成物の使用はコンクリート材料だけに限定されることを意図するものではないことは当然理解される。
【0016】
本開示の添加剤組成物には、二酸のアルカリ金属塩の溶液、通常その水溶液が含まれる。従って、添加剤組成物は、有機アルケニルジカルボン酸金属塩(例えば、ナトリウム塩)と添加剤の混合物を含む水性溶液であってもよい。本開示の添加剤組成物は以下の式、
【化3】
(式中、M
+は、例えば、Na
+およびK
+を含む群から選択されてもよく;R
1は、C
1−C
24の分枝鎖、直鎖脂肪族炭化水素であってもよく、R
2は、C
1−C
10の分枝鎖または直鎖脂肪族炭化水素であってもよく、次の反応に従って調製することができる。
【化4】
(式中、得られる付加化合物は、次のようにアルカリ性水酸化物と反応し、
【化5】
二酸(例えば、二ナトリウム系塩)の二金属系(dimetal−based)塩溶液を形成する))を有する。他の実施形態では、添加剤組成物は、露出した鉄または鋼へ続いて適用するために、露出した鉄または鋼と接触して置かれる組成物と効果的な量で混合され得る。
【0017】
反応(I)は、通常、高温および高圧下で、本開示のアルケン二酸無水物組成物を形成するために十分な時間に対して行われる。例えば、約8時間に対し、温度は約450°Fであってもよく、圧力は約40psiであってもよい。得られる材料(未反応材料の除去後)を、適切な単位、例えば、バッチ式静止型(still)または膜型(film)蒸発器に導入して、アルケン二酸無水物組成物の留出物を回収することができる。次に、アルケン二酸無水物組成物を、通常還流冷却器を含むステンレス鋼反応装置に導入してもよい。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの水溶液は、その二ナトリウムまたは二カリウム塩溶液への変換を行うために十分な時間および温度でゆっくり導入され得る。
【0018】
本開示によれば、本開示の腐蝕を阻害する添加剤組成物は、さらに減粘剤または希釈剤を含んでもよい。減粘剤は、一般に本開示の腐蝕を阻害する組成物/溶液と非反応性の材料から選択される。本開示に従う使用のための例示的な減粘剤は、イソプロピルアルコールであるが、その他の減粘剤(および減粘剤のブレンド/混合物)、例えば、エタノールおよび/またはキシレンを、本開示の精神または範囲から逸脱することなく用いることができる。減粘剤は、一般に、活性のある組成物の初期濃度を低下させることにより、組成物の粘度を低下させ、不純物(例えば、カルシウムイオン)との反応の尤度(likelihood)を低下させるために働く。本開示の例示的な実施形態では、減粘剤は、溶液/システムの粘度を低下させるために十分なレベルで添加され、それは次には、鉄筋または無筋コンクリート構造に現場で(in situ)適用される場合に希薄となった溶液/システムの浸透度を高める。好ましくは、減粘剤は、添加剤組成物に対して約5重量%〜約70重量%のレベルで添加され、より好ましくは、約5%〜約30重量%のレベルで添加される。
【0019】
本開示の例示的な実施形態によれば、添加剤組成物は、少なくとも2つの段階の保護を処理された構造/集成体にもたらす。例えば、第1の段階の保護は、耐蝕性の保護を含むかまたは伴う。従って、希釈された溶液/システムは、潜在的な腐蝕部位に移動し、その上に単分子膜を形成することができる。注目される添加剤組成物はその一方の分子末端で極性を示し、その結果、逆に帯電した極性/イオン性基質、例えば、鉄および/またはその他の金属分子などに対して、付着および/または結合を促進する。
【0020】
本開示の添加剤組成物が建設後の構造/集成体にもたらす保護の第2の段階は耐湿性である。この耐湿性は、少なくとも部分的に、現場で適用された場合に本開示の組成物/システムにより達成される閉塞効果に起因する。添加剤組成物は反応性であるため、それは、例えば、それが遭遇する水系において金属イオンまたはその他のイオンと、コンクリートにおいてそれが遭遇する金属イオンまたはその他のイオンと、および/または補強材/建設後の構造/集成体に関連する基質においてそれが遭遇する金属イオンまたはその他のイオンと反応する傾向がある。1つ以上の注目される反応(または建設後の構造/集成体の中もしくは上に存在する構成物に起因して起こり得るその他の反応)から、限定された溶解性を有する、長い炭化水素鎖を含む分子/化合物(例えば、沈殿物)が形成される。これらの長鎖炭化水素鎖は一般に疎水性である。水をはじく油に似て、注目される分子/化合物(例えば、沈殿した物質)は、建設後の構造/集成体(例えば、本開示の溶液/システムが適用された、硬化したコンクリート基質)の細管、亀裂および/または割れ目を満たし、その結果有利に水をはじき、毛管吸収を防止または減少させる。
【0021】
注目される添加剤組成物の有効成分は高度に水溶性であるが、金属類、例えば鉄およびカルシウムなどと反応して、不水溶性またはわずかに水溶性の金属塩を形成する傾向または性癖も示し得る。従って、本開示の添加剤組成物は、建設後の構造/集成体に適用されると、ろう状物質を形成する働きをすることができ、このようなろう状物質は、実質的に親水性である第1の末端と、それと反対側の実質的に疎水性である第2の末端を特徴とし得る。
【0022】
当業者に既知のように、腐蝕は、一般に酸素還元(oxy−redux)反応として説明され得るものにおいて起こり、その結果電子が金属の中を陽極(anode)から陰極(cathode)へと流れる。陽極が保護されると、ヒドロキシル基(OH
−)からの電子は入ることができない。逆に、陰極が保護されると、電子はそこへ流れていくことができない。
【0023】
電子流の考察という目的において、本開示に従う添加剤組成物は一般に、陽極を保護する。電子が流れる時、陽極は正に帯電する。正に帯電した表面は、次に、添加剤組成物の強く負に帯電した、すなわち親水性の末端を引き付ける。添加剤組成物が表面に達する際、それは一般にそれ自体を補強鋼の鉄と結合または付着して、鉄/補強鋼の陽極電位を保護する、わずかに水溶性の疎水性層を形成する。建設後の材料がコンクリートである、本開示の処理計画の例示的な実施形態に関して、硬化した(cured/hardened)コンクリートは、一般に、硬化したコンクリート内に示される孔隙、亀裂および/または割れ目の中に水分子を含み、このような水分子は、添加剤組成物がコンクリート構造内部の補強鋼の陽極表面へ移動することを可能にする。さらに、過剰な添加剤組成物は、一般にカルシウム(またはその他の不純物)と反応して実質的に不水溶性の分子/化合物、例えば、沈殿物分子を形成し、それは硬化したコンクリート構造/集成体の透水性を低下させる。この透水性の低下は、下層にある補強鋼の腐蝕過程および/またはさらなる腐蝕の可能性をさらに緩和する。
【0024】
様々な試験法を用いて、本開示の添加剤組成物の、例えば、その建設後の適用における腐蝕への効果を評価することができる。例えば、腐蝕に関連する試験には、分極抵抗測定、IRドロップ、および目視検査が含まれ得る。さらに、ASTM G109に従う試験、予亀裂を入れた試験片におけるマクロセルおよびハーフセル腐蝕電流活性を行ってもよい。
【0025】
図1は、本開示の添加剤溶液/システムを減粘剤とともに用いて建設後のコンクリート材料で行われたマクロセル電流試験の結果を示す。
図1のプロットは、本開示の添加剤組成物の硬化したコンクリート構造内の既に腐蝕している補強棒への有利な効果を示す。この試験片は、鋼で補強されたコンクリートブロック試験片を、4日間の15%塩水のポンディング、続いて3日の乾燥を含む週ごとのサイクルに付した、168週(1176日)の腐蝕試験の結果としての腐蝕を示した。168週(すなわち、1176日)後、本開示の添加剤溶液/システムを減粘剤とともに、スプレ塗布により、すなわち、現場で、鋼で補強されたコンクリートブロック試験片に適用した。
【0026】
図1のプロットでの電圧の低下は、腐蝕の速度またはレベルの低下に相当するか、または腐蝕の速度またはレベルの低下を反映する。
図1のプロットに示されるように、電圧の低下は、本開示の溶液/システムを減粘剤とともに試験片の表面にスプレ塗布するのと実質的に同時に観察された。特に注目される電圧レベルは0.1mVの閾値レベルを下回り、それは一般に処理部位のさらなる腐蝕が存在しないことを反映する。
図1をさらに参照すると、本開示の抗腐蝕処理は、相当に低下した腐蝕のレベルまたは速度(電圧の低下により測定される)を、電圧の低下が増大し始める時点の約36週、すなわち、約1428日の期間維持するために効果的であった。36週間を通して、試験片を4日間の15%塩水のポンディング、続いて3日の乾燥からなる継続中の週ごとの腐蝕サイクルに付した。
図1に反映されるように、1513日前後でさらなる建設後処理が行われ、それは再び電圧の低下を減少させた、すなわち、建設後の材料に対する腐蝕のレベル/速度を低下させた。再度、腐蝕レベルは相当に低下した。
【0027】
本開示の抗腐蝕溶液/システムの再適用は周期ベースで、例えば、本開示の溶液/システムがその機能する能力を流失および/または枯渇する可能性のある期間に関する実験結果に基づいて行われてもよい。再適用の頻度は多数の因子、例えば、周囲条件、初期適用のレベル/量、補強鋼の設置されている深さ、コンクリート構造全体の建築年数、表面の摩耗などの影響を受け得る。本開示の抗腐蝕溶液/システムの再適用は、自動化された方法(例えば、適用機構(噴霧器など)を、本開示の溶液/システムを所定の時間/間隔で自動適用するための構造の近傍に設置することによる)で行われてもよい。本開示のさらなる例示的な実施形態では、本開示の抗腐蝕溶液/システムの適用/再適用は、例えば、RF技術などを用いて適用機構を遠隔から作動させることにより、遠隔から達成することができる。本開示の溶液/システムの周期的適用をもたらすための代替的なアプローチおよび/または機構が企図され、本明細書に開示される例示的なアプローチは本開示の制限としてみなされるべきではない。例えば、本開示の添加剤組成物/溶液は、様々な塗装、注入および/または「スキージ(squeegee)」技術によって適用することができる。
【0028】
一般に、腐蝕は阻害することが困難な過程であり、いったん始まると停止/阻止することがさらに一層困難な過程であるように思われる。添加剤組成物/溶液の建設後の構造および成分への適用は、進行中の腐蝕を軽減し、腐蝕の進行の速度および程度を低下させる際に、劇的な有効性を実証した。
図1に示されるデータは、建設後の適用という目的において本開示の溶液/システムの有効性を実証し、特に、促進老化をもたらす侵略的な試験環境における適用後36週の期間、相当に低下した電圧レベルが観察され、持続されたことを示し、そのことは本開示の溶液/システムをそれに適用した後の腐蝕の劇的な低下および/または効果的な排除と解釈される。
【0029】
図2および
図3をさらに参照すると、一連の試験片が示されている。試験片のもつ、異なる視覚的特徴の意味は、本開示の添加剤組成物/システム(硬化後)を用いる処理を受けた試料と、本開示の処理を受けなかった試料(すなわち、非処理試験片)に関して、本明細書の以下の文で考察する。
【0030】
図2は、実質的に内部が空洞(すなわち、それらの各々の高さの約3分の2が中空)であり、本開示の添加剤組成物/システムで内側を処理された、2種類の建設後のコンクリートカップを示す。添加剤組成物/システムは、処理溶液を中空のカップの内面に刷毛塗りすることにより適用された。処理後、
図2に示されるコンクリートカップの内部領域を塩溶液で実質的に満たし、このような塩溶液は空洞内に5週間維持された。
図2の画像から明らかなように、カップ壁の壁を通過しての塩の移動の徴候がわずかに発見された。セメントカップの表面に見える不揃いな形状の白色/淡色構成物は、塩とは対照的に凝集物に相当する。塩がカップの外面まで自由に移動した場合、腐蝕剤は建設後の集成体/部材、例えば、補強鋼部材の内部成分へ自由に移動でき、その腐蝕を開始/支持すると思われるので、
図2の処理されたコンクリートカップの目的において明らかなように、コンクリートカップの壁を通過する塩の移動のないことは、効果的な抗腐蝕効果を反映する。
【0031】
それに対して、
図3を参照すると、左側の2つのコンクリートカップは、建設後の本開示の抗腐蝕組成物/システムの処理を受けなかった。むしろ、塩溶液を内部領域に添加し、その中で5週間、何らの腐蝕予防処理を行わずに維持した。非処理コンクリートカップの外面の実質的な白色の斑点/領域から明らかなように、相当なレベルの、非処理カップ壁を通過する塩の移動がはっきりと識別できる。この塩の移動は、現場設置物またはその他の建設後のコンクリートシステムにおける腐蝕のレベルの増加と解釈されよう。明らかに、処理された試料(
図3の右の2つのコンクリートカップ)は、5週間にわたる試験期間の塩の移動のレベルで測定して、改良された特性を実証し、建設後の材料における腐蝕作用を阻害および/または排除する目的において本開示の建設後の処理様式の有効性をさらに確立する。実際に、
図3の比較画像は、有利な腐蝕に関連した結果を達成する際の本開示の建設後の処理様式の有効性をはっきりと示している。
【0032】
本明細書に開示されるように、添加剤組成物/システムは、既存のコンクリートまたはモルタル、すなわち、建設後の材料の表面に適用され、一般にコンクリート/モルタルの亀裂に浸透して補強鋼またはその中に位置するその他の潜在的に腐蝕性の材料に到達する働きをし、その結果、鋼の腐蝕を予防すると同時にコンクリートの透湿性を低下させる。添加剤組成物は、例えば、限定されるものではないが、ポンディングまたはローラ塗装ならびに高圧および低圧スプレ塗装を含む、標準的な適用方法により適用してもよい。本開示の例示的な実施形態では、およそ1ガロンの本開示の溶液(活性組成物20%/水に加えて約5重量%〜70重量%の減粘剤80%)は、50〜150平方フィートのコンクリート表面に適用され得る。他の例示的な実施形態では、本開示の溶液組成物を表面へ適用する前に、表面は、例えば、清浄されるか、または圧力洗浄されて存在する何れかのレイタンス、汚染物、塗装、泥および/または汚染を取り除かれ得る。次に、表面を清浄水ですすぎ、添加剤組成物の適用の前に乾燥させる機会を持たせることが好ましい。場合によっては、2つ以上の添加剤組成物の塗膜を連続的に表面に適用してもよく、例えば、2〜5回の処理を施してもよい。
【0033】
他の例示的な実施形態では、本開示の溶液/組成物は、組成物のコンクリートへの浸透を増大させるために低粘度であってもよい付加的な塗料/キャリアと混合され、その後建設後の材料へ適用され得る。この塗料/キャリアはまた、処理システムの硬化したコンクリート材料への浸透を促進する界面活性剤特性を有してもよい。例えば、本明細書に開示される溶液/組成物を、キャリアと混合し、既存の鉄筋コンクリート構造に適用してもよい。本開示の実施形態は、例えば、添加剤組成物が環境的に安全であること、および、新しいコンクリート中の空気連行剤(air entraining agent)であることを含む、多数の利点を提供する。実際に、本開示の処理システム/溶液の例示的な実施形態は、その他の種類の表面処理と比較して揮発性有機化合物(VOC)のレベルの低下を示す。さらに、建設後の適用に本開示の添加剤組成物を使用することにより、膜およびその他の水管理システムの必要性をなくし、耐用年数を増加させることにより維持コストを低下させ、ならびに防水加工および腐蝕防止という課題に対して付加価値の作り出された解決策を提供する。
【0034】
以下の実施例は、建設後の処理のための本開示の組成物/溶液の生成に関連して、アルケンおよび環状ジエンの処理を例証する。
【実施例】
【0035】
<実施例1>
約300グラムの2,5−フランジオンおよび750グラムのテトラメチルエチレンを1グラムのBHT酸化防止剤とともにステンレス鋼反応容器に加える。反応混合物をN
2ブランケット下で約250℃にて約4時間激しく撹拌する。減圧での未反応材料の除去後、得られる生成物を、約235℃および約5mmHgにて薄膜蒸発器で処理し、約730グラムの生成物軽量画分(底部の画分は廃棄物である)を回収する。
【0036】
生じた軽量画分を、還流冷却器を含むステンレス鋼反応容器に導入し、約100℃まで約2時間加熱し、加熱するとすぐに約80グラムの水酸化ナトリウム溶液をゆっくり添加し、ブタン二酸ドデセニル二ナトリウム塩の透明な黄色の溶液が形成されるまで撹拌する。次に、イソプロピルアルコールを減粘剤として約25%の量で添加してシステムの粘度を低下させる。低下した粘度は、建設後の鉄筋または無筋コンクリート構造へ現場で適用する場合に溶液/システムの潜在的な浸透度を増大させる際に有利である。
【0037】
<実施例2>
実施例1に記載のものと同様の手順に従って、98グラムの無水マレイン酸および168グラムのプロピレンテトラマを、約230℃にて約40psiで約4時間行う。未反応性材料の除去後、留出物が形成され、予備加熱および撹拌の後、約0.27グラムの量の水酸化ナトリウムをゆっくり添加してブタン二酸ドデセニル二ナトリウム塩の塩溶液を形成する。
【0038】
本開示の添加剤組成物の調製中、2−メチルオキシメチルエトキシプロパンなどの消泡剤を約0.02重量%〜約0.10重量%の量で用いてもよい。さらなる分解防止剤、例えば安息香酸、マレイン酸などを用いてもよい。イソプロピルアルコールは、粘度を低下させるために減粘剤として約25%の量で添加され、それは次には現場で鉄筋または無筋コンクリート構造へ適用される場合に浸透度を増大させる。
【0039】
本発明を、その例示的な実施形態に関して説明してきたが、当業者には、多くの改変形態、強化形態、変形形態および/または変更形態が本発明の精神および範囲を逸脱することなく達成され得ることが理解される。従って、本発明は請求項およびその同等物の範囲のみに限定されることは明白に意図される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本開示の例示的な実施形態に従って処理された建設後のセメント製品の電圧対時間のマクロセル電流試験グラフである。
【
図2】本開示に従う例示的な腐蝕を阻害する溶液/システムで処理された建設後のコンクリート製品の処理後5週間のものを示す図である。
【
図3】(i)本開示に従う例示的な腐蝕を阻害する溶液/システムで処理された建設後のコンクリート製品の処理後5週間のもの、および(ii)処理していない建設後のコンクリート製品、の比較を示す図である。