特許第5661247号(P5661247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661247
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】毛髪化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20150108BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20150108BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20150108BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A61K8/41
   A61K8/31
   A61K8/42
   A61Q5/02
   A61Q5/12
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2009-26344(P2009-26344)
(22)【出願日】2009年2月6日
(65)【公開番号】特開2010-180172(P2010-180172A)
(43)【公開日】2010年8月19日
【審査請求日】2012年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100103160
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 光春
(72)【発明者】
【氏名】八巻 悟史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 朋子
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−323495(JP,A)
【文献】 特開2005−170941(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01889602(EP,A1)
【文献】 特開2007−161605(JP,A)
【文献】 特開2004−002261(JP,A)
【文献】 特開2007−161596(JP,A)
【文献】 特開2008−037829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8
A61Q 5
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(1)〜()を含有する毛髪化粧料。
(1)下記式(II)にて表されるN−(2−ヒドロキシ−3−ステアロキシプロピル)−N、N−ジメチルアミンを、化粧料の0.05〜5質量%
CH(CH16CH−O−CHCH(OH)CH−N(CH (II)
(2)ワセリンを、化粧料の0.05〜5質量%
(3)水
(4)N−(2−ヒドロキシエチル)尿素を、化粧料の0.01〜20質量%
【請求項2】
前記毛髪化粧料は、さらに下記()〜()からなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分を含有する、請求項1に記載の毛髪化粧料。
ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドを、化粧料の0.05〜5質量%
)アミノ変性シリコーンを、化粧料の0.03〜15質量%
)高重合オルガノポリシロキサンを、化粧料の0.03〜15質量%
【請求項3】
前記毛髪化粧料の製品形態は、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアシャンプー、又は、リンスインシャンプーである、請求項1又は2に記載の毛髪化粧料
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料、特に、リンス、コンディショナー等に用いることに適した毛髪化粧料に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
毛髪をシャンプー等で洗髪した後は、一般に、艶や指通りが悪くなるため、リンスやヘアコンディショナー等の毛髪処理剤が用いられている。
【0003】
このような毛髪処理剤には、通常、第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤が配合されている。第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤は、毛髪に対して柔軟性や帯電防止性を付与する効果が高いため、処理剤をはじめ、各種の毛髪化粧料に配合されている。
【0004】
また、これら以外にもシリコーンや油分等により、毛髪処理剤の使用感触を向上させようとする試みが多数なされている。
【0005】
例えば、半固形油分のワセリンについては、下記特許文献1と2において開示されている。特許文献1には、第四級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤、3メチル−1,3−ブタンジオールとワセリンを含有する、仕上がり後の毛髪のしっとり感と柔らかさに優れた、洗い流し用の毛髪化粧料が開示されている。また、特許文献2には、エーテル型カチオン界面活性剤(第四級アンモニウム塩)とワセリンを含有する、油分の配合により、毛髪を柔軟にし、滑らかさと平滑性、しっとりさに優れる毛髪化粧料が開示されている。
【0006】
その他、特許文献3には、多糖類と第三級アミンと高級アルコールを含有する、まとまりと滑り感を付与する毛髪化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−86457号公報
【特許文献2】特開2003−327513号公報
【特許文献3】特開2005−314303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ますます様々な要因で毛髪を傷めている人が増えており、リンスやコンディショナーのような毛髪処理剤に対する要求が高まっている。よって、現状では、使用者が十分に満足できる上記のような毛髪処理剤が提供されているとは言い難い。例えば、上記の特許文献1と2の技術では、全般的に、現在求められているレベルでの十分なしっとり感やなめらかさは得られていないと判断される。また、引用文献3の技術では、多糖類の配合によって、べたつきやハリ感が認められ、十分な毛髪の柔軟性は得られていない。
【0009】
よって、本発明は、上述したような現状の毛髪化粧料による仕上がり、特に、滑らかさとしなやかさ(毛髪柔軟性)がさらに向上した、リンスやコンディショナー等に用いるのに適した毛髪化粧料を提供することを課題として完成された発明である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、特定のヒドロキシエーテルアミン化合物とワセリンを配合した毛髪化粧料を提供することにより、上記の課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、下記成分(1)〜(3)を含有する毛髪化粧料(以下、本発明の毛髪化粧料ともいう)を提供する発明である。
(1)下記式(I)にて表されるヒドロキシエーテルアミン化合物を、化粧料の0.01〜10質量%
【0012】
【化1】
【0013】
[式中、Rは炭素原子数6〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のヒドロキシアルキレン基又はヒドロキシアルキレニル基であり、R及びRは同一又は異なって、水素原子若しくは炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基である。]
(2)ワセリンを、化粧料の0.01〜20質量%
(3)水
【0014】
上記のヒドロキシエーテルアミン化合物(I)は、下記式(II)にて表されるN−(2−ヒドロキシ−3−ステアロキシプロピル)−N、N−ジメチルアミン(ステアリルPGジメチルアミン)であることが好適である。
【0015】
CH(CH16CH−O−CHCH(OH)CH−N(CH (II)
【0016】
本発明の毛髪化粧料は、さらに下記(4)〜(7)からなる群から選ばれる1種又は2種以上の成分を含有することが可能である。
(4)下記式(III)にて表される第四級アミン化合物
【0017】
【化2】
【0018】
[式中、Rは炭素原子数20〜35の、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、R及びRは同一又は異なって、水素原子又は炭素原子数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基であり、Xはハロゲンイオン又は有機アニオンである。]
(5)アミノ変性シリコーン
(6)高重合オルガノポリシロキサン
(7)ヒドロキシアルキル尿素
【発明の効果】
【0019】
本発明により、洗髪後の毛髪の仕上がりのなめらかさ、しなやかさ及びしっとり感に優れる、リンスやコンディショナー等の毛髪処理剤としての使用に適した毛髪化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の毛髪化粧料の必須の配合成分は、上記の(1)〜(3)に示す通りである。
【0021】
(1)ヒドロキシエーテルアミン化合物(I)
炭素原子数6〜24の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であるRは、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ミリストレイル基、パルミトレイル基、オレイル基、リノイル基、リノレイル基、リシノレイル基、イソステアリル基等が挙げられる。また、炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖の2価基である、ヒドロキシアルキレン基又はヒドロキシアルキレニル基Rとしては、例えば、ヒドロキシエチレン基、ヒドロキシトリメチレン基、ヒドロキシテトラメチレン基、ヒドロキシペンタメチレン基、ヒドロキシヘキサメチレン基等が挙げられる。R及びRは、上述のように、同一又は異なって水素原子又は炭素原子数1〜6の直鎖アルキル基である。
【0022】
本発明において特に好適なヒドロキシエーテルアミン化合物(I)は、Rがステアリル基(オクタデシル基)であり、Rが2−ヒドロキシプロピレン基(2価基)であり、R及びRが、共にメチル基である、上記のステアリルPGジメチルアミン(II)である。
【0023】
ヒドロキシエーテルアミン化合物(I)は、その化学構造に応じた常法、例えば、特開2004−323495号公報に開示の方法によって製造することができる。
【0024】
概説すれば、高級アルコールとBFエーテル錯体を仕込み、さらに、50〜90℃に加熱撹拌下にてエピクロルヒドリンを滴下し、熟成後、1−クロロ−3−アルコキシ−2−ヒドロキシプロパンを得、当該1−クロロ−3−アルコキシ−2−ヒドロキシプロパンと25%NaOHを仕込んで熟成を行い、2層分離し、水層をカット後、脱水して、1,2−エポキシ−3−アルコキシプロパンを得る。さらに、当該1,2−エポキシ−3−アルコキシプロパンに、ジメチルアミン又はモノメチルアミンを2〜3時間かけて添加し、熟成後、過剰のジメチルアミン又はモノメチルアミン等を減圧留去することにより、目的のヒドロキシエーテルアミン化合物(I)を得ることができる。
【0025】
本発明の毛髪化粧料におけるヒドロキシエーテルアミン化合物(I)の配合量は、化粧料の0.01〜10質量%であり、好適には0.05〜5質量%である。当該配合量が0.01質量%未満であると、ヒドロキシエーテルアミン化合物(I)の配合による毛髪の仕上がりの向上が認められなくなる傾向があり、10質量%を超えると大量配合に見合った効果が実質的に認められなくなる。
【0026】
(2)ワセリン
本発明の毛髪化粧料に配合可能なワセリンは、石油原油の真空蒸留残液を溶剤にて脱ロウした際に得られる軟膏状の物質を精製して得られる、主成分が炭素原子数24〜34の炭化水素である非晶質の炭化水素油である。ワセリンは、通常化粧料において用いられる精製タイプの市販品を用いることが可能である。
【0027】
本発明の毛髪化粧料におけるワセリンの配合量は、化粧料の0.01〜20質量%であり、好適には0.05〜5質量%である。当該配合量が0.01質量%未満であると、ワセリンの配合による毛髪の仕上がりの向上効果が認められなくなる傾向があり、20質量%を超えると大量配合に見合った効果が実質的に認められなくなり、使用感にも問題が生ずる傾向が認められる。
【0028】
(3)水
水は、イオン交換水、精製水、水道水、自然水等を用いることが可能であり、本発明の毛髪化粧料の剤形と形態に応じて自由に配合することができる。具体的には、上記の必須成分の配合量(質量%)と、毛髪化粧料の剤形と形態を考慮した他の成分の配合量(質量%)の残分として配合することが典型的である。
【0029】
<選択的配合成分>
上述したように、本発明の毛髪化粧料には、下記(4)〜(7)の成分を、これらの4種のカテゴリーの中から、あるいは、同一のカテゴリーの中から、1種又は2種以上を組み合わせて配合することにより、いっそうの洗髪後の毛髪の仕上がりのなめらかさや、しっとり感を向上させることができる。
【0030】
(4)上記の第四級アミン化合物(III)
炭素原子数20〜35の、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されていてもよい、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であるRは、直鎖のアルキル基であることが好適であり、例えば、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラトリアコンチル基、ペンタトリアコンチル基等が挙げられる。R、R及びRは、上述のように、同一又は異なって水素原子又は炭素原子数1〜6の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基である。また、Xは、塩素、ヨウ素、臭素等のハロゲンイオン、又は、メトサルフェート、エトサルフェート、メトフォスフェート、エトフォスフェート等の有機アニオンが挙げられる。
【0031】
本発明において特に好適な第四級アミン化合物(III)は、R5の炭素原子数の総和が22直鎖アルキル基であるドコシル基(ベヘニル基)を形成し、R、R及びRが、共にメチル基であリ、Xが塩素である、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド(ベヘントリモニウムクロリド)が挙げられる。
【0032】
本発明の毛髪化粧料における第四級アミン化合物(III)の配合量は、成分(4)〜(7)から選択された単独配合の場合は、化粧料の0.01〜10質量%であり、好適には0.05〜5質量%である。当該配合量が0.01質量%未満であると、当該成分の配合による、本発明の効果のさらなる向上が見込まれず、10質量%を超えると、大量配合に見合った本発明の効果の向上が実質的に認められなくなる。
【0033】
(5)アミノ変性シリコーン
本発明の毛髪化粧料に配合可能なアミノ変性シリコーンは、化粧料等の外用組成物において用いることが可能である限り、特に制限されないが、下記式(IV)の構造を有するアミノ変性シリコーンが好ましい。
【0034】
【化3】
【0035】
[式中、m及びnはそれぞれ正の整数で、m+nの平均値は3000〜20000であり、n/mは0.0001〜0.005である。好ましくは、m+nの平均値は4000〜6000であり、n/mの平均値は0.001〜0.005であり、アミノプロピルジメチコンと称されるアミノ変性シリコーンである。]
本発明の毛髪化粧料におけるアミノ変性シリコーンの配合量は、成分(4)〜(7)から選択された単独配合の場合は、化粧料の0.01〜30質量%であり、好適には0.03〜15質量%である。当該配合量が0.01質量%未満であると、当該成分の配合による、本発明の効果のさらなる向上が見込まれず、30質量%を超えると、大量配合に見合った本発明の効果の向上が実質的に認められなくなる。
【0036】
(6)高重合オルガノポリシロキサン
本発明の毛髪化粧料に配合可能な高重合オルガノポリシロキサンは、水性媒体中に分散したシリコーンエマルションの形態をとっており、
[R10SiO] (V)
[式(V)中、Rはメチル基あるいはアリール基、R10はメチル基あるいは水酸基である。yは、当該オルガノポリシロキサンが25℃で500万mPa・s以上の粘度を示す範囲のシロキサン重合度を表す正の整数である。]
で表される。
【0037】
本発明の毛髪化粧料における高重合オルガノポリシロキサンの配合量は、成分(4)〜(7)から選択された単独配合の場合は、その純分で化粧料の0.01〜30質量%であり、好適には0.03〜15質量%である。当該配合量が0.01質量%未満であると、当該成分の配合による、本発明の効果のさらなる向上が見込まれず、30質量%を超えると、大量配合に見合った本発明の効果の向上が実質的に認められなくなる。
【0038】
なお、高重合オルガノポリシロキサンは、低粘度シリコーン油などの溶剤中に溶解したエマルションとして、本発明の毛髪化粧料に配合することが好ましい。
【0039】
(7)ヒドロキシアルキル尿素
本発明の毛髪化粧料に配合可能なヒドロキシアルキル尿素は、尿素が有する水素原子の少なくとも一つが炭素原子数2〜4のヒドロキシアルキル基で置換された尿素誘導体である。具体的には、N−(2−ヒドロキシエチル)尿素、N−(3−ヒドロキシプロピル)尿素、N−(2−ヒドロキシプロピル)尿素、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)尿素、N−(4−ヒドロキシブチル)尿素、N−(3−ヒドロキシブチル)尿素、N−(2−ヒドロキシブチル)尿素、N−(2,3−ジヒドロキシブチル)尿素等のモノ(ヒドロキシアルキル)尿素;N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)尿素、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)尿素、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)尿素、N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロピル)尿素などのビス(ヒドロキシアルキル)尿素等を例示することができる。本発明において用いる好適なヒドロキシアルキル尿素は、モノ(ヒドロキシアルキル)尿素であり、特に好適には、N−(2−ヒドロキシエチル)尿素である。
【0040】
ヒドロキシアルキル尿素は、常法、例えば、低級アルコールと尿素を120℃で数時間程度反応させ、窒素との接触により脱アンモニアを行う等、により製造することが可能である。また、市販品を用いることも可能であり、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)尿素の市販品であるHYDROVANCE(B)(日本エヌエスシー株式会社製)等を用いることができる。
【0041】
本発明の毛髪化粧料におけるヒドロキシアルキル尿素の配合量は、成分(4)〜(7)から選択された単独配合の場合は、化粧料の0.01〜30質量%であり、好適には0.01〜20質量%である。当該配合量が0.01質量%未満であると、当該成分の配合による、本発明の効果のさらなる向上が見込まれず、30質量%を超えると、大量配合に見合った本発明の効果の向上が実質的に認められなくなる。
【0042】
(8)その他の成分
その他、本発明の毛髪化粧料には、必要に応じて、上記以外の成分を、本発明の効果を実質上損なわない質的、量的な範囲内で配合することができる。例えば、本発明の毛髪化粧料が、ヘアコンディショナー又はヘアリンスである場合には、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤が一般的な配合成分として例示される。また、本発明の毛髪化粧料がシャンプーである場合には、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アシルメチルタウリン酸、N−アシルグルタミン酸塩等のアニオン性界面活性剤;アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、イミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤;脂肪酸アルカノールアミン等の非イオン性界面活性剤等が特徴的な一般的配合成分として挙げられる。
【0043】
さらに、毛髪化粧料の形態を問わず、ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール等の、高級脂肪酸、炭化水素油、エステル油、アミノ変性シリコーン又はメチルポリシロキサン以外のシリコーン油等の、ワセリン以外の油分;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の保湿剤;カチオン化セルロース等のカチオン性高分子等のコンディショニング剤;トリクロロカルバニリド、イオウ、ジンクピリチオン、イソプロピルメチルフェノール等の抗フケ用薬剤;増粘剤;粘度調整剤;乳濁剤;金属イオン封鎖剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;防腐剤;粉末成分;血行促進剤、局所刺激剤、毛包賦活剤、抗男性ホルモン剤、抗脂漏剤、角質溶解剤、殺菌剤、消炎剤、アミノ酸、ビタミン類、生薬エキス類等の育毛薬剤;pH調整剤;色素;香料;低級アルコール等が挙げられる。
【0044】
(9)本発明の毛髪化粧料
本発明の毛髪化粧料は、選択する剤形と形態に応じた方法に従って製造することが可能であり、典型的には、上記の必須配合成分と必要な選択的成分を、水等の溶剤に溶解させることにより製造され、その製品形態としては、ヘアリンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアシャンプー、リンスインシャンプー等が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0046】
<評価方法>
本発明の毛髪化粧料に関し用いた評価手法を以下に示す。
【0047】
(1)仕上がりの髪のなめらかさ、しなやかさ及びしっとり感
6名の男性パネルに、通常のシャンプー(リンス効果のないもの)にて洗髪をしてもらい、十分にシャンプーを洗い落として濡れた毛髪に対して、手の平で1回試験品を取ってもらいこれを均一に毛髪に塗り込んだ後、十分に濯ぎを行って、タオルドライ後にドライヤーによって乾燥させた際の毛髪の状態についての評価を、上記の「なめらかさ」、「しなやかさ」及び「しっとり感」の各項目において行い、下記の基準で評価を行った。
【0048】
◎(とても良い):6名中全員が「なめらかである」、「しなやかである」又は「しっとりしている」という評価を行った。
○(良い):6名中5名が「なめらかである」、「しなやかである」又は「しっとりしている」という評価を行った。
○△(少し良い):6名中4名が「なめらかである」、「しなやかである」又は「しっとりしている」という評価を行った。
△(普通):6名中3名が「なめらかである」、「しなやかである」又は「しっとりしている」という評価を行った。
△×(やや良くない):6名中2名が「なめらかである」、「しなやかである」又は「しっとりしている」という評価を行った。
×(良くない):「なめらかである」、「しなやかである」又は「しっとりしている」という評価を行ったパネルが、6名中1名のみ又は0名であった。
【0049】
(2)曲げ応力(B値:gf・cm/cm)
毛髪の曲げ応力は、毛髪の硬さやはり・こし感の指標となるパラメーターである。本試験では、市販の人毛束を用いて測定を行った。具体的には、人毛束に対して、上記の実使用試験と同様に洗髪後、リンスを行い濯いだ後、ドライヤー乾燥を行い、これをカトーテック社製KES−SH毛髪曲げ試験機を用いて、これらの人毛束における曲げ応力の評価を行った。曲げ応力が小さい方が、毛髪が柔軟であることを示している。
【0050】
<試験例>
(1)基本処方における比較試験
下記表1に示す処方において、各配合成分を80℃にて攪拌溶解し、これを冷却することにより、リンス製剤を得、これらに対して上記の「なめらかさ」と「しなやかさ」に関する実使用試験と、曲げ応力の測定を行った。これらの試験の結果も併せて表1に示す。なお、表中の「---」は、配合量0質量%であることを表している(表2においても同様である)。
【0051】
【表1】
【0052】
表1の結果より、第三級アミン化合物であるステアリルPGジメチルアミンとワセリンを組み合わせて配合したリンスを用いることにより、洗髪後の毛髪になめらかさとしなやかさを付与することが可能であることが認められた(実施例1)。ステアリルPGジメチルアミンに代えて、第四級アミン化合物(ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド(比較例3,4)又はステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド(比較例5,6))を配合した場合は、なめらかさとしなやかさが不十分であった。また、ワセリンを抜去した場合(比較例2)は、しなやかさが実施例に及ばなかった。さらに、実施例1は、比較例よりも曲げ応力が小さく、毛髪への柔軟性の付与が認められた。
【0053】
(2)選択的処方における比較試験
下記表2に示す処方は、上記の基本処方に加えて、選択的成分である、ベヘントリモニウムクロリド(実施例2)、アミノプロピルジメチコン(上記の式(IV)におけるm+nの平均値は4000〜6000、n/mの平均値は0.005)(実施例3)、ジメチコン(高重合ジメチルポリシロキサン(粘度1000万mPa・s)のエマルション(シリコーン分60%)平均粒径0.3μm)(実施例4)、ヒドロキシエチル尿素(N−(2−ヒドロキシエチル)尿素(HYDROVANCE(B)(日本エヌエスシー株式会社製))(実施例5)をそれぞれ添加した場合の処方と、上記の「なめらかさ」、「しなやかさ」及び「しっとり感」に関する実使用試験の結果を示している。各リンス製剤の製造方法は、上記表1の各例に準じている。
【0054】
【表2】
【0055】
表2の結果より、各選択的成分を添加した実施例は、これらを添加しない場合(実施例1)よりも、毛髪のなめらかさとしっとり感がさらに向上することが認められた。一般に、ワセリンのような半固形油分は毛髪塗布時・すすぎ時の感触はマイナス面となる傾向があるが、各選択的成分を添加することによりそれらも改善されることもわかった。
【0056】
また、ベヘントリモニウムクロリドの代わりに、炭素原子数18のアルキル鎖が付加されているステアリルトリメチルアンモニウムクロリドを配合した場合(比較例7)は、なめらかさと、しっとり感が劣ることが認められた。
【0057】
以下に、本発明の処方例を記載する。各処方例の製造方法は、上記表1にて示した製造方法に準ずる。
【0058】
[処方例1] ヘアリンス
配合成分 配合量(質量%)
ステアロキシヒドロキシプロピルアミン 3.0
ワセリン 1.2
ステアリルアルコール 5.0
ジプロピレングリコール 5.0
グルタミン酸 0.7
ミネラルオイル 2.0
フェノキシエタノール 0.8
香料 適量
精製水 残余
【0059】
[処方例2] ヘアトリートメント
配合成分 配合量(質量%)
ステアロキシヒドロキシプロピルアミン 0.3
ワセリン 0.5
ベヘントリモニウムクロリド 1.4
セタノール 0.8
ステアリルアルコール 4.0
アミノプロピルジメチコン 3.0
(上記表2と同様)
グリセリン 5.0
プロピレングリコール 10.0
香料 適量
精製水 残余
【0060】
[処方例3] アフターヘアカラートリートメント剤
配合成分 配合量(質量%)
ステアロキシヒドロキシプロピルアミン 2.5
ワセリン 4.0
ヒドロキシエチル尿素 2.0
(上記表2と同様)
ジメチコン 5.0
(上記表2と同様)
ベヘニルアルコール 4.5
ジプロピレングリコール 8.0
ソルビトール 10.0
フェノキシエタノール 0.7
塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体液 0.3
香料 適量
精製水 残余