特許第5661255号(P5661255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661255
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】低プロフィールの器具アクセスデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20150108BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A61B17/34
   A61B1/00 320E
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2009-147749(P2009-147749)
(22)【出願日】2009年6月22日
(65)【公開番号】特開2010-5398(P2010-5398A)
(43)【公開日】2010年1月14日
【審査請求日】2012年5月15日
(31)【優先権主張番号】61/076,170
(32)【優先日】2008年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/468,153
(32)【優先日】2009年5月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507362281
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ディー. グレシャム
【審査官】 井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−226620(JP,A)
【文献】 特表2007−525242(JP,A)
【文献】 特開2007−117188(JP,A)
【文献】 米国特許第05540648(US,A)
【文献】 特表平06−509485(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/051593(WO,A1)
【文献】 特表2005−524491(JP,A)
【文献】 米国特許第05634937(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0198156(US,A1)
【文献】 特表2005−528135(JP,A)
【文献】 特開2006−061688(JP,A)
【文献】 特開平11−290329(JP,A)
【文献】 米国特許第05263939(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/34
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低プロフィールの外科アクセスデバイスであって、
その近位端に画定された開口部を有する該細長いカニューレであって、該細長いカニューレは、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面と、該カニューレを組織に係合し該カニューレを組織に取り外し可能に固定するように構成された外周表面とを含み、該カニューレの近位端は、該カニューレを組織に機械的に係合し固定する下側表面を有するフランジリングを含む、細長いカニューレと、
該細長いカニューレに動作可能に結合された弁であって、該弁は、器具類が該カニューレを通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供する、弁と、
該カニューレに対して位置決め可能であり、かつ、組織に係合され組織に取り外し可能に固定されるように構成されたシール筐体であって、該シール筐体は、その中を通る器具類の挿入のための器具シールを含み、該シール筐体と該器具シールとは、該細長いカニューレにおいて該弁と垂直に位置合わせして位置決め可能であり、該細長いカニューレと該シール筐体とは、別個にかつ機械的に組織に係合する、シール筐体と
を備えている、低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項2】
前記外周表面は、固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項3】
前記シール筐体は、組織に係合するように構成された組織係合表面を含む外側リング部分を含み、該外側リング部分は、該組織係合表面に配置された接着剤、アンカ、クリップ、該組織係合表面に配置された吸引要素、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項4】
前記カニューレは、トロカールを含み、該トロカールは、組織を穿刺するために、該カニューレを通って取り外し可能に配置されている、請求項1に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項5】
前記カニューレは、拡張器を含み、該拡張器は、該カニューレの送達と前記トロカールの取り外しとを容易にするために、該カニューレと動作可能に関連付けられている、請求項4に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項6】
前記カニューレは、ポートの中に配置された膨張可能材料を利用して固定され、該ポートは、該カニューレの前記外周表面内に画定され、該膨張可能材料は、ノズルを介して選択的に展開可能であり、該ノズルは、該カニューレを通って配置され、前記フランジの外側表面上で露出される、請求項1に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項7】
前記弁は、ゼロ閉鎖弁、ゼロシール弁、ダックビル弁、単一スリット弁、多スリット弁、トランペット弁、フラップ弁からなる群から選択される、請求項1に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項8】
前記カニューレと前記シール筐体とのうちの少なくとも一方が、吸引要素を利用して固定され、該吸引要素は、微細な針状バーブとして構成され、該微細な針状バーブは、皮膚組織と機械的に係合する、請求項1に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項9】
前記微細な針状バーブは、前記カニューレと前記シール筐体とのうちの少なくとも一方を前記皮膚組織に固定するために、表皮の最も外側の層だけを最小限に穿刺する、請求項8に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【請求項10】
低プロフィールの外科アクセスポートを外科器具類に提供するシステムであって、
その近位端に画定された開口部を有する細長いカニューレであって、該細長いカニューレは、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面と、該カニューレを組織に係合し該カニューレを組織に取り外し可能に固定するように構成された外周表面とを含み、該カニューレの近位端は、該カニューレを組織に機械的に係合し固定する下側表面を有するフランジリングを含む、細長いカニューレと、
該細長いカニューレに動作可能に結合された弁であって、該弁は、器具類が該カニューレを通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供する、弁と、
器具シール筐体であって、その中を通る器具類の流体密な挿入のために、その中に配置された器具シールを有する器具シール筐体と、
固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを介して該カニューレを組織に取り外し可能に固定するための手段と、
該器具シールが、該カニューレにおける該弁と実質的に垂直に位置合わせして位置決めされるように、該カニューレに対して該器具シール筐体を位置決めするための手段と、
接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、それらの組み合わせのうちの少なくとも1つを介して該シール筐体を組織に取り外し可能に固定するための手段であって、該細長いカニューレと該シール筐体とは、別個にかつ機械的に組織に係合する、手段と
を備えている、システム。
【請求項11】
トロカールは、外科器具類に対する通路を作るために、手術腔の中への前記カニューレの導入を容易にするために、該カニューレの前記内周表面の中に取り外し可能に配置されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記カニューレは、拡張器を含み、該拡張器は、該カニューレの導入と前記トロカールの取り外しとを容易にするために、該カニューレと動作可能に関連付けられている、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2008年6月27日出願の米国仮特許出願第61/076,170号の利益と優先権とを主張し、該米国仮特許出願の全内容が、本明細書において参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、患者の体の中への外科器具類の導入を可能にするように適合された弁システムに関する。さらに詳細には、本開示は、導入器と共に使用するための低プロフィールの弁システムに関し、該導入器は、患者の体の中への挿入のために意図され、そして、それとシーリング係合して器具を受け入れるように意図されている。
【背景技術】
【0003】
用語「腹腔鏡検査法」は、一般的に、遠隔動作される1つ以上の外科器具を伴う様々な外科処置を含み、該遠隔動作の1つ以上の外科器具は、手術腔にアクセスするために1つ以上の外科切開を通って腹部の内部に挿入される。「内視鏡」処置は、皮膚の小さな入口切開を通って挿入される1つ以上の細いチューブまたはカニューレを通って体の中空の臓器にアクセスすることを含む。腹腔鏡処置および内視鏡処置は、概して、体に挿入されるあらゆる機器が、感染の可能性を制限し、そして、(必要とされる場合には)送気された手術腔を維持するためにシールされるということを必要とする。さらに、腹腔鏡処置および内視鏡処置は、多くの場合に、外科医が、切開から遠く離れた臓器、組織、および血管に作用を及ぼすことを必要とし、その結果、かかる処置において使用されるあらゆる器具が、比較的に長く細いということを必要とする。
【0004】
かかる処置に関して、腹腔などの一定の解剖学的腔の中へのチューブの導入は、通常、カニューレアセンブリと閉塞具アセンブリとで構成されたトロカールアセンブリの使用によって達成される。カニューレアセンブリは、内臓および組織にアクセスするために、患者の体の外側からの外科器具類の直接的な経路を提供するので、カニューレアセンブリが、腹腔と外界の雰囲気との間に比較的に気体密な界面を維持するということが、重要である。カニューレアセンブリは、概して、カニューレ筐体に取り付けられたカニューレを含み、該カニューレ筐体は、カニューレ筐体の開口部を横切るシールを維持するように適合されたシールアセンブリを含む。
【0005】
体の腹腔における外科処置は、必須器官から離して腔壁を持ち上げるためにガスを送気することを必要とするので、処置は、通常、いわゆるベルス針の使用によって開始され、該ベルス針を通って、COなどのガスが、体腔に導入され、それによって、気腹を作り出す。ガスが、正圧を提供し、該正圧が、内臓から離して内部の体壁を持ち上げ、それにより、手術するための領域を外科医に提供し、それにより、手術の間に臓器との不必要な接触を回避する。閉塞具またはトロカールが、カニューレアセンブリの中に挿入され、そして、腹壁を穿刺するために使用される。カニューレアセンブリからの閉塞具またはトロカールの除去に続いて、腹腔鏡外科器具または内視鏡外科器具が、腹腔の中で外科手術を行うためにカニューレアセンブリを通って挿入され得る。腔から出て行く送気ガスの流れを塞ぐための閉塞具アセンブリを用いない場合には、他の構造が、腹腔と外界の雰囲気との間に比較的に流体密なシールを維持するために提供されなければならない。
【0006】
概して、送気外科処置に関して、実質的に流体密なシールは、例えば、器具の挿入の間、器具の操作の間、器具の停止の間(すなわち、器具が使用されていないとき、または外科医または技術者によって操作されていないとき)、および器具がカニューレに存在していないときなど、常に必要である。一定の場合において、患者の皮膚に対する弁システムの高さが、手術腔の中で器具を操作する外科医の能力に対する障害をもたらし得、一部の場合において、これが、流体密シールの崩壊、または流体密シールに対する障害をもたらし、その結果、(軽度の場合においては)気腹の相対的収縮をもたらし、(重度の場合においては)手術腔の汚染をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結果として、体腔と患者の体の外側の雰囲気との間のシールの完全性を維持するために、カニューレアセンブリとの関連でシール全体を改善する試みが行われている。しかしながら、かかるシステムは、これまでのところ、狭い手術腔の中で器具を操作するときの、外科医が提唱する潜在的なリスクに対する外科医のニーズの全範囲に対処することに失敗している。依然として確かなシールを提供しながら、組織の外傷を最小にして、カニューレと、器具支持筐体(または他のアクセス部材)とを患者に係留する外科デバイスおよび方法に対して、必要性がまた、存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の特定の一実施形態において、低プロフィールの外科アクセスデバイスは、その近位端に画定された開口部を有する細長いカニューレを含み、該細長いカニューレは、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面と、例えば、固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、および/またはそれらの組み合わせを介して動作するように皮膚組織に係合し、そして、取り外し可能に皮膚組織に固定するように構成された外周表面とを含む。弁が、器具類がカニューレを通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供するために、細長いカニューレに動作するように結合されている。
【0009】
シール筐体が含まれ、該シール筐体は、カニューレに対して選択的に位置決め可能であり、そして、例えば、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、および/またはそれらの組み合わせを介して動作するように組織に係合し、そして、取り外し可能に組織に固定するように構成されている。シール筐体は、その中を通る器具類の挿入のための器具シールを含み、該シール筐体と、細長いカニューレにおいて弁と垂直に位置合わせして選択的に位置決め可能である。
【0010】
一実施形態において、カニューレの近位端は、フランジを含み、該フランジは、カニューレを組織に機械的に係合し固定する。別の実施形態において、カニューレは、閉塞具またはトロカールを含み、該閉塞具または該トロカールは、カニューレを通って取り外し可能に配置され、該閉塞具または該トロカールは、手術腔にアクセスするために組織を穿刺するように構成されている。カニューレはまた、拡張器を含み得、該拡張器は、カニューレの送達と、トロカールの取り外しとを容易にするために、動作するようにカニューレと関連付けられる。
【0011】
別の実施形態において、カニューレは、ポートの中に配置された膨張可能材料を利用して固定され、該ポートは、カニューレの外周表面内に画定される。膨張可能材料は、1つ以上のノズルを介して選択的に展開可能であり、該ノズルは、カニューレを通って配置され、そして、フランジの外側表面において露出される。圧力またはガスが、膨張可能材料を膨張させ、そして、皮膚組織の下側にカニューレを固定するためにノズルを通って供給される。
【0012】
さらに別の実施形態において、弁は、ゼロ閉鎖弁、ゼロシール弁、ダックビル弁、単一スリット弁、多スリット弁、トランペット弁、およびフラップ弁からなり得る。さらに、別の実施形態において、カニューレまたは前記シール筐体が、吸引要素を利用して固定され、該吸引要素は、微細な針状バーブとして構成され、該微細な針状バーブは、皮膚組織にカニューレまたはシール筐体を固定するために、表皮の最も外側の層だけを最小限に穿刺する。
【0013】
本開示はまた、低プロフィールの外科アクセスポートを外科器具類に提供する方法に関し、そして、その近位端に画定された開口部を有する細長いチューブを有するカニューレを提供する最初のステップを含み、該カニューレは、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面を有する。カニューレはまた、動作するように皮膚組織に係合し、そして、取り外し可能に皮膚組織に固定するように構成された外周表面を含む。弁が含まれ、該弁は、カニューレに動作するように結合され、そして、器具類がカニューレを通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供する。該方法の該提供するステップは、その中を通る器具類の流体密な挿入のために、その中に配置された器具シールを有する器具シール筐体を提供するステップを含む。
【0014】
方法はまた、外科器具類に対する通路を作るために手術腔の中にカニューレを導入し、そして、固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、および/またはそれらの組み合わせを介してカニューレを取り外し可能に固定するためのステップと、器具シールが、カニューレにおける弁と実質的に垂直に位置合わせして位置決めされるように、カニューレに対して器具シール筐体を位置決めするステップと、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、および/またはそれらの組み合わせを介してシール筐体を皮膚組織に取り外し可能に固定するためのステップとを含む。
【0015】
したがって、本発明は、以下を提供する。
【0016】
(項目1A)
低プロフィールの外科アクセスデバイスであって、
その近位端に画定された開口部を有する細長いカニューレであって、該細長いカニューレは、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面と、動作するように組織に係合し、そして、取り外し可能に該組織に固定するように構成された外周表面とを含む、細長いカニューレと、
該器具類が該カニューレを通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供するために、該細長いカニューレに動作するように結合された弁と、
該カニューレに対して位置決め可能であり、そして、動作するように該組織に係合し、そして、取り外し可能に該組織に固定するように構成されたシール筐体であって、該シール筐体は、その中を通る器具類の挿入のための器具シールを含み、該シール筐体と、該器具シールとは、該細長いカニューレにおいて該弁と垂直に位置合わせして位置決め可能である、シール筐体と
を備えている、低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0017】
(項目2A)
上記外周表面は、固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、上記項目のうちのいずれか1項に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0018】
(項目3A)
上記シール筐体は、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0019】
(項目4A)
上記カニューレの上記近位端は、フランジを含み、該フランジは、該カニューレを組織に機械的に係合し固定する、上記項目のうちのいずれか1項に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0020】
(項目5A)
上記カニューレは、トロカールを含み、該トロカールは、組織を穿刺するために、該カニューレを通って取り外し可能に配置される、上記項目のうちのいずれか1項に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0021】
(項目6A)
上記カニューレは、拡張器を含み、該拡張器は、該カニューレの送達と、上記トロカールの取り外しとを容易にするために、動作するように該カニューレと関連付けられる、上記項目のうちのいずれか1項に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0022】
(項目7A)
上記カニューレは、ポートの中に配置された膨張可能材料を利用して固定され、該ポートは、該カニューレの上記外周表面内に画定され、該膨張可能材料は、ノズルを介して選択的に展開可能であり、該ノズルは、該カニューレを通って配置され、そして、上記フランジの外側表面において露出される、上記項目のうちのいずれか1項に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0023】
(項目8A)
上記弁は、ゼロ閉鎖弁、ゼロシール弁、ダックビル弁、単一スリット弁、多スリット弁、トランペット弁、およびフラップ弁からなる群から選択される、上記項目のうちのいずれか1項に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0024】
(項目9A)
上記カニューレと上記シール筐体とのうちの少なくとも一方が、吸引要素を利用して固定され、該吸引要素は、微細な針状バーブとして構成され、該微細な針状バーブは、上記皮膚組織と機械的に係合する、上記項目のうちのいずれか1項に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0025】
(項目10A)
上記微細な針状バーブは、上記カニューレと上記シール筐体とのうちの少なくとも一方を上記皮膚組織に固定するために、表皮の最も外側の層だけを最小限に穿刺する、上記項目のうちのいずれか1項に記載の低プロフィールの外科アクセスデバイス。
【0026】
(項目11A)
低プロフィールの外科アクセスポートを外科器具類に提供するシステムであって、
その近位端に画定された開口部を有する細長いカニューレであって、該細長いカニューレは、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面と、動作するように組織に係合し、そして、取り外し可能に該組織に固定するように構成された外周表面とを含む、細長いカニューレと、
該器具類が該カニューレを通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供するために、該細長いカニューレに動作するように結合された弁と、
器具シール筐体であって、その中を通る器具類の流体密な挿入のために、その中に配置された器具シールを有する、器具シール筐体と、
固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを介して該カニューレを取り外し可能に固定するための手段と、
該器具シールが、該カニューレにおける該弁と実質的に垂直に位置合わせして位置決めされるように、該カニューレに対して該器具シール筐体を位置決めするための手段と、
接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを介して該シール筐体を組織に取り外し可能に固定するための手段と
を備えている、システム。
【0027】
(項目12A)
上記カニューレの上記近位端は、フランジを含み、該フランジは、該カニューレを組織に機械的に係合し固定する、上記項目のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【0028】
(項目13A)
トロカールは、外科器具類に対する通路を作るために、手術腔の中への上記カニューレの導入を容易にするために、該カニューレの上記内周表面の中に取り外し可能に配置される、上記項目のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【0029】
(項目14A)
上記カニューレは、拡張器を含み、該拡張器は、該カニューレの導入と、上記トロカールの取り外しとを容易にするために、動作するように該カニューレと関連付けられる、上記項目のうちのいずれか1項に記載のシステム。
【0030】
(項目11B)
低プロフィールの外科アクセスポートを外科器具類に提供する方法であって、
その近位端に画定された開口部を有する細長いカニューレであって、該細長いカニューレは、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面と、動作するように組織に係合し、そして、取り外し可能に該組織に固定するように構成された外周表面とを含む、細長いカニューレと、
該器具類が該カニューレを通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供するために、該細長いカニューレに動作するように結合された弁と、
器具シール筐体であって、その中を通る器具類の流体密な挿入のために、その中に配置された器具シールを有する、器具シール筐体と
を提供するステップと、
外科器具類に対する通路を作るために手術腔の中に該カニューレを導入し、そして、固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを介して該カニューレを取り外し可能に固定するためステップと、
該器具シールが、該カニューレにおける該弁と実質的に垂直に位置合わせして位置決めされるように、該カニューレに対して該器具シール筐体を位置決めするステップと、
接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、およびそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを介して該シール筐体を組織に取り外し可能に固定するステップと
を包含する、方法。
【0031】
(項目12B)
上記ステップの上記カニューレの上記近位端は、フランジを含み、該フランジは、該カニューレを組織に機械的に係合し固定する、上記項目のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0032】
(項目13B)
トロカールは、上記外科器具類に対する通路を作るために、上記手術腔の中への上記カニューレの導入を容易にするために、該カニューレの上記内周表面の中に取り外し可能に配置される、上記項目のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0033】
(項目14B)
上記カニューレは、拡張器を含み、該拡張器は、該カニューレの導入と、上記トロカールの取り外しとを容易にするために、動作するように該カニューレと関連付けられる、上記項目のうちのいずれか1項に記載の方法。
【0034】
(摘要)
低プロフィールの外科アクセスデバイスは、その近位端に画定された開口部を有する細長いカニューレを含み、該細長いカニューレは、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面と、例えば、固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、および/またはそれらの組み合わせを介して動作するように組織に係合し、そして、取り外し可能に組織に固定するように構成された外周表面とを含む。弁は、細長いカニューレに動作するように結合され、そして、器具類がカニューレを通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供する。シール筐体が含まれ、該シール筐体は、カニューレに対して位置決め可能であり、そして、該シール筐体は、動作するように組織に係合し、そして、取り外し可能に組織に固定するように構成されている。シール筐体における器具シールは、細長いカニューレにおいて弁と垂直に位置合わせして位置決めされる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示の目的と特徴とが、特に、添付の特許請求の範囲において述べられる。さらなる目的とさらなる利点と共に構成および動作方法の両方に関して、本開示は、以下で述べられる添付の図面と共に挙げられる以下の記述を参照することによって最も良く理解され得る。
図1図1は、カニューレ、トロカール、および器具シール筐体を示している、本開示の一実施形態に従った低プロフィールの器具アクセスデバイスの、部品が分離された斜視図である。
図2A図2Aは、手術腔に導入され、そして、外科器具類のための通路をその中に作っている、組み立てられた構成のカニューレとトロカールとの概略的に描かれた正面図である。
図2B図2Bは、カニューレを皮膚組織に固定するための吸引要素を有するカニューレの別の実施形態の概略的に描かれた斜視図である。
図2C図2Cは、カニューレを皮膚組織に固定するための一連の機械的バーブを有するカニューレの別の実施形態の概略的に描かれた斜視図である。
図2D図2Dは、カニューレを皮膚組織に固定するための固定リブを有するカニューレの別の実施形態の概略的に描かれた斜視図である。
図2E図2Eは、カニューレを皮膚組織に固定するための膨張可能膜を有するカニューレの別の実施形態の概略的に描かれた斜視図である。
図3図3は、互いに対して距離を置かれ、そして、別個に、かつ、独立して皮膚組織に係合したシール筐体とカニューレとを用いた、皮膚組織の上の、手術のための低プロフィールの器具アクセスデバイスアセンブリを示している概略的に描かれた正面図である。
図4A図4Aは、シール筐体を皮膚組織に固定するための接着剤を有するシール筐体の別の実施形態の概略的に描かれた正面図である。
図4B図4Bは、シール筐体を皮膚組織に固定するための一連の機械的バーブを有するシール筐体の別の実施形態の概略的に描かれた斜視図である。
図4C図4Cは、シール筐体を皮膚組織に固定するための吸引要素を有するシール筐体の別の実施形態の概略的に描かれた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本開示に関して本明細書において記述される方法および外科デバイスは、外科処置のために体腔へのアクセスを提供することに関する。特に、本開示の方法とデバイスとは、低プロフィールのアクセスアセンブリを提供することによって、切開を通る流体のかなりの量の損失を実質的に防ぎ、該低プロフィールのアクセスアセンブリは、切開に対して周囲シールを形成し、そして、アクセスアセンブリを体に係留し得、一方で、外科器具が、低侵襲性の外科処置の間、困難な臓器に到達するためにより大きな角度で体の内部により容易にアクセスすることを可能にする。
【0037】
所望の腔にアクセスするために、カニューレが、患者の体の経皮的な開口部、例えば、トロカールによって作られた腹壁を通る切開を通って挿入される。カニューレは、一般的に、外皮、脂肪層、筋膜層または互い違いの筋肉および筋膜の層、ならびに腹膜を含む腹壁を通過しなければならない。脂肪層と筋膜層とは、体の場所によって、そして、患者が痩せ型であるか、肥満であるかによって厚さが変わり得る。腹膜は、腹腔の壁に並んでいる強く弾力的な膜である。腹膜のすぐ下に、肝臓、胃、および腸などのいくつかの必須器官と、傷つきやすい他の組織とがある。これが、一般的に、アクセスアセンブリが到達するように位置決めされる範囲である。
【0038】
この範囲における任意の所与の外科処置を行うために、腹壁は、一般的に、二酸化炭素などの送気ガスでその範囲を膨張させることによって、これらの必須器官に対して徐々に持ち上げられる。これが、解剖学的腔、または、いわゆる「気腹」の中で外科器具を操作するために充分な手術空間を外科医に提供する。この送気ガスの損失と、手術空間の損失とを防ぐために、カニューレは、気体密シールを腹壁に提供しながら、器具に対して充分な動きの範囲を可能になければならない。さらに、気体密シールは、係合された腹壁組織に対する損傷を可能な限り最小限にしなければならない。
【0039】
本開示は、腹壁の貫通を含む外科処置に関して記述されるが、かかる記述は、例証および実例の目的で行われる。当業者が理解するように、多くの他の外科手順が、本明細書に記述される方法と材料とを利用することによって行われ得る。本開示の、低プロフィールのアクセスデバイス、カニューレ、アンカ、および上記のものを使用する方法の特定の実施形態が、ここで、図面を参照して詳細に記述される。図面においては、同様な参照番号は、いくつかの図面を通して対応する要素を識別する。
【0040】
ここで、本開示と共に使用するための企図されたデバイスを示す様々な図面を参照すると、低プロフィールの器具アクセスデバイスの一実施形態が、部品が分離されて図1に示され、そして、概略的に、アクセスデバイス10として示されている。さらに詳細には、アクセスデバイス10は、3つの主コンポーネント要素、または3つの主コンポーネント部分を含み、すなわち、カニューレ30と、トロカール50と、シール筐体60とを含み、それらは、手術腔の中への外科器具類の様々な導入のために、低プロフィールのアクセスポート10を作るように相互に協働する。これらの主コンポーネント(すなわち、カニューレ30、トロカール50、およびシール筐体60)のそれぞれが、適切な箇所において、作業コンポーネントとの手術中の関係のなんらかの説明と共に以下で詳細に述べられる。
【0041】
カニューレ30は、その中に画定された内周31を有する細長いチューブ30aを含み、該内周31は、細長いチューブ30aの中を通るトロカール50および様々な他の外科器具類(図示せず)の挿入を容易にするような寸法である。当該分野において公知であるように、1つ以上の外科潤滑剤、非常に研磨された表面、または摩擦を小さくした表面が、この目的をさらに容易にするために利用され得る。細長いチューブ30aの近位端34は、開口部37を含み、該開口部37は、内周31と流体連通して配置され、該開口部37と該内周31とは、いわゆる「ゼロ閉鎖弁」または「ゼロシール」35によって分離され、該「ゼロ閉鎖弁」または「ゼロシール」35は、図1に示されているように、シールされた構成になるように遠位方向内側に先細にされる。弁35は、その中を通る外科器具類(図示せず)の通過を可能にするために開き、外科器具類のないときに閉じ、そして、送気関連の内圧にさらされる際には、特に閉じられたままであるように構成される。ダックビル弁、単一スリット弁または多スリット弁、トランペット弁、フラップ弁などを含む他のタイプのゼロ閉鎖弁がまた、想定される。
【0042】
細長いチューブ30aの近位端34はまた、フランジリング32(または断面で示されたときには、側面フランジ32aおよび側面フランジ32b)を含み、該フランジリング32は、カニューレ30を皮膚組織1000に動作するように係合し固定するように構成されている(図2A)。フランジ32は、手術状態の間、カニューレ30の意図しない係合解除を回避するために、皮膚組織の上でカニューレ30を安定させ、そして、皮膚組織1000へのカニューレ30の確実な係合を保証するために適切な表面積を提供するようにチューブ30aの周囲を越えて延びるように設計されている。図2A図2Eは、カニューレ30を皮膚組織1000に固定するための企図された様々な機械的メカニズムを示し、そして、該様々な機械的メカニズムは、これらの図面を参照して以下でさらに詳細に述べられる。
【0043】
本明細書における目的のために、そして、簡潔にする目的で、トロカール50は、概して、例えば、拡張器、相互交換可能な先端、相互交換可能なシール、ストップコック、光ポート、閉鎖デバイス、径違い継手、シールド、シースなどの、業界において一般的に知られている様々な異なる動作特徴および付属品を参照することなく、トロカール50の基本的な動作要素だけを含むように記述されている。さらに詳細には、トロカール50は、その近位端に配置されたユーザ端51と、その遠位端に配置された手術先端55とを含み、該ユーザ端51と該手術先端55とは、その間に配置された細長いシャフトによって分離されている。シャフト57の外周58は、上述のように、カニューレ30の内周31と中で摺動係合するような寸法である。手術先端55は、3つの尖った縁56a〜56cを含み、図2A最も良く見られるように、該3つの尖った縁56a〜56cは互いに、組織1000を穿刺し、そして、手術腔の中へのトロカール50およびカニューレ30の導入を容易にするように協働する。異なる外科目的に適切であり得る他のタイプの手術先端(図示せず)がまた、企図されている。
【0044】
シール筐体60は、概ねリング状であり、そして、(断面図において、左部分65aと右部分65bとのそれぞれで構成される)外側リング65と、内側リング69とを含み、該内側リング69は、開口部63を画定し、該開口部63は、その中に支持されたシール64を有する。シール64は、その中を通る外科器具類(図示せず)の通過を容易にするように構成され、そして、送気と関連付けられる内圧への露出の際に閉じられたままであるように構成されている。したがって、シール64は、例えば、ゼロ閉鎖弁、ゼロシール、ダックビル弁、単一スリット弁または多スリット弁、トランペット弁、フラップ弁などの上で識別された弁のうちのいずれか1つであり得る。
【0045】
各外側リング部分65aと外側リング部分65bの組織係合表面67aと組織係合表面67bとはそれぞれ、シール筐体60を皮膚組織1000に固定する接着剤または他の適切な材料72を含む。他の機械デバイスが、この目的を達成するために利用され得、そして、図4A図4Cを特に参照して以下で述べられる。
【0046】
使用の際に、外科医は、最初に、手術先端55が、細長いチューブ30aの遠位端から延びるように、カニューレ30の内周表面31の中にトロカール50を導入し、そして、カニューレ30の内周表面31を通過することによってカニューレ30とトロカールアセンブリ50とを組み立てる。カニューレ30とトロカール50とのアセンブリは、ここで、器具類の導入と引き抜きとを容易にするために手術腔の中への通路を作りながら、手術腔と周囲の外科雰囲気との間の安全な無菌の流体密な界面を維持する準備が整う。穿刺されると、トロカール50は、流体密な界面の完全性を失うことなく、カニューレ30から容易に引き抜かれ得る。
【0047】
上述のように、図2A図2Eは、上で述べたようなカニューレ30とトロカール50とのアセンブリを利用したカニューレ30の導入後に、カニューレ30を皮膚組織1000に取り外し可能に固定するように設計された企図された様々な機械的メカニズムを示す。例えば、図2Aは、カニューレ30の外側に延びているフランジリング32(または図2Aの断面に示されたようなフランジ32aおよびフランジ32b)の組織係合側に配置され得る接着剤または他の適切な化合物37の使用を示す。カニューレ30の導入の間、フランジ32aおよびフランジ32bの下側は、接着剤37が固まり、または凝固するために充分に長く、組織1000と接触して保持されるように、皮膚組織1000を係合するように押付けられ、そして、取り外しが所望されるまで、組織に対して適切な場所にしっかりとカニューレ30を保持する。次に、トロカール50は、カニューレ30の位置に影響を与えることなく取り外され得る。
【0048】
図2Bは、企図された別の実施形態を示し、該企図された別の実施形態においては、カニューレ130が、負圧または吸引を利用して皮膚組織1000に固定されている。1つ以上の変形可能膜137が、ノズルまたは充填ポート138と流体連通してフランジリング132の下側(または組織係合側)に位置決めされている。トロカール50が、手術腔の中にカニューレ30を導入し、トロカール50が、カニューレ130のシール135を通って取り外されると、フランジリング132の下の空気が、ノズル138を通って抜かれ、それにより、フランジリング132と皮膚組織1000との間に負圧を作り、そして、フランジリング132を組織に固定する。圧力が、フランジリング132の下で常態に戻ると、カニューレ130は、皮膚組織1000から容易に取り外され得る。
【0049】
図2Cは、カニューレ230の別の実施形態を示し、該カニューレ230は、一連の外傷性歯状バーブを含み、該一連の外傷性歯状バーブは、組織1000を係合するためにフランジリング232の下側から突出している。器具の通路を作るための、手術腔の中へのカニューレ230とトロカール50とのアセンブリの導入の間、バーブ237は、組織100と係合させられ、それにより、取り外しまで、組織1000に対して適切な場所にしっかりとカニューレ230を維持する。バーブ237は、表皮の最も外側の層だけを最小限に穿刺しながら、依然として、患者の皮膚に過度な外傷をもたらすことなく皮膚組織1000の上の適切な場所にカニューレ230を充分に固定するために微細な針(いわゆる「微細針」)として構成され得る。
【0050】
代替の例において、皮膚組織1000の上の適切な場所にカニューレ230を適切に固定するために、皮膚の表皮層を穿刺するより長いバーブを使用することが、必要となり得る。バーブ237はまた、中空の鈍い管状突起(図示せず)として構成され得、該中空の鈍い管状突起は、小さな吸引カップとして働き、該小さな吸引カップは、例えば、手術腔の中へのカニューレ230の導入の間など、圧力が加えられたときに、皮膚組織1000に対して確かなシールを作り出す。
【0051】
図2Dは、カニューレ330のさらに別の実施形態を示し、該カニューレ330は、一連のリブ付き突起337を含み、該一連のリブ付き突起337は、細長いチューブ330aの外周表面333から突出し、そして、該一連のリブ付き突起337は、皮膚組織1000を係合するように構成されている。さらに詳細には、手術腔の中へのカニューレ330とトロカール50とのアセンブリの挿入の際、外科医は、最近位リブ337が、皮膚組織1000の下側にくさび止めするように、可能な限り、トロカール50を組織1000の中に強制し、そして、カニューレ330を手術腔の中に強制する。その結果として、皮膚組織1000は、皮膚組織1000の上にカニューレ330を固定するようにフランジリング332と最近位リブとの間で付勢される。リブ337(例えば、上側のリブ)が、カニューレ330と皮膚組織1000との間の流体密シールを向上させ、カニューレ330をしっかりと維持し、外科手術状態の間の係合を確実にし、そして、ずれの可能性を減少させるために、高い摩擦係数を有する材料から作られ得る。
【0052】
あるいは、外側リブ337は、細長いチューブ330aの外周表面333にらせん状(図示せず)で配置され得、このことが、外科医が、カニューレ330を一定の方向に回転させるか、またはひねることにより、カニューレ330をさらに固定および/または解放することを可能にする。リブ337は、皮膚組織1000とカニューレ330の係合を向上させるために、本明細書において記述された1つ以上の他の機械デバイスと組み合わせて利用され得る。
【0053】
図2Eは、カニューレ430のさらに別の実施形態を示し、該カニューレ430は、選択的に膨張可能な係留バルーン437を含み、該選択的に膨張可能な係留バルーン437は、手術腔の中へのカニューレ430の挿入後、細長いチューブ430aの外周表面433から展開し、そして、カニューレ430を皮膚組織1000に固定するように構成されている。さらに詳細には、手術腔の中へのカニューレ430とトロカール50とのアセンブリの挿入の際、外科医は、細長いチューブ430aの外周表面433に画定された展開ポート436が、皮膚組織1000の下側を通り越すように、可能な限り、トロカール50を組織1000の中に強制し、カニューレ330を手術腔の中に強制する。通り越すと(そして、一般的には、トロカール50の取り外しの前に)、外科医は、フランジリング432の外面側に配置されたノズル438の中に空気またはガスを導入し、それは、「E」の方向に膨張し、そして、細長いチューブ430aの外周表面433を越えて延びるバルーンまたは他のタイプの膨張可能部材437を作動させ、そして、展開する。
【0054】
結果として、皮膚組織1000は、皮膚組織1000の上にカニューレ430を固定するためにフランジリング432とバルーン437との間でくさび止めされる。バルーン437は、流体密シールを向上/減少させるために所望に応じて膨張/収縮され得るか、またはバルーン437は、皮膚組織1000とカニューレ430の係合を向上させるために、本明細書に記述された1つ以上の他のデバイスと組み合わせて利用され得る。この例において、カニューレ430が、固定されると、トロカール50が、シール435を通って取り外される。
【0055】
例えば、カニューレ30などのカニューレが、皮膚組織1000の上に位置決めおよび固定され、そして、トロカール50が、取り外された後、無菌の手術状態の下で、器具シール筐体60が、手術腔の中への様々な外科器具類(図示せず)の導入と、手術腔から出すこととを容易にしながら、手術腔と雰囲気状態との間の実質的に流体密なシールを維持するように、カニューレ30に対して位置決めされる。
【0056】
図3に最も良く示されているように、シール筐体60は、シール64とシール35とがカニューレ30を通って配置される想像上の軸A−Aに沿って実質的に垂直に位置合わせして整列するように、カニューレ30の周りに同心状で位置決めされる。このように、フランジ32aとフランジ32bとは、部分65aの組織係合表面67aと、部分65bの組織係合表面67bとのそれぞれから同心に間隔を置かれたままであり、そして、シール筐体60とカニューレ30とは、どのような方法でも互いに動作的に係合せず、事実、皮膚組織1000の異なる範囲に独立して取り付けられている。シール筐体60と、カニューレ30とはまた、図4A図4Cを参照して以下で詳細に記述される取り付けと同じ機械的な方法、またはそれらとは異なる機械的な方法によって皮膚組織1000に取り付けられ得る。
【0057】
最初に、カニューレ30が導入され、そして、次に、器具シール筐体60から独立して皮膚組織1000に係留されるので、シール筐体60の全体的な頭部の高さ「h」またはプロフィール(図3を参照)が、減少され得、それにより、外科器具類に対する(垂直方向の制限を下回る)より大きな範囲の動きを外科医に提供し、手術腔の中のより困難な範囲へのアクセスを可能にする。
【0058】
図4Aは、外側リング部分610を有する企図された1つのシール筐体600を示し、該外側リング部分610は、部分610の組織係合表面611に配置された接着剤または他の適切な化合物612によって、皮膚組織1000を選択的に係合するように構成されている。カニューレ30が、上で記述された方法のうちの1つ以上によって、手術腔に導入され、皮膚組織1000に固定された後、次に、シール筐体600は、接着剤612が、固まり、または凝固するために充分に長く、組織1000と接触して保持され、そして、取り外しが所望されるまで、組織1000に対して適切な場所にしっかりとシール筐体600を保持するように同心に配置され、そして、カニューレ30に対して間隔を置かれる。シーリング筐体600が、固定されると、器具が、選択的に導入され、容易に操作され、そして、シール筐体600とカニューレ30とを通って手術腔の中から取り外され得る。
【0059】
図4Bは、外側リング部分710を有する企図された別のシール筐体700を示し、該外側リング部分710は、一連の微細係合バーブまたは歯712によって皮膚組織1000を選択的に係合するように構成され、該一連の微細係合バーブまたは歯712は、皮膚組織1000に力または圧力を加えると、取り外しが所望されるまで皮膚組織1000を把持し、皮膚組織1000にセクション710を固定する。バーブ237とかなり同様に、バーブ712は、表皮の最も外側の層だけを最小限に穿刺しながら、依然として、患者の皮膚に過度な外傷をもたらすことなく皮膚組織1000の上の適切な場所に部分710を充分に固定するために、微細な針(いわゆる「微細針」)として構成され得る。バーブ712はまた、小さな針状吸引要素またはチューブとして構成され得、該針状吸引要素またはチューブは、圧力が加えられたときに、皮膚組織1000に対して確かなシールを作り出す。
【0060】
図4Cは、器具シール筐体800のさらに別の実施形態を示し、該器具シール筐体800は、外側リング部分810を含み、該外側リング部分810は、その組織係合表面811に配置された吸引要素または吸引部材812を有し、該吸引要素812または吸引部材812は、皮膚組織1000に部分810を選択的に固定する。さらに詳細には、カニューレ30が、手術腔の中に適切に位置決めされると、器具シール筐体800は、吸引部材812が組織1000を係合するように、カニューレ30に対して同心に位置決めされている。真空ポートまたはノズル813が、吸引部材812に動作するように結合され、そして、吸引部材812と皮膚組織1000との間に確かなシールを提供するために、(吸引源(図示せず)を介して)負圧下で空気を取り除く。圧力が、部分810の下で常態に戻ると、筐体800は、皮膚組織1000から容易に取り外され得る。
【0061】
本開示はまた、低プロフィールの外科アクセスポートを外科器具類に提供する方法に関し、そして、その近位端34に画定された開口部37を有する細長いチューブ30aを有するカニューレ30を提供する最初のステップを含み、該カニューレ30は、その中を通る器具類の通過を容易にするような寸法の内周表面31を有する。カニューレ30はまた、動作するように皮膚組織に係合し、そして、取り外し可能に皮膚組織に固定するように構成された外周表面33と、カニューレ30に動作するように結合された弁35とを含み、該弁35は、器具類がカニューレ30を通って挿入されたときに、実質的に流体密なシールを提供する。方法の該提供するステップはまた、その中を通る器具類の流体密な挿入のために、その中に配置された器具シール63を有する器具シール筐体60を提供するステップを含む。
【0062】
方法はまた、外科器具類に対する通路を作るために手術腔の中にカニューレ30を導入し、そして、固定リブ、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、膨張可能材料、および/またはそれらの組み合わせを介してカニューレ30を取り外し可能に固定するためのステップと、器具シール63が、カニューレ30における弁35と実質的に垂直に位置合わせして位置決めされるように、カニューレ30に対して器具シール筐体60を位置決めするステップと、接着剤、アンカ、クリップ、吸引要素、および/またはそれらの組み合わせを介してシール筐体60を皮膚組織に取り外し可能に固定するステップとを含む。
【0063】
提供するステップのカニューレ30の近位端34は、フランジ32を含み得、該フランジ32は、カニューレ30を組織1000に機械的に係合し固定する。提供するステップのカニューレ30はまた、その中を通って画定される内周表面31を含み得、該内周表面31は、組織を穿刺し、そして、カニューレ30を手術腔の中に導入するために、該内周表面31の中にトロカール50を摺動するように受け入れるように構成されている。拡張器51は、カニューレ30の導入と、トロカール50の取り外しとを容易にするために、トロカール50と動作するように関連付けられ得る。
【0064】
上記から、そして、様々な図面を参照して、当業者は、ある程度の改変が、本開示の範囲を逸脱することなく、本開示に行われ得るということを理解する。本発明は、特定の実施形態を参照して特に示され、かつ、記述されてきたが、形態および詳細に関する様々な改変と様々な変更とが、本発明の範囲と精神とを逸脱することなく行われ得るということが、当業者によって理解される。したがって、限定するものではないが、上で教示されたもののような改変が、本発明の範囲内で考えられる。
【符号の説明】
【0065】
10 アクセスデバイス
30 カニューレ
31 内周
32 フランジリング
34 近位端
35 弁
37 開口部
50 トロカール
60 シール筐体
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3
図4A
図4B
図4C