(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661258
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ダイナミックに適合可能な画像形成システムの位置を調整する方法およびX線システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2009-166594(P2009-166594)
(22)【出願日】2009年7月15日
(65)【公開番号】特開2010-22829(P2010-22829A)
(43)【公開日】2010年2月4日
【審査請求日】2012年6月13日
(31)【優先権主張番号】10 2008 033 137.6
(32)【優先日】2008年7月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ベーゼ
【審査官】
安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0193435(US,A1)
【文献】
特開2008−000190(JP,A)
【文献】
特開平04−013381(JP,A)
【文献】
特開2008−100074(JP,A)
【文献】
特開2008−000601(JP,A)
【文献】
特開2002−336222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動する対象物である器官に対する少なくとも1つの観察点を形成するために、ロボット制御方式のCアームを備えた画像形成システムの位置を調整する方法において、
a)前記器官について形成された、該器官の運動の相を含む時間ステップに基づく少なくとも3次元の少なくとも1つの時間分解能データセットを用いるステップ、
b)前記時間分解能データセットの時間ステップごとに、前記器官の関心領域となる構造に対する少なくとも1つの最適な観察点を形成するための前記Cアーム(2)の位置および/または角度を計算するステップ、
c)前記ステップbで計算された前記位置および/または角度へ前記Cアーム(2)をリアルタイムで自動的に移動させ、前記観察点で取得された前記関心領域となる構造の画像を随時表示可能にするステップ
を有する
ことを特徴とする画像形成システムの位置を調整する方法。
【請求項2】
前記ステップbの前に、前記器官の前記関心領域となる構造を、前記時間分解能データセットの時間ステップごとにセグメント分割する、請求項1記載の画像形成システムの位置を調整する方法。
【請求項3】
少なくとも1つのX線画像検出器(4)が設置されたロボット制御方式のCアーム(2)を備え、運動する対象物である器官に対する少なくとも1つの観察点を形成するためのX線システム(1)において、
前記器官について、該器官の運動の相を含む時間ステップに基づく少なくとも3次元の少なくとも1つの時間分解能データセットを形成し、かつ、前記時間分解能データセットの時間ステップごとに、前記器官の関心領域となる構造に対する前記X線画像検出器(4)の少なくとも1つの最適な観察点を形成するための前記Cアーム(2)の位置および/または角度を計算する手段(7)と、
前記計算された位置および/または角度へ前記Cアーム(2)をリアルタイムで自動的に移動させ、前記X線画像検出器(4)の観察点で取得された前記関心領域となる構造の画像を随時表示可能にする手段と
を有する
ことを特徴とするX線システム。
【請求項4】
前記器官の前記関心領域となる構造を、前記時間分解能データセットの時間ステップごとにセグメント分割する、請求項3記載のX線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は運動する対象物に対する少なくとも1つの最適な観察点を形成するために、有利には医療介入中に、ダイナミックに適合可能な画像形成システムの位置を調整する方法、ならびに、相応のX線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、有利には、心臓などへの医療介入に用いられる血管造影システムに関連する。こうした血管造影システムは一般にCアームを備えたX線システムである。血管造影システムは3次元の画像データまたは4次元(3次元+時間の次元)の画像データを形成することができる。このことは独国出願第102004048209号明細書から公知である。
【0003】
医療介入中に3Dボリュームデータまたは4Dボリュームデータを用いる際の問題は、リアルタイムX線透視画像を当該のボリュームデータに関連させなければならないということである。
【0004】
通常、この問題を解決するために、いわゆる2D/3D記録が行われる。リアルタイムX線透視画像はCアームのその時点での位置に適合するボリュームデータの観察点に結びつけられる。このことは独国公開第10210646号明細書から公知である。
【0005】
特に有利には、Cアームの位置が変化するとリアルタイム追従制御機能が利用されるか、または、Cアームの位置が手動で選択されたSD観察点へ調整される。このことは、例えばSiemens社のAdjust 3D機能およびAdjust C-Arm機能を備えたAXIOM Artisなる製品によって達成される。この製品については"syngo Workplace Operator Manual VB13 and higher", (c) Siemens AG, Bestelinr., AX42-010.621.54.02.02, 02.2008, bestellbar bei Siemens AG, Medical Solutions Angiography, Fluoroscopic and Radiographic Systems Siemensstrasse 1, D-91301 Forchheim, Deutschland, http://www.siemens.com/medicalを参照されたい。
【0006】
ここでは、Cアームを所定の時点で調整するために静的な3Dデータセットしか用いることができず、そのために前述した機能が制限されてしまう。したがって、運動する対象物、例えば心臓を検査ないし手術する場合にも、最適なCアームの位置は或る特定の心相に対してしか得られない。つまり4DデータをAdjust C-Arm機能に利用することができないのである。
【0007】
特に、複雑な運動を行っている大動脈弁環などの構造に対しては、前述した手法は不都合である。術式を支援するには、例えば人工大動脈弁環を利用し、リアルタイムで弁平面に対する最適な観察点を求め、これに追従して制御を行うことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国公開10210646号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】"syngo Workplace Operator Manual VB13 and higher", (c) Siemens AG, Bestelinr., AX42-010.621.54.02.02, 02.2008, bestellbar bei Siemens AG, Medical Solutions Angiography, Fluoroscopic and Radiographic Systems Siemensstrasse 1, D-91301 Forchheim, Deutschland, http://www.siemens.com/medical
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、前述した特性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は独立請求項に記載された特徴によって解決される。本発明の有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明にとって重要なのは、時間分解能を有するSDデータに基づいて、個々の時間相に対して最適なCアーム位置ないしCアーム角度が求められ、Cアームをその時点で最適な角度へリアルタイムに運動させることができるということである。
【0013】
本発明は、運動する対象物に対する少なくとも1つの最適な観察点を形成するために、ダイナミックに適合可能な画像形成システムの位置を調整する方法に関する。本発明によれば、a)運動する対象物について形成された、少なくとも3次元の少なくとも1つの時間分解能データセットが用いられ、b)該時間分解能データセットの時間ステップごとに前記画像形成システムの位置が計算され、該計算された位置から運動する対象物の関心領域となる構造に対して少なくとも1つの最適な観察点が形成され、c)ステップbで計算された位置がリアルタイムで自動調整され、関心領域となる構造に対する少なくとも1つの最適な観察点がつねに表示可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明の方法の時間ステップを示す図である。
【
図3】本発明の方法の実行に適したCアームを備えたX線システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
付加的に、ステップbの前に、運動する対象物の関心領域となる構造を、時間分解能データセットの時間ステップごとにセグメント分割することができる。
【0016】
有利には、画像形成システムとしてCアームを備えたX線システムが用いられ、ステップcにおいてCアームの位置および/または角度がリアルタイムで調整される。
【0017】
また有利には、Cアームを備えたX線システムはロボット制御方式のCアームを有する。
【0018】
時間分解能データセットの時間ステップないし時間相は運動する対象物の運動の相である。例えば、運動する対象物は心臓または肺であり、運動の相は心相または呼吸相である。ここで、関心領域となる構造は例えば大動脈弁環である。大動脈弁環に対する最適な観察点は大動脈弁環に対して垂直な点である。
【0019】
本発明はさらに、本発明の方法の実行に適したCアームを備えたX線システムに関する。本発明のX線システムは、時間分解能データセットの時間ステップごとにCアームの位置を計算し、計算された位置から関心領域となる構造に対する少なくとも1つの最適な観察点を形成する手段と、計算された位置をリアルタイムで自動調整し、関心領域となる構造に対する少なくとも1つの最適な観察点をつねに表示可能にする手段とを有する。
【0020】
有利には、X線システムはロボット制御方式のCアームを有する。
【0021】
本発明によれば、医療介入のための関心領域となる構造にCアームの角度ないし位置をリアルタイムで適合させることができる。上述した心弁膜の例では、Cアームはリアルタイムで心運動にかかわらずつねに垂直方向から大動脈弁の平面を観察できるように運動する。
【0022】
また、本発明の方法は、器官の運動が重要な意義を有するケース、例えばCアームを肺や腹部への介入に際して呼吸運動に適合させるケースにおいても用いることができる。さらに、本発明の方法を拡張してSDデータセットを形成し、呼吸運動および心運動の考察を簡単化することもできる。これにより、特に心弁膜の正確な位置特性が必要なケースにおいて、医療措置の介入の精度および確実性が高められる。
【実施例】
【0023】
以下に図を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
【0024】
図3にはCアームを備えたX線システム1の例が示されている。当該のX線システムはCアーム2を有しており、その端部にX線源、例えばX線発生器3およびX線画像検出器4が配置されている。X線画像検出器4は長方形または正方形の平坦な半導体検出器であり、有利にはアモルファスケイ素から製造されている。X線源3の光路には、関心領域となる構造、例えば患者9の運動する心臓または肺などの対象物を記録するための患者寝台5が存在している。X線システムには画像形成装置6が接続されており、当該の画像形成装置はX線画像検出器4の画像信号を受信して処理する。画像形成装置6はさらに評価計算機7および再生装置8を有しており、有利にはデュアルモニタシステムとして構成されている。
【0025】
3D画像データセットを形成するために、回転可能に支承されたCアーム2はX線発生器3およびX線画像検出器4とともに回転する。X線発生器3は自身のビームフォーカスから出る線束10をX線画像検出器4へ入射させる。X線発生器3およびX線画像検出器4は関心領域となる構造の周囲を移動し、つねに関心領域となる構造の対向側に位置する。
【0026】
図1には本発明の方法のフローチャートが示されている。
【0027】
本発明の理想的な前提となるのは、リアルタイムで迅速かつ柔軟に運動可能なCアームであり、これにより本発明を特に良好にロボット制御方式の血管造影システムに適用することができる。
【0028】
本発明の方法は
図1に示されている4つのステップa〜dから成る。
・画像を形成するステップ(ステップa):時間分解能3Dデータセットすなわちいわゆる4Dデータセットを撮影する。第4次元は有利には心相または呼吸相などの時間パラメータである。
・構造をセグメント分割するステップ(ステップb):当該のステップは付加的なステップである。撮影された4Dデータから関心領域となる構造をセグメント分割する。この場合の構造は最適なCアームの角度ないし位置の選択に関連する構造である。心弁膜の処置のケースでは、当該の構造は大動脈弁環である。関心領域となる構造はボリュームデータの個々の時間ステップごとにセグメント分割され、結果として当該の構造の4Dモデルが形成される。
・最適なCアームの角度ないし位置を求めるステップ(ステップc):関心領域となる構造の4Dモデルから最適なCアームの角度ないし位置が計算される。このとき、場合によっては、当該の角度ないし位置から介入ステップの制御にとって最適な観察点を形成できるよう、診療的問題に応じたアルゴリズムが用いられる。心弁膜の処置のケースでは、例えば、挿入される人工蓋の位置を定めるために、大動脈弁環に対して垂直な観察点が求められると有利である。ここでの計算は4Dモデルの時間ステップごとに個別に行われ、結果として角度方向のセットおよび/またはCアームの位置のセットが得られる。
・Cアームをリアルタイム制御するステップ(ステップd):最後のステップでは計算された角度方向のセットまたはCアームの位置のセットが用いられ、その時点の状態に適合する角度ないし位置が選択される。Cアームはリアルタイム制御により選択された角度ないし位置へ移動され、運動する構造の画像がリアルタイムで最適に形成される。
【0029】
また、本発明の方法は、器官の運動が重要な意義を有するケース、例えばCアームを肺や腹部への介入に際して呼吸運動に適合させるケースにおいても用いることができる。さらに、本発明の方法を拡張してSDデータセットを形成し、呼吸運動および心運動の考察を簡単化することもできる。これにより、特に心弁膜の処置など、正確な位置決めが必要なケースにおいて、医療介入の精度および確実性が高められる。
【0030】
図2には本発明の方法の重要なステップが示されている。この図では時間軸に沿って各ステップが示されている。ステップ1は
図1のステップaに相当し、前述したように一連の4D画像が形成される。ステップ2は
図1のステップbに相当し、時間ステップごとに関心領域となる構造、例えば大動脈弁環がセグメント分割される。ステップ3は
図1のステップcに相当し、時間ステップに応じて最適な角度ないし位置がRAO(Right Anterior Oblique)ないしCRAN(Cranial)として計算され、そこからCアームの位置が求められる。つまり、典型的にはCアームが大動脈弁環に対して垂直となる2つの角度位置すなわち左右方向および上下方向での角度位置が計算される。このことは
図2に矢印で示されている。
【0031】
本発明は前述した実施例のみに制限されるものではない。本発明の変形例も実施可能である。本発明の範囲において、画像形成システムとして、有利にはCアームを備えたX線システムのほか、X線バイプランシステム、コンピュータトモグラフィシステム、磁気共鳴PETシステムなども利用可能である。Cアームを備えたX線システムでは、一般的なCアームに代えて、X線発生器およびX線画像検出器に電子的に結合されたいわゆる電子Cアームを利用することもできる。また、Cアームは天井または床に配設されたロボットアームであってもよい。さらに、本発明の方法は検査室または手術室に配設されたロボットアームによって支承される画像形成装置を備えたX線システムに適用することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 Cアームを備えたX線装置、 2 Cアーム、 3 X線発生器、 4 X線画像検出器、 5 患者寝台、 6 画像システム、 7 評価計算機、 8 再生装置、 9 患者、 10 線束