特許第5661278号(P5661278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661278
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】高融点金属成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 1/04 20060101AFI20150108BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20150108BHJP
   C22C 27/04 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C22C1/04 D
   B22F3/02 G
   B22F3/02 P
   C22C27/04 101
   C22C27/04 102
【請求項の数】11
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2009-515848(P2009-515848)
(86)(22)【出願日】2007年6月18日
(65)【公表番号】特表2009-541584(P2009-541584A)
(43)【公表日】2009年11月26日
(86)【国際出願番号】EP2007055986
(87)【国際公開番号】WO2007147792
(87)【国際公開日】20071227
【審査請求日】2010年6月17日
【審判番号】不服2013-23430(P2013-23430/J1)
【審判請求日】2013年11月29日
(31)【優先権主張番号】102006029101.8
(32)【優先日】2006年6月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507239651
【氏名又は名称】ハー.ツェー.スタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング ウーレンフート
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ブリュームリング
(72)【発明者】
【氏名】クラウス アンダーソン
(72)【発明者】
【氏名】ベルント デープリング
(72)【発明者】
【氏名】ミハエル スヴェック
(72)【発明者】
【氏名】カール−ヘルマン ブーヒナー
【合議体】
【審判長】 池渕 立
【審判官】 鈴木 正紀
【審判官】 河本 充雄
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2005/073418(WO,A1)
【文献】 特開2002−030372(JP,A)
【文献】 特公昭49−031167(JP,B1)
【文献】 欧州特許出願公開第325179(EP,A1)
【文献】 特開平9−235641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-8/00
C22C 1/00
C22C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデン又はタングステンを基準として等方性のミクロ構造を有し、且つ、金属バインダーとして、ニッケル、鉄、銅からなる群から選択される金属を相互に含有する合金、又は前記金属とコバルト、マンガン、及び/又はアルミニウムとを有する合金を含有する、タングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品であって、前記タングステン重金属合金またはモリブデン合金が、
60質量%〜98質量%のタングステンまたはモリブデン、
1質量%〜30質量%のニッケル、
0質量%〜15質量%の鉄、
0質量%〜5質量%の銅、
0質量%〜2質量%のコバルト、
0質量%〜0.15質量%のマンガン、
0質量%〜0.2質量%のアルミニウム
を有し、成分の合計が100質量%になり、前記成形品が1.5mm未満の厚さを有する板である、前記成形品。
【請求項2】
17〜18.6g/cm3の密度を有する請求項1記載の成形品。
【請求項3】
等方性のミクロ構造が、優先配向を有しない結晶配向の均一な混合物を含む、請求項1又は2記載の成形品。
【請求項4】
(I)結晶配向の分布が、平面法線と平行な各表面全体で30%未満変化し、かつ(II)結晶配向の分布が、平面法線と垂直な各面全体で30%未満変化する、請求項3記載の成形品。
【請求項5】
結晶配向が、<100>及び<110>配向である、請求項3または4記載の成形品。
【請求項6】
強度及び湾曲性が方向から独立している、請求項1からまでのいずれか1項記載の成形品。
【請求項7】
20%又はそれ以下の開放気孔率が存在する、請求項1からまでのいずれか1項記載の成形品。
【請求項8】
・ 0.4mm未満の厚さを有する板であり、
・ タングステン重金属合金またはモリブデン合金が
78質量%〜97質量%のタングステンまたはモリブデン、
2質量%〜15質量%のニッケル、
0.1質量%〜7質量%の鉄、および
0.08質量%〜4質量%の銅
を有し、且つ、
・ 板が密度17〜18.6g/cm3を有する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載の成形品。
【請求項9】
タングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品を製造するにあたり、タングステン重金属合金又はモリブデン合金から、テープキャスティング用のスリップを製造し、前記スリップからテープをキャスティングし、かつ前記テープを乾燥後に脱バインダーし、かつ焼結して、前記成形品を得ることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載のタングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品の製造方法。
【請求項10】
タングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品を製造するにあたり、
・タングステン重金属合金又はモリブデン合金の粉末を準備する工程;
・溶剤、分散剤及び場合によりポリマーバインダーと混合して、第一混合物を得る工程;
・第一混合物を粉砕し、かつ均質化する工程;
・可塑剤及び場合により別の溶剤及び/又はポリマーバインダーを添加して、第二混合物を得る工程;
・第二混合物を均質化する工程;
・第二混合物を脱気する工程;
・第二混合物をテープキャスティングする工程;
・キャスティングされたテープを乾燥する工程;
・キャスティングされたテープを脱バインダーする工程;
・前記テープを焼結して、第一重金属板を得る工程
を有する、
請求項1からまでのいずれか1項に記載のタングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品の製造方法。
【請求項11】
さらに
・第一重金属板を圧延し、かつ焼きなましする工程;
・前記圧延及び焼きなましを、所望の表面構造が達成されるまで場合により繰り返す工程;
・矯正する工程
を有する、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高融点金属(Refraktaermetallen)の成形品、特にタングステン又はモリブデンの板(Bleche)の製造方法に関する。
【0002】
タングステン重金属合金は、17〜18.6g/cm3のそれらの高い密度に基づいて、例えば、短波長電磁放射線を遮へいするのに適している。これらは、故にしばしば、放射線防護に又はX線装置中の放射線誘導に使用される。他の用途は、例えば、航空機産業及び自動車産業における釣り合いおもり(Ausgleichsgewichte)又はアルミニウムダイカスト金型用の金型構造部材である。
【0003】
タングステン重金属合金は、約90質量%〜約97質量%がタングステンからなる。残りの含分はバインダー金属である。その種の板は、約0.4mm〜約1.2mmの厚さで商業的に入手可能であるが、しかしながら圧延処理により、異方性の材料特性及び異方性のミクロ構造(タングステンを基準として)を有する。
【0004】
タングステン重金属構造部材は、たいてい最終形状に近い形に焼結され、引き続き、機械加工されるか又は平らな構造部材の場合には板から製造される。
【0005】
タングステン重金属板及びまたモリブデン合金の板の製造の際には、多様な問題が生じる:
・2つの焼きなまし工程の間に、一般的に、極めて制限された圧延のみが導入されることができる。過度の圧延の場合に、板はひび割れ、かつ役に立たなくなる。典型的な許容される変形度は、2つの焼きなまし工程の間で20%未満である。0.4mm未満の板厚の場合に、4を上回る焼きなましを実施することが必要である。それにより、前記方法は、薄い板が製造されるべきである場合に著しく困難になる。
・圧延された薄い板は、それらの長さに基づいて、常用の生産炉中では困難を伴ってのみ焼きなましされることができる。場所を節約する巻き取りは、前記板のもろさのために実施不可能であるので、たいてい、多数の小さな板が加工されなければならない。これにより、0.5mm又はそれ以下の厚さを有する薄い板の製造は著しく困難になる。
・公知の板は、製造方法に制約されて、異方性の、すなわち方向に依存した、板平面内部の原料特性並びに<100>方向及び<110>方向が板法線と平行に配向されている集合組織を示す。
【0006】
本発明の課題は、僅かな厚さを有するその種の板の、工業的により単純な製造方法を提供することであった。
【0007】
この課題は、タングステン重金属合金又はモリブデン合金から、テープキャスティング(Foliengiessen)用のスリップを製造し、前記スリップからテープをキャスティングし、かつ前記テープを乾燥後に脱バインダーし、かつ焼結して、板を得ることによる、タングステン重金属合金及びモリブデン合金の成形品の製造方法により解決される。本発明による成形品は一般的に、板であるか、又板から、例えばパンチング、エンボシング又は成形により、得ることができる。前記成形品を得るためにさらに適した成形方法は、例えば曲げ加工、ウォータージェット切断又はレーザー切断、放電加工及び機械加工である。
【0008】
タングステン重金属合金又はモリブデン合金という概念は、本発明の範囲内で、タングステン重金属合金、タングステン、タングステン合金、モリブデン及びモリブデン合金からなる群から選択される材料であると理解されるべきである。本発明による方法は、それゆえ、多数の材料のために有利に使用可能である。
【0009】
さらなる課題は、等方性を有する、タングステンもしくはモリブデンを基準として等方性のミクロ構造を有するタングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品を提供することであった。本発明による方法により得られる成形品は、これらの特徴を有し、それゆえこの課題を解決する。
【0010】
テープキャスティングは、電子産業における多種多様な用途、例えばチップ基板、圧電アクチュエータ及び積層コンデンサのための、平面構成要素の費用のかからない製造方法である。近年、しかしながら、他の、新しい製品分野についてのテープキャスティングへの関心が著しく増大している。セラミック構造部材の従来の製造方法、例えばドライプレス、スリップキャスティング又は押出しを用いて、十分な生強度、狭い寸法許容差及び滑らかな表面を有する大表面積の、平らな、薄い、欠陥のなく、かつ均質な基板の経済的な製造は、極めて困難であるか又は全く不可能である。
【0011】
これまでの技術水準によれば、タングステン重金属合金又はモリブデン合金の板の製造方法は、一般的に次の工程を含む:
・金属粉末を混合する(例えばタングステン及び金属バインダー)
・粉砕する(mahlen)
・プレスする
・焼結する
以下の工程
・圧延する
・焼きなます
を、所望の板厚が達成されるまで何度も繰り返す
・矯正する(richten)。
【0012】
引き続き、前記板は、所望の構造部材に加工される。適した成形方法は、例えば曲げ加工、ウォータージェット切断又はレーザー切断、放電加工及び機械加工である。
【0013】
本発明による方法の場合に、タングステン重金属合金又はモリブデン合金から、テープキャスティング用のスリップを製造し、前記スリップからテープをキャスティングし、かつ前記テープを乾燥後に脱バインダーし、かつ焼結して、成形品を得る。
【0014】
本発明による方法は、特に、タングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品の製造方法であって、
・タングステン重金属合金又はモリブデン合金の粉末を準備する工程;
・溶剤、分散剤及び場合によりポリマーバインダーと混合して、第一混合物を得る工程;
・第一混合物を粉砕し、かつ均質化する工程;
・可塑剤及び場合により別の溶剤及び/又はポリマーバインダーを添加して、第二混合物を得る工程;
・第二混合物を均質化する工程;
・第二混合物を脱気する工程;
・第二混合物をテープキャスティングする工程;
・キャスティングされたテープを乾燥する工程;
・キャスティングされたテープを脱バインダーする工程;
・前記テープを焼結して、第一重金属板を得る工程
を有する。
【0015】
本発明の有利な一実施態様において、前記方法は、付加的にさらに
・第一重金属板を圧延し、かつ焼きなまして、第二重金属板を得る工程;
・前記圧延及び焼きなましを、所望の表面構造及び厚さが達成されるまで場合により繰り返す工程;
・第二重金属板を矯正する工程
を有する。
【0016】
本発明による方法において、まず最初にタングステン金属粉末又はモリブデン金属粉末は、金属バインダーと、同様に金属粉末の形で、互いに混合される。金属バインダーは、通常、ニッケル、鉄、銅からなる群から選択される金属を相互に又は前記金属と他の金属とを含有する合金である。選択的に、タングステン又はモリブデンと金属バインダーとの合金が金属粉末の形で使用されることもできる。金属バインダーとして、有利にニッケル/鉄合金及びニッケル/銅合金が使用されることができる。
【0017】
金属バインダーは、通例、ニッケル、鉄、銅、コバルト、マンガン、モリブデン及び/又はアルミニウムからなる。
【0018】
タングステン含量又はモリブデン含量は、60質量%〜98質量%、有利に78質量%〜97質量%、特に90質量%〜95質量%、又は90.2質量%〜95.5質量%である。
【0019】
ニッケル含量は、1質量%〜30質量%、有利に2質量%〜15質量%、又は2.6質量%〜6質量%、又は3質量%〜5.5質量%である。
【0020】
鉄含量は、0質量%〜15質量%、有利に0.1質量%〜7質量%、特に0.2質量%〜5.25質量%又は0.67質量%〜4.8質量%である。
【0021】
銅含量は、0質量%〜5質量%、有利に0.08質量%〜4質量%、特に0.5質量%〜3質量%又は0.95質量%〜2.1質量%である。
【0022】
コバルト含量は、0質量%〜2質量%、有利に0.1質量%〜0.25質量%又は0.1質量%〜0.2質量%である。
【0023】
マンガン含量は、0質量%〜0.15質量%、有利に0.05質量%〜0.1質量%である。アルミニウム含量は、0〜0.2質量%、有利に0.05〜0.15質量%、又は0.1質量%である。有利に、タングステン含量は、鉄及びニッケルのみが金属バインダーとして使用される場合に、60 1質量%ないし30質量%ないし80質量%ないし30質量%である。この場合に、場合により0〜0.2質量%のアルミニウムが有利でありうる。
【0024】
タングステン粉末又はモリブデン粉末もしくは合金粉末は有利に、約0.1m2/g〜約2m2/gの比表面積を有し、粒度はたいてい100μm未満、特に63μm未満である。この混合物は、引き続き、好ましくは分散剤を含有する溶剤中へ導入され、引き続き、例えばボールミル又は他の適した装置中で、解凝集される。
【0025】
分散剤は、粉末粒子の凝集を防止し、スリップの粘度を低下させ、かつキャスティングされたテープのより高い生密度をもたらす。分散剤として、有利にポリエステル/ポリアミン縮合ポリマー、例えばUniqema社のHypermer KD1が使用される;しかしながら当業者には、別の適した材料が知られている、例えば魚油(Menhaden Fish Oil Z3)又はアルキルホスファート化合物(ZSCHIMMER & SCHWARZ KF 1001)。
【0026】
溶剤として、有利に極性有機溶剤、例えばエステル、エーテル、アルコール又はケトン、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、アセトン、エチルメチルケトン又はそれらの混合物が使用されることができる。好ましくは、溶剤として、2つの溶剤の共沸混合物、例えばエタノール及びエチルメチルケトンの31.8対68.2体積%の比の混合物が使用される。
【0027】
この混合物は、例えば、ボールミル又は他の適した混合装置中で粉砕され、かつその際に均質化される。この過程は、一般的に約24時間にわたって実施され、こうして第一混合物が得られる。
【0028】
前記ポリマーバインダーは、第一混合物の製造の際に、任意に別の溶剤及び場合により可塑剤と共に添加されることができる。選択的な一実施態様において、ポリマーバインダーは、第二混合物の製造の際にも添加されることができる。選択的な一実施態様において、ポリマーバインダーは、一部が第一混合物の製造の際だけでなく、一部が第二混合物の製造の際にも添加されることができる。この変法は、第一混合物中への前記ポリマーバインダーの一部の添加後に、この混合物がより安定になり、かつ沈降をより少なく示すか又は沈降を示さないという利点を有する。
【0029】
たいてい、可塑剤、ポリマーバインダー及び溶剤の混合物が添加される。この場合に、前記のものと同じ溶剤が添加されてよい。選択的に、第一混合物の製造のために、溶剤又は溶剤混合物が使用されることができ、かつ前記ポリマーバインダーは、他の溶剤又は溶剤混合物と共に添加されることができるので、所望の溶剤混合物(例えば共沸混合物)がポリマーバインダーの添加後にはじめて調整される。
【0030】
前記ポリマーバインダーは、多くの要求を満たさなければならない。前記ポリマーバインダーは主に、個々の粉末粒子を乾燥の際に互いに結合させるために利用され、溶剤に可溶であるべきであり、かつ分散剤と良相溶性であるべきである。ポリマーバインダーの添加は、スリップの粘度に著しい影響を及ぼす。有利に、前記ポリマーバインダーは、低い粘度増大のみを引き起こし、かつ同時に分散液に安定化作用を有する。前記ポリマーバインダーは、残留物不含で燃え切らなければならない。付加的に、前記ポリマーバインダーは、グリーンテープ(Gruenfoile)の良好な強度及び取り扱い性を保証する。最適なポリマーバインダーは、グリーンテープにおける乾燥割れの傾向を低下させ、かつ溶剤蒸発を緻密な表面層の形成により妨げない。ポリマーバインダーとして、一般的に、低い天井温度を有するポリマー又はポリマー配合物、例えばポリアセタール、ポリアクリラート又はポリメタクリラート又はそのコポリマー(アクリル樹脂、例えばZSCHIMMER & SCHWARZ KF 3003及びKF 3004)、並びにポリビニルアルコール又はその誘導体、例えばポリ酢酸ビニル又はポリビニルブチラール(KURARAY Mowital SB 45 H、FERRO Butvar B-98、及びB-76、KURARAY Mowital SB 60 H)が使用されることができる。
【0031】
可塑剤(Plastifizierer(Weichmacher))として、ポリマーバインダーのガラス温度の低下によりグリーンテープのより高いたわみ性を生じさせる添加剤が使用される。
【0032】
前記可塑剤は、前記ポリマーバインダーのネットワーク構造中へ浸透し、このことは、分子間摩擦抵抗、ひいては前記スリップの粘度が低下されることをもたらす。適した可塑剤/バインダー比の調節により及び多様な可塑剤タイプの組合せにより、テープ特性、例えば引張強さ(Reissfestigkeit)及び伸張性(Dehnbarkeit)が制御されることができる。
【0033】
可塑剤として、有利にベンジルフタラート(FERRO Santicizer 261A)が使用される。
【0034】
バインダー及び可塑剤は、バインダー懸濁液又はバインダー溶液として添加されることができる。前記バインダー懸濁液は、有利に、質量を基準として比1:1のポリビニルブチラール及びベンジルフタラートから構成される。
【0035】
前記ポリマーバインダーを、場合により別の溶剤及び任意に可塑剤と共に添加した後に、第二混合物が得られる。
【0036】
第二混合物は、約30〜60体積%の固体含分を有する。溶剤含分はたいてい45体積%未満である。溶剤とは異なる有機化合物、例えばポリマーバインダー、分散剤及び可塑剤の割合は、合計でたいてい5〜15体積%である。組成に応じて、第二混合物は、1Pa・s〜7Pa・sの範囲内である特定の粘度を有する。
【0037】
この混合物は、 − たいていさらに24時間にわたって − 適した混合装置、例えばボールミル中で、均質化される。
【0038】
第二混合物の均質化後に、この第二混合物は、キャスティングバッチ中でコンディショニングされ、かつ脱気される。コンディショニングされたスリップは、特別な圧力容器中でゆっくりと撹拌され、かつ減圧下に真空排気される。これは、当業者に原則的に知られている通常の処理工程であるので、最適な条件は、少ない数の試験を用いて見出されることができる。こうして得られたスリップ、もしくは均質化され、コンディショニングされ、かつ脱気された第二混合物は、引き続きテープキャスティングに使用される。
【0039】
最も単純な場合に、前記スリップは、キャリア(Unterlage)上へキャスティングされ、ドクターブレードを用いて特定の厚さに施与される。
【0040】
有利に、その際に、図1に示されたキャスティングシュー(Giessschuh)を有するテープキャスティングユニットが使用されることもできる。図1において、スリップ4は、充填され、かつ引出方向6へのキャリア5の引出(Ziehen)により、キャスティングブレード3によって所望の厚さに施与される。キャリアとして、有利に、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)からなり、片面がシリコーンコートされたプラスチックテープが使用されることができ;しかしまた、引出の際に生じる力に耐えることができ、かつ乾燥されたスリップへの低い付着を有する他のテープも原則的に適している。前記テープの表面は、完成した板に表面構造を付与するように構造化されていてもよい。例えば、約100μmの厚さを有するシリコーンコートされたPETテープが適している。
【0041】
一定の性質を有するスリップのために、キャスティングされたテープの厚さは、ブレード高さ、キャスティングシュー中の静水圧及び引出速度に依存する。一定の静水圧を達成するためには、スリップ高さは、相応する充填及びレベル制御を通じて一定に保持されなればならない。図1に示された二重チャンバキャスティングシューは、ブレード1及び2により形成される第二チャンバ中の一定の静水圧の遵守を改善し、かつ所望のテープ厚さの極めて正確な遵守を可能にする。一般的に、40cm幅までのテープが、問題なくキャスティングされることができる。ベルト速度は15m/h(メートル毎時)〜30m/hである。調節されるブレード高さは、所望のテープ厚さに依存し、かつ50μm〜2000μm、特に500μm〜2000μmである。
【0042】
一般的に、乾燥後のテープ厚さは、ブレード高さの約30%である。焼結された板の厚さは、焼結の際のz−収縮に依存している。乾燥されたテープの収縮は焼結の際に約20%である。キャスティングされた金属粉末テープは、キャスティングユニットの乾燥トンネル中で25〜70℃の温度範囲内で連続的に乾燥する。乾燥トンネルは、空気と向流で貫流される。乾燥の際の高い溶剤蒸気濃度は、防爆ガイドラインに対応する乾燥トンネルを前提とする。
【0043】
正確な処理条件は、使用されるスリップの組成及び使用されるテープキャスティングユニットのパラメーターに依存する。当業者は、少ない数のルーティン試験により、適した調整を見出すことができる。
【0044】
多様な成形品を製造するために、テープは例えば、切断、パンチング又はまた機械加工によって加工されることができる。これにより、例えば細い溶接棒、リング、るつぼ、ボート又は同位体容器が得られることができる。より複雑な成形品のためには、また、切り取られたテープ部材は、例えば管、ボート又はより大きなるつぼに、折り重ねられる又は組み立てられることができ、その際に前記テープは接着されることもできる。接着剤として、例えばまだ使用されていないスリップ又はまだ使用されていないバインダー懸濁液が使用可能である。引き続き、前記テープから得られた成形品は、別の処理工程にかけられることができる。
【0045】
前記テープの乾燥後に、このテープは脱バインダーされる。脱バインダーは、前記材料からの、テープキャスティングに必要とされる全ての有機成分、例えばポリマーバインダー及び可塑剤のできるだけ残留物不含の除去を意味する。残留物が炭素の形で取り残される場合には、これは、その後の焼結プロセスにおいて、炭化物、例えば炭化タングステンの形成をまねく。
【0046】
脱バインダーは、熱によるプロセスにおいて行われる。この場合に、前記テープは、適した温度プロフィールで加熱される。図2は例示的に、適した温度プロフィールを示す。加熱により、有機成分はまず最初に軟化され、かつ場合により液体になる。ポリマー成分、例えばポリマーバインダー又は分散剤は、有利に解重合され、そのために、前記のようにこれらの成分の低い天井温度が有利である。温度が上昇するにつれて、これらの液相は蒸発し、かつ雰囲気を通じて導出されるべきである。温度は、その際に、難揮発性の分解生成物が生じないように急速に上昇すべきである。これらは、すすの形の炭素堆積物をまねく。
【0047】
蒸気圧を増大させるために、50〜150mbar絶対の真空下に600℃まで加熱され、それにより、前記液相のより良好な蒸発が達成される。
【0048】
蒸発される有機成分を搬出するために、炉空間中の雰囲気はフラッシングされなければならない。このためには、水素約2体積%又はそれ以下の含分を有する窒素が使用される。水素含分は有利に、炉雰囲気が酸素不含であり、かつ前記金属粉末の酸化が回避されることを生じさせる。
【0049】
脱バインダーは、約600℃までで完了している。前記構造部材は、この段階で弱く結合された粉末充填物である。前記粉末粒子の初期焼結(Ansintern)を達成するために、熱によるプロセスは約800℃まで高められる。取り扱い可能な極めて脆い構造部材が生じ、これらはその後の焼結工程にかけられることができる。
【0050】
脱バインダー後に、前記テープは焼結される。合金組成に応じて、焼結温度は、約1300℃〜約1600℃、特に1400℃〜1550℃である。典型的には、焼結時間は約2h〜8hである。好ましくは、水素雰囲気中で、真空中で又は場合により水素の混合下での保護ガス、例えば窒素又は希ガス、例えばアルゴン下に焼結される。焼結後に、理論密度の100%までを有する緻密な板が存在する。焼結は、バッチ炉又はプッシュドバットキルン(Durchschuboefen)中で行われることができる。脱バインダーされ、かつ初期焼結されたテープは、適した焼結キャリア上で焼結されることができる。その際に、焼結すべきテープに滑らかで平坦な被覆を有するおもりを載せることが有利であり、それによって焼結過程の間の前記テープの反りが回避される。そのためには、複数のテープが相互に重なり合って置かれてもよく、それにより、付加的に焼結処理能力が高められる。スタッキングされたテープは、好ましくは、焼結キャリアにより互いに分離されるべきである。焼結キャリアとして、好ましくは、焼結条件下にタングステン重金属合金と反応しないセラミックプレート又はセラミックテープが適している。
【0051】
このためには、例えば次のものが考慮に値する:酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素又は酸化ジルコニウム。さらに、焼結キャリアの表面品質は、焼結すべきテープの表面品質にとって決定的である。
【0052】
欠陥は、テープへ直接写し取られうるか又は焼結の間の付着をまねきうる。付着は、しばしば割れの発生又はテープのゆがみをまねく、それというのも、焼結の間の収縮が妨害されるからである。
【0053】
波打ちを減少するため及び/又は表面品質を改善するために、有利に圧延工程が続けられることができる。前記板は、これまでの技術水準から知られている条件下に圧延されることができる。その場合に、板の厚さに応じて、約1100℃から室温の間で圧延される。約2mmの厚さを有する板は、高温で圧延されるのに対して、テープは室温で圧延されることができる。圧延は、本発明による方法において、しかしながら技術水準とは異なり、前記厚さを減少するのに利用されるのではなく、むしろ、とりわけ、前記板の波打ちが取り除かれるべきであり、かつ表面品質が改善されるべきである。
【0054】
特に薄い板の製造のためには、しかしながら、厚さ減少のために圧延されることもできる。
【0055】
最後に、焼きなましは、内部応力を減少させるために実施されることができる。焼きなましは、一般的に600℃〜1000℃の温度で、真空中で又は保護ガスもしくは還元性雰囲気下に実施される。前記圧延及び焼きなましの工程は、所望の表面品質及び場合により厚さが達成されるまで、場合により繰り返されることができる。
【0056】
本発明による方法は、1.5mm未満、特に0.5mm未満、殊に0.4mm未満の厚さを有する、タングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品の製造を可能にする。前記板の密度は、17g/cm3〜18.6g/cm3、好ましくは17.3g/cm3〜18.3g/cm3である。
【0057】
本発明による方法は、タングステンもしくはモリブデンを基準として等方性のミクロ構造を有する、タングステン重金属合金又はモリブデン合金の成形品の製造を可能にする。
【0058】
等方性のミクロ構造は、本発明によれば、優先配向を有しない結晶配向の均一な混合物、並びにタングステン相もしくはモリブデン相のほぼ丸い粒子形状であると理解される。
【0059】
技術水準により圧延によって製造される板及びテープは、前記板の法線方向と平行に優先的に<100>配向及び<110>配向を有する(図11参照)。これらの優先配向は、典型的な圧延集合組織の部分であり、例えばこれらは極点図(図12参照)から読み取られることができる。結晶学的集合組織のこの形成は、圧延方向に沿った粒子形状の縦長の特徴に付随して現れる(図3及び図9参照)。それと比較して、図7からは、板法線に沿った結晶学的優先方向が読み取られることができない(図7及び図11参照)。極点図(図8)は、確かに2.0の強度極大を有するが、しかしながら、これは、圧延された板についての極点図中の4.7の強度極大と比較して(図12)、極めて弱い強度極大として評価されるべきである。
【0060】
2.0の強度極大の発生の原因は、前記材料の実際の結晶学的集合組織におけるよりも、計測統計学においてはるかに多く探索されることができる。集合組織の定量的な比較のために一般的に定評のある方法がないことが顧慮されるべきである。当業者は、むしろ、比較測定と彼の専門的知識に基づく解釈とに依存している。
【0061】
特に、その際に、(I)結晶配向の分布が、平面法線と平行な各表面全体で30%未満変化し、かつ(II)結晶配向の分布が、平面法線と垂直な各面全体で30%未満変化するミクロ構造が重要である。存在している結晶配向は、通常、<100>配向及び<110>配向である。
【0062】
特に、その際に、(I)<100>配向及び<110>配向の分布が、平面法線と平行な各表面全体で30%未満変化し、かつ(II)<100>配向及び<110>配向の分布が、平面法線と垂直な各面全体で30%未満変化するミクロ構造が重要である。前記の板の厚さは有利に、1.5mm未満、特に0.5mm未満、殊に0.4mm未満である。
【0063】
本発明による成形品は、さらなる性質として、強度及び湾曲性(Biegbarkeit)が方向から独立しているという性質を有する。
【0064】
本発明による成形品の開放気孔率は、僅かであり、かつ20%又はそれ以下である。
【0065】
金属バインダーとして、前記成形品は、前記の材料を含有する。鉄は、前記材料が非磁性であるべきである場合には、使用されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】キャスティングシュー(Giessschuh)を有するテープキャスティングユニットの略示図。
図2】適した温度プロフィールを例示的に示す図。
図3】得られたタングステン重金属板のミクロ構造を示す図。
図4】得られたタングステン重金属板のミクロ構造を示す図。
図5】得られたタングステン重金属板のミクロ構造の画像を示す図。
図6】得られたタングステン重金属板のミクロ構造の画像を示す図。
図7】ミクロ構造を示す図。
図7a】カラーコードを示す図。
図8】極点図の形の集合組織を示す図。
図9】得られたタングステン重金属板のミクロ構造を示す図。
図10】得られたタングステン重金属板のミクロ構造を示す図。
図11】技術水準のタングステン重金属板のミクロ構造の画像を示す図。
図12】技術水準の極点図の形の集合組織を示す図。
【実施例】
【0067】
例1
組成W−0.2%Fe−5.3%Ni−2.1%Cu−0.2%Feの合金粉末50kgを、タングステン重金属板の製造に使用した。前記粉末は、0.6m2/gの比表面積及び63μm未満の粒度を有していた。前記合金粉末を、ボールミル中で、ポリエステル/ポリアミン縮合ポリマー0.3kg(UNIQEMA Hypermer KD1)と、エタノール31.8体積%及びエチルメチルケトン68.2体積%の混合物2.3lと共に、24時間にわたってボールミル中で粉砕し、かつ均質化した。引き続き、ポリビニルブチラール0.7kg(Kuraray Mowital SB 45 H)、ベンジルフタラート0.7kg(FERRO Santicizer 261A)及び溶剤としてエタノール31.8体積%及びエチルメチルケトン68.2体積%の混合物1.5lの混合物2.5kgの量を添加し、さらに24時間にわたって均質化した。引き続き、前記混合物を、キャスティングバッチ中でコンディショニングし、脱気した。得られたスリップは3.5Pa・sの粘度を有していた。前記スリップの密度は7g/cm3であった。前記スリップを、引き続き、キャスティングユニット上で、二重チャンバキャスティングシューの使用下に、シリコーンコートされたPETテープ上に30m/hの引出速度で、15mの長さ、40cmの幅及び1100μmの厚さを有するベルトに引き出し、35℃の温度で24時間乾燥させた。引き続き、得られたグリーンテープを、50mbarの真空中で及び図2に記載された温度プロフィールで脱バインダーした。得られた予備焼結された材料を、水素雰囲気中で1485℃の温度で2時間焼結させた。
【0068】
図3は、得られたタングステン重金属板のミクロ構造を示し、画像の垂直方向は板法線と平行であり、画像の水平方向は引出方向と平行である。図4は、得られたタングステン重金属板のミクロ構造を示し、画像の垂直方向は板法線と平行であり、画像の水平方向は横方向と平行である。双方の画像中で、粒子形状の方向依存性は存在せず、かつ双方の横断面中のタングステン粒子が本質的に丸い外観を示すことが確認できる。
【0069】
得られた板を、1200℃で圧延し、引き続き還元性雰囲気中で800℃の温度で2時間焼きなました。得られたタングステン重金属板は、タングステン92.4%及び金属バインダー7.6%を含有していた。前記板は17.5g/cm3の密度を有していた。
【0070】
図5及び6は、得られたタングステン重金属板のミクロ構造の画像を示し、図5は、画像の垂直方向で板法線と平行であり、かつ画像の水平方向で圧延方向と平行であり、図6は、画像の垂直方向で板法線と平行であり、かつ画像の水平方向で横方向と平行である。図5において弱い延伸(Streckung)が確認でき、図6において粒子の平坦化が確認できる。
【0071】
結晶組織を、EBSD(後方散乱電子回折)測定により測定した。図7は、ミクロ構造を示し(図3参照)、その際にタングステン粒子の色は、板の法線方向と平行である粒子の結晶方向を示す(これについて画像7a:カラーコード参照)。図7は、全ての色の均一な分布を示すので、板法線に関して結晶学的な優先方向は確認できない。
【0072】
図8には、集合組織が極点図の形で示されている。図8は、確認できる圧延集合組織を有しない相対的に乱れた集合組織を示す。
【0073】
比較例
圧延により得られ、かつタングステン92.4%及び金属バインダー7.6%の量を含有する17.5g/cm3の密度のタングステン重金属板を、類似して調査した。
【0074】
そのためには、組成W−0.2%Fe−5.3%Ni−2.1%Cu−0.2%Feの元素粉末をボールミル中で混合し、かつ粉砕した。引き続き、前記粉末混合物を、1500barで等方圧プレスし、ついで1450℃で水素雰囲気中で焼結した。焼結された材料の約10mmの厚さのプレートを、その都度引き続き焼きなまし処理を伴うその都度約20%だけの複数回の熱間/温間圧延により、約1mmの厚さにした。その際に、10mm厚さでの約1300℃の予備焼きなまし温度は、厚さが減少するにつれて、減少する。最後の圧延工程において、約300℃でのみ予熱する。
【0075】
図9は、得られたタングステン重金属板のミクロ構造を示し、画像の垂直方向は板法線と平行であり、画像の水平方向は圧延方向と平行である。図10は、得られたタングステン重金属板のミクロ構造を示し、画像の垂直方向は板法線と平行であり、画像の水平方向は横方向と平行である。双方の図中で、タングステン粒子が、圧延プロセスにより圧延方向へ延伸されたことが明らかに確認できる。図10は、ミクロ構造を、圧延方向に対して横向きに示す。タングステン粒子は、僅かに平坦になっている。
【0076】
結晶組織を、EBSD(後方散乱電子回折)測定により測定した。図8は、ミクロ構造を示し(図9参照)、その際にタングステン粒子の色は、板の法線方向と平行である粒子の結晶方向を示す(これについて図7a:カラーコード参照)。図7とは異なり、図11中では赤色及び青色が支配的である。このことから、延伸されたタングステン粒子が、板法線と平行に優先的に<100>方向及び<110>方向に配向したことがわかる。
【0077】
図12には、集合組織が極点図の形で示されている。図12において、図8とは異なり、横方向と圧延方向とで明らかな差異を確認できる。故に、前記板は、タングステン粒子の配向に基づいて、板平面内部に異方性の原料特性を有する。
【0078】
以下の第1表に、例1のように板に加工される組成のさらなる例を示す。タングステンは、質量%で全部で100質量%になるように加えた("ad 100"により見分けがつく)。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
第2表:第2表は、136の板からなり、その際にモリブデンが、タングステンの代わりに使用され、かつ金属バインダー成分であるニッケル、鉄、銅、コバルト、マンガン又はアルミニウムの含量は、第1表のように質量%で記載されている。
【符号の説明】
【0084】
1,2 ブレード、 3 キャスティングブレード 4 スリップ、 5 キャリア、 6 引出方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7a
図8
図9
図10
図11
図12