特許第5661284号(P5661284)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661284
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】抗菌フレーバー付与組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/05 20060101AFI20150108BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20150108BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20150108BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20150108BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20150108BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A61K31/05
   A61P31/04
   A61K31/12
   A61K31/122
   A61K31/045
   A61K31/19
   A61K9/48
   A61P1/02
   A61K8/34
   A61Q11/00
   A23G3/00 101
   A23L2/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2009-538841(P2009-538841)
(86)(22)【出願日】2007年11月29日
(65)【公表番号】特表2010-511037(P2010-511037A)
(43)【公表日】2010年4月8日
(86)【国際出願番号】IB2007054844
(87)【国際公開番号】WO2008068683
(87)【国際公開日】20080612
【審査請求日】2009年12月18日
(31)【優先権主張番号】06125259.9
(32)【優先日】2006年12月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】FIRMENICH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ジェローム バラ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ゼイフリート
(72)【発明者】
【氏名】田代 秀実
(72)【発明者】
【氏名】ミリアム トロッカ
(72)【発明者】
【氏名】ザビーネ ベックチ
【審査官】 中尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−265978(JP,A)
【文献】 特開2004−018470(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/029213(WO,A1)
【文献】 特表平08−508751(JP,A)
【文献】 特開平06−009335(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/104842(WO,A1)
【文献】 特開2005−068425(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/120135(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/05
A61K 9/48
A61K 31/045
A61K 31/12
A61K 31/122
A61K 31/19
A61K 8/34
A61K 45/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌キーを含有するフレーバー付与組成物であって、その際、該抗菌キーは、3,4−ジメチルフェノールと共に3−ドデセナール、アセチルセドレン、イソプロピルミリステート、アネトール、2−エチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノール、カシュメラン、セドロール、酢酸セドリル、シンナムアルデヒド、ジメチルアセタール、シクロヘキサデセン−1−オン、シクロペンタ−デカノリド、シクロペンタデカノン、デセン−1−オール、ジヒドロファルネソール、ドデカナール、エチレンドデカンジオエート、ヘリオナール、イソブチルキノリン、イソカンフィルシクロヘキサノール、イソオイゲノールエクストラ、レボサンドール、3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール、メントキシプロパン−1,2−ジオール、アトラリン酸メチル、メチルデカナール、メチルサンデフロア、メチルウンデカナール、ネロリドール、ノナノール、ヌートカトン、2−メチルヘキサン酸、o−メトキシシンナムアルデヒド、ペリラアルコール、1−(1,1,2,3,3,6−ヘキサメチル−5−インダニル)−1−エタノン、フェニルアセトアルデヒド、(+)−3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ペンタノール、サンタリノール、トランス−2−ウンデセナール、ウンデカナール、及びウンデセン−1−オールから選択される1つ以上の抗菌フレーバー成分を含有する、フレーバー付与組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの抗菌フレーバー付与成分が、接触時間80秒後に、う食細菌ストレプトコッカス・ミュータンス(S. Mutans)に対して2以上のBCT対数減少を、及び/又は嫌気性病原性菌株に対して1以上の対数減少を有する、請求項1に記載のフレーバー付与組成物。
【請求項3】
前記のフレーバー付与組成物の総質量に対して、抗菌キーの1〜20質量%を含有する、請求項1または2に記載のフレーバー付与組成物。
【請求項4】
該抗菌キーが、3,4−ジメチルフェノールと共に、アセチルセドレン、シクロペンタデカノン、ノナノール、イソオイゲノールエクストラ、2−メチルヘキサン酸、及び2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノールから選択される1つ以上の成分を含有する、請求項1からまでのいずれか1項に記載のフレーバー付与組成物。
【請求項5】
前記の3,4−ジメチルフェノールが、前記のキーの総質量に対して、1〜20質量%の量で存在する、請求項1からまでのいずれか1項に記載のフレーバー付与組成物。
【請求項6】
前記のフレーバー付与組成物又は抗菌キーがカプセル化されている、請求項1からまでのいずれか1項に記載のフレーバー付与組成物。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のフレーバー付与組成物を含有する、オーラルケア製品。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のフレーバー付与組成物を含有する飲料。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか1項に記載のフレーバー付与組成物を含有する菓子製品。
【請求項10】
抗菌作用を提供するための、オーラルケア製品、菓子製品、又は飲料における請求項1からまでのいずれか1項に記載のフレーバー付与組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上の抗菌フレーバー付与成分を含有するフレーバー付与組成物に関する。本発明は、例えばフレーバー付与組成物を含有するオーラルケア又は食用組成物に、及び抗菌効果を提供するためのフレーバー付与組成物の使用にも関する。
【0002】
背景技術及び先行技術
口腔内で、多数の及び種々の細菌が存在することがよく知られている。多くは、例えば口臭、歯周病及びう食発生を導く、個々の1つ以上の歯肉、歯及び息に対する有害作用を有することが公知である。
【0003】
細菌は、細菌の細胞壁における構造の違いに基づいて、グラム染色プロトコルに対する細菌の反応に関して分類される。高次のペプチドグリカンを含有するグラム陽性菌の細胞壁は、アルコール洗浄後にクリスタルバイオレット染料を保持し、そして顕微鏡下で青/紫に見える。グラム陰性菌は、クリスタルバイオレット染料を保持せず、かつ対比染色のサフラニンの追加によって赤/ピンクに見える。
【0004】
口臭の約90%が、口腔内で生じる。口腔内での発香性の揮発性硫黄化合物(VSC)硫化水素(H2S)、及びメチルメルカプタン(CH3SH)の細菌形成は、特に舌の被覆において、口の悪臭の主な原因である。口臭は、主に、グラム(−)嫌気性種、例えばフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プロフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ベイヨネラ・アルカレセンス(Veillonella alcalescens)、及びバクテロイデス・メラニノゲニカス/ホルシタス(Bacteroides melaninogenicus/forsythus)によって生じる。歯周病は、グラム(+)種、例えばアクチノミセス(Actinomyces)、及び連鎖球菌(Streptococci)と、グラム(−)種、例えばスピロヘータ(Spirochetes)、バクテロイデス(Bacteroides)、セレノモナス・スプタゲナ(Selenomonas sputagena)、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プロフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、プロフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)とによって生じる。最終的にう食発生は、pHを5未満に下げ、従って歯におけるリン酸カルシウムを溶解する、乳酸を放出する細菌の糖質代謝によって生じる。主に、この原因である細菌は、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)である。
【0005】
口腔内に見出される多数の細菌種によって、幅広い活性を有する、効果的な非特異的な抗菌剤が必要である。かかる作用剤は、マウスウォッシュ、マウススプレー、練り歯磨き及び他の歯磨き剤、チューインガム、飴、並びに関連する機能製品を含む、多くの異なる調合物と相容性である必要がある。
【0006】
多くのオーラルケア製品がフレーバー付与されているため、フレーバー付与成分は、抗菌効果を提供することも記載されている。それというのも、これが、要求される大量の追加の抗菌成分を低減するためである。
【0007】
オーラルケア利益を提供するフレーバー付与成分の使用は、既に取り組まれている。例えば、JP−A−2004/067530号(Kanebo Ltd)は、歯周病、内臓疾患等による、食事とは無関係の口臭を除去するための除去剤に関する。該除去剤は、シソ科植物の抽出物、ラクトフェリン、及び場合により糖アルコール、植物由来のポリフェノール、酸味料、並びにリナロールを含む。その組成物は、チューインガムにおいて使用されてよい。
【0008】
WO−A−2003/105794号(Takasago International Corporation)は、歯周病を生じる細菌に対する抗菌活性効果、及び/又は揮発性硫化物の製造を調整することができる口臭を抑制する作用を有する、フレーバー並びに芳香組成物を開示している。該組成物は、食品芳香材料、例えばヘキサアルデヒド、カリオフィレンアルコール、シンナムアルデヒド、ジヒドロオイゲノール、ファルネソール、及びグレープフルーツ油から選択される少なくとも1つの物質を含む。
【0009】
WO−A−99/51093号(Innocent Ltd)は、1−ノナノール、1−デカノール及び1−ウンデカノール、又はそれらの混合物から選択される高次アルコール、並びに口内の耐臭調合物として矯味添加物を含有する組成物の使用を示す。該組成物は、口内使用のための、練り歯磨き、マウスウォッシュ、飴及び他の耐臭調合物における使用を記載している。
【0010】
WO−A−2004/014348号(Michael Gurin)は、フレーバー増強剤、賦活剤、及び増幅剤から構成される活性剤を使用するフレーバーを増強することによる、機能化菓子、チューインガム、オーラルケア、及び飲料製品のための組成物並びに方法を開示している。さらに該組成物は、活性レベルが安定化法によって保護されているポリフェノール及び酵素を使用して口臭及び歯垢を制御するために選択されるオーラルケア作用を含む。
【0011】
JP−A−2003/026527号(Lion Corporation)は、ヒトにおいて有益な微生物を明らかに作用することなしに口内でフソバクテリウム・ヌクレアタム(F. nucleatum)の細菌を調整するための、C16又は高次不飽和脂肪酸及びC6又は高次不飽和アルデヒドを含有する、活性剤の2,6−ジメチル−3,7−オクタジエン−2,6−ジオール、2,6−ジメチル−1,7−オクタジエン−3,6−ジオール、3−アセトキシ−1−p−メタン、8−アセトアミノ−1−p−メタン、11−ヒドロキシ−8−オイデスメン、及びオレンジの抽出物(Zanthoxylum)に関する。
【0012】
EP 1 238 650号(Takasago)は、抗菌フレーバー組成物、及びオーラルケア組成物、又は抗菌フレーバー組成物を含有する食品に関する。該組成物は、多様なフレーバー付与抗菌化合物を含有するとして記載されている。さらに、いくつかのそれら材料は、口臭の原因である微生物に対して、1000ppm未満のMICによって特徴付けられる。しかしながら、3,4−ジメチルフェノール、並びにアネトール、ハイドロシンナムルデヒド、イソオイゲノールエクストラ及び2−メチルヘキサン酸のような他の成分は、言及されていない。
【0013】
WO 2005/104842号(MICAP)は、医療分野における抗菌化合物を開示している。3,4−ジメチルフェノールは、抗菌化合物のための多くのキャリヤーにおいて開示されているが、しかし、それ自体、抗菌として記載されていない。
【0014】
フレーバー付与成分が、通常、しばしば消費者に有害である強烈なフレーバーを提供することなく、多量に使用されることができないために、非常に低い投与量で効果がある抗菌フレーバー付与成分を提供することも記載されている。
【0015】
本発明の目的は、1つ以上の前記の利益を提供すること、及び/又は1つ以上の前記の問題に対処することである。
【0016】
発明の概要
従って、本発明は、抗菌キー(key)、及び場合により現在使用されている少なくとも1つのフレーバー付与成分を含有するフレーバー付与組成物を提供し、その際、抗菌キーは、3,4−ジメチルフェノールと共に、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、フソバクテリウムsp.(Fusobacterium sp.)、プロフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ベイヨネラ・アルカレセンス(Veillonella alcalescens)、バクテロイデス・メラニノゲニカス/ホルシタス(Bacteroides melaninogenicus/forsythus)、セレノモナス・スプタゲナ(Selenomonas sputagena)、プロフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)、プレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)、及びストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)から選択される2つ以上の菌株に対して、それぞれ1000ppm以下の最小抑制濃度を有する1つ以上の抗菌フレーバー付与成分を含有する。
【0017】
他の観点において、本発明は、抗菌フレーバー付与組成物を含有するオーラルケア製品を提供する。
【0018】
さらに他の観点において、本発明は、抗菌フレーバー付与組成物を含有する菓子製品を提供する。
【0019】
さらに他の観点において、本発明は、抗菌フレーバー付与成分を含有する飲料を提供する。
【0020】
さらに別の観点において、本発明は、抗菌作用を提供するために、オーラルケア製品、菓子製品又は飲料におけるフレーバー付与組成物の使用を提供する。
【0021】
発明の詳細な説明
"抗菌"と言う用語は、1つ以上の細菌の菌株の少なくとも一部を殺す、抑制する又は不活性化するために有効であることを意味するために使用される。
【0022】
最小抑制濃度(本明細書において"MIC"として言及される)は、ppmで、細菌の菌株の増殖の完全な抑制を導くために十分な抗菌フレーバー付与成分の濃度を意味するために使用される。
【0023】
細菌接触時間(本明細書において"BCT"として言及される)は、定義された濃度で及び/又は定義された接触時間後に、製品の溶液が、該溶液中に導入された細菌の与えられたタイプを殺す効果の測定値として定義される。
【0024】
フレーバー付与組成物は、所望のフレーバーを得るために、しばしば非常に少量の個々の成分である、多数の異なるフレーバー付与成分の注意深く平衡した混合物である。従って、フレーバー付与成分が、有効な抗菌フレーバー付与成分とみなされるべきである場合に、該フレーバー付与成分は、非常に低い濃度ででさえ、細菌の増殖を抑制することができるべきである。
【0025】
本発明は、驚くべきことに、優れた抗菌特性をそれらが存在するフレーバー付与組成物に提供する、MIC1000以下を有する、あるフレーバー付与成分を見出している。特に、3,4−ジメチルフェノールが存在する組成物が有効である。
【0026】
従って、"有効"と言う用語は、抗菌フレーバー付与組成物のMICを記載するために使用される場合に、1000以下のMICを示す。
【0027】
抗菌キー
3,4−ジメチルフェノールを、所望のMIC及び有利には所望のBCTを有する少なくとも1つのフレーバー付与成分と混合し、抗菌フレーバーキーを形成する。そしてこのキーを、標準フレーバー組成物に添加し、所望のフレーバー特性に悪影響を及ぼすことなくその抗菌効果を増強することができる。
【0028】
該抗菌キーは、有利には、3,4−ジメチルフェノールと共に、所望のMIC及び有利には所望のBCTを有する少なくとも2つのフレーバーを含有してよい。
【0029】
本発明の記載内容においては、該抗菌キーが、1つ以上の抗菌成分を含有することが有益である。それというのも、該キーは、抗菌利益を提供するだけでなく、平衡したフレーバー分布を有することが重要であるからである。例えば、該キーが、ただ1つの成分を含有する場合に、その時そのフレーバーは、不均衡でありうるのに対して、2つ以上のフレーバーが存在する場合に、それぞれの成分のより少ない量が要求され、かつその不均衡の固有の危険、強烈なフレーバーが低減される。
【0030】
口腔中で、微生物活性を抑制又は低減する点で有効であるために、前記の抗菌キーは、フレーバー組成物の全質量に対して1〜20質量%と低い量で存在しうることが見出されている。驚くべきことに、低いレベル、例えば1〜15質量%、又はさらに1〜12質量%が、有効であることも見出されている。
【0031】
フレーバー組成物が、0.05〜1質量%、より有利には0.06〜0.5質量%、最も有利には0.07〜0.3質量%のレベルで、典型的に最終製品中へ取り込まれるために、前記の抗菌キーは、驚くべきことに、非常に少量で存在し、さらにまだ効果が残っている。例えば、該抗菌キーは、最終製品の総質量に対して、0.001〜0.05質量%、より有利には0.03〜0.3質量%、最も有利には0.008〜0.05質量%の量で存在してよい。
【0032】
最小抑制濃度
本発明の組成物において使用される抗菌フレーバー付与成分は、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、フソバクテリウムsp.(Fusobacterium sp.)、プロフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ベイヨネラ・アルカレセンス(Veillonella alcalescens)、バクテロイデス・メラニノゲニカス/ホルシタス(Bacteroides melaninogenicus/forsythus)、セレノモナス・スプタゲナ(Selenomonas sputagena)、プロフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)、プレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)、及びストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)から選択される2つ以上の菌株に対して、1000以下、より有利には900以下、さらにより有利には850以下、最も有利には800以下のMICを有する。
【0033】
より有利には、少なくとも1つの抗菌フレーバー付与成分が、前記の菌株の3つ以上、又はさらに4つ以上に対して、前記のMICを有する。
【0034】
少なくとも1つの成分が、フソバクテリウムsp.(Fusobacterium sp.)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、(Veillonella alcalescens)、(Bacteroides melaninogenicus/forsythus)、セレノモナス・スプタゲナ(Selenomonas sputagena)、プロフィロモナス・エンドドンタリス(Porphyromonas endodontalis)、及びプレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)から選択される2つ以上の菌株に対して、1000以下、より有利には900以下、さらにより有利には850以下、最も有利には800以下のMICを有することも好ましい。
【0035】
既にMICを決定するために存在する種々のよく知られている試験がある。例えば、Mann CM、Markham JL, A New Method For Determining the Minimum Inhibitory Concentration of Essential Oils、J.of Applied Microbiology、1998;84:538−544を参照。
【0036】
本発明の目的のために、MICは、以下のように測定される:
試験されるべき活性の、150ppm〜10000ppmの範囲、及び少なくとも500、800、850、900及び1000ppmを含む16の濃度の希釈系列を、適切な溶剤中で活性を消滅することによって製造する。そして該希釈系列を、好適な水性の増殖培地で補われた96ウェルのマイクロタイタープレートに移す。そのプレートを、微生物試験の菌株と共にインキュベートし、そして37℃での振盪下で、嫌気条件下でインキュベートする。24時間後に、試験菌株の増殖を、光学濃度の関数として測定する。
【0037】
細菌接触時間
非常に低い最小抑制濃度を有することに加えて、さらに、前記の抗菌フレーバー付与成分が、短時間で細菌を殺させる能力を有することが好ましい。
【0038】
これは特に重要である。それというのも、該抗菌フレーバー付与成分が、短期、典型的に60秒以下の間で、口中で細菌と接触しているだけであってよい、オーラルケア組成物中で存在するからである。
【0039】
菌株を殺す成分のために取られる時間は、以下で定義される細菌接触時間を使用して試験管内で測定されうる。
【0040】
混合し、殺菌作用を停止し、そして光学濃度の測定によって数えることができる残存する生存可能な細菌を増殖した後に、殺菌を、短時間の間隔で混合物を採取することによって測定する。殺菌の測定は、与えられた殺菌のレベル、大抵99.9%、又は定義された接触時間後の細菌数の対数減少を達成するために取られた時間の形式である。
【0041】
本発明において、BCTを、最初に25%エタノール中で1%までフレーバー付与成分の試料を希釈し、そして0.01%〜1%の投与量を適用することによって測定した。そして、細菌数におけるその対数減少を、80秒後に測定した。
【0042】
少なくとも1つの抗菌フレーバー付与成分は、接触時間80秒後に、う食細菌(ストレプトコッカス・ミュータンス)S. mutansに対して2以上、より有利には2.5以上、最も有利には3以上のBCT対数減少を、及び/又は嫌気性病原性菌株フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)、プロフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis)、プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ベイヨネラ・アルカレセンス(Veillonella alcalescens)、及びバクテロイデス・メラニノゲニカス/ホルシタス(Bacteroides melaninogenicus/forsythus)に対して1以上、より有利には2以上の対数減少を有することが好ましい。
【0043】
少なくとも1つの抗菌フレーバー付与成分が、接触時間80秒後に、嫌気性病原性菌株プレボテラ・インターメディア(Prevotella intermedia)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ベイヨネラ・アルカレセンス(Veillonella alcalescens)、及びバクテロイデス・メラニノゲニカス/ホルシタス(Bacteroides melaninogenicus/forsythus)に対して、1以上、より有利には2以上のBCT対数減少を有することも好ましい。
【0044】
前記の抗菌フレーバー付与成分を、全体で又は一部分で、フレーバー付与された製品において使用される通常の抗菌材料を、該製品の抗菌特性を低減することなく、置き換えるために使用してよい。"通常の抗菌材料"に関して、それは、あらゆるフレーバー付与の特性と関係なく、かつ公知のフレーバー成分を使用して隠されるべきである望ましくない香気をしばしば有する、抗菌材料を意味する。例えば、通常、マウスウォッシュは、抗菌剤、例えば、Irgasan DP 300の商標下で市販されているトリクロサン(2’,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル)、及びトリクロロカルバナリド(TCC)(トリクロカルバンとしても公知である)を含む。トリクロサンは、グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して低い濃度での優れた静菌作用を提供することが公知である、広範なスペクトルの抗菌剤である。トリクロサンは、通常、抗菌石鹸において使用される抗菌である。TCCは、グラム陽性菌に対してのみ有効である。1つ以上の抗菌フレーバー付与成分をかかる製品中に取り込むことによって、トリクロサン及び/又はTCCのレベルを、結果の費用節約で、該製品の抗菌効果を低減することなく、低減してよい。
【0045】
選択的に、本発明の抗菌フレーバー付与組成物は、従来の抗菌剤との組合せで使用されることができ、その場合において、これが、かかる成分の抗菌特性を強化する相乗効果を提供することが見出されている。
【0046】
その抗菌及びフレーバー付与特性によって、本発明によって製造されるフレーバー付与組成物は、全てのタイプのオーラルケア及び/又は菓子製品における提供のために一様に好適である。
【0047】
本発明のフレーバー付与組成物は、その成分の抗菌作用に対して肯定的又は相乗効果を有する他の構成成分を有してよい。
【0048】
試験は、3,4−ジメチルフェノールに加えて、次のフレーバー付与成分が、本発明によって要求された所望されたMIC特徴を有することを証明している:
アセチルセドレン、アネトール((e)−1−メトキシ−4−(1−プロペニル)ベンゼン)、Bacdanol(登録商標)(2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール)、Brahmanol(登録商標)(2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−1−ブタノール)、カシュメラン(cashmerane)、シンナムアルデヒド、ジメチルアセタール、シクロヘキサデセン−1−オン、シクロペンタデカノリド、シクロペンタデカノン、デセン−1−オール、ジヒドロファルネソール、セドロール、酢酸セドリル、ドデカナール、エチレンドデカンジオエート、ヒドロシンナムアルデヒド、イソブチルキノリン、イソカンフィルシクロヘキサノール、イソオイゲノールエクストラ、レボサンドール(levosandol)、Lilial(登録商標)lg(3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール)、メントキシプロパン1,2ジオール、アトラリン酸メチル(メチル−2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチル−ベンゾエート)、メチルデカナール、メチルサンデフロア(methyl sandeflor)、メチルウンデカナール、ネロリドール(3,7,11−トリメチル−1,6,10−ドデカトリエン−3−オール)、ノナノール、ヌートカトン((+)−(4r)−4,4a,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−6−イソプロペニル−4,4a−ジメチル−2(3h)−ナフタレノン)、2−メチルヘキサン酸、o−メトキシシンナムアルデヒド、ペリラアルコール(1,8−p−メンタジエン−7−オール)、Phantolid(登録商標)(1−(1,1,2,3,3,6−ヘキサメチル−5−インダニル)−1−エタノン)、フェニルアセトアルデヒド、Sandalore(登録商標)((+)−3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ペンタノール)、サンタリノール((e)−2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブタン−1−オール)、トランス−2−ウンデセナ−ル、ウンデカナール、ウンデセン−1−オール及び3−ドデセナール。
【0049】
このリストは、網羅するものではなく、かつ当業者は、MICを確立するために前記で詳述されたプロトコルに従って、フレーバー付与化合物が、所望の抗菌特性を有するかどうかを直ちに確かめる。
【0050】
あるフレーバー付与成分が、優れた抗菌特性を有することを見出すことは、非常に驚くべきことである。特に、3,4−ジメチルフェノールは、Amicbase(A.Pauli、ReviewScience)、微生物に対する有機化合物の増殖抑制特性についてのCD−ROMデータベースにおいて調査される。この刊行物において、6種類の菌株に対する3,4−ジメチルフェノールの最小抑制濃度が示されている(以下の表を参照)。マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)を除いては、ヒトの病原体は、本発明の目的に関連するあらゆる菌株に関連せず、2000〜4000ppmの範囲のMIC値が、記載されている。これは、本発明において判明してものよりも、極めて少ない活性である。
【0051】
【表1】
【0052】
さらに、Nucleotide Sequence and Function Analysis of the Complete Phenol/3,4−dimethylphenolcatabolic Pathway of Pseudomonas sp. Strain CF600、Shingler、Powlowski、Marklund、Journal of Bacteriology、1992年2月、711〜724において記載されているように、いくつかの細菌は、炭素源として3,4−ジメチルフェノールでさえ使用することができ、かつ、このような場合において、3,4−ジメチルフェノールの存在は、増殖を抑制せずに刺激する。従って、3,4−ジメチルフェノールの強い抗菌活性は、期待されることができない。
【0053】
本発明の組成物における3,4−ジメチルフェノールの存在は、強い抗菌活性を該組成物に付与する。
【0054】
有利には、3,4−ジメチルフェノールは、前記キーの総質量に対して、1〜20質量%、より有利には2〜15質量%、最も有利には6〜12質量%の量で存在する。
【0055】
好ましい追加の抗菌フレーバー付与成分は、アネトール、ヒドロシンナムアルデヒド、アセチルセドレン、シクロペンタデカノン、ノナノール、イソオイゲノールエクストラ、2−メチルヘキサン酸、及びBrahmanol(登録商標)を含む。
【0056】
該キーは、シクロペンタデカノンを含有する場合に、該キーの総質量に対して、有利には1〜10質量%、より有利には2〜7質量%、最も有利には3〜6質量%の量で存在する。
【0057】
該キーは、イソオイゲノールエクストラを含有する場合に、該キーの総質量に対して、有利には1〜99質量%、より有利には40〜97質量%、最も有利には80〜94質量%の量で存在する。
【0058】
該キーは、アセチルセドレンを含有する場合に、該キーの総質量に対して、有利には1〜45質量%、より有利には5〜35質量%、最も有利には15〜30質量%の量で存在する。
【0059】
該キーは、2−メチルヘキサン酸を含有する場合に、該キーの総質量に対して、有利には1〜99質量%、より有利には60〜98質量%、最も有利には70〜95質量%の量で存在する。
【0060】
該キーは、Brahmanol(登録商標)を含有する場合に、該キーの総質量に対して、有利には1〜50質量%、より有利には1〜20質量%、最も有利には1〜10質量%の量で存在する。
【0061】
さらにより有利には、追加の抗菌フレーバー付与成分は、アネトール、ヒドロシンナムアルデヒド、イソオイゲノールエクストラ、及び2−メチルヘキサン酸から選択される。
【0062】
成分の選択が、接触時間80秒後に、う食細菌ストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)に対して1000以下のMIC、及び有利には2以上のBCT対数計算、並びに嫌気性病原性菌株に対して1以上の対数減少によって規定される一方で、それらは、当然、前記組成物においてフレーバー付与効果を提供することができるべきであり、又は少なくとも、それらが簡単に本明細書において挙げられた最終生成物中へ取り込まれるために無風味であるべきである。
【0063】
他のフレーバー付与成分
前記の抗菌キーは、場合により少なくとも1つの現在使用されているフレーバー付与成分と共に、典型的に、食料又はオーラルケア製品中へ取り込まれる。
【0064】
"現在使用されているフレーバー付与成分"と言う用語は、フレーバー付与の当業者によく知られている成分を意味するために使用され、必要な嗅覚の特性を有する。かかるフレーバー付与成分の最終フレーバーへの寄与は、実質的に又はさらに単に、味の目的のためであり、かつそれら成分の選択は、フレーバー付与されるべき製品の性質に依存している。
【0065】
かかるフレーバー付与成分は、それらの高い揮発性又は蒸気圧によって、摂食及び飲水する前及びそれらの間に、鼻における嗅覚受容器に達する化合物である。
【0066】
本発明の目的のために、フレーバーは、25℃で0.01Pa以上の蒸気圧によって特徴付けられる化合物である。殆どのフレーバーは、一般的に、脂質、例えば獣脂、オレイン酸等が、前記よりも低い蒸気圧を有する場合に、この値より高い蒸気圧を有する。本発明の目的のため、及び便宜上、前記蒸気圧を、計算によって決定する。従って、"EPIsuite";2000 U.S.Environmental Protection Agencyにおいて開示されている方法は、特定の化合物の蒸気圧の具体的な値又はその成分の構成成分を決定するために使用される。このソフトウェアは、自由に入手でき、かつ異なる科学者の種々の方法によって得られた蒸気圧の平均値に基づく。典型的に、フレーバー成分は、1000ppmより高いMICを有し、かつ有意な抗菌特性を有しない。
【0067】
現在使用されている多くの好適なフレーバー付与成分は、引用文献、例えばS.Arctanderによる本、Perfume and Flavour Chemicals、1969、Montclair、New Jersey、USA、もしくはそのより最新版、又は同様の性質の他の研究、例えばFenaroli’s Handbook of Flavour Ingredients、1975、CRC Press又はM.B.JacobsによるSynthetic Food Adjuncts、1947、van Nostrand Co.,Incにおいて挙げられている。
【0068】
前記キー、全体としての該キー、又は該キーを含有するフレーバー付与組成物の抗菌成分は、あらゆる送達系中で取り込まれることができ、又は標準の方法に従ってカプセル化されてよい。従って、前記のフレーバー付与組成物は、カプセル化されてよく、又はカプセル化された構成成分を含有してよく、その際、カプセル化された構成成分は、該キーの1つ以上の成分又はさらに全部のキーである。
【0069】
該キーの又は該キーを含有するフレーバー付与組成物のカプセル化は、有利である。それというのも、これが、より遅く、より長い放出よりも、抗菌キー構成成分の急速な同時放出を可能にし、かつ濃縮された用量の送達が要求される場合に所望されるためである。これは、該キーの抗菌効率をさらに改良してよいと確信される。
【0070】
当業者は、この目的に好適である種々の封入系を十分に認識しており、以下は、酸化に対する非常に良好な妨げを提供するそれらの特性に好ましい。
【0071】
最初に好ましい封入系は、フレーバー付与組成物又は抗菌キーが保持されているガラス状のマトリックスである。より有利には、該封入系は、ガラス状の炭水化物マトリックスである。前記の炭水化物マトリックス成分は、有利には、糖誘導体、より有利にはマルトデキストリンを含む。
【0072】
特に好ましいマルトデキストリンは、10〜30、より有利には15〜25、最も有利には17〜19のDEを有するマルトデキストリンである。
【0073】
典型的に、前記のフレーバー付与組成物又は抗菌キーを、炭水化物マトリックス材料と、適量の可塑剤、例えば水とで混合し、その混合物を、スクリュー押出機内で、該マトリックス材料のガラス転移温度を超える温度まで加熱してダイを通して押し出されることができる溶融物塊を形成し、そして該溶融物塊を、例えば先行技術において記載されている確立された方法を使用して押し出す。例えば、2002年5月11日に発表された特許出願WO 00/25606号、又は2001年3月15日に発表されたWO 01/17372号、及びそれらにおいて挙げられている刊行物を参照し、参照をもって本明細書に組み込まれたものとする。
【0074】
所望される場合に、他の炭水化物マトリックス構成成分が、さらに抗酸化バリヤーの特性を改良するために存在してよい。
【0075】
他の好適な封入系は、例えば、US 4,610,890号又はUS 4,707,367号において記載されており、参照を持もって本明細書に組み込まれたものとする。
【0076】
最終生成物
前記組成物が使用されうる典型的な食料は、吸引するための、菓子、例えば甘味物、例えばハードボイルドキャンディー、香錠又はロゼンジを含み、かつ従って、口腔中で、溶けることが許容される間、長時間、例えば1分まで保持される。
【0077】
好適なオーラルケア製品は、マウスウォッシュ、口ゆすぎ剤、チューインガム及び練り歯磨きを含む。
【0078】
抗菌フレーバー付与組成物は、飲料中へ取り込まれてもよい。典型的に、該抗菌フレーバー付与組成物を取り込むことができる飲料は、例えば、炭酸清涼飲料、機能性清涼飲料、ジュース及びネクター、ホットドリンク、粉末清涼飲料、アルコール飲料を含む。
【0079】
本発明の抗菌フレーバー組成物は、有利には、ペットフードの分野においても使用されうる。ペットフード製品の制限されない例として、犬のための噛み応えのある骨を挙げることができる。
【0080】
実施例
本発明を、次の実施例の方法によって説明する。全ての質量は、特に指定されない限り、質量百分率である。
【0081】
実施例1
最小抑制濃度の決定
種々のフレーバー付与成分のMICを、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans) DSM 6178、フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)DSM 20482、プロフィロモナス・ギンギバリス(Porphyromonas gingivalis) DSM 20709、及びプレボテラ・メラニノゲニカ(Prevotella melaninogenica)に対して評価した。
【0082】
MICアッセイのための接種材料を、寒天プレート(羊の血液5%を含有するシェドラー培地(Biomerieux、スイス))上に、−80℃で、凍結株からの凍結材料を線条接種することによって製造し、ストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)の場合にCO2の存在下で嫌気条件下でプラスチック瓶中で37℃で24時間、又は3種類の菌株が残っている場合にCO2の不在下で48時間増殖させた。新鮮な単コロニーを、液体のウィルキンス−チャルグレン培地(Oxoid、UK、100ml振盪フラスコ中で25ml)中へ移し、そしてストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)に関して前記と同一条件下で、及び3種類の菌株が残っている場合に72時間、インキュベートした。
【0083】
0.8〜1.0の光学濃度(600nmの波長で測定された)に達した培養物を、一度新しい培地で洗浄し(50mlのファルコン管中で4℃で5,000rpm、5分)、そしてストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)及びプロフィロモナス・ギンギバリス(P. gingivalis)に関して0.15%寒天で、又はフソバクテリウム・ヌクレアタム(F. nucleatum)及びプレボテラ・メラニノゲニカ(P. melaninogenica)に関して寒天無しで、液体のウィルキンス−チャルグレン培地中で、50倍希釈した。そして、その接種材料を、直ちに試験に使用した。
【0084】
半自動の微量希釈アッセイを、Tomtec Quadra3計量分配装置(Tomtec、 USA)を使用して実施した。最初の工程において、アッセイプレート(滅菌の96ウェルの平底ポリスチレンマイクロタイタープレート、Nunc、デンマーク)を、(最終50倍希釈のために使用された(前記参照))適切な系統特異媒体100μlで満たした。
【0085】
そして、5つの試験材料を、エタノール(ストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)及びプロフィロモナス・ギンギバリス(P. gingivalis)に対する試験に関して)中で、又はDMSO(フソバクテリウム・ヌクレアタム(F. nucleatum)及びプレボテラ・メラニノゲニカ(P. melaninogenica)に対する試験に関して)中で溶解した。滅菌の1ml丸底ポリスチレンディープウェルプレート(Nunc、デンマーク)のラインHを、適切な溶剤中でそれぞれ2つの濃度(5及び20%(w/v))で溶解させた5つの試験材料の除菌株525μlで満たした。ラインHの残っている2つのウェルを、溶剤の同一体積で満たした(それぞれ、陽性対照、すなわち原料の不在下での増殖、及び陰性対照、すなわち接種材料の不在下での滅菌)。ラインAからGを、計量分配装置によって滅菌溶剤175μlで満たした。そしてその株の1.5倍希釈を、ラインAに達するまで、あるレーンから次のレーンまで、合間に混合して、350μlの移動によって製造した。この後に、それぞれ10μlアリコートを、ディープウェルプレートから、最初の工程において製造した3つのアッセイプレートへ移し、そしてそのアッセイプレートを、カラム番号12を除いて(滅菌対照)、接種材料(4つの菌種の1つ)90μlで満たした。
【0086】
そしてそのアッセイプレートを、ストレプトコッカス・ミュータンス(S. mutans)に関してCO2の存在下で24時間、及び寒天プレートのための以前に記載された他の3つの試験菌株に関してCO2の不在下で72時間、プラスチック瓶中で、37℃での撹拌下(160rpm)で、密閉してインキュベートした。
【0087】
そして増殖を、密封の解除後に、光学濃度を600nmの波長で、マイクロタイタープレートリーダー(Ultramark、BioRad、USA)中で測定することによって決定した。
【0088】
増殖を、陰性対照と比較し、そして試験の菌株の増殖の完全な抑制を導いたそれぞれの原材料の16の濃度の中で最も低いものは、最小抑制濃度(MIC値)を示した。結果は、全ての陽性対照が、原材料の不在下(添加された純粋な溶剤のみ)で増殖の期待されたレベルを示し、かつ陰性対照が無菌のままである場合にのみ、考慮に入れられた。
【0089】
マイクロタイタープレート試験毎の原材料のそれぞれの系統が、三重であったために、最終の結果を、3つのMIC値の平均として計算した。
【0090】
抗菌フレーバー付与成分の選択のためのMICの結果(ppm)を、以下の表で示す。
【0091】
【表2】
【0092】
実施例2
抗菌キーの製造
第3表において示される組成物を有する抗菌キーを、均一な溶液が形成されるまで、該成分を混合することによって製造した。
【0093】
【表3】
【0094】
実施例3
抗菌キーを含有するフレーバー付与組成物の製造
以下の表で示される調合物を有するフレーバー付与組成物を、均一な溶液が形成されるまで、その成分と共に抗菌キーを混合することによって製造した。
【0095】
【表4】
【0096】
実施例4
抗菌キーを含有する練り歯磨き
さらに、オーラルケア組成物を、以下のような抗菌キーを使用して製造した。
【0097】
以下の表において示される調合物を有する練り歯磨きを、水とキシリトールとを混合して水溶液を形成し、グリセリン(予めカラゲナンを分散させた)、続いてソルビトールを添加し、そして約20分間混合してゴムを水和することによって製造した。そして、その混合物を、真空下で混合器中へ導入し、そして残った成分を、真空混合器に添加した。真空下での混合を、約15分間実施し、そして最終混合物を、標準管に置いた。
【0098】
【表5】
【0099】
実施例5
抗菌キーを含有するマウスウォッシュ
以下の表で示される調合物を有するマウスウォッシュを、水中で固体の成分を溶解し、抗菌キーを添加し、そして均一な製品を確実にするために撹拌することによって製造した。
【0100】
【表6】
【0101】
実施例5a及び5b
抗菌キーを含有するハードボイルドキャンディー
(5a)以下の表で示された調合物を有するハードボイルドキャンディーを、その成分と共に(抗菌キーを除いて)、140℃で約20分間、全ての構成成分が完全に混和されるまで煮沸することによって製造した。そしてその抗菌キーを、その塊をスラブ上に注入した後に、混和し、混練し、そして冷却した。キャンディー塊を、70℃で、ドロップローラを使用する標準法によって形成した。
【0102】
【表7】
【0103】
(5b)無糖のハードボイルドキャンディーを、イソマルトと水とを混合し、その混合物を160℃まで上昇し、そして該混合物を急速に135℃まで冷却し、続いてHIS溶液(アスパルテーム10質量%、アセスルファムカリウム5質量%、及び水85%)2mlを、場合によりクエン酸溶液(クエン酸50質量%(固体)、水50質量%)3mlと共に添加することによって製造した。そしてそのフレーバー付与組成物を、キャンディーの総質量に対して0.1質量%の量で添加し、そしてその液体混合物を、空の突き出しピン型中へ注入し、そして凝固を可能にした。
【0104】
実施例6
抗菌キーを含有するチューインガム
【表8】
【0105】
ソルビトール、アセスルファムカリウム及びアスパルテームを、Turbula混合器中で共に混和した。そして粉末配合物の半分を、シグマ−ブレード混合器中で、50〜55℃で5分間予熱したガムベースと混合した。残った粉末と、湿潤剤と、Sorbit(登録商標)固体と、グリセリンとを、該ガムベースに添加し、そして7分間混合した。最終的に、抗菌フレーバー組成物を添加した。
【0106】
実施例7
細菌接触時間の試験
3つの試料を、単独の又は本発明の抗菌フレーバーキーと合された、標準フレーバーで製造した。該試料の組成物を、次の表で要約した。
【0107】
【表9】
【0108】
通常のフレーバーとして、それらを、本発明による抗菌キーのための好適な組成物ではない(すなわち、本明細書において挙げられた細菌株に対して1000を超えるMICを有する)フレーバー付与組成物のみを含有する柑橘タイプのフレーバー付与組成物を使用した。
【0109】
抗菌フレーバーキー6及び7を、次の割合で、次の成分を混合することによって製造した。
【0110】
【表10】
【0111】
フソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusabacterium nucleatum)の純培養物を、液体のウィルキンス−チャルグレン培地(Biomerieux)中で72時間、嫌気条件で生育した。
【0112】
107個の細胞のアリコートを、96マイクロタイタープレート中でそれぞれの試料の100μlに添加し、そして30秒間完全に混合した。これを、それぞれの試料に関して11回繰り返した。対照を、あらゆる試料と接触しない、107個の細胞を有する1つのウェル中で実施した。
【0113】
その環境の無菌を、細菌増殖培地のみを含有するウェルで試験した。
【0114】
そのプレートを、80秒の細菌接触時間で停止させた。そしてその試料のあらゆる抗菌作用を、液体培地中で急速に1000回希釈することによって中和した。段階希釈(増殖培地100μl中へ100μl)を、細菌の消滅まで実施した。
【0115】
細菌増殖及び細菌数の測定を、600nmでの光学濃度によって、嫌気条件下での72時間のインキュベーション後に実施した。増殖していないウェルを、生存している細菌を全く有しないとした。従って、増殖していた最初のウェルを、72時間のインキュベーション前に、少なくとも1つの生存可能な細胞(log10のゼロの値)を含有するとみなした。対照ウェル中の細菌数を、それぞれのフレーバーに関して、細菌減退率(又は細菌対数減少)を導き出すために使用した:
細菌対数減少=Log[(対照ウェル中の平均細菌数)/(試験試料中の平均細菌数)]
次の表は、アッセイの結果を要約している。抗菌作用は、通常の柑橘フレーバー組成物で観察されなかったが、抗菌キー6又は7の添加に対して、その混合物は、殺菌における良好な効率を示した。抗菌キー6及び7は、現在の試験管内法において最も効率的なものであることを証明した。
【0116】
【表11】
【0117】
実施例8
抗菌フレーバー組成物を含有するマウスウォッシュの試験管内評価
1分洗浄後、1分から1時間で、唾液中で、合計の培養可能な細菌量を低減する、ミントフレーバー0.2%を含有するアルコールを含まないマウスウォッシュ基剤の有効性を評価することが目的であった。2つの異なるミントフレーバーを比較した。それらを、単独で、又は本発明による抗菌キーと共に、同様のフレーバー基剤を使用して、次の表において要約されるように製造した。
【0118】
【表12】
【0119】
前記のミントフレーバー基剤は、本発明による抗菌キーに好適な成分ではない(すなわち、本明細書において挙げられた細菌の菌株に対して1000を超えるMICを有する)フレーバー付与成分のみを含有する。抗菌フレーバーキー8を、次の割合で、次の成分を混合することによって製造した。
【0120】
【表13】
【0121】
2つのアルコールを有しないマウスウォッシュを、それぞれミントフレーバー1及び2で、次の割合で、次の成分を混合することによって製造した。
【0122】
【表14】
【0123】
25〜40歳の24人の被験者からパネルを構成した。該被験者は、非喫煙者で、良好な一般的に健康であり、試験の開始2ヶ月前から抗菌物質を接種しなかった。該被験者は、口腔疾患の徴候が見られなかった。該被験者は、試験前日の夜中から食事も飲水もしないように要求された。該被験者は、1週間前に、使用するあらゆるトリクロサン(登録商標)を有しないフレーバー付与されていない練り歯磨きを与えられた。該被験者は、朝早く来て、1分間彼らの口を漱ぐように要求された。該被験者の唾液中の合計の培養可能な細菌量を、漱いだ後に測定した。同一の測定を、漱いだ後1分間、そしてさらに1時間に行った。唾液試料(1mL)を、50mlの滅菌ファルコン管中へ収集した。唾液500μlの移動量を、室温(RT)で、ポルタジャーム輸送瓶(Biomerieux)中で、細菌を数える1時間以上前に貯蔵した。段階希釈(10-3及び10-4)を、37℃でのインキュベート72時間後に、合計の嫌気性細菌を計数するスパイラルプレーター(Spiral plater)(IUL instruments)によって、生理学的な水、及びシェドラー寒天プレートに対して2倍のプレート中で行った。
【0124】
それぞれのマウスウォッシュのための漱ぎ前、及び漱ぎ後の、細菌数における低減率を比較した。漱いだ1分後に、ミントフレーバー2(本発明の抗菌キーを含有する)は、ミントフレーバー1を含有するマウスウォッシュよりも、細菌数におけるよりよい低減率を達成したことを既に証明した。この結果は、漱いだ1時間後の細菌数における低減率によって確定された。ミントフレーバー2を含有するマウスウォッシュは、漱いだ1分後よりも非常に良好でさえある、優れた抗菌効果を達成した。他のマウスウォッシュは、非常に低い効率であり、かつ細菌数における低減率は、わずかに1時間後に改良されたのみであった。