(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
プレキャストされたコンクリート製本体の内部に、縦方向の耐震強度補強用の鉄筋である縦筋を通す縦筋貫通孔と、横方向の耐震強度補強用鉄筋である横筋を通す横筋貫通孔とを有し、
前記縦筋貫通孔は不動縦筋と摺動縦筋の組と必要に応じて重継手として使用する添え筋を貫通させることができ、かつ、前記縦筋と必要な場合の添え筋が振れ回ることがない内径を有し、前記横筋貫通孔は不動横筋と摺動横筋の組と必要に応じて重継手として使用する添え筋を貫通させることができ、かつ、前記横筋と必要な場合の添え筋が振れ回ることがない内径を有することを特徴とする耐震壁用プレキャストコンクリートブロック。
前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔の少なくとも一方は、開口部の内周部分に径が波形あるいは蛇腹形に変化するシース管を備えていることを特徴とする請求項1記載の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック。
前記コンクリート製本体の上面と下面に、上方あるいは下方に隣接する耐震壁用プレキャストコンクリートブロックと嵌合するコッターを備えていることを特徴とする請求項1記載の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック。
プレキャストされたコンクリート製本体の内部に、縦方向の耐震強度補強用の鉄筋である縦筋を通す縦筋貫通孔と、横方向の耐震強度補強用の鉄筋である横筋を通す横筋貫通孔とを有し、前記縦筋貫通孔は不動縦筋と摺動縦筋の組と必要に応じて重継手として使用する添え筋を貫通させることができ、かつ、前記縦筋と必要な場合の添え筋が振れ回ることがない内径を有し、前記横筋貫通孔は不動横筋と摺動横筋の組と必要に応じて重継手として使用する添え筋を貫通させることができ、かつ、前記横筋と必要な場合の添え筋が振れ回ることがない内径を有する耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを横方向及び縦方向にそれぞれ複数個積み上げ、前記縦筋貫通孔に縦筋を挿入してグラウト材を充填し、前記横筋貫通孔に横筋を挿入してグラウト材を充填してなることを特徴とする耐震壁。
コンクリート製本体の内部に、補強用の鉄筋の縦筋を通す縦筋貫通孔と、補強用の鉄筋の横筋を通す横筋貫通孔とを有し、前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔は、それぞれ縦筋と横筋を2本通すことができる内径を有している耐震壁用プレキャストコンクリートブロックをプレキャストする工程と、
柱梁架構の内側に、内方に雌ねじを有する接合ナットあるいはアンカー筋を突設した鉄骨枠材を接着剤で接着する工程と、
前記鉄骨枠材の内側面の少なくとも一方から横方向に所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配設し、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に一本の横筋を挿入して前記鉄骨枠材の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動横筋とするとともに、予備の一本の横筋を摺動横筋として前記横筋貫通孔に挿入しておき、横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設しては前記摺動横筋を引き出して前記追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に通し、前記鉄骨枠材の内側の横方向両側から配設した耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに両側の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋を互いに重複させて所定長の重なり部分を形成しあるいは継手金具で連結する横方向配設工程と、
前記鉄骨枠材の内側の縦方向に所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを積み上げ、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に一本の縦筋を挿入して前記鉄骨枠材の下部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動縦筋とするとともに、予備の一本の縦筋を摺動縦筋として前記縦筋貫通孔に挿入しておき、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げしては前記摺動縦筋を引き出して前記追加積み上げされた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通して係止金具によって係止し、前記積み上げられた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが前記鉄骨枠材の上部内面まで所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに前記摺動縦筋を前記鉄骨枠材の上部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成し、あるいは溶接する縦方向積み上げ工程と、
前記横方向配設工程と前記縦方向積み上げ工程を適宜組み合わせて柱梁架構の内側に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込んで前記横筋貫通孔と前記縦筋貫通孔にグラウト材を充填する工程と、
前記横方向配設工程及び前記縦方向積み上げ工程で耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まなかった部分に配筋し、型枠を設けてコンクリート打設またはグラウト材充填をする仕上げ工程と、を有することを特徴とする耐震壁構築工法。
コンクリート製本体の内部に、補強用の鉄筋の縦筋を通す縦筋貫通孔と、補強用の鉄筋の横筋を通す横筋貫通孔とを有し、前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔は、それぞれ縦筋と横筋を2本通すことができる内径を有している耐震壁用プレキャストコンクリートブロックをプレキャストする工程と、
柱梁架構の内側に、内方に雌ねじを有する接合ナットあるいはアンカー筋を突設した鉄骨枠材を接着剤で接着する工程と、
前記鉄骨枠材の内側面の少なくとも一方から横方向に所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配設し、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に一本の横筋を挿入して前記鉄骨枠材の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動横筋とするとともに、予備の一本の横筋を摺動横筋として前記横筋貫通孔に挿入しておき、横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設しては前記摺動横筋を引き出して前記追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に通し、前記鉄骨枠材の内側の横方向両側から配設した耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに両側の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋を互いに重複させて所定長の重なり部分を形成しあるいは継手金具で連結する横方向配設工程と、
前記鉄骨枠材の内側の縦方向に所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを積み上げ、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に一本の縦筋を挿入して前記鉄骨枠材の下部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動縦筋とするとともに、予備の一本の縦筋の頭部に引き上げ用ひもを結びつけて前記縦筋貫通孔に挿入して摺動縦筋とし、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げするときに前記引き上げ用ひもを積み上げられる耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通してから該耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを積み上げ、前記積み上げられた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが前記鉄骨枠材の上部内面まで所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに前記引き上げ用ひもを引き上げることによって摺動縦筋を引き上げて前記鉄骨枠材の上部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成し、あるいは溶接する縦方向積み上げ工程と、
前記横方向配設工程と前記縦方向積み上げ工程を適宜組み合わせて柱梁架構の内側に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込んで前記横筋貫通孔と前記縦筋貫通孔にグラウト材を充填する工程と、
前記横方向配設工程及び前記縦方向積み上げ工程で耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まなかった部分に配筋し、型枠を設けてコンクリート打設またはグラウト材充填をする仕上げ工程と、を有することを特徴とする耐震壁構築工法。
前記横方向配設工程において、横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設しては前記摺動横筋を引き出して前記追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に通し、前記不動横筋と摺動横筋が所定長の重なり部分に達したときは前記摺動横筋をそれ以上引き出さずに不動横筋として定置し、新たに予備の一本の横筋を摺動横筋として前記横筋貫通孔に挿入してさらに横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設することを特徴とする請求項5または6に記載の耐震壁構築工法。
前記縦方向積み上げ工程において、縦方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げしては前記摺動縦筋を引き出して前記追加積み上げされた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通して係止金具によって係止し、前記不動縦筋と摺動縦筋が所定長の重なり部分に達したときは前記摺動縦筋をそれ以上引き出さずに係止金具によって係止して不動縦筋として定置し、新たに予備の一本の縦筋を摺動縦筋として前記縦筋貫通孔に挿入してさらに縦方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げすることを特徴とする請求項5記載の耐震壁構築工法。
【背景技術】
【0003】
鉄筋コンクリート造、あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造の建物の耐震補強を目的として、柱と梁で構成されるラーメン架構の中に、新たに鉄筋コンクリート製の耐震壁を設け、建物を補強することがある。
【0004】
上記耐震壁の増設のために、従前においては現場で配筋を行い、型枠を設置し、コンクリートを打設することが広く行われている。しかし、現場で配筋と型枠とコンクリート打設を行うこの工法(現場でのコンクリート打設の工法)は時間がかかり、建物を使用しながら短期間で工事を完成することは困難であった。
【0005】
また、この現場コンクリート打設の工法は、耐震壁を既設建物の構造体と一体化させるために、既設建物の柱や梁の接合表面に凹凸をつけるいわゆる目荒らしあるいはハツリといわれる作業や、アンカー打ち等の作業を必要とし、多大な騒音と振動を発生する問題を有していた。
【0006】
これに対して、アンカー筋を突設した鉄骨枠材を既設建物の構造体にエポキシ樹脂で接着させる技術が提案されていた(特許第3992401号)。
【0007】
この特許第3992401号が提案する技術は、鉄骨枠材を既設建物の構造体に接着するという方法により、上記目荒らしやアンカー打ちの騒音と振動の問題を解決した。
【0008】
しかし、この特許第3992401号が提案する技術も、現場で配筋を行い型枠を設置しコンクリートを打設する工程を有するため、建物を使用しながら短期間で工事を完成することは困難であった。
【0009】
一方、現場での型枠作成やコンクリート打設の作業を低減するために、現場でのコンクリート打設の工法に換えて、コンクリート製のブロックを現場で積み重ねて耐震壁を構築する方法も提案されている(例えば特開昭2000−257189、特許第3975938号)。
【0010】
特開昭2000−257189号公報は、耐震壁の高さ方向の上方の一部区間に配置される型枠コンクリートブロックに、耐震壁の長さに分割された方向型枠コンクリートブロックを使用することにより、上階の躯体まで縦筋を通しながら型枠コンクリートブロックを積み上げ可能な技術を開示している。
【0011】
一方、特許第3975938号は、柱梁架構の開口部内側に、アンカー筋を突設した鉄骨枠材を接着剤で接着し、前記鉄骨枠材の下部内面のアンカー筋に縦筋を接合させてコンクリートブロックを配列し、各コンクリートブロックの上下の継目部分で前記鉄骨枠材の内側面に接合した横筋を配置する耐震補強方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、現場での作業の低減および工期短縮のため、コンクリートのブロックを積み重ねる工法を採用している。
【0014】
この点、特開昭2000−257189号公報および特許第3975938号も、コンクリートのブロックを積み重ねる工法を開示している。
【0015】
しかし、特開昭2000−257189号公報の技術と特許第3975938号の技術のいずれも、補強用の鉄筋の横筋をコンクリートのブロックのコンクリート製本体の内部に通すことができなかった。
【0016】
具体的には、特開昭2000−257189号公報の技術は、コンクリートのブロックを一段積み上げるごとに横筋を配設している(段落0025)。
【0017】
一方、特許第3975938号の技術は、一段のコンクリートのブロックが積み上がると、コンクリートのブロックの溝を利用し、該溝に納まるように長ナットに横アンカー筋をねじ込み、さらに横アンカー筋と横筋を重複させて番線等で固定し、ブロックの溝に横筋をコンクリートでグラウトする。
【0018】
ところで、上下のコンクリートブロックの継ぎ目に横筋を配置すると、左右水平方向のコンクリートブロック同士を連結する力には限度がある。
【0019】
換言すると、コンクリートのブロックを積み重ねて耐震壁を構築する場合、縦筋のみならず、コンクリートのブロックのコンクリート製本体の内部に横筋を通すことができれば、耐震壁の一体性が向上して強度が増すことは明らかである。
【0020】
しかし、柱と梁で構成されるラーメン架構の内側にコンクリートブロックを組み込む場合、耐震壁の左右両端は柱に接するため、コンクリートブロックの本体に横筋を貫通させることは困難である。
【0021】
むろん、柱とコンクリートブロックの間に横筋を柱接合させるための隙間を残すようにコンクリートブロックを配設することも考えられるが、そうすると柱と耐震壁の一体性が低下する問題があった。
【0022】
このため、上記特開昭2000−257189号公報および特許第3975938号の技術のように、コンクリートブロックを一段組み込む度に、コンクリートブロックの上端面に横筋を配置することが行われている。しかし、このようにすることにより、耐震壁の横方向のコンクリートブロックの連結が弱くなり一体性が低下することは上述したとおりである。
【0023】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、プレキャストされたコンクリート製本体の内部に縦筋と横筋を通すことができる貫通孔を有し、かつ、前記貫通孔に縦筋と横筋を通しながら柱と梁で構成されるラーメン架構の内側に組み込めることができ、低騒音かつ簡単に耐震壁を構築することができる耐震壁用プレキャストコンクリートブロック、耐震壁、及び、耐震壁構築工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明による耐震壁用プレキャストコンクリートブロックは、
プレキャストされたコンクリート製本体の内部に、補強用の鉄筋の縦筋を通す縦筋貫通孔と、補強用の鉄筋の横筋を通す横筋貫通孔とを有し、
前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔は、それぞれ縦筋と横筋を複数本通すことができる内径を有しているように形成されたことを特徴とする。
【0025】
前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔の少なくとも一方は、開口部の内周部分に径が波形あるいは蛇腹形に変化するシース管を備えているようにすることができる。
【0026】
また、前記コンクリート製本体の上面と下面に、上方あるいは下方に隣接する耐震壁用プレキャストコンクリートブロックと嵌合するコッターを備えているようにすることができる。
【0027】
本発明による耐震壁は、
プレキャストされたコンクリート製本体の内部に、補強用の鉄筋の縦筋を通す縦筋貫通孔と、補強用の鉄筋の横筋を通す横筋貫通孔とを有し、前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔はそれぞれ縦筋と横筋を複数本通すことができる内径を有しているように形成された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを横方向及び縦方向にそれぞれ複数個積み上げ、前記縦筋貫通孔に縦筋を挿入してグラウト材を充填し、前記横筋貫通孔に横筋を挿入してグラウト材を充填してなることを特徴とする。
【0028】
本発明による耐震壁構築工法は、
コンクリート製本体の内部に、補強用の鉄筋の縦筋を通す縦筋貫通孔と、補強用の鉄筋の横筋を通す横筋貫通孔とを有し、前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔は、それぞれ縦筋と横筋を2本通すことができる内径を有している耐震壁用プレキャストコンクリートブロックをプレキャストする工程と、
柱梁架構の内側に、内方に雌ねじを有する接合ナットあるいはアンカー筋を突設した鉄骨枠材を接着剤で接着する工程と、
前記鉄骨枠材の内側面の少なくとも一方から横方向に所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配設し、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に一本の横筋を挿入して前記鉄骨枠材の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動横筋とするとともに、予備の一本の横筋を摺動横筋として前記横筋貫通孔に挿入しておき、横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設しては前記摺動横筋を引き出して前記追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に通し、前記鉄骨枠材の内側の横方向両側から配設した耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに両側の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋を互いに重複させて所定長の重なり部分を形成しあるいは継手金具で連結する横方向配設工程と、
前記鉄骨枠材の内側の縦方向に所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを積み上げ、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に一本の縦筋を挿入して前記鉄骨枠材の下部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動縦筋とするとともに、予備の一本の縦筋を摺動縦筋として前記縦筋貫通孔に挿入しておき、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げしては前記摺動縦筋を引き出して前記追加積み上げされた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通して係止金具によって係止し、前記積み上げられた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが前記鉄骨枠材の上部内面まで所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに前記摺動縦筋を前記鉄骨枠材の上部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成し、あるいは溶接する縦方向積み上げ工程と、
前記横方向配設工程と前記縦方向積み上げ工程を適宜組み合わせて柱梁架構の内側に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込んで前記横筋貫通孔と前記縦筋貫通孔にグラウト材を充填する工程と、
前記横方向配設工程及び前記縦方向積み上げ工程で耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まなかった部分に配筋し、型枠を設けてコンクリートを打設する仕上げ工程と、を有することを特徴とする。
【0029】
本発明によるもう一つの耐震壁構築工法は、
コンクリート製本体の内部に、補強用の鉄筋の縦筋を通す縦筋貫通孔と、補強用の鉄筋の横筋を通す横筋貫通孔とを有し、前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔は、それぞれ縦筋と横筋を2本通すことができる内径を有している耐震壁用プレキャストコンクリートブロックをプレキャストする工程と、
柱梁架構の内側に、内方に雌ねじを有する接合ナットあるいはアンカー筋を突設した鉄骨枠材を接着剤で接着する工程と、
前記鉄骨枠材の内側面の少なくとも一方から横方向に所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配設し、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に一本の横筋を挿入して前記鉄骨枠材の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動横筋とするとともに、予備の一本の横筋を摺動横筋として前記横筋貫通孔に挿入しておき、横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設しては前記摺動横筋を引き出して前記追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に通し、前記鉄骨枠材の内側の横方向両側から配設した耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに両側の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋を互いに重複させて所定長の重なり部分を形成しあるいは継手金具で連結する横方向配設工程と、
前記鉄骨枠材の内側の縦方向に所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを積み上げ、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に一本の縦筋を挿入して前記鉄骨枠材の下部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動縦筋とするとともに、予備の一本の縦筋の頭部に引き上げ用ひもを結びつけて前記縦筋貫通孔に挿入して摺動縦筋とし、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げするときに前記引き上げ用ひもを積み上げられる耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通してから該耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを積み上げ、前記積み上げられた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが前記鉄骨枠材の上部内面まで所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに前記引き上げ用ひもを引き上げることによって摺動縦筋を引き上げて前記鉄骨枠材の上部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成し、あるいは溶接する縦方向積み上げ工程と、
前記横方向配設工程と前記縦方向積み上げ工程を適宜組み合わせて柱梁架構の内側に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込んで前記横筋貫通孔と前記縦筋貫通孔にグラウト材を充填する工程と、
前記横方向配設工程及び前記縦方向積み上げ工程で耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まなかった部分に配筋し、型枠を設けてコンクリートを打設する仕上げ工程と、を有することを特徴とする。
【0030】
前記横方向配設工程において、横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設しては前記摺動横筋を引き出して前記追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に通し、前記不動横筋と摺動横筋が所定長の重なり部分に達したときは前記摺動横筋をそれ以上引き出さずに不動横筋として定置し、新たに予備の一本の横筋を摺動横筋として前記横筋貫通孔に挿入してさらに横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設するようにすることができる。
【0031】
前記縦方向積み上げ工程において、縦方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げしては前記摺動縦筋を引き出して前記追加積み上げされた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通して係止金具によって係止し、前記不動縦筋と摺動縦筋が所定長の重なり部分に達したときは前記摺動縦筋をそれ以上引き出さずに係止金具によって係止して不動縦筋として定置し、新たに予備の一本の縦筋を摺動縦筋として前記縦筋貫通孔に挿入してさらに縦方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げするようにすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明による耐震壁用プレキャストコンクリートブロックは、プレキャストされたコンクリート製本体の内部に、補強用の鉄筋の縦筋を通す縦筋貫通孔と、補強用の鉄筋の横筋を通す横筋貫通孔とを有し、前記縦筋貫通孔と横筋貫通孔は、それぞれ縦筋と横筋を複数本通すことができる内径を有しているように形成されている。
【0033】
この耐震壁用プレキャストコンクリートブロックは、以下のようにしてその貫通孔に縦筋と横筋を通しながら柱梁架構の内側に組み込めることができる。
【0034】
すなわち、まず横方向には、柱梁架構の内側に、内方に雌ねじを有する接合ナットあるいはアンカー筋を突設した鉄骨枠材を接着剤で接着し、次に、鉄骨枠材の内側の横方向両側から所定個の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配設し、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に一本の横筋を挿入して前記鉄骨枠材の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動横筋とするとともに、予備の一本の横筋を摺動横筋として前記横筋貫通孔に挿入しておき、横方向に耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設しては前記摺動横筋を引き出して前記追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に通し、前記鉄骨枠材の内側の横方向両側から配設した耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに両側の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋を互いに重複させて所定長の重なり部分を形成しあるいは継手金具で連結する。
【0035】
また、縦方向には、鉄骨枠材の内側の縦方向に所定個の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを積み上げ、前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に一本の縦筋を挿入して前記鉄骨枠材の下部内面の接合ナットに螺着させあるいはアンカー筋と所定長の重なり部分を形成して不動横筋とするとともに、予備の一本の縦筋を摺動縦筋として縦筋貫通孔に挿入しておき、縦方向に耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加積み上げしては前記摺動縦筋を引き出して前記追加積み上げされた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通し、前記積み上げられた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックが前記鉄骨枠材の上部内面まで所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まずに前記摺動縦筋を前記鉄骨枠材の上部内面の接合ナットに螺着させあるいは前記アンカー筋と所定長の重なり部分を形成しあるいは前記摺動縦筋を前記鉄骨枠材の上部内面に溶接する。
【0036】
以上の横方向の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの配設工程と縦方向の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの積み上げ工程を行って柱梁架構の内側に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込んで前記横筋貫通孔と前記縦筋貫通孔にグラウト材を充填する。
【0037】
最後に、横方向配設工程及び縦方向積み上げ工程で耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まなかった部分に配筋し、型枠を設けてコンクリートを打設またはグラウト材を充填する。
【0038】
以上のように本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを用いることにより、本発明によればプレキャストされたコンクリート製本体の内部に縦筋と横筋を通しながら柱梁架構の内側に耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込むことができる。
【0039】
本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックは、耐震壁を構築した状態で、横方向に配列された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックは、その横筋貫通孔に通しで横筋を配置することができる。かつ、前記横筋貫通孔に通された横筋の両端は柱に固定された鉄骨枠材に接合させることができる。
【0040】
これにより、耐震壁の横方向すなわち水平方向の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの一体性がきわめて高く、強度がきわめて高い耐震壁を得ることができる。
【0041】
また、本発明によれば、縦方向すなわち垂直方向にも、耐震壁を構築した状態で、その縦筋貫通孔に通しで縦筋を配置することができ、縦筋の上下端は梁に固定された鉄骨枠材に接合させることができる。
【0042】
これにより、耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの一体性がきわめて高く、かつ、耐転倒強度がきわめて高い耐震壁を得ることができる。
【0043】
また、本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックでは、縦筋と横筋のいずれも貫通孔の内部で所定長の重なり部分を形成することにより、強固な継手を形成することができる。
【0044】
すなわち、横筋貫通孔と縦筋貫通孔のいずれも、工場で高品質に管理された状態でプレキャストされるため、現場でのコンクリート打設で生じ得るようなコンクリートの充填不足等の欠陥がなく、きわめて高密度な貫通孔に形成される。この貫通孔は縦筋と横筋を二本(添え筋を使用する場合は添え筋を含めた複数本、たとえば不動筋と摺動筋と添え筋の3本以上の複数本)通すことができる内径を有しているため、重なり部分で鉄筋同士が互いに接近した状態で重なって遊離することがない。
【0045】
これにより、貫通孔内で鉄筋を所定長重ならせてコンクリートを打設することにより、きわめて信頼性が高い継手を有することができる。
【0046】
むろん継手金具によって鉄筋同士を接合する場合は、継手金具の接合性は従来から証明されているところである。
【0047】
したがって、コンクリートブロックを使用した耐震壁構築工法において、本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを用いることにより、鉄筋の継手や接合性の信頼性が高く、前述したような耐震壁用プレキャストコンクリートブロック同士をその本体内部を貫通する鉄筋によって連結することによる効果と相まって、きわめて信頼性が高い耐震壁を得ることができる。
【0048】
縦筋貫通孔と横筋貫通孔の少なくとも一方に、開口部の内周部分に径が波形あるいは蛇腹形に変化するシース管を備えている本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックによれば、シース管の径の変化により、耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの本体と貫通孔内に充填されるグラウト材との一体性が高くなり、さらに信頼性が高い耐震壁用プレキャストコンクリートブロックと耐震壁を得ることができる。
【0049】
このシース管が金属製である場合は、鉄筋を内部に保持する効果を有し、鉄筋同士の乖離を防止することができる。
【0050】
コンクリート製本体の上面と下面に、上方あるいは下方に隣接するプレキャストコンクリートブロックと嵌合するコッターを備えている本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックによれば、コッターが上下に隣接するプレキャストコンクリートブロックの横ずれを防止でき、耐震壁の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
次に、本発明を実施するための形態について以下に図面を参照しながら説明する。
【0053】
図1は、本発明の一実施形態による耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを示している。
【0054】
本実施形態による耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1は、全体として長方形体のコンクリート製本体2を有している。コンクリート製本体2の形状は、長方形体に限られず、たとえば正面から見て六角形の形状を有していても良い。コンクリート製本体2は工場でプレキャストされ、中実のコンクリート製である。
【0055】
符号2aは、コンクリート製本体2が耐震壁に使用された状態における正面または背面を示している。符号2bはコンクリート製本体2が耐震壁に使用された状態における上面を示している。また、符号2cは、コンクリート製本体2が耐震壁に使用された状態における側面(耐震壁の水平方向の両端面)を示している。
【0056】
耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1は、コンクリート製本体2の内部の上下方向に補強用の鉄筋の縦筋を通す縦筋貫通孔3,4を有している。
【0057】
本実施形態による縦筋貫通孔3,4は、上部に接着剤の液だれを受ける拡開部を有しているが、縦筋貫通孔にとって拡開部は必須ではない。また、縦筋貫通孔3,4の孔の形状は任意である。
【0058】
縦筋貫通孔3,4は縦筋を二本通すことができる内径を有している。縦筋貫通孔3,4の内径は、縦筋を二本貫挿するのに困難ではない程度以上の大きさであって、二本の縦筋が孔の中で振れ回るほど大きくない程度に適宜定められる。
【0059】
耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1は、コンクリート製本体2の内部の水平方向に補強用の鉄筋の横筋を通す横筋貫通孔5を有している。
【0060】
本実施形態による横筋貫通孔5、端部に鉄筋を通しやすくする拡開部を有しているが、拡開部は必須ではない。横筋貫通孔5の孔の形状は任意である。端部に鉄筋を通しやすくする拡開部を設けても良い。
【0061】
横筋貫通孔5は横筋を二本通すことができる内径を有している。横筋貫通孔5の内径は、横筋を二本貫挿するのに困難ではない程度以上の大きさであって、二本の横筋が孔の中で振れ回るほど大きくない程度に適宜定められる。
【0062】
なお、本実施形態では縦筋貫通孔と横筋貫通孔は、それぞれ摺動横筋と不動横筋の組、あるいは摺動縦筋と不動縦筋の組を通すように、横筋貫通孔の内径は横筋を二本、縦筋貫通孔の内径は縦筋を二本、それぞれ貫挿するのに困難ではない程度以上の大きさであって、二本の鉄筋が孔の中で振れ回るほど大きくない程度に適宜定められる。以下の実施形態の説明では、縦筋貫通孔と横筋貫通孔が、それぞれ二本の鉄筋を通す耐震壁用プレキャストコンクリートブロックおよびその工法について説明する。
【0063】
しかし、重継手として使用する添え筋を加えて、摺動横筋と不動横筋と添え筋の組、あるいは摺動縦筋と不動縦筋と添え筋の組を通す場合は、横筋貫通孔の内径は横筋二本以上の複数本(添え筋が1本の場合は不動横筋と摺動横筋の2本と合わせて3本、添え筋が2本の場合は合計で4本)、縦筋貫通孔の内径は縦筋を二本以上の複数本(添え筋が1本の場合は不動縦筋と摺動縦筋の2本と合わせて3本、添え筋が2本の場合は合計で4本)、それぞれ貫挿するのに困難ではない程度以上の大きさであって、二本以上の複数本の鉄筋が孔の中で振れ回るほど大きくない程度に適宜定められる。なお、添え筋の外径は限定されることなく通常は横筋あるいは縦筋の外径とほぼ同一である。
【0064】
耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1は、コンクリート製本体の上面2bに耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横ずれを防止用のコッター6を有している。
【0065】
本実施形態ではコンクリート製本体の上面2bのコッター6は円柱状の凹部であり、図示しないコンクリート製本体の底面の対応位置には、コッター6と嵌合する凸状のコッターが設けられている。つまり、上下に耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを積み上げたときに、上下に隣接する耐震壁用プレキャストコンクリートブロックコッター同士が嵌合するように形成されている。
【0066】
本実施形態ではコッター6は円柱状の突起およびそれに嵌合する凹部であるが、コッター6の形状は円柱状に限られず任意である。また、コッターの数も任意である。さらに、本発明は、コンクリート製本体の内部に縦筋と横筋を通して一体性を高めているため、コッターを省略することもできる。
【0067】
次に、
図2と
図3によって縦筋貫通孔3,4を説明する。
【0068】
図2は耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の上面を示し、縦筋貫通孔3,4とコッター6の位置関係を示している。
図3は、
図2に示したA−A方向に見た耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦断面を示している。
【0069】
図2,3において、符号8は縦筋貫通孔3,4の開口部の内周部分に設けられる金属製の螺旋状の波形シース管を示している。
図3における符号7はコンクリート製本体2の底面2dに設けられた凸状のコッターを示している。
【0070】
本実施形態におけるシース管8は金属製の螺旋状の波形管を使用しているが、シース管8は金属製に限られず、たとえば樹脂製など当業者が任意に使用することができる材質のものでもよい。また、本実施形態におけるシース管8は螺旋状の波形管を使用しているが、同心円状の波形管を使用してもよい。すなわち、本明細書にいう「波形管」は螺旋状の波形管と同心円状の波形管の双方を含む。また、波形管に変えて、蛇腹形管としてもよい。
【0071】
なお、シース管8は、鉄筋を内部に保持し、かつ、シース管8内部に充填されるグラウト材とコンクリート製本体2のコンクリートの接着性を高められればよく、具体的には内外に任意の凹凸を有する管状のものであればよく、当業者が任意に用いることができるものでよい。
【0072】
縦筋貫通孔3,4内に充填されるグラウト材とコンクリート製本体2のコンクリートの接着性を特に求められない場合は、シース管8を省略することができる。
【0073】
シース管8の内径、すなわち小径部分の内径は、縦筋貫通孔3,4について述べたように、縦筋を二本(添え筋を使用する場合は添え筋を含めた複数本)貫挿するのに困難ではない程度以上の大きさであって、二本(添え筋を使用する場合は添え筋を含めた複数本)の縦筋が孔の中で振れ回るほど大きくない程度に適宜定められる。
【0074】
次に、
図4と
図5によって横筋貫通孔5を説明する。
【0075】
図4は耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の側面を示し、横筋貫通孔5の位置を示している。
図5は、
図4に示したB−B方向に見た耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦断面を示している。
【0076】
図4,5において、符号9は横筋貫通孔5の開口部の内周部分に設けられる金属製の螺旋状の波形シース管を示している。
図4において符号2eは面2aに対向するコンクリート製本体2の正面または背面を示している。
【0077】
シース管9についても、金属製に限られず、当業者が使用することができる任意の材質のものでよく、また、コンクリート製本体2のコンクリートとの接着性を高められる内外に任意の凹凸を有する管状のものであればよく、ら螺旋状の波形管、同心円状の波形管、蛇腹形管を含む。
【0078】
横筋貫通孔5内に充填されるグラウト材とコンクリート製本体2のコンクリートの接着性を特に求められない場合は、シース管9を省略することができる。
【0079】
シース管9の内径、すなわち小径部分の内径は、横筋を二本(添え筋を使用する場合は複数本(例えば三本))貫挿するのに困難ではない程度以上の大きさであって、二本(添え筋を使用する場合は添え筋を含めて複数本)の横筋が孔の中で振れ回るほど大きくない程度に適宜定められる。
【0080】
次に、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を用いた本発明による耐震壁構築工法について、
図6−13を用いて説明する。
【0081】
本発明による耐震壁構築工法を行うためには準備として上述した耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を工場等でプレキャストする。
【0082】
次に、柱10と梁11で構成されるラーメン構造の柱梁架構の内側に、内方に雌ねじを有する接合ナット12や接合用金具13を突設した鉄骨枠材14をエポキシ樹脂接着剤等の接着剤15で接着する。
【0083】
接合ナット12や接合用金具13は、縦筋や横筋が当接する部分にあらかじめ設けられている。
【0084】
次に、
図6に示すように、耐震壁の左側半分の最下段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配設する。
【0085】
具体的には、鉄骨枠材14の内側の横方向の左側から所定個(
図6の例では4個)の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を配設し、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の配列の横筋貫通孔に一本の横筋16を挿入して鉄骨枠材14の接合ナット12に螺着させる。この接合ナット12に螺着させた横筋16を不動横筋16aとするとともに、予備の一本の横筋16を摺動横筋16bとして横筋貫通孔に挿入しておく。
【0086】
ここで、不動横筋とは、その位置に定置する横筋をいい、摺動横筋とは、耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設するときに、摺動させて追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の横筋貫通孔に挿入する横筋をいう。したがって、摺動横筋16bは横筋としての連続性が低下するためにそれ以上摺動させることができないときは、その位置で定置して不動横筋16aとして新たな摺動横筋16bを挿入する。
【0087】
次に、耐震壁の右側半分の最下段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配設する。
【0088】
図7は、耐震壁の右側半分の最下段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を1個配設したところを示している。
【0089】
耐震壁の右側半分の最下段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を配列した後に、右側半分の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に挿入してあった摺動横筋16bを摺動させて右側半分の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔に挿入する。
【0090】
なお、
図7の例では簡単のために横筋16は2本である場合を示し、左側半分の4つの耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を配列したときは、右側半分の4つの耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1をその左側から配列しているということができるが、本発明は両側の柱10に隣接する両側の耐震壁を形成し、しかる後に両側の柱10から離れた中央よりの場所で、最終的に耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を組み込まずに横筋16同士を連結するものである。このため、本明細書で「鉄骨枠材の内側の横方向両側から」耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配列するというときは、耐震壁の左側部分と右側部分の個々の内部における耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの配列順序に関わらず、要するに耐震壁の中央部分に対して左側部分と右側部分を先に形成することをいうものとする。すなわち、本発明にいう「鉄骨枠材の内側の横方向両側から所定個の前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを配設」するとは、耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの所定数のブロック(たとえば
図7の左側半分と右側半分)を鉄骨枠材の内側の横方向両側から配列するという意であって、所定数の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック内(たとえば
図7の左側半分と右側半分)の個々の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の配設方向がいずれの場合も含む。
【0091】
また、
図6−13の例では、左側半分と右側半分の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1でそれぞれ一本の横筋16で足りるケースで説明しているが、耐震壁がさらに横方向に長い場合は、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を追加配設する。
【0092】
すなわち、
図6,7の左側半分の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックから必要に応じてさらに横方向に耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を追加配設しては摺動横筋16bを引き出して追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の横筋貫通孔に通し、不動横筋16aと摺動横筋16bが所定長の重なり部分に達したときは、摺動横筋16bをそれ以上引き出さずに不動横筋16aとして定置し、新たに予備の一本の横筋16を摺動横筋16bとして横筋貫通孔に挿入しながら、横方向に耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を追加配設してゆけばよい。
【0093】
このようにして、鉄骨枠材14の内側の横方向両側から耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を配設し、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の列の先頭部分が所定距離(たとえば耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの1個分の幅以下の距離)に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を組み込まずに、両側の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の摺動横筋16bを互いに重複させて所定長の重なり部分を形成しあるいは継手金具で連結する。
【0094】
図8は、耐震壁の下部3段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1について、左側半分の4つの耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を配列し、かつ、右側半分の4つの耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を配列し、中央部で耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を組み込まずに、横筋16同士を連結した状態を示している。
【0095】
耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の横方向配設工程とともに、縦方向にも耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を配設する。
【0096】
図8は縦方向に耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を3段積み上げた状態を示している。
【0097】
耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の段の間の接合は、接着剤やモルタルセメントを含む公知の如何なる接合手段を用いてよい。
【0098】
図9−11は、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦方向積み上げ工程を示している。
【0099】
耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦方向積み上げ工程では、鉄骨枠材14の内側の縦方向に所定個(
図9−11の例では3個または4個)の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を積み上げ、それらの耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦筋貫通孔に一本の縦筋17を挿入して鉄骨枠材14の下部内面の接合ナット12に螺着させて不動縦筋17aとするとともに、予備の一本の縦筋17を摺動縦筋17bとして前記縦筋貫通孔に挿入しておく。
【0100】
不動縦筋17aと摺動縦筋17bの「不動」と「摺動」の意味は横筋の場合と同様である。
【0101】
次に耐震壁の高さに応じてさらに縦方向に耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を追加積み上げしては摺動縦筋17bを引き出して追加積み上げされた耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通す(
図11参照)。
【0102】
なお、引き上げられた摺動縦筋17bは、
図11に示すような係止金具18によって係止し、縦筋貫通孔中に落下するのを防止する。
【0103】
図9−11の例では、縦筋17は2本で足りるが、縦筋17が3本以上の場合は、不動縦筋17aと摺動縦筋が所定長の重なり部分に達したときは摺動縦筋17bをそれ以上引き出さずに係止金具によって係止して不動縦筋17aとして定置し、新たに予備の一本の縦筋17を摺動縦筋17bとして縦筋貫通孔に挿入しながら、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を追加積み上げする。
【0104】
なお、
図9−11において、符号19は所定長の重なり部分に代えて横筋16を接合するための継手金具を示している。
【0105】
図12は、積み上げられた耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の上端が鉄骨枠材14の上部内面まで所定距離に接近したとき、たとえばそれ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を組み込むことができない距離に接近したときを示している。
【0106】
積み上げられた耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の上端が鉄骨枠材14の上部内面まで所定距離に接近したときは、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を組み込まずに、
図13に示すように、摺動縦筋17bを鉄骨枠材14の上部内面の接合用金具13に溶接する。なお、摺動縦筋17bを鉄骨枠材14の上部内面に接合する方法として、接合ナットに螺着させあるいはアンカー筋と所定長の重なり部分を形成するようにしてもよい。
【0107】
図12の状態で各段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の横筋貫通孔、および、各縦の列の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦筋貫通孔にグラウト材を充填する。
【0108】
図13は、上記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横方向配設工程と縦方向積み上げ工程と貫通孔のグラウト充填工程を完成し、最終的なコンクリート打設あるいはグラウト材充填による仕上げ工程を行ったところを示している。
【0109】
すなわち、上記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横方向配設工程と縦方向積み上げ工程を適宜組み合わせて柱梁架構の内側に耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を組み込んだ後に、横方向配設工程及び縦方向積み上げ工程で耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込まなかった部分、すなわち、
図13の斜線部分に配筋し、図示しない型枠を設けてコンクリートを打設する。あるいは、型枠内にグラウト材を充填してもよい。
【0110】
コンクリート打設あるいはグラウト材充填後は型枠を撤去して工事を完了する。
【0111】
横筋と縦筋およびそれらと鉄骨枠材との接合方法は適宜組み合わせることができる。
【0112】
図14,15は横筋16と鉄骨枠材との接合方法の組み合わせを示している。縦筋についても同様のことがいえる。
【0113】
図14の接合方法は、図示しない鉄骨枠材にアンカー筋20を突設し、横筋16とアンカー筋20を所定の長さ重ねて重なり部分21を形成し、横筋16同士は継手金具19によって接合する例である。
【0114】
なお、所定長の重なり部分21は、横筋16同士、あるいは縦筋17同士の接合に使用することができる。
【0115】
図15の接合方法は、図示しない鉄骨枠材に接合ナット12を設け、その接合ナット12に横筋16を螺着させて接合し、さらに横筋16同士を突き合わせ型の継手金具22によって接合する例である。
【0116】
鉄骨枠材との接合方法として、溶接による接合方法を適宜利用することができる。
【0117】
次に、
図16−18を用いて本願発明の異なる耐震壁構築工法を説明する。
【0118】
図6−13の工法では、摺動縦筋17bを引き出しながら耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を積み上げる際に、引き上げられた摺動縦筋17bが縦筋貫通孔中に落下するのを防止するために係止金具18を使用する。
【0119】
これに対して、
図16−18の工法では、係止金具を使用せずに引き上げ用ひも使用する。
【0120】
図16−18は全工程の中で、
図9−11の工程に相当する耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦方向積み上げ工程を示す。なお、理解容易のために、
図9−11と同一部分については同一の符号で示して重複する説明を省略する。
【0121】
図16は、それ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を積み上げると、縦筋17の頭部が耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦筋貫通孔3,4の中に没入する高さまで、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を積み上げたところを示している。
【0122】
図16に示すように、この工法では、摺動縦筋17bに引き上げ用ひも23が結びつけられている。引き上げ用ひも23は、好ましくはポリビニール等の耐水性がある材料からなり、摺動縦筋17bを引き上げるのに十分丈夫なものである。
【0123】
図17は、
図16の状態から耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を一段積み上げたところを示している。
【0124】
本工法では、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を積み上げる際に、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦筋貫通孔3,4の中に引き上げ用ひも23を通してから積み上げるようにする。
【0125】
すなわち、
図16の状態から耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を一段積み上げたときに、
図17に示すように、引き上げ用ひも23は積み上げられた耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦筋貫通孔3,4の中を通り、最上段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦筋貫通孔3,4から外部に導出されている。
【0126】
以降は、上記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦方向積み上げ工程を繰り返し、梁11や鉄骨枠材14の高さとの関係で、これ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を組み込めない高さまで耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を積み上げる。
【0127】
図18は、梁11や鉄骨枠材14の高さとの関係でこれ以上耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を組み込めない高さまで耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を積み上げた後の工程を示している。
【0128】
本工法によれば、
図18の右側の数本の摺動縦筋17bに示すように、摺動縦筋17bはその頭部に結びつけられた引き上げ用ひも23が、最上段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の縦筋貫通孔3,4から外部に導出されている。
【0129】
そこで、引き上げ用ひも23を引き上げることにより、摺動縦筋17bを引き上げることができ、各摺動縦筋17bを引き上げて鉄骨枠材14の上部内面に溶接する。
【0130】
なお、摺動縦筋17bを鉄骨枠材14の上部内面に接合する方法として、溶接以外に螺着あるいはアンカー筋と所定長の重なり部分を形成するようにしてもよいことは前述したとおりである。
【0131】
全部の摺動縦筋17bを鉄骨枠材14の上部内面に接合した後に、各段の耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の横筋貫通孔にグラウト材を充填する。
【0132】
貫通孔のグラウト充填工程の後は、耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1が組み込まれていない空間を、コンクリート打設あるいはグラウト材充填による仕上げるようにする。
【0133】
最後に、コンクリート打設あるいはグラウト材充填のための型枠を撤去して工事を完了する。
【0134】
なお、横方向配設工程において、横方向に耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1を追加配設しては摺動横筋16bを引き出して追加配設された耐震壁用プレキャストコンクリートブロック1の横筋貫通孔5に通し、不動横筋16aと摺動横筋16bが所定長の重なり部分に達したときは摺動横筋16bをそれ以上引き出さずに不動横筋16aとして定置し、新たに予備の一本の横筋を摺動横筋16bとして横筋貫通孔5に挿入してさらに横方向に前記耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを追加配設し、任意の幅の耐震壁を形成することができる。
【0135】
また、縦方向の積み上げ工程では、係止金具18と引き上げ用ひも23を併用して任意の高さの耐震壁を形成することができる。
【0136】
本発明によれば、鉄骨枠材を既設建物の柱梁架構に接着し、その鉄骨枠材内に耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込むようにしているため、既設建物の柱梁の目荒らし作業、アンカー打ち作業を行う必要がない。したがって、騒音や振動の問題を生じることがない。また、耐震壁のほとんどの部分を耐震壁用プレキャストコンクリートブロックによって構築し、最後のコンクリート打設あるいはグラウト材充填による仕上げ工程はきわめて限られた部分でコンクリートの打設あるいはグラウト材の充填が容易な形状を有しているため、現場の施工の負担が少なく、かつ、短期間で工事を完了させることができる。また、ブロック積の工程は任意の段で停止することができるので、建物を使用しながら休日のみ・夜間のみといった断続的な工程で施工することもできる。
【0137】
また、上述したように、本発明によれば、プレキャストされたコンクリート製本体の内部に縦筋と横筋を通しながら限られた空間の柱梁架構の内側に耐震壁用プレキャストコンクリートブロックを組み込むことができる。
【0138】
すなわち、本発明によれば、耐震壁を構築した状態で、横方向に配列された耐震壁用プレキャストコンクリートブロックは、横筋貫通孔に通しで横筋を配置することができ、かつ、横筋貫通孔に通された横筋の両端は鉄骨枠材に接合させることができる。
【0139】
これにより、耐震壁の横方向すなわち水平方向の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの一体性がきわめて高く、強度がきわめて高い耐震壁を得ることができる。
【0140】
また、縦方向にも耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの縦筋貫通孔に通しで縦筋を配置することができ、かつ、縦筋の上下端は鉄骨枠材に接合させることができる。
【0141】
これにより、耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの一体性がきわめて高く、高強度かつ耐転倒強度がきわめて高い耐震壁を得ることができる。
【0142】
また、本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックによれば、縦筋と横筋のいずれも貫通孔の内部で所定の長さの重なり部分を形成することにより、強固な継手を形成することができる。
【0143】
本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの横筋貫通孔と縦筋貫通孔のいずれも、工場で高品質に管理された状態でプレキャストされるため、コンクリートの充填不足等の欠陥がなく、きわめて高密度な貫通孔に形成され、かつ、この貫通孔は縦筋と横筋を二本(添え筋を使用する場合は添え筋を含めた複数本)通すことができる内径を有しているため、重なり部分で鉄筋同士が互いに接近した状態で重なって遊離することがない。
【0144】
これにより、貫通孔内で鉄筋を所定長重ならせてグラウトを充填することにより、きわめて信頼性が高い継手を有することができる。
【0145】
さらに、シース管を用いれば、シース管の径の変化により、耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの本体と貫通孔内に充填されるグラウト材との一体性が高くなり、さらに信頼性が高い耐震壁を得ることができる。
【0146】
シース管が金属製である場合は、鉄筋をその内部に保持する効果を有し、鉄筋同士の乖離を防止することができる。
【0147】
コンクリート製本体の上面と下面にコッターを備えるようにした本発明の耐震壁用プレキャストコンクリートブロックによれば、コッターが上下に隣接するプレキャストコンクリートブロックの横ずれを防止でき、耐震壁用プレキャストコンクリートブロックの信頼性を向上させることができる。