(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グロープラグは、たとえ同一品番の同一構成のものであっても、その抵抗値などの電気的特性にはバラツキが生じる。従って、グロープラグを通電して、エンジンの始動補助や白煙や黒煙等の発生を防止するエンジンの駆動状態改善を行うにあたり、画一的に同一条件でグロープラグに通電しても、その到達する温度や温度上昇の速度などにバラツキが生じることがある。場合によっては、到達温度の差異が200〜300度に達することもある。
例えば、相対的に抵抗値の小さいグロープラグと、大きいグロープラグとに同じ大きさの電圧を印加して昇温させた場合、抵抗値の小さいグロープラグには相対的に大きな電流が流れ、大きな電力が投入される。このため、相対的に、早期に温度が上昇し、到達温度も高い。このため、バッテリ電圧が高い場合など、場合によっては、過昇温となって、グロープラグの断線や劣化が生じる虞がある。
そこで、予め昇温時のグロープラグの抵抗値について、その変化の特性を測定しておき、これに応じて、各時点での通電量を制御することが考えられる。なお、このような抵抗値変化の特性測定のための昇温を、車両が運転されていない状態(キーオフの状態)で行うこともできるが、車両の始動時に、始動補助を兼ねて行うのが好都合である。
【0006】
しかるに、このような特性検知を兼ねたグロープラグの昇温を行っている場合に、例えば運転者が、キースイッチをオン位置としてから短時間でスタート位置とすることがある。すると、グロープラグの特性検知(抵抗値の変化の測定)を行っているにも拘わらず、セルモータが駆動されてエンジンがクランキングされ、燃焼室内に外気が流入すると共に、燃料も流入あるいは燃料噴射装置により噴射される。このため、グロープラグ(燃焼室内に突出している先端部)の温度が低下し、その抵抗値変化が、運転者がしばらくスタートキーをオンしなかった場合とは大きく異なったものとなるため、グロープラグの特性を適切に検知できなくなる虞がある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、グロープラグの通電制御とエンジン始動装置の制御とを調整して、適切なグロープラグの抵抗値の特性検知を可能とし、これにより、それ以降に、検知した特性に基づく、適切なグロープラグの通電制御を可能とした、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決手段は、通電により発熱し、自身の温度に応じて自身の抵抗値が変化するグロープラグへの通電を制御すると共に、上記グロープラグを装着したエンジンをクランキングさせ燃料を供給して始動させる始動装置を制御するグロープラグ・エンジン始動装置制御システムであって、上記グロープラグへの通電のオン/オフを切り替えるスイッチ手段と、上記グロープラグについての、通電による昇温時の抵抗値変化の特性を検知する特性検知手段と、検知した上記特性に応じて、上記スイッチ手段のオン/オフを調整して上記グロープラグへ通電させるグロープラグ調整通電手段と、上記始動装置に上記エンジンのクランキング及び燃料供給を指示する始動指示手段と、上記特性検知手段での上記特性の検知を、上記始動指示手段による上記指示に優先させる優先手段と、を備え
、上記特性検知手段でのグロープラグの特性検知が必要となったか否かを検知する特性検知要否検知手段と、上記特性検知が必要とされた場合に、上記特性検知手段での特性の検知を指示する特性検知指示手段と、を備え、上記特性の検知が指示された場合に実行される上記特性検知手段による上記グロープラグの目標温度までの昇温速度は、上記特性の検知が指示されなかった場合に実行される上記グロープラグ調整通電手段による上記グロープラグの上記目標温度までの昇温速度よりも、遅いグロープラグ・エンジン始動装置制御システムである。
【0009】
本システムでは、優先手段を有し、グロープラグの特性の検知を、エンジン始動の指示に優先、つまりグロープラグの特性の検知に対して、始動の指示が重ならないようにしている。即ち、エンジンの始動のためのクランキング及び燃料供給の指示に当たっては、グロープラグの特性検知を優先し、この特性検知を行っている間、始動のためのクランキングや燃料供給は行わない。このため、エンジンのクランキングによる燃焼室内への外気流入や、燃焼室内への燃料噴射などの燃料供給によって、通電によって昇温途中のグロープラグ(詳しくはその先端部)が冷却され、グロープラグの特性検知が難しくなったり、検知した特性の精度が低くなったりすることがない。つまり、このグロープラグについて、昇温時の抵抗値変化の特性検知を適切に行うことができ、ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段によるグロープラグへの昇温のための通電にあたり、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
【0010】
なお、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムは、グロープラグへの通電を制御すると共に、始動装置を制御するものである。
しかし、さらに、始動前および始動後のエンジンの制御をする、総合的なエンジン制御を行うものとして構成しても良い。
一方、このグロープラグ・エンジン始動装置制御システムは、a)単一の基板上に構成するなど、システム全体を一体として構成することも出来る。しかし、b)グロープラグへの通電を制御するサブシステムと、これと通信可能で、始動装置を制御するサブシステムとから構成し、優先手段をこのうちの一方に含ませ、あるいはこの2つのサブシステムに分散させて、これらの協働により全体の制御を実現する形態とすることも出来る。
b)の場合、始動装置を制御するサブシステムに、前述したように、さらに、始動後のエンジンの制御をさせる、さらには、エンジン停止中の各種の機器の機能チェックや交換チェックなど、総合的なエンジン制御を行わせるように構成することもできる。
また、b)の場合において、グロープラグへの通電を制御するサブシステムには、スイッチ手段の他に、何を含ませ、逆に始動装置を制御するサブシステムに始動指示手段の他に何を含ませるかによって、様々な組み合わせを考え得る。例えば、グロープラグへの通電を制御するサブシステムには、スイッチ手段のみを含ませ、逆に始動装置を制御するサブシステムに、始動指示手段のほか、特性検知手段、グロープラグ調整通電手段、及び、優先手段を含ませる形態が考えられる。また例えば、グロープラグへの通電を制御するサブシステムには、スイッチ手段のほか、特性検知手段及びをグロープラグ調整通電手段を含ませる一方、逆に始動装置を制御するサブシステムに、始動指示手段を含ませる。そして、優先手段として、グロープラグへの通電を制御するサブシステムに、特性検知手段での特性の検知を行う旨の通知を行う特性検知通知手段を設ける一方、始動装置を制御するサブシステムに、この通知に基づき、始動指示を遅らせる始動指示遅延手段を設けるものも考えられる。
【0011】
また、始動装置とは、エンジンを始動させるのに用いられる各種の被制御装置を指し、たとえば、エンジンのクランクシャフトを回転させてピストンの上下動(クランキング)を生じさせるセルモータが挙げられる。また、シリンダ内に燃料を噴射する燃料噴射装置(燃料噴射バルブ)も挙げられる。
また、スイッチ手段としては、グロープラグへの通電をオンオフできるスイッチング素子、例えば、MOSFET、サイリスタ、GTO、静電トランジスタ等の、パワー系の半導体素子が挙げられる。また、自身を流れる電流を検知できる機能を有する素子(例えば、PROFET(Infineon Technologies AG 社製 PROFET(登録商標)))なども挙げられる。
さらに、特性検知手段としては、所定パターンの通電により、グロープラグの昇温時における抵抗値の変化、あるいは、抵抗値の変化に伴ってグロープラグに生じた電圧(電圧降下)の変化、抵抗値の変化に伴ってグロープラグを流れる電流の変化、を検知するものが挙げられる。
グロープラグ調整通電手段は、特性検知手段で検知したグロープラグの抵抗値変化の特性に応じて、スイッチ手段でのオン/オフのタイミングの調整を行いつつグロープラグに通電する。具体的には、昇温カーブや温度が所望の形や値となるように、検知した特性に応じて、グロープラグに印加する実効電圧(実効電力)の補正を行って、スイッチ手段でのオン/オフのタイミング(PWM制御におけるデューティ比)の変更(補正)を行う調整が挙げられる。
【0012】
優先手段としては、特性検知手段での特性の検知を、始動指示手段による指示に優先させるように、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムに応じて、変更して適用することが出来る。
なお、前述のように、2つのサブシステムを用いる場合には、例えば、優先手段として、グロープラグへの通電を制御するサブシステムに、特性検知手段での特性の検知を行う旨の通知を行う特性検知通知手段を設ける一方、始動装置を制御するサブシステムに、始動指示を遅らせる始動指示遅延手段を設けるものが挙げられる。
【0014】
また、この制御システムでは、特性検知要否検知手段によって、グロープラグの特性検知が必要となった場合に特性の検知を指示するので、特性検知が必要な、適切なタイミングで、しかも前述の優先手段によって、始動指示手段による指示に優先して、グロープラグの特性検知を行うことができる。
【0015】
なお、特性検知が必要と判断される場合としては、例えば、本システムに(具体的にはスイッチ手段に)、新たなグロープラグが接続された場合(初めてグロープラグが接続された場合、交換により新たなグロープラグが接続された場合)、新たなグロープラグの接続が疑われる場合(バッテリとシステムとの接続が、一旦切断された場合(この間に、グロープラグの交換等が行われた可能性がある)、グロープラグの特性の経時変化が疑われる場合(グロープラグを長期にわたって使用した場合など)が挙げられる。
本システムは、接続されるグロープラグが、単数のものでも複数のものでも良い。複数のグロープラグが接続される場合には、そのうちの1本について、新たなグロープラグが接続された場合、この新たなグロープラグ(あるいはこれを含む全部のグロープラグ)について、特性検知を行う。
【0016】
あるいは、前述のグロープラグ・エンジン始動装置制御システムであって、前記スイッチ手段にグロープラグが新たに接続されたか否かを検知するグロープラグ新規接続検知手段と、上記グロープラグの新たな接続を検知した場合に、前記特性検知手段での特性の検知を指示する特性検知指示手段と、を備えるグロープラグ・エンジン始動装置制御システムとするのが好ましい。
【0017】
この制御システムでは、グロープラグの特性検知が必要である、新たなグロープラグの接続が検知された場合に特性の検知を指示するので、新たなグロープラグの特性検知を、適切なタイミングで、しかも前述の優先手段によって、始動指示手段による指示に優先して、行うことができる。また、特性検知が必要なタイミングで、確実にグロープラグの特性検知をすることができる。
【0018】
さらに、前述のグロープラグ・エンジン始動装置制御システムであって、前記スイッチ手段、前記特性検知手段、前記グロープラグ調整通電手段を含み、前記グロープラグに接続するグロープラグ制御サブシステムと、前記始動指示手段を含むエンジン始動制御サブシステムと、を含み、前記優先手段は、上記グロープラグ制御サブシステムに含まれ、上記エンジン始動制御サブシステムに対して、上記特性検知手段による前記特性の検知の時期に関する検知時期情報を通知する検知時期情報通知手段、及び、上記エンジン始動制御サブシステムに含まれ、通知された上記検知時期情報に基づいて、上記始動指示手段への始動指示の時期を調整する始動時期調整手段を有するグロープラグ・エンジン始動装置制御システムとすると良い。
【0019】
このグロープラグ・エンジン始動装置制御システムは、2つのサブシステムから構成されている。このようにすることで、分散処理が可能で、システム全体の処理効率が高くできるほか、大電流(例えば、70A)を流すグロープラグのスイッチ手段を、エンジン始動制御サブシステムと分離できるので、スイッチ手段における発熱などの影響が、始動指示手段などに及ぶことを防止できる。また、グロープラグ制御サブシステムに、スイッチ手段のほか、特性検知手段、グロープラグ調整通電手段を有しており、このグロープラグ制御サブシステムで、グロープラグの通電制御が可能であるので、エンジン始動制御サブシステムにおけるグロープラグの制御に関する負担を軽くできる。
しかも、グロープラグ制御サブシステムには、優先手段のうち検知時期情報通知手段が、エンジン始動制御サブシステムには、優先手段のうち始動時期調整手段が含まれている。このように、検知時期情報通知手段による検知時期情報の通知に基づいて、始動時期調整手段で始動時期の調整を行うので、特性の検知を、始動に優先させて、適切に行うことができる。
【0020】
なお、検知時期情報は、特性検知手段での特性の検知の時期に関し、始動指示手段への始動指示の時期を調整することになる内容を有する情報である。例えば、グロープラグ制御サブシステムにおいて、今から特性の検知を開始する旨の情報や、特性の検知を終了した旨の情報、特性の検知の終了時期の予想情報など、特性の検知を行う前、検知の後、或いは検知途中に通知する、検知の時期(始期や終期)に関する情報が挙げられる。また、検知時期情報には、当該エンジン始動に当たっては、(今回は)特性の検知をしない旨の情報(今回の起動では検知時期が到来しない旨の情報)も挙げられる。その他、「次回のエンジン起動の際に、特性の検知を行う」旨の予告情報も挙げられる。
なお、このような予告情報(検知時期情報)が通知されることになる状況としては、グロープラグ・エンジン始動装置制御システム(グロープラグ制御サブシステム)に初めてグロープラグが接続された場合や、グロープラグの交換により、新たなグロープラグが接続された場合、グロープラグの劣化による特性変化に対応するための定期的な特性の検知の場合など、接続されたグロープラグについて、通電による抵抗値変化の特性を検知する必要のある状況が挙げられる。
【0021】
また、始動時期調整手段による始動指示の調整の内容としては、例えば、運転者からエンジン始動の指示が出ている場合(キースイッチの位置を「オン」から「スタート」とした場合など)でも、検知時期情報通知手段から「特性の検知を開始する旨の情報」が通知されたときには、後に通知される「特性の検知を終了した旨の情報」が出されるまで、「始動指示手段へ始動指示するのを待つ」という形態の調整をすることが挙げられる。
また、運転者からエンジン始動の指示が出ている場合でも、検知時期情報通知手段から、「今回は特性の検知をしない旨の情報」あるいは「特性の検知を終了した旨の情報」が通知されるまで、「始動指示手段へ始動指示するのを待つ」という形態での調整も挙げられる。
また、運転者からエンジン始動の指示が出ている場合でも、検知時期情報通知手段から「特性の検知を開始する旨の情報」が通知されたときには、(特性検知が終了するであろう期間、或いはクランキング等の影響が十分小さくなるであろう期間などの)所定の期間が経過するまで、「始動指示手段へ始動指示するのを待つ」という形態の調整も挙げられる。
その他、検知時期情報通知手段から、前述の予告情報が通知された場合において、当該次回の始動の際に、「特性の検知を終了した旨の情報」が通知されるまで、あるいは、(特性検知が終了するであろう期間、或いはクランキング等の影響が十分小さくなるであろう期間などの)所定の期間が経過するまで、「始動指示手段へ始動指示するのを待つ」という形態の調整も挙げられる。
また、近年では、キースイッチではなく、運転者がスタートボタンを押下すると、グロープラグへの通電が開始され、所定の待機時間後(例えば2,3秒後)にエンジンの始動指示がなされるように構成されたシステムも採用されている。このようなシステムにおいては、特性検知を行う場合には、所定の待機時間を超えても、検知時期情報通知手段から「特性の検知を終了した旨の情報」が通知されるまで、「エンジンへ始動指示するのを待つ」という形態の調整も挙げられる。
【0022】
また、前述したように、特性検知手段でグロープラグの特性検知を行わせる場合としては、例えば、本システムに(具体的にはスイッチ手段に)、新たなグロープラグが接続された場合や、新たなグロープラグの接続が疑われる場合や、グロープラグの特性の経時変化が疑われる場合が挙げられる。このような特性検知をさせる場合の検知を、グロープラグ制御サブシステムで行うことも、エンジン始動制御サブシステムで行うこともできる。
例えば、グロープラグ制御サブシステムに、グロープラグが新たに接続されたか否かを検知するグロープラグ新規接続検知手段を含めることもできる。或いは、エンジン始動制御サブシステムに、グロープラグ制御サブシステムに対して、特性検知手段での特性の検知を指示する特性検知指示手段を設けることもできる。
【0023】
さらに、直上に記載のグロープラグ・エンジン始動装置制御システムであって、グロープラグ制御サブシステムは、これにグロープラグが新たに接続されたか否かを検知するグロープラグ新規接続検知手段を含み、前記特性検知手段は、上記グロープラグ新規接続検知手段で、上記グロープラグの新たな接続を検知した場合に、上記グロープラグの前記特性を検知するグロープラグ・エンジン始動装置制御システムとすると良い。
【0024】
本システムでは、グロープラグ制御サブシステムのグロープラグ新規接続検知手段で、このグロープラグ制御サブシステム(そのスイッチ手段)に、グロープラグが新たに接続されたか否かを検知する。そして、グロープラグの新たな接続を検知した場合に、そのグロープラグの特性を検知する。
このため、グロープラグの特性検知が必要である、新たなグロープラグを接続した直後のタイミングで、エンジン始動装置の作動に優先して、適切にグロープラグ特性検知を行い、グロープラグの特性を確実に検知することができる。
【0025】
なお、「グロープラグが新たに接続された」とは、グロープラグ制御サブシステムに、初めてグロープラグが接続された場合のほか、接続されていたグロープラグが取り外され、これと交換で、新たなグロープラグが接続された場合が挙げられる。
また、グロープラグ新規接続検知手段は、前述の特性検知要否検知手段がこれを兼ねることもできる。
【0026】
或いは、前述のグロープラグ・エンジン始動装置制御システムであって、前記スイッチ手段、前記特性検知手段、及び前記グロープラグ調整通電手段を含み、前記グロープラグに接続するグロープラグ制御サブシステムと、前記始動指示手段を含むエンジン始動制御サブシステムと、を含み、前記優先手段は、上記エンジン始動制御サブシステムに含まれ、上記グロープラグ制御サブシステムに対して、上記特性検知手段での前記特性の検知を指示する特性検知指示手段と、上記エンジン始動制御サブシステムに含まれ、上記始動指示手段への始動指示の時期を調整する始動時期調整手段とを有するグロープラグ・エンジン始動装置制御システムとすると良い。
【0027】
このシステムには、2つのサブシステムが含まれている。このようにすることで、分散処理が可能で、システム全体の処理効率が高くできるほか、大電流(例えば、70A)を流すグロープラグのスイッチ手段を、エンジン始動制御サブシステムと分離できるので、スイッチ手段における発熱などの影響が、始動指示手段などに及ぶことを防止できる。また、グロープラグ制御サブシステムに、スイッチ手段のほか、特性検知手段、グロープラグ調整通電手段を有しており、このグロープラグ制御サブシステムで、グロープラグの通電制御ができるので、エンジン始動制御サブシステムにおけるグロープラグの制御に関する負担を軽くできる。
しかも、エンジン始動制御サブシステムには、優先手段のうち、特性検知指示手段と始動時期調整手段とを有する。このため、特性検知指示手段による指示に基づいて、グロープラグ制御サブシステムの特性検知手段で特性の検知ができる上、始動時期調整手段で、始動指示の時期を調整するので、エンジン始動に優先させて、特性の検知を適切に行うことができる。
【0028】
なお、特性検知指示手段で、「特性検知手段での特性の検知を指示する」場合としては、例えば、グロープラグ制御サブシステム(スイッチ手段)への、初めてのグロープラグの接続や交換による新たなグロープラグの接続などが判明した場合や、このような事態が疑われる場合など、以降において、グロープラグの特性に応じた適切な通電の調整が出来ない虞のある場合に、特性検知の指示をするのが好ましい。具体的には、例えば、バッテリが取り外された場合(バッテリからのグロープラグ・エンジン始動装置制御システムへの通電が一旦途切れた場合。グロープラグの交換に当たって、バッテリの取り外しが行われることが多い)が挙げられる。また、交換者によって、ボタンその他の手段で、エンジン始動制御サブシステムに、グロープラグの交換を知らせる信号が与えられた場合も挙げられる。
【0029】
また、優先手段としては、エンジン始動制御サブシステムに特性検知指示手段と始動時期調整手段とを含めるパターンのほか、さらにこれらに加えて、グロープラグ制御サブシステムに、特性検知手段での前記特性の検知時期に関する検知情報を通知する検知情報通知手段を含めることもできる。
前者の場合としては、特性検知指示手段により、グロープラグ制御サブシステムに対して、特性の検知を指示すると共に、始動時期調整手段により、(特性検知が終了するであろう期間、或いはクランキング等の影響が十分小さくなるであろう期間などの)所定の期間が経過するまで、「始動指示手段への始動指示を待つ」という形態の調整を行うものが挙げられる。
また、後者の場合としては、エンジン始動制御サブシステムから、特性検知指示手段により、グロープラグ制御サブシステムに対して、特性の検知を指示した後、グロープラグ制御サブシステムの検知情報通知手段からの通知に基づいて、始動時期調整手段により、始動時期の調整を行うものが挙げられる。例えば、検知情報通知手段から「特性の検知を終了した旨の情報」が出されるまで、始動時期調整手段により、「始動指示手段へ始動指示するのを待つ」という形態の調整を行うものが挙げられる。また、グロープラグ制御サブシステムの検知情報通知手段からの情報としては、特性検知の終了予定(例えば、「○○秒後に終了する予定である」との情報)や、エンジン始動制御サブシステムからの、次回のエンジン始動時に特性検知をせよとの指示に対応して、当該次回の始動時に、検知情報通知手段から出される「特性検知を開始する」旨の情報なども挙げられる。
【0030】
さらに直上に記載のグロープラグ・エンジン始動装置制御システムであって、前記優先手段は、前記グロープラグ制御サブシステムに含まれ、前記エンジン始動制御サブシステムに対して、前記特性検知手段での前記特性の検知の終了を通知する検知終了通知手段を含むグロープラグ・エンジン始動装置制御システムとすると良い。
【0031】
このシステムでは、優先手段として、エンジン始動制御サブシステムに特性検知指示手段及び始動時期調整手段を有するほか、グロープラグ制御サブシステムに検知終了通知手段を有している。これにより、検知終了通知手段から「特性の検知を終了した旨の情報」が出されるまで、始動時期調整手段により、「始動指示手段へ始動指示するのを待つ」という形態の調整を行うなど、エンジン始動に優先させて、グロープラグの特性検知を適切かつ確実に行うことができる。
【0032】
或いは当初の2つに記載のグロープラグ・エンジン始動装置制御システムであって、前記スイッチ手段を含み、前記グロープラグに接続するグロープラグ通電サブシステムと、前記グロープラグ調整通電手段、及び前記始動指示手段を含むグロープラグ・エンジン始動制御サブシステムと、を含み、前記優先手段は、上記グロープラグ通電サブシステムに含まれ、これに新たなグロープラグが接続された旨の接続情報を、上記グロープラグ・エンジン始動制御サブシステムに対して通知する接続情報通知手段と、上記グロープラグ・エンジン始動制御サブシステムに含まれ、通知された上記接続情報に基づいて、上記始動指示手段への始動指示の時期を調整する始動時期調整手段とを有するグロープラグ・エンジン始動装置制御システムとすると良い。
【0033】
このシステムは、2つのサブシステムから構成され、しかも、優先手段として、グロープラグ通電サブシステムには接続情報通知手段が、グロープラグ・エンジン始動制御サブシステムには始動時期調整手段が含まれている。
このようにすることで、分散処理が可能で、システム全体の処理効率が高くできるほか、大電流(例えば、70A)を流すグロープラグのスイッチ手段を、グロープラグ・エンジン始動制御サブシステムと分離できるので、スイッチ手段における発熱などの影響が、始動指示手段、特性検知手段、グロープラグ調整通電手段などに及ぶことを防止できる。
さらに、グロープラグ通電サブシステムの接続情報通知手段からの接続情報の通知に基づいて、グロープラグ・エンジン始動制御サブシステムで始動時期調整手段で始動時期の調整を行うようにしている。このため、初めての取り付け或いは交換により、新たなグロープラグがグロープラグ通電サブシステムに接続された場合に、始動に優先させて、このグロープラグの特性の検知を適切に行うことができる。
【0034】
なお、グロープラグ通電サブシステムとしては、グロープラグへの通電をオン/オフ制御する半導体素子などのスイッチ手段を有するGRU(ク゛ローリレーユニット)が挙げられる。
また、グロープラグ・エンジン始動制御サブシステムとしては、始動装置に始動を指示する始動指示手段のほか、スイッチ手段に対し、オン/オフの切換タイミングを指示して、スイッチ手段による通電を行わせるグロープラグ調整通電手段、グロープラグの特性を検知する特性検知手段を有するサブシステムが挙げられる。
【0035】
なお、始動時期調整手段に、接続情報通知手段から新たなグロープラグが接続された旨の接続情報が通知された場合には、次回のエンジン始動時に、特性検知手段に対して、特性検知をさせると共に、始動時期調整手段において、「始動指示手段へ始動指示するのを待つ」という形態の調整を行うことが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態にかかるグロープラグ・エンジン制御システム(以下単に、システムともいう)1について、
図1〜
図10を参照して説明する。
図1に示すシステム1は、コンピュータシステムであり、バッテリBT、エンジンEG、複数のグロープラグGP等と共に、図示しない車両に搭載されている。エンジンEGには、スタータ(セルモータ)ST及び燃料噴射装置IJが備えられている。また、このエンジンEGの各気筒には、それぞれグロープラグGPがそれぞれ装着されている。グロープラグGPは、その先端のヒータ部GPaがエンジン室(図示しない)内に露出しており、エンジンEGの始動補助のため、始動時に通電されヒータ部GPaが昇温され、高温(例えば1300℃)にされる。このエンジンEGの始動時には、グロープラグGP(ヒータ部GPa)を昇温させた後に、スタータSTによりエンジンEGをクランキングさせるとともに、燃料噴射装置IJから、エンジン室内(図示しない)に燃料を吹き込んで、エンジンEGを始動させる。
【0038】
本実施形態のシステム1は、ECU10とGCU20の2つのサブシステムから構成されている。このうち、ECU10は、CPU,ROM,RAM等から構成された公知のマイクロコンピュータ(図示しない)を搭載しており、これに記憶されていたプログラムに従って各種制御を行い、GCU20とも通信可能に接続されている。またこのECU10は、バッテリBT及びキースイッチKSWに接続されているほか、スタータST,燃料噴射装置IJと通信可能とされており、キースイッチKSWのスイッチ位置を検知をし、スタータST,燃料噴射装置IJの駆動制御を行う。またさらに、車両に搭載された、図示しない各センサや各機器等との通信、及び、これらの制御をも行っている。
【0039】
一方、GCU20も、図示しないCPU,ROM,RAM等から構成されたマイクロコンピュータ21(
図2参照)を搭載しており、これに記憶されていたプログラムに従って各種制御を行うと共に、ECU10とも通信可能に接続されている。また、このGCU20にも、バッテリBTが接続されているほか、複数(
図1では4ヶ、
図2ではnヶ)のグロープラグGP(GP1〜GPn)がそれぞれリード線LE(LE1〜LEn)を介して接続されている。また、GCU20も、キースイッチKSWに接続しており、そのスイッチ位置を検知している。また、GCU20は、バッテリBTからグロープラグGPへの通電のオン/オフを切り替えるスイッチ手段22を有している。GCU20では、このスイッチ手段22を用いて、例えば、オン/オフのデューティ比を変化させるPWM制御を行うことで、バッテリBTから各グロープラグGP(ヒータ部GPa)に投入される電力をそれぞれ制御する。さらに、このGCU20には、各グロープラグGPの各時点での抵抗値(或いは抵抗値を算出するための、グロープラグGPの印加電圧及びグロープラグGPを流れる電流の大きさ)を検知するための抵抗値検知手段23をも備えている。
【0040】
次いで、このGCU20における、スイッチ手段22及び抵抗値検知手段23の具体的構成について説明する。
図2は、本実施形態のグロープラグ・エンジン制御システム1のうち、GCU20の電気的構成、及びGCU20とバッテリBT、キースイッチKSW、グロープラグGP等との接続関係を示す説明図である。破線で示すGCU20は、マイクロコンピュータ21、スイッチ手段22、電圧検出回路23B、電源回路24、インターフェイス回路25,26を含んでいる。
このうち、マイクロコンピュータ21には、バッテリBTに接続した電源回路24により、信号処理のための安定した動作電圧が常時供給される。また、キースイッチKSWをオン位置(ON)あるいはスタート位置(START)にすると、インターフェイス回路26を通じて、マイクロコンピュータ21に、その旨が通知される構成とされている。
さらに、このGCU20のマイクロコンピュータ21は、インターフェイス回路25を介して、ECU10と接続している。また、マイクロコンピュータ21は、インターフェイス回路25を介して、オルタネータとしても機能するスタータSTの駆動信号を検知可能に構成されており、スタータSTがオルタネータとして発電しているか否か、即ち、エンジンEGが発動しているか否かを検知できるようにされている。また、マイクロコンピュータ21には、インターフェイス回路25を介して、エンジン冷却水(図示しない)の水温WTを検知する水温センサWSも接続している。
【0041】
さらに、このマイクロコンピュータ21には、スイッチ手段22であるスイッチング素子221〜22nがnヶ並列に接続されている。本実施形態1では、各スイッチング素子221〜22nとして、電流検知機能付きFET(Infineon Technologies AG 社製 PROFET(登録商標))を用いている。各スイッチング素子221〜22nの電源端子BBには、それぞれバッテリBTが接続されている。一方、各素子221〜22nの出力端子LDは、各リード線LE(LE1〜LEn)を介して、グロープラグGP(GP1〜GPn)にそれぞれ接続されている。また、各素子221〜22nの入力端子SGには、図示しないNPNトランジスタを介して、マイクロコンピュータ21からのスイッチング信号が入力され、このスイッチング信号の電圧レベルのハイ/ローに応じて、各素子221〜22nをオン/オフし、各グロープラグGP1〜GPnへの通電をスイッチング(オン/オフ)することができる。なお、グロープラグGP(GP1〜GPn)の他端はそれぞれアース(エンジンEGにボディアース)されている。
【0042】
さらに、このスイッチング素子221〜22nは、スイッチ手段としての機能のみならず、電流検知機能をも備えている。即ち、各スイッチング素子221〜22nからは、この素子の電源端子BB−出力端子LD間を流れる電流、従って、グロープラグGP1〜GPnをそれぞれ流れる電流(以下、グロープラグ電流と略記することもある)Ig1(t)〜Ign(t)の大きさを示す電流信号I1(t)〜In(t)が、それぞれマイクロコンピュータ21に向けて出力される。つまり、このスイッチング素子221〜22nは、それぞれ、グロープラグ電流Ig1(t)〜Ign(t)を検出する電流検出回路23A(23A1〜23An)にもなっている。
また、スイッチング素子221〜22nの各出力端子LDには、各グロープラグGP(GP1〜GPn)と並列に、電圧検出回路23B(23B1〜23Bn)がそれぞれ接続されている。この電圧検出回路23Bは、具体的には、抵抗R1と抵抗R2とを直列に接続したものであり、一端を出力端子LDに、他端をアースに接続することで、グロープラグGP(GP1〜GPn)への印加電圧Vg1(t)〜Vgn(t)を抵抗分割して、検知電圧V1(t)〜Vn(t)として、抵抗値算出手段23Cであるマイクロコンピュータ21にそれぞれ入力する。
【0043】
従って、電流検出回路23Aから出力される電流信号I1(t)〜In(t)(グロープラグ電流Ig1(t)〜Ign(t)に対応)と、電圧検出回路23Bで検出する検知電圧V1(t)〜Vn(t)(印加電圧Vg1(t)〜Vgn(t)に対応)とを用い、マイクロコンピュータ21で計算することで、各時点でのグロープラグGP1〜GPnの抵抗値Rg1(t)〜Rgn(t)を得ることができる。即ち、これら電流検出回路23A(23A1〜23An)、電圧検出回路23B(23B1〜23Bn)、及びマイクロコンピュータ23C(21)は、併せて、グロープラグGP(GP1〜GPn)の抵抗値Rg1(t)〜Rgn(t)を検出する抵抗値検出手段23となっている。
【0044】
なお、GCU20は、エンジンEGが停止している期間中に、定期的(例えば120秒ごと)に、このスイッチング素子221〜22nをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPに通電して、その際に流れるグロープラグ電流Ig1(t)〜Ign(t)の電流値を検出する(電流が流れるかどうかを検知する)。これにより、このGCU20(スイッチング素子221〜22n)にグロープラグGPが接続され続けているかどうか(逆に言えば、初めてのグロープラグの接続や、交換のために一旦グロープラグを取り外したかどうか)を検知することもできるようにされている。
【0045】
グロープラグGPでは、主として先端部をなすヒータ部GPaが、抵抗を生じる部位となる。しかし、その他に、グロープラグGPの他の抵抗部位(図示しない通電端子軸、主体金具など)、およびグロープラグGPとスイッチ手段22との間に介在するリード線LEなどにも、若干(例えば、全体の10%程度)の抵抗を生じる。
また、このヒータ部GPaは、その温度が高くなると、その抵抗値も大きくなる正の相関関係を有している。また、他の抵抗部位も、温度が高くなると、抵抗値が大きくなる正の相関関係を有している。従って、本実施形態で用いるグロープラグGPは、全体としても、ヒータ温度が上がると、グロープラグGPの抵抗値Rgも大きくなる、正の相関関係を有している。なお、リード線LEも、温度が高くなると、抵抗値が大きくなる正の相関関係を有している。
【0046】
但し、エンジンEGの始動時、グロープラグGPのうち、ヒータ部GPaは、通電により、例えば、その温度が目標温度(例えば1300℃)になるまで、短時間(例えば2秒程度)で昇温させられる。一方、グロープラグGPのうち、通電端子軸など他の抵抗部位は、全体としてみると、この程度の短時間では、それほど高い温度にはならず、その温度は、概略、ヒータ部GPaからの伝熱のほか、グロープラグGPの周囲に位置しているエンジンEGの温度、従って、エンジン冷却水の水温などに影響を受け、これらとほぼ同程度の温度になると考えることができる。
そして、グロープラグGPのうちの通電端子軸など他の抵抗部位やリード線LEは、ヒータ部GPaからの伝熱により、これに遅れて、例えば、30秒程度掛かって徐々に昇温する。このため、GCU20から見た、リード線LEを含めたグロープラグGPの抵抗値も徐々に増加する。
さらに、エンジン冷却水の水温やエンジンブロックなどの温度は、エンジンEGが始動した後、しばらくの期間(例えば30秒程度)はほとんど上昇しない。このため、エンジンEGが始動し、しばらくの期間(例えば30秒程度)経った後から、水温等の上昇と共に、さらに通電端子部材など他の抵抗部位やリード線LEの抵抗が徐々に上昇する。
このように、GCU20から見た、リード線LEを含めたグロープラグGPの抵抗値Rgは、ヒータ部GPaを目標温度まで温度上昇させた後の、始動前においても、始動後においても、徐々に増加する傾向を示す。
【0047】
ところで、エンジンEGの始動時にグロープラグGPを昇温させるに当たり、このグロープラグGP(ヒータ部GPa)の温度や温度変化を、できるだけ精度良く制御したい要望がある。そこで、前述したように、予め昇温時のグロープラグGPの抵抗値Rgの変化の特性を測定しておき、これに応じて、各時点での通電量を制御することが考えられる。
このようなグロープラグGPの抵抗値Rgの特性測定に当たっては、上述したような、目標温度(例えば1300℃)まで2秒で昇温させるというような、短時間での昇温をさせるよりも、若干時間を掛けて(例えば5〜15秒程度かけて)昇温させる方が好ましい。2秒程度で急速に昇温させる場合には、グロープラグGPの特性にもよるが、バッテリ電圧を直接印加する必要となる場合が多く、投入する電力を調整できない場合が多い。これに対して、緩やかに昇温させると、投入する電力を細かく調整することができ、温度バラツキを小さくしやすい。また、緩やかに昇温させることで、発熱部の熱がこの周囲の部分にも伝わるため、温度が飽和した場合の抵抗値との相関が良好になるからである。なおこれとは逆に、急速に昇温させた場合には、先端の発熱部のみが昇温した場合の抵抗値となるので、グロープラグGP全体が暖まった飽和状態での抵抗値との相関が低い。
【0048】
しかるに、前述したように、このような特性検知を兼ねたグロープラグGPの比較的緩やかな昇温を行っている場合に、例えば運転者がこれを知らずに或いは故意に、キースイッチKSWをオン位置としてから、短時間でキースイッチKSWをスタート位置にすることがある。
しかしながら、本実施形態のシステム1では、このような場合に、運転者の指示にも拘わらず、スタータST及び燃料噴射装置IJの駆動を遅らせるなど、エンジンEGの始動処理の開始を遅らせ、グロープラグGPの特性検知を優先する処理を行う。
【0049】
以下では、システム1のサブシステムをなす、ECU10における処理、及びGCU20における処理に関し、nヶのグロープラグGPを代表させて、m番目(1<m<n)のグロープラグGPmに対する処理について説明する。このグロープラグ・エンジン制御システム1では、エンジンEGが作動していない状態(キースイッチKSWがOFFとされている場合)でも、バッテリBTから電力を供給されており、2つのサブシステム(ECU10,GCU20)は、それぞれ作動して、後述するように、グロープラグGPの新規の接続や交換などを監視したり、他のセンサなどを用いて、必要な情報の収集等を行っている。
【0050】
まず、GCU20における制御について、
図4〜
図9を参照して説明する。GCU20の動作には、エンジンEGの作動中に用いられる通常動作モードと、エンジンEGの休止中に用いられる省電力モードの、2つのモードが有る。
図4に示すように、GCU20は、エンジンEGの休止中には、省電力モードで動作し、グロープラグ新規接続検知サブルーチン(ステップGA)と、省電力モード中に行うべき、その他の制御(ステップG1)とを繰り返している。
このうち、
図5に示すグロープラグ新規接続検知サブルーチンでは、まずステップGA1において、グロープラグ未接続フラグNFmがセットされているか否かを判断する。
なお、グロープラグ未接続フラグNFmは、GCU20に、さらに具体的には、m番目のスイッチング素子(スイッチ手段)22mに、m番目のグロープラグGPmが接続されていない場合にセットされるフラグである。このフラグNFmは、前述したように、エンジンEGが停止している期間(即ち省電力モードの期間)中に、GCU20が、定期的に、スイッチング素子22mをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPmに通電して、その際に流れるグロープラグ電流Igm(t)の電流値を検出している。そして、電流が流れない場合には、後述するように、このフラグNFmをセットする。
【0051】
このステップGA1でNo、つまりグロープラグ未接続フラグNFmがセットされていない場合には、ステップGA2に進み、グロープラグGPmがGCU20(スイッチング素子22m)に接続されているか否かを検知する。具体的には、上述したように、スイッチング素子22mをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPmに通電し、グロープラグ電流Igm(t)が流れるか否か(所定値より大きいか否か)を検知する。ここでYes、即ちグロープラグGPmが接続されている場合(グロープラグ電流Igm(t)が流れる場合)には、省電力モードのルーチンに戻る(ステップG1に進む)。一方、ここでNo、即ちグロープラグGPmが接続されていない場合(グロープラグ電流Igm(t)が流れない場合、つまり、GCU20へのグロープラグGPmの接続が未だなされていない場合、及び、交換により、グロープラグGPmが一旦取り外された場合)には、ステップGA3に進み、グロープラグ未接続フラグNFmをセットし、省電力モードのルーチンに戻る(ステップG1に進む)。
【0052】
一方、ステップGA1でYes、即ち、既にグロープラグ未接続フラグNFmがセットされている場合には、ステップGA4に進み、新たに、グロープラグGPmがGCU20(スイッチング素子22m)に接続されたか否かを検知する。具体的には、ステップGA2と同様、スイッチング素子22mをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPmに通電し、グロープラグ電流Igm(t)が流れるか否かを検知する。ここでNo、即ち未だグロープラグGPmが接続されていない場合(グロープラグ電流Igm(t)が流れない場合)には、省電力モードのルーチンに戻る。一方、ここでYes、即ちグロープラグGPmが新たに接続された場合(グロープラグ電流Igm(t)が流れる場合、つまりGCU20へのグロープラグGPmが初めて接続された場合、及び、交換により、グロープラグGPmが新たに取り付けられた場合)には、ステップGA5に進み、グロープラグ未接続フラグNFmをリセットし、グロープラグ新規接続フラグSFmをセットする。さらに、ステップGA6に進み、ECU10に、グロープラグGPmが新規に接続された旨(次回のキースイッチKSWをオン位置としたタイミングで、エンジン始動に先立ってグロープラグGPmの特性検知を行う旨)を通知する。具体的には、GCU20のマイクロコンピュータ21から、インターフェイス回路25を通じて、ECU10に上記内容の信号(新規接続信号SIG1)を送信する。なお、これにより、ECU10では、GCU特性検知フラグTFをセットする。その後、省電力モードのルーチンに戻る(ステップG1に進む)。
【0053】
従って、本実施形態1のシステム1(GCU20)では、省電力モードの状態(エンジンEGの休止中)に、GCU20に初めてグロープラグGPmを接続した場合、及びグロープラグGPmを交換した場合には、速やかに、このGCU20において、グロープラグ新規接続フラグSFmがセットされた状態となる。さらに、これに伴い、ECU10において、GCU特性検知フラグTFもセットされた状態となる。
【0054】
さらに、GCU20(マイクロコンピュータ21)では、上述の省電力モードに対するキーON割り込み処理として、キースイッチKSWがオン位置とされた場合には、
図6に示すように、キーONフラグをセットすると共に(ステップG2)、GCU20の動作モードを省電力モードから通常動作モードへ復帰させる(ステップG3)。つまり、運転者がキースイッチKSWをオン位置にすると、GCU20は、省電力モードから通常動作モードに移行する。
【0055】
図7に示す、この通常動作モードでは、まず、ステップG11において、必要な初期設定を行う。その後、ステップG12で、以降のキーON割り込み処理を禁止する。運転者がその後に、キースイッチKSWを、スタート位置とした後(クランキングさせた後)にオン位置に戻すなど、キースイッチKSWが新たにオン位置にされる場合があり得るが、この場合に、割り込み処理が生じないようにするためである。
【0056】
続いて、ステップG13において、グロープラグ新規接続フラグSFmがセットされているか否かを判断する。ここでNo、つまり、グロープラグGPmが、初めて或いは交換により新規接続されたのではなく、前回のエンジン始動に引き続き、同じグロープラグGPmが接続されている場合には、グロープラグの急速昇温サブルーチン(ステップGB)に進み、グロープラグGPmに通電して、これを急速昇温させる(例えば、2秒程度で1300℃にまで昇温させる)。
【0057】
この急速昇温サブルーチン(
図8参照)では、ステップGB1において、急速昇温が終了した(グロープラグGPmの温度が目標温度に達した)か否かを判断する。ここでNo、つまり、急速昇温中である場合には、ステップGB2に進み、後述するようにして、特性補正した通電条件で通電し、グロープラグGPmを急速昇温させて、通常動作モード(
図7参照)のルーチンに戻る。一方、ステップGB1でYes、つまり、急速昇温が終了した場合には、ステップGB3に進み、急速昇温の通電を終了し、通常動作モードのルーチンに戻る。
【0058】
次いで、保温通電サブルーチン(ステップGC)に移行する。この保温通電サブルーチン(
図9参照)では、まずステップGC1において、保温通電が終了したか否かを判断する。ここでNo、つまり、保温通電中である場合には、ステップGC2に進み、水温センサWSによるエンジン冷却水の水温WTを検知する。さらに、ステップGC3では、この水温WT補正を行ったグロープラグGPmの抵抗値制御により、グロープラグGPm(そのヒータ部GPa)の温度を、例えば800℃など、所定の値に保持するように、特性補正した通電条件で通電し、通常動作モード(
図7参照)のルーチンに戻る。一方、ステップGC1でYes、つまり、保温通電の期間が終了した場合には、ステップGC4に進み、保温通電を終了し、通常動作モードのルーチンに戻る。
【0059】
さらに、その後、通常動作モード(
図7参照)のステップG14では、キースイッチKSWがキーOFFされたか否か(運転者からエンジンEGの作動停止が指示されたか否か)を判断する。ここでNo、つまり、エンジンEGを引き続き作動させる場合には、ステップGBの急速昇温、及びステップGCの保温通電の処理を繰り返し行う。
【0060】
一方、ステップG13においてYes、つまり、グロープラグGPmが、初めて或いは交換により新規接続された場合には、特性検知サブルーチン(ステップGD、
図10参照)に進む。グロープラグGPmが新規に接続されたため、その抵抗値の温度特性が不明であり、このままでは適切な通電制御を行いにくいからである。そこで、グロープラグGPmに通電してこれを昇温させるのにあたり、例えば、15秒程度で1300℃にまで昇温させる、というように、昇温速度を遅くして、前述した急速昇温(ステップGB)に比して緩やかに昇温させる。
【0061】
この新規接続のグロープラグの特性検知サブルーチン(
図10参照)では、ステップGD1において、特性検知(グロープラグGPmの昇温時の抵抗値の変化の測定)が終了した、かつ昇温が終了した(グロープラグGPmの温度が目標温度に達した)か否かを判断する。なお、グロープラグGPmの温度が目標温度に達したか否かは、例えば、投入した電力量が所定の量となったか否かで判断すると良い。ここでNo、つまり、特性検知中である場合には、ステップGD2に進み、特性検知のための通電を行う。具体的には、標準の抵抗値を有するグロープラグを想定して、15秒で目標温度まで昇温するように、PWM制御によりスイッチング素子22mのオンオフさせ、このグロープラグGPmに投入する電力を制御して、グロープラグGPmを昇温させる。
【0062】
次いで、ステップGD3では、当該時点におけるグロープラグGPmの抵抗値Rgm(t)を検知する。具体的には、まず、スイッチング素子22mの電流検知機能(電流検出回路23Am)により、グロープラグ電流Igm(t)を検出する。また、電圧検出回路23Bmにより、グロープラグGPmへの印加電圧Vgm(t)を分圧した検知電圧Vm(t)を検出する。これらを用いて、グロープラグGPmの抵抗値Rgm(t)を算出する。具体的には、Rgm(t)=Vgm(t)・(R1+R2)/(R2・Igm(t))で、算出する。
【0063】
次いでステップGD4では、水温センサWSで測定したエンジン冷却水の水温WTを、インターフェイス回路25を通じて取り込む。さらに、ステップGD5では、当該時点でのグロープラグGPmの抵抗値Rgm(t)と水温WT(t)とをRAMに記憶し、通常動作モード(
図7参照)のルーチンに戻る。
【0064】
なお、グロープラグGPmについて、上述のように緩やかに昇温させて特性測定を行うが、グロープラグGPmを除く各グロープラグGP1〜GPnも、同様に緩やかに昇温させる。他のグロープラグを、グロープラグGPmとは別の昇温パターンで昇温(例えば急速昇温)させる必要がないからである。従って、グロープラグGPm以外の既にその特性を得ているグロープラグGP1〜GPnについても、グロープラグGPmの特性測定と同時に、改めてその特性を測定することもできる。また、複数のグロープラグを新規接続した場合には、少なくとも新規接続にかかるグロープラグ全部について、特性検知を行うことは言うまでもない。
【0065】
一方、ステップGD1でYes、つまり、特性検知のための通電が終了した場合には、ステップGD6に進み、特性検知のための通電を終了する。
次いで、ステップGD7では、グロープラグGPmの急速昇温時の各時点での補正係数を決定する。具体的には、ステップGD5で記憶した、各時点でのグロープラグGPmの抵抗値Rgm(t1),Rgm(t2),…と、水温WT(t1),WT(t2),…とから、新規に接続したグロープラグGPmの抵抗値の温度特性を得る。そして、これを基に、標準的な抵抗特性を有するグロープラグを急速昇温させる場合に、PWM制御によって、各時点で投入する電力やこれに対応するスイッチング素子22によるスイッチングのデューティ比に対して、このグロープラグGPmを急速昇温させた場合の、各時点で投入する電力やデューティ比の補正係数を決定する。傾向として、標準的なグロープラグに比して、抵抗値が小さいグロープラグについては、これに印加される実効電圧が小さくなるように補正を行い、抵抗値が大きいグロープラグについては、これに印加される実効電圧が大きくなるように補正係数を決定する。
このようにして得た補正係数を用いることで、前述したグロープラグの急速昇温サブルーチンGBのステップGB2では、特性補正した条件で急速昇温通電を行う。
【0066】
さらにステップGD8でグロープラグ新規接続フラグSFmをリセットする。さらに、破線で示すステップGD9に進み、ECU10に、グロープラグGPmの特性検知が終了した旨を通知する。具体的には、GCU20のマイクロコンピュータ21から、インターフェイス回路25を通じて、ECU10に上記内容の信号(特性検知終了信号SIG2)を送信する。なお、これにより、ECU10では、GCU特性検知終了フラグEFをセットする。その後、通常動作モード(
図7参照)のルーチンに戻る。
【0067】
次いで、保温通電サブルーチン(ステップGC)に移行し、その後、再び、通常動作モード(
図7参照)のルーチン(ステップG15)に戻る。この保温通電サブルーチン(
図9参照)は、既に説明したので説明を省略する。
【0068】
さらに、その後、通常動作モード(
図7参照)のステップG15では、キースイッチKSWがキーOFFされたか否か(エンジンEGの作動停止が指示されたか否か)を判断する。ここでNo、つまり、エンジンEGを引き続き作動させる場合には、ステップGDの特性検知の処理、及びステップGCの保温通電の処理を繰り返し行う。
【0069】
一方、ステップG14及びG15において、Yes即ちキースイッチKSWが運転者によりOFFとされた場合には、ステップG16に進む。
このステップG16では、当該時点で、グロープラグに対して、昇温通電中(急速通電(ステップGB)中あるいは特性検知の通電(ステップGD)中)であるか、または、保温通電(ステップGC)中であるか否かを判断する。
ここで、Yesつまり、昇温通電あるいは保温通電中である場合には、ステップG17に進んで、現在行っている昇温通電あるいは保温通電を強制終了させ、その後ステップG18に進む。運転者がエンジン停止を指示しており、これ以上昇温あるいは保温を継続する意味がないからである。
一方、ステップG16でNO、即ち、昇温通電あるいは保温通電中でない場合には、ステップG17を行わずにステップG18に進む。
【0070】
ステップG18では、ステップG12で禁止していたキーON割り込み処理を許可する。運転者がその後に、キースイッチKSWを再びオン位置とするなど、キースイッチKSWが新たにオン位置にされる場合があり得るが、この場合に、キーON割り込み処理を行うようにするためである。
さらに、ステップG19では、省電力モードの初期設定を行い、その後、省電力モード(
図4参照)に移行する。この省電力モードでは、GCU20の動作クロックの周波数を低くして、GCU20その他の電力消費を抑制する。一方、通常動作モードでは、GCU20の動作クロックの周波数を高くして、GCU20その他の動作を適切に行えるようにする。
【0071】
次いで、ECU10におけるエンジン始動処理について、
図3を参照して説明する。運転者がキースイッチKSWをオン位置にすると、上述したGCU20における処理に並行して、ECU10において、このエンジン始動処理が行われる。
まず、ステップE1において、キースイッチKSWがスタート位置にされたか否かを判断する。ここでNo、つまり、キースイッチKSWが、まだスタート位置にされていない場合には、元に戻り、このステップE1を繰り返す。つまり、キースイッチKSWがスタート位置とされるのを待つ。
【0072】
一方、キースイッチKSWがスタート位置とされた場合(Yes)には、ステップE2に進み、GCU20において、グロープラグGP(複数のグロープラグのいずれか)について、特性検知を行うか否かを判定する。具体的には、GCU特性検知フラグTFがセットされているか否かを判定する。
ここでYes、即ち、フラグTFがセットされている場合には、ステップE3に進む。一方、ここでNo、即ち、フラグTFがセットされていない場合には、ステップE3をスキップして、ステップE4に進む。GCU20でグロープラグGPの特性検知が行われないので、通常通り、運転者の指示に従ってエンジンの始動処理を行えば良いからである。
【0073】
ステップE3では、GCU20において、グロープラグGPの特性検知が終了したか否かを判定する。具体的には、GCU特性検知終了フラグEFがセットされているか否かを判定する。
ここでNo、即ち、特性検知が終了していない(フラグEFがセットされていない)場合には、ステップE4,E5をスキップして、ステップE1に戻る。一方、このステップE3でYes、即ち、特性検知が終了している(フラグEFがセットされている)場合には、ステップE4に進む。これにより、GCU20において、特性検知が終了するまで、ステップE4及びE5は実行されないことになる。逆に言えば、GCU20において、グロープラグGPmの特性検知を行う場合には、この特性検知を優先し、この特性検知が終了するまで、ステップE4,E5の実行を待つことになる。
【0074】
ステップE4では、エンジン始動を指示する。具体的には、スタータSTに指令して、これを駆動させ、エンジンEGをクランキングさせる。さらに、燃料噴射装置IJに指令して、吸気のタイミングに合わせて、エンジン室内に燃料を噴射させ、エンジンEGを始動させる。
なお、この時点では、各グロープラグGPは、急速昇温され、あるいは、特性検知に伴う昇温により高温とされており、エンジンEGの始動を補助する。
さらに、ステップE5では、GCU特性検知フラグTFをリセットすると共に、GCU特性検知終了フラグEFをリセットする。
【0075】
本実施形態1では、GCU20における、抵抗値検知手段23(具体的にはスイッチング素子22(電流検出回路23A),電圧検出回路23B、マイクロコンピュータ21(抵抗値算出手段23C))、及び、特性検知サブルーチン(ステップGD)が、特性検知手段に該当する。また、GCU20における、スイッチング素子22、急速昇温中に特性補正した通電条件でグロープラグGPに通電するステップGB2が、グロープラグ調整通電手段に相当する。また、ECU10における、ステップE4が始動指示手段に該当する。さらに、GCU20におけるステップGA6,GD9、及び、ECU10におけるステップE2,E3が、優先手段に該当する。
さらに、GCU20におけるグロープラグ新規接続検知サブルーチンのステップGA1〜GA4が、特性検知要否検知手段に該当する。また、GCU20におけるステップGA5,G13が、特性検知指示手段に該当する。また、ステップGA1〜GA4は、グロープラグ新規接続検知手段にも該当する。
さらに、GCU20が、グロープラグ制御サブシステムに、ECU10が、エンジン始動制御サブシステムに該当する。また、グロープラグ・エンジン制御システム1が、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムに該当する。
【0076】
さらに、本実施形態1では、ステップGA6による通知(新規接続信号SIG1の送信)により、ECU10は、次回のエンジン始動時に、グロープラグGPの特性検知を行う旨の検知時期情報(新規接続信号SIG1)を得ている。また、ステップGD9による通知(特性検知終了信号SIG2の送信)により、ECU10は、グロープラグGPmの特性検知が終了した旨の検知時期情報(特性検知終了信号SIG2)を得ている。従って、優先手段のうちステップGA6,GD9が、検知時期情報通知手段に該当する。
加えて、ECU10は、ステップE2,E3により、通知された検知時期情報(新規接続信号SIG1)に基づいて、スタータST等への始動指示を行わないようにし、また、通知された検知時期情報(特性検知終了信号SIG2)に基づいて、スタータST等への始動指示を行う。従って、優先手段のうち、ステップE2,E3が、スタータST等(始動指示手段)への始動指示の時期を調整する始動時期調整手段に該当する。
【0077】
本実施形態1にかかるグロープラグ・エンジン制御システム1では、ステップGA6,GD9,E2,E3の優先手段を有し、グロープラグGPmの特性の検知を、エンジンEG始動の指示に優先している。つまりグロープラグGPmの特性の検知に対して、エンジンEG始動の指示が重ならないようにしている。即ち、エンジンEGの始動のための、スタータSTへのクランキングの指示、及び燃料噴射装置IJへの燃料供給の指示に当たっては、グロープラグGPmの特性検知を優先し、この特性検知を行っている間(キースイッチKSWがオンとされてからGCU特性検知終了フラグEFがセットされるまでの間)、これらスタータST及び燃料噴射装置IJによる、始動のためのクランキングや燃料供給は行わない。このため、エンジンEGのクランキングによる燃焼室内への外気流入や、燃焼室内への燃料噴射などの燃料供給によって、通電によって昇温途中のグロープラグGPm(詳しくはその先端部GPa)が冷却され、このグロープラグGPmの特性検知が難しくなったり、検知した特性の精度が低くなったりすることがない。つまり、このグロープラグGPmの昇温時の抵抗値変化の特性の検知を適切に行うことができ、ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段(ステップGB2)によるグロープラグGPmへの昇温のための通電にあたり、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
【0078】
また本実施形態のシステム1では、特性検知要否検知手段に該当するグロープラグ新規接続検知サブルーチンのステップGA1〜GA4(
図5参照)によって、グロープラグGPmの特性検知が必要となった場合(本実施形態1では、新たなグロープラグGPmが接続された後の最初に昇温させる場合)に、このグロープラグGPmの特性の検知を指示する(ステップGS5,G13)。しかも、前述の優先手段(ステップGA6,GD9,E2,E3)によって、始動指示手段(ステップE4)による始動指示に優先して、グロープラグGPmの特性検知を指示する。このためグロープラグGPmの特性検知が必要な、適切なタイミングで、当該グロープラグGPmの特性検知を行う(ステップGD、
図10参照)ことができる。
具体的には、本実施形態1のシステム1では、グロープラグGPmの特性検知が必要となる、新たなグロープラグGPmの接続が検知された場合に、特性の検知を指示する(ステップGA5,G13)。このため、グロープラグGPmの特性検知(ステップGD)を、適切なタイミングで、前述の優先手段(ステップGA6,GD,E2,E3)によって、始動指示手段(ステップE4)による指示に優先して行うことができる。また、特性検知が必要な場合に、確実にグロープラグGPmの特性検知をすることができる。
【0079】
しかも本実施形態1のシステム1は、ECU10及びGCU20の、2つのサブシステムから構成されている。このようにすることで、分散処理が可能で、システム1全体の処理効率が高くできるほか、大電流(例えば、70A)を流すスイッチング素子22を、ECU10と分離できるので、スイッチング素子22における発熱などの影響が、ECU10の処理、例えば、始動指示手段(ステップE4)などに及ぶことを防止できる。また、GCU20に、スイッチング素子22のほか、特性検知手段(抵抗値検知手段23,23A,23B,23C,及びステップGD)、グロープラグ調整通電手段(スイッチング素子22,及びステップGB2)を有している。このため、このGCU20で、各グロープラグGP1〜GPnの通電制御が可能であるので、ECU10におけるグロープラグGPの制御に関する負担を軽くできる。
しかも、GCU20には、優先手段のうち検知時期情報通知手段(ステップGA6,GD9)が、また、ECU10には、そのうちの始動時期調整手段(ステップE2,E3)が含まれている。このように、検知時期情報通知手段(ステップGA6,GD9)による検知時期情報の通知(新規接続信号SIG1、及び特性検知終了信号SIG2)に基づいて、始動時期調整手段(ステップE2,E3)で、エンジンEGの始動時期の調整(本実施形態では遅延)を行うので、グロープラグGPmの特性検知を、始動に優先させて、適切に行うことができる。
【0080】
しかも、本システム1では、GCU20のグロープラグ新規接続検知手段(ステップGA1〜GA4)で、このGCU20(そのスイッチング素子22)に、グロープラグGPmが新たに接続されたか否かを検知する。そして、グロープラグGPmの新たな接続を検知した場合に、そのグロープラグGPmの特性を検知する。
このため、グロープラグGPmの特性検知が必要である、新たなグロープラグGPmを接続した後の最初に昇温させる場合に、エンジン始動装置であるスタータSTや燃料噴射装置IJの作動に優先して、適切かつ確実にグロープラグGPmの特性検知を行うことができる。
【0081】
(変形形態1)
次いで、上述した実施形態1の変形形態について、
図11を参照して説明する。
前述した実施形態1のシステム1では、グロープラグGPmの特性測定が終了したタイミングで、ステップGD9により、GCU20からECU10に向けて特性検知終了信号SIG2を送信し、GCU特性検知終了フラグEFをセットする。そして、運転者がキースイッチKSWをスタート位置としても(始動指示をしても)、ECU10において、このGCU特性検知終了フラグEFのセットを確認(ステップE3)するまで、エンジン始動指示(ステップE4)を待っていた。
【0082】
これに対し、本変形形態1のシステム101では、グロープラグGPmの特性測定が終了しても、実施形態1の特性検知終了信号SIG2に相当する信号を送信しない。これに代えて、運転者がキースイッチKSWをスタート位置とした場合に、GCU120での特性検知の開始から、具体的にはキースイッチKSWがオンとされてから、特性検知が終了するまでに掛かる所定の期間(例えば35秒)が経過した時点で、GCU120からの終了の通知を得ることなく、ECU110において、スタータST及び燃料噴射装置IJにエンジン始動指示を行う点で実施形態1と異なり、その他の点は同様である。
従って、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略あるいは簡略化する。
【0083】
上述したように、本変形形態1では、GCU120での処理において、
図10に破線で示すステップGD9が存在しない。従って、実施形態1と異なり、特性検知終了信号SIG2も、GCU特性検知終了フラグEFも存在しない。
このため、本変形形態1でのECU110におけるエンジン始動処理は、
図11に示すように行われる。この処理は、実施形態1と同じく、運転者がキースイッチKSWをオン位置にすると、ECU110において実行される。
実施形態1と同じく(
図3参照)、ステップE1において、キースイッチKSWがスタート位置にされたか否かを判断し、キースイッチKSWがスタート位置とされるのを待つ(No)。
【0084】
キースイッチKSWがスタート位置とされた場合(Yes)には、ステップE2に進み、GCU120がグロープラグGPのいずれかについて、特性検知を行うか否かを判定する。具体的には、GCU特性検知フラグTFがセットされているか否かを判定する。
ここで、フラグTFがセットされている場合(Yes)には、実施形態1のステップE3に代えて、ステップE7に進む。一方、ここでNo、即ち、フラグTFがセットされていない場合には、実施形態1と同じく、ステップE4に進む。GCU120でグロープラグGPの特性検知が行われないので、通常通り、運転者の指示に従ってエンジンの始動処理を行えば良いからである。
【0085】
ステップE7では、実施形態1と異なり、GCU120におけるグロープラグGPの特性検知が終了を待つのではなく、キースイッチKSWがオンとされてから所定時間(例えば35秒)が経過したか否かを判定する。このようにする理由を以下に説明する。
実施形態1で説明したように、グロープラグGPmの特性検知を行う場合、GCU120では、キースイッチKSWがオンとされると、ステップG3で通常動作モードに移行し(
図6参照)、ステップGDの新規接続のグロープラグの特性検知サブルーチンを実行する(
図7,
図10参照)。この特性検知サブルーチンにおけるグロープラグGPmの特性検知や昇温には、通常の急速昇温(2秒程度)より長い時間を掛ける(例えば5〜15秒程度)。しかし、その期間は一定あるいはその長さの上限は或る範囲に収まる。従って、実施形態1におけるステップGD9のように、GCU120からECU110に向けて検知終了信号SIG2を送信しなくとも、GCU120における特性検知終了までの時間を見込んで、その期間の経過をステップE7で判定すれば、このステップGD9の処理と同様の結果を得られるからである。
【0086】
そこで、このステップE7でNo、即ち、所定時間を経過していない場合には、ステップE7を繰り返す。一方、このステップS7でYes、即ち、所定時間を経過した場合には、ステップE4に進む。これにより、本変形形態1でも、GCU120で、特性検知が終了するまで、ECU110でステップE4,E8は実行されないことになる。逆に言えば、GCU120において、グロープラグGPmの特性検知を行う場合には、この特性検知を優先し、この特性検知が終了するまで、ECU110でのステップE4の実行を待つことになる。
【0087】
ステップE4では、実施形態1と同様に処理される。即ち、ステップE4では、エンジン始動を指示する(スタータST,燃料噴射装置IJ等を駆動させる)。
なお、この時点では、実施形態1と同様、各グロープラグGPは、急速昇温されており、あるいは、特性検知に伴う昇温により高温とされており、エンジンEGの始動を補助する。
続いて、ステップE8では、GCU特性検知フラグTFをリセットする。なお、実施形態1のステップE5と異なり、GCU特性検知終了フラグEFをリセットしない。GCU特性検知終了フラグEFが存在しないからである。
【0088】
以上のように、本変形形態1は、実施形態1とほぼ同様であるが、これと異なり、GCU120におけるステップGA6、及び、ECU110におけるステップE2,E7が、優先手段に該当する。また、優先手段のうちステップGA6が、検知時期情報通知手段に該当する。また、優先手段のうち、ステップE2,E7が、スタータST等(始動指示手段)への始動指示の時期を調整する始動時期調整手段に該当する。
【0089】
本変形形態1にかかるグロープラグ・エンジン制御システム101でも、実施形態1と同様、ステップGA6,E2,E7の優先手段を有し、グロープラグGPmの特性の検知を、エンジンEG始動の指示に優先している。つまりグロープラグGPmの特性の検知に対して、エンジンEG始動の指示が重ならないようにしている。このため、グロープラグGPmの昇温時の抵抗値変化の特性の検知を適切に行うことができ、ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段(ステップGB2)によるグロープラグGPmへの昇温のための通電にあたり、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
【0090】
また本変形形態1のシステム101でも、実施形態1と同じく、特性検知要否検知手段に該当するグロープラグ新規接続検知サブルーチン(ステップGA、
図5参照)によって、グロープラグGPmの特性検知が必要となった場合(新たなグロープラグGPmが接続された後の最初に昇温をさせる場合)に、グロープラグGPmの特性検知を指示する。しかも、優先手段により、始動指示手段(ステップE4)による始動指示に優先して、特性検知を指示する。このためグロープラグGPmの特性検知が必要な、適切なタイミングで、その特性検知を行う(ステップGD、
図10参照)ことができる。
【0091】
しかも本変形形態1のシステム101も、ECU110及びGCU120の、2つのサブシステムから構成されているので、分散処理により、全体の処理効率が高くできるほか、大電流スイッチング素子22を、ECU110と分離でき、スイッチング素子22における発熱などの影響が、ECU110に及ぶことを防止できる。また、GCU120で、各グロープラグGP1〜GPnの通電制御が可能であるので、ECU110におけるグロープラグGPの制御に関する負担を軽くできる。
しかも、GCU120には、検知時期情報通知手段(ステップGA6)が、また、ECU110には、始動時期調整手段(ステップE2,E7)が含まれ、検知時期情報の通知(新規接続信号SIG1)に基づいて、始動時期調整手段(ステップGA6)で、エンジンEGの始動時期の調整を行うので、特性の検知を、エンジンの始動に優先させて、適切に行うことができる。
【0092】
しかも、本システム101では、グロープラグ新規接続検知手段(ステップGA1〜GA4)で、グロープラグGPmが新たに接続されたか否かを検知する。そして、グロープラグGPmの新たな接続を検知した場合に、そのグロープラグGPmの特性を検知する。
このため、新たなグロープラグGPmを接続した後の最初に昇温させる場合に、エンジン始動に優先して、適切かつ確実にグロープラグGPmの特性検知を行うことができる。
【0093】
(実施形態2)
次いで、上述した実施形態2にかかるシステム201について、
図12〜
図14を参照して説明する。
前述した実施形態1のシステム1では、グロープラグGPmの新規接続の検知を、GCU20のグロープラグ新規接続サブルーチン(ステップGA)で行っていた。このため、GCU20からECU10に向けて新規接続信号SIG1を送信する一方、ECU20でGCU特性検知フラグTFをセットする(ステップGA6)。そして、運転者がキースイッチKSWをスタート位置としても(始動指示をしても)ECU10において、このGCU特性検知フラグTFがセットされている場合には、特性検知終了を確認(ステップE3)するまで、エンジン始動指示(ステップE4)を待っていた。
【0094】
これに対し、本実施形態2のシステム201は、実施形態1のシステム1と近似した構成を有している。しかし、グロープラグGPの新規接続の検知を、GCU220ではなくECU210で行う。このため、GCU220からECU210に向けて新規接続信号SIG1を送信することはない。逆に、ECU210でグロープラグGPの新規接続を検知した場合には、ECU210からGCU220に向けて、特性検知指示信号SIG3を送信し、GCU220では、新規接続フラグSFをセットする。そして、運転者がキースイッチKSWをオンとすると、GCU220において、新規接続フラグSFがセットされている場合には、グロープラグの特性検知を行う。一方、ECU210においても、自律的に、運転者がキースイッチKSWをスタート位置としても(始動指示をしても)、GCU220が特性検知を終了するまで、エンジン始動指示(ステップE4)を待つ点などで異なる。そこで、以下では、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略あるいは簡略化する。
【0095】
図12に示すグロープラグ・エンジン制御システム201は、実施形態1のシステム1とほぼ同様の構成を有し、同様の動作をする。但し、前述したように、GCU220からECU210に向けて新規接続信号SIG1を送信することはない。一方、ECU210からGCU220に向けて、特性検知指示信号SIG3を送信するようにされている。
なお、
図2に示すGCU20における、スイッチ手段22及び抵抗値検知手段23の具体的構成も実施形態1と同様である。
【0096】
但し、実施形態1のGCU20では、エンジンEGの停止期間中(省電力モード中)に、定期的にスイッチング素子221〜22nをごく短時間だけオンさせて、これにグロープラグGPが接続され続けているかどうかを検知していた(グロープラグ新規接続サブルーチン(ステップGA)、
図5,
図6参照)。
これに対し、本実施形態2のGCU220では、このような検知は行わない。これに代えて、後述するようにして、ECU210で、グロープラグGPの新規接続を検知する。
【0097】
まず、ECU210におけるグロープラグの新規接続検知の処理について、
図13を参照して説明する。エンジンEGの停止中、ECU210は、このグロープラグの新規接続検知処理を繰り返し行っている。
まず、ステップF1において、ECU210でグロープラグGPの新規接続を検知したか否かをチェックする。具体的には、このECU210では、車両に搭載され、ECU210及びGCU220に接続されこれらを駆動しているバッテリBTが、取り外されたこと、及び再び接続されたことを検知する。さらに具体的には、以下のようにして検知する。即ち、バッテリBTが取り外されたことで、ECU210のうち揮発性メモリからなるRAM内の記憶内容がクリアされる。そこで、これを検知することで、バッテリBTの取り外し及び再接続があったことを検知できる。このようにする理由は以下である。グロープラグGPを新たに接続あるいは交換する場合には、感電や短絡事故等を防止するため、それに先だって、車両(ECU210等)とバッテリBTとの接続を一旦切断する場合が多い。従って、ECU210等とバッテリBTとが、一旦切断されその後に接続された場合には、グロープラグGPの新規接続を行ったと考えることにしたのである。そこで、このような場合には、後述するようにして、グロープラグの特性検知を行うこととする。 但し、この場合には、新規接続されたのが、グロープラグGP1〜GPnのいずれであるかを特定できない。そこで、全部のグロープラグGPが新規接続されたと考えて、全部のグロープラグについて特性検知を行う。
【0098】
このステップF1でNo、即ち、バッテリBTとECU210等との接続が切断されることがなく、グロープラグGPが交換されることなく継続して接続されている場合には、このステップF1を繰り返す。
一方、ステップF1でYes、即ち、バッテリBTとECU210等との接続が切断された後に接続され、グロープラグGPの新規接続と判断される場合には、ステップF2に進む。
【0099】
ステップF2では、GCU220に向けて、グロープラグGPの新規接続を通知する。具体的には、ECU210からGCU220へ、特性検知指示信号SIG3を送信する
図12参照)。これにより、GCU220では、グロープラグ新規接続フラグSFをセットする。
さらに、ステップF3に進み、ECU220自身にも、実施形態1と同様のGCU特性検知フラグTFをセットする。
【0100】
一方、エンジンEGの停止中、実施形態1と同じく、GCU220は、省電力モードとされており、
図14に示す省電力モードの処理が繰り返し行われている。この省電力モードでは、まずステップG21において、ECU210から、グロープラグの新規接続の通知が有ったか否か(特性検知指示信号SIG3の送信の有無)を判断する。
ここでNo、即ち、新規接続の通知が無い場合には、ステップG22をスキップして、ステップG1に進む。一方、ステップG21でYes、即ち、新規接続の通知(特性検知指示信号SIG3の送信)があった場合には、ステップG22に進み、GCU220に新規接続フラグSFをセットし、その後、ステップG1に進む。
ステップG1では、省電力モード中に行うべき、その他の制御を行い、ステップG21に戻る。
【0101】
本実施形態2では、運転者がキースイッチKSWをオンとすると、実施形態1と同様、キーON割り込み処理がなされ(
図6参照)、キーONフラグをセットし(ステップG2)、GCU220のモードを省電力モードから通常動作モードへ復帰させる(ステップG3)。
【0102】
通常動作モード(
図7参照)では、実施形態1とほぼ同様の処理がなされる。即ち、ステップG11において、必要な初期設定を行い、ステップG12で、以降のキーON割り込み処理を禁止する。
続いて、ステップG13に代えて、カッコで示すステップG20を実行する。このステップG20では、グロープラグ新規接続フラグSFがセットされているか否かを判断する。前述したように、本実施形態2では、どのグロープラグが新規接続されたかを特定することはできないからである。ここでNoの場合には、グロープラグの急速昇温サブルーチン(ステップGB)に進み、各グロープラグGPに通電して、これらを急速昇温させる。なお、この急速昇温サブルーチン(ステップGB,
図8参照)での処理は実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
次いで、保温通電サブルーチン(ステップGC、
図9参照)に移行する。保温通電サブルーチンでの処理も実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0103】
一方、ステップG20においてYes、つまり、グロープラグGPが、新規接続された場合には、新規接続のグロープラグの特性検知サブルーチン(ステップGD、
図10参照)に進む。グロープラグGPが新規に接続されたため、それらの抵抗値の温度特性がいずれも不明であり、このままでは適切な通電制御を行いにくいからである。そこで、各グロープラグGPに通電してこれを昇温させるのにあたり、前述した急速昇温(ステップGB)に比して緩やかに昇温させる。
なお、本実施形態2の新規接続のグロープラグの特性検知サブルーチンでの処理(ステップGD1〜GD7,GD9,GD10)では、対象となるグロープラグが、全部のグロープラグGP1〜GPnである。そのために、すべてのグロープラグGP1〜GPnについて、抵抗値の検知(ステップGD3)や抵抗値の記憶(ステップGD5)行う点で、実施形態1と異なる。またステップGD8に代えて、カッコで示すステップGD10において、グロープラグ新規接続フラグSFをリセットする点で異なる。しかし、それ以外は実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0104】
この新規接続のグロープラグの特性検知サブルーチン(ステップGD)の実行により、特性検知が終了した場合には、実施形態1と同様、ステップGD9において、ECU210に、グロープラグGP1〜GPnの特性検知が終了した旨を通知する。具体的には、GCU220からECU210に、
図12において破線で示す特性検知終了信号SIG2を送信する。これにより、ECU210では、GCU特性検知終了フラグEFをセットする。
【0105】
一方、エンジン始動に関し、ECU210でも、上述したGCU220における処理に並行して、実施形態1と同様の処理(
図3参照)が行われる。即ち、運転者がキースイッチKSWをオン位置にすると、ECU210において、このエンジン始動処理が行われる。
まず、ステップE1において、キースイッチKSWがスタート位置にされたか否かを判断し、キースイッチKSWがスタート位置とされるのを待つ。
【0106】
一方、キースイッチKSWがスタート位置とされた場合(Yes)には、ステップE2に進み、GCU220で各グロープラグGPについて、特性検知を行うか否か、具体的には、GCU特性検知フラグTFがセットされているか否かを判定する。Yesの場合には、ステップE3に進む。一方、ここでNoの場合には、ステップE3をスキップして、ステップE4に進む。GCU220でグロープラグGPの特性検知を行わないので、運転者の指示に従ってエンジンの始動処理をするのである。
【0107】
ステップE3では、GCU220において、グロープラグGPの特性検知が終了したか否か、具体的には、GCU特性検知終了フラグEFがセットされているか否かを判定する。
ここでNo、即ち、特性検知が終了せず、フラグEFがセットされていない場合には、ステップE4,E5をスキップして、ステップE1に戻る。一方、このステップS3でYes、即ち、特性検知が終了し、フラグEFがセットされている場合には、ステップE4に進む。これにより、GCU220において、グロープラグGPmの特性検知を行う場合には、この特性検知を優先し、この特性検知が終了するまで、ステップE4,E5の実行を待つ。
【0108】
ステップE4では、エンジン始動を指示し、エンジンEGをクランキングさせると共に、吸気のタイミングに合わせて、エンジン室内に燃料を噴射させ、エンジンEGを始動させる。この時点では、各グロープラグGPは、急速昇温され、あるいは、特性検知に伴う昇温により高温とされており、エンジンEGの始動を補助する。
さらに、ステップE5では、GCU特性検知フラグTFをリセットすると共に、GCU特性検知終了フラグEFをリセットする。
【0109】
なお、実施形態1と同様、本実施形態2でも、GCU220における、抵抗値検知手段23(具体的にはスイッチング素子22(電流検出回路23A),電圧検出回路23B,マイクロコンピュータ21(抵抗値算出手段23C)、及び、特性検知サブルーチン(ステップGD)が、特性検知手段に該当する。また、GCU220における、スイッチング素子22、急速昇温中に特性補正した通電条件でグロープラグGPに通電するステップGB2が、グロープラグ調整通電手段に相当する。また、ECU210における、ステップE4が始動指示手段に該当する。
【0110】
但し、実施形態1とは異なり、GCU220におけるステップGD9、及び、ECU210におけるステップE2,E3に加えて、ステップF2,F3が、優先手段に該当する。また、実施形態1と異なり、ECU210におけるステップF1が、特性検知要否検知手段に該当する。また、ECU210におけるステップF2、及び、GCU220におけるステップG21,G22,G20が、特性検知指示手段に該当する。また、ステップF1が、グロープラグ新規接続検知手段に該当する。
さらに、GCU220が、グロープラグ制御サブシステムに、ECU210が、エンジン始動制御サブシステムに該当する。また、グロープラグ・エンジン制御システム201が、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムに該当する。
【0111】
さらに、本実施形態2では、優先手段のうち、特性検知の終期を通知するステップGD9が、検知時期情報通知手段に該当する。加えて、優先手段のうち、ステップE2,E3が、スタータST等(始動指示手段)への始動指示の時期を調整する始動時期調整手段に該当する。
【0112】
さらに、本実施形態2にかかるシステム201でも、ステップGD9,E2,E3、F1〜F3の優先手段を有し、各グロープラグGP(GP1〜GPn)の特性の検知を、エンジンEG始動の指示に優先している。つまりグロープラグGPの特性検知を優先し、この特性検知を行っている間、始動のためのクランキングや燃料供給は行わない。このため、クランキングや燃料噴射などによって、昇温途中のグロープラグGPが冷却され、その特性検知が難しくなったり、検知した特性の精度が低下することがなく、昇温時の抵抗値変化の特性検知を適切に行える。ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段(ステップGB2)により、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
【0113】
また本実施形態2のシステム201では、実施形態1と異なり、ECU210のグロープラグ新規接続検知処理のステップF1(
図13参照)で、グロープラグGPの特性検知が必要となった場合(本実施形態2では、新たなグロープラグGPが接続された後の最初に昇温をさせる場合)に、このグロープラグGPの特性の検知を指示する(ステップF2)。しかも、前述の優先手段によって、始動指示手段(ステップE4)による始動指示に優先して、グロープラグGPの特性検知を指示する。このためグロープラグGPの特性検知が必要な、適切なタイミングで、当該グロープラグGPの特性検知を行う(ステップGD、
図10参照)ことができる。
具体的には、本実施形態2のシステム201では、グロープラグGPの特性検知が必要である、新たなグロープラグGPの接続が検知された場合に、特性の検知を指示する(ステップF2,G13)ので、グロープラグGPの特性検知(ステップGD)を、適切なタイミングで、前述の優先手段によって、始動指示手段(ステップE4)による指示に優先して行うことができる。また、特性検知が必要な場合に、確実にグロープラグGPの特性検知をすることができる。
【0114】
しかも本実施形態2のシステム201も、ECU210及びGCU220の、2つのサブシステムから構成されているので、分散処理が可能で全体の処理効率が高くできる。また、大電流を流すスイッチング素子22の発熱などの影響が、ECU210の分離により、これの各処理に及ぶことを防止できる。また、GCU220に、スイッチング素子22のほか、特性検知手段(抵抗値検知手段23,23A,23B,23C及びステップGD)、グロープラグ調整通電手段(スイッチング素子22,及びステップGB2)を有し、GCU220で、グロープラグGPの通電制御が可能であるので、ECU10でのグロープラグGPの制御負担を軽くできる。
【0115】
しかも、本システム201では、実施形態1と異なり、ECU210には、優先手段のうち、特性検知指示手段(ステップF2)と始動時期調整手段(ステップE2,E3)とを有する。このため、この特性検知指示手段による指示に基づいて、GCU220の特性検知手段(抵抗値検知手段23,23A,23B,23C,及びステップGD)で特性の検知ができる上、ECU210の始動時期調整手段(ステップE2,E3)で、エンジンEGの始動指示の時期を調整するので、エンジン始動に優先させて、特性の検知を適切に行うことができる。
しかも、GCU220には、優先手段のうち検知時期情報通知手段(ステップGD9)が、また、ECU10には、優先手段うちの始動時期調整手段(ステップE2,E3)が含まれている。このように、検知時期情報通知手段(ステップGD9)による検知時期情報の通知(特性検知終了信号SIG2)に基づいて、始動時期調整手段(ステップGD9)で、エンジンEGの始動時期の調整(本実施形態では遅延)を行うので、グロープラグGPの特性検知を、エンジン始動に優先させて、適切に行うことができる。
【0116】
特に、本実施形態2のシステム201では、優先手段として、ECU210に特性検知指示手段(ステップF1〜F3)及び始動時期調整手段(ステップE2,E3)を有するほか、GCU220に検知終了通知手段(ステップGD9)を有している。これにより、この検知終了通知手段(ステップGD9)から「特性の検知を終了した旨の情報」(特性検知終了信号SIG2)が出されるまで、始動時期調整手段(ステップE2,E3)により、「始動指示手段へ始動指示するのを待つ」という形態の調整を行い、エンジン始動に優先させて、グロープラグGPの特性検知を適切かつ確実に行うことができる。
【0117】
(変形形態2)
次いで、上述した実施形態2の変形形態について、
図11を参照して説明する。
前述した実施形態2のシステム201では、実施形態1と同様、グロープラグGPの特性測定が終了したタイミングで、ステップGD9により、GCU220からECU210に向けて、
図12において破線で示す特性検知終了信号SIG2を送信し、GCU特性検知終了フラグEFをセットする。そして、運転者がキースイッチKSWをスタート位置としても(始動指示をしても)、ECU110において、このGCU特性検知終了フラグEFのセットを確認(ステップE3)するまで、エンジン始動指示(ステップE4)を待っていた。
【0118】
これに対し、本変形形態2のシステム301では、前述した変形形態1と同様に、グロープラグGPの特性測定が終了しても、実施形態2の特性検知終了信号SIG2に相当する信号を送信しない。これに代えて、運転者がキースイッチKSWをスタート位置とした場合に、GCU320での特性検知の開始から、具体的にはキースイッチKSWがオンとされてから、特性検知が終了するまでに掛かる所定の期間(例えば35秒)が経過した時点で、GCU320からの終了の通知を得ることなく、ECU310において、スタータST及び燃料噴射装置IJなどにエンジン始動指示を行う点で異なり、その他の点は、実施形態2と同様である。
従って、実施形態2と異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略あるいは簡略化する。
【0119】
上述したように、本変形形態2では、GCU320での処理において、
図10に破線で示すステップGD9が存在しない。従って、実施形態2と異なり、
図12において破線で示したGCU320からECU310に向かう特性検知終了信号SIG2も送信されない。また、ECU310に、GCU特性検知終了フラグEFも存在しない。
このため、本変形形態2でのECU310におけるエンジン始動処理は、変形形態1と同じく、
図11に示すように行われる。この処理は、実施形態2と同じく、運転者がキースイッチKSWをオン位置にすると、ECU310において実行される。
ステップE1では、実施形態2と同じく(
図3参照)、キースイッチKSWがスタート位置にされたか否かを判断し、Noの場合には、このステップE1を繰り返し、キースイッチKSWがスタート位置とされるのを待つ。
【0120】
一方、キースイッチKSWがスタート位置とされた場合(Yes)には、ステップE2に進み、GCU120で特性検知を行うか否か、具体的には、GCU特性検知フラグTFがセットされているか否かを判定する。
ここでYes、即ち、フラグTFがセットされている場合には、ステップE7に進む。一方、No、フラグTFがセットされていない場合には、ステップE4に進む。GCU320でグロープラグGPの特性検知が行われないので、通常通り、運転者の指示に従ってエンジンの始動処理を行えば良いからである。
【0121】
ステップE7では、実施形態2とは異なり、グロープラグGPの特性検知終了を待つのではなく、キースイッチKSWがオンとされてから所定時間(例えば35秒)が経過したか否かを判定する。グロープラグGPの特性検知を行う場合、その期間は一定あるいはその長さの上限は或る範囲に収まる。従って、実施形態1,2におけるステップGD9のように、GCU320からECU310に向けて検知終了信号SIG2を送信しなくとも、GCU320における特性検知終了までの時間を見込んで、その期間を、ステップE7で判定すれば、このステップGD9の処理と同様の結果を得られるからである。
【0122】
そこで、所定時間を経過するまでステップE7を繰り返す。所定時間を経過した場合には、ステップE4に進む。これにより、本変形形態2でも、GCU320において、特性検知が終了するまで、ステップE4,E8は実行されないことになる。かくして、グロープラグGPの特性検知を行う場合には、これを優先し、この特性検知が終了するまで、ステップE4の実行を待つことになる。
【0123】
ステップE4では、実施形態1,2と同様にエンジン始動を指示する(スタータST,燃料噴射装置IJ等を駆動させる)。
なお、この時点では、実施形態1,2と同様、各グロープラグGPは、急速昇温され、あるいは、特性検知に伴う昇温により高温とされており、エンジンEGの始動を補助する。
続いて、ステップE8では、GCU特性検知フラグTFをリセットする。なお、実施形態1のステップE5と異なり、GCU特性検知終了フラグEFをリセットしない。GCU特性検知終了フラグEFが存在しないからである。
【0124】
以上のように、本変形形態2は、実施形態2とほぼ同様であるが、これと異なり、ステップGD9は存在せず、ECU110におけるステップE2,E7,F1〜F3が、優先手段に該当する。また、優先手段のうち、ステップE2,E7が、スタータST等(始動指示手段)への始動指示の時期を調整する始動時期調整手段に該当する。
【0125】
本変形形態2にかかるグロープラグ・エンジン制御システム301でも、実施形態2と同様、ステップE2,E7の優先手段を有し、グロープラグGPの特性の検知を、エンジンEG始動の指示に優先している。このため、グロープラグGPの昇温時の抵抗値変化の特性の検知を適切に行うことができ、ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段(ステップGB2)によるグロープラグGPへの昇温のための通電にあたり、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
【0126】
また本変形形態2のシステム301でも、実施形態2と同様、ECU310のグロープラグ新規接続検知処理(ステップF1〜F3,
図13参照)で、特性検知が必要となった、新たなグロープラグGPが接続された後、最初に昇温をさせる場合に、このグロープラグGPの特性の検知を指示する。しかも、前述の優先手段によって、始動指示手段(ステップE4)による始動指示に優先して、グロープラグGPの特性検知を指示する。このためグロープラグGPの特性検知が必要な、適切なタイミングで、当該グロープラグGPの特性検知を行う(ステップGD、
図10参照)ことができる。
【0127】
また、本変形形態2のシステム301では、GCU320からECU310へ、新規接続信号SIG1も特性検知終了信号SIG2も送信しない(
図12参照)。このため、GCU320において、ECU310への、このような信号の通信のための処理が無く、GCU320の処理をより軽くできる。
【0128】
(実施形態3)
次いで、上述した実施形態3にかかるシステム401について、
図15〜
図20を参照して説明する。
前述した実施形態1,2及び変形形態1,2のシステム1,101,201,301は、いずれも、ECU10とGCU20の2つのサブシステムからなり、これらによって、処理を分散していた。
これに対し、本実施形態3は、システム401は、ECU410単独で構成されている点で異なる。
【0129】
また、実施形態1及び変形形態1では、グロープラグGPmの新規接続の検知を、GCU20のグロープラグ新規接続サブルーチン(ステップGA)で行っていた。このため、GCU20からECU10に向けて新規接続信号SIG1を送信する一方、ECU20でGCU特性検知フラグTFをセットする(ステップGA6)。そして、運転者がキースイッチKSWをスタート位置としても(始動指示をしても)ECU10において、このGCU特性検知フラグTFがセットされている場合には、特性検知終了を確認(ステップE3)するまで、エンジン始動指示(ステップE4)を待っていた。
一方、実施形態2及び変形形態2では、グロープラグGPの新規接続の検知を、ECU210で行っている。そして、ECU210でグロープラグGPの新規接続を検知した場合には、ECU210からGCU220に向けて、特性検知指示信号SIG3を送信し、GCU220では、新規接続フラグSFをセットしていた。
これに対し、本実施形態3では、実施形態2等と同様に、ECU410でグロープラグGPの新規接続の検知をするが、GCUへの通知は行わない点でこれらと異なる。
そこで、以下では、実施形態1等とは異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略あるいは簡略化する。
【0130】
図15に示すグロープラグ・エンジン制御システム401は、前述したように、GCUを有さず、ECU410単独で構成されている。即ち、このECU410は、CPU,ROM,RAM等から構成された公知のマイクロコンピュータ411(
図16参照)を搭載しており、これに記憶されていたプログラムに従って各種制御を行っている。このECU410におけるマイクロコンピュータ411は、実施形態1等において、GCU20等に配置されていたマイクロコンピュータ21(
図2参照)の役割をも果たすものである。
【0131】
さらに、ECU410には、
図16に示すように、実施形態1等のGCU20等に含まれていたのと同様の構成の、スイッチ手段22及び抵抗値検知手段23を備えており、各グロープラグGPへの通電/非通電の切換えと、各グロープラグGPの各時点での抵抗値(或いは抵抗値を算出するための、グロープラグGPの印加電圧及びグロープラグGPを流れる電流の大きさ)を検知することが可能となっている。
但し、前述したようにGCUが存在していないことから、このECU410においては、スイッチ手段22に対する各グロープラグGPへの通電/非通電の切換え指示、抵抗値(印加電圧、電流の値)の検知を、ECU410のマイクロコンピュータ411で行う。さらに、マイクロコンピュータ411には、インターフェイス回路415を介して、エンジン冷却水(図示しない)の水温WTを検知する水温センサWSも接続している。
従って、このマイクロコンピュータ411でも、実施形態1におけるマイクロコンピュータ21と同様にして、グロープラグ電流Ig1(t)〜Ign(t)及び印加電圧Vg1(t)〜Vgn(t)(検知電圧V1(t)〜Vn(t))を検知し、グロープラグGP(GP1〜GPn)の抵抗値Rg1(t)〜Rgn(t)を検出する。
なお、GCUが存在していないことから、GCUからECU410に向けて新規接続信号SIG1等を送信することはない。また、ECU410からGCUに向けて、特性検知指示信号SIG3を送信することもない。
【0132】
また、マイクロコンピュータ411(
図16参照)には、実施形態1等におけるマイクロコンピュータ21(
図2参照)と同様に、バッテリBTに接続した電源回路414により、信号処理のための安定した動作電圧が常時供給される。また、キースイッチKSWをオン位置(ON)あるいはスタート位置(START)にすると、インターフェイス回路416を通じて、マイクロコンピュータ411に、その旨が通知される構成とされている。
加えて、スタータST及び燃料噴射装置IJも、インターフェイス回路415を介して、マイクロコンピュータ411に接続しており、ECU410(マイクロコンピュータ411)によりその動作を制御できる。
なお、実施形態1等の欄では説明しなかったが、実施形態1等におけるECU10等に含まれているマイクロコンピュータも、電源回路414及びインターフェイス回路415,416と同様の電源回路及びインターフェイス回路を有している。
【0133】
以下では、システム401をなすECU410における処理に関し、nヶのグロープラグGPを代表させて、m番目(1<m<n)のグロープラグGPmに対する処理について説明する。
まず、ECU410におけるグロープラグ新規接続検知処理について、
図18を参照して説明する。この処理は、実施形態1において、GCU20で行っていた、グロープラグ新規接続検知サブルーチン(
図5参照)とほぼ同様であり、エンジンEGの休止中に繰り返し行われている。但し、処理を実行するのがECU410である点で異なっている。
【0134】
このグロープラグ新規接続検知処理は、前述したステップGA1と同様、まずステップEA1において、グロープラグ未接続フラグNFmがセットされているか否かを判断する。
なお、グロープラグ未接続フラグNFmは、m番目のスイッチング素子(スイッチ手段)22mに、m番目のグロープラグGPmが接続されていない場合に、ECU410にセットされるフラグである(後述するステップEA3参照)。ECU410は、エンジンEGが停止している期間中に、定期的に、スイッチング素子22mをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPmに通電して、その際に流れるグロープラグ電流Igm(t)の電流値を検出している。そして、電流が流れない場合に、このフラグNFmをセットする。
【0135】
このステップEA1でNoの場合には、ステップEA2に進み、グロープラグGPmがスイッチング素子22mに接続されているか否かを検知する。ここでYes、即ち、グロープラグGPmが接続されていると判断される場合には、元に戻る(ステップEA1に進む)。一方、No、即ちグロープラグGPmが接続されていない場合(ECU420へのグロープラグGPmの接続が未だなされていない場合、及び、交換により、グロープラグGPmが一旦取り外された場合)には、ステップEA3に進み、フラグNFmをセットし、元に戻る(ステップEA1に進む)。
【0136】
一方、ステップEA1でYes、即ち、既にフラグNFmがセットされている場合には、ステップEA4に進み、新たに、グロープラグGPmがスイッチング素子22mに接続されたか否かを検知する。具体的には、ステップEA2と同様、グロープラグ電流Igm(t)が流れるか否かを検知する。ここでNoの場合には、元に戻る(ステップEA1に進む)。一方、ここでYes、即ちグロープラグGPmが新たに接続された場合、つまりECU410へのグロープラグGPmが初めて接続された場合、及び、交換により、グロープラグGPmが新たに取り付けられた場合には、ステップEA5に進み、ECU410においてフラグNFmをリセットし、グロープラグ新規接続フラグSFmをセットする。さらに、破線で示すステップEA6で、特性検知フラグETFをセットし、元に戻る(ステップEA1に進む)。
【0137】
かくして、本実施形態3のシステム401(ECU410)では、エンジンEGの休止中に、ECU410(スイッチング素子22m)に初めてグロープラグGPmを接続した場合、及びグロープラグGPmを交換した場合には、速やかに、グロープラグ新規接続フラグSFmがセットされた状態となる。さらに、特性検知フラグETFもセットされた状態となる。
【0138】
さらに、ECU420(マイクロコンピュータ411)では、運転者が車両を運転すべく、キースイッチKSWがオン位置とされた場合には、
図19に示すグロープラグ通電処理を実行する。
このグロープラグ通電処理は、実施形態1における通常動作モード(
図7参照)とほぼ同様であるが、実施形態1のステップG11,G12,G18,19に対応するステップは存在しない。また、ECU410において処理される。
【0139】
まず、ステップE53において、フラグSFmがセットされているか否かを判断する。ここでNo、つまり、前回のエンジン始動に引き続き、同じグロープラグGPmが接続されている場合には、グロープラグの急速昇温サブルーチン(ステップGB)に進み、グロープラグGPmに通電して、これを急速昇温させる(例えば、2秒程度で1300℃にまで昇温させる)。
【0140】
実施形態1等と同じく、この急速昇温サブルーチン(
図8参照)では、ステップGB1において、急速昇温が終了した(グロープラグGPmの温度が目標温度に達した)か否かを判断する。ここでNo、つまり、急速昇温中である場合には、ステップGB2に進み、後述するようにして、特性補正した通電条件で通電し、グロープラグGPmを急速昇温させて、グロープラグ通電処理(
図19参照)のルーチンに戻る。一方、ステップGB1でYes、つまり、急速昇温が終了した場合には、ステップGB3に進み、急速昇温の通電を終了し、グロープラグ通電処理(
図19参照)のルーチンに戻る。
次いで、保温通電サブルーチン(ステップGC)に移行する。この保温通電サブルーチン(
図9参照)は、実施形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0141】
さらに、その後、グロープラグ通電処理(
図19参照)のステップE54では、キースイッチKSWがキーOFF、つまり運転者からエンジンEGの作動停止が指示されたか否かを判断する。ここでNoの場合には、ステップGBの急速昇温、及びステップGCの保温通電の処理を繰り返し行う。
【0142】
一方、ステップE53においてYes、つまり、グロープラグGPmが、初めて或いは交換により新規接続された場合には、特性検知サブルーチン(ステップGD、
図20参照)に進む。グロープラグGPmが新規に接続されたため、その抵抗値の温度特性が不明であるからである。そこで、グロープラグGPmに通電してこれを昇温させるのにあたり、例えば、15秒程度で1300℃にまで昇温させる、というように、昇温速度を遅くして、前述した急速昇温(ステップGB)に比して緩やかに昇温させる。
【0143】
この特性検知サブルーチン(
図20参照)は、実施形態1等で用いた特性検知サブルーチン(
図10参照)とほぼ同様である。まず、ステップGD1では、特性検知が終了したか否かを判断する。ここでNo、つまり、特性検知中である場合には、ステップGD2に進み、実施形態1と同様、例えば15秒かけて昇温させるパターンの、特性検知のための通電を行う。次いで、ステップGD3で、実施形態1と同様、当該時点におけるグロープラグGPmの抵抗値Rgm(t)を検知する。さらにステップGD4では、水温センサWSで測定したエンジン冷却水の水温WTを、インターフェイス回路415を通じて取り込み、ステップGD11に進む。
【0144】
このステップGD11では、当該時点でのグロープラグGPmの抵抗値Rgm(t)と水温WT(t)とを、実施形態1とは異なり、ECU410のRAMに記憶し、グロープラグ通電処理(
図19参照)のルーチンに戻る。
【0145】
一方、ステップGD1でYesの場合には、ステップGD6に進み、特性検知のための通電を終了する。次いで、ステップGD7で、実施形態1と同様、グロープラグGPmの急速昇温時の各時点での補正係数を決定する。このようにして得た補正係数を用いることで、前述したグロープラグの急速昇温サブルーチンGBのステップGB2では、特性補正した条件で急速昇温通電を行うことができる。
【0146】
次いで、ステップGD12では、実施形態1とは異なり、GCUではなくECU410のグロープラグ新規接続フラグSFmをリセットする。さらに、破線で示すステップGD13では、実施形態1とは異なり、ECU410において、特性検知終了フラグEEFをセットする。但し、ECU410に、グロープラグGPmの特性検知が終了した旨を通知することはない。その後、グロープラグ通電処理(
図19参照)に戻る。
【0147】
次いで、保温通電サブルーチン(ステップGC)に移行し、その後、再び、グロープラグ通電処理(
図19参照)のルーチン(ステップE55)に戻る。この保温通電サブルーチン(
図9参照)は、実施形態1において既に説明したので説明を省略する。
【0148】
さらに、その後、グロープラグ通電処理(
図19参照)のステップE55では、キースイッチKSWがキーOFFされたか否かを判断し、ここでNo、つまり、エンジンEGを引き続き作動させる場合には、ステップGDの特性検知の処理、及びステップGCの保温通電の処理を繰り返し行う。
【0149】
一方、ステップE54及びE55において、Yes即ちキースイッチKSWが運転者によりOFFとされた場合には、ステップE56に進む。
このステップE56では、実施形態1と同様、当該時点で、グロープラグに対して、昇温通電中であるか、または、保温通電中であるか否かを判断する。ここで、昇温通電あるいは保温通電中である場合(Yes)には、ステップE57に進んで、現在行っている昇温通電あるいは保温通電を強制終了させ、その後、実施形態1等における省電力モードに代えて、停止モードに移行する。また、ステップE56でNoの場合には、ステップE57を行わずに停止モードに移行する。
なお停止モードは、車両を停止し、キースイッチKSWがオフ位置にされている場合に、ECU410で実行されるモードであり、ECU410における動作クロック周波数を低くして、ECU410における消費電力を低減した上で、前述したグロープラグの新規接続検知処理(
図18参照)などを実行するモードである。
【0150】
次いで、ECU410におけるエンジン始動処理について、
図17を参照して説明する。運転者がキースイッチKSWをオン位置にすると、ECU410において、上述したグロープラグ通電処理(
図19参照)に並行して、このエンジン始動処理が行われる。この処理は、実施形態1におけるエンジン始動処理(
図3参照)とほぼ同様であるので、同様の部分は、記載を簡略化して説明する。
まず、ステップE1において、実施形態1と同じく、キースイッチKSWがスタート位置にされたか否かを判断する。キースイッチKSWが、まだスタート位置にされていない場合(No)には、元に戻り、このステップE1を繰り返す。
【0151】
一方、キースイッチKSWがスタート位置とされた場合(Yes)には、ステップE42に進み、グロープラグGPの特性検知を行うか否かを判定する。具体的には、実施形態1のステップE2と異なり、特性検知フラグETFがセットされているか否かを判定する。
ここで、フラグETFがセットされている場合(Yes)には、ステップE43に進む。しかし、フラグETFがセットされていない場合(No)には、ステップE4に進む。グロープラグの特性検知を行わないので、通常通り、運転者の指示に従ってエンジンの始動処理を行うためである。
【0152】
ステップE43では、グロープラグGPの特性検知が終了したか否かを判定する。但し、実施形態1のステップE3と異なり、特性検知終了フラグEEFがセットされているか否かを判定する。
ここで、特性検知が終了していない(フラグEEFがセットされていない)場合(No)には、ステップE1に戻る。一方、特性検知が終了している(フラグEEFがセットされている)場合(Yes)には、ステップE4に進む。これにより、特性検知が終了するまで、ステップE4及びE45は実行されないことになる。逆に言えば、ECU410でグロープラグGPmの特性検知を行う場合には、この特性検知を優先し、この特性検知が終了するまで、ステップE4の実行を待つ。
【0153】
ステップE4では、実施形態1と同様、エンジン始動を指示する。なお、この時点では、各グロープラグGPは、急速昇温され、あるいは、特性検知に伴う昇温により高温とされており、エンジンEGの始動を補助する。
さらに、ステップE45では、特性検知フラグETFをリセットすると共に、特性検知終了フラグEEFをリセットする。
【0154】
本実施形態3では、ECU410における、抵抗値検知手段23(具体的にはスイッチング素子22(電流検出回路23A),電圧検出回路23B、マイクロコンピュータ411(抵抗値算出手段23C))、及び、特性検知サブルーチン(ステップGD)が、特性検知手段に該当する。また、ECU410における、スイッチング素子22、急速昇温中に特性補正した通電条件でグロープラグGPに通電するステップGB2が、グロープラグ調整通電手段に相当する。また、ECU410における、ステップE4が始動指示手段に該当する。さらに、ステップEA6,GD13,E42,E43が、優先手段に該当する。
さらに、グロープラグ新規接続検知処理(ステップEA1〜EA4)が、特性検知要否検知手段に該当する。また、ステップEA5,E53が、特性検知指示手段に該当する。また、ステップEA1〜EA4は、グロープラグ新規接続検知手段にも該当する。
さらに、グロープラグ・エンジン制御システム401が、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムに該当する。
【0155】
本実施形態3のシステム401でも、ステップEA6,GD13,E42,E43の優先手段を有し、グロープラグGPmの特性の検知を、エンジンEG始動の指示に優先している。即ち、特性検知を行っている間(キースイッチKSWがオンとされてから特性検知終了フラグEEFがセットされるまでの間)、スタータSTや燃料噴射装置IJなどによる、始動のためのクランキングや燃料供給は行わない。このため、クランキングによる燃焼室内への外気流入や燃料供給によって、昇温途中のグロープラグGPmが冷却され、その特性検知が難しくなったり、検知した特性の精度が低くなったりすることがなく、グロープラグGPmの昇温時の抵抗値変化の特性の検知を適切に行うことができる。ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段(ステップGB2)によるグロープラグGPmへの昇温のための通電にあたり、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
【0156】
またシステム401でも、グロープラグ新規接続検知処理(ステップEA1〜EA4、
図18参照)によって、グロープラグGPmの特性検知が必要となった場合(本実施形態3では、新たなグロープラグGPmが接続された後の最初に昇温させる場合)に、このグロープラグGPmの特性の検知を指示する。しかも、前述の優先手段(ステップEA6,GD13,E42,E43)によって、始動指示手段(ステップE4)による始動指示に優先して、グロープラグGPmの特性検知を指示する。このためグロープラグGPmの特性検知が必要な、適切なタイミングで、当該グロープラグGPmの特性検知を行う(ステップGD、
図19参照)ことができる。
具体的には、本実施形態3のシステム401でも、新たなグロープラグGPmの接続が検知された場合に特性の検知を指示する(ステップEA5,E53)ので、グロープラグGPmの特性検知(ステップGD)を、適切なタイミングで、前述の優先手段(ステップEA6,GD13,E42,E43)によって、始動指示手段(ステップE4)による指示に優先して、確実に行うことができる。
【0157】
しかも、本システム401では、グロープラグ新規接続検知手段(ステップEA1〜EA4)で、スイッチング素子22に、グロープラグGPmが新たに接続されたか否かを検知する。そして、グロープラグGPmの新たな接続を検知した場合に、そのグロープラグGPmの特性を検知する。
このため、グロープラグGPmの特性検知が必要である、新たなグロープラグGPmを接続した後の最初に昇温させる場合に、エンジン始動に優先して、適切かつ確実にグロープラグGPmの特性検知を行うことができる。
【0158】
(変形形態3)
次いで、上述した実施形態3の変形形態について、
図21を参照して説明する。
前述した実施形態3のシステム401では、実施形態1,2と同様、グロープラグGPの特性測定が終了したタイミングを検知し、特性検知終了フラグEEFをセットする。そして、運転者がキースイッチKSWをスタート位置としても(始動指示をしても)、ECU410において、このフラグEEFのセットを確認(ステップE43)するまで、エンジン始動指示(ステップE44)を待っていた。
【0159】
これに対し、本変形形態3のシステム501では、前述した変形形態1,2と同様に、特性測定の終了を検知しない、また、特性検知終了フラグEEFが存在しない。本変形形態3では、これに代えて、運転者がキースイッチKSWをスタート位置とした場合に、キースイッチKSWがオンとされてから、特性検知が終了するまでに掛かる所定の期間(例えば35秒)が経過した時点で、ECU510において、エンジン始動指示を行う点で異なり、その他の点は、実施形態3と同様である。
従って、実施形態3と異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略あるいは簡略化する。
【0160】
上述したように、本変形形態3では、ECU510での処理において、
図20に破線で示すステップGD13が存在しない。従って、実施形態3と異なり、GCU特性検知終了フラグEEFも存在しない。
このため、本変形形態2でのECU510におけるエンジン始動処理は、
図21に示すように行われる。この処理は、変形形態1,2におけるエンジン始動処理とほぼ同様である。この処理も、実施形態3と同じく、運転者がキースイッチKSWをオン位置にすると、ECU510において実行される。
ステップE1では、実施形態3と同じく(
図17参照)、キースイッチKSWがスタート位置にされたか否かを判断し、キースイッチKSWがスタート位置とされるのを待つ。
【0161】
一方、キースイッチKSWがスタート位置とされた場合(Yes)には、ステップE42に進み、グロープラグGPの特性検知を行うか否かを判定する。具体的には、特性検知フラグETFがセットされているか否かを判定する。
ここで、フラグETFがセットされている場合(Yes)には、実施形態3のステップE43に代えて、ステップE58に進む。一方、特性検知フラグETFがセットされていない場合(No)には、実施形態3と同じく、ステップE4に進み、運転者の指示に従ってエンジンの始動処理を行う。
【0162】
ステップE58では、実施形態3と異なり、グロープラグGPの特性検知の終了を待つのではなく、キースイッチKSWがオンとされてから所定時間(例えば35秒)が経過したか否かを判定する。グロープラグGPの特性検知を行う場合、その期間は一定あるいはその長さの上限は或る範囲に収まる。そこで、キースイッチKSWのオンから特性検知終了までの時間を見込んで、その期間を、ステップE58で判定すれば、ステップGD13の処理と同様の結果を得られるからである。
【0163】
そこで、所定時間を経過するまでステップE58を繰り返す。所定時間を経過したら、ステップE4に進む。これにより、本変形形態3でも、特性検知が終了するまで、ステップE4,E59は実行されないことになる。かくして、グロープラグGPの特性検知を行う場合には、これを優先し、この特性検知が終了するまで、ステップE4の実行を待つことになる。
【0164】
ステップE4では、実施形態3と同様にエンジン始動を指示する。
続いて、ステップE59では、特性検知フラグETFをリセットする。但し、実施形態3のステップE45と異なり、特性検知終了フラグEEFをリセットしない。フラグEEFが存在しないからである。
【0165】
以上のように、本変形形態3は、実施形態3とほぼ同様であるが、これと異なり、ステップGD13は存在せず、ステップEA6,E42,E58が、優先手段に該当する。また、優先手段のうち、ステップE42,E58が、スタータST等(始動指示手段)への始動指示の時期を調整する始動時期調整手段に該当する。さらに、グロープラグ・エンジン制御システム501が、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムに該当する。
【0166】
本変形形態3にかかるシステム501でも、実施形態3と同様、ステップE42,E58の優先手段を有し、グロープラグGPの特性の検知を、エンジンEG始動の指示に優先している。このため、グロープラグGPの昇温時の抵抗値変化の特性の検知を適切に行うことができ、ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段(ステップGB2)によるグロープラグGPへの昇温のための通電にあたり、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
【0167】
また本変形形態3のシステム501でも、実施形態3と同様、ECU510のグロープラグ新規接続検知処理(ステップEA1〜EA5,
図18参照)で、特性検知が必要となった、新たなグロープラグGPが接続された後、最初に昇温をさせる場合に、このグロープラグGPの特性の検知を指示する。しかも、前述の優先手段によって、始動指示手段(ステップE4)による始動指示に優先して、グロープラグGPの特性検知を指示する。このためグロープラグGPの特性検知が必要な、適切なタイミングで、当該グロープラグGPの特性検知を行う(ステップGD、
図20参照)ことができる。
【0168】
また、本変形形態3のシステム501では、グロープラグの特性検知の終了を検知しないで、キースイッチKSWをオン位置としてから所定時間経過したか否かの判断(ステップE58)だけで、グロープラグの特性検知をエンジン始動指示(ステップE4)に優先させることができ、ECU510の処理を、より軽くできる。
【0169】
(実施形態4)
次いで、上述した実施形態4にかかるシステム601について、
図22,
図23を参照して説明する。
前述した実施形態1,2のシステム1,201では、ECU10,210からなるサブシステムの他に、GCU20,220からなるサブシステムを有していた。そして、ECUからのグロープラグGPの制御に関する指示を実現するべく、グロープラグの特性を考慮した具体的なデューティ比の値の決定など、制御の詳細をこのGCU20,220で決定し、スイッチ手段23等の制御を行っていた。
一方、実施形態3のシステム401は、GCUを有さず、ECU410で構成されていた。そして、グロープラグGPの制御の詳細も、このECU410で決定し制御を行っていた。
【0170】
これに対し、本実施形態4のシステム601でも、ECU610とGRU620の2つのサブシステムを有している。
但し、実施形態1,2と異なり、ECU610において、グロープラグGPの特性や現在の状況を考慮して、GRU620で、スイッチング素子22をオンオフさせるデューティ比まで決定し、GRU620に通信により指示する。従って、GRU620では、ECU610から指示されたデューティ比で、スイッチング素子をオンオフさせ、グロープラグに電流を流す処理を行う。
【0171】
一方、実施形態1,2と同様、GRU620において、グロープラグGPを流れる電流Ig1(t)〜Ign(t)の大きさを示す電流信号I1(t)〜In(t)、及び、グロープラグGPへの印加電圧Vg1(t)〜Vgn(t)の大きさを示す検知電圧V1(t)〜Vn(t)を検知する。
しかし、実施形態1,2と異なり、GRU620では、これらのデータを処理し、グロープラグGPの特性を得ることはしない。これに代えて、これらのデータ(データ信号SIG4)をECU610に送信し、このECU610において、グロープラグGPの抵抗値Rg1(t)〜Rgn(t)を検出する。またこれにより、各グロープラグGPの特性をECU610で把握し、これを反映させて、GRU620に指示するデューティ比を調整する。
【0172】
このように、実施形態1,2で示したシステム1,101では、ECU10,210に対し、GCU20,220は、比較的独立してグロープラグの制御を行っていた。これに比して、本実施形態4のシステム601は、むしろECU610のみで制御を行った実施形態3に近く、実施形態3におけるECU410の制御の一部を、GRU620が担った形態に近い。
従って、本実施形態4は、ECU620で、実施形態3とほぼ同様の制御を行えば足りる。そこで、実施形態3とは異なる部分を中心に説明し、同様な部分については、説明を省略あるいは簡略化する。
【0173】
図22に示すグロープラグ・エンジン制御システム601は、上述したように、ECU610とGRU620の2つのサブシステムからなる。このうち、ECU610は、実施形態3のECU410(
図16参照)と同様、公知のマイクロコンピュータ611(
図23参照)を搭載しており、これに記憶されていたプログラムに従って各種制御を行い、GCU620とも通信可能に接続されている。またこのECU610は、バッテリBT及びキースイッチKSWに接続されているほか、スタータST,燃料噴射装置IJと通信可能とされており、これらの駆動制御を行う。またさらに、車両に搭載された、図示しない各センサや各機器等との通信、及び、これらの制御をも行っている。
【0174】
一方、GRU620(
図23参照)は、実施形態1(
図2参照)とほぼ同様の構成を有し、公知の構成のマイクロコンピュータ621を搭載し、ECU610とも通信可能に接続されている。
但し、実施形態1と異なり、GRU620(マイクロコンピュータ621)自身で、各時点におけるデューティ比を決定できるのではなく、GRU620は、ECU610から指示信号SIG5で指示されたデューティ比に従って、スイッチング素子22をオンオフさせ、グロープラグGPの通電制御を行う。
【0175】
またこのGRU620にも、
図22,
図23に示すように、実施形態1と同様に、バッテリBTが接続されているほか、複数グロープラグGPがそれぞれリード線LEを介してスイッチング素子22にそれぞれ接続している。このスイッチング素子22のオン/オフのデューティ比を変化させるPWM制御を行うことで、バッテリBTから各グロープラグGP(ヒータ部GPa)に投入される電力をそれぞれ制御する。
また、このGRU620にも、実施形態1と同様、各グロープラグGPの各時点での抵抗値を検知するための抵抗値検知手段623のうち、グロープラグGPを流れる電流Ig1(t)〜Ign(t)の大きさを示す電流信号I1(t)〜In(t)を検知する電流検出回路623A(623A1〜623An)、グロープラグGPの印加電圧Vg1(t)〜Vgn(t)の大きさを示す検知電圧V1(t)〜Vn(t)を検知する電圧検出回路623B(623B1〜623Bn)を備えている。
【0176】
但し、実施形態1等と異なり、GRU620は、これらのデータを処理し、グロープラグGPの特性を得ることはしない。これに代えて、GRU620では、データ送信手段623Dであるマイクロコンピュータ621により、インターフェイス回路625を介して、これらのデータを示すデータ信号SIG4をECU610に送信する。
なお、各グロープラグGPの各時点での抵抗値Rg1(t)〜Rgn(t)は、抵抗値算出手段23CであるECU610において算出する。またこれにより、各グロープラグGPの特性をECU610で検知し、これを反映させて、GRU620に指示するデューティ比を調整する。
また、GRU620においては、実施形態1と異なり、キースイッチKSWに接続していない。また、水温センサWS、及びスタータSTとも接続していない。但し、水温センサWTは、ECU610に接続しており、ECU610において、グロープラグGPの抵抗値特性の検知に当たり、これと併せて水温WT(t)についても、実施形態1と同様に取り込むことができる。
【0177】
本実施形態4のシステム601では、実施形態3とほぼ同様にして、グロープラグの新規接続を検知する。即ち、
図18に示すグロープラグ新規接続検知処理を、エンジンEGの休止中に繰り返し行う。各ステップの動作は、実施形態3と同様であるので、説明を省略する。
但し、本実施形態4において、ECU610は、エンジンEGが停止している期間中に、定期的に、GRU620に指示を出して、スイッチング素子22mをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPmに通電させ、その際に流れるグロープラグ電流Igm(t)の電流値について、GRU620から送信させて検出している。グロープラグ未接続フラグNFmは、スイッチング素子22mに、グロープラグGPmが接続されていない場合(グロープラグ電流Igm(t)が流れない、あるいは所定値よりも小さい場合)に、ECU610にセットされるフラグである(ステップEA2,EA3)。一方、既にフラグNFmがセットされている場合において、グロープラグ電流Igm(t)が流れた場合には、ECU610において、フラグNFmをリセットし、グロープラグ新規接続フラグSFmをセットし、さらに、特性検知フラグETFをセットする(ステップEA4,EA5,EA6)。
【0178】
その他、本実施形態4のシステム601では、実施形態3のシステム401と同様の処理する。但し、実施形態3では、ECU410に接続されたグロープラグGPを、ECU410で直接駆動し、また、直接その特性を検知した。これに対し、本実施形態4では、グロープラグGPが接続されたGRU620を、ECU610で間接的に駆動し、間接的にその特性を検知する点で異なるが、実施形態3と同様の処理で足りる。
【0179】
本実施形態4でも、GRU620及びECU610における、抵抗値検知手段23(具体的にはスイッチング素子22(電流検出回路23A),電圧検出回路23B、マイクロコンピュータ611(抵抗値算出手段23C)、マイクロコンピュータ621(データ送信手段23D))、及び、特性検知サブルーチン(ステップGD)が、特性検知手段に該当する。また、GRU620における、スイッチング素子22、これを駆動するマイクロコンピュータ621、及び、急速昇温中に特性補正した通電条件でグロープラグGPに通電させるステップGB2が、グロープラグ調整通電手段に相当する。また、ECU610における、ステップE4が始動指示手段に該当する。さらに、ステップEA6,GD13,E42,E43が、優先手段に該当する。
さらに、グロープラグ新規接続検知処理(ステップEA1〜EA4)が、特性検知要否検知手段に該当する。また、ステップEA5,E53が、特性検知指示手段に該当する。また、ステップEA1〜EA4は、グロープラグ新規接続検知手段にも該当する。
さらに、グロープラグ・エンジン制御システム601が、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムに該当する。ECU610が、グロープラグ・エンジン始動制御サブシステムに、GRU620が、グロープラグ通電サブシステムに該当する。
【0180】
本実施形態4のシステム601でも、ステップEA6,GD13,E42,E43の優先手段を有し、グロープラグGPmの特性の検知を、エンジンEG始動の指示に優先している。即ち、特性検知を行っている間、スタータSTや燃料噴射装置IJなどによる、始動のためのクランキングや燃料供給は行わない。このため、クランキング等により、その特性検知が難しくなったり、検知した特性の精度が低くなったりすることがなく、グロープラグGPmの昇温時の抵抗値変化の特性の検知を適切に行うことができる。ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段(ステップGB2)によるグロープラグGPmへの昇温のための通電にあたり、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
そのほか、実施形態3と同様の作用効果を奏する。
【0181】
(変形形態4)
次いで、上述した実施形態4の変形形態について説明する。
実施形態4では、ECU610は、エンジンEGが停止している期間中に、特性検知の要否を決めるグロープラグGPの新規接続の検知として、定期的に、GRU620に指示を出して、スイッチング素子22mをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPmに通電させ、その際に流れるグロープラグ電流Igm(t)の電流値を、GRU620からECU610に送信させて検出している。具体的には、グロープラグ電流Igm(t)が流れないあるいは所定値よりも小さい場合に、ECU610で、GRU620にグロープラグGPmが接続されていないと判断する。即ち、実施形態4のシステム601では、ECU610において、実施形態3と同様の、グロープラグ新規接続検知処理(
図18参照)を行った。
【0182】
これに対し、本変形形態4でも、GRU720において、エンジンEGが停止している期間中に、特性検知の要否を決めるグロープラグGPの新規接続の検知として、定期的に、GRU720に指示を出して、スイッチング素子22mをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPmに通電させる点では同様である。
但し、本変形形態4では、グロープラグ電流Igm(t)が十分が流れない場合(具体的には、流れないか、電流値が小さい場合)には、GRU720でこれを検知し、自身にグロープラグGPmが接続されていないと判断し、その旨をECU710に通知する。
即ち、本変形形態4のシステム701では、GRU720において、実施形態1,2のグロープラグ新規接続検知処理(
図5参照)とほぼ同様のグロープラグ新規接続検知処理(
図24参照)を行う。
【0183】
このグロープラグ新規接続検知処理について、
図24を参照して説明する。この処理は、実施形態1,2におけるグロープラグ新規接続検知処理(
図5参照)とほぼ同様であるので、同様の部分は、記載を簡略化して説明する。
まずステップGA1において、グロープラグ未接続フラグNFmがセットされているか否かを判断する。ここで、フラグNFmがセットされていない場合(No)には、ステップGA2に進み、グロープラグGPmがGRU720に接続されているか否かを検知する。具体的には、上述したように、スイッチング素子22mをごく短時間だけオンさせてグロープラグGPmに通電し、グロープラグ電流Igm(t)が流れるか否かを検知する。ここで、グロープラグGPmが接続されている場合(Yes)には、ステップGA1に戻る。一方、ここで、グロープラグGPmが接続されていない場合(No)には、ステップGA3に進み、フラグNFmをセットし、ステップGA1に戻る。
【0184】
一方、ステップGA1でYes、即ち、既にフラグNFmがセットされている場合には、ステップGA4に進み、新たに、グロープラグGPmがGRU720に接続されたか否かを検知する。具体的には、ステップGA2と同様、ごく短時間だけグロープラグGPmに通電し、グロープラグ電流Igm(t)が流れるか否かを検知する。ここで、未だグロープラグGPmが接続されていない場合(No)には、ステップGA1に戻る。一方、ここでYes、即ちグロープラグGPmが新たに接続された場合には、実施形態1等におけるステップGA5に代えて、ステップGA7を実行する。このステップGA7では、このGRU720において、フラグNFmをリセットする。但し、実施形態1と異なり、グロープラグ新規接続フラグSFmをセットは行わない。
【0185】
さらに、実施形態1等におけるステップGA6に代えて、ステップGA8を実行する。このステップGA8では、ECU10に、グロープラグGPmが新規に接続された旨を通知する。具体的には、GRU720のマイクロコンピュータ721から、インターフェイス回路725を通じて、ECU710に上記内容の信号(新規接続信号SIG6)を送信する(
図22,
図23参照)。なお、これにより、ECU710では、特性検知フラグETFをセットする。さらに、ECU710では、グロープラグ新規接続フラグSFmもセットする。その後、ステップGA1に戻る。
【0186】
従って、本変形形態4のシステム701では、エンジンEGの休止中に、GRU720に初めてグロープラグGPmを接続した場合、及びグロープラグGPmを交換した場合には、速やかに、ECU710において、特性検知フラグETFがセットされた状態となると共に、グロープラグ新規接続フラグSFmもセットされた状態となる。
なお、ECU710における他の制御は、実施形態4と同様であるので、説明を省略する。
【0187】
本変形形態4でも、実施形態4と同様、GRU720及びECU710における、抵抗値検知手段23(具体的にはスイッチング素子22(電流検出回路23A),電圧検出回路23B、マイクロコンピュータ611(抵抗値算出手段23C)、マイクロコンピュータ621(データ送信手段23D))、及び、特性検知サブルーチン(ステップGD)が、特性検知手段に該当する。また、GRU720における、スイッチング素子22、これを駆動するマイクロコンピュータ721、及び、急速昇温中に特性補正した通電条件でグロープラグGPに通電させるステップGB2が、グロープラグ調整通電手段に相当する。また、ECU710における、ステップE4が始動指示手段に該当する。
但し、実施形態4と異なり、グロープラグ新規接続検知処理(GA1〜GA4、GA7,GA8)をGRU720で実行することから、ステップGA8,GD13,E42,E43が、優先手段に該当する。また、ステップGA8が、接続情報通知手段に該当する。
さらに、GRU720でのグロープラグ新規接続検知処理(ステップGA1〜GA4)が、特性検知要否検知手段に該当する。また、ステップGA8,E53が、特性検知指示手段に該当する。また、ステップGA1〜GA4は、グロープラグ新規接続検知手段にも該当する。
さらに、グロープラグ・エンジン制御システム701が、グロープラグ・エンジン始動装置制御システムに該当する。ECU710が、グロープラグ・エンジン始動制御サブシステムに、GRU720が、グロープラグ通電サブシステムに該当する。
【0188】
本変形形態4のシステム701でも、ステップGA8,GD13,E42,E43の優先手段を有し、グロープラグGPmの特性の検知を、エンジンEG始動の指示に優先している。即ち、特性検知を行っている間、スタータSTや燃料噴射装置IJなどによる、始動のためのクランキングや燃料供給は行わない。このため、クランキング等により、その特性検知が難しくなったり、検知した特性の精度が低くなったりすることがなく、グロープラグGPmの昇温時の抵抗値変化の特性の検知を適切に行うことができる。ひいては、次回以降のグロープラグ調整通電手段(ステップGB2)によるグロープラグGPmへの昇温のための通電にあたり、検知した特性を利用して適切な調整を行うことができる。
そのほか、実施形態3,4と同様の作用効果を奏する。
【0189】
以上において、本発明を実施形態1〜4及び変形形態1〜4に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、各実施形態等では、スイッチ手段及び電流検出回路として、電流検知機能付きのFETを用いた。しかし、スイッチ手段(スイッチング素子)として、電流検知機能を有さない通常のFETを用いる一方、グロープラグ電流が流れる経路、例えば、スイッチング素子とグロープラグGPとの間に、シャント抵抗を介在させ、このシャント抵抗に生じる電圧(電位差)によって、グロープラグ電流を検知するようにするなど、他の手法によって、グロープラグ電流を検知しても良い。
【0190】
また、実施形態3及び変形形態3では、ECUのみでシステムを構成する一方、実施形態1と同様、グロープラグに電流を流す手法によって、スイッチング素子とグロープラグとの接続を直接的に検出した。しかし、バッテリとシステムとの接続が切断された場合、即ち、バッテリが取り外され再度接続された場合に、グロープラグの交換(新規接続)が行われたと考えて、実施形態2及び変形形態2と同様に処理することもできる。また実施形態4及び変形形態4でも同様である。
【0191】
さらに、各実施形態及び変形形態では、キースイッチKSWを用いて、グロープラグの通電やエンジンの始動を行うシステムについて例示したが、押しボタン形式のスイッチを用い、押しボタンスイッチの押下げから所定時間(例えば3秒)後にエンジンを始動するようにしたシステムにおいても、本発明により、エンジン始動に優先して、グロープラグの特性検知を行うようにすることもできる。