特許第5661318号(P5661318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661318
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】車両退出阻止装置
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/42 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   E04H6/42 G
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-83219(P2010-83219)
(22)【出願日】2010年3月31日
(65)【公開番号】特開2011-214304(P2011-214304A)
(43)【公開日】2011年10月27日
【審査請求日】2013年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】古本 征久
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−205019(JP,A)
【文献】 特開2008−054403(JP,A)
【文献】 特開2002−134929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/42
H05K 5/00 − 5/06
H02B 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面及び側面の防水構造を有し車両退出阻止用のロック部の駆動機構部を収納してベース上に載置固定されるケースと、
前記ケースの上面及び側面との間に空間を設けて該ケースを覆いベース上に載置固定されるカバーとを備え、
前記ケースの前記上面より下方の空間内への水の侵入によって前記カバー内にエアだまりが形成されること、前記ケースの上面からケース内に水が浸入しないことを特徴とする車両退出阻止装置。
【請求項2】
前記カバーの側面に前記ロック部の回動軸が挿通可能な挿通部を設け、該挿通部の上端は、前記ケースの上端より低い位置に設けることを特徴とする請求項1に記載の車両退出阻止装置。
【請求項3】
前記駆動機構部への配線は、前記カバーの下部から前記空間を経由して前記ケースの上面より行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両退出阻止装置。
【請求項4】
前記ケースの上面に対向する前記カバー内面を、一方向に傾斜させて形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の車両退出阻止装置。
【請求項5】
前記ケースは、その側面に、前記ロック部の回動軸と連結する前記駆動機構部の出力軸を回動自在に支持する軸受け部を備え、該軸受け部と前記出力軸との間をシール手段でシールすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の車両退出阻止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が進入するとロック部を駆動して駐車車両の退出を阻止する車両退出阻止装置に関し、特に、ロック部を駆動する駆動機構部への水の浸入を容易に防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駐車場には、複数に区分けされた各駐車区画に、起立して車両の退出を阻止する鎖錠位置と倒伏して車両の退出を可能にする解錠位置に回動可能なロック部を、車両検知部の検知信号の発生により上記鎖錠位置に駆動制御し、精算終了信号の発生により上記解錠位置に駆動制御する駆動機構部を収納ボックス内に収納する車両退出阻止装置がある。
【0003】
従来、この種の車両退出阻止装置は、通常駐車場の地面上に載置固定されるため、地面上に溜まった雨水等が駆動機構部内に浸入しないように、駆動機構部を収納する収納ボックスを防水構造にする必要がある。防水構造の収納ボックスを有する車両退出阻止装置としては、例えば、特許文献1等に記載されたものがある。特許文献1に記載された車両退出阻止装置は、上面を開口して形成し駆動機構部を収納するケースと、このケースの開口部を覆うカバーとからなる収納ボックスを備え、ケースの上端縁部に設けたゴムパッキンをカバーの裏面に密接させた状態でカバーをケースの下端縁部に固定することで、ケース内部への水の浸入を防止している。また、ゴムパッキンの代わりにシリコン等のシール剤を用いてケースとカバーとの間に生じる隙間を埋めることでケース内部への水の浸入を防止することも一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−205019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1等に記載されるような従来の車両退出阻止装置は、ケースとカバーとの間にゴムパッキンやシール剤等のシール部材を設けることで、収納ボックスを防水構造にする構成である。したがって、ケースとカバーの形状及びサイズに応じたゴムパッキン等のシール部材を製作する必要があると共に、そのシール部材の取付け作業や塗布作業、及びシール部材が正確に取付け等行われたかを検査する作業等の煩雑な作業が必要であった。
【0006】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、ケースとカバーとの間をシール部材でシールすることなく、ケース内への水の浸入を容易に防ぐことが可能な車両退出阻止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明による車両退出阻止装置は、底面及び側面の防水構造を有し、車両退出阻止用のロック部の駆動機構部を収納してベース上に載置固定されるケースと、前記ケースの上面及び側面との間に空間を設けて該ケースを覆い前記ベース上に載置固定されるカバーとを備え、前記ケースの前記上面より下方の空間内への水の浸入によって前記カバー内にエアだまりが形成さること、前記ケースの上面から該ケース内に水が浸入しないことを特徴とする。
【0008】
このような構成により、防水構造のケースをこのケースの上面及び側面との間に空間を設けてカバーで覆い、ケースの上面からケース内への水の浸入を、カバー内に形成されるエアだまりによって防止する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両退出阻止装置によれば、底面及び側面の防水構造を有し、ベース上に載置固定されるケースによって、車両退出阻止用のロック部の駆動機構部を収納し、ケース上面及び側面との間に空間を設けてベース上に載置固定されるカバーによって、ケースを覆い、ケースの上面からケース内への水の浸入を、収納ボックス内に形成されるエアだまりによって防止する。これによって、ケースの上面及び側面とカバーとの間を密閉するシール部材を設けることなく、駆動機構部への水の浸入を防止することができる。したがって、従来必要であったケースの上面とカバーとの間のシール部材の取付け作業や塗布作業、及びそのシール部材が正確に取付け等行われたかを検査する作業等の煩雑な作業をする必要がないため、組立作業時間を短縮することができる。このようにして、駆動機構部への水の浸入を容易に防止することが可能な車両退出阻止装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る車両退出阻止装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2】上記車両退出阻止装置の駆動部とその周辺の斜視図である。
図3】上記車両退出阻止装置のカバーをはずした状態の駆動部とその周辺の斜視図である。
図4図2のA―A線矢視断面図である。
図5図2のB―B線矢視断面図である。
図6】上記車両退出阻止装置が冠水した状態を、図5と同じ断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両退出阻止装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、上記車両退出阻止装置の実施形態の全体斜視図を示し、図2は、上記車両退出阻止装置の部分拡大図を示す。
図1、2において、本実施形態の車両退出阻止装置は、図1に矢印で示す方向から進入した駐車車両の不正退出を阻止するものであり、車両検知センサを内蔵した車両検知部1と、駐車車両の退出を阻止するロック部2と、ロック部2を駆動する駆動部3と、ベース4とを備え、前記駆動部3を各駐車区画の側端の略中央部に設置し、ロック部2を駆動部3側から駐車区画の中央部に向けて延設して配置する。なお、図1,2は、ロック部2が起立して駐車車両の退出を阻止する鎖錠位置に回動された状態を示している。
【0012】
上記車両検知部1は、進入する駐車車両を検知する従来と同様のものであり、後述するベース4端部に配置し、図示しないが、後述する回動軸5を軸支する軸支部と駐車区画における車両の有無を検知する車両検知センサとをベース4上に固定して樹脂製のカバーで覆っている。そして、車両検知部1は、車両を検知すると後述する駆動機構部8へ検知信号を出力する。
【0013】
上記ロック部2は、駐車車両の前後タイヤ間に起立して駐車車両の退出を阻止するものであり、図2に示すようにベース4に固定した支持板に回動可能に軸支した回動軸5と、回動軸5と一体に設けられ、図1の矢印aに示す方向に起立して駐車車両の退出を阻止する鎖錠位置と、矢印bに示す方向に倒伏して駐車車両の退出を可能とする解錠位置とに回動軸5と一体に回動されるロック板6と、ロック板6と対応する位置で車両が通過し易いように回動軸5とは反対方向に下方に傾斜してベース4に固定した金属製のカバー7とを備える。ロック板6は、回動軸5に金属製パイプ6aを枠状に溶接し、回動軸5と金属製パイプ部6aで形成される枠内にできる空間を埋めるように金属製の板部材6bを溶接して形成されている。
【0014】
上記駆動部3は、ロック部2を鎖錠及び解錠位置に駆動するものであり、図1に示すように、ロック部2を挟んで車両検知部1と反対側のベース4端部に固定されている。この駆動部3は、ロック部2を鎖錠位置と解錠位置とに選択的に駆動可能な駆動機構部8(詳細は後述する図3参照)と、この駆動機構部8を収納する収納ボックス9とを備えて構成される。
【0015】
上記駆動機構部8は、後述するカバー17をはずした状態を表す図3に示すように、例えばモータ等の動力源10と、動力源10からの動力をロック部2に伝達する動力伝達機構11と、車両検知部1からの車両検知信号等によりモータ等を制御してロック部2の回動を制御する制御部12とを備えて構成される。
【0016】
上記動力伝達機構11は、ロック部2の回動軸5と連結して動力をロック部2へ伝達する出力軸13を備えている。出力軸13と回動軸5の連結は、回動軸5の一端部に設けられた嵌合孔に出力軸13の一端部を挿入した状態で、回動軸5と出力軸13端部にピン14を貫通させて連結している。15は、出力軸13側にネジ止めされピン14が抜け落ちるのを防止する抜け止め部材である。なお、回動軸5と出力軸13の連結部は、図1に示すように、後述するカバー17で覆って収納ボックス9内に隠れるようにしてある。
【0017】
上記収納ボックス9は、駆動機構部8を収納するケース16とこのケース16を覆うカバー17とを備えて構成されている。
【0018】
上記ケース16は、図3に示すように、ベース4上に載置固定され、例えば、金属製の板材を用いて溶接やプレス加工等により、上面を開口した形状に形成したものであり、上面以外の面からの水の浸入を防ぐように構成する。具体的には、ケース16は、図3に示すように、その両側面に、出力軸13を回動自在に支持する軸受け部18,18(図3において、図中左側の軸受け部18はケース側壁によって隠れている)を、例えば溶接等により側面からの水の浸入がないよう固定して備える。また、ケース16は、図示省略するが、ベース4上にあけられたケース固定用タップ孔に対応した位置に貫通孔が設けられており、この貫通孔に図示省略のケース固定用ボルトを挿入して締め付けることで、ケース16はベース4上に載置固定される。ここで、ケース16の底面とケース固定用ボルトの頭部との間に、例えば、ゴムワッシャ等を挟んで締付け固定することにより、ケース16底面からの水の浸入がないようにしている。さらに、上記軸受け部18と出力軸13との間を、例えば、Oリング等のシール手段(図示省略)でシールすることで、上面以外の面からの水の浸入を防ぐように構成する。
【0019】
上記カバー17は、図4,5に示すように、ケース16との間に空間19を設けてケース16を覆うことが可能な形状に形成されており、例えば、鋳物等によって一体形成されている。また、カバー17は、ベース4上にあけられたタップ孔25に対応した位置に貫通孔20(図2参照)が設けられている。そして、貫通孔20に図示省略のネジを挿通して締付けることで、カバー17はベース4上に載置固定される。ここで、上記空間19のうちケース16の上面(具体的には、後述するケース16の側壁の上端24面を示す)より下方の空間内への水の浸入により、収納ボックス9内にエアだまり21が形成されることによって、ケース16内への水の浸入を防止可能に構成する。具体的には、カバー17の側面にロック部2の回動軸5が挿通可能な挿通部22を例えば、図4,5に示すように逆U字状に設け、またこの挿通部22の上端23は、ケース16の上端24より低い位置になるように形成する。
【0020】
上記ベース4は、図1図3等に示すように、車両検知部1や駆動部3等を載置固定するものであり、板状に形成され地面に固定されている。また、ベース4には、カバー17を載置固定するためのタップ孔25が設けられている。
【0021】
次に、本実施形態に係る車両退出阻止装置のケース16内への水の浸入を防止する構成について、図1,5,6に基づいて説明する。以下の説明は、車両退出阻止装置の周囲に雨水等の水が溜まり始め、カバー17の周囲の水位が徐々に高くなり(図5参照)、そして、カバー17の周囲の水位がカバー17の上面より高くなり車両退出阻止装置が冠水(図6参照)する場合を一例にして説明する。
【0022】
まず、図1に示す車両退出阻止装置の周囲に雨水等の水が溜まり始めると同時に、その水は、ベース4を乗り越え、カバー17とベース4との間や挿通部22から空間19に浸入し始める。そして、カバー17の周囲の雨水等の水位に応じて、空間19に浸入した水の水面が徐々に上昇する。この状態においては、カバー17内の圧力は大気圧である。また、ケース16の上面以外の面からの水の浸入は、ケース16自体の防水構造によって、防止されている。そして、図5に示すように、空間19に浸入した水の水面が挿通部22の上端23を越えると同時に、収納ボックス9内に、ケース16の内部の領域と空間19のうち水面より上方の領域とで構成されるエアだまり21が形成される。そして、図6に示すように、カバー17の周囲の水位がさらに上昇すると、エアだまり21には、水位の上昇に応じた圧力が作用し、エアだまり21は圧縮されてカバー17内の水の水面が上昇すると共にエアだまり21内の圧力が上昇し始める。そして、エアだまり21内の圧力と、カバー17の周囲の水の水面とカバー17内の水の水面との高低差に応じた圧力とが釣合うところで、カバー17内の水の水位は維持される。このようにして、ケース16の上方を覆うようにエアだまり21を形成し、例えば図6に示すように、車両退出阻止装置が冠水する状況においても、ケース16の上面からケース16内に水が浸入しないようにする。
【0023】
このような構成により、本実施形態に係る車両退出阻止装置は、上面を開口すると共に上面以外の面からの水の浸入を防ぐように構成されベース4上に載置固定されるケース16によって、駆動機構部8を収納し、ケース16との間に空間19を設けてベース4上に載置固定されるカバー17によって、ケース16を覆い、ケース16内への水の浸入を、収納ボックス9内に形成されるエアだまり21によって防止することができる。このように、ケース16とカバー17との間を密閉するシール部材を設けることなく、駆動機構部8への水の浸入を防止することができる。したがって、従来必要であったケースとカバーとの間のシール部材の取付け作業や塗布作業、及びそのシール部材が正確に取付け等行われたかを検査する作業等の煩雑な作業をする必要がないため、作業時間を短縮することができる。このようにして、駆動機構部8への水の浸入を容易に防止することが可能な車両退出阻止装置を提供することができる。
【0024】
また、上記実施形態において、駆動機構部8への例えば電源ケーブルや通信ケーブル等のケーブの配線は、図示省略するが、例えば収納ボックス9の下部でケース16の外側から、空間19を経由してケース16の上面より敷設するとよい。このように、ケース16とカバー17との間に設けられた空間19を利用してケーブルの敷設作業を容易に行うことができる。また、従来、ケース16内へのケーブルの通線は、例えば、ケース16に通線用の孔をあけることによって行われ、その通線用の孔を塞ぐために、グロメット等のゴム製のシール部材が必要であったが、本実施形態に係る発明の場合、図5に示すように、ケース16の上面24は、エアだまり21で覆われているため、グロメット等のシール部材等を利用しないでも、ケース16内へケーブルを敷設することができる。
【0025】
また、本実施形態においては、カバー17の裏面は、図5等に示すように、地面に対して水平になるように形成したもので説明したが、図示省略するが、ケース16の上面に対向するカバー17内面を、一方向に傾斜させて形成するとよい。この場合、水が浸入した後などにカバー17の裏面に結露した水滴を一方向へ流すことができ、ケース16内への水の浸入の防止をさらに確実に行うことができる。
【0026】
また、本実施形態において、ケース16の上端24は、電源ケーブルや通信ケーブル等の配線スペースを考慮しつつ、可能な限りカバー17側に高く形成するとよい。カバー17内の高さが同じ場合は、ケース16の上端24が高いほど、カバー17内の水面の上昇をより許容することができるため、装置がより深くに冠水した場合でも、ケース16内への水の浸入を防止することができる。
【0027】
さらに、本実施形態において、ロック部2は、進入した駐車車両の前後タイヤ間に起立して駐車車両の不正退出を阻止するものとして説明したが、これに限らず、駐車車両の進入口側で起立して駐車車両の不正退出を阻止するものであってもよい。
【符号の説明】
【0028】
4 ベース
5 回動軸
6 ロック部
8 駆動機構部
9 収納ボックス
13 出力軸
16 ケース
17 カバー
18 軸受け部
19 空間
21 エアだまり
22 挿通部
23 挿通部の上端
24 ケースの上端
図1
図2
図3
図4
図5
図6