【実施例】
【0054】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0055】
[選択比の測定方法]
本実施例におけるエッチングレートの測定は、熱反応型レジスト層、転写層、エッチング層上にそれぞれ部分的にドライエッチングのマスクを形成し、エッチング時間を10〜20分、処理圧力を1〜5Pa、電力を100W〜500W、ガス流量を10sccm〜100sccmの範囲の中で同条件として、ドライエッチングを行った後に、該マスクを除去し、マスク部と非マスク部で形成される段差を段差計(KLA−Tencor社製のAlpha−StepIQ)により測定することにより行った。転写層に対する熱反応型レジスト層のエッチング選択比は、熱反応型レジスト層のエッチングレート/転写層のエッチングレートで表わされる数値とし、エッチング層に対する転写層のエッチング選択比はエッチング層のエッチングレート/転写層のエッチングレートで表される数値とした。選択比の測定におけるドライエッチングのマスクとしては、フォトレジスト、カプトンテープによるマスクを用いることが可能である。
【0056】
[選択比とアスペクト比の関係]
選択比とアスペクト比には次の様な関係がある。アスペクト比は、微細パターンの開口幅をA、微細パターン深さをBとした場合、B/Aで定義される。例えば、熱反応型レジスト層とエッチング層の様な層構造の場合、熱反応型レジスト層の微細パターンの開口幅を100nm程度とした場合、熱反応型レジスト層とエッチング層の選択比が10、熱反応型レジスト層の膜厚を40nmとすると、ドライエッチング可能なエッチング層の深さは400nmとなる。この場合のアスペクト比は4となる。仮に選択比が50の場合、アスペクト比は20となる。このように、熱反応型レジスト層とエッチング層の選択比が高ければ高い程、高アスペクト比の微細パターンが形成可能となる。
【0057】
[製造例1]
上記
図1において、熱反応型レジスト層104の材料としてGeSbターゲット、転写層103の材料としてCuOターゲットを選択した。またエッチング層102としてSiO
2ターゲットを選択した。なお、ここで選択したCuOは他元素を10から20%at含む組成でも構わない。
【0058】
まず50mmφのガラス平面基板101上にスパッタリング法によりSiO
2ターゲットを用いて、300nmのエッチング層102を成膜した。続いて、CuO、SiO
2、GeSbターゲットを用いて、転写層103を40nm、バリア層を20nm、熱反応型レジスト層104を40nm成膜した(
図1(a)参照)。
【0059】
以上のように成膜した熱反応型レジスト層104を以下の条件で露光した。
【0060】
露光用半導体レーザー波長:405nm
レンズ開口数:0.85
露光レーザーパワー:1mW〜10mW
送りピッチ:150nm〜350nm
【0061】
熱反応型レジスト層104にレーザー光を照射中にレーザー光の強度を変調させることで、様々な形状やパターンを作製できるが、実験では熱反応の精度を確かめるために、パターンとして連続の溝形状を使用した。熱反応型レジスト層104のパターニング形状としては、目的とする用途によっては孤立した円形、楕円形状等でも構わず、何ら制限を受けるものではない。
【0062】
続いて、上記露光機によって所定の領域に熱反応が施された熱反応型レジストの現像を行った(
図1(b)参照)。現像にはウェット工程による現像を適用した。現像液には酸やアルカリまたそれらに電位調整剤、界面活性剤を加えたもの等を用いることができる。
【0063】
次に、熱反応型レジスト層104のレジストパターン106をマスクとしてドライエッチングを行うことで、
図1(c)に示すように転写層103へ転写パターン107を形成した。ドライエッチングはエッチングガスとしてCHF
3を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間10分の条件によりドライエッチングを行った。
【0064】
最後にエッチング層102をドライエッチングし、エッチングパターン108を形成した。エッチングガスはSF
6、もしくはCF
4を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間10分の条件によりエッチングを行った。ドライエッチング後の形状は
図1(d)のような形状が得られる。この場合、転写層103、エッチング層102の選択比は、熱反応型レジスト層104とエッチング層102の選択比に比べて大きいので、高アスペクト比の微細パターンが容易に得られる。
【0065】
図2に、熱反応型レジスト層104、転写層103、エッチング層102のエッチングレートと、転写層103に対する熱反応型レジスト層104のエッチンの選択比と、エッチング層102に対する転写層103のエッチングの選択比について示す。なお、
図2では、GeSbを熱反応型レジスト層104とした場合に対して、転写層103としてCuOに加えてBiSn、CuVを用いた場合について示す(
図2(a)〜(c)参照)。
【0066】
エッチング寸法、形状誤差を低減するために、それぞれの選択比は高いことが好ましい。熱反応型レジスト層104、転写層103の組み合わせはGeSb/CuO、GeSb/BiSn、GeSb/CuVであるが、転写層103とエッチング層102の選択比が高いGeSb/BiSnがより好ましい。BiSnはエッチングガスにSF
6、もしくはCF
4を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間10分の条件によりドライエッチングを行った場合、転写層103はエッチングされずにフロロカーボン膜が堆積するため、選択比は非常に大きくなり、高アスペクト比の微細パターンが容易に得られる。ここではエッチングレートを0.1として選択比を計算している。
【0067】
また、転写層103への転写パターン107が形成しやすい例として、GeSb/CuOの組み合わせがあげられる。エッチングガスがCHF
3、処理ガス圧が5Pa、処理電力が300W、処理時間10分の条件の場合、熱反応型レジスト層104と転写層103の選択比は4.2で転写パターン107は形成しやすく、エッチングパターン108を形成するエッチング層パターニング工程で、エッチングガスがSF
6、処理ガス圧が5Pa、処理電力が300W、処理時間10分の条件でドライエッチングを行った場合、転写層103、エッチング層102の選択比が49程度になる。転写層103が40nmの膜厚であればSiO
2は3.5μm以上エッチング可能であり、エッチングパターン7の開口幅が100nmとした場合、アスペクト比は35となる。この製造例に表記した材料はターゲットの組成である。
【0068】
[製造例2]
上記
図1において、熱反応型レジスト層104の材料としてPbOターゲット、転写層103の材料としてCuOターゲットを選択した。またエッチング層102としてSiO
2ターゲットを選択した。なお、ここで選択したCuOは他元素を10%atから20%at含む組成でも構わない。
【0069】
まず50mmφのガラス平面基板101上にスパッタリング法によりSiO
2ターゲットを用いて、300nmのエッチング層102を成膜した。続いてCuO、PbOターゲットを用いて、転写層103を40nm、熱反応型レジスト層104を20nm成膜した(
図1(a))。露光、現像の工程は実施例1と同様である。
【0070】
次に、熱反応型レジスト層104のレジストパターン106をマスクとしてドライエッチングを行うことで、
図1(c)に示すように転写層103へ転写パターン107を形成した。ドライエッチングはエッチングガスとしてC
4F
8を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間5分の条件によりドライエッチングを行った。ここで用いたC
4F
8ガスは添加ガスを含んでいても良い。
【0071】
最後にエッチング層102をドライエッチングし、エッチングパターン108を形成した。エッチングガスはSF
6、もしくはCF
4を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間10分の条件によりエッチングを行った。ドライエッチング後の形状は
図1(d)のような形状が得られる。この場合、転写層103、エッチング層102の選択比は、熱反応型レジスト層104とエッチング層102の選択比に比べて大きいので、高アスペクト比の微細パターンが容易に得られる。
【0072】
図2に、熱反応型レジスト層104、転写層103、エッチング層102のエッチングレートと、転写層103に対する熱反応型レジスト層104のエッチングの選択比と、エッチング層102に対する転写層103のエッチングの選択比について示す。なお、
図2では、PbOを熱反応型レジスト層104とした場合に対して、転写層103としてCuOを用いた場合について示す(
図2(d)参照)。
【0073】
PbO/CuOの組み合わせの場合、転写層103への転写パターン107が形成しやすい。エッチングガスがC
4F
8、処理ガス圧が5Pa、処理電力が300W、処理時間5分の条件の場合、熱反応型レジスト層104と転写層103の選択比は10で転写パターン107は形成しやすく、エッチングパターン108を形成するエッチング層パターニング工程で、エッチングガスがSF
6、処理ガス圧が5Pa、処理電力が300W、処理時間10分の条件でドライエッチングを行った場合、転写層103、エッチング層102の選択比が49程度になる。転写層103が40nmの膜厚であればSiO
2は3.5μm以上エッチング可能であり、エッチングパターン7の開口幅が100nmとした場合、アスペクト比は35となる。この製造例に表記した材料はターゲットの組成である。
【0074】
[製造例3]
熱反応型レジスト層104にCuOターゲット、転写層103の材料にCo
3O
4ターゲットを選択した。またエッチング層102としてSiO
2ターゲットを選択した。(ここで選択したCuOは他元素を10から20%at含む組成でも構わない)
【0075】
まず50mmφのガラス平面基板101上にスパッタリング法によりSiO
2ターゲットを用いて、300nmのエッチング層102を成膜した。続いてCo
3O
4、SiO
2、CuOターゲットを用いて、転写層103を20nm、バリア層を20nm、熱反応型レジスト層104を40nm成膜した(
図1(a))。露光、現像の工程は実施例1と同様である。
【0076】
次に、
図1(b)に示すように熱反応型レジスト層104のレジストパターン106をマスクとしてドライエッチングを行うことで、
図1(c)に示すように転写層103へ転写パターン107を形成する。ドライエッチングはエッチングガスとしてCF
4を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間10分の条件によりドライエッチングを行った。
【0077】
最後にエッチング層102をドライエッチングし、エッチングパターン108を形成した。エッチングガスはCHF
3を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間10分の条件によりエッチングを行った。ドライエッチング後の形状は
図1(d)のような形状が得られる。この場合、転写層103はエッチングされずにフロロカーボン膜が堆積するため、選択比は非常に大きくなり、高アスペクト比の微細パターンが容易に得られる。ここではエッチングレートを0.1として選択比を計算している。
【0078】
図3に、熱反応型レジスト層104、転写層103、エッチング層102のエッチングレートと、転写層103に対する熱反応型レジスト層104のエッチングの選択比と、エッチング層102に対する転写層103のエッチングの選択比について示す。なお、
図3では、CuOを熱反応型レジスト層104とした場合に対して、転写層103として、Co
3O
4に加えてZnSb、NiNbを用いた場合について示す(
図3(a)〜(c)参照)。
【0079】
エッチング寸法、形状誤差を低減するために、それぞれの選択比は高いことが好ましい。熱反応型レジスト層104、転写層103の組み合わせはCuO/Co
3O
4、CuO/ZnSb、CuO/NiNbであるが、転写層103とエッチング層102の選択比が高いCuO/Co
3O
4、CuO/NiNbがより好ましい。Co
3O
4、NiNbはエッチングガスにCHF
3を用い、処理ガス圧を5Pa、処理電力を300W、処理時間10分の条件によりドライエッチングを行った場合、転写層103はエッチングされずにフロロカーボン膜が堆積するため、選択比は非常に大きくなり、高アスペクト比の微細パターンが容易に得られる。ここではエッチングレートを0.1として選択比を計算している。
【0080】
また、転写層103への転写パターン107が形成しやすい例として、CuO/ZnSbの組み合わせがあげられる。エッチングガスがSF
6、処理ガス圧が5Pa、処理電力が300W、処理時間10分の条件の場合、熱反応型レジスト層104と転写層103の選択比は9.8で転写パターン107は形成しやすく、エッチングパターン108を形成するエッチング層パターニング工程で、エッチングガスがCHF
3、処理ガス圧が5Pa、処理電力が300W、処理時間10分の条件でドライエッチングを行った場合、転写層103、エッチング層102の選択比が49程度になる。転写層103が40nmの膜厚であればSiO
2は1.9μm以上エッチング可能であり、エッチングパターン108の開口幅が100nmとした場合、アスペクト比は19となる。この製造例に表記した材料はターゲットの組成である。