(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661397
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ガス燃料用噴射弁及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20150108BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
F02M21/02 S
F02M51/06 K
F02M51/06 S
F02M51/06 T
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-212727(P2010-212727)
(22)【出願日】2010年9月22日
(65)【公開番号】特開2012-67665(P2012-67665A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 直人
【審査官】
中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−040245(JP,A)
【文献】
特開平09−158785(JP,A)
【文献】
特開2002−081321(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3034334(JP,U)
【文献】
実公平03−018849(JP,Y2)
【文献】
特開2009−127445(JP,A)
【文献】
特開2000−170619(JP,A)
【文献】
特開2000−320432(JP,A)
【文献】
特開平08−057331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 43/00−45/10
F02M 21/00−21/12
F02M 39/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座(7)及びこの弁座(7)の中心部を貫通するノズル孔(8)を有するノズル部材(2)、このノズル部材(2)の後端に連設される、磁性体よりなる筒状の弁ハウジング(3)、この弁ハウジング(3)の後方に配置される固定コア(5)、並びにこの固定コア(5)の後端に連設される燃料入口筒(6)よりなる弁ボディ(1)と、前記弁ハウジング(3)内周の摺動案内面(3a)に摺動自在に嵌装され、一端面に前記弁座と協働してノズル孔(8)を開閉する弁プランジャ(10)と、前記固定コア及び前記弁プランジャ(10)間に縮設されて該弁プランジャ(10)を前記弁座(7)側に付勢する戻しばね(35)と、前記固定コア(5)を囲繞するように配置され、通電時、発生磁力により前記弁プランジャ(10)を前記固定コア(5)に吸引させて前記弁座(7)から離座させるコイル(22)とを備えてなり、前記弁プランジャ(10)には、その後端面より始まってその前端面手前で終わる、前記燃料入口筒(6)内と連通する有底の縦燃料孔(30,31)と、この縦燃料孔(30,31)を前記弁ハウジング内に開放する複数の横燃料孔(32)とを設けたガス燃料用噴射弁において、
金属射出成形製とした前記弁プランジャ(10)が、前端側から短軸部(11)、この短軸部(11)より大径で前記摺動案内面(3a)に摺動自在に嵌合される第1ジャーナル部(13)、この第1ジャーナル部(13)より小径でそれより長い長軸部(12)及び、この長軸部(12)より大径で前記摺動案内面(3a)に摺動自在に嵌合される第2ジャーナル部(14)を順次同軸状に一体に連ねて構成され、
前記長軸部(12)の外周面に、前記第1及び第2ジャーナル部(13,14)間を一体に連結する複数条のリブ(12a)が一体に突設され、
前記弁プランジャ(10)の縦燃料孔(30,31)の底面に、前記縦燃料孔(30,31)から複数の前記横燃料孔(32)に向かうガス燃料の分流を誘導する円錐状の整流突起(33)が形成されることを特徴とするガス燃料用噴射弁。
【請求項2】
請求項1に記載のガス燃料用噴射弁を製造するに当たり、
前記弁プランジャ(10)を、磁性金属を素材として金属射出成形により形成する第1工程と、この第1工程後、前記弁プランジャ(10)の前端面及び後端面に、ゴムを素材とする着座部材(17)及びクッション(18)を焼き付ける第2工程と、この第2工程後、前記弁プランジャ(10)の外周面にフッ素系樹脂の被膜(19)をコーティングする第3工程とを実行することを特徴とするガス燃料用噴射弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CNG、LPG等の天然ガスを燃料として内燃機関に供給するガス燃料用噴射弁に関し、特に、弁座及びこの弁座の中心部を貫通するノズル孔を有するノズル部材、このノズル部材の後端に連設される、磁性体よりなる筒状の弁ハウジング、この弁ハウジングの後方に配置される固定コア、並びにこの固定コアの後端に連設される燃料入口筒よりなる弁ボディと、前記弁ハウジング内周の摺動案内面に摺動自在に嵌装され、一端面に前記弁座と協働してノズル孔を開閉する弁プランジャと、前記固定コア及び前記弁プランジャ間に縮設されて該弁プランジャを前記弁座側に付勢する戻しばねと、前記固定コアを囲繞するように配置され、通電時、発生磁力により前記弁プランジャを前記固定コアに吸引させて前記弁座から離座させるコイルとを備えてなり、前記弁プランジャには、その後端面より始まってその前端面手前で終わる、前記燃料入口筒内と連通する有底の縦燃料孔と、この縦燃料孔を前記弁ハウジング内に開放する複数の横燃料孔とを設けたガス燃料用噴射弁及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝるガス燃料用噴射弁は、下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−40245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のかゝるガス燃料用噴射弁では、弁プランジャに、ガス燃料通路として、弁ピストンの後端面より始まってその前端面手前で終わる有底の縦燃料孔と、この縦燃料孔を弁ハウジング内に開放する複数の横燃料孔とを単に設けていたので、ガス燃料が縦燃料孔から横燃料孔へと流れの方向を直角に変えるとき、ガス燃料に渦流による比較的大きな圧力損失が生じ、所望通りの燃料噴射流量が得られないことがある。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、ガス燃料が弁プランジャ内をスムーズに通過できるようにして、その圧力損失を少なくし、所望通りの燃料噴射流量が得られるようにしたガス燃料用噴射弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、弁座及びこの弁座の中心部を貫通するノズル孔を有するノズル部材、このノズル部材の後端に連設される、磁性体よりなる筒状の弁ハウジング、この弁ハウジングの後方に配置される固定コア、並びにこの固定コアの後端に連設される燃料入口筒よりなる弁ボディと、前記弁ハウジング内周の摺動案内面に摺動自在に嵌装され、一端面に前記弁座と協働してノズル孔を開閉する弁プランジャと、前記固定コア及び前記弁プランジャ間に縮設されて該弁プランジャを前記弁座側に付勢する戻しばねと、前記固定コアを囲繞するように配置され、通電時、発生磁力により前記弁プランジャを前記固定コアに吸引させて前記弁座から離座させるコイルとを備えてなり、前記弁プランジャには、その後端面より始まってその前端面手前で終わる、前記燃料入口筒内と連通する有底の縦燃料孔と、この縦燃料孔を前記弁ハウジング内に開放する複数の横燃料孔とを設けたガス燃料用噴射弁において、
金属射出成形製とした前記弁プランジャが、前端側から短軸部、この短軸部より大径で前記摺動案内面に摺動自在に嵌合される第1ジャーナル部、この第1ジャーナル部より小径でそれより長い長軸部及び、この長軸部より大径で前記摺動案内面に摺動自在に嵌合される第2ジャーナル部を順次同軸状に一体に連ねて構成され、前記長軸部の外周面に、前記第1及び第2ジャーナル部間を一体に連結する複数条のリブが一体に突設され、前記弁プランジャの縦燃料孔の底面に、前記縦燃料孔から複数の前記横燃料孔に向かうガス燃料の分流を誘導する円錐状の整流突起
が形成
されることを第1の特徴とする。尚、前記縦燃料孔は、後述する本発明の実施形態中の大径縦燃料孔30及び小径縦燃料孔31に対応す
る。
【0007】
さらにまた本発明は、第
1の特徴のガス燃料用噴射弁を製造するに当たり、前記弁プランジャを、磁性金属を素材として金属射出成形により形成する第1工程と、この第1工程後、前記弁プランジャの前端面及び後端面に、ゴムを素材とする着座部材及びクッション部材を焼き付ける第2工程と、この第2工程後、弁プランジャの外周面にフッ素系樹脂の被膜をコーティングする第3程とを実行することを第
2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、弁プランジャにおいて、ガス燃料が縦燃料孔の底面から複数の横燃料孔に向かうとき、そのガス燃料は、上記底面の円錐状の整流突起によって放射状に整流、分散され、スムーズに複数の横燃料孔を通過することができる。したがって、弁プランジャ内ではガス燃料の圧力損失を小さく抑えることができ、所望通りのガス燃料噴射量を得ることができる。しかも、上記整流突起によるガス燃料の整流によって、縦燃料孔の底面にガス燃料の混入オイルが付着、堆積するのを防ぐことができる。
その上、弁プランジャは、内部に縦燃料孔及び複数の横燃料孔、外側に第1及び第2ジャーナル部を備えるという、比較的複雑な形状を有するにも拘らず、これを金属射出成形製とすることで、容易に且つ安価に得ることができ
る。さらに長軸部は、その外周に第1及び第2ジャーナル部間を連結する複数のリブを持つことで、効果的に補強され、これにより長軸部の薄肉化、延いては弁プランジャの軽量化を図り、弁プランジャの開閉応答性の向上に寄与し得る。
【0009】
本発明の第
2の特徴によれば、弁プランジャを歩留まり良く且つ精密に製作することができると共に、バリの発生を抑えることができ、したがって後加工が不要となってコストの低減に寄与し得る。また着座部材及びクッション部材は、面粗度が比較的粗い弁プランジャ前端面及び後端面に焼き付けられることになり、着座部材及びクッション部材の剥離強度を高め、耐久性の向上を図ることができる。さらに上記弁プランジャの外周面にフッ素系樹脂の被膜を密着性良くコーティングすることができ、この被膜により、弁プランジャの摺動案内面への張りつきを防ぎ、弁プランジャのスムーズな作動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】同ガス燃料用噴射弁における弁プランジャの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0012】
先ず
図1において、本発明に係るガス燃料用噴射弁Iは、エンジンの吸気管Eの管壁に設けられる取り付け孔Eaに前端部が装着され、エンジンの吸気行程時、ガス燃料を吸気管E内に噴射する。この噴射弁Iの弁ボディ1は、円筒状のノズル部材2と、このノズル部材2の後端のフランジ部2aの外周面に前端部が嵌合及び溶接により結合される、磁性体よりなる中空円筒状の弁ハウジング3と、この弁ハウジング3の後端に非磁性円筒体4を介して一体的に連設される中空円筒状の固定コア5と、この固定コア5の後端に一体に連設される中空円筒状の燃料入口筒6とよりなっている。固定コア5は、その内径が弁ハウジング3の内径より小となるように形成されていて、前端の吸引面5bが弁ハウジング3の後述する弁プランジャ10に対向するようになっている。
【0013】
ノズル部材2は、弁ハウジング3内に臨む平坦な弁座7と、この中心部を貫通してノズル部材2の前端面に開口するノズル孔8を有しており、その弁座7の位置を調整する環状のシム9がノズル部材2及び弁ハウジング3間に介装される。
【0014】
弁ハウジング3の内周面は摺動案内面3aとされ、この摺動案内面3aには磁性体よりなる弁プランジャ10が摺動自在に嵌装される。
【0015】
図2及び第3に示すように、この弁プランジャ10は、前端側から短軸部11、この短軸部11より大径で前記摺動案内面3aに摺動自在に嵌合される第1ジャーナル部13、短軸部11より小径でそれより長い長軸部12及び、長軸部12より大径で前記摺動案内面3aに摺動自在に嵌合される第2ジャーナル部14を順次同軸状に一体に連ねて構成され、その短軸部11の前端面には、前記弁座7に着座し得るゴム製の着座部材17が焼き付けにより付設される。また第2ジャーナル部14の後端面には、固定コア5の吸引面5bに対向するゴム製で環状のクッション部材18が焼き付けにより付設され、このクッション部材18及び固定コア5の対向面間には、着座部材17の弁座7への着座時、弁プランジャ10の開弁ストロークに相当する所定の間隙が設定される。
【0016】
第2ジャーナル部14は、その軸方向幅が第1ジャーナル部13の軸方向幅より大となるように形成され、この第2ジャーナル部14の外周面は、固定コア5側で弁ハウジング3の摺動案内面3aに摺動自在に嵌合する第1摺動面14aと、長軸部12側で上記摺動案内面3aに摺動自在に嵌合する第2摺動面14bと、これら第1及び第2摺動面14a,14b間を離間させる環状溝14cとで構成される。その際、環状溝14cは、その溝底から弁ハウジング3の摺動案内面3aへの磁束の移行を可能にする程浅く形成される。弁プランジャ10の外周面にはフッ素樹脂製の被膜19がコーティングされる。
【0017】
また第1ジャーナル部13の外周面の直径をD1、前記第1摺動面14aの直径をD2、前記第2摺動面14bの直径をD3としたとき、下記式を満足させるように、第1ジャーナル部13及び第1、第2摺動面14a,14bは形成される。
【0018】
D1≦D2≧D3
弁ハウジング3の、第2ジャーナル部14が嵌合する領域から固定コア5に亙り、それらを囲繞するコイル組立体20が配設される。このコイル組立体20は、弁ハウジング3、非磁性円筒体4及び固定コア5の外周に嵌合するボビン21と、このボビン21の外周に巻装されるコイル22とで構成され、このコイル組立体20の外周には、これを覆う磁性体のコイルハウジング23が配設される。このコイルハウジング23の前端には、コイル組立体20の前端面を受けつゝ弁ハウジング3の外周に嵌合する環状の端壁23aを有しており、この端壁23aの前面に当接する前部ヨークフランジ24が弁ハウジング3の外周面に一体に突設され、またコイル組立体20の後端面に当接しつゝコイルハウジング23の後端部内周面に嵌合する後部ヨークフランジ25が固定コア5の外周面に一体に突設される。こうしてコイル組立体20及びコイルハウジング23は弁ボディ1に取り付けられる。そして、前部ヨークフランジ24、コイルハウジング23及び燃料入口筒6の外周面には、それらを連続的に被覆する樹脂モールド層26が形成され、この樹脂モールド層26には、その一側方に突出して、コイル22に連なる通電用端子27を保持するカプラ28が一体成形される。
【0019】
弁プランジャ10には、その後端面から始まり第1ジャーナル部13の前端面の手前で終わる大径縦燃料孔30と、この大径縦燃料孔30の底面から始まり短軸部11の前端面手前で終わる有底の小径縦燃料孔31と、この小径縦燃料孔31を短軸部11の外周面、即ち弁ハウジング3内に開放する複数の横燃料孔32,32…とが設けられ、小径縦燃料孔31の底面中心部には、小径縦燃料孔31から複数の横燃料孔32,32…へのガス燃料の分流を誘導する円錐状の整流突起33が形成される。長軸部12の外周面には、その軸方向に延びて第1及び第2ジャーナル部13,14間を一体に連結する複数条のリブ12a,12a…が形成される。長軸部12は、これらリブ12a,12a…により効果的に補強されるので、長軸部12の薄肉化、延いては弁プランジャ10の軽量化を図り、弁プランジャ10の開閉応答性の向上に寄与し得る。
【0020】
大径縦燃料孔30は固定コア5の中空部5aと連通し、大径縦燃料孔30及び小径縦燃料孔31間に形成される後向きの環状段部は、ばね座34とされる。こうしてばね座34は、第1摺動面14aより前方に配置される。
【0021】
一方、固定コア5の中空部5a内周面には、スプリングピンよりなる中空のリテーナ37が装着され、このリテーナ37と前記ばね座34との間に、弁プランジャ10を弁座7側に付勢する戻しばね35が縮設される。また固定コア5の中空部5aに連なる燃料入口筒6の中空部6aの入口には燃料フィルタ38が装着される。
【0022】
ノズル部材2の外周には、環状の前部シール溝40を画成する前後一対の合成樹脂製のリング部材41,42が嵌着され、前部シール溝40には、ノズル部材2をエンジンの吸気管Eの取り付け孔Eaに挿入したとき、その内周面に密接する前部Oリング43が装着される。
【0023】
また燃料入口筒6の後端部外周において、燃料入口筒6の後端に形成されるフランジ46と、前記樹脂モールド層26の後端面とにより環状の後部シール溝45が画成され、この後部シール溝45には、燃料入口筒6の外周に燃料分配管Dを嵌装したとき、その内周面に密接する後部Oリング47が装着される。
【0024】
次に、この実施形態の作用について説明する。
【0025】
コイル22の消磁状態では、弁プランジャ10は、戻しばね35のセット荷重により前方に押圧され、着座部材17を弁座7に着座させている。
【0026】
コイル22を通電により励起すると、それにより生ずる磁束がコイルハウジング23、弁ハウジング3、第2ジャーナル部14、固定コア5、後部ヨークフランジ25、コイルハウジング23を順次走り、固定コア5及び弁プランジャ10間に発生する磁力により弁プランジャ10が戻しばね35のセット荷重に抗して固定コア5に吸引され、着座部材17を弁座7から離座させ、ノズル孔8を開く。このとき、弁プランジャ10のゴム製のクッション部材18が固定コア5の前端面に当接することで、弁プランジャ10の開弁限界が規制される。
【0027】
ノズル孔8が開くと、図示しないガス燃料タンクから燃料分配管Dに送られたガス燃料が、燃料入口筒6に流入して燃料フィルタ38により濾過され、中空のリテーナ37、弁プランジャ10の大径縦燃料孔30、小径縦燃料孔31及び横燃料孔32,32…を通過して弁ハウジング3内に移り、ノズル孔8からエンジンの吸気管E内に噴射される。
【0028】
ところで、弁プランジャ10において、小径縦燃料孔31の底面中心部には、円錐状の整流突起33が形成されているので、ガス燃料が弁プランジャ10内を大径縦燃料孔30、小径縦燃料孔31へと流れ、小径縦燃料孔31の底面まで来ると、そのガス燃料は、上記整流突起33によって放射状に整流、分散され、スムーズに複数の横燃料孔32を通過することができる。したがって、弁プランジャ10内ではガス燃料の圧力損失を小さく抑えることができ、所望通りのガス燃料噴射量を得ることができる。その上、上記整流突起33によるガス燃料の整流によって、小径縦燃料孔31の底面にガス燃料の混入オイルが付着、堆積するのを防ぐことができる。
【0029】
また弁プランジャ10において、第2ジャーナル部14は、その軸方向幅が第1ジャーナル部13の軸方向幅より大となるように形成され、この第2ジャーナル部14の外周面は、固定コア5側で弁ハウジング3の摺動案内面3aに摺動自在に嵌合する第1摺動面14aと、長軸部12側で上記摺動案内面3aに摺動自在に嵌合する第2摺動面14bと、これら第1及び第2摺動面14a,14b間を離間させる環状溝14cとで構成されるので、磁束が弁ハウジング3から第1ジャーナル部13へと流れるとき、多くの磁束は、弁ハウジング3の摺動案内面3aから、それに接している第2ジャーナル部14の第1及び第2摺動面14a,14bへと受け渡され、また両摺動面14a,14b間を離間する環状溝14cの溝底は、長軸部12の外周面よりも極めて浅く、摺動案内面3aとの間に微小間隙を形成するので、磁束の一部は、この微小間隙を通して弁ハウジング3から第2ジャーナル部14へと受け渡される。こうして、弁ハウジング3及び第2ジャーナル部14間には比較的大なる磁路面積を確保することができ、弁プランジャ10の開弁応答性が向上する。
【0030】
しかも、第2ジャーナル部14の軸方向幅を第1ジャーナル部13のそれより大とするにも拘らず、第2ジャーナル部14の、環状溝14cにより離間される第1及び第2摺動面14a,14bは、第1ジャーナル部13の略同様な比較的狭い軸方向幅を持つことになるから、弁ハウジング3内に導入されたガス燃料混入したオイルが、第1ジャーナル部13及び第1、第2摺動面14a,14bと摺動案内面3aとの各間に侵入して油膜を形成しても、その油膜は、弁プランジャ10の磁力による開弁力により容易に剪断され、弁プランジャ10の摺動案内面3aへの張りつきが解消される。弁プランジャ10の外周面にコーティングされたフッ素樹脂製の被膜19は、上記油膜の剪断を促進する。
【0031】
こうして、第2ジャーナル部14は、必要な磁路面積の確保と、油膜による張りつき防止という、相反する要求を満足させ、弁プランジャ10の開弁応答性の向上を図ることができる。
【0032】
また弁プランジャ10は、その開閉作動時、第1ジャーナル部13と、第2ジャーナル部14の第1、第2摺動面14a,14bとを弁ハウジング3の摺動案内面3aを摺動させることで、常に安定した姿勢を保つことができる。
【0033】
その際、特に、第1ジャーナル部13の外周面の直径をD1、前記第1摺動面14aの直径をD2、前記第2摺動面14bの直径をD3としたとき、D1≦D2≧D3と設定したことで、第1摺動面14a及び摺動案内面3a間の摺動間隙は、第1ジャーナル部13及び第2摺動面14bと摺動案内面3aとの各間の摺動間隙と同等、もしくはそれらより大と設定されることになり、しかも戻しばね35の可動端を支持するばね座34が第2ジャーナル部14内の、第1摺動面14aより前方位置に配置されるので、戻しばね35から弁プランジャ10に調心作用が働くことになり、弁プランジャ10の姿勢を一層安定させることができる。
【0034】
次に、上記のようにフッ素系樹脂の被膜19、並びに着座部材17及びクッション部材18を備える弁プランジャ10の製造方法について、
図4を参照しながら説明する。
【0035】
先ず、
図4(A)に示すように、前述の構造を持った弁プランジャ10を、磁性金属を素材として金属射出成形により製作する。これによれば、弁プランジャ10を歩留まり良く且つ精密に製作することができると共に、バリの発生を抑えることができ、したがって後加工が不要となってコストの低減に寄与し得る。
【0036】
次に、
図4(B)に示すように、上記弁プランジャ10の前端面及び後端面に、ゴムを素材とする着座部材17及びクッション部材18を焼き付ける。これによれば、着座部材17及びクッション部材18は、面粗度が比較的粗い弁プランジャ10の前端面及び後端面に焼き付けられることになり、着座部材17及びクッション部材18の剥離強度を高め、耐久性の向上を図ることができる。
【0037】
最後に、
図4(C)に示すように、上記弁プランジャ10の外周面にフッ素系樹脂の被膜19をコーティングする。これによれば、金属射出成形製の弁プランジャ10の外周面に対するフッ素系樹脂の被膜19の密着性を高めることができる。
【0038】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
I・・・・・ガス燃料用噴射弁
1・・・・・弁ボディ
2・・・・・ノズル部材
3・・・・・弁ハウジング
3a・・・・摺動案内面
5・・・・・固定コア
7・・・・・弁座
8・・・・・ノズル孔
10・・・・弁プランジャ
11・・・・短軸部
12・・・・長軸部
13・・・・第1ジャーナル部
14・・・・第2ジャーナル部
22・・・・コイル
30,31・・・縦燃料孔(大径縦燃料孔、小径縦燃料孔)
32・・・・横燃料孔
33・・・・整流突起