(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
高圧ガス流路の途中に設けられた筒状のスリーブと、前記スリーブの径方向外側に設けられた電磁コイルの起磁力に基づき前記スリーブ内を移動するプランジャと、前記プランジャの移動に基づき前記高圧ガス流路を開閉可能な弁体とを備えるとともに、前記スリーブの軸方向端部は、閉塞体により気密に封止される開口端として形成された電磁弁であって、
ガス圧に応じた前記スリーブの変形に基づき前記開口端が拡開してガスを漏出させることにより、許容水準を超えた前記ガス圧の上昇を抑制する安全弁として機能すること、
を特徴とする電磁弁。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1の実施形態]
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の安全弁1は、高圧ガス流路2に連通するとともに軸方向の一端(同図中、上側の端部)が「底部(又は蓋部)」を有しない開口端3として形成された略円筒状の筒体4と、その開口端3を気密に封止する閉塞体5とを備えている。
【0021】
詳述すると、本実施形態の筒体4は、上記開口端3の反対側の軸方向端部(同図中、下側の端部)が、上記高圧ガス流路2に臨む接続端6として形成されている。尚、本実施形態では、同接続端6の外周、及び高圧ガス流路2の壁部7に形成された接続孔8には、螺子溝が螺刻されている。そして、本実施形態の筒体4は、その接続端6が接続孔8に螺着されることにより、同筒体4の筒内9と高圧ガス流路2とが連通する構成になっている。
【0022】
一方、本実施形態の閉塞体5は、上記開口端3内に挿入される略円柱状の挿入部11を備えている。具体的には、同挿入部11は、その外径が開口端3の内径と略等しく形成されている。また、挿入部11の外周には、環状溝12が形成されるとともに、同環状溝12内には、当該環状溝12と対向する開口端3の内周面14との間で挟圧されたシール部材としてのOリング13が収容されている。そして、本実施形態の閉塞体5は、この挿入部11と開口端3の内周面14との間に圧縮状態で介在されたOリング13により、同開口端3を気密に封止する構成となっている。
【0023】
また、閉塞体5は、その本体部15に当接する規制体16により、筒体4から離間する方向の軸方向移動(同図中、上側への移動)が規制されている。つまり、閉塞体5及び筒体4は、規制体16により、その両者間の相対移動が規制されている。そして、本実施形態の安全弁1は、これにより、そのガス圧(筒内9及び高圧ガス流路2のガス圧)に応じた筒体4の変形に基づいて、当該筒体4の開口端3が径方向外側に拡開する構成となっている。
【0024】
即ち、
図2に示すように、ガス圧の上昇に伴い開口端3が拡開することにより、当該開口端3の内周面14と閉塞体5側の挿入部11との間に隙間Xが形成される。また、更なるガス圧の上昇に伴いその隙間Xが広がることにより、開口端3と挿入部11との間に圧縮状態で介在されたOリング13が復元し、そのシール部材としての機能を喪失する。そして、本実施形態の安全弁1は、その隙間Xから筒内9のガスを漏出させることにより、許容水準を超えたガス圧の上昇を抑制する構成となっている。
【0025】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(1)安全弁1は、開口端3を有して高圧ガス流路2に連通する筒体4と、開口端3を気密に封止する閉塞体5とを備える。そして、ガス圧に応じた筒体4の変形に基づき開口端3が拡開してガスを漏出させることにより、許容水準を超えたガス圧の上昇を抑制する。
【0026】
即ち、ガス圧に応じた筒体4の変形、及びそれに基づく開口端3の拡開は、筒体4の材質及び形状に基づいて、容易且つ高精度に予測することが可能である。そのため、破裂限界の制御が難しいラプチャーディスクのような破裂部材と比較して、その性能の均質化が容易、且つ安価に製造することができる。また、筒体4及び閉塞体5からなる構成は、バネ圧を利用したリリーフバルブよりも簡素であり、且つその小型化が容易である。そして、特に水素ガスの供給系においては、当該水素ガスによる脆化の影響を受けることなく、より安定的に作動させることができる。従って、上記構成によれば、構成簡素且つ低コストにて、精度よく、許容水準を超えたガス圧の上昇(過剰圧)を抑制することができるようになる。
【0027】
(2)閉塞体5は、挿入部11と開口端3の内周面14との間に圧縮状態で介在されることにより同開口端3を気密に封止するシール部材としてのOリング13を備える。
即ち、ガス圧の上昇に伴う開口端3の拡開により当該開口端3の内周面14と閉塞体5側の挿入部11との間に隙間Xが形成された状況においても、両者の間に圧縮状態で介在されたOリング13が復元し、そのシール部材としての機能を喪失するまでは、開口端34を気密に封止された状態で維持することができる。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、容易且つ高精度に、そのガスが漏出するに至る圧力を制御することができる。加えて、その後、ガス圧が低下した場合には、その開口端3が縮径してOリング13を圧縮することにより、再度、当該開口端3を気密に封止する構成とすることも可能になる。
【0028】
[第2の実施形態]
以下、本発明を、高圧水素ガスの供給系に設けられた電磁弁に具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。
【0029】
図3に示すように、本実施形態の電磁弁20は、高圧水素用のガスタンク(図示略)に取着されることにより高圧ガス流路21の一部を構成するバルブボディ22内に形成されている。
【0030】
詳述すると、本実施形態のバルブボディ22の一端22a(同図中、右側の端部)には、断面円形状の収容穴23が形成されている。また、収容穴23の底面24には、収容穴23と同軸、且つ同収容穴23よりも小径の挿入穴25が形成されている。尚、本実施形態では、この挿入穴25もまた、断面円形状に形成されている。そして、バルブボディ22には、この挿入穴25に連通することにより、ガスタンクに充填された水素ガスが流入する入力ポート26、及びその流入した水素ガスを供給先に送出するための出力ポート27が形成されている。
【0031】
具体的には、入力ポート26は、挿入穴25の軸線と略直交する方向(同図中、上下方向)に延設されて同挿入穴25の底面28近傍に開口するように形成されている。そして、出力ポート27は、挿入穴25の軸線方向(同図中、左右方向)に延設されて同挿入穴25の底面28、詳しくは、当該挿入穴25と同軸となる位置に開口するように形成されている。
【0032】
また、本実施形態のバルブボディ22において、上記のように同軸に連接する収容穴23及び挿入穴25には、有底略円筒状のスリーブ31が収容されている。そして、このスリーブ31(の筒内)を介して上記入力ポート26と出力ポート27とが連通することにより、同バルブボディ22内に、そのガスタンクに貯留された水素ガスを供給先に送出するための高圧ガス流路21が形成される構成となっている。
【0033】
さらに詳述すると、本実施形態では、スリーブ31の外径は、上記挿入穴25の内径と略等しく設定されている。また、スリーブ31の底部32には、同スリーブ31と同軸位置において、その軸線方向に延びる円柱状の突出部33が形成されている。更に、この突出部33の外径は、上記出力ポート27の内径と略等しく設定されている。そして、本実施形態のスリーブ31は、その底部32が上記挿入穴25内に挿入されるとともに、同底部32から軸線方向(同図中、左側)に延びる突出部33が上記出力ポート27内に挿入された状態で、上記収容穴23内に収容されている。
【0034】
また、本実施形態のスリーブ31は、上記のように底部32を有して挿入穴25内に挿入される軸方向端部31a(同図中、左側の端部)とは反対側の軸方向端部31b(同図中、右側の端部)が、「底部(又は蓋部)」を有しない開口端34として形成されている。そして、同開口端34には、当該開口端34内に配置される挿入部35を有したストッパ36(閉塞体)が取着されている。
【0035】
ここで、このストッパ36の挿入部35とスリーブ31の開口端34との間には、シール部材としてのOリング37が介在されている。また、上記挿入穴25と当該挿入穴25内に挿入されたスリーブ31の底部32との間、及び上記出力ポート27と同出力ポート27内に挿入された突出部33との間にも、同様のOリング38,39が介在されている。そして、本実施形態では、これにより、スリーブ31の筒内と収容穴23との間、同収容穴23と挿入穴25との間、及び同挿入穴25と出力ポート27との間が、それぞれ、気密に区画されている。
【0036】
更に、スリーブ31の底部32には、上記入力ポート26に連続する挿入穴25とスリーブ31の筒内とを連通する連通孔44が形成されている。また、上記出力ポート27内に挿入された突出部33には、同突出部33及びスリーブ31の底部32を軸方向に貫通して、出力ポート27とスリーブ31の筒内とを連通する連通孔45が形成されている。そして、本実施形態では、これにより、スリーブ31の筒内を介して入力ポート26から出力ポート27へと続く高圧ガス流路21が形成されるようになっている。
【0037】
また、スリーブ31の径方向外側には、電磁コイル50が設けられるとともに、スリーブ31の筒内には、同電磁コイル50の起磁力に基づいて、その筒内を軸方向移動するプランジャ51が設けられている。そして、本実施形態の電磁弁20は、このプランジャ51の軸方向移動に基づいて、上記のように構成された高圧ガス流路21を開閉するようになっている。
【0038】
詳述すると、本実施形態では、上記電磁コイル50は、ボビン状のインシュレータ52に巻回された状態で、その磁路を形成するヨーク53,54,55とともに、上記収容穴23内に収容されている。そして、上記スリーブ31は、その電磁コイル50が巻回されたインシュレータ52の筒内に挿入される態様で、バルブボディ22に組み付けられるようになっている。
【0039】
一方、本実施形態のプランジャ51は、スリーブ31の内周面に摺接した状態で軸方向移動可能な略円柱状に形成されるとともに、同プランジャ51と上記ストッパ36との間には、コイルバネ56が介在されている。また、本実施形態のストッパ36は、その本体部57が上記収容穴23を閉塞する蓋部材58に当接することにより、そのスリーブ31から離間する方向への軸方向移動(同図中、右側への移動)が規制されている。つまり、閉塞体としてのストッパ36及び筒体としてのスリーブ31は、規制体としての蓋部材58により、その両者間の相対移動が規制されている。尚、本実施形態の蓋部材58は、ボルト(図示略)により、収容穴23が凹設されたバルブボディ22の一端22aに締結されている。そして、プランジャ51は、そのコイルバネ56の弾性力によって、スリーブ31の底部32側(同図中、左側)に向かって付勢されている。
【0040】
また、スリーブ31の底部32には、上記突出部33に形成された連通孔45に連続する貫通孔60を有してプランジャ51に対向する主弁座61が設けられている。そして、プランジャ51には、同プランジャ51の軸方向移動に伴い上記主弁座61に当接して、その貫通孔60を閉塞可能な主弁体62が設けられている。
【0041】
図4に示すように、本実施形態のプランジャ51は、上記主弁座61に対向する側の軸方向端面51a(同図中、左側の端面)に開口する収容穴63を備えている。そして、主弁体62は、この収容穴63内に収容される基部64と、同基部64から軸方向、主弁座61側(同図中、左側)に突出することにより、その先端が収容穴63の外部に配置される略円柱状の弁本体65とを備えて構成されている。
【0042】
具体的には、収容穴63の開口部63aには、上記主弁座61の貫通孔60に対応する位置に貫通孔66を有した規制板67が固定されている。そして、主弁体62において、その基部64は、この貫通孔66よりも大きな外径を有している。
【0043】
一方、弁本体65は、上記規制板67に形成された貫通孔66を介して収容穴63の外部に突出することにより、その先端が、プランジャ51の軸方向端面51aよりも上記主弁座61側に配置されている。更に、弁本体65の先端には、略円錐状のテーパ部68が形成されている。そして、本実施形態の主弁体62は、このテーパ部68が、上記主弁座61の貫通孔60に対して同軸に当接することにより、同貫通孔60を気密に閉塞することが可能となっている。
【0044】
また、本実施形態の主弁体62には、同主弁体62を軸方向(同図中、左右方向)に貫通して上記テーパ部68の頂点部分に開口するパイロット流路69が形成されている。更に、上記突出部33とは反対側の主弁体62の軸方向端部62aには、同パイロット流路69に連続する貫通孔70を有したパイロット弁座71が設けられている。尚、本実施形態では、パイロット弁座71は、主弁体62の軸方向端部62aに形成された凹部72内に固定されている。更に、パイロット弁座71の貫通孔70は、上記主弁座61の貫通孔60との比較において、その直径が小さく設定されている。そして、本実施形態の電磁弁20は、プランジャ51の移動に伴いパイロット弁座71に接離するパイロット弁体73を備えたパイロット式の電磁弁として構成されている。
【0045】
さらに詳述すると、本実施形態では、主弁体62の基部64は、その外径が収容穴63の内径と略等しく設定されるとともに、その軸方向長さが収容穴63の軸方向長さよりも短く設定されることにより、同収容穴63内を軸方向に摺動可能となっている。また、プランジャ51には、上記ストッパ36側の軸方向端面51bから同プランジャ51を軸方向に貫通して収容穴63に開口する貫通孔74が形成されている。更に、プランジャ51には、その軸方向に沿って同プランジャ51の外周面に凹設された導入溝75、並びに当該導入溝75と上記収容穴63とを連通する導入路76a及び導入溝75と貫通孔74とを連通する導入路76bが形成されている。そして、上記貫通孔74における収容穴63側の開口部74aには、プランジャ51と一体に軸方向移動するように、上記パイロット弁座71と対向するパイロット弁体73が設けられている。
【0046】
尚、本実施形態のパイロット弁体73は、略球状に形成され、貫通孔74に圧入されることにより、その開口部74aに固定されるようになっている。また、貫通孔74内には、押圧板78が固定されており、上記コイルバネ56の一端は、この押圧板78に当接されている。そして、同コイルバネ56は、この押圧板78とストッパ36の挿入部35に形成された収容穴79の底面との間で圧縮されることにより、スリーブ31内においてプランジャ51を底部32側に付勢する構成となっている。
【0047】
即ち、上記電磁コイル50の非通電時、プランジャ51は、コイルバネ56の弾性力に基づいて、スリーブ31内を底部32側(
図3参照、同図中、左側)に軸方向移動する。このとき、パイロット弁体73は、パイロット弁座71に着座し、そのパイロット流路69に連続する貫通孔70を閉塞した状態で同パイロット弁座71を押圧する。これにより、主弁体62は、プランジャ51とともに底部32側に軸方向移動し、同底部32に設けられた主弁座61に着座する。そして、その弁本体65(の先端に形成されたテーパ部68)が、上記出力ポート27に続く主弁座61の貫通孔60を閉塞することにより、高圧ガス流路21が閉状態となる。
【0048】
一方、電磁コイル50に通電することにより、プランジャ51は、その起磁力に基づいて、コイルバネ56の弾性力に抗して、スリーブ31内を開口端34側(ストッパ36側、
図3参照、同図中、左側)に軸方向移動する。このとき、プランジャ51内においては、先ず、パイロット弁体73がパイロット弁座71から離座し、その後、収容孔の開口部63aに設けられた規制板67が主弁体62の基部64に当接することにより、同主弁体62は、プランジャ51ともに開口端34側に軸方向移動する。そして、その主弁体62が主弁座61から離座することにより、高圧ガス流路21が開状態となる。
【0049】
つまり、パイロット弁体73により閉塞されるパイロット弁座71の貫通孔70は小径であるため、比較的小さな力で、同パイロット弁座71からパイロット弁体73を離座させることができる。また、パイロット弁体73の離座によりパイロット流路69を介して出力ポート27内に水素ガスが流入することで、当該出力ポート27とスリーブ31の筒内との圧力差が小さくなる。その結果、比較的小さな力で主弁体62を主弁座61から離座させることができる。そして、本実施形態では、このようなパイロット式の構成を採用することにより、その駆動源となる電磁コイル50の巻線数を抑えて装置の小型化を図ることが可能となっている。
【0050】
(過剰圧抑制構造)
次に、本実施形態の電磁弁に設けられた過剰圧抑制構造、即ち許容水準を超えたガス圧の上昇を抑制する安全弁としての機能について説明する。
【0051】
図3に示すように、本実施形態では、筒状をなすスリーブ31の外周と電磁コイル50が巻回されたインシュレータ52との間には、同スリーブ31の変形を許容する隙間が設定されている。そして、本実施形態のスリーブ31は、その筒内のガス圧に応じた変形により開口端34が径方向外側に拡開するように形成されている。
【0052】
即ち、
図5に示すように、ガス圧の上昇に伴い開口端34が拡開することにより、当該開口端34の内周面81とその閉塞体である上記ストッパ36の挿入部35との間に隙間Xが生ずる。つまり、本実施形態の電磁弁20において、スリーブ31は、上記第1の実施形態に示された安全弁1における筒体4に相当し、ストッパ36は、その筒体4の開口端3を気密に封止する閉塞体5に相当する。
【0053】
ここで、本実施形態では、これら開口端34とストッパ36の挿入部35との間に介在された上記Oリング37は、挿入部35の外周面82に形成された環状溝83内に収容されている。そして、同環状溝83に対向する開口端34の内周面81との間で挟圧され、圧縮状態で両者に接触することにより、上記第1の実施形態におけるOリング13と同様(
図2参照)、そのシール部材としての機能を奏する構成となっている。
【0054】
つまり、更なるガス圧の上昇により、その隙間Xが広がることで、上記Oリング37は復元し、そのシール部材としての機能を喪失する。そして、本実施形態の電磁弁20は、その隙間Xから水素ガスをスリーブ31の外部に漏出させることにより、上記第1の実施形態に示された安全弁1と同様、許容水準を超えたガス圧の上昇を抑制する安全弁として機能する構成になっている。
【0055】
尚、本実施形態では、スリーブ31が収容された収容穴23は、バルブボディ22(の一端22a)にボルト締結された蓋部材58により、その開口部が閉塞されている。そして、上記のようにスリーブ31から収容穴23内に漏出したガスは、その収容穴23の開口部と蓋部材58との隙間から、外部空間に放出されるようになっている。
【0056】
以上、本実施形態によれば、以下のような作用・効果を得ることができる。
(3)上記構成によれば、燃料電池車用のガスタンク等、高圧水素ガスの供給系に設けられた既存の電磁弁20を安全弁として機能させることができる。その結果、新たな構成を追加することなく、構成簡素且つ低コストにて、許容水準を超えたガス圧の上昇を抑制して、その安全性の向上を図ることができる。
【0057】
(4)また、スリーブ31の開口端34を閉塞体としてのストッパ36により気密に封止する電磁弁20では、そのガス圧がストッパ36をスリーブ31から離間させる方向(
図4参照、軸方向右側)に作用する。しかしながら、上記構成によれば、上記開口端34の拡開により、そのストッパ36を押圧するガス圧が低減される。これにより、閉塞体としてのストッパ36がスリーブ31から離間する動きを抑制することができ、その結果、更なる安全性の向上を図ることができる。
【0058】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第2の実施形態では、本発明を、高圧水素ガスの供給系に設けられた電磁弁20に具体化した。しかし、これに限らず、その他の高圧ガス用の電磁弁に適用してもよい。
【0059】
・また、上記第2の実施形態では、本発明を、高圧ガス流路を開閉可能な弁体として、主弁体62及びパイロット弁体73を備えるパイロット式の電磁弁20に具体化した。しかし、これに限らず、主弁体62に相当する弁体を直接的に駆動する構成に適用してもよい。
【0060】
・上記第2の実施形態では、筒状をなすスリーブ31の外周と電磁コイル50が巻回されたインシュレータ52との間には、同スリーブ31の変形を許容する隙間が設定されることとした。しかし、そのスリーブ31とインシュレータ52との間の隙間については、必ずしもスリーブ31全体の変形を許容するものでなくともよく、少なくとも開口端34の拡開を許容するものであればよい。
【0061】
具体的には、例えば、
図6に示すように、スリーブ31の底部32側(同図中、左側、
図4参照)については、同スリーブ31の外周と略当接するように、インシュレータ85の形状を設計する。そして、スリーブ31の開口端34側については、その内径が徐々に拡径するように、同インシュレータ85の形状を設計することにより、上記のような開口端34の拡開を許容する隙間が形成されるような構成であってもよい。
【0062】
・また、ガス圧に応じた変形量が開口端よりも小さい高剛性部をスリーブに形成してもよい。即ち、スリーブが軸方向に長い構成の場合、その開口端が拡開するよりも、同スリーブの中間部分が膨らんでしまう可能性がある。そこで、例えば、
図7に示すように、その底部32側(同図中、左側)の肉厚W1を、開口端34側(同図中、右側)の肉厚W2よりも厚くすることにより、上記高剛性部88を形成する。このような構成とすることで、スリーブ89は、その開口端34近傍が、優先的に拡開するようになる。その結果、より高精度に安全弁として機能させることができるようになる。
【0063】
更に、この高剛性部88をプランジャ51の移動範囲(摺動範囲)に形成することで、そのガス圧によるスリーブの変形の影響を抑えて、より円滑に同プランジャ51を移動させることができる。そして、これにより、その電磁弁本来の機能を損ねることなく、安全弁として機能させることができるようになる。
【0064】
尚、こうした高剛性部88の形成方法については、上記のような肉厚(W1,W2)の相違に基づくものに限らず、熱処理の相違(焼入れ・焼戻し、及びその有無)に基づくものであってもよい。また、スリーブ31の外周に対して、例えば、
図6に示すように電磁コイル50が巻回されたインシュレータの一部を当接させる等、スリーブ31の変形を抑制可能な補強体を設けることにより高剛性部を形成する構成であってもよい。そして、高剛性部の形成位置については、その他、ガス圧の上昇により不要な膨張が生ずる可能性のある部位(例えば、スリーブの中間部分等)に設定してもよい。
【0065】
・上記第1の実施形態では、安全弁1の筒体4は、その開口端3とは反対側の軸方向端部が、高圧ガス流路2に臨む接続端6として形成されることとした。しかし、これに限らず、
図8に示す安全弁90のように、筒体91の側壁91aに、高圧ガス流路(図示略)に連通する連通路92を形成する。そして、同筒体91における開口端93とは反対側の軸方向端部を、底部94aを有する閉塞端94とする構成であってもよい。
【0066】
・また、
図9に示す安全弁95のように、筒体96の軸方向両端が開口端97,98として形成される構成であってもよい。これにより、そのガスが漏出するに至る圧力を、より高精度に制御することができる。
【0067】
・更に、
図10に示す安全弁100のように、筒体96の筒内9に挿通された連結軸101により、その軸方向両端の開口端97,98を閉塞する二つの閉塞体102,103を一体に連結する構成としてもよい。これにより、各閉塞体102,103に作用するガス圧を相殺して当該各閉塞体102,103の移動を抑制することができる。その結果、上記各実施例にみられるような規制体を廃して、更なる構成の簡素化を図ることができる。
【0068】
・また、
図11に示す安全弁105のように、開口端93とは反対側の軸方向端部が底部94aを有する閉塞端94として形成された筒体91を用いる。そして、その高圧ガス流路(図示略)に連通する連通路106を閉塞体107に形成する構成としてもよい。
【0069】
次に、以上の実施形態から把握することのできる技術的思想を記載する。
(イ)前記閉塞体と前記開口端との間に圧縮状態で介在されることにより該開口端を気密に封止可能なシール部材を備えること、を特徴とする電磁弁。これにより、請求項2と同様の効果を得ることができる。
【0070】
(ロ)前記スリーブの径方向外側には、前記開口端の拡開を許容する隙間が設定されること、を特徴とする電磁弁。これにより、開口端の円滑な拡開を担保して、精度よく、その許容水準を超えたガス圧の上昇を抑制することができる。
【0071】
(ハ)前記高剛性部は、肉厚又は熱処理の相違、若しくは補強体の存在に基づくものであること、を特徴とする電磁弁。これにより、容易に高剛性部を形成することができる。