(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661411
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ライナー部材、外構用支柱構造及び外構フェンス構造
(51)【国際特許分類】
E04H 17/14 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
E04H17/14 103Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-227801(P2010-227801)
(22)【出願日】2010年10月7日
(65)【公開番号】特開2012-82586(P2012-82586A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】蒲田 哲郎
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−161316(JP,A)
【文献】
特許第2652916(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/00 − 17/26
E04F 13/07 − 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外構フェンスの支柱にネジ部材によって固定されると共に、前記支柱に当接され且つ長手方向に沿って延在される固定片と、
棚部材を支持するためのブラケットが装着されると共に、前記固定片に対して面同士が互いに平行に延在するブラケット支持片と、
前記固定片と前記ブラケット支持片とを連結する連結片と、からなり、
前記支柱の長手方向に延在する前記固定片と前記ブラケット支持片と前記連結片とで断面コ字又はロ字状に形成され、
前記ブラケット支持片には、前記ブラケットを固定するための締結部材が装着される取付け孔が前記ブラケット支持片の長手方向に等間隔で設けられると共に、前記ネジ部材の頭部が貫通するネジ覗き穴が前記取付け孔の間に設けられていることを特徴とするライナー部材。
【請求項2】
請求項1に記載のライナー部材が前記支柱に形成された下穴に前記ネジ部材によって固定されていることを特徴とする外構用支柱構造。
【請求項3】
請求項2記載の外構用支柱構造と、隣接する前記支柱に固定された柵部材と、隣接する前記ライナー部材にそれぞれ固定された前記ブラケットと、水平方向に延在して隣接する前記ブラケットに掛け渡して固定された前記棚部材と、を備えたことを特徴とする外構フェンス構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通風・採光を損なわずに、外部の視線を遮断するための外構フェンスに適用されるライナー部材、このライナー部材を備えた外構用支柱構造、この外構用支柱構造を備えた外構フェンス構造に関する。
【背景技術】
【0002】
限られた外部空間を緑化する為には、地盤面だけではなく壁面の緑化が有効である。様々なタイプの壁面緑化技術が開発されているが、概してネットやワイヤーに蔓性の植物を誘引させる場合が多い。この方法は完成すると美しいが、壁面を覆うまでの手間がかかり、しかも絶え間ない誘引のメンテナンスが必要となる。公共建築や大規模民間建築のような管理者がいる場合はよいが、個人住宅等の小規模建築では維持が困難である。
一方、従来より壁面に支持金物等で棚板を取り付け、そこに植木鉢を置くことが行われてきた。これによれば、上記の壁面緑化技術と比較しても簡便である。また、必要な部分に植木鉢やプランタボックスを置き季節に応じて置き換えを行うことが可能である。また、一年草のような観賞期間が短い植物や家庭菜園を短期間だけ楽しむことも可能である。しかし、この支持金物等は、その構造からブロック塀、組積造(レンガ・石積)塀、木板塀等に用いるのが一般的で、通風や採光を確保できる工業製品である鋼製やアルミ製のフェンスなどへの設置が困難であったため、あまり普及していなかった。
どころが、近年、ブロック塀、組積造(レンガ・石積)塀、木板塀等ではなく、通気や採光を可能にする外構フェンスに棚板を設置したいという要望が強くなっている。
ここで、外構フェンスに植栽を施すものとして、実公昭61−94149号公報、特開2001−20566号公報、特許2652916号公報が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−94149号公報
【特許文献2】特開2001−20566号公報
【特許文献3】特許2652916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した実公昭61−94149号公報、特開2001−20566号公報、特許2652916号公報に開示されている技術は、もともと既存の外構フェンスに対して棚板を取り付ける構造になっておらず、後付けで棚板を外構フェンスに固定させることができない。更に、棚板上に植木鉢やプランタボックスを載せた際、既存の外構フェンスの支柱は、植木鉢やプランタボックスの重量を支えることを当初予定して設計、製造されているわけではないため、強風や地震の影響で曲がり易くなり、折れてしまう虞がある。特に支柱の高さが高い場合には、このような問題が起こり易い。
【0005】
本発明は、外構フェンスの支柱の主に曲げ強度のアップを図って、棚部材の容易な後付けをも可能にしたライナー部材、このようなライナー部材を備えた外構用支柱構造、この外構用支柱構造を備えた外構フェンス構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外構フェンスの支柱にネジ部材によって固定されると共に、支柱に当接され且つ長手方向に沿って延在される固定片と、棚部材を支持するためのブラケットが装着されると共に、固定片に対して面同士が互いに平行に延在するブラケット支持片と、固定片とブラケット支持片とを連結する連結片と、からな
り、支柱の長手方向に延在する固定片とブラケット支持片と連結片とで断面コ字又はロ字状に形成され、ブラケット支持片には、ブラケットを固定するための締結部材が装着される取付け孔がブラケット支持片の長手方向に等間隔で設けられると共に、ネジ部材の頭部が貫通するネジ覗き穴が取付け孔の間に設けられていることを特徴とする。
【0007】
このライナー部材は、支柱の長手方向に沿って延在するようにセットされる固定片と、棚部材を支持するためのブラケット支持片と、固定片とブラケット支持片とを水平方向で平行に離間させた状態で連結させる連結片と、で立体構造をなしているので、固定片をネジ部材により支柱に固定させると、外構フェンスの支柱をライナー部材によって補強することができる。また、このライナー部材は、既存の外構フェンスの支柱に後付けでも施工可能である。既存の外構フェンスの支柱は、植木鉢やプランタボックスの重量を支えることは当初予定されておらず、植木鉢やプランタボックスの重量は支柱で支えられることからして、支柱が強風や地震の影響で曲がったり折れたりし易くなるので、支柱の曲げ強度のアップは必要であり、本発明は、これを実現している。特に、植木鉢やプランタボックスを載せた状態の棚部材が設置された支柱は、その高さが高ければ高いほど曲がり易くなっているので、このライナー部材による支柱の補強は効果的である。
【0008】
このような構成を採用すると、断面コ字又はロ字状のライナー部材であっても、ネジ部材によってライナー部材を支柱に取り付ける作業と、締結部材によってブラケットをブラケット支持片に取り付けると作業とを同じ側から行うことができるので、作業性が良好になる。
【0009】
本発明に係る外構用支柱構造は、請求項1又は2記載のライナー部材が支柱に形成された下穴にネジ部材によって固定されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る外構フェンス構造は、請求項3記載の外構用支柱構造と、隣接する支柱に固定された柵部材と、隣接するライナー部材にそれぞれ固定されたブラケットと、水平方向に延在して隣接するブラケットに掛け渡して固定された棚部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外構フェンスの支柱の主に曲げ強度のアップを図って、棚部材の容易な後付けをも可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る外構フェンス構造の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るライナー部材を支柱に固定した状態を示す正面図である。
【
図3】
図1のIII−III線に沿う断面図である。
【
図5】外構フェンスに他のブラケットが取り付けられた状態を示す断面図である。
【
図6】ライナー部材の第1の変形例を示し、(a)は横断面図、(b)は、支柱にライナー部材を固定した状態を示す正面図である。
【
図7】ライナー部材の第2の変形例を示し、(a)は横断面図、(b)は、支柱にライナー部材を固定した状態を示す正面図である。
【
図8】ライナー部材の第3の変形例を示し、(a)は横断面図、(b)は、支柱にライナー部材を固定した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るライナー部材、外構用支柱構造及び外構フェンス構造の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
アルミ材又はスチール材からなる外構フェンスは、通常、高さ600〜1500mmであるが、
図1に示すように、一般的にスクリーンと呼ばれている外構フェンス1は、高さ1800〜2700mmを有している。外構フェンス1は、建築物が建設される敷地の境界線上で等間隔に配置される断面矩形で中空状の支柱2と、支柱2に固定された柵部材3とを備えている。この柵部材10には、支柱2に固定される横桟10aに対して等ピッチで、縦桟10bが配列されている。
【0015】
図1〜
図4に示すように、外構フェンス1の支柱2には、アルミ材又はスチール材からなる長尺状のライナー部材5が固定されている。断面ロ字状に形成されているライナー部材5は、外構フェンス1の支柱2にタッピングネジ(ネジ部材)6によって固定されると共に、支柱2に当接され且つ長手方向(鉛直方向)に沿って延在される固定片7と、棚部材10を支持するためのブラケット20が装着されると共に、固定片7に対して面同士が互いに対面して平行に延在するブラケット支持片8と、固定片7とブラケット支持片8とを連結する左右一対の連結片9と、からなる。
【0016】
ライナー部材5の固定片7には、等間隔にネジ挿入孔7aが形成されている。ライナー部材5を支柱2に固定する際、固定片7を支柱2の表面に押し当てた状態で、現場でドリルによりネジ挿入孔7aを介して支柱2に下穴を形成し、その後、ネジ挿入孔7aからタッピングネジ6に差し込んで、支柱2にタッピングネジ6を螺着させる。これによって支柱2にライナー部材5が固定される。なお、支柱2には、工場で予め下穴加工が施されていてもよい。
【0017】
また、ライナー部材5のブラケット支持片8には、ブラケット20を固定するための締結部材12が装着される取付け孔13がブラケット支持片8の長手方向に等間隔で設けられる。更に、ブラケット支持片8には、タッピングネジ6の頭部6aが貫通するネジ覗き穴14が取付け孔13の間に設けられている。このネジ覗き穴14は、ネジ挿入孔7aに対向し、ブラケット20の取付けの邪魔にならないように、タッピングネジ6の頭部6aをブラケット支持片8から突出させることがない。そして、取付け孔13を等間隔に維持するために、ブラケット20の取付けネジ覗き穴14と取付け孔13とは、互いに同じ位置を避けて重ならないようになっている。
【0018】
棚部材3を外構フェンス1に取付け可能にする断面T字状のブラケット20は、水平方向に延在して棚部材3を下から支持する棚支持片21と、棚支持片21の基端から下方に向けて延在する脚片22と、棚支持片21の基端から上方に向けて延在する脚延長片23とからなる。脚片22には、ネジ挿通孔22aが設けられ、脚延長片23にもネジ挿通孔23aが設けられ、上側のネジ挿通孔23aと下側のネジ挿通孔22aの間隔はブラケット支持片8に形成されている取付け孔13の間隔と等しくなっている。
【0019】
また、棚支持片21には、棚部材3を固定するための取付け孔21aが形成されている。棚部材3は、一定間隔で平行に配列された複数の棚桟3aと、棚桟3aを互いに連結する連結桟3bと、からなる。そして、取付け孔21aは、棚桟3aの間に位置するように棚支持片21に形成されている。
【0020】
組立て時にドライバ等の工具を利用しない締結部材12は、円柱状の軸部12aと、軸部12aの先端側に設けられた雄ねじ部12bと、軸部12aの基端側に設けられた円形の握り部12cと、からなる手回しネジである。雄ねじ部12bは、タッピングネジとして形成され、各取付け孔13,21aに螺着される。この場合、状況に応じて軸部12aの長さの異なる3種類の手回しネジ12A,12B,12Cが利用されている。
【0021】
ブラケット20をライナー部材5に取り付けるにあたって、ライナー部材5の所望の高さ位置にある取付け孔13を利用者が選択し、手回しネジ12A,12Bの雄ねじ部12bを取付け孔13に螺着させることによって、ブラケット20の脚片22及び脚延長片23がライナー部材5に固定される。また、棚部材3をブラケット20に取り付けるにあたっては、棚部材3の棚桟3aの間に差し込まれた手回しネジ12Cによって、棚支持片21に棚部材3が固定される。
図1に示すように、棚部材3は、隣接する支柱2のそれぞれの任意の位置に固定されたブラケット20を掛け渡すように水平にセットされる。利用者の希望に応じた任意の段数の棚部材3を外構フェンス1にセットすることができ、この棚部材3上には、植木鉢Hが置かれ、場合によっては、プランタボックスが置かれることもある。
【0022】
日照や通風が確保し易い外構フェンス1にあっては、固定片7をタッピングネジ(ネジ部材)6により支柱2に固定させると、外構フェンス1の支柱2をライナー部材5で補強することができ、既存の外構フェンス1の支柱2にライナー部材5は後付けでも施工可能である。既存の外構フェンス1の支柱2は、植木鉢Hやプランタボックスの重量を支えることは当初予定されておらず、植木鉢Hやプランタボックスの重量は支柱2で支えられることからして、支柱2が強風や地震の影響で曲がったり折れたりし易くなるので、支柱2の曲げ強度のアップは必要であり、ライナー部材5の採用は、これを実現している。特に、外構フェンス1の高さが高ければ高いほど、植木鉢Hやプランタボックスを棚部材3上に載せた場合に、支柱2は曲がり易く、支柱2の補強は効果的である。
【0023】
また、ブラケット支持片8に、タッピングネジ6の頭部6aが貫通するネジ覗き穴14が取付け孔13の間に設けられていると、断面ロ字状のライナー部材5であっても、タッピングネジ6によってライナー部材5を支柱2に取り付ける作業と、手回しネジ12A,12Bによってブラケット20をブラケット支持片8に取り付けると作業とを同じ側から行うことができるので、容易な施工が可能になる。
【0024】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0025】
図5に示すように、他のブラケット30には、ブラケット20のような脚延長片23が設けられておらず、脚片22には、棚支持片21の近くに別のネジ挿通孔30aが設けられ、小型の手回しネジ12Dと大型の手回しネジ12Aによって脚片22はライナー部材5に固定される。
【0026】
図6に示すように、断面コ字状のライナー部材35の適用も可能である。このライナー部材35には、ライナー部材5と同様のネジ覗き穴14及び取付け孔13が設けられている。
【0027】
図7に示すように、断面ハット形状のライナー部材36の適用も可能である。このライナー部材36には、ブラケット支持片37と、このブラケット支持片37の両端から直角方に延在する連結片38と、各連結片38からフランジ状に延在する固定片39と、からなる。そして、固定片39には、タッピングネジ6の挿入を可能にするネジ挿入孔39aが形成され、ブラケット支持片37には、手回しネジ12A,12Bの螺着を可能にする取付け孔37aが形成されている。
【0028】
図8に示すように、断面Z形状のライナー部材40の適用も可能である。このライナー部材40には、ブラケット支持片41と、このブラケット支持片41の一端から直角に延在する連結片42と、連結片42からフランジ状に延在する固定片43と、からなる。そして、固定片43には、タッピングネジ6の挿入を可能にするネジ挿入孔43aが形成され、ブラケット支持片41には、手回しネジ12A,12Bの螺着を可能にする取付け孔41aが形成されている。
【0029】
前述した支柱2は、中空に限らず中実であってもよく、断面円形又は楕円形であってもよい(図示なし)。この場合は、ライナー部材5,35,36,40の固定片7,39,43は、断面円形又は楕円形の適応した断面凹状に成形したものを採用することが好ましいが、弾性のあるパッキン材等を挟んで固定の程度を上げることでもよい。
【0030】
棚部材3としては、棚板にルーズホールを1列又は複数列設けたものであってもよい。
【0031】
ライナー部材5,35,36,40にブラケット20,30を固定するための締結部材12(12A,12B,12D)としては、ブラケット20の脚片22からL字状のフック片(不図示)を突出させたものであってもよい。このフック片は、ライナー部材5の取付け孔13,37a,41aに引っ掛けられる。取付け孔13,37a,41aは、フック片の形状に合わせてスリット状にしてもよい。
【0032】
また、締結部材12(12A,12B,12C,12D)の他の例として、ドライバを利用する一般的なタッピングネジであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…外構フェンス、2…支柱、3…棚部材、5,35,36,40…ライナー部材、6…タッピングネジ(ネジ部材)6、6a…ネジ部材の頭部、7,39,43…固定片、7a…ネジ挿入孔、8,37,41…ブラケット支持片、9,38,42…連結片、柵部材…10、12…手回しネジ(締結部材)、13,37a,41a…取付け孔、14…ネジ覗き穴、20,30…ブラケット。