(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
【0022】
<電気化学センサ>
以下、本発明の実施形態に係る電気化学センサについて説明する。電気化学センサは、電気化学的反応を利用して特定の被検物質を検出するセンサであり、本実施形態ではバイオセンサが適用されている。バイオセンサは、生物または生物由来の材料を、被検物質を検出する素子として用いて、被検物質を測定、検出するために使用される。
【0023】
本実施形態における電気化学センサは、血液中のグルコース濃度(血糖値)を測定するために用いられるバイオセンサであり、グルコースセンサと呼ばれる。以下、電気化学センサは、単に「センサ」と表記する。
【0024】
図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る電気化学センサ(センサ)の構成例を模式的に示す平面図であり、
図1(B)は、
図1(A)に示したセンサを
図1(A)中のI−I線で切断した断面図を模式的に示す。
【0025】
図1(A)及び
図1(B)において、センサ10は、全体として、円形の平面形状を有する円板状を有している。センサ10は、円板状の基板11を含んでおり、基板11の一方の面(
図1(B)では上面)の中央部には、平面形状円形の凹部12が形成されている。凹部12の側壁は、凹部12の底面12aに向かって小径となるテーパ状に形成され、凹部12の面形状は、上端が開口された円錐台の内周面となっている。但し、凹部12の側壁がテーパを有することは必須の要件ではなく、凹部12を形成する面は、上端が開口された円柱内面で形成されていても良い。
【0026】
凹部12の中央(図では中心)には、基板11の一方の面と他方の面(
図1(B)では下面)とを連通させる貫通孔13が形成されている。貫通孔13の他方の面側(下面側)の開口部は、下面に形成された窪み14と連通している。窪み14は、本実施形態では略円錐台の内周面形状に形成されている。窪み14は、センサ10の他方の面の面形状が血液の採取部分(例えば、指の腹)と沿うように形成されている。
【0027】
なお、本実施形態において、貫通孔13は、基板の平面方向に直交する方向に形成されているが、直交する方向に形成されることは必須の要件ではなく、斜めに形成されていても良い。また、窪み14が形成されることは、必須の要件ではない。
【0028】
凹部12の周囲には、二つの第2凹部15A,15Bが形成されている。第2凹部15A,15Bは、凹部12の内径よりも小径の円形の平面形状を有し、凹部12と同様に、上端が開口され、底面に向かって小径となるテーパを有する円錐台内面形状を有している。
【0029】
基板11の上面には、血糖値測定に使用される複数の電極を構成する金属層が形成されている。複数の電極は、凹部12の底面12aから第2凹部15Aに亘って、電極引き出し線(リード部)と一体に形成された対極17と、凹部12の底面12aから第2凹部15Bに亘って、電極引き出し線(リード部)と一体に形成された作用極16とを備えている(
図3(A)参照)。
【0030】
作用極16及び対極17の夫々は、両電極間に電圧を印加して応答電流を取り出すための二つの外部端子と接続される。外部端子は、第2凹部15A,15Bの夫々に挿入されて金属層(作用極16,対極17)と夫々接触し、電気的な接続が図られた状態となる。外部端子として、例えばコネクタピンが適用される場合、各コネクタピンが、第2凹部15A,15Bに嵌るように挿入されると、コネクタピンは第2凹部15A(15B)の底面及び側面に設けられた金属層と接触することができる。このように、接触面積を増やすことができる点で、金属層が平面である場合に比べて良好な接触状態を得ることができる。また、コネクタピンが、基板11の面方向にずれるのを防止することもできる。但し、第2凹部15A,15Bが設けられることは、必須の要件ではない。
【0031】
凹部12の底面12aにおいて、作用極16は、貫通孔13を囲むように形成されており、対極17は、作用極16を囲むように形成されている(
図3(A)参照)。作用極16と対極17との間には、間隙(溝24、
図3(A)(B)参照)が形成されており、両者間は絶縁された状態となっている。
【0032】
電極上には、酵素を含む試薬層が固定化されている。
図1(B)に示す例では、酵素を含む試薬層19が、作用極16の上に形成されている。
【0033】
試薬層19を構成する反応試薬としては、例えば、酸化酵素であるグルコースオキシターゼ(GOD)およびメディエータとしてのフェリシアン化カリウムを含むものが採用される。上記反応部が血液によって溶解されると、公知の酵素反応が開始される結果、試薬層に共存させているフェリシアン化カリウムが還元され、還元型の電子伝達体であるフェロシアン化カリウムが蓄積される。その量は、基質濃度、すなわち血液中のグルコース濃度に比例する。一定時間蓄積された還元型の電子伝達体は、作用極16と対極17との間の電圧印加による電気化学反応により、酸化される。このときに生じる陽極電流(応答電流)と呼ばれる電流が、外部端子により取り出され、測定装置により測定されることで、血糖値を測定することができる。
【0034】
なお、血糖値を測定するための酵素としては、GODの他に、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を適用することができる。GDHの適用時におけるメディエータは、例えば、GODと同様のフェリシアン化カリウムを適用することができる。
【0035】
また、本実施形態では、電気化学センサとして、グルコースセンサの例を示しているが、試薬に含まれる酵素に、コレステロール脱水素酵素(CHDH)を用いて、センサ10をコレステロール測定のためのバイオセンサ(コレステロールセンサ)として利用するこ
とも可能である。
【0036】
基板12の上面は、凹部12の一部と、第1凹部15A,15Bを除き、カバー18によって被覆されている。凹部12がカバー18によって被覆されることにより、凹部12及びカバー18で囲まれた空間は、キャピラリとして機能し、貫通孔13は、窪み14側から流入する体液(本実施形態では血液)を凹部12(キャピラリ)へ導入する液体通路として機能する。
【0037】
このように、本実施形態に係るセンサ10(電気化学センサ)は、凹部12(キャピラリ)の直下において、基板11の厚さ方向に液体流路(貫通孔13)が形成されている。すなわち、センサ10は、凹部12の底面と基板11の他方の面とを連通させる液体流路として機能する貫通孔13を備えている。そして、センサ10の他方の面から、血液が貫通孔13を毛管現象により吸引されて凹部12に導入される。従って、従来技術のように、液体流路が基板11の平面方向に形成される場合よりも、基板11の平面方向サイズを小さくすることができる。よって、電気化学センサの小型化を図ることができる。
【0038】
カバー18には、凹部12の上方を外部と連通させる、キャピラリの空気孔(空気流路)として機能する開口部18aが形成されている。
図1(A)に示す例では、開口部18aは、凹部12のほぼ中央に設けられ、センサ10を平面視したときに、開口部18aと貫通孔13とが重なりを有するように形成されている。このような、重なりを有することは必須の要件ではない。凹部12と外部とを連通させる空気孔として機能する開口部18aが凹部上方に形成されていれば良い。後述するように、ランセットの穿刺針が貫通孔13を通過する構成が採用される場合には、貫通孔13と開口部18aとが重なりを有するように構成される。
【0039】
また、カバー18には、第2凹部15A,15B上に形成された、外部端子を第2凹部15A,15Bに挿入させて外部端子を電極(対極17,作用極16)と接触させるために使用される開口部18b,18cが形成されている。
【0040】
<センサの製造方法>
次に、上述したセンサ10の製造方法について説明する。
図2及び
図3は、センサの製造方法の例を示す説明図である。なお、
図2及び
図3は、一つのセンサ10の製造工程を図示しているが、実際には、一つのプラスチック基板20から複数のセンサ10が形成される。また、
図2及び
図3に関して、
図2(A)(B)及び
図3(B)(C)に示された断面の模式図は、
図3(A)に示したX−X線で切断した場合の断面を示す。
【0041】
最初に、基板11となるプラスチック基板20を用意し、
図2(A)に示すように、基板11を構成するプラスチック基板の一方の面21に凹部12,第2凹部15A,15Bを形成するとともに(
図3(A)参照)、他方の面22に窪み14を形成する。さらに、凹部12と窪み14とを、基板20の厚さ方向で連通させる貫通孔13を形成する。
【0042】
プラスチック基板20は、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン(PP),ポリエチレン(PE),ポリカーボネートのような熱可塑性樹脂,ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂のような、人体への害がなく、適当な絶縁性及び可撓性を有する樹脂を適用することができる。
【0043】
凹部12,第2凹部15A,15B,窪み14,貫通孔13は、圧縮法、トランスファー法、射出法等の様々なプラスチック成型法を用いて形成することができる。プラスチック成型法を用いる場合には、凹部12,第2凹部15A,15B,窪み14,貫通孔13は成型工程で一時に形成することができる。
【0044】
もっとも、凹部12,第2凹部15A,15B,窪み14,貫通孔13は、レーザ照射や機械加工により基板20に形成することも可能である。この場合、
図2(A)の例では、凹部12,第2凹部15A,15B,窪み14,貫通孔13の形成順は適宜設定可能であり、一時にまとめて行う必要もない。
【0045】
次に、
図2(B)に示すように、プラスチック基板20の一方の面に、金属層23を形成する。金属層23は、例えば、金や白金等の金属を物理蒸着(PVD,例えばスパッタリング)、或いは化学蒸着(CVD)により形成することができる。
【0046】
次に、一方の面21に複数の電極を形成する。
図3(A)は、金属層23が形成された状態の基板20を平面視し、且つ作用極16及び対極17が形成された状態を示す。
図3(A)に示すように、一方の面21上に形成された金属層23に対し、レーザでトリミングを行うことで、作用極16及び対極17を形成する。
【0047】
具体的には、凹部12から第2凹部15Bに亘って電極引き出し線を含む作用極16の電極パターン(第1の電極パターン)が形成されるようにレーザ照射が行われることによって作用極16が形成される。また、凹部12から第2凹部15Aに亘って電極引き出し線を含む対極17の電極パターン(第2の電極パターン)が形成されるようにレーザ照射が行われることによって対極17が形成される。
【0048】
レーザが照射された部分は、金属層が除去されて溝24が形成された状態となる。これによって、レーザの照射部分を境に、対向する金属層は絶縁された状態となる。よって、凹部12において、レーザ照射による金属層除去で形成された溝24(
図3(A)(B)参照)を隔てて、作用極16と対極17とは絶縁された状態となっている。このように、電極の形成にレーザトリミングが適用される場合には、凹部12の側壁に適正な溝24を形成すべく、凹部12の側壁は、底面に向かって小径となるテーパを有する(例えば、凹部12の断面形状が底辺が上辺より短い台形となる)ように形成されるのが好ましい。
【0049】
次に、作用極16上に、試薬層19を形成(固定化)する。試薬層19は、例えば分注法により形成可能である。続いて、プラスチック基板20の一方の面21側がカバー18により被覆される。カバー18は、例えばシート状のPETを用い、一方の面21上に配置して熱融着により取り付けることができる。カバー18として、予め開口部18a,18b,18cが形成されたカバー材料を用いても良く、カバー材料の取り付け後(熱融着後)に開口部18a,18b,18cを形成しても良い。
【0050】
そして、プラスチック基板20が裁断されることにより、プラスチック基板20から複数のセンサ10が切り出される。
【0051】
<変形例>
図1(A)に示した例では、センサ10の平面形状は円形としたが、平面形状は、三角形及び矩形を含む多角形、楕円であってもよい。もっとも、センサ10の平面形状を
図4に示すような三角形、
図5に示すような台形とすることもできる。
【0052】
平面形状が三角形にされる場合には、平面形状を他の形状にする場合に比べて、一つのプラスチック基板20から得られるセンサ10の数を増やすことができる。一つのプラスチック基板20から得られるセンサ数を増やす観点からは、三角形は正三角形であることが好ましい。また、センサ10の平面形状を三角形の一つの頂点が切り取られた等脚台形とする場合にも、同様の効果を得ることができる。センサ10の平面形状を台形とすることで、センサ10の方向を決めるのが容易となる。
【0053】
センサ10の平面形状が三角形や台形で形成される場合には、
図4、
図5に示すように、第2凹部15A,15Bは、
図1に示すような凹部12に対する直線配置でなく、例えば、三角形又は台形の中心と、三角形又は台形の底辺が他の辺と作る各頂点とを結ぶ直線上に配置される。この場合、
図4のII−II線でセンサ10を切断したときの断面、
図5のIII−III線でセンサ10を切断したときの断面は、
図1(B)に示した構造と同様の構造を有する。もっとも、凹部12に対する第2凹部15A,15Bの位置は適宜設定可能である。また、第2凹部15A,15Bの平面形状も適宜設定可能である。
【0054】
また、凹部12の平面形状は、
図1(A)に示す例では円形としたが、
図4に示すように、平面形状が三角形のセンサ10では三角形の凹部12を形成し、
図5に示すように、平面形状が台形のセンサ10である場合には、台形とするのが好ましい。このように、凹部12の平面形状をセンサ10の平面形状と同一の形状(特に相似形)にすると、凹部12によって形成されるキャピラリの容積を最大に近づけることができる点で好ましい。
【0055】
また、凹部12の平面形状が三角形の場合には、当該三角形の中心に貫通孔13が位置する一方で、三つの開口部18aが凹部12の三角形の各頂点と重なるように配置されるのが好ましい。このようにすれば、凹部12の中心に設けられた血液の導入口(貫通孔13の上端)と各空気孔(各開口部18a)との距離が最も遠い位置に配置された状態となり、且つ、凹部12の中心から貫通孔13を通って流入する血液が凹部12内で均等に広がる状態とすることができる。よって、血液が空気孔(開口部18a)に到達して気泡がなくなるまでの時間を長くすることができる。
【0056】
また、上記した実施形態に係るセンサ10の例では、試薬層19が作用極16上に形成される例について説明した。但し、試薬は、作用極16と対極17とに跨って配置されても良い。試薬層19は、作用極16の上面全体を被覆するのが好ましいが、対極17に跨る場合には、対極17の一部を被覆していれば良い。
【0057】
<体液測定装置及びランセット>
次に、上記したセンサ10を適用可能な体液測定装置及びランセットについて説明する。
図7は、実施形態に係る体液測定装置の全体外観図、
図8(A) は、穿刺体が退避し
た状態における装着体の詳細を示す拡大縦断面図であり
図4 のIV−IV線に沿う断面
に相当する図である。
図8(B)は、穿刺体が進出した状態における装着体の詳細を示す拡大縦断面図である。
図9(A)は、装着体の底面図であり、
図9(B)は、センサを外した状態での装着体の底面図である。
【0058】
図7〜
図9に示されるように、体液測定装置30は、本体40と装着体50(ランセット本体に相当)とを組み合わせて使用される。本体40は、その上面にスイッチボタン類(図示せず)、LCD表示器32などが配置されている。本体40の前部には筒状部41が延出形成されており、筒状部41の先端部には、後述するキャップ状の装着体50が装着されている。
【0059】
本体40の内部には、装着体50が備える穿刺体61を前進駆動するための駆動機構(71,72) 、および、マイクロコンピュータ等の電子回路等が内蔵される。駆動機構
は、
図1において本体30の後部に設けられ、使用者が手動によって押圧するための押圧部71を含んでいる。
【0060】
次に、
図8(A),
図8(B),
図9(A)及び
図9(B)を用いて装着体50の構成例を説明する。装着体50は、円筒部54と、円筒部54内において、円筒部54の先端を塞ぐように位置する底壁部55とを備える大略キャップ状に形成されている。円筒部5
4及び底壁部55の主要部分は樹脂成形によって作製されても良い。
【0061】
本体40の筒状部41の末端部41aは、筒状部41の基端部より小径に形成されており、円筒部54の内径は、筒状部41の末端部41aの外径と対応しており、末端部41aに被せることで装着体50が末端部41aに嵌って固定された状態となる。このように、装着体50は、本体40の所定部位(筒状部41の末端部41a)に対して簡便に着脱自在に取り付けることができる。底壁部55の外面は、上述したセンサ10(
図1参照)を装着するための装着面として機能する。
【0062】
装着体50の底壁部55には、穿刺体61が組み込まれている。さらに、センサ10の側面が円筒部54の内周壁54aに嵌め込まれ、センサ10の上面が底壁部55の下面に当接した状態となってセンサ10が装着体50に装着された状態となっている。底壁部55には、中心に開口部155a(
図9(B)参照)を有する円板壁55a,円筒壁55b,及び底壁55cを有する円筒状の収容部55Aが装着体50の中心位置に形成され、収容部55Aの底壁55c には、中心孔55dが開けられている。
【0063】
穿刺体61は、中心孔55dにスライド可能に嵌合するガイド軸部61aと、このガイド軸部61aの一端に一体形成されたフランジ部61bとを有する樹脂製のガイド体61Aに金属製の穿刺針61cが同軸で一体に取り付けられた形態を有している。
【0064】
収容部55A内において、フランジ部61bの下面と円筒壁55aの上面との間には、弾性体67が介装されている。
図8(A)(B)に示す例では、弾性体67は、フランジ部61bを円板壁55aから離間する方向に押し上げる(付勢された)コイルバネである。もっとも、コイルバネの代わりに、発砲ウレタンを用いることもできる。或いは、弾性体37は、樹脂製のガイド体61A と一体成形された板状バネの形態を適用することも
できる。
【0065】
弾性体67により、フランジ部61bは、
図8(A)に示す退避位置(第1の位置)、すなわち、フランジ部61bが底壁55cに当接する位置に向けて付勢される。退避位置において、ガイド軸部61aの後端(上端)は、収容部55Aから突出した状態となり、穿刺針61cの先端部は、収容部55A内に退避した状態となる。
【0066】
上述したように、装着体50には、穿刺体61が収容された収容部55Aを覆うようにして、センサ10が取り付けられる。上記では、センサ10は円筒部54の内部に嵌め込まれる例を示したが、センサ10は、底壁部55に貼着されるようにしても良い。
【0067】
センサ10は、一方の面(上面)を底壁部55に対向する状態で、センサ10の平面方向が円筒部54の中心軸に対して直交する状態で取り付けられる。この装着状態において、センサ10の開口部18a(空気孔)及び貫通孔13(液体流路)は、円筒部54の軸方向において穿刺針61cと略同軸で配置される(
図9(a))。
【0068】
図8(A)及び(B)、並びに
図9(A)及び(B)に図示されるように、装着体50の底壁部55には、センサ10の第2凹部15A,15Bと対応する位置に、丸孔162a,162bが形成されている。丸孔162bは、装着体50を本体30(筒状体40)に装着したときに、本体20内に設けられたコネクタピン35a,35aの一方の先端を第2凹部15B上に形成された金属層、すなわち作用極16の電極引き出し線と接触させるために使用される。一方、丸孔162aは、装着体50を本体30(筒状体40)に装着したときに、本体20内に設けられたコネクタピン35a,35aの他方の先端を介して第2凹部15A上に形成された金属層、すなわち対極17の電極引き出し線と接触させるために使用される。
【0069】
一方、本体30の筒状部41内には、その軸方向において、一対のピンコネクタ35,35が並列配置されており、ピンコネクタ35,35の先端部から上記コネクタピン35a,35aが夫々弾性的に突出するように構成されている。一方のコネクタピン35aは、丸孔162a,センサ10の開口部18cを通過して第2凹部15Bに挿入され、作用極16の電極引き出し線と接触する。他方のコネクタピン35aは、丸孔162b,センサ10の開口部18bを通過して第2凹部15Aに挿入され、対極17の電極引き出し線と接触する。
【0070】
ピンコネクタ35,35は、
図10に示すように、電子回路33に接続されている。この電子回路33は、マイクロコンピュータ,メモリなどで構成され、マイクロコンピュータがメモリに格納されたプログラムを実行することによって、後述するようにセンサ10のキャピラリ内で生じる酵素反応および電気化学反応によって生じる作用電流(応答電流)から検量線を用いて血糖値等の被検知物質の測定値を決定するとともに、測定値を本体40の表面に配された表示器32に表示する機能を有する。
【0071】
また、本体40内には、
図7に示した押圧部71の押圧操作に応じて、本体40の筒状部41内を筒状部41の軸方向に進退する押圧ロッド72が配置されている。押圧ロッド72は、図示しないバネによって押圧部71側(後方側)に付勢されている。このようにして、押圧部71及び押圧ロッド72を含む駆動機構が構成されている。これにより、押圧部71が押されると、押圧ロッド72がバネの付勢力に抗して前方側(先端側)へ移動し、ガイド軸部61aの後端部と当接して、穿刺体61Aを前方へ押し出す。
【0072】
これによって、穿刺体61Aの穿刺針61cの先端部は、センサ10の開口部18a,及び貫通孔13を通ってセンサ10の下面から外方に突出する第2の位置へ移動する。このため、穿刺針61cの外径は、貫通孔13の内径より小径に形成されている。
【0073】
収容部55A内は、フランジ部61bの側面と円筒壁55bの内周面とが接触した状態となっており、フランジ部61bが退避位置から前方(下方)へ進出したとき、貫通孔13が塞がれていなければ、収容部55A内の空気は貫通孔13を通って外気へ排出される。これに対し、貫通孔13の下端が皮膚などで塞がれていても、収容部55A内の空気が縮むことで、フランジ部61bは進出可能になっている。この場合、押圧ロッド72が後退し、フランジ部61bが弾性体67の付勢力によって後方(上方)に押し上げられた場合には、収容部55A内に負圧が発生する。この負圧は、センサ10の窪み14に存在する流体を貫通孔13を介して凹部12(キャピラリ)内に引き込む作用を引き起こす。従って、穿刺針61cの後退時に、窪み14内に存する流体(血液)は、毛管作用だけでなく、収容部55A内に生じた負圧によって、貫通孔13(液体流路)を通って凹部12に導入されることになる。
【0074】
なお、駆動機構としては、図示の例に限らず、軸方向移動可能であってしかも軸方向の中立位置に弾性復帰するように押圧ロッド72を設け、この押圧ロッド72を後方に引き絞ってラッチ保持し、ラッチ解除ボタンを押すことでこの押圧ロッド72が勢い良く前方へ進出し、押圧ロッド72が穿刺体61のガイド軸部61a の後端を勢いよく打ちつけ
、これにともなって穿刺針61cが瞬間的にセンサ10の他方の面(下面)から突出するように構成することも可能である。
【0075】
また、装着体50を本体40に装着したときにセンサ10の端子部(作用極16及び対極17の夫々の電極引き出し線)と導通接触するべく本体40内に設ける端子(外部端子)は、前述したように常時ピンが弾性的に突出するピンコネクタ35を適用する以外に、たとえば、装着体50の本体40への装着と連動して、装着体50が装着されていないと
きには端子ピンが本体内に退動しており、装着体50が装着されると端子ピンが本体から突出してバイオセンサの端子部との適切な導通接触が図られるように構成することも可能である。
【0076】
次に、上記構成を備える体液測定装置30の使用方法ないし動作を
図7〜
図10を参照しつつ説明する。
【0077】
装着体50、すなわちセンサ一体型ランセットは、使い捨て消耗品として提供され、体液測定装置30の使用にあたり、使用者は装着体50を本体40の筒状部41に装着する(
図7参照)。
【0078】
装着体50はキャップ状に形成されているため、このような装着作業は容易に実施することができる。装着体50が装着されると、
図8(A) に図示されるように、本体40
内に収容されたコネクタピン35a,35aの先端が、装着体50の底壁部55の丸穴162a,162b,センサ10の開口部18b,18cを介して第2凹部15A,15Bに自動的に接触する。これにより、対極17及び作用極16が測定装置30と電気的に接続された状態となる。
【0079】
装着体50の先端、すなわちセンサ10の下面を使用者又は患者の皮膚の適当な部位、たとえば指先や耳たぶに押し当てる。このとき、センサ10の下面には、窪み14が形成されているので、センサ10の下面を皮膚に良好な状態で接触させることができる。
【0080】
このような状態で、押圧部71(
図7)が押し下げられると、本体40内部に収容された押圧ロッド72の先端が穿刺体61のガイド軸部61aの後端部を押し、押圧ロッド72の先端が収容部55Aに当接するまでのストロークを以て、退避位置(第1の位置)にある穿刺体61を弾性体67の弾力(付勢力)に抗して前方に押し出す。
【0081】
このとき、穿刺体61の穿刺針61cは、センサ10の開口部18a,凹部12,及び貫通孔13を通ってセンサ10の下面から所定の長さだけ突出する(第2の位置(進出位置)へ進出する:
図8(B)参照)。押圧部71への押圧が解除されると、押圧ロッド72は図示しないバネの弾力によって元の位置まで復帰動する。また、穿刺体61も弾性体67の弾力によって穿刺針61cの先端が収容部55A内に没入する退避位置(第1の位置)まで復帰する(
図8(A)参照)。
【0082】
穿刺針61cの突出により、皮膚に適度な傷がつけられ、この傷から流出した血液が、毛管現象及び穿刺体61の後退により収容部55A内に生じた負圧によって、貫通孔13
を介して凹部12内、すなわちキャピラリに導入される。すなわち、血液は、貫通孔1
3の長さか、それよりやや長い距離を流れれば、目的位置であるキャピラリ内に導入されるので、少量の血液で、且つ短い時間でキャピラリ内を血液で満たすことができる。
【0083】
したがって、使用者は、出血部の血液量を目視確認しなくとも、センサ10を皮膚に押し付けた状態で上記押圧操作を行い、押圧を解除して上記状態を所定時間保持するだけで、測定に必要十分な血液をセンサ10のキャピラリ(凹部12)に導入することができる。
【0084】
凹部12内において、試薬層19が血液によって溶解されると、試薬層19に含まれる酵素(GOD)による酵素反応が開始される結果、試薬層19に共存させているフェリシアン化カリウムが還元され、還元型の電子伝達体であるフェロシアン化カリウムが蓄積される。
【0085】
フェロシアン化カリウムの蓄積量は、基質濃度、すなわち血液中のグルコース濃度に比例する。一定時間蓄積された還元型の電子伝達体は、作用極16と対極17との間への電圧印加による電気化学反応により、酸化される。
【0086】
測定装置30の本体40内の電子回路43は、ピンコネクタ35,35を介して測定される作用電流(応答電流)から、グルコース濃度(血糖値) を演算・決定し、表示器3
2に表示する。
【0087】
このように、体液測定装置30によれば、装着体50を本体40の所定部位に装着するという簡単な前準備をした後、装着体50の前面に装着されたセンサ10を患者の指先や耳たぶ等に押し当てた状態を保持しつつ、あたかも従来のランセットを扱うようにして穿刺針61cを突出させるという操作をするだけで、それ以上の操作、あるいは動作を要することなく、血糖値等の体液測定を適正に行うことができる。また、使用後は、装着体50の側面を持って本体40から取り外し、廃棄することで、血液に触れることなく装着体50を廃棄可能である。
【0088】
なお、
図7〜
図10に示した例では、センサ10はランセットである装着体50と一体に形成される例について示した。もっとも、本実施形態で示したセンサ10は、単独使用、すなわち、センサ10を指等でつまみ、ランセット等を用いて皮膚から流出した血液にセンサ10の下面を押し当てることで、キャピラリを血液で見たし、その後、測定装置にセンサ10をセットして、血液の測定を図ることができる。
【0089】
また、
図11(A)(B)に示すように、上記した装着体50が装着されるランセット140にセンサ10が適用されても良い。
図11(A)(B)に示す例では、ランセット140は、センサ10との電気的な接続を行うための構成要素(ピンコネクタ35,35)を持たず、押圧ロッド72と一体化された押圧部173が本体141内に設けられた引きバネ142,142によって本体141の後方へ突出するようにされている。このようなランセット140では、押圧部173を押すことで、穿刺針61cをセンサ10の下面から突出させて、凹部12を血液で満たすことができる。
【0090】
その後、本体141から装着体50を取り外し、
図12に示すような本体40の筒状部41の末端部41aに装着体50を装着する。
図12に示す本体41内には、押圧ロッド72は設けられていない。また、図示しないが、
図7に示す測定装置30の外観から、押圧部71が省略される。これに対し、
図12に示す本体41内には、ピンコネクタ35,35が収容されており、上記と同様の作用を以て、コネクタピン35a,35aが作用極16及び対極17と自動的に接触して、センサ10と測定装置30とが電気的に接続される。
【0091】
或いは、
図11に示したランセット140の構成に代えて、本体141と装着体50とが一体に形成される代わりに、センサ10がランセットから着脱自在にされ、キャピラリ(凹部12)が血液で満たされたセンサ10を測定装置(図示せず)にセットするようにしても良い。このとき、ランセットの先端部にチャック機構を設け、センサ10がチャック機構により保持されるようにすることができる。
【0092】
なお、上述した実施形態に係るランセット(装着体50、ランセット140)の構成例において、ランセットに対し、空気孔(開口部18a)が予め形成されているセンサ10が装着されている例を示した。もっとも、実施形態に係るランセットの構成では、穿刺針61cが貫通孔13を通過するために穿刺針61cはセンサ10のカバー18を通過するので、結果として空気孔をカバー18に形成することができる。このため、空気孔は予め形成しないことが考えられる。
【0093】
また、穿刺針と連動する穿刺針より大径の別の針をランセット内に設け、穿刺針の進出に応じて別の針も進出し、カバーの適宜位置に空気孔を形成する構成を適用することができる。
【0094】
もっとも、穿刺針61cや別の針により形成される空気穴に対する信頼性の観点では、穿刺針61cの外径より大きい内径を有する開口部18a(空気孔)を予め形成しておくのが好ましい。
【0095】
また、
図7〜
図12に示した例では、平面形状が円形のセンサ10を例示したが、本実施形態に係る体液測定装置30(装着体50,本体40)、ランセット140は、センサ10の平面形状と無関係に適用可能である。例えば、
図4〜6に示したようなセンサ10を適用し得る。但し、装着体50におけるセンサ10の装着部の形状は、センサ10の平面形状に応じて、センサ10を保持可能に(例えば、センサ10を嵌め込み可能に)変形される。また、ピンコネクタ35、35及び丸孔162a,162bの位置が、第2凹部15A,15Bの位置に応じて変更される。