(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661434
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型
(51)【国際特許分類】
B68G 15/00 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
B68G15/00
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-260695(P2010-260695)
(22)【出願日】2010年11月23日
(65)【公開番号】特開2012-110450(P2012-110450A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2013年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−142244(JP,A)
【文献】
特開2002−240099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B68G 15/00
B68G 11/04
A47C 27/14
B29C 51/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下型とその下型の開口を閉じる上型と含み、その下型がそれの型内壁に無数の吸気穴を明け、そして、その無数の吸気穴の形状が表皮材に接する側を微小穴に、前記下型の底面を前記微小穴よりも大きな大穴にそれぞれ形成し、この微小穴と大穴とでテーパ形状にされるところの表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型。
【請求項2】
その無数の吸気穴のテーパ形状は、その微小穴の直径を0.3mm程度に、その表皮材に接する側に対して前記大穴の直径を1mmないし3mm程度にそれぞれ設定する請求項1に記載の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、優れた外観品質を呈する表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型に関し、詳細には、型構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、自動車シートでは、表皮付きクッション体を一体発泡で成形する際は、下型の型内壁に無数の吸気小穴を適宜の間隔で穴明けし、表皮材をその下型内に配置し、その型内壁と型外壁で密閉された空間内を真空にすることによってその表皮材をその下型の型内面に密着させ、その表皮材をその下型のその型内面の形状に沿わせて予め、その表皮材を所定の形状に成形させた後に上型でその下型の開口を閉じ、そして、その後に発泡ウレタン原液を型内に注入して発泡させ、所定のクッション体形状を得るところの表皮付き一体発泡成形体の製造方法は知られている。
【0003】
ところが、その下型の型内壁に明けた無数の吸気小穴が、一体発泡されたクッション体の表面、すなわち、表皮の外観に不具合を引き起こす要因になるところがあった。
その無数の吸気小穴は、ドリル加工により直径1mmないし3mm程度のストレート穴に穴明けされるので、高級タイプではその表皮材に毛足の長いファブリックを、廉価タイプではその表皮材に毛足が殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどを用いると、その毛足の長いファブリックでは、その下型が吸気されると、長い毛がその小穴に吸い込まれて他側に伸び、発泡ウレタン原液を型内に注入して発泡させた後にその型から取り出すと、その表皮付きクッション体はその無数の吸気小穴の箇所で毛足の長い部分とその無数の吸気小穴無しの箇所で毛足の短い部分ができて外観が不具合になり、一方、その薄手の生地やビニール・レザーでは、その下型が吸気されると、その小穴に部分的に吸い込まれてその生地やそのビニール・レザーの内側面にへこみを生じ、発泡ウレタン原液を型内に注入して発泡させて後にその型から取り出すと、その表皮付きクッション体はその吸気小穴の箇所で小突起が形成されて外観が不具合になった。
【0004】
そのような外観不具合を解消するには、その吸気小穴の径を微小にすればよいが、ドリルの刃は直径1.0mm程度が限界であるに加えてその型の内壁の肉厚が5mm程度あるので、極細ドリムではドリル刃が製造困難で穴明け作業時にドリル刃が折れるなどにより穴明けが不可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
特開2008−142244公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明の課題は、ドリルで下型の内壁に無数の微小穴を穴明け可能にし、ドリル刃が折れることもなくしてドリルで穴明け作業ができて下型が廉価に製造可能になり、そして、表皮に毛足の長いファブリック、毛足の殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどの表皮材が用いられる場合にも表皮付き一体発泡成形体の表面に無数の毛足の長い部分および毛足の短い部分ができることや無数の小突起ができることが未然に回避されてその表皮付き一体発泡成形体が優れた外観品質を呈するところの表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型は、下型とその下型の開口を閉じる上型と含み、その下型がそれの型内壁に無数の吸気穴を明け、そして、その無数の吸気穴の形状が表皮材に接する側を微小穴に、
前記下型の底面を前記微小穴よりも大きな大穴にそれぞれ形成し、この微小穴と大穴とでテーパ形状にされる。
【発明の効果】
【0008】
この発明の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型では、無数の微小穴がドリルで下型の型内壁の表皮材に接する側に穴明け可能になり、ドリル刃が折れることもなくしてドリルで穴明け作業ができて下型が廉価に製作可能になり、そして、表皮に毛足の長いファブリック、毛足の殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどの表皮材が用いられる場合にも表皮付き一体発泡成形体の表面に無数の毛足の長い部分および毛足の短い部分ができることや無数の小突起ができることが未然に回避されてその表皮付き一体発泡成形体が優れた外観品質を呈し、そして、商品価値が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】乗用車のフロント・シートのシート・クッションの表皮付きシート・クッション体の製造に活用される状態でこの発明の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型の具体例を示した断面図である。
【
図2】
図1に示された下型を部分的に拡大して示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型は、下型とその下型の開口を閉じる上型とを含み、その下型がそれの型内壁に無数の吸気穴を明け、そして、その無数の吸気穴の形状が表皮材に接する側を微小穴にするようにテーパ形状にされる。
【0011】
その無数の吸気穴のテーパ形状は、その微小穴の直径を0.3mm程度に、その表皮材に接する側に対して他側の直径を1mmないし3mm程度にそれぞれ設定する。
【実施例1】
【0012】
以下、特定されて図示された具体例に基づいて、この発明の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型を説明するに、
図1および
図2は、乗用車のフロント・シートのシート・クッションの表皮付きシート・クッション体30の製造に活用ざれる状態でこの発明の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型の具体例10を示し、そして、この型10は、下型11とその下型11の開口14を閉じる上型12で成形型に構成される。
【0013】
その下型11は、キャビティ18を形成する型内壁15とその型内壁15を囲む型外壁16で内部に密閉された空間17を形成する構造に作られ、その下型11がドリル(図示せず)でそれの型内壁15に無数の吸気穴19を明け、そして、その無数の吸気穴19の形状が表皮材33に接する側20を微小穴21にするようにテーパ形状に形成される。
【0014】
その無数の吸気穴19のテーパ形状は、その微小穴21の直径を0.3mm程度に、その表皮材33に接する側20に対して他側22の直径を1mmないし3mm程度にそれぞれ設定されるのであるが、この型10のその下型11では、
図2に示されたように、その無数の吸気口19のテーパ形状は、その微小穴21の直径0.3mmにその表皮材33に接する側20に対して他側22の直径を3mmにそれぞれ設定された。
【0015】
さらに、この下型11は、それの型外壁16に複数の排気口23を備え、そして、ホース(図示せず)でそれら排気口23を真空ポンプ(図示せず)に接続している。
【0016】
その上型12は、その下型11の開口14、すなわち、そのキャビティ18を閉じる通常の蓋形に作られている。
【0017】
次に、その表皮付きシート・クッション体30の一体発泡成形について述べるに、この型10では、先ず、その下型11のそのキャビティ18内に表皮材33を配置し、その型内壁15とその型外壁16で密閉された空間17をその真空ポンプに接続してその真空ポンプでその空間17内の空気を排出して真空にすることによってその表皮材33をその下型11の型内面13に密着させ、その表皮材33を所定の形状に成形させた後に注入機(図示せず)で発泡ウレタン原液をその下型11内に注入し、そして、その上型12でその下型11のその開口14を閉じ、その注入された発泡ウレタン原液を発泡させてその表皮付きシート・クッション体30に一体発泡成形する。勿論、その発泡ウレタン原液は、その上型でその下型11のその開口14を閉じた後に注入されてもかまわない。その場合、その上型12にはその注入機の注入口を入れる注入穴が必要になる。
【0018】
したがって、この型10では、その無数の微小穴21がそのドリルでその下型11の型内壁15のその表皮材33に接する側20に穴明け可能になり、ドリル刃が折れることもなくしてそのドリルで穴明け作業ができてその下型が廉価に製作可能になり、そして、表皮32に毛足の長いファブリック、毛足の殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどの表皮材33が用いられる場合にもその表皮付きシート・クッション体30の表面に無数の毛足の長い部分および毛足の短い部分ができることや無数の小突起ができることが未然に回避されてその表皮付きシート・クッション体30が優れた外観品質を呈し、そして、商品価値が高められる。
【0019】
先に図面を参照して説明されたところのこの発明の特定された具体例から明らかであるように、この発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって、この発明の内容は、その発明の性質(nature)および本質(substance)に由来し、そして、それらを内在させると客観的に認められる別の態様に容易に具体化される。勿論、この発明の内容は、その発明の課題に相応し(be commensurate with)、そして、その発明の成立に必須である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
上述から理解されるように、この発明の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型は、下型とその下型の開口を閉じる上型とを含み、その下型がそれの型内壁に無数の吸気穴を明け、そして、その無数の吸気穴の形状が表皮材に接する側を微小穴にするようにテーパ形状にされるので、この発明の表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型では、無数の微小穴がドリルで下型の型内壁の表皮材に接する側に穴明け可能になり、ドリル刃が折れることもなくしてドリルで穴明け作業ができて下型が廉価に製作可能になり、そして、表皮に毛足の長いファブリック、毛足の殆どない薄手の生地やビニール・レザーなどの表皮材が用いられる場合にも表皮付き一体発泡成形体の表面に無数の毛足の長い部分および毛足の短い部分ができることや無数の小突起ができることが未然に回避されてその表皮付き一体発泡成形体が優れた外観品質を呈し、そして、商品価値が高められ、その結果、自動車シートにとっても非常に有用で実用的である。
【符号の説明】
【0021】
10 表皮付き一体発泡成形体の製造に用いる型
11 下型
12 上型
13 型内面
14 開口
15 型内壁
16 型外壁
17 空間
18 キャビティ
19 吸気穴
20 表皮材に接する側
21 微小穴
22 表皮材に接する側に対して他側
23 排気口
30 表皮付きシート・クッション体
31 シート・クッション体
32 表皮
33 表皮材