(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661452
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】スパッタリング方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20150108BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20150108BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20150108BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
C23C14/34 M
C23C14/34 C
C23C14/06 A
H01L21/28 301R
H01L21/285 S
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-291234(P2010-291234)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-136756(P2012-136756A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227294
【氏名又は名称】キヤノンアネルバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143395
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 今日文
(74)【代理人】
【識別番号】100158218
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 さより
(72)【発明者】
【氏名】南 卓士
【審査官】
末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−342725(JP,A)
【文献】
特開2006−124811(JP,A)
【文献】
特開2007−107023(JP,A)
【文献】
特開2007−042870(JP,A)
【文献】
特表2010−507728(JP,A)
【文献】
特開2006−130375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに材料が異なるターゲットが取り付けられた2つのターゲットホルダーが配された真空容器内において、前記真空容器内に不活性ガス及び反応性ガスが導入された状態において、前記ターゲットホルダーにそれぞれ一定の電力を印可して、前記2つのターゲットを同時にスパッタリングすることで基板に前記2つのターゲットの材料の混合物を含有する膜を成膜する際に、前記2つの各ターゲットと反応して反応生成物を生じせしめる前記反応性ガスの量が各ターゲットによって異なることによって、スパッタリング中は、前記2つのターゲットのうちの一方がポイズンモードとなり、前記2つのターゲットのうちの他方がメタルモードとなって、基板に前記2つのターゲットの材料の混合物を含有するメタルゲート電極用の膜が成膜されることを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項2】
前記ポイズンモードとするターゲット近傍にのみ前記反応性ガスを導入することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング方法。
【請求項3】
前記不活性ガスを前記メタルモードとするターゲット近傍に導入することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング方法。
【請求項4】
真空容器内に不活性ガス及び反応性ガスを導入し、アルミニウムターゲット及びチタンターゲットにそれぞれ一定の電力を印可して、アルミニウムターゲット及びチタンターゲットを同時にスパッタリングすることで基板にアルミニウムおよびチタンの混合物を含有する膜を成膜する際に、前記チタンターゲットと反応して反応生成物を生じせしめる前記反応性ガスの量が前記アルミニウムターゲットと反応して反応生成物を生じせしめる前記反応性ガスの量よりも多いことによって、前記チタンターゲットがポイズンモードとなり、前記アルミニウムターゲットがメタルモードとなって、基板に前記アルミニウムターゲット及びチタンターゲットの材料の混合物を含有するメタルゲート電極用の膜が成膜されることを特徴とするスパッタリング方法。
【請求項5】
前記チタンターゲット近傍にのみ前記反応性ガスを導入することを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング方法。
【請求項6】
前記不活性ガスを前記アルミニウムターゲット近傍に導入することを特徴とする請求項4に記載のスパッタリング方法。
【請求項7】
前記反応性ガスは窒素ガスであることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載のスパッタリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスなどの製造工程において、基板に材料を堆積するために用いられるスパッタリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に薄膜を堆積させるスパッタリング装置は、真空に排気された真空容器を有する。一般にスパッタリング装置は、真空容器にAr等の不活性ガスを導入し、ターゲットに高電圧を印加してプラズマを発生させる。放電プラズマ中の荷電粒子によるターゲットのスパッタ現象を利用して、ターゲット材料を基板ホルダーに支持された基板に付着させる。
プラズマ中の正イオンが負の電位のターゲット材料に入射すると、ターゲット材料からターゲット材料の原子分子が弾き飛ばされる。これをスパッタ粒子と呼ぶ。このスパッタ粒子が基板に付着してターゲット材料を含む膜が形成される。
【0003】
真空容器に導入するガスを、窒素や酸素等の反応性ガスをAr等の不活性ガスに加えてスパッタすることで、ターゲット材料と反応性ガスとの反応が生じる。これにより、ターゲット材料の酸化物や窒化物が堆積される。これを反応性スパッタ法と呼ぶ。
【0004】
反応性ガスを真空容器に導入しながらターゲットを放電させた場合、反応性ガスの導入量がある閾値よりも多くなった場合、ターゲット表面に反応性ガスの原子が付着し、放電プラズマの状態が変化する。それに伴い、基板上の成膜速度が大きく低下する。このように、ターゲット表面に反応性ガスの原子が付着して、成膜速度が遅くなった状態をポイズンモードと呼ぶ。反対に、ターゲット表面に反応性ガスが付着せずに金属表面がむき出しになっていて、成膜速度が速い状態をメタルモードと呼ぶ。反応性ガスを充分に導入して、ポイズンモードの状態で放電させた堆積膜は、安定した化合物となる。
【0005】
また、少なくとも2つ以上で異なる種類のターゲットを同時放電させた場合は、その異なる2つ以上の材料が同時スパッタされ、基板上に堆積することで、それらの化合物を形成することができる。
【0006】
特許文献1には、チタンターゲットとアルミニウムターゲットの同時放電を行い、尚且つ不活性ガスと窒素ガスを同時に真空室内へ導入することによって、チタンとアルミニウムを含有する金属窒化物(AlTiN)を作成する技術が開示されている。このAlTiNは、メタルゲート用の電極膜として用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−038663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし上記技術では、窒素ガスによりチタンターゲットとアルミニウムターゲットの両方で窒化が進み、窒化チタンだけでなく絶縁性を有する窒化アルミニウムも形成してしまう。このため、堆積する薄膜の電気抵抗が高くなってしまい、メタルゲートに適さない膜となってしまう。また、チタンとアルミニウムの合金ターゲットを用いた場合でも同様の結果となり、メタルゲート向けの膜を得るのは困難である。
【0009】
すなわち、従来の、複数のターゲットの同時放電による反応性スパッタでは、反応性スパッタによって堆積された膜の組成をコントロールすることは非常に困難であった。
【0010】
一方で、窒化チタンターゲットとアルミニウムターゲットを用いた同時スパッタを行うことで、アルミニウムと窒素の反応を抑制したAlTiNの成膜も考えられる。しかし、該方法によれば、求められる膜質が変更になる度にターゲットの交換が必要となってしまう。
【0011】
上述した問題点に鑑み、本発明は、複数のターゲットの同時放電による反応性スパッタにおいて、基板上に所望の組成の化合物を成膜可能なスパッタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するために、本発明は、互いに材料が異なるターゲットが取り付けられた2つのターゲットホルダーが配された真空容器内において、前記真空容器内に不活性ガス及び反応性ガスが導入された状態において、前記ターゲットホルダーにそれぞれ一定の電力を印可して、前記2つのターゲットを同時にスパッタリングすることで基板に前記2つのターゲットの材料の混合物を含有する膜を成膜する際に、前記2つの各ターゲットと反応して反応生成物を生じせしめる前記反応性ガスの量が各ターゲットによって異なることによって、スパッタリング中は、前記2つのターゲットのうちの一方がポイズンモードとなり、前記2つのターゲットのうちの他方がメタルモードとなって、基板に前記2つのターゲットの材料の混合物を含有するメタルゲート電極用の膜が成膜されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のターゲットの同時放電による反応性スパッタにおいて、基板上に所望の組成の化合物を成膜することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置を動作させるための主制御部のブロック図である。
【
図3】反応性スパッタリングにおいて、(a)スパッタリング装置内に一様に反応性ガスを導入した際の、反応性ガス流量と成膜速度の関係を示す図である。(b)ターゲット近傍から反応性ガスを導入した際の、反応性ガス流量と成膜速度の関係を示す図である。
【
図4】従来の反応性スパッタリング方法を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態にかかるスパッタリング装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明するが、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0016】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本実施形態に係るスパッタリング装置(以下、「成膜装置」ともいう)の全体構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る成膜装置1の概略図である。成膜装置1は、真空容器2を備える。真空容器2は、排気ポート8を通じて真空容器2を排気するターボ分子ポンプ48とドライポンプ49とを有する真空排気装置と接続される。また、成膜装置1は、真空容器2へ不活性ガスを導入することのできる不活性ガス導入機構17と、反応性ガスを導入することのできる反応性ガス導入機構15a及び15bとを備えている。
【0017】
排気ポート8は、例えば矩形断面の導管であり、真空容器2とターボ分子ポンプ48との間を繋いでいる。排気ポート8とターボ分子ポンプ48の間には、メインバルブ47が設けられている。
【0018】
真空容器2の内部には、被スパッタ面が露出しているターゲット4a、4bがバックプレート5を介してターゲットホルダー6に保持されている。また、ターゲット4a、4bから放出されたスパッタ粒子が到達する所定の位置に、基板10を保持するための基板ホルダー7が設けられている。そのほか、真空容器2には、真空容器2の圧力を測定するための圧力計41が設けられている。真空容器2の内面には、接地された筒状のシールド40(防着シールド部材)が設けられている。シールド40は、スパッタ粒子が真空容器2の内面に直接付着するのを防止している。なお、
図1ではターゲットの数は2であるが、これ以上の数でも良い。また、
図1では双方のターゲットの脇に反応性ガス導入機構が設けられているが、反応性ガスとの反応が望まれるターゲット近傍にのみ反応性ガス導入機構が設けられていても良い。
【0019】
ターゲット4a及び4bは、基板10に対して斜め上方に配置されている。ターゲットホルダー6には、スパッタ放電用電力を印加する電源12が接続されている。
図1に示す成膜装置1は、DC電源を備えているが、これに限定されるものではなく、例えば、RF電源を備えていてもよい。RF電源を用いた場合には電源12とターゲットホルダー6との間に整合器を設置する必要がある。電源12により、ターゲット4a及び4bに電圧が印加され、プラズマが形成されることで、スパッタリングが行われる。
【0020】
ターゲットホルダー6は、絶縁体により真空容器2から絶縁されている。ターゲットホルダー6はCu等の金属製であるので、DC又はRFの電力が印加された場合には電極となる。ターゲット4a、4bは、周知のとおり、基板へ成膜したい材料成分から構成される。膜の純度に関係するため、高純度のものが望ましい。ターゲット4a、4bとターゲットホルダー6の間に設置されているバックプレート5は、Cu等の金属から出来ている。
【0021】
ターゲットホルダー6の近傍には、円筒状の防着部材3がターゲットホルダー6を覆うように設置されており、スパッタ粒子が真空容器2の内面に直接付着するのを防止している。
【0022】
不活性ガス導入機構17は、不活性ガスを導入するための配管、不活性ガスを貯蔵するボンベ、不活性ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラー、ガスの供給を遮断したり開始したりするためのバルブ類、減圧弁やフィルターなどから構成されている。さらに、不活性ガス導入機構17は、制御装置により、指定されるガス流量を安定して流すことができる構成となっている。不活性ガスは不活性ガス導入部18より真空容器2に導入される。
【0023】
反応性ガス導入機構15a及び15bは、反応性ガスを導入するための配管、反応性ガスを貯蔵するボンベ、反応性ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラー、ガスの流れを遮断したり開始したりするためのバルブ類、減圧弁やフィルターなどから構成されている。さらに、反応性ガス導入機構15a及び15bは、制御装置により、指定されるガス流量を安定に流すことができる構成となっている。反応性ガスは反応性ガス導入部16a、16bより真空容器2に導入される。
【0024】
なお、
図1では、不活性ガス導入部と反応性ガス導入部は異なる位置に設けられているが、不活性ガスと反応性ガスが同一のガス導入部から真空容器2に導入されても良い。
【0025】
次に、本実施形態に係る成膜装置1を用いた成膜方法の手順を
図1及び
図2を用いて説明する。
【0026】
本実施形態に係る成膜装置1の主制御部100は、例えば、一般的なコンピュータと各種のドライバを備える。すなわち、主制御部100は、種々の演算、制御、判別などの処理動作を実行するCPU(不図示)と、このCPUによって実行される様々な制御プログラムなどを格納するROM(不図示)とを有する。また、主制御部100は、上記CPUの処理動作中のデータや入力データなどを一時的に格納するRAM、およびフラッシュメモリやSRAM等の不揮発性メモリなど(不図示)を有する。このような構成において、主制御部100は、上記ROMに格納された所定のプログラム又は上位装置の指令に従ってスパッタリングプロセスを実行する。その指令に従って放電時間、放電電力、プロセス圧力などの各種プロセス条件がコントロールされる。また、真空容器2内部の圧力を計測する圧力計41などのセンサの出力値も取得可能であり、装置の状態に応じた制御も可能である。
【0027】
まず、主制御部100は、ターゲットシャッター駆動機構14にターゲットシャッター13を閉鎖するよう指示する。主制御機100の指示により、ターゲットシャッター13が閉じた状態となる。次に、主制御部100は、ターゲットシャッターを閉じた状態で、不活性ガス導入機構17から、不活性ガスを導入するように、不活性ガス導入機構17を制御する制御装置に指示する。不活性ガスとしては例えばArを用いる。その他としてNe、Kr、Xe等が用いられる。それと同時に、ターゲット4a及び4b近傍の反応性ガス導入機構15a及び15bから、反応性ガスを導入するように、反応性ガス導入機構15a及び15bを制御する制御装置に指示する。反応性ガス導入機構15a及び15bからの反応性ガス導入量は、各ターゲットをポイズンモードとしてスパッタリングを行うか、メタルモードとしてスパッタリングを行うかで調整する。メタルモードとしてスパッタリングを行うターゲットには反応性ガスの導入量を0としても良い。この状態で、電源12よりターゲット4aとターゲット4b双方へ電力を印加して、放電を開始する。
【0028】
一方で、主制御部100はゲートバルブ42を開けて、処理対象である基板10を真空容器2の中に搬入し、基板ホルダー7に保持するよう各制御装置に指示する。
【0029】
次に、主制御部100は、ターゲットシャッター駆動機構14を駆動させ、ターゲットシャッター13を開くように指示する。これにより、ターゲット4aとターゲット4bから飛び出したスパッタ粒子が基板10に付着して、膜が堆積される。なお、内壁にシールド40が設けられている場合には、シールド40の表面にスパッタ粒子が付着して膜が堆積される。
【0030】
所定時間放電したのち、主制御部100は、電源12に対して電力の印加を停止させることで、放電を停止する。そして主制御部100は、不活性ガス導入機構17と反応性ガス導入機構15a及び15bを制御する制御装置に対し、ガスの供給を停止するように指示する。
【0031】
以上の手順により、メタルモードであるターゲットと反応性ガスの反応を抑制しながら、所望の組成を有する化合物を成膜することができる。
【0032】
ここで、
図3(a)及び(b)を用いて反応性ガスをターゲット近傍に導入した場合の効果を説明する。
【0033】
図3(a)に通常の反応性スパッタにおける、反応性ガス流量と成膜速度の関係を示す。通常の反応性スパッタとは、すなわち、真空容器2内部の各ターゲットに対して均一に反応性ガスを供給して、ターゲットのスパッタリングを行うことを指す。
図3(a)に示されるように、反応性ガスがある一定の流量に達すると成膜速度が落ちている。これはターゲットがメタルモードからポイズンモードになったことを示す。
【0034】
次に、
図3(b)に、ターゲット近傍に反応性ガス導入部を接続して、ターゲット近傍に反応性ガスを導入した場合の、反応性ガス流量と成膜速度の関係を示す。なお比較例として、
図3(b)中に、
図3(a)における反応性ガス流量と成膜速度の関係を破線で示す。
図3(b)から分かるように、ターゲット近傍に反応性ガスを導入することで、反応性ガスの流量に対するメタルモードとポイズンモードの閾値を変動させることが可能となる。このため、ポイズンモードとして成膜処理を行うターゲット近傍に反応性ガスを導入することで、より少ない反応性ガス流量でポイズンモードとすることが可能となる。この場合、真空容器2内への反応性ガスの導入量が減少するため、メタルモードとして成膜処理を行うターゲットと反応性ガスとの反応を抑制することも可能となる。
【0035】
また、仮に各ターゲットと各反応性ガス導入部の位置関係を各々同一とした場合には、各反応性ガス導入部から真空容器2に導入する反応性ガス流量を調整することで、一部のターゲットをポイズンモードとし、他のターゲットをメタルモードとした状態でスパッタリングを行うことが可能となる。
【0036】
すなわち、本発明の本質は、2以上のターゲットによる同時スパッタにおいて、各ターゲットへの反応性ガスの供給量を制御することで、各ターゲットと反応性ガスとの反応を制御することで、所望の組成の化合物を成膜することにある。
【0037】
なお本発明において、「ガスの導入量」とは、真空容器2に導入されるガスの絶対量を指す。また「ターゲットへの反応性ガスの供給量」とは、各ターゲットと反応して反応生成物を生じせしめる反応性ガスの量を指す。よって、10sccmの反応性ガスを真空容器2に導入して、その中の1sccmの反応性ガスがターゲットと反応した場合、「ターゲットへの反応性ガスの供給量」は1sccmとなる。従って、各ターゲットへの反応性ガス導入量が同一であっても、導入位置を異ならせることで、各ターゲットへの反応性ガスの供給量を異ならせることができ、また各ターゲットと反応ガスの導入位置の位置関係が同一であっても、反応性ガスの導入量を異ならせることで、各ターゲットへの反応性ガスの供給量を異ならせることができる。
【実施例1】
【0038】
本実施形態を
図1に示す装置を用いて、半導体デバイスのメタルゲート用電極の成膜に適用した場合の実施例を以下に説明する。本実施例ではメタルゲート用電極としてAlTiNを用いる。
【0039】
本発明に係る課題でも述べたように、メタルゲート用のAlTiNにおいて、電気抵抗の高いAlNが形成されるのは好ましくない。本実施例では、AlとNの結合を抑制し、TiとNが結合しているAlTiNの成膜を行う。
【0040】
まず、成膜前に、コンディションを整えるための放電(コンディショニング放電)を行う。コンディショニング放電は以下の条件で行った。
不活性ガス:Arガス
不活性ガス導入量:20sccm(standard cc /min)
反応性ガス:N2ガス
反応性ガス導入量:20sccm
圧力:0.04Pa
各ターゲットへの供給電力:700W
コンディショニング時間:1200秒
なお、コンディショニング放電において、反応性ガスであるN2ガスは、Tiターゲット近傍にのみ導入した。
【0041】
その後に、直径300mmのSi基板上にSiO2(100nm)が形成された基板10を成膜装置1の基板ホルダー7に載置して、厚み10nmのチタンとアルミニウムを含有する金属窒化物の成膜を行った。成膜条件を以下に示す。
不活性ガス:Arガス
不活性ガス導入量:20sccm(standard cc /min)
反応性ガス:N2ガス
反応性ガス導入量:20sccm
圧力:0.04Pa
各ターゲットへの供給電力:700W
スパッタ時間:240秒
このときもコンディショニング放電と同様に、Tiターゲット近傍にのみN2ガスを導入した。
【0042】
比較のため、別の直径300mmのSi基板を搬入し、窒素ガス導入口をチタンターゲット近傍ではなく、基板近傍とした従来の
図4に示される成膜装置を用いて成膜を行った。基板は上述した実施例と同様の、300mm直径のSi基板上にSiO2(100nm)が形成された基板を用いた。
図4に示されるように、従来の反応性スパッタリング方法では、成膜装置1の内部に一様に反応性ガスが導入される。
図4に示す方法によって、本実施例と同様のパラメータを用いて、厚み10nmのチタンとアルミニウムを含有する金属窒化物の成膜を行った。
【0043】
本実施例と比較例を成膜終了後、それぞれのシート抵抗測定装置(株式会社日立国際電気製 VR−120)を用いて堆積膜の比抵抗を、基板中心から基板端5mmの範囲で測定した。測定結果では実施例1よりも、堆積膜の比抵抗が増大していることが確認された。
【0044】
比抵抗測定と併せて、実施例1で作成した堆積膜と、比較例で作成した堆積膜をXPSで測定し、堆積膜を構成している原子の結合状態を確認した。その結果、比較例として従来装置で成膜したチタンとアルミニウムを含有する金属窒化物の中に、Al−Nの結合が確認された。一方で、本実施形態に係るスパッタリング方法で成膜したチタンとアルミニウムを含有する金属窒化物の中には、Al−Nの結合はほとんど確認されなかった。
【0045】
以上の結果から、本実施形態を用いた場合、アルミニウムと窒素との結合が抑制され、比抵抗の低い、チタンとアルミニウムを含有した金属窒化物が成膜可能である事が確認された。
【0046】
(第2の実施形態)
図5に第1の実施形態と異なる第2の実施形態を示す。本実施形態では、真空容器2と不活性ガス導入機構が第1の実施形態と異なる位置に接続されている。本実施形態では不活性ガスはメタルモードとするターゲット近傍に導入される。この様な構成にすることで、ターゲット近傍と真空容器2の空間には圧力勾配が形成される。このため、真空容器2の内部に拡散した反応性ガスが、メタルモードのターゲット近傍に混入するのを防ぐことが可能となる。なお、メタルモードとするターゲットに加え、ポイズンモードとするターゲットの近傍に不活性ガス導入部を設けても良い。
【符号の説明】
【0047】
1 成膜装置
2 真空容器
3 円筒状の防着部材
4a、4b ターゲット
5 バックプレート
6 ターゲットホルダー
7 基板ホルダー
8 排気ポート
10 基板
12 電源
13 ターゲットシャッター
14 ターゲットシャッター駆動機構
15 反応性ガス導入機構
16a、16b 反応性ガス導入部
17 不活性ガス導入機構
18 不活性ガス導入部
40 シールド
41 圧力計
42 ゲートバルブ
47 メインバルブ
48 ターボ分子ポンプ
49 ドライポンプ
63 記憶装置
100 主制御部