特許第5661456号(P5661456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661456
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】点眼剤及び使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5575 20060101AFI20150108BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20150108BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20150108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20150108BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A61K31/5575
   A61K9/08
   A61P27/06
   A61P43/00 121
   A61K31/4704
   A61K47/36
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-509208(P2010-509208)
(86)(22)【出願日】2009年4月23日
(86)【国際出願番号】JP2009058042
(87)【国際公開番号】WO2009131164
(87)【国際公開日】20091029
【審査請求日】2012年4月16日
(31)【優先権主張番号】特願2008-112069(P2008-112069)
(32)【優先日】2008年4月23日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206956
【氏名又は名称】大塚製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 好尚
(72)【発明者】
【氏名】石川 眞一
【審査官】 前田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−081048(JP,A)
【文献】 特開2007−063265(JP,A)
【文献】 特開2004−182719(JP,A)
【文献】 特開2002−161037(JP,A)
【文献】 特表2002−511430(JP,A)
【文献】 HANEDA,M. et al,Comparison of the additive effects of nipradilol and carteolol to latanoprost in open-angle glaucoma,Jpn J Ophthalmol,2006年,Vol.50, No.1,p.33-7
【文献】 河合 裕美,カルテオロールとラタノプロストの併用による眼圧降下効果,第56回日本臨床眼科学会講演集(4),日本,2003年 5月15日,第57巻 第5号,第709−713頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/5575
A61K 31/4704
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラタノプロスト及びカルテオロール・塩酸塩を含有する点眼剤。
【請求項2】
さらにアルギン酸を含有する請求項1に記載の点眼剤。
【請求項3】
前記ラタノプロストが、0.0001〜0.1%(W/V)で存在する請求項1〜2のいずれかに記載の点眼剤。
【請求項4】
前記カルテオロール・塩酸塩が、0.1〜5%(W/V)で存在する請求項1〜2のいずれかに記載の点眼剤。
【請求項5】
前記アルギン酸が、0.1〜5%(W/V)で存在する請求項2に記載の点眼剤。
【請求項6】
熱的に不安定なラタノプロストを含有する点眼液にカルテオロール・塩酸塩を配合することにより、点眼液中のラタノプロストの分解を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点眼剤及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラタノプロストは、化学名がイソプロピル−(Z)−7−[(1R,2R,3R,5S)3,5−ジヒドロキシ−2−[(3R)−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル]シクロペンチル]−5−ヘプタノエートであり、プロスタグランジン系の緑内障治療薬として使用されている。ラタノプロストの投与経路は点眼投与であり、0.005%ラタノプロスト含有点眼液が市販されている。しかしながら、ラタノプロスト自体は、熱的に不安定な薬物であり、常温(25℃)よりも温度が高くなると点眼液中で分解する傾向があり、そのため、ラタノプロスト含有点眼液を、遮光下で冷所保存(2〜8℃)する必要がある。非特許文献1は、ラタノプロスト含有点眼液の温度及び光に対する安定性について報告された論文である。
【0003】
ラタノプロスト含有点眼液は、流通過程や貯蔵過程で、点眼液の保管温度が上昇することがあり、ラタノプロストの一部が分解するのが避けられない。ラタノプロスト含有点眼液を冷暗所で保管すれば、熱に不安定なラタノプロストの分解を抑制できるが、点眼液は様々な環境に晒されるので、冷暗所での保管以外の方法でラタノプロストの分解を抑制する技術の開発が要望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Glaucoma, 10(5), 401-405, 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、点眼液に含まれる熱的に不安定なラタノプロストの分解を抑制し、該点眼液を安定化する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、熱的に不安定なラタノプロストを含有する点眼液にカルテオロール・塩酸塩を配合した場合に、驚くべきことに点眼液調製の際のラタノプロストの吸着と点眼液中のラタノプロストの分解とを効果的に抑制でき、点眼液の安定性を大幅に向上できることを見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0007】
本発明は、下記項1〜7に示す点眼剤及び使用方法を提供する。
項1.ラタノプロスト及びカルテオロール・塩酸塩を含有する点眼剤。
項2.さらにアルギン酸を含有する項1に記載の点眼剤。
項3.前記ラタノプロストが、0.0001〜0.1%(W/V)で存在する項1〜2のいずれかに記載の点眼剤。
項4.前記カルテオロール・塩酸塩が、0.1〜5%(W/V)で存在する項1〜2のいずれかに記載の点眼剤。
項5.前期アルギン酸が、0.1〜5%(W/V)で存在する項2に記載の点眼剤。
項6.熱的に不安定なラタノプロストを含有する点眼液にカルテオロール・塩酸塩を配合することにより、点眼液中のラタノプロストの分解を抑制する方法。
項7.容器に吸着しやすいラタノプロストを含有する点眼液にカルテオロール・塩酸塩を配合することにより、ラタノプロストの容器への吸着による損失を抑制する方法。
【0008】
本発明の点眼剤は、ラタノプロストとカルテオロール・塩酸塩とが有効成分として含有されている。
【0009】
本発明で用いられるカルテオロール・塩酸塩は、化学名が5−[(2RS)−3−(1,1−ジメチルエチル)アミノ−2−ヒドロキシプロピルオキシ]−3,4−ジヒドロキノリン−2(1H)−オン・1塩酸塩であり、βブロッカーの緑内障治療薬として使用されている化合物である。
【0010】
本発明の点眼剤中のラタノプロストの濃度は、ラタノプロストが所望の薬効を奏する濃度であれば特に制限されないが、0.0001〜0.1%(W/V)が好ましく、0.001〜0.02%(W/V)がより好ましい。
【0011】
本発明の点眼剤中のカルテオロールの濃度は、特に制限されないが、0.1〜5%(W/V)が好ましく、0.5〜3%(W/V)がより好ましい。さらに、1〜2%(W/V)がより好ましい。
【0012】
本発明の点眼剤は、汎用されている方法によって容易に調製することができる。本発明の点眼剤には、必要に応じて等張化剤、緩衝剤、pH調節剤、防腐剤、可溶化剤、増粘剤等の公知の成分を添加することができる。
【0013】
等張化剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トレハロース、マルトース、シュクロース、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等を挙げることができる。
【0014】
緩衝剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・二水和物、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸塩;ホウ酸及びホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等のホウ酸塩;クエン酸及びクエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム等のクエン酸塩;酢酸及び酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等の酢酸塩;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等を挙げることができる。
【0015】
pH調節剤としては、例えば、塩酸、乳酸、クエン酸、リン酸、酢酸等の酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ塩基を挙げることができる。
【0016】
防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化ベンゾドデシニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンゼトニウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル等を挙げることができる。
【0017】
可溶化剤としては、例えば、ポリソルベート80、ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油60、マクロゴール4000、ポリビニルアルコール、チロキサポール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ダイズ油等の植物油脂等を挙げることができる。
可溶化剤の濃度は、特に制限されないが、0.1〜5%(W/V)が好ましく、0.5〜3%(W/V)がより好ましい。さらに、1〜2%(W/V)がより好ましい。
【0018】
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。特に、本発明の点眼剤に、アルギン酸又はポリアクリル酸ナトリウムを含有することにより、作用効果の延長が期待できる。アルギン酸を用いる場合、アルカリ塩基で、pHを6〜8にすることが好ましい。増粘剤の濃度は、特に制限されないが、0.1〜5%(W/V)が好ましく、0.5〜2%(W/V)がより好ましい。
【0019】
本発明の点眼剤のpHは、3〜9程度、特に4〜8程度とするのが好ましい。さらに、6〜8にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の点眼剤は、以下の利点を有している。
(1)点眼剤にカルテオロール・塩酸塩を配合することにより、点眼剤中のラタノプロストの分解を効果的に抑制でき、点眼剤の安定性を大幅に向上できる。このため、本発明の点眼剤を冷暗所で保管する煩雑さを解消できる。
(2)一つの点眼剤にラタノプロストとカルテオロール・塩酸塩とを含有させることによる弊害がなく、そのため2種以上の点眼剤を併用する際の点眼間隔を十分あける必要がなくなり、また1日当たりの点眼回数を減少できるので、使用者の利便性を向上させることができる。また、点眼コンプライアンスの向上により、眼圧のコントロールを向上できる。
(3)一つの点眼剤にラタノプロストとカルテオロール・塩酸塩とを含有させることにより、眼圧下降効果が増強される。
(4)一つの点眼剤にラタノプロストとカルテオロール・塩酸塩とを含有させているので、2種以上の点眼剤を併用する場合に比し、防腐剤曝露量を減少させることができ、その結果、角膜障害等の副作用の発現リスクを低下させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に実施例を掲げて本発明をより一層明らかにする。
【0022】
製造例1
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g及び塩化ナトリウム0.54gを量り、精製水約80mlを加えて約60℃に加温しながら撹拌して溶解させ、これを室温に戻した後、精製水を加えて正確に100mlとし、pHが6.8である点眼剤を製造した。
【0023】
製造例2
製造例1の組成に、塩化ベンザルコニウムを5mg加える以外は、製造例1と同様にして、pH6.8の点眼剤を製造した。
【0024】
製造例3
製造例1の組成に、塩化ベンザルコニウムを20mg加える以外は、製造例1と同様にして、pH6.8の点眼剤を製造した。
【0025】
製造例4
カルテオロール・塩酸塩1g、ラタノプロスト5.2mg、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g及び精製水約80mLを加えて溶かし、アルギン酸1g、塩化ナトリウム0.44g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0026】
製造例5
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g及び精製水約80mLを加えて溶かし、アルギン酸1g、塩化ナトリウム0.44g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0027】
製造例6
カルテオロール・塩酸塩1g、ラタノプロスト5.2mg、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g及び精製水約80mLを加えて溶かし、アルギン酸2g、塩化ナトリウム0.3g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0028】
製造例7
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g及び精製水約80mLを加えて溶かし、アルギン酸2g、塩化ナトリウム0.3g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0029】
製造例8
カルテオロール・塩酸塩1g、ラタノプロスト5.2mg、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g、塩化ナトリウム0.54g及び精製水を加えて溶かし、正確に100mlとしてpH6.8の点眼剤を製造した。
【0030】
製造例9
カルテオロール・塩酸塩1g、ラタノプロスト5.2mg、ホウ酸1.5g、塩化ナトリウム0.3g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0031】
製造例10
カルテオロール・塩酸塩1g、ラタノプロスト5.2mg、ホウ酸2g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0032】
製造例11
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、ホウ酸1.5g、塩化ナトリウム0.3g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0033】
製造例12
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、ホウ酸2g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0034】
製造例13
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、ホウ酸1.5g、グリセリン1%並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0035】
製造例14
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、ホウ酸2g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0036】
製造例15
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、ホウ酸1.5g、アルギン酸1g並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0037】
製造例16
カルテオロール・塩酸塩2g、ラタノプロスト5.2mg、ホウ酸2g、アルギン酸並びに水酸化ナトリウム溶液及び精製水を適量加えてpH6.5の点眼剤100mLを製造した。
【0038】
製造例17
カルテオロール・塩酸塩1g、ラタノプロスト21mg、ポリソルベート800.1g、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g、塩化ナトリウム0.54g及び精製水を加えて溶かし、正確に100mlとしてpH6.8の点眼剤を製造した。
【0039】
製造例18
カルテオロール・塩酸塩1g、ラタノプロスト21mg、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油600.1g、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g、塩化ナトリウム0.54g及び精製水を加えて溶かし、正確に100mlとしてpH6.8の点眼剤を製造した。
【0040】
比較製造例1
ラタノプロスト5.2mg、リン酸二水素ナトリウム・二水和物0.04g、リン酸水素二ナトリウム・十二水和物0.1g及び塩化ナトリウム0.54gを量り、精製水約80mlを加えて約60℃に加温しながら撹拌して溶解させ、これを室温に戻した後、精製水を加えて正確に100mlとし、pHが6.8である点眼剤を製造した。
【0041】
比較製造例2
比較製造例1の組成に、塩化ベンザルコニウムを5mg加える以外は、比較製造例1と同様にして、pH6.8の点眼剤を製造した。
【0042】
比較製造例3
比較製造例1の組成に、塩化ベンザルコニウムを20mg加える以外は、比較製造例1と同様にして、pH6.8の点眼剤を製造した。
【0043】
熱安定性試験
製造例1〜3及び比較製造例1〜3で得られる各点眼剤4mlを、各々共栓付ガラス管に充填して密封し、それぞれについて70℃で1週間保存した後、ラタノプロストの含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量し、ラタノプロストの仕込み量に対する含有率(開始時及び70℃1週間後)を求めた。試験結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1から明らかなように、調製直後におけるカルテオロール・塩酸塩を配合した点眼液(製造例1〜3)のラタノプロストの含有率は、カルテオロール・塩酸塩を配合していない点眼液(比較製造例1〜3)の含有率よりも大きく、吸着による損失が少ないことが確認できた。
【0046】
また、70℃で1週間保管後におけるラタノプロストの残存率を表1の数値(開始時及び70℃1週間後の含有率)から算出したところ、比較製造例1〜3に比べて、製造例1〜3の方が大きいことが確認できた。
【0047】
更に、比較製造例1に比べて比較製造2及び3の残存率が小さく、塩化ベンザルコニウムを配合することで熱的に不安定性が増加することが判明したが、製造例2及び3の残存率は、塩化ベンザルコニウムを配合していない製造例1の残存率とほぼ同じであり、カルテオロール塩酸塩は、塩化ベンザルコニウムによる不安定化を改善することが確認できた。
【0048】
従って、熱的に不安定で、吸着性があるラタノプロストを含有する点眼液にカルテオロールを配合することで、薬液調製器材や点眼剤容器への吸着を防ぐと共に、点眼液中の熱的に不安定なラタノプロストの分解を効果的に抑制して安定に保存できることが確認できた。