特許第5661461号(P5661461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5661461高い正の表面電荷を有する高分散金属酸化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661461
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】高い正の表面電荷を有する高分散金属酸化物
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   C01B33/18 C
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2010-516470(P2010-516470)
(86)(22)【出願日】2008年7月10日
(65)【公表番号】特表2010-533636(P2010-533636A)
(43)【公表日】2010年10月28日
(86)【国際出願番号】EP2008059020
(87)【国際公開番号】WO2009010447
(87)【国際公開日】20090122
【審査請求日】2010年10月8日
(31)【優先権主張番号】102007033448.8
(32)【優先日】2007年7月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーステン・ゴットシャルク−ガウディグ
(72)【発明者】
【氏名】ウーテ・フェルケル
【審査官】 浅野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−176122(JP,A)
【文献】 特開平10−231381(JP,A)
【文献】 特開2004−339508(JP,A)
【文献】 特開平08−319115(JP,A)
【文献】 特開2004−217515(JP,A)
【文献】 特開2006−053458(JP,A)
【文献】 特開2001−281914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00〜33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表される基で修飾される発熱性シリカの調製方法であって、
シリカを温度−30℃〜250℃で一般式(I)で表される基を含むアルキルシランで被覆する工程、
反応が高くなる温度勾配で行われる前記シリカと前記一般式(I)で表される基を含むアルキルシランとの反応工程、
これは、反応開始時の製品温度(product temperature)が20℃〜100℃、更に反応終了までの製品温度が80℃〜180℃であることを意味し、前記温度勾配が場所(連続的)又は時間(バッチ式)によって決まり、
前記シリカと前記一般式(I)で表される基を含むアルキルシランとの反応工程は、水分が0.5%未満の条件下で行われる、及び 前記反応で得られた反応物を精製温度20℃〜200℃で精製する工程を含むことを特徴とする発熱性シリカの調製方法であり、
−O1+n−Si(OR2−n−R−NR 一般式(I)
式中、nは0、1、又は2でもよく、
は、水素原子、C−O−と結合した炭素数1〜15の炭化水素基、又はアセチル基でもよく、
は、Si−C−と結合した炭素数1〜20の炭化水素基、アリール基、又は炭素数1〜15の炭化水素オキシ基であり、それぞれ1つ以上の隣接しないメチレン単位が、−O−,−CO−,−COO−,−OCO−,若しくは−OCOO−,−S−,若しくは−NR−基で置換されていてもよく、1つ以上の隣接しないメチン単位が、−N=,−N=N−,若しくは−P=基で置換されていてもよく、
は、水素原子、又は任意で単不飽和若しくは多価不飽和の、N−Cと結合した、一価、任意で二価の、任意で−CN,−NCO,−NR,−COOH,−COOR,ハロゲン基、アクリロイル基、エポキシ基、−SH,−OH,若しくは−CONRにより置換された炭素数1〜20の炭化水素基、若しくはアリール基、又は炭素数1〜15の炭化水素オキシ基であり、それぞれ1つ以上の隣接しないメチレン単位が、−O−,−CO−,−COO−,−OCO−,若しくは−OCOO−,−S−,若しくは−NR−基で置換されていてもよく、1つ以上の隣接しないメチン単位が、−N=,−N=N−,若しくは−P=基で置換されていてもよく、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよく、アミン基−N(Rはまた脂肪族、又は芳香族複素環の一部であってもよく、
は、Rと同様であり、Rは同一であってもよいし、異なっていてもよく、
基とT基のNMRの信号強度の合計のT基の合計強度T+T+Tに対する割合は、少なくとも20%であり、T基は以下の通りに定義される。
: R−Si(OR−O
: R−Si(OR)(−O−)
: R−Si(−O−)
Rは、−R−NRであり、及びRは上記定義の通りであり、は上記定義の通りであるか、又はRは水素原子であってもよい、調製方法。
【請求項2】
請求項1に記載の発熱性シリカの調製方法で得られ、表面正摩擦帯電qtribが+50μC/g〜+1,000μC/gであることを特徴とする発熱性シリカ。
【請求項3】
表面摩擦帯電の相対的減少(qtrib(3,600)−qtrib(150))×100%/qtrib(150)が、60%以下であり、qtrib(3,600)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を3,600秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を150秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は0よりも大きい必要がある請求項2に記載の発熱性シリカ。
【請求項4】
表面摩擦帯電の相対的減少(qtrib(3,600)−qtrib(150))×100%/qtrib(150)が、60%以下であり、qtrib(3,600)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を3,600秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を150秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は0よりも大きい必要があり、前記混合物は、測定前に32℃、相対湿度80%で5日間保存される請求項3に記載の発熱性シリカ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれかに記載の発熱性シリカ、又は請求項1に記載の発熱性シリカの調製方法により調製された発熱性シリカを含有することを特徴とするトナー、現像剤、粉末被覆剤、又は帯電制御剤。
【請求項6】
請求項2から4のいずれかに記載の発熱性シリカ、又は請求項1に記載の発熱性シリカの調製方法により調製された発熱性シリカを含有することを特徴とする粉末被覆材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い正の表面電荷を有する金属酸化物、その調製、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物粒子の表面帯電性は、該金属酸化物粒子をトナー、現像剤、及び粉末被覆剤の流動性及び摩擦電気帯電の制御に使用する際に重要な特性である。
【0003】
正の静電気帯電性を有する金属酸化物粒子は、特に、負の静電荷像を可視化するための現像剤及びトナーの構成成分として用いられる。この用途では、粒子が一様に、安定した高い正摩擦帯電性を有することを前提条件とする。
【0004】
正の静電気帯電性を有する金属酸化物粒子は、特に、粉末被覆剤の摩擦電気帯電性を制御する粉末被覆剤の構成成分として用いられる。この用途では、粒子が一様に、安定した高い正摩擦帯電性を有することを前提条件とする。
【0005】
負の静電気帯電性を有する金属酸化物粒子は、特に、正の静電荷像を可視化するための現像剤及びトナーの構成成分として用いられる。この用途では、粒子が一様に、安定した高い負摩擦帯電性を有することを前提条件とする。
【0006】
負の静電気帯電性を有する金属酸化物粒子は、特に、コロナプロセスによる用途において、粉末流動性を制御する粉末被覆剤の構成成分として用いられる。
【0007】
金属酸化物粒子の表面電荷の正負、量、及び密度は、粒子表面の化学構造によって決定的に決まる。金属酸化物が、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、又は二酸化チタンの場合、表面ヒドロキシ基が電荷決定基であり、金属水酸基の酸度は、電荷の正負、及び表面電荷濃度に決定的に影響する。よって、未修飾シリカ、又はアルキルシロキシ基で修飾された金属酸化物は、摩擦電気的に帯電されて負の電荷を有することができる粒子である。
【0008】
正摩擦帯電を発生させるために、例えば、特許文献1に開示されるようにアミノシランを粒子表面に化学的に固定できる。しかし、このように粒子を修飾して得た正摩擦帯電は、規模が小さく、且つ大気湿度等の周囲条件に大きく依存する。
【0009】
より安定した摩擦帯電は、例えば、特許文献1及び2に開示されるように粒子を更に疎水化することで得られる。しかし、この場合も、正摩擦帯電の量が小さいことが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】独国特許第3330380号明細書
【特許文献2】独国特許第3707226号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、先行技術の欠点を克服し、特に、高い安定した正摩擦帯電性を有する金属酸化物粒子を提供することを目的とする。
この目的は本発明により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一般式(I)で表される基で修飾される金属酸化物に関する。
−O1+n−Si(OR2−n−R−NR 一般式(I)
式中、nは0、1、又は2でもよく、
は、水素原子、C−O−と結合した炭素数1〜15の炭化水素基、又はアセチル基でもよく、
は、Si−C−と結合した炭素数1〜20の炭化水素基、アリール基、又は炭素数1〜15の炭化水素オキシ基であり、それぞれ1つ以上の隣接しないメチレン単位が、−O−,−CO−,−COO−,−OCO−,若しくは−OCOO−,−S−,若しくは−NR−基で置換されていてもよく、1つ以上の隣接しないメチン単位が、−N=,−N=N−,若しくは−P=基で置換されていてもよく、
は、水素原子、又は任意で単不飽和若しくは多価不飽和の、N−Cと結合した、一価、任意で二価の、任意で−CN,−NCO,−NR,−COOH,−COOR,ハロゲン基、アクリロイル基、エポキシ基、−SH,−OH,若しくは−CONRにより置換された炭素数1〜20の炭化水素基、若しくはアリール基、又は炭素数1〜15の炭化水素オキシ基であり、それぞれ1つ以上の隣接しないメチレン単位が、−O−,−CO−,−COO−,−OCO−,若しくは−OCOO−,−S−,若しくは−NR−基で置換されていてもよく、1つ以上の隣接しないメチン単位が、−N=,−N=N−,若しくは−P=基で置換されていてもよく、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよく、アミン基−N(Rはまた脂肪族、又は芳香族複素環の一部であってもよく;
は、Rと同様であり、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい。T基とT基のNMR信号強度の合計のT基の合計強度T+T+Tに対する割合は、少なくとも20%であり、T基は以下の通りに定義される。
: R−Si(OR−O−Si
: R−Si(OR)(−O−Si)
: R−Si(−O−Si)
Rは、有機基であり、Rは上記定義の通りであるか、又はRは水素原子であってもよい。
【0013】
電荷決定アミノシランのT基:T基:T基の比を制御することで、高い正摩擦帯電が得られることは驚くべきことであり、かつ、当業者が全く予測できなかったことである。Tは、モノアルキルトリシリルオキシ基R−Si(−O−)を意味し、上付き文字はシロキサン結合の数を示すと理解される。即ち、
: R−Si(OR’)−O−Si
: R−Si(OR’)(−O−Si)
: R−Si(−O−Si)
R’はアルキル基、又は水素原子であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の金属酸化物は一般式(I)で表される基で修飾される。
−O1+n−Si(OR2−n−R−NR 一般式(I)
式中、nは0、1、又は2でもよく、
は、水素原子、C−O−と結合した炭素数1〜15の炭化水素基、好ましくは、炭素数1〜8の炭化水素基、特に好ましくは、炭素数1〜3の炭化水素基、又はアセチル基でもよく、
は、Si−C−と結合した炭素数1〜20の炭化水素基、好ましくは、炭素数1〜8の炭化水素基、特に好ましくは、炭素数1〜3の炭化水素基、アリール基、又は炭素数1〜15の炭化水素オキシ基、好ましくは、炭素数1〜8の炭化水素オキシ基、特に好ましくは、炭素数1〜4の炭化水素オキシ基であり、それぞれ1つ以上の隣接しないメチレン単位が、−O−,−CO−,−COO−,−OCO−,若しくは−OCOO−,−S−,若しくは−NR−基で置換されていてもよく、1つ以上の隣接しないメチン単位が、−N=,−N=N−,若しくは−P=基で置換されていてもよく、
は、水素原子、又は任意で単不飽和若しくは多価不飽和の、N−Cと結合した、一価、任意で二価の、任意で−CN,−NCO,−NR,−COOH,−COOR,ハロゲン基、アクリロイル基、エポキシ基、−SH,−OH,若しくは−CONRにより置換された炭素数1〜20の炭化水素基、好ましくは、炭素数1〜8の炭化水素基、特に好ましくは、炭素数1〜3の炭化水素基、若しくはアリール基、又は炭素数1〜15の炭化水素オキシ基であり、好ましくは、炭素数1〜8の炭化水素オキシ基、特に好ましくは、炭素数1〜4の炭化水素オキシ基であり、それぞれ1つ以上の隣接しないメチレン単位が、−O−,−CO−,−COO−,−OCO−,若しくは−OCOO−,−S−,若しくは−NR−基で置換されていてもよく、1つ以上の隣接しないメチン単位が、−N=,−N=N−,若しくは−P=基で置換されていてもよく、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよく、アミン基−N(Rはまた脂肪族、又は芳香族複素環の一部であってもよく、例えば、ピリジン基、N−メチルイミダゾール基等のN−アルキルイミダゾール基、N−メチルモルホリン基等のN−アルキルモルホリン基が挙げられ;
は、Rと同様であり、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、イソプロピル基等)、ヘキシル基(n−ヘキシル基、イソヘキシル基等)の等のアルキル基、及びアセトキシ基等が挙げられる。
【0016】
としては、好ましくは、メチレン基(−CH−)、エチレン基(−C−)、1,3−プロピル基(−C−)、及びフェニレン基(−C−)等が挙げられる。
【0017】
としては、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基(n−プロピル基、イソプロピル基等)、ブチル基(n−ブチル基、イソブチル基等)、ペンチル基、ヘキシル基(n−ヘキシル基、イソヘキシル基等)、オクチル基(n−オクチル基、イソオクチル基等)等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基等の脂環式基、フェニル基等の芳香環、アミノエチル基(NH−C−)、n−ブチルアミノエチル基(BuNH−C−)等のN−置換基等が挙げられる。
【0018】
一般式(I)の特に好ましい基は以下の通りである。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
式中、nは上記と同様である。
【0019】
本発明の他の態様は、金属酸化物の修飾方法であり、金属酸化物が、無水条件下で、一般式(II)で表されるオルガノシランで修飾されることを特徴とする。
1+nSi(OR2−n−R−NR 一般式(II)
式中、R,R,R,及びnは上記と同様であり、Xはハロゲン、窒素基、OR,OCOR,又はO(CHOR(xは1,2,又は3である。)であり、また、Rは上記と同様であり、R及びRは同一であってもよい。
【0020】
一般式(I)で表される基によるシリカの修飾は、例えば、欧州特許第686676B1号に記載の公知のプロセスに従って、一般式(II)で表されるオルガノシランで行うことができる。
1+nSi(OR2−n−R−NR 一般式(II)
式中、R,R,R,及びnは上記と同様であり、Xはハロゲン、窒素基、OR,OCOR,又はO(CHOR(xは1,2,又は3である。)であり、また、Rは上記と同様であり、R及びRは同一であってもよい。
【0021】
一般式(I)で表される基に加えて、本発明の金属酸化物は、好ましくは、一般式(III)で表される基で更に修飾される。
SiR− 一般式(III)
式中、aは1,2,又は3であり、bは0,1,又は2であり、cは1,2,又は3であり、a+b+c=4であり、
は、一価でもよく、任意で、単不飽和若しくは多価不飽和であり、任意で分岐されている、炭素数1〜24の炭化水素基であり、
は、同様に、一価でもよく、任意で、単不飽和若しくは多価不飽和であり、任意で分岐されている、炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0022】
としては、好ましくは、アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基(n−ヘキシル基又はイソヘキシル基)、オクチル基(n−オクチル基又はイソオクチル基)、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、及びn−オクタデシル基等が挙げられる。
【0023】
としては、好ましくは、アルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、及びプロピル基等が挙げられる。
【0024】
シリカ表面上の一般式(III)で表される基としては、好ましくは、トリメチルシリルオキシ(CHSi(O−)、ジメチルシリルジオキシ(CHSi(O−)、n−プロピルシリルトリオキシCSi(O−)、n−オクチルシリルトリオキシC17Si(O−)、i−オクチルシリルトリオキシC17Si(O−)、n−オクチルメチルシリルジオキシC17SiCH(O−)、i−オクチルメチルシリルジオキシC17SiCH(O−)、n−ヘキサデシルシリルトリオキシC1633Si(O−)、n−ヘキサデシルメチルシリルジオキシC1633SiCH(O−)、及びn−ドデシルシリルトリオキシC1837Si(O−)等が挙げられる。トリメチルシリルオキシ(CHSi(O−)、及びジメチルシリルジオキシ(CHSi(O−)が特に非常に好ましい。
【0025】
一般式(III)で表される基による金属酸化物の修飾は、例えば、欧州特許第686676B1号に記載の公知のプロセスに従って、一般式(IV)で表されるオルガノシランで行うことができる。
SiR 一般式(IV)
式中、R,R,a,b,cは上記と同様であり、Xはハロゲン、窒素基、OR,OCOR,又はO(CHOR(xは1,2,又は3である。)であり、また、Rは上記と同様である。
【0026】
メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、及びヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0027】
更に、以下の式で表される単位からなるオルガノシロキサンを一般式(III)で表される基による表面修飾に用いることも可能である。
(RSiO1/2),及び/又は
(RSiO2/2),及び/又は
(RSiO3/2
オルガノシロキサンにおけるこれらの単位の数は、好ましくは、少なくとも2であり、Rは上記と同様である。必要であれば、オルガノシロキサン単独で、又はオルガノシロキサンと一般式(IV)で表されるシランとの所望の混合で表面修飾を行うことができる。
【0028】
オルガノシロキサンの例としては、ジアルキルシロキシ単位の平均数が3より大きい直鎖状又は環状ジアルキルシロキサン類が挙げられる。ジアルキルシロキサン類としてはジメチルシロキサン類が好ましい。以下の末端基を含む直鎖状ポリジメチルシロキサン類が特に好ましい;トリメチルシリルオキシ、ジメチルヒドロキシシリルオキシ、ジメチルクロロシリルオキシ、メチルジクロロシリルオキシ、ジメチルメトキシシリルオキシ、メチルジメトキシシリルオキシ、ジメチルエトキシシリルオキシ、メチルジエトキシシリルオキシ、ジメチルアセトキシシリルオキシ、メチルジアセトキシシリルオキシ及びジメチルヒドロキシシリルオキシ基。この中でも、トリメチルシリルオキシ、及びジメチルヒドロキシシリルオキシ末端基を有するものが特に好ましい。
【0029】
前記ポリジメチルシロキサン類は、25℃で、2mPa・s〜100mPa・sの粘度を有することが好ましい。
【0030】
オルガノシロキサンの更なる例としては、シリコーン樹脂が挙げられ、特にアルキル基としてメチル基を含むもの、特に好ましくは、RSiO1/2及びSiO4/2単位を含むもの、又はRSiO3/2、及び任意でRSiO2/2単位を含むものが挙げられ、Rは上記定義のうちの一つを有する。
【0031】
前記シリコーン樹脂は、25℃で、500mm/s〜5,000mm/sの粘度を有することが好ましい。
【0032】
25℃で1,000mm/sよりも大きい粘度を有するシリコーン樹脂の場合、技術的に扱い易い以下の溶媒に溶解可能なシリコーン樹脂が好ましく、該溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン類、シクロヘキサン若しくはn−オクタン等のアルカン類、トルエン若しくはキシレン等の芳香族化合物類等が挙げられ、溶解液の濃度が10重量%超過、周囲の外気圧下、25℃で混合物の粘度が1,000mm/s未満となるものが好ましい。
【0033】
固体オルガノシロキサンの中でも、技術的に扱い易い(上記で定義された)溶媒に溶解し、溶解液の濃度が10重量%よりも大きく、且つ混合物の粘度が温度25℃で1,000mm/s未満となるものが好ましい。
【0034】
好ましくは、本発明の金属酸化物は、(a)一般式(IV)で表されるシラン又はオルガノポリシロキサンと一般式(II)で表されるシランとで同時に修飾される、(b)初めに、一般式(IV)で表されるシラン又はオルガノポリシロキサンで修飾され、そして、一般式(II)で表されるシランで修飾される、(c)初めに、一般式(II)で表されるシランで修飾され、そして一般式(IV)表されるシラン又はオルガノポリシロキサンで修飾される。好ましくは、本発明の金属酸化物は、初めに、一般式(IV)で表されるシラン又はオルガノポリシロキサンで修飾され、そして、一般式(II)で表されるシランで修飾され、一般式(IV)で表されるシラン、若しくはオルガノポリシロキサンで修飾された後に、金属酸化物が単離され、そして一般式(II)で表されるシランで修飾されるか、又は金属酸化物が事前に単離されずに、一般式(II)で表されるシランで修飾されるが、好ましくは、金属酸化物が事前に単離される。
【0035】
一般式(III)で表される基で事前に修飾された金属酸化物は、好ましくは、表面の金属水酸基、例えば、シラノール基(SiOH)の修飾度が5%〜90%、好ましくは、10%〜80%、特に好ましくは、20%〜75%であり、修飾度f(MOH)は次式で定義される。f(MOH)=(ntot(MOH)−n(MOH))・100%/ntot(MOH)。式中、n(MOH)は、修飾後の1nmあたりの表面の金属水酸基の物理量であり、ntot(MOH)は、修飾前の1nmあたりの表面の金属水酸基の物理量であり、物理量は各親水性出発金属酸化物の比表面積(DIN EN ISO9277/ドイツ工業基準DIN66132に従ったBET法により測定)に基づき、発熱性(ヒュームド)シリカに対して、ntot(MOH)、即ち、ntot(SiOH)、通常1.8(nm-1である。シラノール基の物理量は、例えば、G.W.Sears,Anal.Chem.1956,28,1981に従って、酸塩基滴定により測定できる。
【0036】
一般式(III)で表される基で事前に修飾した金属酸化物は、好ましくは、炭素含有量が0.1%〜10%、好ましくは、0.25%〜5%である。
使用する固体は、表面にヒドロキシ基を有する金属酸化物でもよい。
【0037】
平均粒径が1,000μm未満、特に、平均一次粒径が5nm〜100nmである固体が、表面修飾の出発原料として好適に使用される。これらの一次粒子は、孤立して存在できず、より大きい凝集塊(aggregate)及び凝集体(agglomerate)を構成してもよい。
【0038】
固体は、好ましくは金属酸化物であり、特に好ましくはシリカである。好ましくは、金属酸化物の比表面積は0.1nm/g〜1,000nm/g(DIN EN ISO9277/ドイツ工業基準DIN66132に従ったBET法により測定)、特に好ましくは、10nm/g〜500nm/gである。
【0039】
金属酸化物は、直径が50nm〜1,000nm、好ましくは、50nm〜500nm、特に好ましくは、75nm〜350nmである凝集塊(DIN53206に定義されている)を有し、金属酸化物は、凝集塊からなる凝集体(DIN53206に定義されている)を有し、外部からの剪断荷重に依存するが(例えば、測定条件により)、大きさは1μm〜1,000μmである。凝集塊の直径は、光子相関分光法により流体力学的相当直径として測定される。
【0040】
産業上取扱性に関して、金属酸化物は、特に、金属−酸素結合中に共有結合部分を有する酸化物が好ましく、例えば主族元素並びに遷移元素の凝集状態の固体酸化物が挙げられ、その例として、酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ガリウム及び酸化インジウム等の三族元素の酸化物、二酸化ケイ素、二酸化ゲルマニウム、酸化スズ、二酸化スズ、酸化鉛及び二酸化鉛等の四族元素の酸化物、並びに二酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化ハフニウム等の四族遷移元素の酸化物などが挙げられる。他の例として、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、クロム及びバナジウムの酸化物等の安定した酸化物等が挙げられる。
【0041】
この中でも、アルミニウム(III)酸化物、チタン(IV)酸化物及びシリコン(IV)酸化物が特に好ましく、例えば、湿式化学法によって得られる沈降シリカ若しくはシリカゲル、又は高温プロセスで調製される酸化アルミニウム、酸化チタン若しくは酸化ケイ素、発熱的に得られる酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素若しくはシリカ等が挙げられる。
【0042】
特に、発熱性(ヒュームド)シリカが好ましく、例えば、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ヒドロトリクロロシラン、ヒドロメチルジクロロシラン、その他のメチルクロロシラン類、又はアルキルクロロシラン類等の有機ケイ素化合物、若しくは炭化水素との混合物からの炎色反応、又は好ましくは、揮発可能若しくは噴霧可能な、上記有機ケイ素化合物と炭化水素の任意の所望の混合物からの炎色反応によって調製でき、炎は水素−酸素フレイム、あるいは一酸化炭素−酸素フレイムが可能である。シリカは更に水を加えても加えなくても調製することができ、例えば精製工程では水を加えないことが好ましい。
【0043】
前述の固体の所望の混合物を表面修飾に使用することができる。
【0044】
発熱性シリカのフラクタル次元は、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.1以下、特に好ましくは1.95〜2.05であり、即ち、粒子表面積Aは粒子半径RのD乗に比例する。
【0045】
シリカの質量フラクタル次元Dは、好ましくは2.8以下、より好ましくは2.3以下、特に好ましくは1.7〜2.1である(例えば、F.Saint−Michel,F.Pignon,A.Magnin,J. Colloid Interface Sci.2003,267,314に掲載)。即ち、粒子質量Mは粒子半径RのD乗に比例する。
【0046】
未修飾シリカは、好ましくは、表面シラノール基(SiOH)の密集度が2.5 SiOH/nm未満、好ましくは、2.1 SiOH/nm未満、より好ましくは、2 SiOH/nm未満、特に好ましくは、1.7 SiOH/nm〜1.9 SiOH/nmである。
【0047】
新たに調製されバーナーから直接入手される、一時的に保存された、又は既に業務用に個装された親水性シリカを使用することが可能である。
【0048】
60g/Lよりも小さなかさ密度の非圧密シリカが好ましく使用できるが、60g/Lより大きなかさ密度の圧密シリカも使用できる。
【0049】
異なる金属酸化物、又はシリカの混合物が好ましくは使用可能である。例えば、BET比表面積が異なる金属酸化物、若しくはシリカの混合物、疎水化度、若しくはシリル化度が異なる金属酸化物の混合物が好ましくは使用可能である。
【0050】
金属酸化物は、連続又はバッチ式で調製可能である。シリル化方法は1以上の工程からなっていてもよい。シリル化金属酸化物は下記個別の工程で調整プロセスを行う方法で調製されることが好ましい。(A)第一に、親水性金属酸化物を調製する。(B)必要に応じて、一般式(IV)で表されるシラン又はオルガノポリシロキサンを使用する公知の方法により金属酸化物を予め修飾する。(C)金属酸化物を以下(1)〜(3)でシリル化/修飾する。(1)親水性又は予め修飾した金属酸化物に、一般式(II)で表されるシランを付着させる。(2)金属酸化物と使用する化合物を反応させる。(3)使用した過剰な化合物を除去するために金属酸化物を精製する。
【0051】
表面処理は、好ましくは、シリル化金属酸化物を酸化させない大気下で行われる。即ち、酸素は、好ましくは10体積%未満、より好ましくは2.5体積%未満であり、特に好ましくは1体積%未満である。
【0052】
被覆、反応及び精製は、好ましくは、バッチ式、又は連続反応として行うことができる。
技術的な理由から、連続反応が好ましい。
【0053】
被覆(工程C1)は、温度が、−30℃〜250℃、好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは20℃〜80℃で行われ、被覆工程は、特に好ましくは、30℃〜50℃で行われる。
反応時間は、1分間〜24時間続き、好ましくは、15分間〜300分間、特に好ましくは、空時収量のため15分間〜240分間である。
被覆工程の圧力は、0.2バールまでの僅かな減圧から過剰圧力である100バールであり(ゲージ圧)、技術上、標準圧力、即ち、外圧/大気圧に対して加圧しない操作であるのが好ましい。
【0054】
一般式(II)で表されるシラン、及び任意で一般式(IV)で表されるシラン、又はオルガノポリシロキサンは、好ましくは、液体に加えられ、特に、シリカ粉末に混入される。化合物は、その化合物だけで、又は溶液として公知の工業的に使用される溶媒と混合することができ、該工業的に使用される溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、へキサン、トルエン等の炭化水素類等が挙げられる。溶液の濃度は5重量%〜95重量%、好ましくは30重量%〜95重量%、特に好ましくは50重量%〜95重量%である。
【0055】
この混合は、ノズル技術又は同等の技術、例えば、効果的なノズルスプレー法によって行われるのが好ましく、(好ましくは5バール〜20バール)の圧力下で一本の流体ノズルを用いたスプレー法、(好ましくは、気体及び液体:2バール〜20バール)の圧力下で二本の流体ノズルを用いたスプレー法、移動可能な、回転若しくは静止した内部構造体を備えた気体/固体交換ユニット又は噴霧器を用いた超微細分離法等が挙げられ、一般式(II)で表されるシランとシリカ粉末とを均一に分布させる。
エアロゾルは、好ましくは流動固体の上から、又は流動固体の中に噴霧され、製品の上から噴霧するのが好ましい。
一般式(II)で表されるシランは、非常に微細に分離されたエアロゾルとして添加されることが好ましく、エアロゾルは、沈降速度が0.1cm/s〜20cm/sであることを特徴とする。
金属酸化物へのシリカの付着、及び一般式(II)で表されるシランとの反応は、機械的流動化、又は気流による流動化で行われるが、機械的流動化が特に好ましい。
【0056】
気流による流動化は、一般式(II)で表されるシラン、シリカ、及び修飾されたシリカと反応しないあらゆる不活性ガス、即ち、好ましくはN、Ar、他の希ガス、CO等の二次反応、分解反応、酸化プロセス、又は燃焼及び爆発現象を引き起こさない不活性ガスによって行われる。流動化用気体は、表面ガス速度が、好ましくは0.05cm/s〜5cm/s、特に好ましくは0.5cm/s〜2.5cm/sで供給される。特に好ましくは機械的流動化であり、機械的流動化は、不活性化に使用した気体に更に気体を追加せずに、パドル型撹拌器、アンカー型撹拌器及びその他適した攪拌部材によって行うことができる。
特に好ましい実施形態において、一般式(II)表される未反応シラン、任意で一般式(IV)で表される未反応シラン、又はオルガノポリシロキサン、及び精製工程からの排気は、シリカの被覆工程及び付着工程に再循環される。該再循環は部分的又は完全に行われ、精製工程から生じる気体の全体の体積の10%〜90%について行うのが好ましい。
【0057】
これは、自動温度調節された装置により適切に行われる。再循環は、好ましくは、非凝縮相、即ち、気体又は蒸気状態で行われる。この再循環は、均圧に沿った質量移動として、又は、ファン、ポンプ、圧縮空気膜ポンプ等の技術的に標準的なガス輸送システムで制御した質量移動として行われる。非凝縮相の再循環が好ましいため、再循環管路を加熱するのがよい。
【0058】
一般式(II)で表される未反応シラン、任意で一般式(IV)で表される未反応シラン、又はオルガノポリシロキサン、及び排気の再循環は、この場合は、全質量に対して、好ましくは5重量%〜100重量%、好ましくは、30重量%〜80重量%である。再循環は、新たに使用したシラン100部に対して、1部〜200部、好ましくは10部〜30部である。
修飾反応から被覆工程への精製物の再循環は、連続的であるのが好ましい。
【0059】
反応(工程C2)は、温度20℃〜300℃、好ましくは20℃〜200℃、特に好ましくは40℃〜180℃で行われる。
反応は、好ましくは、反応時間中に反応温度が高くなる温度勾配で行われる。
これは、反応開始時の反応容器の壁面温度が、好ましくは、20℃〜100℃、より好ましくは40℃〜80℃であり、反応終了までの反応容器の壁面温度が、好ましくは80℃〜180℃、より好ましくは、100℃〜150℃であり、ただし、反応容器の壁面温度は、反応開始時が反応終了までよりも低いことが条件である。従って、反応容器の壁面温度は、好ましくは、反応開始時が20℃〜100℃であり、且つ反応終了までが80℃〜180℃であり、ただし、反応容器の壁面温度は、反応開始時が反応終了までよりも低いことが条件であり、好ましくは、反応容器の壁面温度は、反応開始時が40℃〜80℃であり、且つ反応終了までが80℃〜150℃である。
【0060】
これは、更に、反応開始時の製品温度は、好ましくは20℃〜100℃、より好ましくは40℃〜80℃、反応終了までの製品温度は、好ましくは80℃〜180℃、より好ましくは100℃〜150℃であり、ただし、製品温度は、反応開始時が反応終了までよりも低いことが条件である。従って、製品温度は、好ましくは、反応開始時が20℃〜100℃であり、且つ反応終了までが80℃〜180℃であり、ただし、製品温度は、反応開始時が反応終了までよりも低いことが条件である。好ましくは、製品温度は、反応開始時が40℃〜80℃であり、且つ反応終了までが80℃〜150℃である。
【0061】
プロセスが行われる方法次第で、即ち、プロセスが連続的に、又はバッチ式に行われれば、温度勾配は、場所dT/dx(連続的)、又は時間dT/dt(バッチ式)によって決まることを意味する。プロセスは連続的に行われるのが好ましい。
【0062】
反応温度、即ち、壁面又は製品温度、及び温度勾配は、以下の方法で得られる。
1.プロセスの連続過程(即ち、dT/dx)
金属酸化物は、好ましくは、気流による流動化又は機械的流動化により、壁面温度が上がっている加熱帯を通って運ばれる。壁面温度を、連続して、又は次第に上げてもよい。次第に上げる場合、反応帯は、好ましくは最大10の異なる温度からなる加熱帯とすることができ、好ましくは5つの異なる温度からなる加熱帯、特に好ましくは3つの異なる温度からなる加熱帯であり、2つの異なる温度からなる加熱帯の詳細な実施形態において、加熱帯から加熱帯へと温度が高くなる。任意で、個別の加熱帯はフラップで互いに分けることができる。反応容器は、縦型でも横型でもよいが、縦型が好ましい。縦型の場合、金属酸化物は、反応帯を下から上へ、又は上から下へと通過できる。上から下への通過が好ましい。
または、金属酸化物は、好ましくは、気流による流動化又は機械的流動化により、異なる、即ち、壁面温度が上がっていく別個の反応容器を通って運ばれる。反応カスケードは、最大10の壁面温度が異なる反応容器、好ましくは、最大5つの壁面温度が異なる反応容器、特に好ましくは最大3の壁面温度が異なる反応容器からなってもよく、2つの壁面温度が異なる反応容器の詳細な実施形態において、反応容器から反応容器へと壁面温度が上がることが条件である。反応容器は、縦型でも横型でもよいが、縦型が好ましい。縦型の場合、金属酸化物は、反応帯を下から上へ、又は上から下へと通過できる。上から下への通過が好ましい。
または、金属酸化物は、好ましくは、機械的流動化により縦型の反応容器を通って運ばれる。反応容器は、下部が最高反応温度に加熱される。反応容器の上部(最低温度)と反応容器の下部(最高温度)の温度勾配は、反応容器内で確立される。製品温度の温度勾配は、例えば、プラグフローで適切な攪拌技術によって制御できる。これは、好ましくは、部分ごとに配置される様々な攪拌子の組み合わせで達成できる。よって、例えば、水平混合部分、その後に垂直混合部分の特性が使用できる。
【0063】
2.バッチ式製造過程(バッチ操作)
金属酸化物は、好ましくは、反応容器内での不活性ガス、又は機械的攪拌により流動化される。反応過程において、反応容器の反応温度は、徐々に、即ち、傾斜的に、又は段階的に高くなる。
反応温度に対する反応時間は、好ましくは、5分間〜240分間、更に好ましくは、10分間〜180分間、特に好ましくは15分間〜120分間である。
【0064】
反応帯の加熱は、例えば、容器の側面を介して、例えば、電気加熱、又は温度調整液、若しくは蒸気により行うことができる。必要に応じて、熱線が反応容器内で使用できる。必要に応じて、赤外線ラジエーターで外側から加熱することができる。
壁面及び製品温度の温度測定は、好ましくは、通常使用される測定装置、例えば、熱電対、抵抗温度計、バイメタル温度計、IRセンサー等で行うことができる。
【0065】
全反応時間は、10分間〜48時間、好ましくは15分間〜5時間、特に好ましくは20分間〜4時間である。
【0066】
必要に応じて、液体、又は揮発性アルコール類のようなプロトン性有機溶媒を加えることができる。代表的なアルコール類はイソプロパノール、エタノール及びメタノールである。また、上記のプロトン性有機溶媒の混合液を加えることもできる。シリカに対して、プロトン性溶媒を加える量としては、1重量%〜50重量%が好ましく、5重量%〜25重量%が特に好ましい。
好ましくは、無水条件下で金属酸化物の修飾が行われる。これは、使用される親水性金属酸化物、又は一般式(III)で表される基で修飾された金属酸化物の物理吸着水の量が、5重量%未満、好ましくは1.5重量%未満、特に好ましくは0.5重量%未満であることを意味する。
【0067】
好ましくは、金属酸化物と一般式(II)で表されるシランとの反応に対して水を加えない。
好ましくは、使用されるプロセスガスは、供給される前に乾燥される。
必要に応じて、一般式(II)で表されるシランでの修飾に使用される金属酸化物は、反応前に乾燥できる。
【0068】
必要に応じて、ルイス塩基若しくはブレンステッド塩基の塩基特性を有する塩基性触媒、例えば、アンモニア、又はトリエチルアミン等のアミン等を加えることができる。これらの量は微量であることが好ましく、即ち1,000ppm未満であることが好ましく、無触媒が特に好ましい。
【0069】
精製(工程C3)は、精製温度が20℃〜200℃、好ましくは50℃〜180℃、特に好ましくは50℃〜150℃で行われる。
精製工程は、好ましくは、動きに特徴があり、ゆっくり動き、且つ僅かに混合するのが特に好ましい。攪拌部材は、混合及び流動化は起こすが完全には乱流させないように有利に調製されて動かされる。
【0070】
更に、精製工程は、好ましくは、気体の導入量の増加を特徴とすることができ、対応する表面ガス速度は、好ましくは0.001cm/s〜10cm/s、より好ましくは0.01cm/s〜1cm/sである。これは、一般式(II)で表されるシラン、シリカ、及び修飾されたシリカと反応しないあらゆる不活性ガス、即ち、好ましくはN、Ar、他の希ガス、及びCO等の、二次反応、分解反応、酸化プロセス又は燃焼及び爆発現象を引き起こさない不活性ガスによって行うことができる。
【0071】
更に、修飾工程中、又は精製工程の後で、プレスロール、エッジミル、及びボールミル等の粉砕ユニット、連続的に、又はバッチ式に、スクリュー、スクリュー混合機、スクリュー圧縮機、又はブリケッティングマシンによる圧縮法、適当な真空方法による空気、気体の吸引除去による圧縮方法等のシリカの機械的圧縮法を用いることができる。
【0072】
修飾工程中の機械的圧縮方法が特に好ましく、工程Cにおいて、プレスロール、ボールミル等の上記粉砕装置、又はスクリュー、スクリュー混合機、スクリュー圧縮機、又はブリケッティングマシンによる圧縮を特徴とする。
【0073】
更に、特に好適な手順としては、精製の後に、適当な真空方法、又はプレスロール、又はこれらの2つのプロセスの併用により空気、気体の吸引除去による圧縮等のシリカの機械的圧縮方法が用いられる。
【0074】
更に、特に好適な手順は、精製の後に、ピン・ディスクミル、ハンマーミル、向流ミル、インパクトミル、又は粉砕/分級機等のシリカを解凝集する方法を用いることができる。
【0075】
更に好適な手順は、一般的に工業的に使用される有機溶剤中への親水性金属酸化物の分散であり、該溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ペンタン、ヘキサン等の炭化水素類、トルエン等の芳香族化合物類、ヘキサメチルジシロキサン等の揮発性溶剤、及びこれらの混合物が挙げられ、一般式(II)で表されるシランと反応する。
【0076】
プロセスは、連続又はバッチ式で行うことができ、1以上の工程からなってもよい。連続プロセスが好ましい。好ましくは、修飾された金属酸化物は、以下(1)〜(3)のプロセスで調製される。(1)金属酸化物を上記溶剤の一つと混合する。(2)金属酸化物をシランと反応させる。(3)金属酸化物から溶剤、過剰なシラン、及び副生成物を除去する。
【0077】
分散(1)、反応(2)、乾燥(3)及び、必要に応じて後続反応(4)が、好ましくは、酸素を10体積%未満、特に好ましくは2.5体積%未満含む雰囲気下で行われ、酸素1体積%未満の場合に最良の結果が得られる。混合(1)は、好ましくは、アンカー型撹拌器、棒型撹拌器等の標準的な混合ユニットによって行うことができる。任意で、混入は、溶解機、ロータステータユニットにより高剪断で行うことができ、任意で超音波発生機、又はボールミル等の粉砕ユニットにより剪断ギャップ内で直接測定する。任意で、上記に示す様々なユニットを同時に、又は連続して使用できる。一般式(II)で表されるシランと金属酸化物との反応(2)に対して、シランは、好ましくは、単体で、又は溶液として、金属酸化物の分散に適切な溶媒に加えられ、均一に混合される。シランは、分散物の調製に使用する容器に、又は別の反応容器に好適に加えることができる。もし、シランを分散物調製容器に加える場合は、分散と同時に、又は分散の終了後に行うことができる。また、シランは、分散工程で分散媒質の溶液に直接加えることができる。
【0078】
また、ブレンステッド酸等の酸性触媒、例えば、液体若しくは気体の塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、又はブレンステッド塩基等の塩基触媒、例えば、液体若しくは気体のアンモニア、アミン、NEt若しくはNaOHが反応混合物に加えられる。
【0079】
反応工程は、温度が、好ましくは0℃〜200℃、より好ましくは10℃〜180℃、特に好ましくは20℃〜150℃で行われる。
【0080】
溶剤、過剰なシラン、及び副生成物の除去(3)は、好ましくはドライヤーによって、又は噴霧乾燥で行うことができる。
任意で、乾燥工程は、その後に反応を完了させるための後続工程(4)を続けることもできる。
【0081】
後続反応は、温度が、好ましくは20℃〜300℃、より好ましくは20℃〜200℃、特に好ましくは40℃〜180℃で行われる。
後続反応は、好ましくは、上記に示す固体の金属酸化物の修飾の場合のように、反応時間中に反応温度が高くなる温度勾配で行われる。
後続反応の全反応時間は、好ましくは、10分間〜48時間、より好ましくは、15分間〜5時間、特に好ましくは、20分間〜4時間である。
【0082】
更に、乾燥、又は後続反応後、プレスロール、エッジミル、及びボールミル等の粉砕ユニット、連続的に、又はバッチ式に、スクリュー、スクリュー混合機、スクリュー圧縮機、又はブリケッティングマシンによる圧縮法、適当な真空方法による空気、気体の吸引除去による圧縮方法等の金属酸化物の機械的圧縮法を用いることができる。
【0083】
更に、特に好適な手順は、乾燥、又は後続反応後に、適当な真空方法、又はプレスロール、又はこれらの2つのプロセスの併用により空気、気体の吸引除去による圧縮等の金属酸化物の機械的圧縮方法が続く。
【0084】
更に、特に好適な手順は、乾燥、又は後続反応後に、ピン・ディスクミル、ハンマーミル、向流ミル、インパクトミル、又は粉砕/分級機等の金属酸化物を解凝集する方法を用いることができる。
【0085】
一般式(II)で表されるシランは、BET比表面積が100m/gである(DIN EN ISO9277/DIN66132によるBET法により測定)親水性金属酸化物表面に対して、好ましくは1重量%〜20重量%(金属酸化物に対して)、より好ましくは2.0重量%〜15重量%(金属酸化物に対して)、特に好ましくは、2.5重量%〜10重量%(金属酸化物に対して)で使用される。
【0086】
好適には、表面が一様に修飾され、平均一次粒径が100nm未満、好ましくは平均一次粒径が5nm〜50nmのシリカが調製される。これらの一次粒子は、シリカ内で孤立して存在するのではなく、直径50nm〜1,000nm、好ましくは50nm〜500nm、特に好ましくは75nm〜350nmのより大きい凝集塊(DIN53206に定義されている)及び凝集塊からなる凝集体(DIN53206に定義されている)を構成し、外部からの剪断荷重に依存するが、大きさは1μm〜1,000μmである。シリカは、比表面積が10m/g〜400m/g(DIN66131及びDIN66132によるBET法により測定)であり、質量フラクタル次元Dが2.8以下、好ましくは2.3以下、特に好ましくは1.7〜2.1である(例えば、F.Saint−Michel,F.Pignon,A.Magnin,J.Colloid Interface Sci.2003,267,314に記載)。
好ましくは、シリカ表面は一般式(I)又は(II)及び(III)で表される基で、化学的に恒久的に修飾される。
【0087】
修飾の恒久性の適切な評価方法は、抽出可能なシラン、即ち、シリカ表面に化学的に結合していないシランの定量測定である。本発明のシリカは、抽出物の好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、特に好ましくは1重量%未満、及び特定の実施形態では抽出物が検出できない点が優れている。
【0088】
好ましくは、修飾された金属酸化物表面は、また、T基、任意でT基、更にT基を有してもよい。好ましくは、T基とT基のNMR信号強度の合計のT基の合計強度T+T+Tに対する割合は、少なくとも20%であり、好ましくは、25%以上、特に好ましくは30%以上、及び特定の実施形態において、T基の合計強度T+T+Tの合計強度の割合は35%以上である。
【0089】
基、T基、T基の相対的比率は、29Si−CPMASモードの固体NMR分光法によって決めることができる。この方法では、個別のピークのフラクションFの相対面積は、T基の合計ピーク面積に対してT基、T基、T基の個別の信号に対する個別のピーク面積(PA)から決められる。即ち、例えば、
A(T)=c=PA(T)/PA(T)+PA(T)+PA(T
個別のピーク面積(PA)は、ガウス分布の適合によって、対応する基の信号の合計ピークをピーク解析することで得られる。
同様の手順が他の上記の基に適合される。
【0090】
29Si−NMRスペクトルにおける、個別の有機ケイ素基の化学シフトは、例えば、D.W.Sindorf,G.E.Maciel,Journal of the American Chemical Society 1983, 105, 3767に示されている。
【0091】
好ましくは、本発明の金属酸化物は、炭素含有量が1重量%〜20重量%、好ましくは、1重量%〜15重量%、特に好ましくは、1重量%〜10重量%である。
【0092】
更に、本発明の金属酸化物は、表面の高い正摩擦帯電qtribを有することを特徴とし、好ましくは、+50μC/g〜+1,000μC/g、より好ましくは、+75μC/g〜+750μC/g、特に好ましくは、+100μC/g〜+500μC/gである。
【0093】
更に、表面の正摩擦帯電を特徴とする本発明の金属酸化物は、優れたプロセス安定性を有する。これは、表面摩擦帯電の相対的減少(qtrib(3,600)−qtrib(150))×100%/qtrib(150)が、60%以下、好ましくは55%以下、特に好ましくは50%以下であることを意味し、式中、qtrib(3,600)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を3,600秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を150秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は0よりも大きい必要がある。
【0094】
更に、本発明の金属酸化物は、表面の正摩擦帯電が高い大気湿度温度に対して優れた安定性を有することを特徴とする。これは、表面摩擦帯電の相対的減少(qtrib(3,600)−qtrib(150))×100%/qtrib(150)が、60%以下、好ましくは55%以下、特に好ましくは50%以下であることを意味し、式中、qtrib(3,600)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を3,600秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を150秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は0よりも大きい必要があり、混合物は、測定前に5日間、32℃、相対湿度80%で保存される。
【0095】
本発明の金属酸化物は、例えば、分級ミル又はピン・ディスクミルによる解凝集後に、平均凝集体径D50が、好ましくは、50μm未満、より好ましくは25μm未満、特に好ましくは20μm未満、非常に特に好ましくは15μm未満となる。
【0096】
本発明の金属酸化物は、例えば、分級ミル又はピン・ディスクミルによる解凝集後に、凝集体の粒径分布が狭くなる。これは、D95とD50との比が、好ましくは3.0未満、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下であることを意味する。
【0097】
凝集体の粒径は、超音波処理でイソプロパノールに分散した金属酸化物粒子のレーザーによるフラウンホーファー回析で測定される。
【0098】
本発明の金属酸化物は、更に次の点で特徴づけられる。粉末系において、例えば、湿気の影響による固化又は塊の形成を防ぐが、再凝集する傾向がないため、望ましくない分離が起きるが、粉末の流動性を保つことで、混合物に負荷安定性及び保存安定性を得ることができる。これは、例えば、一成分及び二成分系である、非接触、又は電子写真印刷/複写プロセスにおける非磁性及び磁性トナー現像剤、並びに帯電制御剤の使用に対して、特にあてはまる。これは、150秒間活性化した後のトナー粉末及び本発明の金属酸化物を含む混合物の流動性が、同様の処理をした本発明のシリカを含まないトナー粉末の空試料よりも少なくとも1.1優れ、好ましくは、1.2優れ、特に好ましくは、1.3優れることを意味する。該流動性は、上記の活性時間後に異なる量で「q/m−mono」測定装置(EPPING社、(ドイツ・ノイファーン D−85375)によって測定される。
これは、また、被覆系として使用される樹脂粉末にもあてはまる。
【0099】
本発明は、更に、粘性付与成分として、本発明の金属酸化物を低極性から高極性系で使用することに関する。これは、すべての無溶媒、溶媒含有、膜形成被膜材料、ゴム状から硬質の被覆剤、接着剤、シーリング及び注封材料、並びに他の類似する系に関する。
【0100】
本発明の金属酸化物は、以下の系に使用可能である。
エポキシ系
ポリウレタン(PU)系
ビニルエステル樹脂
不飽和ポリエステル樹脂
低溶媒樹脂系、いわゆる、高固体系
例えば、被覆材料として粉末で用いられる無溶媒樹脂
【0101】
本発明の金属酸化物は、これらの系へのレオロジー助剤として、必要な粘性、構造粘性、チキソトロピー、及び垂直面で垂れない十分な流量限界を付与する。
【0102】
本発明の金属酸化物は、特に、ポリジメチルシロキサン、フィラー、及び他の添加剤等からなるシリコーンポリマーからなるシリコーンエラストマー等の未架橋及び架橋シリコーン系において、レオロジー助剤及び補強充填剤として使用可能である。これらの系は、例えば過酸化物による架橋、或いは、付加反応、オレフィン基とSi−H基との間のいわゆるヒドロシリル化反応による架橋、若しくは、水に接触させることで起こる反応等、シラノール基間の縮合反応により架橋してもよい。
【0103】
本発明の金属酸化物は、更に、完全に硬化した系の機械的特性を向上する目的で、溶剤型、無溶媒、及び水性、コーティング、接着剤、シーリング及び注封材料、並びに他の類似の系において特に補強充填剤として使用してよい。本発明の金属酸化物の特性に基づいて、粘度を過度に増加させずに、非硬化系での金属酸化物の高充填が実現可能である。
【0104】
本発明は、更に、本発明の金属酸化物を含むトナー、現像剤、及び帯電制御剤に関する。現像剤、及びトナーの例としては、磁性一成分及び二成分トナー、並びに非磁性トナーが挙げられる。これらのトナーは、スチレン樹脂、及びアクリル樹脂等の樹脂から構成されてもよく、好ましくは、1μm〜100μmの粒度分布になるように粉砕されてもよく、或いは分散液、エマルジョン、溶液中で、大量に重合プロセスにより調製され、好ましくは1μm〜100μmの粒子分布である樹脂でもよい。本発明のシリカは、好ましくは、粉体流動特性の向上及び制御に、及び/又は、トナー若しくは現像剤の摩擦帯電性の調節及び制御に使用される。このようなトナー及び現像剤は、電子写真印刷及び印刷プロセスで好ましく使用することができ、また、直接画像転送プロセスに用いることもできる。
【0105】
トナーの組成は概して以下のとおりである。
バインダーとしての固体樹脂は、固体樹脂から粉末を調製するために十分に硬く、好ましくは、分子量が10,000を超え、好ましくは、10,000未満の分子量を有するポリマーの割合が10%未満であり、例えば、ジオールとカルボン酸、カルボン酸エステル又はカルボン酸無水物の共縮合物であるポリエステル樹脂であり、例えば、酸価が1〜1,000、好ましくは5〜200であり、又は、ポリアクリレート、ポリスチレン、若しくはこれらの混合物、又は共重合体であり、平均粒径が20μm未満、好ましくは15μm未満、特に好ましくは10μm未満である。
トナー樹脂は、アルコール、カルボン酸、及びポリカルボン酸を含んでもよい。
【0106】
工業的に通常用いられる染料は、黒色カーボンブラック、カラーブラック(Farb−Russ)、シアン染料、マゼンタ染料、及びイエロー染料等である。
【0107】
正帯電制御剤は、一般的には、ニグロシン染料型帯電制御剤、例えば、三級アミンに置換されたトリフェニルメタン染料、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム=臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム)等の四級アンモニウム塩又はポリアミンであり、概して、5重量%未満を用いる。
【0108】
任意で、負帯電制御剤は、金属含有アゾ染料、銅フタロシアニン染料、又は金属錯体等の帯電制御剤であり、例えば、アルキル化サリチル酸誘導体、又は安息香酸、特に、ホウ素、又はアルミニウム等が挙げられる。必要量は、概して、5重量%未満である。
【0109】
磁性トナーを調製するために、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、合金等の強磁性体、又は磁鉄鉱、赤鉄鉱、若しくはフェライト等の化合物等の磁界で帯磁可能な粉末等の磁性粉末を加えることができる。
【0110】
また、鉄粉、ガラス粉、ニッケル粉、及びフェライト粉等の現像剤を加えることも出来る。
【0111】
本発明の金属酸化物の使用量は、平均粒径が20μmのバインダーとしての固体樹脂に対して、0.01重量%よりも多く、好ましくは、0.1重量%よりも多い。バインダーの平均粒径が小さくなるにつれ、概して、金属酸化物の必要量は多くなり、金属酸化物の必要量の増加は、バインダーの粒径に反比例する。しかしながら、いずれの場合でも、金属酸化物の量は、バインダー樹脂に対して、好ましくは5重量%未満である。
【0112】
更に、無機添加剤は、平均粒径が100nm〜1,000nmである二酸化ケイ素を含む微細な、及び粗い二酸化ケイ素等であり、例えば、発熱性酸化アルミニウム等の酸化アルミニウム、発熱性二酸化チタン、アナターゼ、ルチル等の二酸化チタン、及び酸化ジルコニウム等が挙げられる。
【0113】
ワックスは、例えば、10個〜500個の炭素原子を有するパラフィンワックス、シリコーンワックス、オレフィンワックス、ヨウ素価が50未満、好ましくは25未満であり、けん化価が10〜1,000、好ましくは25〜300であるワックス等が挙げられる。
【0114】
トナーは、電子写真画像形成及び再形成用などの様々な現像方法に使用可能である。磁気ブラシ法、カスケード法、導電性及び非導電性磁気方式の使用、パウダークラウド法、紙上への現像法等が挙げられる。
上記式中の全ての記号は、それぞれ独立して場合毎に定義される。
【0115】
実施例1
25℃、不活性窒素ガス下で、水分0.5%未満、炭素含量約2%、修飾度約50%、及び出発シリカの比表面積が300m/g(DIN EN ISO9277/DIN66132によるBET法に従って測定)(商品名:HDK(登録商標)H30、ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン))であるジメチルシリルオキシ基で修飾した疎水性シリカ100gに、シクロへキシルアミノプロピルトリメトキシシラン12gを1本の流体ノズルを用いて(圧力5バール)噴霧して加える。このようにして得られたシリカを、更に、温度25℃、滞留時間0.25時間で攪拌して流動化し、そして、100Lの乾燥オーブンで窒素下、80℃で1時間、150℃で2時間反応させる。
分析データを表1に示す。
【0116】
実施例2(比較例;本発明ではない)
25℃、不活性窒素ガス下で、水分0.5%未満、炭素含量約2%、修飾度約50%、及び出発シリカの比表面積が300m/g(DIN EN ISO9277/DIN66132によるBET法に従って測定)(商品名:HDK(登録商標)H30、ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン))であるジメチルシリルオキシ基で修飾した疎水性シリカ100gに、水5g、そしてシクロへキシルアミノプロピルトリメトキシシラン12gを1本の流体ノズルを用いて(圧力5バール)噴霧して加える。このようにして得られたシリカを、更に、温度25℃、滞留時間0.25時間で攪拌して流動化し、そして、100Lの乾燥オーブンで窒素下、80℃で1時間、150℃で2時間反応させる。
分析データを表1に示す。
【0117】
実施例3
25℃、不活性窒素ガス下で、水分0.5%未満、炭素含量約1%、修飾度約50%、及び出発シリカの比表面積が150m/g(DIN EN ISO9277/DIN66132によるBET法に従って測定)(商品名:HDK(登録商標)H15、ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン))であるジメチルシリルオキシ基で修飾した疎水性シリカ100gに、シクロへキシルアミノプロピルトリメトキシシラン6gを1本の流体ノズルを用いて(圧力5バール)噴霧して加える。このようにして得られたシリカを、更に、温度25℃、滞留時間0.25時間で攪拌して流動化し、そして、100Lの乾燥オーブンで窒素下、80℃で1時間、150℃で2時間反応させる。
分析データを表1に示す。
【0118】
実施例4
25℃、不活性窒素ガス下で、水分0.5%未満、及び比表面積が300m/g(DIN EN ISO9277/DIN66132によるBET法に従って測定)(商品名:HDK(登録商標)T30、ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン))である親水性シリカ100gに、シクロへキシルアミノプロピルトリメトキシシラン16gを1本の流体ノズルを用いて(圧力5バール)噴霧して加える。このようにして得られたシリカを、更に、温度25℃、滞留時間0.25時間で攪拌して流動化し、そして、100Lの乾燥オーブンで窒素下、80℃で1時間、150℃で2時間反応させる。
分析データを表1に示す。
【0119】
実施例5(比較例;本発明ではない)
25℃、不活性窒素ガス下で、水分0.5%未満、及び比表面積が300m/g(DIN EN ISO9277/DIN66132によるBET法に従って測定)(商品名:HDK(登録商標)T30、ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン))である親水性シリカ100gに、水5g、そしてアミノプロピルトリメトキシシラン16gを1本の流体ノズルを用いて(圧力5バール)噴霧して加える。このようにして得られたシリカを、更に、温度25℃、滞留時間0.25時間で攪拌して流動化し、そして、100Lの乾燥オーブンで窒素下、80℃で1時間、150℃で2時間反応させる。
分析データを表1に示す。
【0120】
実施例6
まず初めに不活性アルゴンガス下でヘキサメチルジシロキサン800mLを2Lの三口フラスコに導入し、そして、シクロへキシルアミノプロピルトリメトキシシラン6gに、水分0.5%未満、炭素含量約2%、修飾度約50%、及び出発シリカの比表面積が300m/g(DIN EN ISO9277/DIN66132によるBET法に従って測定)(商品名:HDK(登録商標)H30、ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン))であるジメチルシリルオキシ基で修飾した疎水性シリカ50gを加える。懸濁液を還流下で2時間加熱し、室温に冷却後、溶媒を減圧下で除去する。その後、残留粉末を、100Lの乾燥オーブンで窒素下、100℃で1時間、そして150℃で2時間の合計滞留時間3時間で反応させる。
分析データを表1に示す。
【0121】
実施例7
連続プラントで、温度50℃、不活性窒素ガス下で、水分0.5%未満、炭素含量約2%、修飾度約50%、及び出発シリカの比表面積が300m/g(DIN EN ISO9277/DIN66132によるBET法に従って測定)(商品名:HDK(登録商標)H30、ワッカー・ケミー社(ドイツ、ミュンヘン))であるジメチルシリルオキシ基で修飾した疎水性シリカ15kg/hに、シクロへキシルアミノプロピルトリメトキシシラン1.8kg/hを2本の流体ノズルを用いて噴霧して混合する。このようにして得られたシリカを、入り口温度50℃、及び出口温度80℃の反応器内を移動させながら反応させる。温度勾配領域での滞留時間は、約2時間である。そして、シリカを乾燥機内で120℃で乾燥する。
分析データを表1に示す。
【0122】
【表1】
*)CPMASモードで測定
【0123】
分析方法の説明
1.炭素含有率(%C)
炭素の元素分析
酸素流中で、1,000℃よりも高温で試料を燃焼し、得られた二酸化炭素を、計測器LECO244を使用し赤外線で検出及び定量化する。
2.摩擦帯電 qtrib(μC/g)
被覆されていない鉄粉(d50=172μm)にシリカ1%を加え、PEボトルで50回振って混合する。その後、PEボトルを活性化ユニット又はローラースタンド(エッピング社)に5分間置く。測定には、q/mメーター(エッピング社、ノイファーン・バイ・フライジング D‐85375)の高絶縁性金属セルに規定量の鉄粉/シリカ混合物を入れて測定する。以下のパラメータを使用する。
篩器材質:ステンレス鋼
篩目サイズ(上下部):45μm
圧縮空気:2.4bar;1L/分
真空:900mbar未満
3.表面摩擦帯電の相対的減少Dqrel
Dqrel=(qtrib(3,600)−qtrib(150))×100%/qtrib(150)
式中、qtrib(3,600)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を3,600秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は、トナー粉末と本発明の金属酸化物との混合物を150秒間活性化した後の表面摩擦帯電であり、qtrib(150)は0よりも大きい必要がある。測定には、シリカ0.8%を、市販の一成分トナー(磁性トナー;アクリル酸ポリスチレン;d50=14.2μm)に加え、ターブラー(Willy A. Bachofen AG Maschinenfabrik社、バーゼル CH−4058)を用いて20rpmで2時間混合する。トナー/シリカ混合物の規定量をq/m−mono測定装置(EPPING社、ノイファーン・バイ・フライジング D‐85375)の活性化ローラーに塗布し、150秒及び3,600秒間活性化後の摩擦帯電を測定する。以下の測定条件で行われる。
測定セルスペース:0.3mm
気流:100mL/分
測定時間:15秒間
4.抽出物
シリカ25gをスパチュラでテトラヒドロフラン100gに加え、氷冷しながら、40mmの歯付ディスク(Zahnschiebe)を有する溶解機、ディスパーマットCA−40−C(Getzmann社)により液体が均一になるまで攪拌し、8,400rpmで60秒間剪断し、超音波で60分間平衡化し、圧力ろ過によりクリアなろ液が2日後に分離される。ろ液は、原子吸光分光学法(AAS)でケイ素含有量に関して調べられる。検出限界は、シリカに対して、有機ケイ素化合物100ppm未満である。