特許第5661463号(P5661463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5661463-ドープされた石英ガラスの製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661463
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ドープされた石英ガラスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 20/00 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   C03B20/00 C
【請求項の数】22
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-525342(P2010-525342)
(86)(22)【出願日】2008年9月18日
(65)【公表番号】特表2010-538961(P2010-538961A)
(43)【公表日】2010年12月16日
(86)【国際出願番号】EP2008062410
(87)【国際公開番号】WO2009040287
(87)【国際公開日】20090402
【審査請求日】2011年4月19日
(31)【優先権主張番号】102007045097.6
(32)【優先日】2007年9月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507332918
【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(73)【特許権者】
【識別番号】510079363
【氏名又は名称】インスティトゥート フュア フォトニッシェ テヒノロギーエン エー ファウ
【氏名又は名称原語表記】Institut fuer Photonische Technologien e.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ラングナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス カイザー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルハルト シェッツ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ズーフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス キルヒホフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン グリム
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ライヒェル
【審査官】 吉川 潤
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−506946(JP,A)
【文献】 特開2001−302253(JP,A)
【文献】 特表2003−520810(JP,A)
【文献】 米国特許第03634711(US,A)
【文献】 英国特許出願公開第01178803(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 20/00
C03C 3/06
C03B 8/00 − 8/04
C03B 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO粒子を含有する懸濁液を準備し、該懸濁液に第一のドーパントのための出発化合物および第二のドーパントのための出発化合物を供給し、第一のドーパントおよび第二のドーパントの粒子またはそれらの前駆物質の粒子の少なくとも一部を該懸濁液中で該出発化合物の沈殿反応の沈殿物として作製し、前記懸濁液中の液体を、前記第一のドーパントの粒子および第二のドーパントの粒子またはそれらのドーパントの前駆物質の粒子を含有するドープされた中間生成物の形成下で除去し、かつ前記ドープされた中間生成物から焼結によってドープされた石英ガラスを形成し、その際、前記懸濁液に前記第一および第二のドーパントの出発化合物を溶解された形で添加し、かつ前記懸濁液のpH値を、前記出発化合物の添加に際して第一のドーパントの粒子および第二のドーパントの粒子またはそれらの前駆化合物の粒子が直ちに沈殿するように調整することによって、沈殿反応を、pH値制御された混合沈殿として引き起こす、共ドープされた石英ガラスを製造する方法。
【請求項2】
前記懸濁液として水性懸濁液を準備し、均一化し、かつを上回るpH値に調整することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液のpH値を、最大12、好ましくは最大10に維持し、その際、前記懸濁液のpH値の調整および変化を、アルカリ不含の酸または塩基の添加によって実施することを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ不含の塩基として、水素化窒素、殊にアンモニア、アンモニウム塩、ヒドラジンまたはアミン、例えばヒドロキシルアミンを使用することを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記懸濁液のpH値を、溶解された出発化合物の供給に際して、助剤の添加によって維持または調整することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記懸濁液が過剰のアンモニアを含有することを特徴とする、請求項または記載の方法。
【請求項7】
前記出発化合物の添加に際して、前記懸濁液の液体含有量を、水、アンモニアおよび/または水溶液の添加によって高めることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記懸濁液を、前記出発化合物の添加の間ずっと機械的に動かすことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記出発化合物が、前記懸濁液に滴下しながら供給される溶液中に存在し、その際、前記懸濁液を、液滴の各添加前に機械的に動かすことを特徴とする、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記懸濁液が水および少なくとも1つのさらなる助剤を含有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記懸濁液のpH値を第一のより低い値に調整することによって、前記沈殿反応をpH値制御された逆沈殿として引き起こし、その際、前記少なくとも1つのドーパントの出発化合物は前記懸濁液中に溶解されていること、および引き続き前記懸濁液のpH値を第二のより高い値に高め、その際、前記ドーパントまたはそれらの前駆化合物の粒子が沈殿することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
共ドープされた石英ガラスの製造のために、第一のより低いpH値に調整された前記懸濁液中に前記第一のドーパントおよび前記第二のドーパントの出発化合物が溶解されていること、および引き続き前記懸濁液のpH値を第二のより高い値に高め、その際、前記第一のドーパントの粒子および前記第二のドーパントの粒子またはそれらの前駆化合物の粒子が沈殿することを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
より低い温度にて前記懸濁液中で酸として作用する化合物を、温度の上昇によって、前記懸濁液中で塩基として作用する物質の遊離下で分解させることで、前記pH値の上昇を前記懸濁液の温度の上昇によってもたらすことを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
より低い温度にて前記懸濁液中で酸として作用する化合物としてヘキサメチレンテトラミンを使用することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
ドーパントとして一種以上の希土類酸化物、殊に酸化イッテルビウムを使用することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
ドーパントしてフッ素または次の元素の群:Al、B、P、Nb、Ta、Mg、Ga、Zn、Ca、Sr、Ba、Sc、La、Sb、Ge、Y、Ce、Hf、ZrおよびTiの一種以上の酸化物を使用することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記懸濁液の固体含有量が、少なくとも1つのドーパントの沈殿に際して70質量%未満であることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記ドープされたSiO中間生成物の焼結前に、前記中間生成物の圧縮を圧縮雰囲気下で、焼結温度を下回る温度で行うことを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記SiO粒子1μmから10μmの間の範囲の粒度を有することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
前記SiO粒子がSiO一次粒子の凝集体として存在し、その際、前記SiO一次粒子が、5nmから300nmの間の範囲で最も大きい体積割合を占めることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記SiO一次粒子の少なくとも80質量%が球状に形成されていることを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記SiO粒子がCVD法によって作製されたSiOから成ることを特徴とする、請求項20または21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、SiO2粒子ならびに少なくとも1つのドーパントのための出発化合物を水性液体中に含有する懸濁液を準備し、前記液体を、前記ドーパントの粒子または前記ドーパントの前駆物質の粒子を含有するドープされた中間生成物の形成下で除去し、かつ前記ドープされた中間生成物から焼結によってドープされた石英ガラスを形成することによって、ドープされた石英ガラスを製造するための方法に関する。
【0002】
従来技術
このような方法は、DE102004006017A1にレーザー活性石英ガラスの製造に関して記載されている。石英ガラスを希土類金属または遷移金属の酸化物でドープするために、高純度の均一にドープされたSiO2顆粒の使用下における"粉末ルート"が提案される。その際、SiO2ナノ粒子およびドーパントを含有する水性懸濁液から出発される。該懸濁液は、水を徐々に取り除くことによって造粒される。そのようにして得られたドープされたSiO2からの球状、多孔質の顆粒体は乾燥され、かつガス圧焼結法の使用下において、ドープされたレーザー活性石英ガラスからのブランクに溶融される。一実施例によれば、Al23およびNd23でドープされたレーザー活性石英ガラスが製造される。その際、沈殿反応によって作製されたナノスケールのSiO2粒子を含有し、かつ、これらのドーパントのための出発化合物が水溶性の水和物Al2Cl3x6H2OおよびNdCl3x6H2Oの形で添加される水性スラリーから出発される。類似の方法において、Al23およびYb23でドープされたレーザー活性石英ガラスも製造される。
【0003】
しかしながら、公知の方法ではドーパントの十分に均一な分布は容易くは得られず、かつ低減衰のレーザーファイバへのさらなる加工は十分には再現可能でないことがわかった。ファイバ引き出しに際して、該ファイバの破断または許容されえない高い光減衰をもたらすノジュール形成の原因となるドーパントの集塊が生じる。
【0004】
非常に均一なドーパント分布を有するドープされた石英ガラスがCVD法によって製造可能であることは公知である。ただし、これらの処理の場合、ドーパントの選択は、該ドーパントのために気相を介して堆積されうる易揮発性の出発化合物が存在するものに制限されている。この前提条件は、レーザー活性石英ガラスにおけるドーパントとして使用される、希土類金属および遷移金属の群からの多数の元素において満たされていない。高温塩素処理に際して、ドーパント損失が起こりうる。
【0005】
また、CVD法によって堆積された多孔質SiO2膜を後で、希土類化合物を含有する溶液で浸漬させる一方法変法も提案されていた。そのようにして含浸されたSiO2膜は、引き続きガラス化される。しかしながら、該方法は時間を要し、かつ小さい寸法を有するドープされた石英ガラス体の製造にのみ適している。
【0006】
レーザー活性石英ガラスのさらなる一製造方法は、WO2006/003253A1に記載されている。その際、ドーパントを含有する溶液が蒸発または噴霧され、かつ堆積バーナー(Abscheidebrenner)に導かれる。バーナーフレーム中で、ドープされたSiO2粒子が形成され、該SiO2粒子は基板上に堆積およびガラス化される。しかしながら、この構造プロセスは非常に緩慢に進行する。なぜなら、該SiO2粒子のほんの一部しかガラス化されないからである。それゆえ、希土類ドープされた石英ガラスの製造も同様に時間を消費し、かつコストが掛かる。
【0007】
光学応用のためのプリフォームの製造のために、頻繁に、いわゆるゾル・ゲルプロセスに基づく方法も使用される。これらの方法は高い純度を保証するが、しかしながら、他方で頻繁に長い処理時間を必要とする。このゾル・ゲルプロセスは重縮合反応に基づいており、かつ骨格を形成する非常に微細な、それに均一なドーパント分布も有しうる粒子の形成をもたらす。ただし、そのようにして製造された材料を、気泡のない緻密な石英ガラスにさらに加工することは、表面積が大きいために問題であることがわかっており、その結果、必要な材料品質を得られないことが頻繁に生じる。
【0008】
例えば、EP0281282A1には、"ゾル・ゲルルート"を介してのフッ素でドープされた石英ガラスの製造のために、該ドーパントのための出発化合物として、pH値11を有するアンモニア性TEOS溶液に添加されるNH4Fが提案される。重縮合反応後、フッ素1質量%がドープされているSiO2体が得られる。
【0009】
"ゾル・ゲルルート"を介してのアルミニウムでドープされた石英ガラスを製造するためのWO2007/017454A1から公知のゾル・ゲル法の場合、中間工程で多孔質アクアゲルが得られる。引き続き該アクアゲルに、ドーパントを溶解された塩Al(OH)3x9H2Oの形で含有する液体が循環供給される。アンモニアの添加によって該液体のpH値は5にもたらされ、これにより多孔質アクアゲル中でのドーパントの固定化が引き起こされる。
【0010】
技術課題設定
それゆえ本発明の目的は、ドーパント分布の均一性に関して改善されている、ドープされた石英ガラス、殊にレーザー活性石英ガラスの経済的な製造方法を示すことである。
【0011】
この課題は、冒頭で記載された類型の方法から出発して、本発明により、少なくとも1つのドーパントの粒子またはその前駆物質の粒子の少なくとも一部を、懸濁液中で出発化合物のpH値制御された沈殿反応の沈殿物として作製することによって解決される。
【0012】
本発明によるドープされた石英ガラスは、可能な限り均一に分布した少なくとも1つのドーパントを含有する。これを得るために、ドープされた石英ガラスの製造に際して、離散型非晶質粒子の形のSiO2の他に少なくとも1つのドーパントのためのまたはその前駆物質の少なくとも1つの出発化合物を含有する懸濁液から出発される。"出発化合物"は、ドーパントまたは数種のドーパントまたは前駆物質を含有する。最も簡単な場合、出発化合物はドーパント自体またはその前駆物質である。
【0013】
本発明による方法は、予め作製された、水性懸濁液中で均一に分布して存在し、かつ、その大きさが該懸濁液中で本質的には変わらない(粉砕する場合を除いて)離散型SiO2固体粒子から出発される、"懸濁方法"の一発展形態である。予め作製されたSiO2固体粒子の使用により、(いわゆる"ゾル・ゲル法"とは異なり)ドープされた石英ガラスの経済的な製造が可能になる。
【0014】
予め作製された"離散粒子"とは、ここではSiO2単独粒子とも、互いに成長した一次粒子から成る多孔質SiO2粒子凝集体とも理解される。ドーパントの均一な分布に常に重要なのは、"離散粒子"が懸濁液内で自由に動くことができ、かつ、それに従って妨げのない物質交換を可能にすることである。SiO2一次粒子からの多孔質凝集体にて、例えばこれが保証されるのは、該一次粒子が、例えばCVD堆積法で得られるような球状ナノ粒子である場合である。該一次粒子の大きさは5nm〜300nmに達し、かつ典型的には100nm未満である。該一次粒子から形成された多孔質SiO2粒子凝集体の平均サイズは1μm〜200μmの範囲にあり、典型的には約10μmである。
【0015】
冒頭で記載された"懸濁方法"との本質的な相違点は、懸濁液中でのドーパント粒子の準備および作製の仕方にある。公知の方法の場合、懸濁液にドーパントの出発化合物が溶解された形で供給される。該懸濁液の乾燥に際して、それぞれの溶解度積が超過することにより、次いでドーパントまたはそれらの前駆物質が次第に沈殿する。それによって沈殿物は、しかしながら未定義の生成物として、かつ偶発的というよりは局所的に沈殿する。そのうえ、沈殿しなかったイオンは多孔質SiO2粒子中に拡散しえないので、その結果、最終的に均一でないドーパント分布が生じる。それに対して、本発明による方法の場合、ドーパント粒子(または前駆物質の粒子)は、懸濁液のpH値によって制御されている沈殿反応ゆえに形成される。該懸濁液のpH値は、ドーパント(または前駆物質)の固体粒子が懸濁液中で形成されるために、出発化合物の添加に際して直ぐに沈殿反応が始まるように調整されるか、または該懸濁液のpH値は、該懸濁液中で初めに溶解されたドーパントの化合物が粒子形で沈殿するように変化されるかのいずれかである。
【0016】
一般に沈殿は、懸濁液中でのドーパント(またはその前駆物質)の特に微細な粒子の形成につながり、これは一方ではドーパント分布の均一性を促進し、かつ他方では懸濁液の安定化に寄与する。その際、重要なことは、該ドーパント粒子が、なお液体の懸濁液中で均一に、かつ定義付けられて沈殿し、および存在する離散型の、かつ均一に分布したSiO2粒子上に直接に吸着され、かつ、それによって固定化されうることである。
【0017】
それによって該ドーパントは、液体を取り除いた後も−ドープされたSiO2からの中間生成物中で−微細に、均一に分布して存在する。ドーパント粒子の沈降または凝集を回避するために、懸濁液は沈殿反応の開始後に、例えば絶えず動かすことによって安定化される。
【0018】
"ドーパント"は、所望の特性を得るために石英ガラスに意図的に加えられる少なくとも1つの物質を包含する。該ドーパントの"前駆物質"とは、ここでは、方法の後の段階で化学反応によって、またはその酸化状態を変化させることによって本来のドーパントに変えられる物質と理解される。以下で"ドーパント"が言及される限りにおいて、この用語は簡素化のために、他に明確に説明されないか、または状況から生じる限りにおいて、"前駆物質"も包含するべきである。
【0019】
"石英ガラス"とは、ここでは少なくとも70質量%のSiO2割合を有する高度ケイ酸含有ガラスとも理解される。
【0020】
懸濁液のSiO2粒子は、非ドープのまたはドープされた形で存在する。予備ドープされたSiO2粒子の場合、ドーパントの均一な分布が保証されなければならない。これは例えば、Siおよびドーパントを含有する出発化合物の火炎加水分解または酸化による通常のCVD堆積法によって達成されることができ、その際、この方法は冒頭で述べられた通り経済的な考慮から、Cl、F、B、P、Ge、Sn、またはTiのような選択されたドーパントの予備ドープのためにのみ可能である。
【0021】
出発化合物は、懸濁液に一般に溶解された形で供給される。懸濁液に出発化合物を供給し、かつ該懸濁液中で沈殿物を作製する代わりに、機構を反転させて、懸濁液を溶解された出発化合物に供給し、かつ該出発化合物の溶液中で沈殿物を作製することもできる。この方法変法は、しかしながら有利ではない。懸濁液から得られた中間生成物は、乾燥処理の種類に応じて、固体として微細粒SiO2粉末の形で、微細粒SiO2の凝集体からのSiO2顆粒として、または多孔質SiO2グリーン体として生じる。
【0022】
本発明による方法は、ドープされた石英ガラスの製造のために、従来技術と比べて変更された、予め作製された離散型SiO2粒子上へのドーパントの定義された溶解、沈殿および固定化を伴う"懸濁方法"を用いており、該方法は、一方ではファイバ線引きに際しての不均一なドーパント分布およびノジュール形成に関する公知の方法の欠点を回避し、かつ他方では経済性およびデザインの多様性に関してのその利点を利用する。
【0023】
殊に該方法は、ドーパント分布の均一性への要求が非常に高い、ドープされた石英ガラスの製造のために適している。これは一般的に、光学の分野での適用に当てはまる。このための例として、受動光導波路、レーザーガラスおよびフィルターガラス用の石英ガラスが挙げられるべきである。さらに本発明による方法は、特別な電気特性または磁気特性を有するドープされた石英ガラスの製造、偏波面保存光ファイバ用のプリフォームにおいて使用するためのいわゆる"応力ロッド"の製造、または所定の熱膨張係数を有する石英ガラス、例えば"ゼロ膨張ガラス"の製造にも適している。
【0024】
本発明による方法のための主たる適用分野は、レーザー活性石英ガラスの製造である。これは、ホスト材料の石英ガラスにおけるレーザー放射の増幅をもたらすドーパントを含有する。それは一般に希土類カチオン(ランタニド)および/またはいわゆる遷移金属のカチオンである。頻繁に、さらなるドーパント−例えばアルミニウム、リンおよびホウ素−が、石英ガラスの粘度および屈折率を調整するために導入される。その際、ドーパント分布の均一性には、失透およびノジュール形成を回避し、ひいては可能な限り高い増幅能力および増幅されるべきレーザー放射の低い減衰を達成するために、特に高い要求が課される。
【0025】
殊に最後に挙げられた適用のために、一般に2種以上のドーパントを含有する石英ガラスが必要とされる。このような共ドープされた石英ガラスの製造のために、本発明による方法の一変更態様が特に好ましいとわかり、該変更態様の場合、懸濁液に、第一のドーパントのための出発化合物および第二のドーパントのための出発化合物が供給され、その際、第一のドーパントおよび第二のドーパントの粒子またはそれらの前駆物質の粒子の少なくとも一部が懸濁液中で該出発化合物の沈殿反応の沈殿物として作製され、かつ、その際、液体は、ドーパントの粒子および第二のドーパントの粒子またはドーパントの前駆物質の粒子を含有する共ドープされた中間生成物の形成下で除去され、かつ該共ドープされた中間生成物から焼結によって共ドープされた石英ガラスが形成される。
【0026】
ここでも重要なことは、ドーパント(またはそれらの前駆物質)の粒子が、液体懸濁液中で均一に、かつ定義付けられて沈殿し、かつ存在するSiO2粒子上に直接に吸着され、かつ、それによって固定化されることである。それによって該ドーパントは、液体を取り除いた後も−ドープされたSiO2からの中間生成物中で−微細に、均一に分布して存在する。この方法で、焼結された石英ガラス中での該ドーパントの均一な分布が得られる。
【0027】
共ドープされた石英ガラスの製造のために、懸濁液をまずドーパントなしに均一化し、かつ該均一化された懸濁液に、引き続き第一および第二のドーパントの出発化合物を溶解された形で添加し、その際、該懸濁液のpH値を、該出発化合物の添加に際して第一のドーパントの粒子および第二のドーパントの粒子(またはそれらの前駆化合物の粒子)が直接に沈殿するように調整することによって、pH値制御された沈殿反応を混合沈殿として引き起こす一方法変法が有効であることがわかった。
【0028】
この際、ドーパントの出発化合物は、懸濁液に1種以上のドーパント溶液の形で供給される。ただ一つのドーパント溶液における供給は、ドーパントの出発化合物が一緒に溶解される限りにおいて有利であるべきである。懸濁液のpH値は、第一および第二のドーパントの出発化合物の同時の添加に際して直ぐに両ドーパントの沈殿反応が始まるように調整される。この"混合沈殿"の場合、易溶性ドーパントおよび難溶性ドーパントが同時かつ一緒に沈殿し、かつ、それによって理想的には、SiO2粒子上に吸着する混合化合物、例えば混合水酸化物を形成する。それによって第一および第二のドーパントの溶解度積が明らかに相違していても、ドーパントの特に均一な分布および定義された、かつ均一な沈殿物が生じる。第一および第二のドーパントのための出発化合物は、共通の化合物の形でも準備されることができる。
【0029】
好ましくは、水性懸濁液が準備され、均一化され、かつ7を上回るpH値、好ましくは9を上回るpH値に調整される。
【0030】
該懸濁液のpH値は−一般に助剤の添加によって−アルカリ範囲内に変化され、かつ、そこで維持される。該pH値は、ドーパントのための出発化合物の添加後に直接に、そのつど難溶性("不溶性")の化合物、例えば水酸化物、炭酸塩またはリン酸塩が形成されるようにアルカリ性に調整される。場合によって懸濁液は、適した沈殿剤、例えば炭酸アンモニウムまたはカルバミン酸アンモニウムを含有していなければならず、それらはいずれも、例えば炭酸塩および水酸化物の組み合わせ沈殿のために特に適している。懸濁液のpH値が高く調整されればされるほど、それだけいっそう、それぞれの難溶性化合物の溶解度積は確実に超過し、かつ、それだけいっそう、所望の混合沈殿は確実に起こる。そのうえSiO2粒子の懸濁液は、このようなpH値の場合に高い安定性を示す。なぜなら、SiO2粒子間の粒子間反発力が沈降を抑制するからである。
【0031】
しかしながら、例えばアルカリ水酸化物によって調整可能である12を上回る非常に高いpH値の場合、それ自体としては難溶性の化合物の溶解度積は再び超過しうる。そのうえ非常に高いpH値では、共ドープされた石英ガラスの不所望な不純物をもたらしうる物質の使用が必要になる。それゆえ懸濁液のpH値は、好ましくは最大12、特に有利には最大10で維持され、その際、該懸濁液のpH値の調整および変化は、アルカリ不含の酸または塩基の添加によって実施される。
【0032】
pH値調整のためのアルカリ不含の酸または塩基の使用は、不純物および結晶促進剤による製造されるべき石英ガラスの可能な限り低い負荷を保証する。
【0033】
これに鑑みて、アルカリ不含の塩基として、水素化窒素、殊にアンモニア、アンモニウム塩、ヒドラジン、またはアミン、例えばヒドロキシルアミンを使用することが特に有効であることがわかった。
【0034】
アンモニアは中程度の強度の塩基として作用し、かつ水溶液中で最大約10のpH値を可能にし、これは通常のドーパントの難溶性水酸化化合物の形成を満たす。
【0035】
出発化合物が添加されると、懸濁液のpH値の変化が起こりうる。これを補正するために、殊にpH値の強い低下を抑制するために、該懸濁液のpH値が、溶解された出発化合物の供給の際に助剤の添加によって維持または調整される場合に有効であることがわかった。
【0036】
この文脈において、懸濁液が、pH値の緩衝作用に寄与する過剰のアンモニアを含有する場合に有利であることがわかった。
【0037】
その代わりに、またはそれを補う形で、溶解された出発化合物の体積を可能な限り低く保ってもよく、好ましくは、懸濁液の体積に対する出発化合物の溶液の体積比は1未満である。
【0038】
そのうえ、出発化合物の添加に際して、懸濁液の液体含有量を、水、アンモニアおよび/または水溶液の添加によって高めることが好ましいとわかった。
【0039】
沈殿反応によって、懸濁液の固体含有量は急激に上昇する。さらなる液体、殊に水、アンモニアおよび/または水溶液の形の液体の添加による懸濁液の希釈は、該懸濁液の安定化および予定より早いゲル化の回避に寄与する。
【0040】
懸濁液に出発化合物を供給する場合、出発化合物による局所的な過飽和、ひいては不均一な沈殿が起こりうる。それを抑制するために、該懸濁液をドーパントの出発化合物の添加の間ずっと機械的に動かす一方法様式が有利である。
【0041】
絶えず動かすことによって、少なくとも沈殿の初期段階で、有利には全体の沈殿反応の間ずっと、および該沈殿反応を過ぎても、沈殿物の分布はより均一となり、かつ沈降が回避される。その際、懸濁液は、公知かつ適した方法を用いて、例えば攪拌、渦動、揺動または超音波の使用によって動かされる。
【0042】
この文脈において、出発化合物が、懸濁液に滴下しながら供給される溶液中に存在し、その際、該懸濁液が、液滴の各添加前に機械的に動かされる場合に特に好ましいとわかった。
【0043】
この際、溶解された出発化合物および溶解された出発化合物類の添加は、連続的にではなく、むしろ滴下しながら、好ましくは所定の間隔に従って時間的に制御して行われる。その際、懸濁液を機械的に動かす規模および滴下の時間的な間隔の規模は、各液滴が可能な限り均一に懸濁液に達するように互いに適合されている。それによってドーパントまたはドーパント類の特に均一な分布が達成可能であることがわかった。
【0044】
その代わりに、またはそれを補う形で、懸濁液および出発化合物を、流通制御した供給により反応室中で合一することが好ましいとわかった。
【0045】
それは高い生産性と同時に一様な品質を可能にする連続的な一方法様式である。反応室は、好ましくは、より少量の反応物質も定義されて一緒に集められ、かつ反応させられることができる流通反応器である。
【0046】
懸濁液は、好ましくは水および少なくとも1つのさらなる助剤を含有する。
【0047】
助剤、好ましくは水素化窒素−例えばNH3、(NH42CO3、カルバミン酸アンモニウム、アミン、ヒドロキシルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ヒドラジン、酢酸アンモニウムまたは有機溶媒−の添加によって、一方では懸濁液のpH値が調整可能であり、かつ同時に助剤の添加によって懸濁液のその他の特性、例えば表面張力、粘度または懸濁安定性が改善されることができ、これはドーパントの均一な分布に好ましく作用する。
【0048】
本発明による方法の代替的および同様の有利な一方法変法の場合、懸濁液のpH値を第一のより低い値に調整することによってpH値制御された逆沈殿を引き起こし(その際、少なくとも1つのドーパントの出発化合物は懸濁液中に溶解されている)、かつ引き続き該懸濁液のpH値を第二のより高い値に高めること(その際、該ドーパント(またはその前駆化合物)の粒子は沈殿する)が予定されている。
【0049】
この方法様式の一利点は、ドーパントの溶解された出発化合物が、全体の懸濁液中および可能性としてある多孔質SiO2粒子中またはSiO2粒子凝集体中にも特に均一に分布するという点にある。これはpH値を高めることによって沈殿反応を開始する前の懸濁液中で出発化合物の特に均一な分布を可能にする。懸濁液のpH値を高めることによって、少なくとも1つのドーパントが沈殿する。
【0050】
共ドープされた石英ガラスの製造のために、第一のより低いpH値に調整された懸濁液に第一のドーパントおよび第二のドーパントの出発化合物が溶解されており、引き続き該懸濁液のpH値が第二のより高い値に高められ、その際、第一のドーパントの粒子および第二のドーパントの粒子(またはそれらの前駆化合物の粒子)が沈殿する、逆沈殿の一方法変法が有利である。
【0051】
その際、ドーパントの特定の溶解度積に応じて、ドーパントの時間的に段階付けられた沈殿、温度段階による沈殿、または同時沈殿が起こりうる。pH値の上昇は、懸濁液への塩基の添加によって達成されることができる。しかしながら、該塩基の添加の範囲において、局所的な過飽和および増強された沈殿およびそれに伴って不均一なドーパント分布が起こりうる。
【0052】
この欠点を、有利な一方法変法が回避し、その際、より低い温度にて懸濁液中で酸として作用する化合物を、温度の上昇によって、懸濁液中で塩基として作用する物質の遊離下で分解させることによって、pH値の上昇が該懸濁液の温度の上昇によってもたらされる。
【0053】
酸として作用する化合物の熱分解は、理想的には同時かつ一様に懸濁液の体積内で行われる。それによって局所的な過飽和およびそれに伴ってドーパント分布の濃度差が回避される。
【0054】
より低い温度にて懸濁液中で酸として作用する化合物として、好ましくはヘキサメチレンテトラミンが使用される。
【0055】
ヘキサメチレンテトラミン(ウロトロピン)は、アンモニアおよびホルムアルデヒドの縮合生成物である。室温では、ヘキサメチレンテトラミンの水性懸濁液はアルカリ性pH値を示し、該pH値は、この系を緩衝する酸、例えばNH4Clの添加によって、約5に調整されることができるので、その結果、水酸化物またはたいていのドーパントのその他の難溶性化合物が沈殿しない。加熱にてアンモニアが遊離され、かつpH値の上昇が起こり、それは水酸化化合物またはその他の沈殿生成物の形におけるドーパントの一様な沈殿につながる。
【0056】
本発明による方法は、レーザー活性の光コンポーネント、例えば光導波路における使用のためのドープされた石英ガラスの製造に特に適している。この文脈において、ドーパントとして一種以上の希土類酸化物、殊に酸化イッテルビウムが使用される場合に有効であることがわかった。
【0057】
その代わりに、またはそれを補う形で、共ドーパントしてフッ素または次の元素の群:Al、B、P、Nb、Ta、Mg、Ga、Zn、Ca、Sr、Ba、Sc、La、Sb、Ge、Zr、Hf、Ce、YrおよびTiの一種以上の酸化物を使用することができる。
【0058】
"希土類"との用語は、ここでは、ランタニド(ランタンを含む)ならびにScおよびYが一括りにされる。このようなドーパントに関して、当業者は容易に出発化合物およびそれに適した溶媒を見いだす。例として、塩化物、例えばYbCl3およびErCl3およびシュウ酸ニオブアンモニウムが挙げられるべきである。共ドーパントまたは共ドーパント類は、ドープされた石英ガラスの機械的特性および光学特性、例えば屈折率、粘度、失透性、気泡形成、熱膨張係数、材料均一性、光学的な材料減衰、材料破損による誘発性減衰、光学的な吸収特性、透過率、蛍光寿命、材料老化またはフォトダークニングを改善すること、または適合させることに用いられる。
【0059】
共ドーパントとして挙げられた酸化物についても、当業者は容易に出発化合物およびそれに適した溶媒を見いだす。例として、AlCl3、(NH4247x4H2O)、H3PO4、HF、NH4Fが挙げられるべきである。
【0060】
希土類金属、ホウ素およびアルミニウムの酸化物のドーパント濃度は20質量%までであってよい。その他の挙げられたドーパントのドーパント濃度は、典型的には5質量%を下回る。
【0061】
均一な沈殿反応に鑑みて、懸濁液の固体含有量が、少なくとも1つのドーパントの沈殿に際して80質量%未満、好ましくは70質量%未満である場合に有利であることがわかった。
【0062】
低い固体含有量およびそれに伴って懸濁液の低い粘度は、懸濁液中での出発化合物およびそこから形成される沈殿物の迅速かつ一様な分布に寄与する。40質量%未満の固体含有量は、懸濁液中での均一なドーパント分布が、比較的大きな体積では阻害されることから有利ではない。そのうえ温度制御された沈殿の場合、一様な温度分布の調整は、より大きな体積内では阻害される。高度希釈は、そのうえまた経済的な考慮からも有利ではない。
【0063】
完了後(またはすでに沈殿反応の間に)、懸濁液から液体が取り除かれる(乾燥)。この際、懸濁液の液体含有量の減少は、沈降および沈殿物の分布勾配の形成が、例えば凍結乾燥によって、または造粒機を用いて回避されるように、好ましくは可能な限り素早く行われる。
【0064】
ドープされたSiO2中間生成物の焼結前に、該中間生成物の圧縮が、圧縮雰囲気下で焼結温度を下回る温度にて行われる場合に有効であることがわかった。
【0065】
共ドープされた中間生成物の前圧縮によって、後続の高温処理プロセスにおける該雰囲気の影響が最小化される。それは例えば、ドーパントと反応し、かつ中間生成物における該ドーパントの酸化状態または該ドーパントの分布に不都合に作用すると考えられる焼結雰囲気が焼結に際してプロセスに制限されて調整されなければならない状況であってもよい。該焼結雰囲気のこの影響は、中間生成物の完全なカプセル化によって、または−好ましくは−該中間生成物が、多孔質バルク粉末または多孔質グリーン体の形で圧縮された外側領域を備え付けられ、その際、該圧縮された外側領域は、より低い温度にて、かつドーパントおよびその分布に不利には作用しない圧縮雰囲気下で作成されることによって防止されることができる。
【0066】
例えば、酸化イッテルビウムでレーザー活性石英ガラスがドープされる場合、イッテルビウムがYb3+として存在し、かつ二価Yb2+の還元された形では存在しない(なぜなら、最後に挙げたものの場合、レーザー適用のために重要な蛍光遷移の強い減衰増大および寿命制限が観察されるからである)ことが頻繁に所望されている。酸化作用圧縮雰囲気下での焼結前のなお多孔質の中間生成物の外側領域の圧縮によって、ドーパント酸化イッテルビウムは三価の酸化状態にされえ、かつ該中間生成物の圧縮された外側領域が、焼結に際しての可能性としてある還元作用雰囲気から保護する。
【0067】
焼結前の液体の除去(以下では"乾燥"とも呼ぶ)は、公知の方法に基づき、例えば回転蒸発器、造粒機、凍結乾燥機、マイクロ波乾燥機またはサクションモールドまたはメンブレンモールド(Saug-oder Membranform)の使用下で行われる。乾燥は、pH値の変化を伴い、かつドーパント粒子の凝集につながりうる。乾燥プロセスの結果は、SiO2粉末、SiO2顆粒またはSiO2グリーン体の形における中間生成物であり、それは少なくとも1つのドーパントまたは該ドーパントの前駆物質を微細に分布した形で、かつ一様な分布で含有する。
【0068】
有利な一方法変法の場合、懸濁液中に含有される固体および液体を機械的な分離法を用いて分ける方法工程が、該懸濁液の乾燥に先行する。
【0069】
固体および液体の機械的な分離は、最も簡単な場合、遠心分離によって行われる。それによって、さもなければ乾燥の際にドープされたSiO2固体に達し、かつ後続の方法工程にて不利に作用すると考えられる溶解された助剤の沈殿が防止されることができる。殊に、ここでNH4Clが挙げられるべきであり、それは高い温度で揮発性金属塩化物の形成によってドーパントの損失を生じさせうる。
【0070】
溶解された助剤は、分離された液体中に溶解され続けたままであり、かつ、これと一緒に除去される。この"洗浄手法"は、何度か繰り返されることができる。引き続き、固体相は再び均一な懸濁液に通され、かつドープされたSiO2固体の形成下で乾燥される。この方法変法は、殊に高いドーパント濃度の場合に、ドーパント損失を回避するために役立つことがわかった。
【0071】
好ましくは、SiO2粒子は、0.5から100μmの間の、特に有利には1μmから10μmの間の範囲の粒度を有する。
【0072】
懸濁液中に存在する、0.5μmから100μmの間のオーダーの粒度を有する離散型非晶質SiO2粒子は、一方では石英ガラスの経済的な製造を可能にするために十分大きく、かつ他方ではドーパントの均一な分布を保証するために十分小さい。
【0073】
その際、SiO2一次粒子の凝集体として存在するSiO2粒子が特に有利であるとわかり、その際、該SiO2一次粒子は、5nmから300nmの間の範囲で最も大きい体積割合を占める。
【0074】
粒子凝集体の形における離散型の非晶質SiO2粒子は、それらの大きさおよび密度に関して、一方では石英ガラスの経済的な製造、および他方では一次粒子に対する懸濁液中での妨げのない物質交換を可能にするように調整されうる。妨げのない物質交換は、ドーパントの均一な分布を保証する。このような粒子は、10〜500m2/gの範囲の比表面積(BET)によって特徴付けられ、有利には、BET表面積は30〜70m2/gの範囲にある。好ましくは、粒度分布は50nm未満のD50値によって特徴付けられている。該凝集体の粒度は、好ましくは1μmから30μmの間の範囲にある。
【0075】
そのうえSiO2一次粒子の少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%が球状に形成されている場合に有効であることがわかった。
【0076】
球状粒子は高い固体密度の調整を軽減し、その結果、中間生成物の乾燥および焼結に際しての応力が回避される。理想的には、全てのSiO2一次粒子は球状に形成されている。
【0077】
CVD法によって作製されたSiO2から成るSiO2粒子の使用が特に好ましいとわかった。
【0078】
このような合成により作製されたSiO2粒子は、高い純度によって特徴付けられる。そこから得られた石英ガラスの不純物の度合いは1質量ppm未満である。
【0079】
中間生成物のさらなる加工は、それ以外にも粉末、顆粒またはグリーン体のさらなる加工のために慣例かつ適している方法を用いて行われる。適した方法は以下を包含する:
・乾燥キャビネットまたは乾燥炉中での中間生成物の乾燥であって、その際、易揮発性化合物、例えばNH4Clが分解または昇華され、かつ該中間生成物から除去される。
【0080】
・圧縮粉を得るための顆粒または粉末のプレス加工であり、該圧縮粉は、その後、SiO2グリーン体のようにさらに処理される。
【0081】
・反応性雰囲気下、例えば塩素、酸素または水素を含有する反応性雰囲気下または真空下での中間生成物の続く乾燥および清浄。
【0082】
・火炎溶融物中またはガス圧焼結炉中での顆粒またはグリーン体のガラス化。火炎ガラス化の場合、中間生成物は、蒸発する粒子が周囲に達し、かつ逆に、周囲からの不純物が、ガラス化されるべき該中間生成物に達するのを回避するために、真空被覆管で包囲されていてよい。ガス圧焼結炉中でガラス化される場合、中間生成物は、石英ガラス粒からのバルクで包囲されることができる。その際、該石英ガラス粒は、一般に還元作用の炉雰囲気に対する保護ジャケットとして中間生成物のために、かつ該中間生成物と該炉の黒鉛との相互作用を回避するのに用いられる。それによって、ドープされた石英ガラス中での気泡形成、変色および結晶化が防止される。該バルクは、非ドープ石英ガラス粒またはドープされた石英ガラス粒から成っていてよく、かつ、それはガラス化に際しての応力を減少させるために半径方向でドーパント濃度の勾配を有していてよい。僅かにドープされた領域は、僅かにドープされたグリーン体−外側領域の形でも存在していてよく、または付加的に導入された僅かにドープされたバルク顆粒であってもよい。ガス圧焼結炉中でのグリーン体の火炎ガラス化との関連ですでにもっと上の箇所で説明したように、グリーン体はまた前もって、ガス圧焼結炉中でのガラス化に際しての該グリーン体および還元作用の炉雰囲気のガス交換を減少させるために被覆管で被せられるかまたは取り囲まれることができる。ガラス化プロセスの結果は、本発明によるドープされた石英ガラスからの物体である。
【0083】
・例えば外面研削機を用いた研削による、またはドリルビットあるいはコアビットを用いたドリル加工による、石英ガラス体の機械的なさらなる加工。この機械的なさらなる加工の結果は、機械加工された石英ガラス体、例えばドープされた石英ガラスロッドであり、それは引き続きプラズマコーティング処理においてファイバプリフォームにさらに加工されることができる。
【0084】
・表面の不純物を減少させるための、機械加工された石英ガラス体の該表面の機械的研磨または高温研磨および/または化学的清浄。
【0085】
材料均一性のさらなる改善のための石英ガラス体の三次元変形による高温均一化処理。
【0086】
・ロッド形の石英ガラス体は、ロッドレーザープリフォームまたはファイバプリフォームを製造するために非ドープのまたはドープされた石英ガラスからの管でクラッドされることができる。さらに該石英ガラス体は、そこからフォトニック結晶ファイバの特性を有するミクロ構造ファイバを製造するためにロッド形または管形で使用されることができる。さらになお、該石英ガラス体はロッド形において直接にファイバ線引き塔内で引き出され、かつ、より低い屈折率を有する適したコーティングによりクラッドされることができる。
【0087】
実施例
以下では本発明を、実施例および図面に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】実施例に基づく本発明によるドープされた石英ガラスの製造を説明するための方法工程を有する構成図を示す図
【0089】
Yb23およびAl23でドープされた石英ガラスの製造のために、離散型SiO2粒子からの懸濁液を、SiO2凝集体の形において超純水中で製造した。該SiO2凝集体は平均粒度10μmを有し、かつ5nm〜100nmの範囲の粒度を有するSiO2一次粒子から成る。高濃度アンモニア溶液の添加によって、pH値を9.5に調整した(1)。アルカリ性懸濁液の固体含有量は50質量%であった。
【0090】
この均一化されたアルカリ性懸濁液に、ドーパントを溶解された形で、かつAlCl3およびYbCl3(モル比4;1)からのドーパント水溶液の時間的に制御された滴下添加によって常に攪拌しながら供給した(2)。ドーパント溶液の相次ぐ滴下の間の時間間隔を1秒に調整し、それによって各液滴が、すでに十分に均一化された懸濁液に達することを保証した。
【0091】
該懸濁液の高いpH値に基づき、Al(OH)3およびYb(OH)3の形の両ドーパントの水酸化物の混合沈殿が直接に生じる。そのように形成された固体粒子は、存在するSiO2粒子の表面に吸着し、かつ、それによって固定化されるので、固体粒子の凝塊または沈降が防止される。このように懸濁液中でAl2モル%およびYb0.5モル%(懸濁液のSi含有量に対して)に調整する。
【0092】
ドーパント溶液の体積割合は、懸濁液の初めの体積の20%である。ドープの間ずっと、予め調整していた懸濁液のpH値を、ドープ剤の化学的沈殿の際の異なる条件および該懸濁液のゲル化を回避するために、該懸濁液中の過剰のアンモニアによって、ならびに必要とされる場合にはアンモニアおよび超純水のさらなる添加によって一定に保つ。該ドープ剤の水酸化化合物を、このように懸濁液中に均一に分布させる。該懸濁液を連続的に攪拌した。
【0093】
引き続き、ドーパントが備え付けられた懸濁液を回転蒸発器中で造粒した(3)。その際、懸濁液から液体を熱の作用によって非常に素早く取り除いた。そのようにして製造された多孔質SiO2顆粒中には、従って微細かつ均一に分布したAl(OH)3粒子およびYb(OH)3粒子が、酸化物の形でAl231モル%およびYb230.25モル%を有する石英ガラスのドープを生じさせる量で含有されていた。
【0094】
このドープされたSiO2顆粒を、200℃にて24hの間、酸素雰囲気中で前処理した(4)。その際、残留湿分および、高い温度で揮発性の金属−塩素−化合物の形成によってドーパントを損失させうるNH4Clを除去した。引き続き、該顆粒を100MPaの圧力にて圧縮粉に等方圧加工した(5)。そのようにして製造された圧縮粉を、乾燥キャビネット中で熱乾燥し(6)、引き続き900℃の温度にて塩素含有雰囲気に5h曝した(7)。その後、該圧縮粉を1600℃にて同じ炉中でHe雰囲気下において前焼結した(8)。その際、白色の、前圧縮された、比較的緻密な外層を有する焼結体が得られた。
【0095】
実施例1
この前圧縮された焼結体の一部を、還元作用雰囲気下のガス圧焼結炉中でガラス化した(9)。このために、前圧縮された焼結体をまず真空下で1740℃に加熱し、引き続き同じ温度で1.5MPaでガラス化した。そのようにして得られた透明な石英ガラスからのガラス体から、20cmの長さおよび15mmの直径を有するコアロッドを穿孔した(10)。プラズマコーティング処理によって、予めHF溶液中でのエッチングによって清浄された(11)コアロッド上にFドープされた石英ガラスをクラッドガラスとして組み立て、かつ、そのようにしてレーザーファイバプリフォームを製造した。このプリフォームを引き続きファイバ線引き塔内でレーザーファイバへとさらに加工した。そのようにして得られたレーザーファイバはレーザー活性を示していた。
【0096】
実施例2
前圧縮された焼結体のその他の部分を、ガラス用施盤上で約2200℃の温度にて酸水素ガスバーナーを用いた帯域溶融によって、20cmの長さおよび20mmの直径を有する透明な石英ガラスロッドにガラス化した。
【0097】
火炎研磨による表面の清浄後、該石英ガラスロッドを、フッ素ドープされた石英ガラス管で被せた(該ガラス管は、"F320"の名称でHeraeus Quarzglas GmbH & Co.KG(Hanau)から入手可能である)。そのようにして製造されたファイバプリフォームを、150μmのコア直径および180μmのファイバ直径を有する活性レーザーファイバへと線引きし、かつ、その際、同時に、その外径が205μmである、より小さい屈折率を有するUV硬化性アクリレートからのコーティングで被覆した。
【0098】
1200nmの波長のIR線において、このファイバに関して約50dB/kmの基本減衰値をつきとめ、これはファイバレーザー材料としてのその使用を可能にする。
【0099】
方法工程(8)による焼結体への前圧縮および方法工程(9)によるガラス化は、ガス圧焼結炉中での一方法工程で行ってもよい。
図1