特許第5661466号(P5661466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5661466フェノール製造の間でのアセトフェノンの回収
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661466
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】フェノール製造の間でのアセトフェノンの回収
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/84 20060101AFI20150108BHJP
   C07C 49/78 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C07C45/84
   C07C49/78
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-531229(P2010-531229)
(86)(22)【出願日】2008年10月23日
(65)【公表番号】特表2011-500831(P2011-500831A)
(43)【公表日】2011年1月6日
(86)【国際出願番号】US2008080895
(87)【国際公開番号】WO2009055535
(87)【国際公開日】20090430
【審査請求日】2011年10月14日
(31)【優先権主張番号】60/982,777
(32)【優先日】2007年10月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002105
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラツク,ジエシー・レイモンド
(72)【発明者】
【氏名】ペイン,ラリー・ウエイン
(72)【発明者】
【氏名】アンガー,フイリツプ・エドワード
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05240568(US,A)
【文献】 特表2006−517967(JP,A)
【文献】 特開2001−097901(JP,A)
【文献】 英国特許第00724190(GB,B)
【文献】 特開2004−331532(JP,A)
【文献】 特開昭59−031729(JP,A)
【文献】 特開昭47−008166(JP,A)
【文献】 米国特許第04415409(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
s−ブチルベンゼンを含む1種以上のアルキルベンゼンを処理して、フェノールおよびアセトフェノンを含む供給物を製造するステップ;
70kPaから200kPaの粗フェノール操作圧力を含む、粗フェノール重質分を製造するのに有効な粗フェノール分離条件下で、供給物から粗フェノールストリームを分離するステップ;
1から30kPaの共沸蒸留操作圧力を含む共沸蒸留条件下で、粗フェノール重質分から、アセトフェノン、アセトフェノン−フェノール共沸混合物、及び他の不純物を含むアセトフェノンストリームを直接分離するステップ;および
1から30kPaの共沸蒸留操作圧力を含む、アセトフェノン重質分を残すのに有効な共沸蒸留条件下で、アセトフェノンストリームから精製アセトフェノンストリームを分離するステップ
を含む、アセトフェノンを製造する方法。
【請求項2】
精製アセトフェノン重質分の少なくとも一部を、供給物から粗フェノールストリームを分離するステップへまたはその上流へ、再循環するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
粗フェノール分離条件および粗フェノール重質分からアセトフェノンストリームを分離する際の共沸蒸留条件が、粗フェノールストリームとアセトフェノンストリームを分離するのに十分高いが、アセトフェノンの二量化を最小にするのに十分低い操作温度を含み、粗フェノール分離条件が、250℃以下の粗フェノール分離操作温度を含み、共沸蒸留条件が、230℃以下の共沸蒸留操作温度を含む、
請求項1の方法。
【請求項4】
粗フェノール重質分中のアセトフェノンの95重量%以上をアセトフェノンストリーム中へ回収するステップ;および
粗フェノール重質分中に存在するフェノールの90重量%以上を回収するステップ
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項5】
他の不純物が芳香族アルコールである、請求項1の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、フェノール製造の間にアセトフェノンを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フェノールは、クメンを酸化してクメンヒドロペルオキシドを形成することにより製造される。クメンヒドロペルオキシドは開裂され、フェノールとアセトンを生成する。クメンの代わりにまたはそれに加えてs−ブチルベンゼン(SBB)を供給物として用いると、このプロセスは、一般にはより高価値のケトン、メチルエチルケトン(MEK)を、単独でまたはアセトンとの組み合わせて生成する。このプロセスはまた、アセトフェノンも生成する。しばしば、アセトフェノンは廃棄物として捨てられる。
【0003】
JP2004/331532:A:2004112:5DW2004−8は、クメンからフェノールを製造する間に、粗APから精製APを製造する方法を記載している。粗APは、粗フェノールからフェノールを分離した後に残留する塔底液を熱分解することにより製造される。粗APは、塔底圧力が13.33kPa以下に減圧された蒸留塔に導入される。ある実施形態では、塔底圧力は、6.6kPa以下である。このAP製品は「アセトフェノンの品質要求を満たす」と記されている。
【0004】
要約
SBB−ヒドロペルオキシドの開裂は、クメンヒドロペルオキシドの開裂とは異なる中間体を作る。塔底液の熱分解もまた、おそらくは望ましくない副生成物までも形成して、塔底液の組成を変化させると予想される。
【0005】
目的のストリームの熱分解をさせることなくフェノール製造の間にアセトフェノンを回収する方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004/331532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、フェノールを製造し、粗フェノール塔底部を熱分解することなく、粗フェノール塔底部からAPストリームを回収する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある実施形態では、本発明は、1種以上のアルキルベンゼンを処理して、フェノールおよびアセトフェノンを含む供給物を製造するステップ;粗フェノール重質分を製造するのに有効な粗フェノール分離条件下で、供給物から粗フェノールストリームを分離するステップ;および共沸蒸留条件下で、粗フェノール重質分からアセトフェノンストリームを直接分離するステップを含むアセトフェノンを製造する方法を提供する。
【0009】
ある実施形態では、1種以上のアルキルベンゼンは、s−ブチルベンゼンを含む。
【0010】
ある実施形態では、粗フェノール分離条件は、約70kPa(10psi)から約200kPa(29psi)の圧力を含み、共沸蒸留条件は、約0.1kPa(0.75mmHg)から約50kPa(375mmHg)の圧力を含む。
【0011】
ある実施形態では、この方法は、粗フェノール重質分から実質的に純粋なアセトフェノン製品ストリームを直接分離するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】例示的なフェノール製造プロセスのブロックダイアグラムである。
図2】本出願のAP回収プロセスを実行するためのシステムのある実施形態のブロックダイアグラムである。
図3】本出願のAP回収プロセスを実行するためのシステムの他の実施形態のブロックダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の詳細)
本出願は、フェノールを製造し、粗フェノール塔底部を熱分解することなく、粗フェノール塔底部からAPストリームを回収する方法を提供する。ある実施形態では、フェノールは、クメンから製造される。ある実施形態では、フェノールは、SBBから、単独でまたはクメンとの組合せのどちらかで製造される。
【0014】
フェノールが、SBBから製造される場合、SBBの酸化過程で製造される粗APの量は、フェノールの製造のためにクメンが酸化される場合に製造される粗APの量の約10倍であるので、このプロセスは特に有用である。クメンが使用されるかどうかおよびどれくらいの量のクメンが使用されるかということに依存して、s−ブチルベンゼンからのフェノールの製造は、粗ケトンカラム塔底部ストリーム中のフェノールの重量を基準にして、約5重量%から約15重量%の粗APを製造する(以下にさらに詳細に記述される。)。そのような大量の粗APを取り扱うには大量のエネルギーが必要とされる。
【0015】
ある実施形態では、このプロセスは、フェノール製造の間に製造される全APの約95重量%以上を回収する。ある実施形態では、このプロセスは、全APの約98重量%以上を回収する。ある実施形態では、このプロセスは、全APの約99重量%以上を回収する。このプロセスを用いて回収されるアセトフェノンは、一般には、工業的用途に対して、またはアセトフェノンよりも商業的価値および/または用途のある材料であるスチレンへ変換する原料として適切な品質を有する。
【0016】
APフェノール共沸混合物は、粗フェノール重質分からAPストリームを分離するのを助ける。このプロセスには、「さらなるフェノール」、言い換えると粗フェノール重質分中で遊離しているかAPフェノール共沸混合物を形成するかのどちらかであるフェノールの大部分を回収するという利点がある。ある実施形態では、このプロセスは、粗フェノール重質分中のフェノールの全重量を基準にして、さらなるフェノールを85重量%以上回収する。ある実施形態では、この方法は、さらなるフェノールを90重量%以上回収する。ある実施形態では、この方法は、さらなるフェノールを92重量%以上回収する。ある実施形態では、この方法は、さらなるフェノールを95重量%以上回収する。
【0017】
本出願の方法は、エネルギー効率が良く、フェノールを製造するのにSBBを用いたときに製造される廃棄物および回収不能の副生成物の量を減少させる。この方法はまた、環境に優しい方法で、エネルギーおよび初期生成物の循環を提供する。この方法は、現在のおよび既存の化学プロセスシステムを増強するために容易に変更し得る。回収システムは、大きい資本の投入を必要とせず容易に建設可能である。
【0018】
フェノール製造プロセス
図1は、フェノール、アセトン、MEK、およびAPが製造される例示的なフェノール製造プロセスのブロックダイアグラムである。図および図中の特定の実施形態を参照した以下の記述は、例示のためだけであり、請求項を制限するものと解釈されるべきではない。本明細書に記載されたプロセスは、いかなるフェノール製造プロセスの過程においても使用し得る。
【0019】
図1に示されているフェノール製造プロセスは、酸化ゾーン10、酸化生成物分離ゾーン12、再循環11、開裂ゾーン14、開裂生成物分離ゾーン16、粗フェノール精製ゾーン18、およびケトン回収ゾーンを含む。ある実施形態では、SBBが酸化ゾーン10に供給される場合、プロセスは、図1に見られるように、MEK回収ゾーン19を含む。本出願のプロセスは、主として、粗フェノール精製ゾーン18において行われる。
【0020】
酸化ゾーン10において、酸化供給物は、1基以上の酸化反応器へ供給される。酸化反応器において、対応するヒドロペルオキシドを製造するために、1種以上のアルキルベンゼンを酸化するのに有効な酸化温度を含む酸化反応条件下で、酸化混合物を酸素含有ガスと接触させる。
【0021】
酸化供給物は、1種以上のアルキルベンゼンを含む。適切なアルキルベンゼンは、例えば、クメンおよび/またはs−ブチルベンゼンを含む。酸化供給物がs−ブチルベンゼンを含む場合、酸化生成物ストリームは、s−ブチルベンゼンヒドロペルオキシドを含む。酸化供給物がクメンを含む場合、酸化生成物ストリームは、クメンヒドロペルオキシドを含む。
【0022】
酸化供給物の内容に依存して、酸化生成物ストリームはまた、一般に、特定の主な副生成物を含む。主な副生成物は、例えば、アセトフェノン、ジメチルベンジルカルビノール(DMBA)、およびエチルメチルベンジルカルビノール(EMBA)を含む。酸化生成物ストリームは、少量の副生成物を含むこともできる。少量の副生成物は、例えば、過酸化ジクミル、過酸化ジ−s−ブチル、過酸化クミルs−ブチル、蟻酸、酢酸、メタノール、エタノール、メチルヒドロペルオキシド、エチルヒドロペルオキシド、およびフェノールを含む。
【0023】
図1の実施形態では、酸化生成物は、酸化生成物分離ゾーンに供給される。酸化生成物分離ゾーンは、様々な配置を有することができる。酸化生成物分離ゾーンは、1種以上のアルキルベンゼンヒドロペルオキシドを含む開裂反応混合物を生成する。ある実施形態では、開裂反応混合物は、s−ブチルベンゼンヒドロペルオキシドおよび/またはクメンヒドロペルオキシドを含む。
【0024】
図1の実施形態では、開裂反応混合物は、開裂ゾーン14に供給される。開裂ゾーンにおいて、ヒドロペルオキシドの大部分が開裂される。開裂反応混合物中に存在するヒドロペルオキシドに依存して、ヒドロペルオキシドは、フェノール、MEK、および、クメンヒドロペルオキシドが存在する場合には、アセトンに変換される。
【0025】
s−ブチルベンゼンとクメンの両方が使用された場合、およびクメンヒドロペルオキシドに対するs−ブチルベンゼンヒドロペルオキシドの比に依存して、開裂反応は、アセトン:フェノールの重量比が、約0.4まで、MEK:フェノールの重量比が約0.2から0.7、およびフェノール:APの重量比が、約3から30で生成する。ある有利な実施形態では、フェノール:APの比が、w/wで約8から12で変化する。
【0026】
図1において、開裂生成物は、開裂生成物分離ゾーン16に供給される。開裂生成物分離ゾーン16は、一般に、粗ケトンカラム(CKC)を含む。ある実施形態では、粗ケトンカラムは、開裂生成物を粗フェノール画分および粗ケトンストリームに分離する。
【0027】
クメンが酸化ゾーンに供給されない場合は、粗ケトンストリームは、アセトンを著しい量では含まない。この実施形態では、粗ケトンストリームをMEK回収ゾーン19へ供給する前に、粗ケトンストリームをアセトン生成物カラム(APC)に供給しなくてもよい。開裂生成物がアセトンを含む場合、粗ケトンストリームは、アセトン製品カラム(APC)に供給される。アセトンは、APCカラムからAPC塔頂液として、および/またはAPC側流取り出しとして回収される。APC条件は、MEKを含むAPC塔底部ストリームを生成するのに有効である。ある実施形態では、APC塔底部ストリームは、MEK、水、炭化水素、縮合反応生成物、ナトリウムフェナート、およびこれらの組合せを含む。APC塔底部ストリームはさらに、MEK回収ゾーン19でMEK生成物を回収するために処理される。
【0028】
AP回収プロセス
AP回収プロセスは、1段以上の分離操作を含んでもよい。ある有利な実施形態では、AP回収プロセスは、多段分離操作を含む。ある実施形態では、AP回収プロセスは、2段の分離操作を含む。他の実施形態では、AP回収プロセスは、3段の分離操作を含む。
【0029】
種々の分離器または「カラム」は、記載されたストリームを分離するために適したいかなるタイプの構造であってもよい。適切な構造としては、液体と蒸気とが接触するための内部構造を有する蒸留カラムが含まれる。例えば、多孔板カラム、バブルキャップカラム、または充填カラムを含んで、カラムのいかなるタイプおよび組合せも使用し得る。適切な内部構造は、例えば、トレイ、パッキング、またはこれらの組合せを含む。
−粗フェノール分離ゾーン
−3段の分離操作を含むAP回収
以下は、3段の分離操作を含むAP回収プロセスのより詳細な記述であり、図2に示されている。
【0030】
本明細書で「塔底部」という用語、または「重質分」という用語が使用される場合、ストリームは、一般に、分離器またはカラム(以後「カラム」と表す。)から供給物の導入レベルよりも下方で取り出す。「塔底部」または「重質分」は、カラムの塔底でまたはその近傍でカラムから取り出すことができる。例えば、ストリームは、カラムの塔底から直接取り出し得る。ストリームはまた、カラムの塔底の近傍から取り出したサイドカットであり得る。「塔底部」または「重質分」はまた、塔底から直接取り出したストリームおよびカラムの塔底近傍から取り出したサイドカットの組合せを含み得る。
【0031】
同様に、「塔頂液」と言う用語が使用される場合、ストリームは一般に、供給物の導入水準よりも高い位置でカラムから流出するものである。「塔頂液」は、カラムの塔頂でまたはその近傍で分離器またはカラムから取り出し得る。例えば、ストリームは、カラムの塔頂から直接取り出し得る。ストリームはまた、カラムの塔頂近傍から取り出したサイドカットであってもよい。「塔頂液」はまた、塔頂から直接取り出したストリームおよびカラムの塔頂近傍から取り出したサイドカットの組合せであり得る。
【0032】
−CPC
図2を参照すると、供給物70は、典型的には粗ケトンカラムからの塔底部であり、粗フェノール分離器10へ供給される。ある実施形態では、粗フェノール分離器10は、粗フェノールカラム(CPC)10として参照される蒸留カラムである。CPC10は、CPC重質分80を残して、許容される粗フェノールストリーム40を供給物70から回収するために、適切な数の段および/または充填物を有する。ある実施形態では、CPC重質分80は、CPC塔底部および/または塔底部近傍80である。
【0033】
ある実施形態では、CPC10は、いくつかの理論段数を含む蒸留カラムである。理論段数の数は、変化し得る。段数の増加に従い、操作自由度は一般には増加し、供給物組成における変動が許容され得る。当業者ならば、標準の手順により最適の段数を決定し得る。
【0034】
ある実施形態では、CPC10は、約10段以上の理論段数を含む。ある実施形態では、CPC10は、約20段以上の理論段数を含む。ある実施形態では、CPC10は、約60段以下の理論段数を含む。ある実施形態では、CPC10は、約40段以下の理論段数を含む。
【0035】
ある実施形態では、CPC10はまた、蒸気発生のために熱を供給するためのリボイラーおよび液体還流および蒸留物を生成させるために蒸気を凝縮させるためのコンデンサーを含む。リボイリングのための熱源としては、水蒸気またはプロセスの他の部分との熱的結合を含んで種々のものが使用し得る。熱は、コンデンサーから適切な冷却媒体のいかなるものによっても除かれる。適切な冷却媒体としては、冷却水、空気、またはプロセスの他の部分との熱的結合が含まれる。
【0036】
粗フェノールストリーム40は、粗フェノール分離条件下で供給物70から分離される。ある実施形態では、粗フェノール分離条件は、蒸留条件である。粗フェノール分離条件は、粗フェノール重質分80を残して粗フェノールストリーム40を分離するのに有効な温度と圧力を含む。ある実施形態では、粗フェノールストリーム40は、公知の技術を用いてさらなる精製を受ける。
【0037】
粗フェノール重質分80は、一般に、AP、AP−フェノール共沸混合物、ジメチルベンジルアルコール(DMBA)、エチルメチルベンジルアルコール(EMBA)、および他の高沸点成分を含む。粗フェノール分離条件は、APの二量化を最小にするのに十分穏和である。
【0038】
ある実施形態では、粗フェノール分離条件は、約70kPa(10psi)以上の粗フェノール分離圧力を含む。ある実施形態では、粗フェノール分離圧力は、約100kPa(14psia)以上である。ある実施形態では、粗フェノール分離圧力は、約200kPa(29psia)以下である。
【0039】
粗フェノールの分離は、粗フェノール分離圧力に依存して、実質的にはいかなる操作温度でも実行し得る。CPC操作温度は、一般には、粗フェノールストリーム40を分離するのに十分高いが、APの二量化を最小にするのに十分低い。操作圧力が約70kPaから200kPaである場合は、APの二量化は、約250℃以上の操作温度において起こると予想される。ある実施形態では、CPC操作温度は、一般には、約230℃以下である。
【0040】
ある実施形態では、粗フェノールストリーム40は、望ましくない芳香族不純物を実質的に含まない。APの回収により粗フェノールストリーム40中にもたらされ得る望ましくない芳香族不純物としては、芳香族アルデヒドを含む。望ましくない芳香族アルデヒドには、例えば、ベンズアルデヒドおよびクメンアルデヒドが含まれる。許容できる粗フェノールストリームは、1ppm以下のベンズアルデヒドを含む。許容できる粗フェノールストリームはまた、10ppm以下のクメンアルデヒドを含む。
【0041】
−HEC
ある実施形態では、アセトフェノンストリーム50は、粗フェノール重質分から直接分離される。「直接」とは、粗フェノール重質分が、それからアセトフェノンストリーム50が分離される前に熱分解されないことを意味する。
【0042】
ある実施形態では、粗フェノール重質分80は、アセトフェノン分離器20に直接供給される。ある実施形態では、アセトフェノン分離器は、粗フェノール重質分末端カラム(HEC)20である。ある実施形態では、粗フェノール重質分80は、HEC20の中央部にまたはその近傍でHEC20に供給される。
【0043】
HEC20は、APストリーム50を粗フェノール重質分80から分離するに有効なHEC分離条件下で操作される。APストリーム50は、HEC20の塔頂でまたはHEC20の塔頂近傍のサイドカットとしてHEC20から取り出す。APストリーム50は、APおよびAP−フェノール共沸混合物を含む。ある実施形態では、APストリーム50は、望ましくない芳香族不純物を実質的に含まない。APと共に分留される傾向のある望ましくない芳香族不純物には、例えば、望ましくない芳香族アルコールが含まれる。望ましくない芳香族アルコールには、例えば、ジメチルベンジルアルコール(DMBA)およびエチルメチルベンジルアルコール(EMBA)が含まれる。実質的に純粋なAPストリームまたは製品は、0.04重量%以下のDMBAを含む。実質的に純粋なAPストリームまたは製品は、0.01重量%以下のEMBAを含む。このプロセスを用いて回収したアセトフェノンは、一般に、工業的用途に対して適切な品質を有する。
【0044】
HEC分離条件は、APストリーム50を粗フェノール重質分80から分離するに有効なHEC圧力およびHEC温度を含む。ある実施形態では、HEC分離条件は、蒸留条件である。ある実施形態では、HEC分離条件は、HEC共沸蒸留条件である。
【0045】
HEC操作圧力は、粗フェノール重質分80からのAPストリーム50の分離を起こすのに十分に低い。ある実施形態では、HEC操作圧力は、約1kPa(7.5mmHg)以上である。ある実施形態では、HEC操作圧力は、約30kPa(225mmHg)以下である。
【0046】
HECは、APストリーム50を分離するのに十分高いが、APの二量化を最小にするのに十分低い操作温度ならば実質的にいかなる温度で操作されてもよい。HEC操作温度は、HEC操作圧力に依存して変化する。約1kPaから約30kPaのHEC操作圧力において、HEC操作温度は、一般に、約250℃以下である。
【0047】
ある実施形態では、HEC20は、いくつかの理論段数を含む蒸留カラムである。理論段数は、変化し得る。当業者ならば、標準の手順を用いて最適の段数を決定し得る。
【0048】
ある実施形態では、HEC20は、約20段以上の理論段数を含む。ある実施形態では、HEC20は、約30段以上の理論段数を含む。ある実施形態では、HEC20は、約80段以下の理論段数を含む。ある実施形態では、HEC10は、約50段以下の理論段数を含む。
【0049】
アセトフェノンストリーム50が除かれた後に残るHEC重質分22は、タールと重質残留物を含む。HEC重質分22は、一般には、HEC20の塔底またはHEC20の塔底近傍でサイドカットとしてHEC20から取り出す。HEC重質分22中の特定の成分を同定することは可能であり得る。しかし、HEC重質分22は一般に、同定されていない高沸点化合物を含む。一般に、HEC重質分22はそれ以上処理されない。ある実施形態では、HEC重質分は、そのプロセスまたは他のプロセスに熱を供給するために燃料として燃やされる。
【0050】
−APRC
ある実施形態では、APストリーム50は、AP回収カラム(APRC)30に入る。APストリーム50は、AP、AP−フェノール共沸混合物、および他の不純物を含む。APRC30は、粗APストリーム50から精製APストリーム60を分離するのに有効なAPRC共沸蒸留条件下で操作される。ある実施形態では、精製APストリーム60は、実質的に純粋なAP製品である。
【0051】
ある実施形態では、精製APストリーム60は、塔頂液ストリームとしてAPRC30から取り出す。ある実施形態では、精製APストリームは、APRC30の塔頂でAPRCから取り出す。ある実施形態では、精製APストリーム60は、APRC30の塔頂近傍でサイドカットとしてAPRC30から取り出す。精製APストリーム60の純度は、いくつかの要因に依存して変化する。関連のある要因には、例えば、APRC30における理論段数、(使用されるとして)充填物の量およびタイプ、ならびに共沸蒸留条件が含まれる。
【0052】
APRC共沸蒸留条件としては、一般に、塔底部温度、塔頂液温度、および塔頂操作圧力が含まれる。APRC温度は、精製APストリーム60を分離するのに十分高いが、APの二量化を最小にするのに十分低い。
【0053】
APストリーム50は、1種以上のAP−フェノール共沸混合物を含む。表1は、異なる圧力で種々のAP−フェノール共沸混合物の予測沸点を反映したものである。表1からわかるように、APRC30の操作圧力が低くなるにつれて、APの沸点と種々のAP−フェノール共沸混合物の沸点との温度差は増大する。言い換えれば、APRCの操作圧力を低くすれば、分離が容易となり、分離を達成するのに必要となる理論段数はより少なくなる。
【0054】
【表1】
【0055】
ある実施形態では、APRC操作圧力は、約0.1kPa以上である。ある実施形態では、APRC操作圧力は、約30kPa以下である。ある実施形態では、APRC操作圧力は、約10kPa以下である。例えば、高真空装置および冷凍凝縮媒体を用いて0.1kPaのようなより低い圧力も可能であり得るが、商業目的のためのAPRC圧力の最低限は、約1kPaであると予想される。
【0056】
精製APストリーム60中のAPの量は、投入された熱に感受性がある傾向を有する。リボイラーに過剰の熱が供給されると、精製APストリーム中の望ましくない芳香族不純物の量が増加し得る。APと共に分留する傾向のある望ましくない芳香族不純物には、例えば、望ましくない芳香族アルコールが含まれる。望ましくない芳香族アルコールには、例えば、ジメチルベンジルアルコール(DMBA)およびエチルメチルベンジルアルコール(EMBA)が含まれる。ある実施形態では、精製APストリームは、実質的に望ましくない芳香族不純物を含まない。
【0057】
ある実施形態では、APRCの最大操作圧力が、約3kPaから約15kPaである場合、APRC塔頂液温度は、一般に、約140℃以下である。
【0058】
ある実施形態では、APRC共沸蒸留条件はまた、APストリーム50の流量に対する還流流量を基準として1.8以上の質量還流比を含む。ある実施形態では、質量還流比は、約2以上である。ある実施形態では、質量還流比は、約5以下である。
【0059】
理論段数の数は変化し得る。当業者ならば、標準の手順を用いて最適の段数を決定し得る。
【0060】
ある実施形態では、APRCの理論段数は、約10以上である。ある実施形態では、APRCの理論段数は、約20以上である。ある実施形態では、APRCの理論段数は、約60以下である。ある実施形態では、APRCの理論段数は、約40以下である。
【0061】
一般に、精製APストリーム60中のAPの量は、精製APストリームの全重量を基準として、約95重量%以上である。ある実施形態では、精製APストリーム60中のAPの量は、約98重量%以上である。ある実施形態では、精製APストリーム中のAPの量は、99.9重量%以上である。
【0062】
APRCはまた、APRC重質分24を製造する。APRC重質分24は、一般に、塔底ストリームおよび/またはサイドカットもしくはAPRC30の塔底近傍ストリームである。APRC重質分24は、一般に、AP、フェノール、AP−フェノール共沸混合物および高沸点不純物を含む。ある実施形態では、APRC重質分ストリーム24の全部またはそのいくらかは、フェノール製造プロセスに再循環される。ある実施形態では、APRC重質分24の全部またはそのいくらかは、CPCに再循環される。これらの実施形態では、APRC重質分24の再循環される部分は、CPC10、AEC20、およびAPRC30を通過する。このことが、さらなるフェノールの回収、ならびにAPの精製および捕捉を進める。
【0063】
−2つの分離操作
他の実施形態では、HECカラム20は除かれる。この実施形態では、プロセスは、2つの分離操作を含む。この実施形態の例示的な表示が図3にある。
【0064】
この実施形態では、粗フェノール重質分80は、「最終カラム」230に供給される。ある実施形態では、粗フェノール重質分は、約3重量%以上のフェノールを含む。ある実施形態では、粗フェノール重質分80は、約10重量%以上のフェノールを含む。ある実施形態では、粗フェノール重質分80は、約30重量%以下のフェノールを含む。ある実施形態では、粗フェノール重質分80は、約15重量%以下のフェノールを含む。
【0065】
最終カラム230は、最終カラム塔頂液ストリーム260、最終カラム中央ストリーム224、および最終カラム重質分222を製造するに有効な最終カラム共沸蒸留条件下で操作される。
【0066】
一般に、最終カラム塔頂液ストリーム260は、図2中の精製APストリーム60に対応し、最終カラム重質分222は、図2中のHEC重質分22に対応し、最終カラム中央ストリーム224は、図2中のAPRC重質分24に対応する。ある実施形態では、最終カラム重質分222は、燃料として燃やされる。ある実施形態では、最終カラム中央ストリーム224は、フェノール製造プロセスへ戻して再循環される。ある実施形態では、最終カラム中央ストリーム224は、CPC10へ戻して再循環される。フェノール製造プロセスへ最終カラム中央ストリーム224を再循環することは、粗フェノール重質分80中に存在していたフェノールの大部分の回収を可能とする。
【0067】
最終カラム共沸蒸留条件は、約1kPa以上の最終カラム塔底圧力を含む。ある実施形態では、最終カラム塔底圧力は、約6kPa以上である。ある実施形態では、最終カラム塔底圧力は、約50kPa以下である。ある実施形態では、最終カラム塔底圧力は、約20kPa以下である。
【0068】
最終カラム共沸蒸留条件は、約0.1kPa以上の最終カラム塔頂圧力を含む。ある実施形態では、最終カラム塔頂圧力は、約5kPa以上である。ある実施形態では、最終カラム塔頂圧力は、約45kPa以下である。ある実施形態では、最終カラム塔頂圧力は、約19kPa以下である。
【0069】
最終カラム共沸蒸留条件はまた、いくつかの理論段数を含む。理論段数の数は変化し得る。当業者ならば、標準の手順を用いて最適の段数を決定し得る。
【0070】
ある実施形態では、共沸蒸留条件は、約30以上の数の理論段数を含む。ある実施形態では、理論段数の数は、約40以上である。ある実施形態では、理論段数の数は、約80以下である。ある実施形態では、理論段数の数は、約60以下である。
【0071】
ある実施形態では、APストリームは、実質的に望ましくない芳香族不純物を含まない。上記で説明したように、APと共に分留される傾向のある望ましくない芳香族不純物には、例えば、望ましくない芳香族アルコールが含まれる。望ましくない芳香族アルコールには、例えば、DMBAおよびEMBAが含まれる。
【0072】
種々の分離器へのまたはそれからの供給ストリームおよび取り出しストリームの数は、いくつかの要因に依存して変化し得る。例えば、供給および/または取り出しストリームの数は、酸化プロセスへの供給物の組成、所望の精製AP製品の組成上の変動、および/またはその他の組成上の考慮点により変化し得る。
【0073】
本発明は、以下の実施例を参照することにより、よりよく理解されるが、これらの実施例は、例示のためであって、制限的なものではないと解釈されるべきである。
【実施例1】
【0074】
AP回収操作の過程でCPCカラムから塔頂液として製造された粗フェノールストリームを、AP回収を含まない実証試行の最終段階の過程で製造された同じストリームと比較した。
【0075】
あらかじめ集めてドラム缶に詰めておいた粗フェノール重質分を、混合容器に入れ、ブレンドし、フェノールの多いAP−フェノール共沸混合物を含む再循環したAPRC塔底部の一部と合わせた。この混合物をCPCに供給した。粗フェノール重質分中のなんらかの過剰のフェノールおよびAP−フェノール共沸混合物を破壊して得られる両者からの、粗フェノールを、CPCにおいて塔頂液として取り出し、後の処理のためにドラム缶に保管した。
【0076】
パイロットプラント全体の通常の操作の過程で、CPCからの塔頂液として取り出した粗フェノールストリーム中のAP濃度を、AP10ppmw未満に保った。AP回収の過程で、粗フェノールストリーム中のAPの濃度は、高い範囲であり、典型的には、AP10−50ppmwの範囲であった。この差のいくらかは、CPCへの供給物の組成における大きな差と、および通常はCPCの上部区画を通り分離を支配する巨大なフェノール画分が存在しないこととに関係している。AP回収の過程で、この流れは、その通常の流速8+lb/hr(3.6+kg/hr)のうちのわずかな分量[0.2lb/hr(0.1kg/hr)−0.3lb/hr(0.14kg/hr)]にすぎなかった。カラム供給物組成におけるこの差は、CPCからの塔頂液として取り出した粗フェノールストリーム中に見られるやや高い水準のAPに対する説明として最も妥当なものである。AP回収パイロットの操作開始後に、供給物中のより高いAP濃度を補償するために、供給の位置を、CPCにおいて下げるべきであったことが認識された。
【0077】
粗フェノール重質分は、約5重量%から約10重量%のフェノールであって、フェノール含量が低く、HECに直接供給された。HEC中で実行された分離は、名目上は、APとHEC重質分との間であるが、実際には、AP−フェノール共沸混合物と次に重い主たる不純物、おそらくはエチルフェニルケトン(別名では、プロピオフェノン)との間である。実際、APおよびフェノールと共に運ばれる重い共雑物のキャリーオーバーを確実に最小にするために、カラムの塔底からAPのわずかの実質スリップをいくらかさせながら、HECを操作した。APの実質スリップは、典型的には、HEC塔底部ストリーム中のAP濃度で<1重量%であった。このAPのわずかの実質スリップは、APのわずかの実質損失を表すが、AP製品の良品質を確保するために受容されることである。APおよびフェノールの大部分は、HECから塔頂液としてまたは塔頂近傍液として取り出され、生の重質残留物は、HEC重質分として取り出した。HEC重質分は後の研究のためにドラム缶に詰めた。
【0078】
APおよびフェノールを含むHEC塔頂液は、容器中へ導かれ、そこからAPRCへ導いた。APRCは、短い消毒区画を有し、軽質残留物ブリードを取り出すことおよびAP製品ストリームの側流取り出しの軽質残留物による汚染を減少させることが可能であった。粗フェノールストリーム中に見出された特定成分の結果を、次の表にあげた。
【0079】
【表2】
組成データにおいていくらか変動があるものの、微量種の濃度はすべて低くかなり類似している。これまでの結果は、AP回収は、粗フェノールストリーム中のこれらの種に、粗フェノールカラムの塔頂からのパージポイントを見出させるように操作しているとは見えないということを示している。
【0080】
フェノールよりも軽い化合物がHEC塔頂液中に見出されたが、このことは、おそらくは、高温での滞在時間が長くなったために、いくつかのカラムの溜めにおいてクラッキングまたは分解反応が起こっていることを示唆している。このことは、パイロットプラントにおいて使用した電気リボイラーが、商業スケールの装置において見られるよりも桁違いに大きい内部容積を有していることを考慮すれば驚くべきことではない。また、2量体(AMS−2量体、AMS−AES2量体1)などの、特定の重質種が、および特定の他の反応性種が消失しているように見える。おそらくは、パイロットプラントにおいて滞在時間がより長くおよび/または温度がより高いということの結果として起こっている、アルドール縮合反応またはその他の反応のために、パイロットプラントにおいて達成された製品回収率および純度は、商用スケールで達成できるものよりも良好であり得ると仮定された。
【0081】
塔頂および塔底部ストリームの流量は、供給物と一致するように調節し、正味の新鮮な供給物(ドラム缶に入れた粗フェノール重質分)の組成は測定しなかったので、フェノールおよびAPの成分供給速度(lb/hr)は、完全な一致が得られるよう物質収支から推定した。物質収支および組成データは、おそらくは形成されたまたは反応してなくなるかのどちらかであった化合物を含んでいたが、またはそれらに対する物質バランス一致は珍しく良くなかった。しかしながら、APおよびフェノールは、全体としての質量収支とよく合致している物質収支一致を示した。
【0082】
上記の調整済みのデータに基づいて、パイロットプラントは、物質バランスを決定した後に、(a)正味の新鮮供給物の重量を基準として、99重量%を超えるAP回収、および(b)正味の新鮮供給物の重量を基準として、95重量%を超えるさらなるフェノールの回収を達成した。商用プラントの設計は、2本のパージストリームを含むであろうが、それはこれらの回収率をおそらくは低下させるであろう。2本のストリームは、(a)APRCの塔頂からの軽質残留物のパージ、および(b)APRCの塔底部から再循環されるAP−フェノール共沸混合物ストリームからのパージであろう。
【0083】
おおよその段数を決定しようとの意図をもったカラム較正分析の展望からは、主要成分のみおよび安定的な操作の過程での修正された全体的な成分バランスを考慮することで十分であった。
【0084】
APRCカラム
3本カラムのAPパイロットプラント試行の過程で、AP含量が98.3+重量%を含む組成を有する側流取り出しが、約76重量%のAPおよび18重量%のフェノールを含む組成を有するAPRC塔底部と共に製造された。供給物に対する還流比は、およそ2であった。APRCは、消毒区画に2ft(0.6m)の充填物、側流取り出し位置と供給物との間に3.5ft(1m)の充填物、および供給物位置より下に別の3.5ft(1m)の充填物でもって配置されていた。操作圧力は、2psia(13.8kPa)であった。実際のカラム供給物および塔底部の流量基準で、99重量%を超えるAPRCの塔底に対するフェノールの回収が達成された。重質成分2,3−ジメチルベンゾフラン(23DMBF)が、特徴付けられていない材料の同定として選択された。重質の鍵としてフェノール(側流取り出し中の)を、軽質の鍵としてAP(塔底部中の)を使用し、供給物対還流比3を用いて、理論段数として約40が鍵成分の濃度と合致した。この系に対するO‘Connell全カラム効率の計算値は、(APとAP/フェノール共沸混合物の間の低い相対的揮発性のために)75%で比較的高い値である。Aspenの段命名法の用語では、供給位置は20段であり、側流取り出しは4段(コンデンサー=1段)である。
【0085】
一方で、ARPC塔頂部に主として分配されるであろうと、Aspenモデルが示していたが、パイロットプラント分析結果において、α−メチルベンジルアルコール(AMBA)成分は、ARPC塔底部に主として分配されていると報告されたことが観察された。結果として、AMBAがAPRC塔底部を含む再循環ストリーム中に集積する可能性がある。
【0086】
HEC
HECにおける軽質鍵成分はフェノールであり、重質鍵成分はエチルフェニルケトン(EPK)である。HECは、パイロットプラントにおいて、2psia(13.8kPa)で、供給口がカラムの上方2/3の位置[頂部の下方5’(1.5m)床で塔底から上方10’(3m)床]にあるように設置して操作した。
【0087】
分析結果では、3−フェニル−2−ブタノンと一緒に報告されていたので、代替の重質の鍵、2−エチルベンゾフラン(2−EBF)は、使用することはできなかった。粗フェノール重質分中の4−5重量%の濃度を有する未知の成分は、パイロットプラント分析結果に従って、それが主としてHEC重質分に確実に分配されるように、EMBAとしてモデル化した。粗フェノール重質分ストリームのみは、およそ90%の成分が同定され、残りは重質残留物(TARS)として取り扱った。
【0088】
HECは、供給物に対する還流比の1.5−2.3に対応して、還流速度を10lb/hr(4.5kg/hr)および15lb/hr(6.8kg/hr)で操作した。2つの操作スナップショットに対する成分バランスを収集した。この「高AP回収」期間の間、カラムは、塔底部においておよそ0.1−0.8重量%AP(HEC供給物の全重量を基準として、塔頂部に対して99+重量%の回収)で、および塔頂部において50−330重量ppmEPK(HEC供給物の全重量を基準として、塔頂部において1−5重量%の回収)で操作した。
【0089】
これらの2つの操作スナップショットの過程でカラムの性能に合致するように推定した理論段数を決定するために、Aspenモデル化を実行した。シミュレーションの間、一方で、段数の数を増加させ、還流速度をプラントの値におよそ合わせたが、パイロットプラントカラムと相対的に同じ位置になるように供給物の位置を保った。このやり方で、軽質の鍵としてAP、重質の鍵としてEPKに基づくプラントデータに、36−38の理論段数が合致するであろうと決定された。したがって、HECに対して推奨された設計ポイントは、供給物に対する還流比は2.5で、理論段数38である(コンデンサーとリボイラーを除く。)。
【0090】
CPC
内径2インチ(5.08cm)の多孔板カラムを用いた、AP回収なしでのCPCの分析は、以下の設計ポイント推奨値を与えた。:50トレイ、大気圧、供給物に対する還流比1;および供給物位置はカラムの中央部。
【実施例2】
【0091】
APの回収および精製のための3カラム連続蒸留トレインを以下のようにしてシミュレーションした。シミュレーションでは、流速は粗フェノールカラム100lb/hr(45.4kg/hr)に対する供給物速度を参照した。
【0092】
CKC塔底部供給物ストリームの全重量を基準として、10重量%のAPおよび80重量%のフェノールを含むCKC塔底部供給物ストリームを、21ポンド/hr(9.5kg/hr)で、ならびに再循環ストリームの全重量を基準として、84重量%のAPおよび14重量%のフェノールを含むAPRCの塔底からの再循環ストリームを、79ポンド/hr(36kg/hr)で、塔頂圧力15.7psia(108.2kPa)および塔底圧力20.7psia(142.7kPa)、塔底温度222℃で操作しているCPCへ供給した。粗フェノール重質分を、38lb/hr(17kg/hr)の速度で、塔頂圧力2psia(13.8kPa)および塔底部温度212.2℃で操作しているHECへ供給した。4重量%のAPおよび0.3重量%のフェノールを含むHEC重質残留物を、10lb/hr(4.5kg/hr)で、HECの塔底から除いた。粗APストリームの全重量を基準として、88.6重量%のAPおよび9.8重量%のフェノールを含む粗APストリームを、28lb/hr(12.7kg/hr)で、HECの塔頂から除き、1psia(6.9kPa)の塔頂圧力で操作しているAPRCへ供給した。APストリームの全重量を基準として、98重量%のAPストリームを、40lb/hr(18.1kg/hr)で、APRCの塔頂から除いた。APRC塔底部の全重量を基準として、77重量%のAPおよび22重量%のフェノールを含むAPRC塔底部を、125lb/hr(56.7kg/hr)で、上に示したように粗フェノールカラムへ再循環した。少量のブリードストリームを、0.9lb/hr(0.4kg/hr)で、APRCの塔底から除いた。操作条件はさらに、以下の表にまとめてある。
【0093】
【表3】
【0094】
上記の結果は、すべてのフェノールは、実質的にCPCおよびHECの塔頂液中ならびにAPRCの塔底部中に存在すると予測されるということを示している。上記の結果はまた、実質的にすべてのAPは、CPCの塔底部中およびHECの塔頂液中に存在すると予測されるということを示している。APのうちのいくらかは、APRCの塔底部中に大部分のフェノールと共に存在すると予測され、しかし大部分のAPおよびほとんど全くなしに近いフェノールが、APRCの塔頂液中に存在すると予測される。
【0095】
本明細書に記載された実施形態に様々な修正を施し得ることを、当業者は認識している。本明細書で記載された実施形態は、例示としてのみ示され、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものとして解釈すべきでないことを意味する。
図1
図2
図3