特許第5661469号(P5661469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661469
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】被覆系
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20150108BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   C09D201/00
   C09D7/12
【請求項の数】1
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2010-537362(P2010-537362)
(86)(22)【出願日】2008年11月20日
(65)【公表番号】特表2011-506657(P2011-506657A)
(43)【公表日】2011年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2008065912
(87)【国際公開番号】WO2009074438
(87)【国際公開日】20090618
【審査請求日】2011年11月17日
(31)【優先権主張番号】07122862.1
(32)【優先日】2007年12月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン マイヤー
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−1990(JP,A)
【文献】 特開平5−1242(JP,A)
【文献】 特公平2−17224(JP,B2)
【文献】 特表2007−526374(JP,A)
【文献】 特表2005−536611(JP,A)
【文献】 特表2005−536613(JP,A)
【文献】 特開平10−87317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00−10/00、
C09D15/00−201/10、
C09C1/00−3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5質量%〜30質量%の親水性で、ボールミルを用いた粉砕によって構造改質され、その後、エアジェットミル、歯付ディスクミルまたはピン付きディスクミルで再粉砕され、60μm以下のグラインドメーター値を有するフュームドシリカを含有することを特徴とする被覆材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被覆系に関する。
【0002】
フュームド(熱分解法によって製造された)シリカ(二酸化ケイ素)を被覆材料中に混合することは公知である。
【0003】
文献、Schriftenreihe Pigmente No.18 (1980年4月)、4ページから、疎水性フュームドシリカ(Aerosil(登録商標)972)を、顔料および充填剤と共に被覆材料中に混合することが公知である。クリアコート材料を製造するために、例えば、それぞれの結合剤溶液において約10%のペーストの調製物が推奨され、そのために公知の分散装置を使用することが可能である。そのように調製されたペーストは、被覆材料の製造におけるさらなる工程のための粉砕媒体として使用される。
【0004】
シラン処理され、構造改質されたフュームドシリカの被覆材料中に、溶剤と混合された結合剤、およびこの混合物と混合されたシリカを高速ミキサーによって混合することもまた公知である。該混合物は、引き続き、ビードミルを使用して分散される(WO2004/020532号)。
【0005】
被膜材料が、比較的高い引っかき耐性の他に、不所望のヘイズまたは不所望のフロスティングの少なさを示すことを特徴とする被覆材料の調製のために、構造改質され(structually modified)シラン処理されたシリカおよび溶剤を含むことを特徴とするフュームドシリカの分散液を使用することもまた公知である(WO2007/128636号)。
【0006】
フュームドシリカを被覆系中に混合する公知の方法は、この方法で製造されたクリアコート材料が、黒色番号My(Jetnessとも称される、Technical Information No.1204、Degussa AG)に基づいて測定される、不充分な色の明るさを示すという欠点を有している。
【0007】
従って本課題は、被覆材料が、改善された引っかき耐性だけでなく、黒色番号Myに基づいて測定される高い明度の色を示すように、被覆系中に混合されるために容易な分散性を有するフュームドシリカを可能にする方法を開発することであった。
【0008】
本発明は、0.5質量%〜30質量%の親水性で、構造改質され、且つ随意に再粉砕されたフュームドシリカを含有することを特徴とする被覆系を提供する。
【0009】
本発明によって使用される、構造改質された親水性フュームドシリカは、突き固め密度100〜250g/lを有することができる。
【0010】
BET比表面積200±25m2/gを有するフュームド親水性シリカから出発して、本発明によって使用される構造改質されたシリカはDPB数160〜240g/100g(DIN53601)を有することができる。
【0011】
BET比表面積300±30m2/gを有するフュームド親水性シリカから出発して、本発明によって使用される構造改質されたシリカはDPB数180〜250を有することができる。
【0012】
使用されるシリカ出発材料だけでなく、本発明によって使用される構造改質されたシリカの含水率は、1.5質量%未満であり得る。
【0013】
本発明によって使用される再粉砕される構造改質されたシリカは、60μm以下、好ましくは40μm以下のグラインドメーター値を有することができる。
【0014】
本発明によって使用される構造改質されたシリカは、使用されるシリカ出発材料よりも高い含水率を有することができる。それは3.5質量%より高くあってはならない。
【0015】
本発明によって使用される親水性フュームドシリカの製造方法は、親水性フュームドシリカを構造改質し、且つ、随意に再粉砕することによって特徴付けられる。
【0016】
該構造改質を、ボールミルまたは連続稼働ボールミルを用いて実施する。構造改質前および/または間に、水をシリカに添加できる。この添加を0.5質量%〜5質量%、好ましくは0.5質量%〜2質量%の量で行ってよい。それがより低い増粘効果をもたらす。
【0017】
構造改質の後、DBP数はより低いか、または確認できない。
【0018】
該構造改質は、グラインドメーター値(限界粒径)を上昇させる。しかしながら、増加したグラインドメーター値は再粉砕の間に再度低下する。
【0019】
構造改質の最中に、フュームドシリカの凝塊構造が非常に大幅に破壊される。これは図からわかる。
【0020】
図1は元のフュームドシリカを示し、一方、図2は構造改質されたフュームドシリカを表す。
【0021】
構造改質されたフュームドシリカは、より高い突き固め密度を有する。残留している個々の凝集体はより球状である。それらは<1400の増粘効果を有することができる。初めのシリカがBET比表面積200±25m2/gを有する場合、増粘効果は<1000であり得る。初めのシリカがBET比表面積300±30m2/gを有する場合、増粘効果は<1400であってよい。
【0022】
再粉砕は、粒径分布をより小さい粒子のほうへシフトさせ、グラインドメーター値を減少させる。
【0023】
構造改質後に残っているフュームドシリカの構造は、再粉砕によって悪影響を受けない。
【0024】
再粉砕は事実上、構造改質されたフュームドシリカの性能特性に影響を及ぼさない。なぜなら、再粉砕へのエネルギーの投入はボールミル内よりも低いからである。
【0025】
再粉砕のために、例えば、以下の装置を使用することが可能である:エアジェットミル、歯付ディスクミル、またはピン付きディスクミル。より好ましくは、エアジェットミルが使用される。
【0026】
構造改質および/または再粉砕の後、熱処理を実施してよい。この熱処理をバッチ式で、例えば乾燥キャビネット内で、あるいは連続的に、例えば流動床または流動層内で行ってよい。
【0027】
親水性フュームドシリカとして、BET比表面積50±30〜380±30m2/gを有する親水性フュームドシリカを使用することが可能である。特に好ましいことに、BET比表面積200±25または300±30m2/gを有する親水性フュームドシリカを使用するのが可能である。
【0028】
より特定には、表1に列挙される以下の親水性フュームドシリカを使用するのが可能である。
【0029】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】元のフュームドシリカを示す図である。
図2】構造改質されたフュームドシリカを示す図である。
図3】流動曲線を示す図である。
【0031】
実施例
親水性フュームドシリカAerosil(登録商標)200および親水性フュームドシリカAerosil(登録商標)300を、ボールミルを使用して構造改質する。この場合、表2に示されるように、水を添加し、且つ再粉砕を実施する。
【0032】
得られる構造改質されたシリカは、初めのシリカよりも高い乾燥減量を有する。
【0033】
得られた構造改質された親水性シリカの物理化学的データを表3に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
様々な物理化学的データを使用して、表3は構造改質および再粉砕が親水性フュームドシリカAEROSIL(登録商標)200およびAEROSIL(登録商標)300に及ぼす影響を示す。
【0037】
未処理の状態のAEROSIL(登録商標)200は表面積202m2/gを有している。これは構造改質および再粉砕によって影響または変更されない(比較例1および同様に実施例1〜6を参照)。
【0038】
構造改質の結果として突き固め密度が増加する。しかしながら、引き続きの再粉砕が突き固め密度を再度低下させる(実施例5および6を参照)。
【0039】
DBP数は構造改質によって低下する。しかしながら、それは再粉砕によっては影響されないままである。
【0040】
グラインドメーター値は構造改質によって上昇し、且つ、再粉砕のためにエアジェットミルが使用された場合、再粉砕によって元の値に戻る。
【0041】
親水性フュームドシリカの増粘効果は、構造改質によって著しく低下するが、しかし、再粉砕の結果として幾分か増加する。
【0042】
グラインドメーター値
原理:
分散の程度が、Aerosilで増粘された液体の性能特性を決定する。グラインドメーター値の測定は、分散の程度を評価するために役立つ。グラインドメーター値とは、それ未満では、塗布されている試料表面上で、存在する小片または凝集物が可視になる境界の層厚を意味する。
【0043】
スクレーパーを用いて試料を溝内に塗布する。片端での溝の深さは最大のAerosil粒子の直径の大きさの2倍であり、そして着々と減少し、他端では0である。溝の深さを示す目盛り上で、深さの値をマイクロメートルで読み取る。当該の値は、それ未満では比較的多くの数のAerosil粒子が結合剤系の表面上の小片または擦り傷の結果として可視になる値である。読み取られた値が当該の系のグラインドメーター値である。
【0044】
器具および試薬:
深さ範囲100〜0マイクロメートルを有するHegmannのグラインドメーター。
試験指示書0380に従って調製された、2%のAerosilを有するポリエステル樹脂分散液。
【0045】
試験指示書を以下の通りに実施する:
器具および試薬:
Dispermat AE02−C1、VMA−Getzmann (分散ディスク、直径5cm)
プラスチックビーカー 350ml、外径 8.4cm
固定用プラスチック蓋
モノスチレン溶液(100g モノスチレン+0.4g パラフィン)
Palatal(登録商標) P6−01、DSM複合樹脂
遠心分離器、Jouan社
熱調整キャビネット。
【0046】
手順:
142.5gのPalatal(登録商標)をプラスチックビーカー内に計量供給し、且つ、7.5gのAerosilを計量供給する; 引き続き、該AerosilをPalatal内へと、Dispermatを使用して約1000分-1で注意深く攪拌して入れ(ビーカーの壁に付着しているAerosilのいかなる残留物も、スイッチを切ったDispermatを用いてビーカー内にかき入れる)、そしてその後、5分間、3000分-1で分散させる(ビーカーの底からの分散ディスクの距離は約1mmである); 該ビーカーをこの手順の間、ドリルホールを含む蓋を用いて覆う。
【0047】
60gの分散液および27gのモノスチレン溶液をさらなるプラスチックビーカー内に63gのPalatal(登録商標)P6と共に導入し、そしてDispermatを使用して1500分-1で3分間、分散を実施する(ビーカーは覆われている)。
【0048】
これは18%のモノスチレンを含有する最終混合物中で2%のAerosilの濃度をもたらす。
【0049】
気泡を除去するために、密封されたプラスチックビーカーをラボ用遠心分離器内で、2500分-1で2.5分間、遠心分離する。分散液を、熱調整キャビネット内の覆われたビーカー内で、22℃で1時間50分間、立てておく。
【0050】
A. シリカ充填剤を有する不飽和ポリエステル樹脂の混合物の調製
ここに記載される作業指示書を使用して、親水性AEROSIL(登録商標)銘柄と不飽和ポリエステル樹脂との混合物を調製し、シリカの粒度および増粘能力を特徴付ける。
【0051】
配合
98%のPalatal A 410 (BUEFA製)
2%のシリカ。
【0052】
205.8gのPalatal A 410および4.2gのシリカをPEビーカー内に計量供給し、そして溶解機のディスクを完全に浸す。その後、1000分-1の速度n1で、蓋を閉めてシリカを均質化(混合)する。シリカが完全に混合したらすぐに、速度をn2、3000分-1に上昇させ、そして分散を5分間実施する。引き続き、該混合物を真空キャビネット内で脱気し、そして水浴中、25℃で少なくとも90分間貯蔵する。
【0053】
B. シリカ充填剤を有する樹脂の粘度測定
樹脂(例えばポリエステル樹脂、UP樹脂、ビニルエステル樹脂)は一般に、性能特性の改善の目的で充填剤を含有する。使用分野に依存して、使用される充填剤の性質および濃度が樹脂の流動挙動に影響する。Brookfield DV III流動計を使用する。スパチュラを使用して、該混合物をその貯蔵容器内で1分間均質化する。この均質化の最中、泡が形成されるべきではない。引き続き、該混合物を180mlのビーカー内に、そのビーカーがほぼいっぱいになるまで導入する。遅れることなく、流動計の測定ヘッドを該混合物中に完全に浸し、そして測定を以下の通りに実施する:
5rpm 60秒後に値を読み取る
50rpm 30秒後に値を読み取る。
【0054】
その読み取られた値が、それぞれのrpmでの粘度[Pa・秒]である。
【0055】
C. DIN53203によるグラインドメーター値の測定
試験器具
Hegmann式のグラインドメーターのブロックを使用する。
【0056】
測定手順
グラインドメーターのブロックを水平で滑らない表面に置き、そして試験の直前に拭いて清浄にする。その後、泡のない試料を溝の最も深い点で、溝の端を幾分超えてそれが流れ出るように導入する。その後、スクレーパーを両手で持って、グラインドメーターのブロックに対して垂直、且つその縦の端に対して直角で、緩やかな圧力で溝の下端上に置く。その後、ブロック上でスクレーパーをゆっくりと均質に引くことによって、試料を溝内に塗布する。試料をこすりつけた後、3秒以内に粒度を読み取る。
【0057】
試料の表面を、溝に対して横方向に、(表面に対して20〜30゜の角度で)斜め上から見る。試料の表面構造がすぐに明らかになるように、ブロックに光を当てておく。
【0058】
目盛り上の粒度として判明した値は、マイクロメートルの桁であり、それ未満では表面上で小片または擦り傷として比較的多数のシリカ粒子が可視となる。無作為に生じる個々の小片または擦り傷は、本文脈では考慮に入れない。
【0059】
粒度を、少なくとも2回、それぞれの場合、新規に塗布された分散液において評価する。
【0060】
評価:
測定値から、算術平均を出す。マイクロメートルでのグラインドメーター値と、インチ系に基づくFSPT単位およびHegmann単位との間の関係は、以下の通りである:
B=8−0.079A
C=10−0.098 A=1.25B
この関係において:
A=マイクロメートルでのグラインドメーター値
B=Hegmann単位でのグラインドメーター値
C=FSPT単位でのグラインドメーター値。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5-1】
【0063】
【表5-2】
【0064】
結果
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
実験は、構造改質されたシリカがより分散しにくいことを示唆する。従って、上記の実施例においてはビードミルを使用して分散を実施した。以下の実施例は、構造改質された親水性シリカに及ぼす粉砕の影響を示す。分散性を評価するために、分散を60分間、Skandex分散機を使用して、500mlのガラス瓶内で400gのガラスビーズを添加して実施した(直径3mm)。
【0067】
【表8】
【0068】
塗布特性は、バージョン/1に従う粉砕の場合、著しく影響されない; 従って、工程/2が、AEROSIL200およびAEROSIL300の変異物の場合にグラインドメーター値およびヘイズを著しく改善するのは驚くべきことである。
図1
図2
図3