(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661471
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】二酸化塩素を用いて水を処理するための方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20060101AFI20150108BHJP
C02F 1/76 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
C02F1/50 550D
C02F1/76 A
C02F1/50 510A
C02F1/50 520K
C02F1/50 531M
C02F1/50 540B
C02F1/50 550L
C02F1/50 550H
【請求項の数】23
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-538540(P2010-538540)
(86)(22)【出願日】2008年11月28日
(65)【公表番号】特表2011-506087(P2011-506087A)
(43)【公表日】2011年3月3日
(86)【国際出願番号】EP2008066428
(87)【国際公開番号】WO2009077309
(87)【国際公開日】20090625
【審査請求日】2011年10月24日
(31)【優先権主張番号】102007061360.3
(32)【優先日】2007年12月19日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102008041081.0
(32)【優先日】2008年8月7日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102008042424.2
(32)【優先日】2008年9月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510173018
【氏名又は名称】インフラコア ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Infracor GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ドゥーフェ
【審査官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−239304(JP,A)
【文献】
特開2004−143004(JP,A)
【文献】
特開2003−260468(JP,A)
【文献】
特開平11−010164(JP,A)
【文献】
特開2005−319381(JP,A)
【文献】
特開2008−094662(JP,A)
【文献】
特開2004−224626(JP,A)
【文献】
特開平06−009202(JP,A)
【文献】
特開2001−170641(JP,A)
【文献】
特開2000−239003(JP,A)
【文献】
特開昭61−293596(JP,A)
【文献】
特表2008−522941(JP,A)
【文献】
特開2000−185908(JP,A)
【文献】
特開2003−260470(JP,A)
【文献】
特開2006−084103(JP,A)
【文献】
特開2003−326277(JP,A)
【文献】
特開昭56−049155(JP,A)
【文献】
特開平02−088405(JP,A)
【文献】
特開2000−126780(JP,A)
【文献】
米国特許第7128879(US,B1)
【文献】
米国特許第1937780(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第10326628(DE,A1)
【文献】
国際公開第2001/054786(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/50
C02F 1/70− 1/78
C01B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.ClO2が発生させられる反応チャンバーは全面的に水で包囲されていること、
2.前記反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水であること、
3.前記反応チャンバー内で発生するClO2は前記反応チャンバーから直接被処理水中に供給され、その際、投与化学物質の濃度は、形成される二酸化塩素の濃度が前記反応チャンバー出口箇所にて26g/l溶液を超えるように選択され、かつ前記反応チャンバー内での反応体の反応時間が0.1〜1.5分であること
を特徴とする、二酸化塩素(ClO2)を用いて水を処理するための方法。
【請求項2】
投与化学物質の濃度は、形成される二酸化塩素の濃度が前記反応チャンバー出口箇所にて80g/l溶液を超えるように選択されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記反応チャンバーが反応器であることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記反応器が管型反応装置であることを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
反応体と使用される稀釈水との混合が前記反応チャンバー内で行われることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
二酸化塩素がアルカリ亜塩素酸塩および塩酸(反応体)から発生させられることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
二酸化塩素が亜塩素酸ナトリウムおよび塩酸(反応体)から発生させられることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
二酸化塩素が3.5%〜40%の亜塩素酸ナトリウム水溶液から発生させられることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
二酸化塩素が3.5%〜42%の濃度の塩酸から発生させられることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
二酸化塩素が亜塩素酸ナトリウムおよび塩素(反応体)から発生させられることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
稀釈水が使用されることを特徴とする、請求項1から4、6から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応チャンバーを出てゆく前記溶液中で導電率が測定されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応チャンバーが導管内に位置しており、前記導管は被処理水によって貫流されることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
稀釈水なしで実施されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応器が圧力制御設備なしで運転されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応器が反応器末端に開放出口を有しているため、前記反応チャンバー内の圧力は前記包囲している水によって前記反応チャンバーに及ぼされる値までしか上昇し得ないことを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応器出口から出てゆく二酸化塩素溶液の稀釈が、反応器出口箇所における被処理水の更新率が生成二酸化塩素グラム・毎時当たり0.1m3/h〜20m3/hであるようにして行われることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
1.ClO2が発生させられる前記反応チャンバーは圧力制御装置なしの、開放出口を備えた反応器であって、前記反応器は全面的に水で包囲されていること、
2.前記反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水であること、
3.前記反応チャンバー内で発生するClO2は前記反応チャンバーから直接被処理水中に供給され、その際、投与化学物質の濃度又は投与化学物質と稀釈水とからなるコンビネーションの濃度は、形成される二酸化塩素溶液の濃度が前記反応器出口箇所にて26g/lを超えるように選択されること
を特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
1.ClO2が発生させられる前記反応チャンバーは圧力制御装置なしの、開放出口を備えた反応器であって、前記反応器は全面的に水で包囲されていること、
2.前記反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水であって、この水は前記反応チャンバー内の二酸化塩素含有溶液に一定の大きさの圧力を及ぼし、所与の温度に際する二酸化塩素の水中溶解限度が超えられないようにすること、
3.前記反応チャンバー内で発生するClO2は前記反応チャンバーから直接被処理水中に供給され、その際、投与化学物質の濃度又は投与化学物質と稀釈水とからなるコンビネーションの濃度は、形成される二酸化塩素溶液の濃度が前記反応器出口箇所にて26g/lを超えるように選択されること
を特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
投与化学物質の濃度又は投与化学物質と稀釈水とからなるコンビネーションの濃度は、形成される二酸化塩素の濃度が前記反応器出口箇所にて80g/lを超えるように選択されることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
濃縮された投与化学物質が使用され、塩酸・亜塩素酸塩法(1)によって処理され、その際、塩酸の濃度は33〜42%であり、亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度は25〜40%であることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
3.前記反応チャンバー内で発生するClO2が前記反応チャンバーから直接に被処理水中に供給されるのではなく、前記反応チャンバーから流出する二酸化塩素溶液が前記反応チャンバーの末端(出口)箇所に配された誘導管を経て1つ以上のその他の場所へ輸送されることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
被処理水が、冷却塔水槽(中間貯水槽)内にある循環冷却系の戻り冷却水であることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二酸化塩素(ClO
2)を用いて水を処理するための方法に関する。
【0002】
二酸化塩素は高い殺菌、殺ウイルスおよび殺藻作用を有するために浄水処理に使用される。気体二酸化塩素(c>300g/m
3)および二酸化塩素溶液(c>26g/l)には爆発傾向があるために、二酸化塩素は圧縮された形または相対的に高濃度の溶液の形で貯蔵保管することはできない。こうした化学的特性があるために、二酸化塩素は使用現場で製造されなければならない。これは二酸化塩素発生設備の特殊な反応器中で原料化学物質を混合することによって行われる。化学物質貯蔵タンク、配量装置並びに二酸化塩素発生設備の反応器は、ふつう人が出入りできるスペースに設置された、場所的にまとまりのある装置設備を形成している。
【0003】
水処理のために商業的に利用されるClO
2の合成には、複数の、ただし主として3つの基本的方法が存在している。これらの方法は出発原料の一つとして亜塩素酸ナトリウム(NaClO
2)を利用する。以下に、これらの3つの方法の基本的な化学プロセスを説明する。その際に使用される物質は投与化学物質または反応体とも称される。
【0004】
1.亜塩素酸ナトリウムと強酸とを用いる方法
第1の方法では、強酸が亜塩素酸ナトリウムと共に使用される。強酸はほとんどの場合に塩酸または硫酸である。塩酸使用下での化学量論的反応は以下の通りである:
5NaClO
2+4HCl→4ClO
2+5NaCl+2H
2O
さらに、二酸化塩素は硫酸の使用下で以下の反応にしたがって形成可能である:
10NaClO
2+5H
2SO
4→8ClO
2+5Na
2SO
4+2HCl+4H
2O
【0005】
2.亜塩素酸ナトリウムと塩素とから出発する方法
この方法は気体塩素を亜塩素酸ナトリウムと共に使用する。この反応は2段階で行われ、最初に、塩酸の形成が行なわれる。
Cl
2+H
2O→HOCl+HCl
中間生成物の次亜塩素酸(HOCl)が続いて亜塩素酸ナトリウムと反応して、二酸化塩素(ClO
2)を形成する。
HOCl+HCl+2NaClO
2→2ClO
2+2NaCl+H
2O
上記2つの式からの化学量論的反応は以下の通りである:
Cl
2+2NaClO
2→2ClO
2+2NaCl
【0006】
3.亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸ナトリウムとから出発する方法
第3の方法では、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)が亜塩素酸ナトリウムと共に使用される:
NaOCl+HCl→NaCl+HOCl
HCl+HOCl+2NaClO
2→2ClO
2+2NaCl+H
2O
【0007】
二酸化塩素を発生させるための合成反応はふつう、連続法またはバッチ法で運転される反応器内で実施される。
【0008】
二酸化塩素の発生に際しては、2つの爆発限界、ClO
26g以上/l溶液[空気との接触]およびClO
226g以上/l溶液[水溶液の自己分解]が顧慮されなければならない。上記の方法1〜3によって二酸化塩素合成が実施される場合には、反応チャンバー内で約26gClO
2/l溶液を超える濃度に達するような投与化学物質の使用にあたり、この自然的な自己分解濃度が超えられないように、反応チャンバーに稀釈水が加えられる。反応チャンバーを出てゆく、ふつう20gClO
2/lまたはそれ以下の濃度の二酸化塩素溶液は、さらに別の水流によって、約3gClO
2/l溶液の濃度に稀釈される。
【0009】
従来の技術に属する上記の方法が、設備安全性、二酸化塩素収率および比時間発生効率の点で満足すべき成果を得て運転されるようにすべく、さまざまな方法技術的バリエーション、特に以下のバリエーションが行われる:
−稀釈済み投与化学物質の使用:発生した二酸化塩素溶液の濃度を26g/l乃至6g/l以下にすること。
−真空の設定による反応器内低圧の形成:気相の二酸化塩素濃度を<300g/m
3に低下させること。
−例えば反応器出口箇所に圧力保持弁を使用することによる反応器内高圧の形成:二酸化塩素の溶解限度の超過による気相の発生の阻止;収率の向上。
−反応時間の長いバッチ法の使用:稀釈済み投与化学物質使用時の収率の向上。
−亜塩素酸塩・酸法に際する化学量論比以上の量の酸の投与および亜塩素酸塩・塩素法に際する化学量論比以上の量の塩素の投与:収率の向上。
【0010】
上記のバリエーション方式の適用にもかかわらず、例えば稀釈水供給障害あるいは圧力制御障害によって二酸化塩素発生設備の正常な運転が妨げられる場合、二酸化塩素の自然分解(爆発)に至たる、あるいは二酸化塩素含有溶液と周囲との間の隔面の漏れまたは破損によって、二酸化塩素が発生設備の周辺に危険を招来することがある。また、二酸化塩素溶液の濃度を6g/l以下にするために稀釈済み投与化学物質を使用し、それゆえ、二酸化塩素発生設備の相対的に高い比時間発生効率を断念する場合にも、正常な運転が行われなければ、0.1ppmのMAK値が超えられることによって発生設備周辺に危険がもたらされることがある。こうした危険を最低限に抑止すべく、発生設備自体のみならず、二酸化塩素発生設備の設置場所でも、さまざまな対策、例えば反応器の定期的な交換を含めた発生設備の冗長保守作業、発生設備の設置場所の空間的隔離、強制換気および連続的なガス分析による設置場所大気汚染の監視などが実施される。
【0011】
そこで、本発明の目的は、二酸化塩素を用いた水の処理をより安全かつより効率的に設計することである。この目的が意味するところは、特に、比時間発生効率の高い二酸化塩素発生方法を実現すると共に、この種の水処理法のリスクポテンシャルを最低限に抑止し、同時に、安全設備に要される費用を低下させることである。
【0012】
環境中、特に設備が通例運転されるスペース内へのClO
2の漏出の回避下で環境とヒトとにとって安全な方法が見出されなければならない。また同時に、濃縮された投与化学物質の使用によって得られる一連の利点、例えば物質輸送の減少、反応速度の高まり、収率の向上、反応器容積の減少が利用可能とされなければならない。
【0013】
本発明の対象は、
1.ClO
2が発生させられる反応チャンバーは全面的に水で包囲されていること、
2.反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水であること、
3.反応チャンバー内で発生するClO
2は反応チャンバーから直接被処理水中に供給されること
を特徴とする二酸化塩素(ClO
2)を用いて水を処理するための方法である。
【0014】
本発明の好ましい対象は、
1.ClO
2が発生させられる反応チャンバーは全面的に水で包囲されていること、
2.反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水であること、
3.反応チャンバー内で発生するClO
2は反応チャンバーから直接被処理水中に供給され、その際、投与化学物質の濃度と場合により使用される稀釈水とからなるコンビネーションは、形成される二酸化塩素の濃度が反応器出口箇所にて3g/l溶液を超え、好ましくは26g/l溶液を超え、特に好ましくは80g/l溶液を超えるように選択されること
を特徴とする二酸化塩素を用いて水を処理するための方法である。
【0015】
本発明のさらに別の好ましい対象は、
1.ClO
2が発生させられる反応チャンバーは圧力制御装置なしの、開放出口を備えた反応器であって、この反応器は全面的に水で包囲されていること、
2.反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水であること、
3.反応チャンバー内で発生するClO
2は反応チャンバーから直接被処理水中に供給され、その際、投与化学物質の濃度と場合により使用される稀釈水とからなるコンビネーションは、形成される二酸化塩素の濃度が反応器出口箇所にて3g/l溶液を超え、好ましくは26g/l溶液を超え、特に好ましくは80g/l溶液を超えるように選択されること
を特徴とする二酸化塩素を用いて水を処理するための方法である。
【0016】
本発明の特に好ましい対象は、
1.ClO
2が発生させられる反応チャンバーは圧力制御装置なしの、開放出口を備えた反応器であって、この反応器は全面的に水で包囲されていること、
2.反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水であって、この水は反応チャンバー内の二酸化塩素含有溶液に一定の大きさの圧力を及ぼして、所与の温度に際する二酸化塩素の水中溶解限度が超えられないようにすること、
3.反応チャンバー内で発生するClO
2は反応チャンバーから直接被処理水中に供給され、その際、投与化学物質の濃度と場合により使用される稀釈水とからなるコンビネーションは、形成される二酸化塩素の濃度が反応器出口箇所にて3g/l溶液を超え、好ましくは26g/l溶液を超え、特に好ましくは80g/l溶液を超えるように選択されること
を特徴とする二酸化塩素を用いて水を処理するための方法である。
【0017】
驚くべきことに上記課題は本願請求項並びに下記説明に記載した対策によって解決することができた。
【0018】
作業スペースまたは環境へのClO
2の漏出回避によって安全な作業を可能にすると共に爆発性分解の不適な作用を除去する本発明による方法にとって重要な点は、コンビネーションされた上記の特徴1〜3である。ClO
2が発生させられる反応チャンバーは全面的に水で包囲されており、かつ、反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水である。
【0019】
二酸化塩素の発生場所を人が出入りできるスペース並びに投与化学物質貯蔵保管場所から引き離すことにより、安全性は著しく高まる。反応チャンバーの爆発にまで至ることのある漏れは大量の水によって実質的に無効化される。
【0020】
反応チャンバーの末端に出口が直接設けられ、したがって、出口は同じく被処理水によって包囲されているために、発生したClO
2は迂回なしに、ClO
2が発生する反応チャンバーから直接被処理水中に供給される。
【0021】
同じく驚くべきことに、反応チャンバー内の二酸化塩素の濃度を26g/lの溶液以上、特に好ましくは80g/l以上とするような濃縮された投与化学物質の使用を必要に応じて使用される稀釈水とコンビネーションする場合、反応チャンバー内の平均滞留時間が気体二酸化塩素の形成が阻止される一定の時間範囲内にあれば、二酸化塩素の自己崩壊は生ずることなく、しかも、反応チャンバーを出てゆく二酸化塩素溶液の濃度は急激にミリグラムレベルにまで稀釈されるとのことが見い出された。さらにまた、所要の化学量論比以上の、収率を向上させるための過剰量の酸乃至塩素は反応チャンバー内の二酸化塩素濃度の高まりによって減少させることができることも見い出された。
【0022】
以下に、上述した新たな方法の利点を詳細に説明する。
【0023】
反応チャンバー、特に反応器の漏れは反応器の外側壁面脇を連続的に流過してゆく水中において容易かつ確実に処理されることができる。特に、反応チャンバーの漏れに際して流出する二酸化塩素は問題のない濃度にまで稀釈されて、運び去られる。このことは場合により反応チャンバー、特に反応器から流出する投与化学物質についても同様である。また、濃縮された投与化学物質からの二酸化塩素の合成は水による稀釈なしでも可能であり、所要の化学量論比以上の、収率を向上させる過剰量の酸乃至塩素は減量させることができ、加えてさらに、反応速度の有意な高まりがもたらされるために、反応チャンバーの高い比発生効率が得られる。反応チャンバー内における反応体の所要平均滞留時間の減少により、反応チャンバー容積を最小化することが可能であり、これにより、例えば、被処理水によって貫流される導管内に反応チャンバー、特に反応器を取り付けることが可能になる。さらにまた、工学的安全性から見て、合成の間反応チャンバー内に不断に存在する二酸化塩素の量と被処理水の量との間の比の改善がもたらされる。
【0024】
二酸化塩素の発生場所を人が出入りできるスペース並びに投与化学物質貯蔵保管場所から引き離すことにより、安全性は著しく高まる。反応チャンバー爆発にまで至ることのある反応チャンバーの漏れは、反応チャンバー内に存在する二酸化塩素の量に比較して大量に存在する被処理水によって実質的に無効化される。
【0025】
作業スペースまたは環境中へのClO
2の漏出の回避によって、濃縮された投与化学物質を稀釈水なしで使用する場合にも安全な作業を可能にすると共に爆発性分解の不適な作用を除去する本発明による方法にとって重要な点は、コンビネーションされた上記の特徴1〜3である。
【0026】
ClO
2が発生させられる反応チャンバーは全面的に水で包囲されており、かつ、反応チャンバーを包囲している水は同時に被処理水である。
【0027】
反応チャンバーとして反応器を使用するのが好ましい。
【0028】
反応チャンバー、好ましくは反応器の末端に出口が直接設けられ、したがって、出口は同じく被処理水によって包囲されているために、方法ステップ3において、発生したClO
2は迂回またはその他の補助的な管路なしに、ClO
2の発生する反応チャンバーから直接被処理水中に供給される。この対策は、本方法の好ましいバリエーションである。
【0029】
さらに、反応チャンバーから流出する二酸化塩素溶液を反応チャンバーの末端(出口)箇所に配された誘導管を経て1つ以上のその他の場所へ輸送することも可能である。これは、とりわけ、処理さるべき大型総合システムにおける二酸化塩素溶液の配給に利用することができ、あるいは、処理さるべき複数の個別システムへの二酸化塩素溶液の分配に利用することができる。こうした誘導管には、上述した効果を達成することのできるあらゆる設備、例えば固定取り付けされたパイプまたはフレキシブルチューブシステムが適当している。誘導管の末端には二酸化塩素溶液を分配するための装置、例えば噴水液体ポンプ、循環ポンプが配置されていてもよい。
【0030】
被処理水中に供給されるという表現は、ClO
2が反応チャンバーから、好ましくは反応チャンバーに流入する投与化学物質によると共に、場合により反応チャンバーに流入する稀釈水によって、直接または誘導管を経て被処理水中に持ち込まれるとのことを意味している。
【0031】
反応チャンバーの出口箇所、好ましくは反応器出口箇所または誘導管出口箇所における被処理水の更新率は技術設備によって高めることが可能である。
【0032】
反応チャンバー、好ましくは反応器が、好ましくは圧力制御設備なしで運転される。反応チャンバー、好ましくは反応器または誘導管の末端に配された開放出口によって、反応チャンバー内の圧力はそれを包囲している水によって反応チャンバーに及ぼされる値までしか上昇し得ないことが保証される。
【0033】
反応チャンバー内、好ましくは反応器内に形成される二酸化塩素の濃度は、包囲している水の圧力および温度とのコンビネーションによって、二酸化塩素の水中溶解限度が超えられないように設定することができる。これにより、二酸化塩素気相の形成による2相系の発生を阻止することができる。
被処理水によって反応チャンバーに及ぼされる圧力は、例えば、反応チャンバー、好ましくは反応器の貯水槽内浸漬深度によって変化させることができる。導管内で使用される反応器に関する圧力条件は、例えば、導管に組み込まれた遮断機構によって影響を与えることができる。
【0034】
被処理水が反応チャンバー、好ましくは反応器の出口箇所において適切な割合で更新されれば、反応チャンバー、好ましくは反応器から出てゆく二酸化塩素溶液の濃度を急激にミリグラムレベルにまで低下させることが可能である。これは、例えば、反応チャンバー、好ましくは反応器が、所望の更新率に対応する量の被処理水によって貫流される導管内に配置されることによって達成することができる。
【0035】
貯水槽に浸漬された反応チャンバー、好ましくは反応器が、反応チャンバー末端箇所、好ましくは反応器出口箇所または誘導管末端箇所における被処理水の適切な更新率を保証すべく、場所的に循環ポンプの吸込み側の近傍に配置されてよい。循環ポンプが設けられない場合、従来の技術による数多くの方法、例えば噴水液体ポンプまたは、反応チャンバー末端箇所、好ましくは反応器出口箇所または誘導管末端箇所における被処理水の所望の更新率をもたらすその他の循環設備が使用可能である。
【0036】
基本的に、ClO
2を反応チャンバー内で化学的に製造するためのあらゆる方法、特に、冒頭に述べた方法1〜3または塩素酸塩から出発する方法も適用可能である。
【0037】
本発明において好ましいのは、塩酸・亜塩素酸塩法(1)である。この場合、アルカリ亜塩素酸塩、好ましくは亜塩素酸ナトリウムからなる投与化学物質(反応体)は3.5%〜40%の水溶液で存在していてよい。酸は、好ましくは濃度3.5%〜42%の塩酸である。
本発明の特に好ましい実施形態において、濃縮された投与化学物質が使用され、塩酸・亜塩素酸塩法(1)によって処理される。この場合、塩酸の濃度は約33〜42%であり、亜塩素酸ナトリウム溶液の濃度は約25〜40%である。投与化学物質は反応チャンバー内、好ましくは反応器内稀釈も予備的な稀釈も行われない。
【0038】
投与化学物質(反応体)、特に酸および亜塩素酸塩は上述したように水溶液として、固有圧力によって別々に、または、ポンプを使用して、反応チャンバー内に供給されて、反応にもたらされる。
【0039】
好ましい処理方式において、反応体は濃縮された溶液として使用され、稀釈水の使用は行われないために、二酸化塩素濃度は反応チャンバー末端箇所、好ましくは反応器出口箇所または誘導管末端箇所にて80g/l溶液を超えている。別法として、稀釈水を使用して、二酸化塩素濃度が反応チャンバー末端箇所、好ましくは反応器出口箇所または誘導管末端箇所にて3g/l溶液を超え、好ましくは26g/l溶液を超え、特に好ましくは80g/l溶液を超えるようにすることも可能である。
【0040】
本発明による方法を実施するための装置は基本的にそれに適した装置および機器を含んでいる。装置は一般に投与化学物質(反応体)のための1つ以上のタンク、特に酸貯蔵タンクおよび亜塩素酸塩貯蔵タンクを含んでおり、ここで、酸の水溶液は酸貯蔵タンクに、亜塩素酸塩イオンのアルカリ金属塩溶液は亜塩素酸塩貯蔵タンクにそれぞれ貯蔵される。また、適切な成分を貯蔵タンク内に供給すると共に溶液を取り出すことのできる機器が設けられている。好ましくは、これらの機器は、投与化学物質(反応体)、特に酸の水溶液と亜塩素酸塩イオンのアルカリ金属塩溶液並びに稀釈水の流量を保証するのに十分なポンプおよび供給管を含んでいる。この分野の専門家であれば、反応体溶液(つまり、例えば、酸の水溶液、亜塩素酸塩イオンのアルカリ金属塩溶液)の所要供給量を実現するのに必要とされる、当該貯蔵タンク、供給管およびポンプの各適切なサイズを容易に決定することが可能である。
【0041】
装置の好ましい実施形態は、2種の投与化学物質(反応体)用の少なくとも2基のポンプ、特に、亜塩素酸塩イオンのアルカリ金属塩溶液用の1基のポンプと酸水溶液用のもう1基のポンプまたは、さらに稀釈水が使用される場合には3基のポンプを備えている。
【0042】
装置は、さらに、投与化学物質(反応体)の反応水溶液を調製すべく、投与化学物質(反応体)の溶液、特に亜塩素酸塩イオンのアルカリ金属塩を含んだ溶液と酸の水溶液とを混合するための機器を含んでいる。2本の流れ乃至3本の流れを1本化する従来のT継手またはその他の継手、絞り管および/または攪拌槽を含んだ、上記の溶液を十分に混合する任意の機器を使用することが可能である。このようにして混合後に、反応水溶液は反応チャンバーに供給される。好ましくは、2種の反応体並びに場合により使用される稀釈水の混合は反応チャンバー内で行われる。混合プロセスは任意の設備、例えば、最適な混合を保証する、例えばそらせ板、インジェクタまたは充填物によって導入することができる。
【0043】
反応チャンバーとしては、連続攪拌反応器、単純なタンク、質量流れ乃至押出し流れ反応器および管型反応器を含む、投与化学物質(反応体)、特に酸水溶液と亜塩素酸塩イオンのアルカリ金属塩との間の反応を引き起こすことのできる任意の反応器が使用可能である。管型反応器は特に好ましい。一般に、二酸化塩素発生装置は1個の管型反応器のみからなっているが、ただし、複数の反応器を、例えば管束形に平行配置することによって装置の発生効率を高めることができる。反応器は温度制御されていても、発生する反応熱を包囲している水に放熱すべく優れた熱伝導性材料からなっていてもよい。反応器の製造材料はそれぞれの反応液に対して優れた耐性を有する材料からなっている。28g/l以上の濃度を有する二酸化塩素溶液を発生させる場合、反応器材料として、例えばチタン、31合金、ガラスまたは化学材料、例えばポリマー、例えばPVDFまたはPTFEが使用される。ClO
2は反応器から水溶液を送出することのできる任意の機構によって反応器から送出される。好ましくは、反応は連続的に実施され、また、ClO
2は反応器から連続的に送出される。ClO
2は反応器を出てから被処理水中に直接供給されるかまたは反応器出口箇所に配された誘導管を経て1以上のその他の場所へ輸送される。
【0044】
好ましくは、本発明により、管型反応器が使用される。一般に、管型反応器の管は、反応液の流量、反応体の濃度および反応液の温度に鑑みて成分同士を十分に反応させるべく十分な反応器内滞留時間が確保されるように十分な長さを有して設計されている。現場で適切な二酸化塩素溶液を発生させるために使用することのできる特に好ましい反応器は、1本以上のコイル管を内蔵した(温度制御式)管型反応器である。この分野の専門家であれば、製造さるべき二酸化塩素溶液の量、反応体の流量および濃度、反応水溶液のpH値、ClO
2のpH値および反応器の温度に応じて、反応器のサイズおよび形状を変化させることができる。この分野の専門家であれば、同じく、反応器の温度を適切に調節することも可能である。
【0045】
反応チャンバー内の反応時間は変化可能である。反応チャンバー内の反応体の濃度が高まるにつれて最適滞留時間は減少する。二酸化塩素濃度20g/lの溶液が製造される場合、約85%の収率を達成するのに、反応器内平均滞留時間は約60分〜4分、好ましくは約4〜6分である。特に好ましい実施形態において二酸化塩素濃度が80g/l以上に高まる場合、反応器内平均滞留時間は、収率95%にて、約0.1分〜1.5分、好ましくは0.3〜0.6分、特に好ましくは約0.4分である。反応体が濃縮液として使用され、稀釈水が使用されず、所要の化学量論比を超える過剰量の酸乃至塩素が最小限化される場合には、最少平均滞留時間の達成が可能である。
【0046】
好ましくは、反応チャンバーを出てゆく溶液中で、同溶液が被処理水に供給される前に、導電率が測定される。例えば、誘導測定法を使用することができる。測定された導電率から、使用された反応体の化学反応並びに場合により使用された稀釈水の量に関する情報を得ることができる。
【0047】
反応器出口または誘導管から出てゆく二酸化塩素溶液の稀釈は、反応器出口箇所における被処理水の更新率が発生二酸化塩素グラム・毎時当たり約0.1m
3/h〜20m
3/h、好ましくは発生二酸化塩素グラム・毎時当たり1m
3/h〜4m
3/hであるようにして行われる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】特定の投与化学物質(反応体)に制限されることのない、本発明による方法を実施するための基本的な構造を示す系統図。
【
図2】特定の投与化学物質(反応体)に制限されることのない、本発明による方法を実施するための基本的な構造を示す略図。
【
図3】二酸化塩素濃度70g/lおよび80g/lを例として、圧力および温度と相関した二酸化塩素の水溶液中溶解限度を示す略図。
【0049】
本発明による方法は、例えば
図1および
図2に示した装置によって実施することができる。
【0050】
図1には、特定の投与化学物質(反応体)に制限されることのない、本発明による方法を実施するための基本的な構造が表されている。したがって、符号の付された装置は一般に機能的に見て、考えられるさまざまな投与化学物質(反応体)を用いて行われるすべての方法に適用可能であり、これは当業者には容易に理解される。
【0051】
図1には、投与化学物質(反応体)用の2個のタンク、特に送出ポンプ4を備えた亜塩素酸塩貯蔵タンク1と、送出ポンプ5を備えた酸貯蔵タンク2とを含んでなる二酸化塩素による水処理装置が示されている。給水ポンプ6には水接続口3を経て水が供給される。これら3基のポンプはすべて個別管を経て反応器7の下側面に接続されている。反応器の内部には、供給された成分を反応チャンバー内で速やかかつ完全に混和することを保証する従来の技術による装置が設けられている。反応体溶液の濃度または使用される稀釈水量を変化させることにより、発生する二酸化塩素溶液の濃度は3g/l以上、好ましくは26g/l以上、特に好ましくは80g/l以上とされる。
【0052】
反応器7の反対側の上端には、導電率測定装置13の前置された反応器出口8が配されている。
【0053】
二酸化塩素溶液が被処理水中に移行してゆく箇所に噴水液体ポンプ14を配置することが可能であり、これにより、二酸化塩素混入箇所における被処理水の更新率を高めることができる。この場合、反応器出口8から噴水液体ポンプ14に至る導管は逃がし孔を有しており、これにより、被処理水9の圧力が反応器7内で有効になることが保証される。
【0054】
反応器は、中間貯水槽を通過する被処理水9によって全面的に包囲されている。処理済み水は中間貯水槽から吸水管を経て取り出されて、循環ポンプ10によって処理済み水使用場所11に供給される。次いで再び処理さるべき水9は返送管12を経て中間貯水槽に返送されて、新たに反応器出口8または噴水液体ポンプ14からの流出口の箇所を通過する。反応器出口8は、反応器出口8の箇所における被処理水9の速やかな交換を保証すべく、場所的に循環ポンプ10の吸込み側の近傍に配置されることも可能である。
図3に例示したように、被処理水の温度を顧慮して、パラメータ「被処理水中への反応器の浸漬深度」(圧力)と「反応器中で発生させられる二酸化塩素溶液の濃度」を適切に選択することにより、気相二酸化塩素の形成を抑止することが可能である。さらに、反応器7から流出する二酸化塩素溶液を反応器出口8の箇所に配された誘導管(
図1には不図示である)を経て1以上のその他の場所へ輸送することも可能である。同所には、二酸化塩素溶液を分配するための装置、例えば噴水液体ポンプ、循環ポンプも配置されていてよい。
【0055】
図2には、特定の投与化学物質(反応体)に制限されることのない、本発明による方法を実施するための基本的な構造が表されている。したがって、符号の付された装置は一般に機能的に見て、考えられるさまざまな投与化学物質(反応体)を用いて行われるすべての方法に適用可能であり、これは当業者には容易に理解される。
【0056】
図2には、本発明による方法を実施するためのさらに別の好ましい装置が表されている。この場合、本発明にとって重要なのは、反応チャンバーは導管15内に位置しており、導管は被処理水によって貫流され、反応チャンバーの周囲を被処理水が流れる点である。
【0057】
図2において、反応器7は
図1と同様に、同じ供給管に接続されている。反応器7は同じく被処理水9によって包囲されているが、ただし、反応器7は被処理水9によって貫流される導管14内に位置しており、この導管によって被処理水9は、それが反応器出口8を通過した後、処理済み水使用場所11に供給される。
【0058】
図2において、反応器7には
図1と同様に、稀釈水を供給することが可能であるが、ただしこの場合、反応器7を反応チャンバー内での水による反応体の稀釈なし(稀釈水送出ポンプ6、電源遮断)で反応させる点が好ましいバリエーションである。その際、発生する溶液の濃度は反応器出口8にて、1リットル当たり二酸化塩素、9g/l以上[ClO
2含有量は、稀釈水なしで、3.5%の反応体の使用時にも9.1g/lに高まる]、好ましくは26g/l以上、特に好ましくは80g/l以上に増加し得る。この好ましいバリエーションにおいて、反応器容積を極度に縮小するのが有利である。一般に、被処理水9に混入された後の二酸化塩素溶液の濃度を1リットル当たり好ましくは80g以上から速やかにミリグラムレベルに変化させるべく反応器出口8での被処理水9の更新率を高めるためのその他の装置はもはや不要である。同じく一般に、導管14内の被処理水9の圧力を、
図3に示したように、反応器7内における二酸化塩素の水溶液中溶解限度が超えられないように調節することも困難ではない。
【0059】
図3には、二酸化塩素濃度70g/lおよび80g/lを例として、圧力および温度と相関した二酸化塩素の水溶液中溶解限度が表されている。
【0060】
本発明による方法を以下の実施例によって説明されるが、それに制限されるものではない。
【実施例】
【0061】
参考例1
図1に述べた装置が使用される。亜塩素酸塩貯蔵タンク1内の水溶液は25%の亜塩素酸ナトリウムを含んでおり、この溶液は送出ポンプ4によって2.5l/hにて反応器7に供給される。酸貯蔵タンク2からは、32%塩酸水溶液が送出ポンプ5によって2.5l/hにて同時に反応器7に供給される。発生する二酸化塩素溶液の濃度は、水接続口3から送出ポンプ6によって同じく同時に反応器7に供給される5l/hの稀釈水によって、42g/l[収率92%の場合]に設定される。反応器は0.33リットルの自由容積を有しており、反応混合物の反応チャンバー内滞留時間は2分である。含有量42g/lの二酸化塩素溶液が反応器出口8を経て、毎時10リットルにて、被処理水で運転される噴水液体ポンプ14に供給され、続いて、返送された量の被処理水と混和される。導電率測定装置13によって検出された値は0.42S/cmである。二酸化塩素で富化された水は毎時1000m
3が処理済み水循環ポンプ10によって中間貯水槽から取り出されて、処理済み水使用場所11に供給される。二酸化塩素の貧化した水は被処理水返送管12を経て中間貯水槽に返送される。被処理水は処理済み水循環ポンプ10の吸引箇所に至る途上で、流出してくる二酸化塩素含有水を受容し、その際、混合水の二酸化塩素濃度は速やかに0.42mg/lに減少する。反応器出口8は中間貯水槽内において水面下4メートルに位置しており、被処理水の温度は32℃である。本
参考例1に述べた装置において、被処理水9は冷却塔水槽(中間貯水槽)内にある循環冷却系の戻り冷却水である。循環ポンプ10によって冷却水は熱交換面を経て発熱性熱源を有する化学生産設備に誘導され(処理済み水使用場所11)、続いて、再び冷却塔水槽(中間貯水槽)に達する前に、蒸発冷却塔の充填物を経てパーコレートされる。冷却塔水槽は800m
3の容積を有している。中間貯水槽内の液面は水位制御されているため、蒸発した冷却水は自動的に清浄水によって補充される。
【0062】
実施例2
図2に述べた装置が使用される。亜塩素酸塩貯蔵タンク1内の水溶液は25%の亜塩素酸ナトリウムを含んでおり、この溶液は送出ポンプ4によって6l/hにて反応器7に供給される。酸貯蔵タンク2からは、30%塩酸水溶液が送出ポンプ5によって5l/hにて同時に反応器に供給される。反応器7は、毎時100m
3の量の被処理水9によって貫流される導管14内に取り付けられている。送出ポンプ6を経て反応器7に稀釈水が供給されることはない。反応器は0.075リットルの自由容積を有しており、反応混合物の反応チャンバー内滞留時間は0.4分である。含有量94g/lの二酸化塩素溶液が反応器出口8を経て、毎時11リットルにて、反応器7の周囲を流れる被処理水9に加えられ、これにより、反応混合物の濃度は反応器出口8にて、被処理水9との混和によって急激に10mg/lに低下させられる。300%の酸過剰において、二酸化塩素は収率95%にて発生させられる。導管14内の被処理水9の圧力は5.5barであり、反応器出口8におけるその更新率は生成二酸化塩素グラム・毎時当たり0.1m
3/hである。処理済み水11は導管の末端で使用場所に供給される。本実施例2に述べた装置で行われるのは、10mg/lの二酸化塩素濃度で洗浄装置に使用される100m
3/h洗浄水の処理である。
【0063】
参考例3
図1に述べた装置が使用される。亜塩素酸塩貯蔵タンク1内の水溶液は24.5%の亜塩素酸ナトリウムを含んでおり、この溶液は送出ポンプ4によって5l/hにて反応器7に供給される。酸貯蔵タンク2からは、32%塩酸水溶液が送出ポンプ5によって5l/hにて同時に反応器7に供給される。発生する二酸化塩素溶液の濃度は、水接続口3から送出ポンプ6によって同じく同時に反応器7に供給される28l/hの稀釈水によって、19.7g/l[収率83%の場合]に調整される。反応器は6リットルの自由容積を有しており、反応混合物の反応チャンバー内滞留時間は9.5分である。含有量19.7g/lの二酸化塩素溶液が、循環ポンプ10の吸込み管の近傍に位置する反応器出口8を経て、毎時38lにて、反応器を包囲する被処理水9に加えられる。二酸化塩素で富化された水は毎時2000m
3が処理済み水循環ポンプ10によって中間貯水槽から取り出されて、処理済み水使用場所11に供給される。二酸化塩素の貧化した水は被処理水返送管12を経て中間貯水槽に返送される。この水は処理済み水循環ポンプ10の吸引箇所に至る途上で、反応器出口8から流出してくる二酸化塩素含有水を受容し、その際、混合水の二酸化塩素濃度は速やかに限界濃度6g/l以下に減少する。処理済み水使用場所11の前方において、二酸化塩素の濃度は水1リットル当たり約0.4mgである。
【符号の説明】
【0064】
1 亜塩素酸塩貯蔵タンク、 2 酸貯蔵タンク、 3 水接続口、 4 亜塩素酸塩送出ポンプ、 5 酸送出ポンプ、 6 稀釈水送出ポンプ、 7 反応器(反応チャンバー)、 8 反応器出口、 9 被処理水、 10 処理済み水循環ポンプ、 11 処理済み水使用場所、 12 被処理水返送管、 13 導電率測定装置、 14 噴水液体ポンプ、任意、 15
図2の導管