(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
収容部の底板下面にはストッパー片aが突設され、該ストッパー片aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面であるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面であり、
外枠部の底板上面には、前記ストッパー片aの引き出し方向手前側の略垂直面と衝合可能な略垂直面を有するストッパー片bが突設されていることを特徴とする請求項2に記載のプレパラート収納ケース。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の整理ケースでは、目的とする包埋ブロックやプレパラートを取り出しやすいものの、包埋ブロックやプレパラートを寝かせた状態で収納するため、包埋ブロック一個当り、又は、プレパラート一枚当りの必要スペースはかなり大きくなってしまう。しかも、使用済み包埋ブロックや使用済みプレパラートは大量に発生するが、これらの再検査の頻度はそれほど高くないので、使用頻度が低い試料に大きな保存スペースが必要になるという不都合が生じる。
【0009】
また、非特許文献1に記載のラックはプレパラートを垂直に立てて収納するので、小さなスペースに大量のプレパラートを収納することができる。しかしながら、隣接するプレパラートの間にスプリングが介在するためプレパラートの収納量が減じられ、また、スプリングを1〜2個飛ばしてプレパラートを収納することがあり、この場合はプレパラート収納量は更に少なくなる。更に、引き出しの前面には引き出す際に指を引っ掛けるためのフックが下向きに突設されているため、このフックに被服を引っ掛けたりする虞れがあり、また、突設したフックのため、ラックを隙間なく並べてコンパクトに保管することができないという問題がある。
【0010】
更に、上記特許文献1、非特許文献1のいずれのケースも、地震等により横向きの応力が加わった場合には、収納したプレパラートや包埋ブロックは重量が大きいためこれらを収納した引き出しが勢いよくケース外に飛び出し、落下して貴重な試料を台なしにするばかりでなく、飛び出した引き出しが観察者に当ると大怪我する虞れもある。
【0011】
更にまた、引用文献2に記載のプレパラート収容ケースは通常の地震等による横揺れの場合にも収容部が飛び出すことがないが、例えば、直下型地震のような縦揺れを伴う地震の場合、縦揺れの際にストッパー片aとストッパー片bの衝合が外れてしまうことがあり、その効果を十分に発揮できない場合がある。
【0012】
本発明はかかる実情に鑑み、従来技術の上記問題点を解消し、小さなスペースに大量のプレパラートを収納できるとともに、縦揺れを伴う激しい地震などの場合でも引き出しが不意に飛び出して落下せず、安全性に優れたプレパラート収納ケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の特徴の第1は、上方が開口された直方体状の収容部が、一の側方に開口部を有する直方体状の外枠部の中に挿入された引き出し式のプレパラート収納ケースであって、前記収容部に縦揺れ防止部Aが設けられるとともに、収容部の底板下面には固定係止片が突設され、前記外枠部に縦揺れ防止部Bが設けられるとともに、外枠部の底板上面には可動係止片が設けられ、前記外枠部に前記可動係止片を係止位置と開放位置の間で移動させるための操作機構が設けられ、
操作機構は収容部の引き出し方向とは異なる方向に動くとともに、当該操作機構が不意に移動して収容部の係止状態が解除されるのを防止するための仮止め構造が設けられ、収容部の固定係止片が可動係止片と係合できる位置にあるときに、縦揺れ防止部Aと縦揺れ防止部Bが衝合する位置にあるプレパラート収納ケースを内容とする。
【0014】
本発明の特徴の第2は、縦揺れ防止部Aが収容部の前板の上面であり、縦揺れ防止部Bが外枠部側面の開口部上縁の下面である上記のプレパラート収納ケースを内容とする。
【0015】
本発明の特徴の第3は、収容部の底板下面にはストッパー片aが突設され、該ストッパー片aは引き出し方向手前側の面が収容部底面に対して略垂直面であるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部底面に対して角度が浅い斜面であり、外枠部の底板上面には、前記ストッパー片aの引き出し方向手前側の略垂直面と衝合可能な略垂直面を有するストッパー片bが突設されている上記のプレパラート収納ケースを内容とする。
【0016】
本発明の特徴の第4は、収容部の底板下面側の後端付近には後端指示部が設けられるとともに、外枠部の底板上面側の前縁付近には前縁指示部が設けられ、前記収容部を前方に引き出して後端指示部が前縁指示部に当接したときに、収容部が沈み込むように構成されている上記のプレパラート収納ケースを内容とする。
【0017】
本発明の特徴の第5は、収容部の底板下面側の後端付近には後端指示部が設けられるとともに、外枠部の底板上面側の前縁付近には前縁指示部が設けられ、前記収容部を前方に引き出して後端指示部が前縁指示部に当接したときに、収容部が持ち上がるように構成されている上記のプレパラート収納ケースを内容とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるプレパラート収納ケースは、固定係止片と可動係止片により収容部の前後移動が妨げられるとともに、可動係止片が係止位置にあるときに縦揺れ防止部Bと縦揺れ防止部Aが衝合して上下動が妨げられるので、収容部の前後、上下動が妨げられる。その結果、例えば、通常の地震の横揺れのみならず、直下型地震のような縦揺れの場合でも収容部が外枠部から不意に飛び出すことがなく、安全である。
【0019】
外枠部側面の開口部上縁の下面を縦揺れ防止部Bとし、収容部の前板の上面を縦揺れ防止部Aとすれば、収容部を僅かに引き出した時点で収容部を上下動させることが可能になるので、収容部が扱いやすくなる。
【0020】
収容部の底板下面に所定形状のストッパー片aを突設し、外枠部の底板上面に所定形状のストッパー片bを突設すれば、可動係止片と固定係止片が係止していない際に不意に横向きの応力が掛かった場合でも、収容部の飛び出しを防止できる。
【0021】
収容部の後端付近に後端指示部を設けるとともに、外枠部の前縁付近に前縁指示部を設け、収容部を前方に引き出して後端指示部が前縁指示部に当接したときに、収容部が沈み込むように構成すれば、沈み込んだ感触が取っ手を持つ使用者の手指に伝わり、この感触が警報として作用して、使用者はそれ以上引っ張ると収容部が落下する危険があることを知り、収容部が落下しないように収容部の下に手を添えることができる。その結果、誤って引っ張りすぎて収容部を落下させる事故が未然に防がれ、安全性が高まる。
なお、外枠部側面の開口部上縁の下面を縦揺れ防止部Bとし、収容部の前板の上面を縦揺れ防止部Aとした場合には、後端指示部が前縁指示部に当接したときに、収容部が持ち上がるように構成しても、上記と同様、引っ張りすぎて収容部を落下させる事故を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明のプレパラート収納ケースの実施例1を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)は
図1の外枠部のA−A断面図であり、
図2(b)は
図1の収容部のA−A断面図である。
【
図3】
図3(a)は
図2(a)のB−B断面図であり、
図3(b)は(a)において可動係止片を係止位置に移動させた説明図であり、
図3(c)は
図2(b)のC−C断面図である。
【
図4】
図4は可動係止片と固定係止片の関係を示す説明図であり、(a)は可動係止片が開放位置にある状態を示し、(b)は可動係止片が係止位置にある状態を示す。
【
図5】
図5は
図2(a)の外枠部の底板上面を示す平面図であり、(a)は可動係止片が開放位置にある状態を示し、(b)は可動係止片が係止位置にある状態を示す。
【
図6】
図6は
図2(b)の収容部の底板下面を示す底面図である。
【
図7】
図7(a)は操作機構の一例を示す説明図であり、
図7(b)は操作機構の別例を示す説明図である。
【
図8】
図8は本発明のプレパラート収納ケースの実施例2を示す斜視図である。
【
図9】
図9(a)は
図8の外枠部のD−D断面図であり、
図9(b)は
図8の収容部のD−D断面図である。
【
図10】
図10(a)は
図9(a)のE−E断面図であり、
図10(b)は(a)において可動係止片を係止位置に移動させた説明図であり、
図10(c)は
図9(b)のF−F断面図である。
【
図11】
図11(a)は
図9(a)の外枠部の底板上面を示す平面図であり、
図11(b)は
図9(b)の収容部の底板下面を示す底面図である。
【
図12】
図12(a)(b)は
図11(a)(b)の変更例(実施例3)における外枠部及び収容部の組み合わせを示す、外枠部の底板上面の平面図及び収容部の底板下面の底面図である。
【
図13】
図13(a)(b)(c)(d)は本発明のプレパラート収納ケースの使用方法を示す説明図である。
【
図14】
図14(a)(b)は
図13の例において、収容部を持ち上げ過ぎる場合を示す説明図である。
【
図15】
図15(a)(b)は本発明のプレパラート収納ケースの使用方法において、収容部を適切に持ち上げた場合を示す説明図である。
【
図16】
図16は本発明のプレパラート収納ケースの実施例4を示す斜視図である。
【
図20】
図20(a)(b)は
図19(a)(b)の外枠部及び収容部からなるプレパラート収納ケースにおいて収容部を水平方向に引き出す状態を示す説明断面図である。
【
図21】
図21(a)(b)は
図20とは別のプレパラート収納ケースにおいて収容部を水平方向に引き出す状態を示す説明断面図である。
【
図22】
図22(a)(b)はさらに別のプレパラート収納ケースにおいて収容部を引き出す状態を示す説明断面図である。
【
図23】
図23(a)(b)はさらに別のプレパラート収納ケースにおいて収容部を引き出す状態を示す説明断面図である。
【
図24】
図24(a)(b)は
図20と同様のプレパラート収納ケースにおいて収容部を斜め上方向に引き出す状態を示す説明断面図である。
【
図25】
図25(a)(b)は
図20と同様のプレパラート収納ケースにおいて収容部を斜め下方向に引き出す状態を示す説明断面図である。
【
図26】
図26(a)は
図25(b)の場面を収容部の側面からみた説明側面図であり、(b)は(a)の場面からさらに収容部を引き出した状態を示す説明側面図である。
【
図27】
図27は取っ手孔に覆設する防塵カバーの一例を示す正面図である。
【
図29】
図29は引き出し方向手前の側板の内面側に防塵カバーを設けた例を示す正面図である。
【
図30】
図30(a)は
図29の部分J−J断面図、
図30(b)は(a)における取っ手孔に手指を挿入して防塵カバーを開けた状態を示す説明断面図である。
【
図31】
図31(a)は取っ手孔を被覆する防塵カバーのさらに他の例を示す説明側面図であり、(b)は(a)の取っ手孔に指を挿入した状態を示す説明側面図である。
【
図32】
図32(a)は収容部の一例を示す平面図であり、(b)は(a)のK−K断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のプレパラート収納ケースは、例えば
図1乃至
図6に示した如く、上方が開口された直方体状の収容部2が、一の側方に開口部を有する直方体状の外枠部3の中に挿入された引き出し式のプレパラート収納ケース1であって、前記収容部に縦揺れ防止部A:2bが設けられるとともに、収容部の底板下面には固定係止片が突設され、
前記外枠部に縦揺れ防止部B:3bが設けられるとともに、外枠部3の底板上面には可動係止片3aが設けられ、
外枠部3に前記可動係止片3aを係止位置と開放位置の間で移動させるための操作機構3cが設けられ、
操作機構3cは収容部2の引き出し方向とは異なる方向に動くとともに、当該操作機構3cが不意に移動して収容部2の係止状態が解除されるのを防止するための仮止め構造3c4が設けられ、収容部2の固定係止片2aが可動係止片3aと係合できる位置にあるときに、縦揺れ防止部A:2bと縦揺れ防止部B:3bが衝合する位置にあることを特徴とする。
【0024】
本発明で使用する外枠部3は、プレパラートを収納した収容部2を収容可能な、直方体状の箱型部材である。この外枠部3は一の側方に開口部3dが設けられており、
図1に示すように、その開口部3dから収容部2を引き出し状に出し入れできるようになっている。
また収容部2はプレパラートを収納可能な、直方体状の箱型部材である。この収容部2は上方が開口されており、その開口からプレパラートをコンパクトに収納できるようになっている。
なお、プレパラートは一般にかなり小さく、また数が多いので、これらを整理して収納しやすいように、通常は、一個の外枠部3内に数個の細長い収容部2が収容されるとともに、それぞれの収容部2に個別の引き出し方向規制手段が設けられて、正しい方向に収容部2を引き出すことができるようにされている。
図1乃至
図6に示した実施例1においては、引き出し方向規制手段として、外枠部3の底板上面に設けられた2本のレール3fと、収容部2の底板下面の両縁に設けられたガイドリブ2eが用いられ、これにより収容部2の横滑りを防ぎ、収容部2を確実に前後方向に出し入れできるようにされている。
【0025】
本発明においては、収容部2の底板下面に固定係止片2aが突設されるとともに、外枠部3の底板上面には可動係止片3aが設けられ、外枠部3に前記可動係止片3aを係止位置と開放位置の間で移動させるための操作機構3cが設けられている。
実施例1において、固定係止片2aはガイドリブ2eに切設された切欠きであり、可動係止片3aは収容部2の引き出し方向と直交する方向にスライドする舌片であり、
図3(a)(b)及び
図4(a)(b)に示した如く、可動係止片3aを固定係止片2aの前までスライドさせて固定係止片2aと係止させるように構成されているが、可動係止片3aが係止位置にあるときに固定係止片2aと可動係止片3aが係合して収容部2を係止できる構造であれば特に限定されず、例えば
図10(a)(b)に示したように可動係止片3aが上下に動く構造でもよいし、
図18(b)に示したように可動係止片3aが回動する構造でもよい。また、固定係止片はガイドリブ2eとは別途に設けた突片等であってもよい。
また、実施例1において操作機構3cは所定数の可動係止片3aが立設された細長板状部材3c1とその細長板状部材3c1から横設されて外枠部3の前面側から突出する摘み部3c2であり、実施例3における操作機構3cは、外枠部3の側壁に設けたレバー3c5を回すことにより可動係止片3aが突設された細長棒状部材3c6を回動させるように構成されているが、可動係止片3aを全て同時に、又はそれぞれ個別に、係止位置と開放位置の間で移動させる構造であれば特に限定されない。
【0026】
なお、操作機構3cが不意に移動して収容部2の係止状態が解除されるのを防止するため、仮止め構造3c4を設けてもよい。仮止め構造3c4としては特に限定されないが、例えば
図7(a)に示したように、外枠部3の前面から摘み部3c2を突出させるスリット3c3の端部に凹部を設け、摘み部3c2をバネ等で付勢して凹部内に摘み部3c2を落とし込むようにし、操作機構3cを動かす際にはバネ等による付勢力に抗して摘み部3c2を持ち上げるようにする構成が例示できる。または、スリット3c3の近縁及び摘み部3c2の裏側に互いに嵌合する凹凸を設け、操作機構3cを動かす際には外枠部3の側板及び摘み部3c2を弾性変形させる構造でもよい。
【0027】
本発明では、固定係止片2aが可動係止片3aと係合する位置にあるとき、縦揺れ防止部A:2bと縦揺れ防止部B:3bが衝合する位置にあることを特徴とする。
具体的にいえば、
図2に示した如く、実施例において、縦揺れ防止部A:2bが収容部2の前板2dの上面であり、縦揺れ防止部B:3bが外枠部3の開口部3d上縁の下面であるが、固定係止片2aと可動係止片3aを係合させれば、当該固定係止片2aと可動係止片3aの前後移動が妨げられる。このとき縦揺れ防止部A:2bと縦揺れ防止部B:3bが衝合する位置にあれば、直下型地震等による縦揺れの際に縦揺れ防止部A:2bと縦揺れ防止部B:3bが衝合して上下動を妨げ、固定係止片2aと可動係止片3aの係合が外れるのを防止できる。
なお、実施例1のように収容部2の前板2dの上面を縦揺れ防止部A:2bとし、外枠部3の開口部3d上縁の下面を縦揺れ防止部B:3bとすれば、収容部2を僅かに引き出した時点で縦揺れ防止部Aと縦揺れ防止部Bが衝合しなくなり、必要に応じて収容部2を持ち上げることも容易になるので扱いやすくなる。
【0028】
また、収容部2の前板2dの上面を縦揺れ防止部A:2bとし、外枠部3の開口部3d上縁の下面を縦揺れ防止部B:3bとした場合、横向きの応力に備えた更なる安全措置を講じることができる。
即ち、
図8〜
図11に示した実施例2においては、収容部2の下面に設けられたストッパー片a:2c及び外枠部3に設けられたストッパー片b:3eを用いて、地震等により収容部2に横向きの応力が加わった場合でも、収容部2が抜け落ちないようにされている。
上記ストッパー片a:2cは、例えば
図9に示す通り、収容部2の引き出し方向手前側の面が収容部2の底面に対して略垂直面2c1とされるとともに、引き出し方向奥側の面が収容部2の底面に対して角度が浅い斜面2c2とされている。
【0029】
上記ストッパー片a:2cおよびストッパー片b:3eの略垂直面3e1の位置は、収容部2が外枠部3の奥まで収容されている際に、ストッパー片a:2cの略垂直面2c1とストッパー片b:3eの略垂直面3e1とが対向しており、この状態から収容部2に引き出し方向手前側への応力が加わったときに、少しだけ移動して略垂直面2c1と略垂直面3e1とが衝合するように配置されている限り特に限定されないが、外枠部3及び収容部2の引き出し方向手前側に配置するのが収容部2の飛び出しを防止する効果が大きい点で好ましい。
実施例2の場合は、ストッパー片a:2cを収容部2の両縁部で引き出し方向手前側に設けるとともに、ストッパー片b:3eをレール3fを一部断続的に設けて、引き出し方向手前側の短いレールの奥側面を略垂直面3e1として使用した例を示す。
また、
図12に示すように、収容部2のストッパー片a:2cをレール3fと重ならない位置に設けるとともに、収容部2を引き出す際のストッパー片a:2cの移動経路を遮るように、外枠部3のストッパー片b:3eを設けてもよい。
なお、ストッパー片a:2cの略垂直面2c1とストッパー片b:3eの略垂直面3e1とが衝合する際の引き出し長さL1は特に限定されないが、短すぎると収容部2を引き出しにくく、余り長すぎるとプレパラート収納ケース1全体の重心が外れてケース1ごと落下する可能性があるので、プレパラート収納ケース1の大きさにもよるが、通常、5mm〜50mm程度とするのが好ましい(
図14参照)。
【0030】
収容部2の引き出し方向手前側の側板2d(以後、前板2dと称することがある)には、収容部2を引き出しやすくするための取っ手を設けるのが好ましい。取っ手の形状は特に限定されないが、実施例2のようにストッパー片a:2cとストッパー片b:3eを設けて飛び出し防止を図る場合は、手指を挿入して収容部2の内側に引っ掛けて引っ張ることができるように、取っ手孔2d1を穿設する方法が好ましい。
即ち、取っ手孔2d1に挿入する手指の推定挿入長さL2を、前述のストッパー片a:2cの略垂直面2c1とストッパー片b:3eの略垂直面3e1とが衝合する際の引き出し長さL1よりも長くすると、後述の理由により、収容部2を引き出す際にプレパラートを損傷させず、安全にプレパラートを出し入れすることができるようになる。
例えば、一般に取っ手孔2d1を設けた場合、通常、指の第1関節の部分を取っ手孔2d1に挿入し収容部2の内側に引っ掛けるようにして収容部2を引き出すが、成人の場合、指の第1関節から指先の長さは15〜30mm程度なので、取っ手孔2d1に挿入する手指の推定挿入長さL2は15〜30mmであり、これに合わせて上記した引き出し長さL1を5〜10mm程度にするのが好ましい。
【0031】
実施例2のように、ストッパー片a:2cとストッパー片b:3eを設けて収容部2の飛び出し防止を図ったプレパラート収納ケース1の使用方法を
図13乃至
図15に基づいて説明する。
本発明のプレパラート収納ケース1において、通常、
図13(a)に示したように、収容部2は外枠部3の奥まで挿入収容されている。通常の地震などにより不意に収容部2に横向きの応力が加わった場合、収容部2は引き出し長さL1の分だけ飛び出るが、そこで収容部2のストッパー片a:2cの略垂直面2c1と外枠部3のストッパー片b:3eの略垂直面3e1とが衝合するので、それ以上の飛び出しを防止できる。
収容部に収納されたプレパラートを取り出す場合、
図13(a)に示したように、まず可動係止片3aを開放位置まで移動させて、
図13(b)に示したように、収容部2を僅かに引き出して縦揺れ防止部A:2bと縦揺れ防止部B:3bが衝合しないようにし、
図13(c)に示したように、収容部2の手前側を
図13(b)の状態から上に持ち上げてストッパー片a:2cの斜面2c2がストッパー片b:3eを乗り越えるようにすれば、
図13(d)に示したように、収容部2を最後まで引き出すことができる。
【0032】
この場合、
図14(a)に示したように引き出し長さL1が長い場合、収容部2を引き出すために収容部2の手前側を持ち上げる際、
図14(b)に示したように持ち上げすぎて、収容部2に収容されたプレパラートが外枠部3の開口部3d上縁と衝突し、破損する可能性がある。
これを避けるためには、
図15(a)に示すように、取っ手孔2d1に挿入する手指Fの推定挿入長さL2を引き出し長さL1よりも長くすればよい。この場合、収容部2の前側を持ち上げたときに、
図15(b)に示したように、手指Fの先が外枠部3の開口部3d上縁に触れるのでそれ以上は持ち上がることがなく、プレパラートと開口部3d上縁の衝突を防ぎプレパラートの破損を防止することができる。
【0033】
また、収容部2を外枠部3の中に挿入収容する場合は、収容部2のストッパー片a:2cの斜面2c2を外枠部3のストッパー片b:3e上を摺動させ押し込むだけで外枠部3内に収容される。
【0034】
本発明においては、収容部2の底板下面後端に後端指示部2jを設け、外枠部3の底板上面前縁付近に前縁指示部3gを設けることにより、収容部2を引き出す際、外枠部3から完全に抜け落ちる前に収容部2が持ち上がり、又は沈み込むようにし、その感触を使用者の指に伝えて警報とし、収容部2が抜け落ちる前に収容部2の引き出しを止め、或いは収容部2の下に手を添えることができるようにすることもできる。(但し、縦揺れ防止部A:2bと縦揺れ防止部B:3bの位置によっては、収容部2を持ち上げるタイプの警報を発するのが困難になる場合もある)。
【0035】
具体的な構成としては、例えば
図16乃至
図19に示した実施例4のように、後端指示部2jを収容部2の底板下面後端から垂設される突起とするとともに、前縁指示部3gを外枠部3の底板上面前縁付近から立設される突起とする。例えば、後端指示部2jの突起の突出高さH1(例えば2mm)と前縁指示部3gの突起の突出高さH2(例えば3mm)の和を収容部2の底板と外枠部3の底板の間隔H3(例えば4mm)よりも大きくする(上記の例では2+3=5mm)構成が例示できる。なお、実施例4に示した例では、後端指示部2j及び前縁指示部3gとして、第1のものと第2のものがそれぞれ設けられているが、以下の説明は主に第1のものに基づいて行っており、第2については後述する。
このようにすれば、
図20(a)に示したように、後端指示部2jと前縁指示部3gが当接する前は収容部2をスムースに引き出すことができるが、
図20(b)に示したように、後端指示部2jと前縁指示部3gが当接すれば、後端指示部2jが前縁指示部3gを乗り越えるので収容部2は一定高さだけ持ち上がり(上記の例ではH1+H2−H3=2+3−4=1mm持ち上がる)、この感触が使用者の指に伝わるので、これが警報となり、使用者はこれ以上収容部2を引っ張ると落下の危険があることを知る。
【0036】
また、収容部2の後端と後端指示部2jの間、及び/又は外枠部3の前縁と前縁指示部3gの間には間隙部4が設けられている(
図19では外枠部3の前縁と前縁指示部3g(第1前縁指示部3g1 )の間、及び収容部2の後端と第2後端指示部2j2の間)ので、収容部2が持ち上がり、又は沈み込んですぐに収容部2が外枠部3から脱落するのではなく、時間的な猶予が与えられ、この間に収容部2の下に手を添える等、必要な措置を取ることができる。
【0037】
後端指示部2j及び前縁指示部3gとしての突起はそれぞれ一個づつ設ければ十分であるが、より強い警報を発するために、後端指示部2j、前縁指示部3gのいずれか、又は両方を2以上連設することもでき、実施例4では前縁指示部3gが突起を3つ連設した形状とされている。この場合、使用者には、単に収容部2が持ち上がり、または沈み込む感触だけでなく、ガタガタと振動するような感触が伝わり、より強い警報として感じられる。このような効果は、
図21に示すように、前縁指示部3gを1つにして後端指示部2jを3つ連設した形状としても得ることができる。
【0038】
実施例4において、後端指示部2j及び前縁指示部3gとして使用される突起は双方とも収容部2の引き出し方向に対して横長とされているが、突起の形状についてはこれに限られず、例えば半球状の突起を設けてもよい。なお、後端指示部2jが前縁指示部3gを乗り越え易くするように、これらの突起における収容部の前後の面は斜面状としておくほうが好ましい。
【0039】
以上、後端指示部2j及び前縁指示部3gを双方とも突起とする構成について説明したが、後端指示部2j、前縁指示部3gのいずれか一方を窪みにしても同様の効果が得られる。なお、窪みにすれば、縦揺れ防止部A:2b及び縦揺れ防止部B:3bの位置に関わらず、いずれの箇所にも後端指示部2j、前縁指示部3gを設けることができる。
例えば、
図22(a)に示すように、後端指示部2jを収容部2の底板下面後端から垂設される突起とするとともに、前縁指示部3gを外枠部の底板上面前縁付近に穿設される窪みとし、後端指示部2jが収容部の底板と外枠部の底板の間隔保持用突起を兼ねるようにすれば、後端指示部2jと前縁指示部3gが当接する前は収容部2をスムースに引き出すことができるが、
図22(b)に示したように、後端指示部2jと前縁指示部3gが当接すれば、後端指示部2jが前縁指示部3gの中に落ちこみ、これにより収容部2が沈み込み、この感触が警報となって使用者の指に伝わるので、使用者はこれ以上収容部2を引っ張ると落下の危険があることを知る。
【0040】
また、
図23(a)に示すように、後端指示部2jを収容部2の底板下面に穿設される窪みとするとともに、前縁指示部3gを外枠部3の底板上面から立設される突起とし、前縁指示部3gが収容部2の底板と外枠部3の底板の間隔保持用突起を兼ねるようにすれば、後端指示部2jと前縁指示部3gが当接する前は収容部2をスムースに引き出すことができるが、
図23(b)に示したように、後端指示部2jと前縁指示部3gが当接すれば、後端指示部2jの内部に前縁指示部3gの先端が入り込み、これにより収容部2が沈み込み、この感触が警報となって使用者の指に伝わるので、使用者はこれ以上収容部2を引っ張ると落下の危険があることを知る。
【0041】
なお、
図22及び
図23に示すように、後端指示部2j及び前縁指示部3gのいずれか一方が間隔保持用突起を兼ねるようにし、他方を窪みとした場合でも、双方を突起とした場合と同様、後端指示部2j及び前縁指示部3gのいずれか一方又は両方を複数設けて、収容部2が振動するようにしてもよいし、後端指示部2j及び前縁指示部3gを斜めに設けたり、左右2列に設けて左右で後端指示部2j及び前縁指示部3gが当接するタイミングをずらすこともできる。
【0042】
以上、収容部2を引き出す際に、収容部2を水平方向に引っ張る例について説明したが、以下、収容部2を斜め上方、又は斜め下方に引っ張る例について説明する。
図24(a)(b)に示したように、後端指示部2jを収容部2の後端に設けた場合、収容部2を斜め上方に引っ張っても後端指示部2jは前縁指示部3gに衝突して、この前縁指示部3gを乗り越えるため、収容部2は持ち上がり、警報として作用する。
しかしながら、
図25(a)に示したように、収容部2を斜め下方に引っ張った場合、前縁指示部3gと衝突する前に収容部2の後端が浮き上がり、そのまま収容部2を引っ張っても、
図25(b)に示したように、後端指示部2jが前縁指示部3gの上を通過して、警報として作用しない危険性が生じる。
このように、収容部2を斜め下方に引っ張ることが予想される場合には、
図26(a)に示すように、外枠部3の前縁に前縁指示部3g(第2前縁指示部3g2)を設けるとともに、間隙部4は収容部2の後端と後端指示部2j(第2後端指示部2j2)の間に設けるようにする。但し、この場合、収容部2を斜め上方に引っ張ったときに、前縁指示部3gと衝突する前に収容部2の後端が浮き上がり、後端指示部2jが前縁指示部3gの上を通過して、警報として作用しない危険性が生じる。
従って、収容部2を斜め上方及び斜め下方のいずれにも引っ張る可能性がある場合には、例えば
図19(a)(b)に示したように、収容部2の後端に設けられた第1後端指示部2j1と、外枠部3の前縁付近に間隙部4を介して設けられた第1前縁指示部3g1 を用いることにより、収容部2を斜め上方に引っ張ったときにも確実に警報が発生するようにし、さらに収容部2の後端付近に間隙部4を介して設けられた第2後端指示部2j2と、外枠部3の前縁に設けられた第2前縁指示部3g2を用いることにより、収容部2を斜め下方に引っ張ったときにも確実に警報が発生するようにすればよい。
このように構成することにより、収容部2を水平方向、斜め上方、斜め下方のいずれの方向に引っ張ったとしても確実に警報が発せられ、一層安全に収容部2を引き出すことができる。
【0043】
なお、本実施例における第2後端指示部2j2はガイドリブ2eに設けられた切欠であり、収容部2の後端から間隙部4を介して設けられている。また、本実施例における第2前縁指示部3g2は外枠部3の前縁に設けられており、前縁のすぐ後の部分を切削して浮き彫りにより突出させた突起である。
収容部2を斜め下方に引っ張った場合、
図26(a)に示したように、第2後端指示部2j2としての切欠の中に第2前縁指示部3g2としての突起が入り込み、これにより収容部2が一瞬沈み込み、警報として機能する。
【0044】
本発明においては、収容部2の後端に外枠部側面の開口部と略同じ高さの転落防止部を設けることにより、収容部2を斜め下方に引っ張った場合であっても、収容部2が転落するのを防止することができる。
即ち、収容部2を斜めに引っ張った場合、収容部2の前部が下がって傾斜状となり、収容部2の底板と外枠部3の前縁とで滑ってしまい、更に収容部2の内容物の重みも加わって、使用者の予想を越える勢いで収容部2が引き出されてしまうことがあるが、このような場合に開口部3dと略同じ高さの転落防止部2fが設けられていれば、
図26(b)に示したように、転落防止部2fの上端が開口部3dの上端に当接するため、収容部2の飛び出しが防止される。
なお、実施例4においては、収容部2の前後側の側壁を開口部3dと同じ高さとし、左右側の側壁をそれより低くして、後側の側壁における左右側の側壁の上端よりも上の部分を転落防止部2fとして利用している。
【0045】
取っ手孔2d1を設けた場合、その取っ手孔2d1から塵や埃が侵入するのを防ぐため、防塵カバー2d2を取っ手孔2d1に覆設するのが好ましい。
防塵カバーの形状、構造は、取っ手孔2d1を覆って、この取っ手孔2d1を塞ぐものであれば特に限定されないが、例えば
図27に示したように、中心部から外方向に放射状に3〜8に分割されるように切り込みが入れられた可撓性部材製のシートを貼着してなる防塵カバー2d2を取っ手孔2d1に覆設し、手指を入れると防塵カバー2d2が内側に押し開かれ、手指を引き抜くと押し開かれた防塵カバーが元の状態に戻り取っ手孔2d1を閉鎖するようにすると、防塵カバーの開閉が自動的にできるので好都合である。また、
図28に示したように、取っ手孔3bの上方で枢着された防塵カバー2d2を用い、収容部2を引き出す際にこの防塵カバー2d2を上方に回動させて取っ手孔2d1に手指を挿入するようにしてもよい。
【0046】
図27、
図28では前板2dの外面側に防塵カバー2d2を設けた例を記載したが、
図29、
図30に示すように前板2dの内面側に防塵カバー2d2を設けてもよい。この例において、防塵カバー2d2は外枠部3の開口部3d上縁付近から垂下されているとともに、その上端付近で外枠部3に枢着されている。また、この防塵カバー2d2はバネ等の弾性機構(図示せず)により外側に付勢されており、収容部2が外枠部3内に収納されている状態で、防塵カバー2d2が前板2dの内面側に押圧された状態になり(
図30(a)参照)、塵や埃等の侵入が防がれる。
このようなプレパラート収納ケース1において、取っ手孔2d1から手指Fで防塵カバー2d2を押し込めば、防塵カバー2d2は弾性機構の押圧力に逆らって後側に押し上げられ、手指Fを挿入できる(
図30(b)参照)。
【0047】
または、
図31(a)(b)に示すように、取っ手孔2d1の裏側に覆設した弾性を有する樹脂シート(厚さ0.3mm程度のポリプロピレン、PET等)を防塵カバー2d2とすることもできる。なお、この例では防塵カバー2d2の下側だけが接着剤等で固着されているので、取っ手孔2d1に指を挿入したとき防塵カバー2d2は内側に撓み、指を抜き出すと元の形状に戻って取っ手孔2d1を塞ぎ、塵や埃の侵入を防ぐようになっている。
【0048】
収容部2の内部には、当該収容部2の形状や大きさによっては、
図32(a)(b)に示すような、プレパラートを整理整頓するためのの縦仕切り2g、横仕切り2hを設けることができる。なお、本例における縦仕切り2gは収容部2の長さ方向に延設されており、当該縦仕切り2gと側壁との間隔が、プレパラートの幅よりも若干広い程度であってプレパラートを立てた状態で収納できるとともに、縦仕切り2g及び側壁に沿って当該プレパラートを隙間無く重ねて配列できるように構成されている。
また、本例における横仕切り2hは前記縦仕切り2gの直交方向に設けられており、収容部2内を区分けするとともに、収容部2内のプレパラートの枚数が少ない場合には、このプレパラートを立てた状態で保管するための支持具として用いることができる。但し、保管するプレパラートの種類が少なく、細かく区分けする必要がない場合や、枚数が多い場合には横仕切り2hは不用なので、取り外しができるようにしておくのが好ましい。
【0049】
収容部2の底板上面に凸条2iを設け、プレパラートをこの凸条の上に載置するようにしてもよい。この場合、例えばスライドガラスの上にカバーガラスを固着するための接着剤が垂れて収容部2の底面に溜まったとしても、プレパラートが収容部2に接着されてしまうようなトラブルを防止することができる。
なお、凸条2iの形状は特に限定されないが、
図32(a)(b)に示したように、プレパラートの配列方向に延設された2本の直線状とすれば、形状が簡単で安価に製造でき、清掃もしやすいので好ましい。