(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記無給電素子が基板の一面にプリントされて形成されており、該基板の他面に密着するよう前記左側給電ケーブルと前記右側給電ケーブルとの前記水平部が配置されていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
前記基板の他面の両側にそれぞれ、前記左側給電ケーブルの芯線と前記左側素子が接続される第1パターンおよび前記左側給電ケーブルの編組線が接続される第2パターンと、前記右側給電ケーブルの芯線と前記右側素子が接続される第3パターンおよび前記右側給電ケーブルの編組線が接続される第4パターンとが形成されていることを特徴とする請求項2記載のアンテナ。
【背景技術】
【0002】
従来、基地局から送信された電波を受信する無線機ではダイバーシティ受信によるフェージング対策が行われている。ダイバーシティとは、2本以上のアンテナで受信した2つ以上の電波を合成したり、あるいは受信するアンテナを切り換えることで、受信電波のレベルの揺れを少なくする方法である。このようなダイバーシティ受信を行うことのできる従来のアンテナの一例を
図17および
図18に示す。
図17は従来のアンテナ100の構成を示す正面図であり、
図18は従来のアンテナ100の構成を示す上面図である。
これらの図に示す従来のアンテナ100は、線条の直立して配置された左側素子110と、左側素子110と間隔L100だけ離隔してほぼ平行に直立して配置された線条の右側素子111とを有している。左側素子110と右側素子111との直径は、例えば約1.3mmとされている。
【0003】
左側素子110は、左側給電ケーブル113の芯線を延伸してL字状に折曲することにより構成されている。すなわち、左側給電ケーブル113の先端部において、左側給電ケーブル113の外被が除去されて編組線113aが露出されていると共に、その先において編組線113aが除去されて短く内部絶縁体113bが露出されている。この内部絶縁体113bが除去され露出された芯線がL字状に折曲されて左側素子110が構成されている。右側素子111においても同様に、右側給電ケーブル114の芯線を延伸してL字状に折曲することにより構成されている。すなわち、右側給電ケーブル114の先端部において、右側給電ケーブル114の外被が除去されて編組線114aが露出されていると共に、その先において編組線114aが除去されて短く内部絶縁体114bが露出されている。この内部絶縁体114bが除去され露出された芯線がL字状に折曲されて右側素子111が構成されている。また、左側給電ケーブル113と右側給電ケーブル114とはT字状に配置されており、ほぼ一直線上に配置された水平部と、ほぼ平行に近接して配置された垂直部とから構成されている。左側給電ケーブル113の水平部の先端に左側素子110が形成され、その垂直部の端部が左側給電点115とされる。また、右側給電ケーブル114の水平部の先端に右側素子111が形成され、その垂直部の端部が右側給電点116とされている。なお、左側給電ケーブル113と右側給電ケーブル114とは同軸ケーブルであり、その編組線113a、114aがアースとされている。
【0004】
このように構成された従来のアンテナ100では、左側給電点115と右側給電点116とから得られた受信信号を合成したり、左側給電点115と右側給電点116とから得られる受信信号を切り換えることによりダイバーシティ受信を行うことができる。また、左側素子110と右側素子111の一方を送信アンテナとして用いることができる。すなわち、左側給電点115あるいは右側給電点116の一方に送信信号を供給することにより、左側素子110あるいは右側素子111を送信アンテナとして用いることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
次に、従来のアンテナ100の電気的特性を測定する際の構成を
図19に示す。測定する際には
図19に示すように、右側給電ケーブル114の特性インピーダンスZ
0のダミーロードで右側給電点116が終端されており、左側給電点115だけから給電されている。すなわち、左側素子110の電気的特性を測定する回路とされている。
図19に示す構成により測定したアンテナ100の左側素子110のVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を
図20に示す。
図20では中心周波数f
0が2.6GHzとされ、周波数fの周波数範囲はf/f
0が0.98から1.02の範囲とされて、この周波数範囲のVSWRが示されている。なお、左側素子110と右側素子111の間隔L100は約170mm(中心周波数f
0の波長をλとすると約1.47λ)とされている。
図20を参照すると、f/f
0が0.98から1.02の周波数範囲においてVSWRはほぼ一定となり、2.6GHzにおいて約1.45のVSWRが得られている。
【0007】
また、
図19に示す構成により測定したアンテナ100の左側素子110のX−Z面の指向特性を
図21に示す。なお、
図19に示すようにZ軸はアンテナ100の垂直方向であり、左側給電ケーブル113と右側給電ケーブル114との水平部が延伸している方向がY軸であり、この水平部が延伸する方向と直交する方向がX軸とされている。
図21に示す指向特性は周波数が2.6GHzの場合であり、約2.2dBiの最大利得と約58degの半値角が得られている。この指向特性を参照すると、指向特性のパターン波形は本来ならば8の字のパターンとなるが、+30°〜+150°および −30°〜−150°の範囲の凹凸が大きくなっている。これは、左側給電ケーブル113及び右側給電ケーブル114の編組線113a、114aに流れる大きな表皮電流による放射の影響と考えられる。この表皮電流とは、左側給電点115あるいは右側給電点116から編組線113aあるいは編組線114aの内側に流れる電流が、露出された編組線113aあるいは編組線114aの先端において折り返されて編組線113aあるいは編組線114aの外側に流れる電流である。
【0008】
上記したように、従来のアンテナは給電ケーブルに流れる表皮電流により、電気的特性が劣化するという問題点があった。
そこで、本発明は給電ケーブルに流れる表皮電流による悪影響を極力防止することができるアンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のアンテナは、全体としてT字状に配置されており、それぞれがL字状に形成されている左側給電ケーブルと右側給電ケーブルと、前記左側給電ケーブルの先端に設けられた左側素子と、該左側素子と所定間隔離隔されて前記右側給電ケーブルの先端に設けられた右側素子と、T字状に配置された前記左側給電ケーブルと前記右側給電ケーブルとが近接して配置されている垂直部の基端にそれぞれ設けられた左側給電点と右側給電点と、T字状に配置された前記左側給電ケーブルと前記右側給電ケーブルとがほぼ一直線上に配置されている水平部に所定の間隙をおいて配置されている無給電素子とを備え
、前記無給電素子はどこにも接続されておらず、前記無給電素子により前記右側給電ケーブルおよび前記左側給電ケーブルに流れる表皮電流が減少することを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナでは、T字状に配置された左側給電ケーブルと右側給電ケーブルとがほぼ一直線上に配置されている水平部に所定の間隙をおいて無給電素子を配置したことにより、左側給電ケーブルと右側給電ケーブルに流れる表皮電流を減少することができる。これにより、給電ケーブルに流れる表皮電流による悪影響を極力防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例にかかるアンテナの構成を示す正面図である。
【
図2】本発明の第1実施例にかかるアンテナの構成を示す上面図である。
【
図3】本発明の第2実施例にかかるアンテナの構成を示す正面図である。
【
図4】本発明の第2実施例にかかるアンテナの構成を示す上面図である。
【
図5】本発明の第2実施例にかかるアンテナの構成を示す正面斜視図である。
【
図6】本発明の第2実施例にかかるアンテナの構成を示す背面斜視図である。
【
図7】本発明の第2実施例にかかるアンテナの電気的特性を測定する際の構成を示す正面図である。
【
図8】本発明の第2実施例にかかるアンテナのVSWRの周波数特性を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施例にかかるアンテナの指向特性を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施例にかかるアンテナのアイソレーション特性を示す図である。
【
図11】本発明の第3実施例にかかるアンテナの構成を示す正面図である。
【
図12】本発明の第3実施例にかかるアンテナの構成を示す上面図である。
【
図13】本発明の第3実施例にかかるアンテナの構成を示す正面斜視図である。
【
図14】本発明の第3実施例にかかるアンテナの構成を示す背面斜視図である。
【
図15】本発明の第3実施例にかかるアンテナにおける左側素子の構成を示す正面図、側面図および下面図である。
【
図16】本発明の第3実施例にかかるアンテナの変形例の構成の一部を拡大して示す正面斜視図である。
【
図17】従来のアンテナの構成を示す正面図である。
【
図18】従来のアンテナの構成を示す上面図である。
【
図19】従来のアンテナの電気的特性を測定する際の構成を示す正面図である。
【
図20】従来のアンテナのVSWRの周波数特性を示す図である。
【
図21】従来のアンテナの指向特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1実施例のアンテナ1の構成を
図1および
図2に示す。ただし、
図1は本発明の第1実施例のアンテナ1の構成を示す正面図であり、
図2は本発明の第1実施例のアンテナ1の構成を示す上面図である。
これらの図に示す本発明の第1実施例にかかるアンテナ1は、直立してほぼ垂直に配置された線条の左側素子10と、左側素子10と間隔L1だけ離隔してほぼ平行に直立して配置された線条の右側素子11とを有している。左側素子10と右側素子11との直径は、例えば約1.3mmとされている。アンテナ1は、例えば2.6GHz帯において使用されるアンテナとされ、この場合の間隔L1は約170mmとされている。約170mmは、2.6GHzの自由空間の波長をλ(約115.38mm)とすると、約1.47λとなる。
【0013】
左側素子10は、左側給電ケーブル13の芯線を延伸してL字状に折曲することにより構成されている。すなわち、左側給電ケーブル13の先端部において、左側給電ケーブル13の外被が除去されて編組線13aが露出されていると共に、その先において編組線13aが除去されて短く内部絶縁体13bが露出されている。この内部絶縁体13bが除去され露出された芯線がL字状に折曲されて左側素子10が構成されている。右側素子11においても同様に、右側給電ケーブル14の芯線を延伸してL字状に折曲することにより構成されている。すなわち、右側給電ケーブル14の先端部において、右側給電ケーブル14の外被が除去されて編組線14aが露出されていると共に、その先において編組線14aが除去されて短く内部絶縁体14bが露出されている。この内部絶縁体14bが除去され露出された芯線がL字状に折曲されて右側素子11が構成されている。
【0014】
また、左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14とは、それぞれL字状に対象に折曲されて配置されることにより、全体としてT字状に配置されている。そして、左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14とはほぼ一直線上に配置された水平部と、互いにほぼ垂直に折曲されてほぼ平行に近接して配置された垂直部とから構成されている。左側給電ケーブル13の水平部の先端に左側素子10が形成され、その垂直部の基端が左側給電点15とされる。また、右側給電ケーブル14の水平部の先端に右側素子11が形成され、その垂直部の基端が右側給電点16とされている。なお、左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14とは同軸ケーブルであり、その編組線13aおよび編組線14aがアースとされている。左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14との外径は例えば約3mmとされ、この場合は編組線13a,14aの外径は約2.5mm、内部絶縁体13b,14bの外径は約1.6mm、芯線とされる左側素子10と右側素子11の外径は約1.3mmとされる。
【0015】
左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14とがほぼ一直線上に配置された水平部から間隙D1をおいて近接して細長い矩形状の導体板からなる無給電素子12が配置されている。無給電素子12の長さはL3、幅はW1、厚みはD2とされている。第1実施例のアンテナ1が、例えば2.6GHz帯において使用される場合は、長さL3が約109mm(約0.94λ)、幅W1が約7mm(約0.06λ)、厚みD2が約0.5mm、間隙D1が約1.6mm(約0.01λ)とされる。左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14とからなる水平部に、間隙D1をおいて近接して無給電素子12を配置することにより、左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14との編組線13a、編組線14aからの放射を低減させて電気的特性の劣化を極力防止することができる。
また、第1実施例のアンテナ1では、左側給電点15と右側給電点16とから得られた受信信号を合成したり、左側給電点15と右側給電点16とから得られる受信信号を切り換えることによりダイバーシティ受信を行うことができる。また、左側素子10と右側素子11の一方を送信アンテナとして用いることができる。すなわち、左側給電点15あるいは右側給電点16の一方に送信信号を供給することにより、左側素子10あるいは右側素子11を送信アンテナとして用いることができる。
【0016】
次に、本発明の第2実施例のアンテナ2の構成を
図3ないし
図6に示す。ただし、
図3は本発明の第2実施例のアンテナ2の構成を示す正面図であり、
図4は本発明の第2実施例のアンテナ2の構成を示す上面図であり、
図5は本発明の第2実施例のアンテナ2の構成を示す正面斜視図であり、
図6は本発明の第2実施例のアンテナ2の構成を示す背面斜視図である。
これらの図に示す本発明の第2実施例にかかるアンテナ2は、第1実施例のアンテナ1の無給電素子12に替えて無給電素子基板20に形成された無給電素子21を用いるようにしており、他の構成は第1実施例のアンテナ1と同様とされている。第1実施例のアンテナ1と同様の構成についての説明は省略する。
【0017】
第2実施例のアンテナ2において、左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14とがほぼ一直線上に配置された水平部は細長い矩形状の無給電素子基板20の一面に密着されて配置されている。無給電素子基板20は、ベークライト基板、フィルム基板、ガラスエポキシ基板やテフロン基板等の樹脂製の基板とされている。この無給電素子基板20の厚みはD3、長さはL4、幅はW2とされ、無給電素子基板20の他面には無給電素子21の銅箔パターンが形成されている。無給電素子基板20上では、その誘電率により波長短縮されることから、無給電素子基板20に形成されている無給電素子21の長さはL3’、幅はW1’と波長短縮された長さとされている。左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14とからなる水平部に、他面に無給電素子21が形成されている無給電素子基板20の一面を密着して設けることにより、左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14との編組線13a、編組線14aからの放射を低減させて電気的特性の劣化を極力防止することができる。この場合、無給電素子21と左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14とからなる水平部との間隙は、無給電素子基板20の厚みD3となる。
【0018】
また、第2実施例のアンテナ2においても、左側給電点15と右側給電点16とから得られた受信信号を合成したり、左側給電点15と右側給電点16とから得られる受信信号を切り換えることによりダイバーシティ受信を行うことができる。また、左側素子10と右側素子11の一方を送信アンテナとして用いることができる。すなわち、左側給電点15あるいは右側給電点16の一方に送信信号を供給することにより、左側素子10あるいは右側素子11を送信アンテナとして用いることができる。
【0019】
第2実施例のアンテナ2が、例えば2.6GHz帯において使用される場合の寸法の一例を次に挙げる。2.6GHzの自由空間の波長をλ(約115.38mm)とするが、無給電素子基板20上においてはその比誘電率εrの影響により波長が短縮されて波長λ’となる。比誘電率εrが約3.7とされている場合は、波長λ’は約84.84mmに短縮される。なお、無給電素子基板20には片面だけにプリントされていることから、比誘電率εrの1/2の影響を受けるものとしている。
左側素子10と右側素子11との間隔L1は約170mm(約1.47λ)、左側素子10と右側素子11の長さL2は約28mm(約0.24λ)、無給電素子基板20の長さL4は約180mm(約1.56λ)、幅W2は約8mm(約0.07λ)、厚みD3は1.6mm(約0.01λ)、無給電素子21の長さL3’が約80mm(約0.94λ’)、幅W1’が約5mm(約0.06λ’)とされる。また、左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14との外径は例えば約3mmとされ、この場合は編組線13a,14aの外径は約2.5mm、内部絶縁体13b,14bの外径は約1.6mm、芯線とされる左側素子10と右側素子11の外径は約1.3mmとされる。
【0020】
次に、第2実施例のアンテナ2の電気的特性を測定する際の構成を
図7に示す。測定する際には
図7に示すように、右側給電点16は右側給電ケーブル14の特性インピーダンスZ
0のダミーロードで終端されており、左側給電点15だけから給電されている。すなわち、左側素子10の電気的特性を測定する回路とされている。
第2実施例のアンテナ2の寸法を上記した通りとして、
図7に示す構成により測定した左側素子10のVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を
図8に示す。
図8では中心周波数f
0が2.6GHzとされ、周波数fの周波数範囲はf/f
0が0.98から1.02の範囲とされて、この周波数範囲のVSWRが示されている。
図8を参照すると、f/f
0が0.98から1.02の周波数範囲においてVSWRは約1.2以下でほぼ一定となり、2.6GHzにおいて約1.17のきわめて良好なVSWR値が得られている。
【0021】
また、同じ条件で測定した第2実施例のアンテナ2の左側素子10のX−Z面の指向特性を
図21に示す。なお、
図7に示すようにZ軸はアンテナ2の垂直方向であり、左側給電ケーブル13と右側給電ケーブル14との水平部が延伸している方向がY軸であり、この水平部が延伸する方向と直交する方向がX軸とされている。
図9に示す指向特性において利得は0dBに正規化されており、周波数が2.6GHzの場合の最大利得は約2.0dBiが得られていると共に、約66degの半値角が得られている。この指向特性を参照すると、パターン波形は、 +30°〜+150°および −30°〜−150°の範囲の凹凸が従来のアンテナ100より小さくなっている。これは、左側給電ケーブル13及び右側給電ケーブル14の編組線13a、14aに流れる表皮電流が、近接して配置された無給電素子21の作用により減少したためと考えられる。
なお、左側給電点15を左側給電ケーブル13の特性インピーダンスZ
0のダミーロードで終端し、右側給電点16だけから給電して右側素子11の電気的特性を測定した場合においても、右側素子11のVSWRの周波数特性は
図8に示すようになると共に、指向特性は
図9に示すようになる。
【0022】
また、第2実施例のアンテナ2において無給電素子21長さL3’を0λ’〜1.8λ’まで変化させたときの左側素子10と右側素子11間のアイソレーション特性を
図10に示す。
図10の横軸は無給電素子21の長さL3’/λ’とされ、縦軸はアイソレーションILとされている。アイソレーションILは、例えば左側素子10から送信した場合は、その送信電力と右側素子11において受信された受信電力との比となる。すなわち、左側素子10の送信電力と右側素子11の受信電力の単位がdBとされている場合は、アイソレーションILは(受信電力−送信電力)[dB]で算出される。
図10を参照すると、無給電素子21の長さL3’が約0.94λ’(約80mm)の場合にピークとなり、約−22.1dBのアイソレーションILが得られる。そして、−15dB以下のアイソレーションILが得られる無給電素子21の長さL3’の範囲は、約0.80λ’(約68mm)ないし約1.03λ’(約87mm)となる。
なお、第1実施例のアンテナ1においても
図8ないし
図10に示す第2実施例のアンテナ2が示す電気的特性を示すようになる。
【0023】
次に、本発明の第3実施例のアンテナ3の構成を
図11ないし
図14に示す。ただし、
図11は本発明の第3実施例のアンテナ3の構成を示す正面図であり、
図12は本発明の第3実施例のアンテナ3の構成を示す上面図であり、
図13は本発明の第3実施例のアンテナ3の構成を示す正面斜視図であり、
図14は本発明の第3実施例のアンテナ3の構成を示す背面斜視図である。
これらの図に示す本発明の第3実施例にかかるアンテナ3は、直立してほぼ垂直に配置された金属製の棒を加工して作成された左側素子30と、左側素子30と離隔されてほぼ平行に直立して配置された金属製の棒を加工して作成された右側素子31とを有している。細長い矩形状の無給電素子基板37は、ベークライト基板、フィルム基板、ガラスエポキシ基板やテフロン基板等の樹脂製の基板とされている。無給電素子基板37の一面の左端部に、左側素子30の下部がハンダ付けされるランドと、L字状に形成された左側給電ケーブル33の先端に露出されている芯線33cがハンダ付けされるランドからなる第1パターン37bと、第1パターン37bの内側に左側給電ケーブル33の先端において露出されている編組線33aがハンダ付けされる第2パターン37aとが形成されている。
【0024】
また、無給電素子基板37の一面の右端部に、右側素子31の基部がハンダ付けされるランドと、L字状に形成された右側給電ケーブル34の先端に露出されている芯線34cがハンダ付けされるランドからなる第3パターン37dと、第3パターン37dの内側に右側給電ケーブル34の先端において露出されている編組線34aがハンダ付けされる第4パターン37cとが形成されている。左側給電ケーブル33と右側給電ケーブル34とはL字状に対象に折曲されて、全体としてT字状に配置されている。これにより、左側給電ケーブル33と右側給電ケーブル34とのほぼ一直線上に配置された水平部が、無給電素子基板37の一面に密着されて配置され、左側給電ケーブル33と右側給電ケーブル34との中途からは近接してほぼ垂直に配置される。この垂直部の左側給電ケーブル33の基端が左側給電点35とされ、右側給電ケーブル34の基端が右側給電点36とされている。なお、左側給電ケーブル33と右側給電ケーブル34とは同軸ケーブルであり、先端部において露出されている編組線33aと芯線33cとの間および編組線34aと芯線34cとの間に短く内部絶縁体33b,34bが露出されている。
【0025】
無給電素子基板37の他面には無給電素子38が銅箔パターンにより形成されている。無給電素子基板37上では、その誘電率により波長短縮される。左側給電ケーブル33と右側給電ケーブル34とが一直線上に配置されている水平部に、他面に無給電素子38が形成されている無給電素子基板37の一面を密着して設けることにより、左側給電ケーブル33と右側給電ケーブル34との編組線33a、編組線34aに流れる表皮電流を減少させて、電気的特性の劣化を極力防止することができる。この場合、無給電素子38と左側給電ケーブル33および右側給電ケーブル34とからなる水平部との間隙は、無給電素子基板37の厚みとなる。
また、第3実施例のアンテナ3においても、左側給電点35と右側給電点36とから得られた受信信号を合成したり、左側給電点35と右側給電点36とから得られる受信信号を切り換えることによりダイバーシティ受信を行うことができる。また、左側素子30と右側素子31の一方を送信アンテナとして用いることができる。すなわち、左側給電点35あるいは右側給電点36の一方に送信信号を供給することにより、左側素子30あるいは右側素子31を送信アンテナとして用いることができる。
【0026】
第3実施例のアンテナ3が、例えば2.6GHz帯において使用される場合の寸法の一例を次に挙げる。2.6GHzの自由空間の波長をλ(約115.38mm)とするが、無給電素子基板37上においてはその比誘電率εrの影響により波長が短縮されて波長λ’となる。比誘電率εrが約3.7とされている場合は、波長λ’は約84.84mmに短縮される。なお、無給電素子基板37には片面だけに無給電素子38がプリントされていることから、比誘電率εrの1/2の影響を受けるものとしている。
左側素子30と右側素子31との間隔は約170mm(約1.47λ)、左側素子30と右側素子31の長さは約28mm(約0.24λ)、無給電素子基板37の長さは約180mm(約1.56λ)、幅は約8mm(約0.07λ)、厚みは1.6mm(約0.01λ)、無給電素子38の長さが約80mm(約0.94λ’)、幅が約5mm(約0.06λ’)とされる。また、左側給電ケーブル33と右側給電ケーブル34との外径は例えば約3mmとされ、この場合は編組線33a,34aの外径は約2.5mm、内部絶縁体33b,34bの外径は約1.6mm、芯線33c,34cの外径は約1.3mmとされる。
【0027】
第3実施例のアンテナ3において、左側給電ケーブル33及び右側給電ケーブル34の編組線33a、34aに流れる表皮電流が、近接して配置された無給電素子38の作用により減少するようになる。そして、上記した通りの寸法とされた際に、第3実施例のアンテナ3においても
図8ないし
図10に示す第2実施例のアンテナ2が示す電気的特性を示すようになる。
上記した第3実施例のアンテナ3においては、各部品を無給電素子基板37に設置するようにしたので、アンテナ3の組立性、配置精度などを向上させられることから高品質とすることができると共に、アンテナ3を低コストで量産することが可能となる。
【0028】
左側素子30と右側素子31とは同じ構成とされているが、代表として左側素子30の詳細な構成を
図15に示す。
図15(a)は左側素子30の構成を示す正面図であり、
図15(b)は左側素子30の構成を示す側面図であり、
図15(c)は左側素子30の構成を示す下面図である。
これらの図に示す左側素子30は、金属製の棒状体を加工することにより作成されており、約上半分に断面円形の細長い棒状の素子部30aが形成され、素子部30aの下に外径がやや大きくされた長さの短い基部30bが形成され、基部30bの下にさらに外径が大きくされた鍔部30cが形成され、鍔部30cの下面から断面がD字状にカットされた固定部30dが延伸するよう形成されている。D字状にカットされた固定部30dにおける平面状の部分が、無給電素子基板37に左端部に形成されている第1パターン37bの左側にハンダ付けされる。ハンダ付けされる部位は平面状とされていることから接触面積が大きくされている。
【0029】
次に、第3実施例のアンテナ3の変形例の構成の一部を拡大して
図16に示す。変形例においては、左側素子30と右側素子31がハンダ付けに替えて無給電素子基板37にネジ止めされている。
図16には右側素子31の固着部分が示されており、右側素子31の固定部には挿通孔31aが形成され、この挿通孔31aにビス39aが挿通され、無給電素子基板37を貫通したビス39aにナット39bが螺着されることにより、右側素子31が無給電素子基板37に形成されている第3パターン37dに電気的かつ機械的に固着される。左側素子30も右側素子31と同様にビスとナットにより無給電素子基板37に形成されている第1パターン37bに電気的かつ機械的に固着される。