特許第5661550号(P5661550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661550
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】二次電池ユニットおよび集合二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20150108BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20150108BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20150108BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20150108BHJP
【FI】
   H01M12/08 K
   H01M10/0562
   H01M10/0585
   H01M10/052
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-102833(P2011-102833)
(22)【出願日】2011年5月2日
(65)【公開番号】特開2012-234720(P2012-234720A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】山本 一博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊広
【審査官】 吉田 安子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−064644(JP,A)
【文献】 特表2009−502011(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0063051(US,A1)
【文献】 特開2011−073962(JP,A)
【文献】 特開2008−243735(JP,A)
【文献】 特開平11−073978(JP,A)
【文献】 特開2011−150974(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/053359(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/08
H01M 10/052
H01M 10/0562
H01M 10/0585
H01M 12/04
H01M 12/06
H01M 8/02
H01M 4/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質セパレータを備える二次電池ユニットであって、
前記セパレータが、二次電池用のイオン伝導性を有する緻密質固体電解質からなり、二次電池の第一の電極と第二の電極とを分割し、前記セパレータが、板状のイオン伝導部、前記イオン伝導部から第一の主面側に突出する第一の隔壁、前記イオン伝導部から第二の主面側に突出する第二の隔壁、前記第一の主面側に開口し、前記第一の電極を収容する第一の凹部、および前記第二の主面側に開口し、前記第二の電極を収容する第二の凹部を備えており、前記第一の凹部の周囲のうち少なくとも一部が前記第一の隔壁によって区分されており、前記第二の凹部の周囲のうち少なくとも一部が前記第二の隔壁によって区分されており、前記第一の電極が負極であり、
前記二次電池ユニットが、
前記第一の凹部を被覆し、イオン伝導を遮断し、電子伝導性を有する第一の集電部、
前記第二の凹部を被覆し、イオン伝導を遮断し、電子伝導性を有する第二の集電部、および
前記第一の凹部の内面に設けられている金属膜を備えており、前記金属膜が前記第一の集電部までの電子伝導経路として機能することを特徴とする、二次電池ユニット
【請求項2】
前記第一の凹部および前記第二の凹部の平面形状が多角形または円形であることを特徴とする、請求項1記載の二次電池ユニット
【請求項3】
前記イオンがリチウムであることを特徴とする、請求項1または2記載の二次電池ユニット
【請求項4】
前記第一の電極がリチウム金属とリチウム合金との少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項3記載の二次電池ユニット
【請求項5】
前記固体電解質セパレータが、Li、La、Zr、Nb及び/又はTa、Al、及びOを含有し、(Nb+Ta)/Laのモル比が0.03以上0.20以下で、Al/Laのモル比が0.008以上0.12以下である組成を有するガーネット型固体電解質材料からなることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つの請求項に記載の二次電池ユニット
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つの請求項に記載の二次電池ユニットが複数積層されていることを特徴とする、集合二次電池。
【請求項7】
固体電解質セパレータを備える空気電池ユニットであって、
前記セパレータが、二次電池用のイオン伝導性を有する緻密質固体電解質からなり、二次電池の第一の電極と第二の電極とを分割し、前記セパレータが、板状のイオン伝導部、前記イオン伝導部から第一の主面側に突出する第一の隔壁、前記イオン伝導部から第二の主面側に突出する第二の隔壁、前記第一の主面側に開口し、前記第一の電極を収容する第一の凹部、および前記第二の主面側に開口し、前記第二の電極を収容する第二の凹部を備えており、前記第一の凹部の周囲のうち少なくとも一部が前記第一の隔壁によって区分されており、前記第二の凹部の周囲のうち少なくとも一部が前記第二の隔壁によって区分されており、前記第一の電極が負極であり、
前記空気電池ユニットが、
前記第一の凹部を被覆し、イオン伝導を遮断し、電子伝導性を有する集電部、
前記第二の凹部を被覆する酸素透過膜、および
前記第一の凹部の内面に設けられている金属膜を備えており、前記金属膜が前記集電部までの電子伝導経路として機能することを特徴とする、空気電池ユニット。
【請求項8】
請求項記載の空気電池ユニットが複数積層されていることを特徴とする、集合二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質セパレータ、二次電池ユニットおよび集合二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(US2009/0061288
A1)では、LiS(リチウム-硫黄)二次電池において、薄いLi伝導性セラミックス緻密体をセパレータとして用いている。電解液を用いるLiS電池では正極の多硫化物が電解液へ溶出することが原因で、充放電サイクルを繰り返すうちに、電解液に溶出した正極が負極へマイグレート(移動)し充放電可能な容量が徐々に低下する問題を抱えている。このため、セパレータ部分にLiイオン伝導性を有するセラミックスの緻密膜を適用することで、正極多硫化物の負極へのマイグレート(移動)を抑制する方法を開示している。また、使用するセラミックス緻密体にはLISICON(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(x=0.0〜0.5))を開示している。また機械的強度補強のために電解液が透過可能な多孔質補強膜をLISICONの両側に挟持した構成を開示している。
【0003】
特許文献2(US2008/0268327
A1)では、水系金属空気電池へ固体電解質セパレータを適用した構成を開示している。中央に緻密層を有し、その両側を緻密層の破損防止のために設けた多孔層で挟持した構造を有するイオン伝導性固体電解質セパレータである。使用する固体電解質材料には、Li1-xMxTi2(PO4)3(x=0-1.5,M=Al,Zr,Sn,Hf,Y)などのNASICON構造を備えた固体電解質材料を緻密層に設けることを開示している。
【0004】
特許文献3(WO 2008−059987)では、緻密な固体電解質板の両側に多孔質な固体電解質層を形成した固体電解質構造体、更には多孔質な固体電解質層に電極材料を収容した全固体電池が開示されている。
【0005】
また、特許文献4(特開2011−73962)では、リチウム二次電池の固体電解質材料として、ガーネット結晶構造を有する特定のセラミックス材料が開示されている。
【0006】
更に、特許文献5(特開2008-078119)記載の全固体蓄電素子は、正負極の各電極を収容する各凹部を有した固体電解質セパレータが開示されている。一般に、全固体蓄電素子においては、電池出力特性の向上に電極活物質と電解質の接触面積を増大させることで内部抵抗の低減を図ることが必要である。しかし、一方で電解質層は薄く接合面積が拡大するほど抵抗が低減するが、薄く広い面積の電解質層を形成すると強度が低下する。このため、固体電解質セパレータに、電極部を収容する各凹部を交互あるいは千鳥状に配列することによって、電極と固体電解質の接触面積を大きくし、同時に固体電解質の薄肉化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2009/0061288A1
【特許文献2】US2008/0268327A1
【特許文献3】WO 2008−059987
【特許文献4】特開2011−73962
【特許文献5】特開2008-078119
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2では、セラミックス緻密膜が薄板で強度維持が困難なため、補強膜を付加するが、これが電池のエネルギー密度を低下させる要因となっている。また最近では1ユニットの電池内部で直列や並列積層することで、電池ケース重量を低減してエネルギー密度の向上を図る電池設計が行われることがあるが、本構成では電解液の液絡が生じるため電池を個別に接続する必要があり,ユニット内での積層は出来ない。また他のエネルギー密度向上手段として電池を大判化する方策も考えられるが、その場合には基板強度の問題がより顕在化し、大判化も不可能である。
【0009】
加えて、LISICON(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(x=0.0〜0.5))やLi1-xMxTi2(PO4)3(x=0-1.5,M=Al,Zr,Sn,Hf,Y)などのNASICON構造を備えた固体電解質材料は、還元側の電位窓が狭いために負極でLiデンドライトが生じた場合にはリチウム電位で還元される。そのため固体電解質が変質して、場合によっては固体電解質に電子伝導性が生じてしまい、正負極間が短絡する不具合が生じる可能性を有している。
【0010】
電池にはエネルギー密度と出力密度の両方の特性に優れたものが要求されるため、単に電極の充填効率が良いだけで無く、電池の内部抵抗が低いことも優れた電池の条件の一つである。特許文献5記載の固体電解質セパレータでは、リチウムイオンが正極と負極との間、即ち固体電解質セパレータの凹部の隔壁(側壁)を介して移動する。つまり、リチウムイオンがセパレータを平面的に見たときに水平方向に向かって移動する。したがって、イオン伝導面での低抵抗化の方策の一つは正負極間の対向する面積を大きくすることであり、そのためには、電極収容凹部を深くする必要がある。しかしその場合、電子はセパレータの厚さ方向に向かって伝導する。したがって、各凹部を深くすると、集電部までの導電距離が長くなるので、電子伝導の面では高抵抗化する。また製法面では、各電極層を各凹部内に形成(挿入)することも技術的難易度が高くなるため好ましくない。
【0011】
電池のエネルギー密度向上には電極の収容密度は高く設計する必要がある。しかし一方で出力密度の向上には電極の厚みは薄く設計する必要がある。そのため電極層は広く薄い構造とすることが望ましい。そのため固体電解質からなるセラミックスセパレータにも大面積で薄い板状とする設計が求められる。しかしながらそれには強靭な強度が要求され、従来の設計では大面積化と低抵抗化の両立には限界が生じていた。
【0012】
本発明の課題は、イオン伝導性を有する緻密質固体電解質セパレータによって各電極を仕切るタイプの二次電池において、イオン伝導に対する抵抗と電子伝導に対する抵抗とを共に低減し、各電極の収容を容易にした固体電解質セパレータ、及び固体電解質セパレータを用いた電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、固体電解質セパレータを備える二次電池ユニットであって、
前記セパレータが、二次電池用のイオン伝導性を有する緻密質固体電解質からなり、二次電池の第一の電極と第二の電極とを分割し、前記セパレータが、板状のイオン伝導部、前記イオン伝導部から第一の主面側に突出する第一の隔壁、前記イオン伝導部から第二の主面側に突出する第二の隔壁、前記第一の主面側に開口し、前記第一の電極を収容する第一の凹部、および前記第二の主面側に開口し、前記第二の電極を収容する第二の凹部を備えており、前記第一の凹部の周囲のうち少なくとも一部が前記第一の隔壁によって区分されており、前記第二の凹部の周囲のうち少なくとも一部が前記第二の隔壁によって区分されており、前記第一の電極が負極であり、
前記二次電池ユニットが、
前記第一の凹部を被覆し、イオン伝導を遮断し、電子伝導性を有する第一の集電部、
前記第二の凹部を被覆し、イオン伝導を遮断し、電子伝導性を有する第二の集電部、および
前記第一の凹部の内面に設けられている金属膜を備えており、前記金属膜が前記第一の集電部までの電子伝導経路として機能することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、
固体電解質セパレータを備える空気電池ユニットであって、
前記セパレータが、二次電池用のイオン伝導性を有する緻密質固体電解質からなり、二次電池の第一の電極と第二の電極とを分割し、前記セパレータが、板状のイオン伝導部、前記イオン伝導部から第一の主面側に突出する第一の隔壁、前記イオン伝導部から第二の主面側に突出する第二の隔壁、前記第一の主面側に開口し、前記第一の電極を収容する第一の凹部、および前記第二の主面側に開口し、前記第二の電極を収容する第二の凹部を備えており、前記第一の凹部の周囲のうち少なくとも一部が前記第一の隔壁によって区分されており、前記第二の凹部の周囲のうち少なくとも一部が前記第二の隔壁によって区分されており、前記第一の電極が負極であり、
前記空気電池ユニットが、
前記第一の凹部を被覆し、イオン伝導を遮断し、電子伝導性を有する集電部、
前記第二の凹部を被覆する酸素透過膜、および
前記第一の凹部の内面に設けられている金属膜を備えており、前記金属膜が前記集電部までの電子伝導経路として機能することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記二次電池ユニットが複数積層されていることを特徴とする、集合二次電池に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、セパレータの第一の主面に開口する第一の凹部に第一の電極を形成し、セパレータの第二の主面に開口する第二の凹部に第二の電極を収容する。そして、第一の凹部と第二の凹部とを分離するイオン伝導部から、第一の主面側に第一の隔壁を突出させ、第二の主面側に第二の隔壁を突出させる。
【0017】
これによって、第一の電極と第二の電極との間のイオン伝導は、セパレータ面方向に延びるイオン伝導部によって担われる。したがって、各凹部を浅くしても、両方の極間の面積は変わらないので、この部分でのイオン伝導性は低下しない。一方、凹部に収容される電極層はセパレータの厚さ方向の導電距離が短くなるので、電極層内のイオン伝導性,及び電子伝導性の両方を向上させることができる。このように、本発明の構造は、二次電池において固体電解質セパレータを使用しつつ、電極収容部内におけるイオン伝導性および電子伝導性の両方をバランス良く改善させることのできるセラミックスセパレータ構造である。その上、正負極間の対向する面積を拡大するために凹部を深くする必要がないので、それだけ各凹部への電極の収容が容易である。
【0018】
これに対して、特許文献5記載の電池構造では、イオンはセパレータの面方向へと移動し、電子はセパレータの厚み方向に動く。比較のため、例えばエネルギー密度を一定に確保するため電極収容凹部の容積を一定にする。すると、電池の内部抵抗を低減する電極収容部の設計としては、開口の面積を小さくすることで面方向のイオンの移動距離(拡散距離)は小さく出来るため好ましいが、一方で電極収容部を深く設計する必要があるため、最深部への集電(電子伝導パス)形成が困難になることに加え、最深部まで電極を収容する製法の難易度が高くなる。
【0019】
その逆で収容部の開口を広く浅く設計する場合には、電極層を収容する製法は容易化され、電子伝導の距離は短縮されるが、一方でイオン伝導距離(拡散距離)は長くなる。
つまりイオン・電子の両方の移動距離を短くして電池内部抵抗低減を図る電池設計と、電極層を収容する製法を容易化する設計の両立が困難であった。
【0020】
好適には、正負極間の対向する部分を薄く大面積で形成するために補強用に設けた梁となる隔壁を、セパレータの厚さ方向に見たときに第一の主面側の隔壁と第二の主面側の隔壁とが重なる位置に設ける事で、電池ユニットを積層する際には隔壁を介して接合することが出来る。一般に電極材料は充放電の際には膨張収縮を繰り返すことが知られている上、電池の使用方法にもよるが電極全体が必ずしも均一に膨張収縮するとは限らない。また今後更なる高容量化が期待される中で注目される高容量活物質(例えば固溶体系や層状酸化物系,硫黄系の正極,合金系やリチウム金属などの負極)では、膨張収縮自体が更に拡大することが見込まれる。こうした背景から電池ユニット間を電極活物質を介した積層構造にすると、多段化が進むほどセラミックスセパレータは局所的な応力歪みを受け易くなり、破損する可能性が高まる。しかし固体電解質からなる隔壁を介して電池ユニットを積層接続することが出来れば、電極活物質の膨張収縮の影響を回避できる。
【0021】
ここで、好適には、セパレータの外縁に沿って、第一の隔壁および第二の隔壁がそれぞれ細長い突起(梁ないしストライプ)として形成されており、細長い突起状の第一の隔壁と第二の隔壁とが、セパレータの厚さ方向に見て重なる位置にある。この場合、第一の隔壁と第二の隔壁とは、外縁に沿ってセパレータの全周にわたって重なる位置にあってもよい。
【0022】
また、好適には、セパレータの外周から内側に存在する第一の隔壁および第二の隔壁が、それぞれ細長い突起(梁ないしストライプ)として形成されており、細長い突起状の第一の隔壁と第二の隔壁とが、セパレータの厚さ方向に見て重なる位置にある。これによって、セパレータの構造強度をいっそう高くすることができる。
【0023】
また、好適な実施形態においては、一方の電極あるはい双方の電極が、固体の電極材料と、この電極材料に含浸された電解液とを含んでいる。この場合には、前述した電極の膨張収縮などの作用が大きく、本発明が特に好適である。こうした電極は後に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(a)は、固体電解質セパレータ1の斜視図であり、(b)は、セパレータ1のうち1区画を示す斜視図である。
図2】(a)は、セパレータ1の1区画を示す断面図であり、(b)は、セパレータ1の凹部に電極を形成した状態を示し、(c)は、セパレータの各主面側にそれぞれ集電部を設けた状態を示す。
図3】(a)は、セパレータの各主面上に集電部を形成した状態を示す斜視図であり、(b)は、その1区画を示す斜視図である。
図4】(a)、(b)、(c)は、それぞれ、二次電池ユニットを示す断面図である。
図5図4(a)の二次電池ユニット11を積層した集合二次電池20を模式的に示す分解斜視図である。
図6図5の集合二次電池を模式的に示す断面図である。
図7】二次電池ユニットの具体例を示す断面図である。
図8図7の二次電池ユニットを積層した集合二次電池を模式的に示す図である。
図9】(a)、(b)、(c)は、それぞれ、各セパレータを示す斜視図である。
図10】(a)は、他の実施形態に係る空気電池用セパレータ31を示す斜視図であり、(b)は、セパレータ31の1区画を示す斜視図である。
図11】(a)は、セパレータ31に電極および集電部を形成した状態を示す斜視図であり、(b)は、(a)の断面図である。
図12】セパレータ31を積層した状態を示す斜視図である。
図13】二次電池ユニット41を積層した状態を示す断面図であり、図12のXIII方向に見たものである。
図14】二次電池ユニット41を積層した状態を示す断面図であり、図12のXIV方向に見たものである。る。
図15】セパレータ31を用いた集合電池のガス口に酸素透過膜50を形成した状態を示す斜視図である。
図16図15の集合電池を示す断面図である。
図17】空気電池ユニットの具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1図6は、参考形態に係るものである。
図1に示すように、セパレータ1には、複数の区画Aが形成されている。セパレータ1には平板形状のイオン伝導部4が設けられており、イオン伝導部4から一方の主面4a側へと向かって隔壁3A、3Bが形成されており、反対側の主面4b側に隔壁5A、5Bが形成されている。隔壁3A、5Aは、セパレータの外縁に、全周にわたって形成されている。また、隔壁3A、5Aに加えて、内側の外縁に存在しない隔壁3B、5Bによって、セパレータ1は、各区画Aに分割されている。第一の主面側では、隔壁3Bによって各凹部2が形成されており、第二の主面側では、隔壁5Bによって各凹部6が形成されている。本例では各凹部の平面形状は正方形または長方形である。
【0026】
図2(a)に示すように、各隔壁3Aと5A、3Bと5Bとは、それぞれ、平面的に見て重なる位置に形成されている。これは、セパレータの厚さ方向(方向E)に向かって見たときに、隔壁3Aと5A、3Bと5Bとが重なる位置にあることを意味する。これによって、セパレータ1に対して厚さE方向に向かって圧力が加わったときに、隔壁3Aと5A、3Bと5Bとが厚さ方向に圧力を支持するので、セパレータが薄くとも必要な構造強度を維持できる。
【0027】
次いで、図2(b)に示すように、第一の凹部2内に第一の電極7を形成し、第二の凹部6内に第二の電極8を形成する。次いで、図2(c)に示すように、第一の電極7上に第一の集電部9Aを形成し、第二の電極8上に第二の集電部9Bを形成することによって、二次電池ユニット10を形成する。
【0028】
図3(a)は、こうし得られた二次電池ユニット11を示す斜視図であり、図3(b)はその1区画を示す。また、図4(a)は、図3のユニットの断面図である。
【0029】
なお、図4(a)の例では、各隔壁3Aと5A、3Bと5Bとは、平面的に見て重なる位置に形成されている。これは、セパレータの厚さ方向(方向E)に向かって見たときに、隔壁3と5とが重なる位置にあることを意味する。これによって、セパレータ1に対して厚さE方向に向かって圧力が加わったときに、隔壁3Aと5A、3Bと5Bとが厚さ方向に圧力を支持するので、セパレータが薄くとも必要な構造強度を維持できる。
【0030】
図4(b)のセパレータ1Aの場合には、隔壁3Aと5A、3Bと5Bとが、厚さ方向に見て重なる位置にある。ただし、本例では、第二の主面側に隔壁12が更に形成されており、この結果、第二の主面側では、隔壁5Bと12とによって凹部6が形成され、凹部6内に電極8が収容されている。本例では、隔壁3Aと5A、3Bと5Bとが厚さ方向に見て重なる位置にあるので、これら隔壁によってセパレータの構造強度を維持できる。隔壁12は、第一の主面側に対応する隔壁を持たないので、圧力に対する支柱としては働かない。
【0031】
本実施形態では、各凹部のうち少なくとも一部が、厚さ方向に対応する隔壁を有する本発明の隔壁によって区画されているが、一部は、厚さ方向に対応する隔壁のない隔壁(例えば隔壁12)によって区画されていてもよい。特に好ましくは、凹部が全周にわたって、厚さ方向に対応する隔壁のある隔壁によって区画されている。
【0032】
図4(c)のユニット16では、隔壁13Aと15Aとが、厚さ方向に見て重なる位置にある。しかし、外縁部から内側にある第一の主面側の隔壁13Bと第二の主面側の隔壁15Bとが、セパレータの厚さ方向に見て重ならない位置にある。すなわち、隔壁13Bは、第二の主面側に対応する隔壁を有しておらず、隔壁15Bは、第一の主面側に対応する隔壁を有していない。
【0033】
本発明では、各凹部を比較的浅く設計することで、各電極を各凹部内に収容することが容易になる。そして、イオンの動きは、電極7と8との間でイオン伝導部4を透過する動きであり、つまりセパレータの厚さ方向の動きとなる。また、電子も、イオン伝導と同じくセパレータの厚さ方向の動きとなる。そのため電極収容凹部を比較的浅く設計することにより、カチオンが固体電解質セパレータまで拡散する距離と電子が集電体まで拡散する距離を、共に短く設計することが可能となる。これらにより電池の製法を容易化することに加えて、電極層内部の拡散抵抗を小さく電池を設計することが可能となる。
【0034】
電極収容凹部の配置は、第一の電極と第二の電極とを、厚さ方向に見て同じ位置に配置するのが好ましい。ただし、図4(b)のように、電極7の形状と電極8との形状が一致していなくともよい。ただし、反対側に対応する隔壁を持たない隔壁12があると、それだけ電極の収容面積が減少するので、利用効率が低下する傾向がある。
【0035】
電極収容凹部は、その周囲に隔壁を設けた構造である。この隔壁を支持体として積層スタック化することで、直列接続された集合二次電池を形成する。スタック化の際には、電池ユニット間にイオン伝導を遮断し電子伝導性を有する集電部で分割(セパレート)することで直列接続した高電位な組電池となる。また、集電部を側面へ引き出し交互接続することで並列接続した高容量な組電池や、直並列を織り交ぜた組電池も可能である。
【0036】
すなわち、二次電池ユニットは単独でも使用できるが、図5図6に示すように積層し、組電池(集合二次電池)20を形成することが好ましい。この場合には、厚さ方向に隣接するユニット11の集電部9Aと9Bとが接触することで、隣接するユニットが直列接続される。電子(電流)は、セパレータの厚さ方向へと向かって流れる。そして、積層された後の集合二次電池の上端と下端とから電力を取り出す。
【0037】
凹部に収容する電極には、電解液が含まれていても良い。凹部の開放面を集電部を介して別のユニットで挟む構造を採用することで、集電部によるシール(密閉)を容易にし、電解液が漏れない構造とすることが可能となる。通常のリチウムイオン二次電池では、液絡の問題があり電池内部で直列接続構造とすることは出来ないが、この構造を用いると積層スタック化しても液絡を防止することが可能となる。
【0038】
好適な実施形態においては、セパレータの最外周部の隔壁の幅を相対的に大きくする。電池ユニットのシール(密閉)は、セパレータの最外周部でのみなされれば良く、個々の電極収容部間での液絡は、並列接続ゆえ問題にならない。このため内部でのシール(密閉)は完全な形で成される必要は無い。しかしセパレータの最外周では、シール(密閉)を完全に行う必要があるため、最外周の壁部は幅を充分に設けて接合強度を確保できる構造とすることが望ましい。
【0039】
電極収容凹部に隔壁を設けたセラミックスセパレータ構造体により、一定容積が確保された構造を採用する。電極活物質は充放電に伴い活物質自身が膨張収縮するため、もし電極層の中で部分的に充放電状態にバラツキが生じた時には、電極層の中で厚みバラツキが生じてしまう。壁部を設けていない場合にはその厚みバラツキによりセラミックスセパレータには部分的な歪み応力が加わることになり、セパレータに割れやクラックが生じ、電池の内部ショート,更には電池自体の破壊に繋がる。しかし電極収容凹部があらかじめ一定容積が確保された空間で構成されていると、電極活物質の膨張収縮に関係なく電極収容部は一定形状を保つことが可能である。例えば将来的に高エネルギー密度が期待される高容量な活物質を適用した電池では、単位活物質重量(容積)あたりのリチウムイオンの出入りする数が増えることから、必然的に活物質自身の膨張収縮も大きくなることが知られている。特に硫黄正極や空気電池正極、更には膨張収縮ではないが容積変化の大きい活物質例として、リチウム金属やリチウム合金からなる負極を適用した電池はその典型的例である。こうした膨張収縮の大きな活物質を用いる電池には、電極収容部があらかじめ形成された本願のセパレータを用いた電池が好適である。
【0040】
本実施形態では、セパレータにワッフルのような形状(薄板の両面に交差する壁部を設けた構造)を採用する。隔壁からなる梁を必要に応じて設けることで、大面積化した際の強度確保が可能となる。すると電極収容部を平面方向に複数マトリックス状に並列配置した構造を得ることが出来る。これらを集電箔シール(密閉)層を介して並列接続することで高電位,高容量な組電池とすることが可能となる。
【0041】
負極側凹部の内表面には、一般的に負極集電材に用いられる銅に加え、負極に用いるアルカリ金属と合金化可能な金属の膜を形成することができる。凹部内面に形成された金属膜は、充電時には例えばリチウム金属と合金化して負極活物質を析出形成すると同時に、電極収容部をシール(密閉)している集電部までの間の電子伝導経路としての機能を有する。
【0042】
負極集電部には、剣山状に突き出た集電柱が備わる集電層を用いることができる。集電柱は集電部から電極収容部の凹部へ向かって伸びており、凹部の底部に達する長さで形成される。負極側電子伝導経路が上記内表面に形成された膜部に加え、集電柱も経由して電子伝導を確保可能となる。
【0043】
正極側電極部の好適な実施形態では、集電箔上に電極活物質を含む電極ペーストを、電極収容部の凹部に対応した部分に電極がパターニングされるように塗布形成し、イオン伝導性の有機電解液や半固体状のゲルやポリマーなどから成る電解質を含浸した電極層を、電極部分が電極収容部の凹部に収容されるように配設収容する。
【0044】
すなわち、図7図8の二次電池ユニット10Aにおいては、凹部2の内面に銅やアルミニウムの金属膜19が形成されており、集電部9Aまで引き出されている。また、集電部9Aと金属膜19との間には所定の負極7が析出形成されている。一方、凹部6内においては、集電部9B上に多孔質電極層8が印刷形成されており、その中に電解液が含浸されている。
【0045】
エネルギー密度向上のために、各凹部の平面形状は適宜自由に設計される。中でも特に最密充填の観点からは三角形や長方形、正方形、更には六角(ハニカム)形状や複数の多角形を組合せた形状なども好ましい。また一方で構造強度の観点からは、円や楕円形などの角部が存在しない形状が好ましい。エネルギー密度と強度を両立するには、両者の特徴を組合せた三角形や四角形、六角形や複数の多角形を組合せた形状からなり、それらの角部が丸まった形状がより好ましい。
【0046】
例えば、図9(a)のセパレータ21Aでは、各凹部2Aの平面形状が三角形である。また、図9(b)のセパレータ21Bでは、各凹部2Bの平面形状が六角形である。また、図9(c)のセパレータ21Cでは、各凹部2Cの平面形状が円形である。
【0047】
本発明は、いわゆる空気電池にも好適に適用できる。
空気電池においては、一方の電極収容凹部において、第一の隔壁の高さを高くすることによって、ガス流通路を形成する。空気電池では、積層スタック化した際のガス導入方法が問題となるが、上記構造のセパレータを用いると、ガス導入口を確保した状態でスタック化が可能となる。
【0048】
図10に示すように、セパレータ31には、第一の電極側において、セパレータの外縁に細長い梁状の隔壁35Aが形成されている。また隔壁35Aの内側には、やはり梁状の細長い隔壁35Bが複数配列され、形成されている。また、隔壁35A、35Bの間には、それぞれ一定間隔で、隔壁35A、35Bよりも低い隔壁33が形成されている。隔壁33と35A、35Bとによって、各凹部32が形成されている。各凹部32の一対の対向辺は隔壁35によって区画されており、一対の対向辺は隔壁33によって区画されている。
【0049】
一方、電子伝導部34の他方の主面34b側では、セパレータの外縁に細長い梁状の隔壁36Aが形成されている。また隔壁36Aの内側には、やはり梁状の細長い隔壁36Bが複数配列され、形成されている。隔壁36A、36Bによって各凹部38が形成されている。隔壁36A、36Bの高さは、他方の主面側では一定である。セパレータの厚さ方向に見たとき、外縁に沿って存在する隔壁35Aと36Aとは重なる位置にある。また、セパレータの厚さ方向に見たとき、隔壁33、35Bと36Bとは重なる位置にある。
【0050】
図11に示すように、第一の凹部32内に電極33を形成し、第二の凹部38内に電極37を形成する。電極37上には集電部50が形成されており、電極33上には酸素透過膜39が形成されている。酸素透過膜39上には隔壁35A、35Bの内側にガス流路42が形成されている。酸素透過膜39は、酸素を透過して、水分や二酸化炭素の透過を抑制し、且つ電極収容部内の電解液の漏洩を抑止するものである。
【0051】
こうして得られた空気電池ユニット40を、図12図13図14に示すように積層し、スタック化する。すなわち、積層方向に隣接するユニット41の集電部50と隔壁35A、35Bとを接触および導通させ、集電部50と酸素透過膜39との間にガス流路42を形成する。そして、図12に示すように、酸素含有ガスを矢印Cのようにガス流路に流入させ、矢印Dのように排出する。この構造でも、積層方向に向かって、各隔壁35A、35Bと36A、36Bとが同じ位置に存在しており、積層方向に向かって延びる支柱を提供している。また、前述の実施形態と同様に、電子およびイオンは共に積層方向に向かって流れる。
【0052】
好ましくは、図15図16に示すように、集合二次電池のガス入り口側および出口側の端面に酸素透過膜50を設ける。この酸素透過膜は、酸素を透過して、水分や二酸化炭素の透過を抑制し、且つ電極収容部内の電解液の漏洩を抑止するものである。45は集電部である。
【0053】
図17は、空気電池ユニット40Aの一例を示す。凹部38の内面には、銅、アルミニウム等からなる金属膜52が蒸着、スパッタリング等によって形成されている。凹部38内には負極37Aが収容されており、また凹部38が集電部50によって被覆されている。負極37Aは、リチウム、リチウム合金等の負極材料からなる。
【0054】
一方、反対側の凹部32内には空気極60が形成されている。空気極60は、メソ孔を有する触媒層61の中に集電部材51を埋設したものであり、触媒層61中には電解液が含浸されている。
【0055】
電池ユニットを積層スタック化する場合には、酸素透過膜は個々の電池ユニットに個別形成することも可能であるが、好ましくは、エネルギー密度向上の観点からは、図15図16のように集合電池をスタックした後にまとめて酸素透過膜50を設ける。
【0056】
正極活物質としては、種々の金属酸化物、金属硫化物などを用いることができる。特に金属酸化物が用いられる場合には、二次電池焼結を酸素雰囲気下で行うことが可能となる。こうした正極活物質の具体例としては、二酸化マンガン(MnO)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMnまたはLixMnO)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1−yCo)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLiMnCo1−y)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn2−yNi)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LiFePO、LixFe1−yMnPO、LiCoPOなど)、ナシコン構造を有するリチウムリン酸化合物(Li(POなど)、硫酸鉄(Fe(SO)、バナジウム酸化物(例えばV)などから選択される少なくとも一種が挙げられる。なお、これらの化学式中、x,yは0〜1の範囲であることが好ましい。
また、硫黄あるいはその化合物を正極活物質として用いることができ、S(硫黄)、LiS(硫化リチウム)、あるいはLi(多硫化リチウム)が挙げられる。
【0057】
なお、正極には、正極活物質のほか適宜導電助材やバインダや後述する固体電解質などを含めることができる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト、種々炭素繊維、カーボンナノチューブ等が挙げられる。バインダとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、SBR、ポリイミドなどが挙げられる。
【0058】
また、負極活物質としては、例えば、単体金属、カーボン、金属化合物、金属酸化物、Li金属化合物、Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物を含む)、ホウ素添加炭素、グラファイト、ナシコン構造を有する化合物などを用いることができる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用して用いても良い。上記カーボンとしては、例えば、グラファイトカーボン、ハードカーボン、ソフトカーボンなど、従来公知のカーボン材料が挙げられる。上記単体金属としてはLi、上記金属化合物としては、LiAl、LiZn、LiBi、LiCd、LiSd、LiSi、Li4.4Pb、Li4.4Sn、Li0.17C(LiC)等が挙げられる。上記金属酸化物としては、SnO、SnO、GeO、GeO、InO、In、PbO、PbO、Pb、Pb、AgO、AgO、Ag、Sb、Sb、Sb、SiO、ZnO、CoO、NiO、FeO等が挙げられる。Li金属化合物としては、LiFeN、Li2.6Co0.4N、Li2.6Cu0.4N等が挙げられる。Li金属酸化物(リチウム−遷移金属複合酸化物)としては、LiTi12などLiTiで表されるリチウム−チタン複合酸化物等が挙げられる。上記ホウ素添加炭素としては、ホウ素添加カーボン、ホウ素添加グラファイト等が挙げられる。負極には、正極活物質のほか適宜導電助材やバインダや後述する固体電解質などを含めることができる。導電助剤やバインダについては既に「正極活物質及び正極」の項で記載した内容と同様である。上記ナシコン構造を有する化合物としては、リチウムリン酸化合物(Li(POなど)が挙げられる。
【0059】
例えば、無機固体電解質に用いるのに好ましい電解質としては、LiPOをはじめ、LiPOに窒素を混ぜたLiPO4−x(xは0<x≦1)、LiS−SiS、LiS−P、LiS−B等のリチウムイオン伝導性ガラス状固体電解質や、これらのガラスにLiIなどのハロゲン化リチウム、LiPOなどのリチウム酸素酸塩をドープしたリチウムイオン伝導性固体電解質などが挙げられる。なかでも、リチウムとチタンと酸素を含むチタン酸化物型の固体電解質、例えば、LiLaTiO(xは0<x<1、yは0<y<1)及びナシコン型のリン酸化合物、例えば、Li1+xAlTi2−x(PO(xは0<x<1)などは酸素雰囲気下での焼成においても安定な性能を示すため好ましい。
【0060】
高分子固体電解質としては、従来公知のものを利用することができる。例えば、イオン伝導性を有する高分子から構成される層であり、イオン伝導性を示すのであれば材料は限定されない。全固体高分子電解質としては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、これらの共重合体のような公知の固体高分子電解質が挙げられる。固体高分子電解質中には、イオン伝導性を確保するためにリチウム塩が含まれる。リチウム塩としては、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO、またはこれらの混合物などが使用できる。
【0061】
特に好ましくは、固体電解質セパレータが、Li、La、Zr、Nb及び/又はTa、Al、及びOを含有し、(Nb+Ta)/Laのモル比が0.03以上0.20以下で、Al/Laのモル比が0.008以上0.12以下である組成を有するガーネット型固体電解質材料からなる。
【0062】
前記組成からなるガーネット型固体電解質材料は、高いイオン伝導度と耐Li還元性能を両立する材料である。そのため、固体電解質部分の低抵抗化と負極金属リチウムによるデンドライト短絡の抑制を両立することが可能で、本願で提案する固体電解質セラミックスセパレータに最も好適な材料である。
【0063】
正極集電体及び負極集電体については、従来公知の材料を用いることができる。集電体材料としては、導電性金属酸化物層を用いることが好ましい。例えば、SnO、In、ZnO、TiO(0.5≦x≦2)が挙げられる。これら導電性金属酸化物には、構造中にSb、Nb、Taなど導電性を高めるための微量元素を(例えば10at%以下)含んでも良い。また、高温使用や寿命等を考えるとCuとAlのクラッド材が好ましい。
【0064】
外部電極を構成する材料は特に限定されない。例えば、Ag、Ag/Pd合金、Niメッキ、蒸着によるCuなどが挙げられる。また、外部電極表面には実装のための半田メッキなどをおこなっても良い。外部電極の接続形態は特に限定されない。
【0065】
空気電池の触媒としては、遷移金属を含む酸化物やカーボン,Pt等を主に用いることが出来る。酸化物の具体例には、MnO,Mn,FeO,Fe,NiOやLa0.6Sr0.4MnO,La0.6Sr0.4FeO,LaNiOなどを用いることが出来る。また触媒の微構造は、メノポーラスな比面の大きな構造が好適である。
【0066】
空気電池の触媒に含浸させる電解液としては、非水溶媒にリチウム塩等の電解質を溶解したものを使用する。非水溶媒には公知の非水溶媒を用いることができる。例えば、プロピレンカーボネート(PC)やエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)などが挙げられ、これらの混合溶媒が好ましい。非水電解液に含まれる電解質には、例えば過塩素酸リチウム(LiClO
)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF )、四フッ化硼酸リチウム(LiBF )などのリチウム塩が挙げられる。また、ゲル電解質を使用することもできる。具体的には、高分子材料と非水電解液からなる非水電解液を使用することができる。高分子材料には、例えば、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)などを挙げることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
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図17