特許第5661555号(P5661555)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本光電工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5661555-交感神経皮膚反応測定装置 図000003
  • 特許5661555-交感神経皮膚反応測定装置 図000004
  • 特許5661555-交感神経皮膚反応測定装置 図000005
  • 特許5661555-交感神経皮膚反応測定装置 図000006
  • 特許5661555-交感神経皮膚反応測定装置 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661555
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】交感神経皮膚反応測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/05 20060101AFI20150108BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20150108BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20150108BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   A61B5/05 N
   A61B5/04 300H
   A61B5/04 300J
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-105199(P2011-105199)
(22)【出願日】2011年5月10日
(65)【公開番号】特開2012-235825(P2012-235825A)
(43)【公開日】2012年12月6日
【審査請求日】2013年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】根木 潤
(72)【発明者】
【氏名】斧 嘉伸
(72)【発明者】
【氏名】牛島 良介
(72)【発明者】
【氏名】小島 武
【審査官】 石原 徹弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−088802(JP,A)
【文献】 特表2003−500149(JP,A)
【文献】 特表2010−508956(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/059430(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04−5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に貼着される刺激電極及び測定電極と、
刺激電極に対し、前記生体におけるC線維のみを刺激する電源供給を行う刺激電源部と、
前記測定電極から得られる信号に基づき、交感神経皮膚反応(SSR)の情報を測定する測定部と、
前記測定部により測定された情報を出力し表示する出力部と
を具備し、
前記刺激電極は、先端を皮膚内に僅かに刺して用いる第1電極と、前記第1電極の周囲に導通せずに配置され皮膚に接触させて用いる第2の電極とのペアを3ペア設けて構成され、
前記刺激電源部は、前記第1電極の電気的極性を+極とし前記第2電極の電気的極性を−極としたパルス信号を供給するように構成され、
前記刺激電源部から前記刺激電極に前記パルス信号を供給して前記C線維を刺激し、前記測定部により前記測定電極から得られる信号のSSRオンセット潜時を測定して前記出力部により表示し、前記測定されたSSRオンセット潜時から求められた痛覚の伝導速度が、C線維による痛覚の伝導速度に近い値であることを利用して、交感神経に関する評価を行うことが可能であることを特徴とする交感神経皮膚反応測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交感神経皮膚反応(SSR)測定を適切に行うことが可能な交感神経皮膚反応測定装置に関し、特に糖尿病のスクリーニングや疼痛管理に好適に適用し得る交感神経皮膚反応測定装置に関するものであるが、これらに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
SSR測定は、非侵襲性的自律神経検査方法として、例えば、神経内科や心療内科などの各分野で広く用いられている。従来のSSR測定の手法としては、強い電気刺激や大きな音を患者に与えることにより行うものが知られている。また、痛覚知覚閾値検査としては、刺激を感じたときにボタンを患者が押す手法が採用されている。
【0003】
刺激を感じたときにボタンを患者が押す手法においては、特に高齢者などの場合には、知覚があってもボタンを押すまでに時間を要し正確な測定を行うことができないという問題があった。
【0004】
上記に対し、疼痛を知覚した場合に手掌などに発汗を生じることを利用して、電極を用いてSSR測定を行うことが行われている。例えば、手掌に電極を設け、被験者を仰臥から最大前屈位まで姿勢変化させて刺激を与えるものがあり(特許文献1参照)、睡眠時無呼吸による刺激について指先に電極を設けて測定するものも知られている(特許文献2参照)。
【0005】
上記のように姿勢変化させて刺激を与えるものや睡眠時無呼吸による刺激では、刺激時刻から知覚時刻までの正確な時間を測定することができず、交感神経についての正常異常に関しては捕らえ難いものである。また、電気刺激を与える場合には刺激強度を下げると外来ノイズとの識別が困難となる問題があった。
【0006】
特に、交感神経に関する評価を行う場合には、皮膚感覚の神経線維のうち、C線維についての分析が行われることが重要であると言われている。つまり、C線維を他の神経線維と区別して刺激することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−23964号公報
【特許文献2】特開2009−82660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の如く、交感神経皮膚反応測定における現状に鑑みてなされたもので、その目的は、被験者の交感神経皮膚反応を客観的に適切に測定することが可能な交感神経皮膚反応測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る交感神経皮膚反応測定装置は、生体に貼着される刺激電極及び測定電極と、刺激電極に対し、前記生体におけるC線維のみを刺激する電源供給を行う刺激電源部と、前記測定電極から得られる信号に基づき、交感神経皮膚反応(SSR)の情報を測定する測定部と、前記測定部により測定された情報を出力し表示する出力部とを具備し、前記刺激電極は、先端を皮膚内に僅かに刺して用いる第1電極と、前記第1電極の周囲に導通せずに配置され皮膚に接触させて用いる第2の電極とのペアを3ペア設けて構成され、前記刺激電源部は、前記第1電極の電気的極性を+極とし前記第2電極の電気的極性を−極としたパルス信号を供給するように構成され、前記刺激電源部から前記刺激電極に前記パルス信号を供給して前記C線維を刺激し、前記測定部により前記測定電極から得られる信号のSSRオンセット潜時を測定して前記出力部により表示し、前記測定されたSSRオンセット潜時から求められた痛覚の伝導速度が、C線維による痛覚の伝導速度に近い値であることを利用して、交感神経に関する評価を行うことが可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る交感神経皮膚反応測定装置によれば、刺激電極に対し、生体におけるC線維のみを刺激する電源供給を行う刺激電源部を備えているので、皮膚感覚の神経線維のうち、C線維のみを刺激して交感神経に関する評価を客観的且つ適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る交感神経皮膚反応測定装置の実施形態を示す構成図。
図2】本発明に係る交感神経皮膚反応測定装置の実施形態に用いる刺激電極を示す断面図。
図3】本発明に係る交感神経皮膚反応測定装置の実施形態に用いる刺激電極の第1の変形例要部を示す斜視図。
図4】本発明に係る交感神経皮膚反応測定装置の実施形態に用いる刺激電極の第2の変形例を示す斜視図。
図5】本発明に係る交感神経皮膚反応測定装置の実施形態により測定したSSRの測定波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下添付図面を参照して、本発明に係る交感神経皮膚反応測定装置の実施形態を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。図1に実施形態に係る交感神経皮膚反応測定装置の構成を示す。交感神経皮膚反応測定装置は、生体Aに貼着される刺激電極30及び測定電極11を備える。測定電極11は、電極11A、11B、11Cにより構成される。
【0017】
刺激電極は、例えば、その断面図が図2に示すように構成することができる。刺激電極30は、先端が皮膚内に僅かに刺せる形状を有した第1電極である針状電極31と、皮膚に接触させて用いる第2電極である接触電極32とを備える。図2より明らかなように、針状電極31は接触電極32より突出(突起)している。また、針状電極31の先端は必ずしも尖っている必要はなく、球状や棒状等であってもよい。接触電極32は、針状電極31を中心として針状電極31を取り囲む円筒状をなしても良いし、複数の接触電極32が針状電極31を中心に円筒状に位置するように配置されても良く、その内径は例えば1mmである。
【0018】
また、接触電極32の一部は図3に示すように皮膚内に僅かに刺せる形状を有していてもよい。接触電極32と針状電極31の間隙には、絶縁材料により構成されるスペーサ33が埋設されていてもよい。また、接触電極32の周囲には、接触電極32を芯として円柱状に形成され、絶縁材料により構成される外装部34が備えられている。
【0019】
更に、図4に示すように、図2に示した接触電極32と針状電極31のペアである刺激電極30を複数極(ここでは、3ペア(極))用いて、絶縁性樹脂によって構成される円板状のベース41に立設させ、3つの針状電極31を1本の導線に接続し、また3つの接触電極32を1本の導線に接続して、リード線42として引き出すように構成することもできる。
【0020】
刺激電極30は刺激電源部10に接続されている。刺激電源部10は、生体におけるC線維のみを刺激する電源供給を行うものであり、具体的には、パルスの電気的極性を変えて電源供給を行うもので、本願出願人が既に出願した特願2008−264298号(特開2010−88802号公報)に記載の構成と同様である。刺激電源部10には、ポインティングディバイスやキーボードなどにより構成される操作部13が接続されており、操作部13から刺激強度(mA)、パルスの立上り時間、立下り時間、パルス幅・パルス間隔・パルス数、パルス形状、電極極性などを設定することができる。刺激電源部10には、出力部21として例えばLCDなどから構成される表示装置が接続されており、上記操作部13によって設定された内容が表示装置である出力部21に表示される。
【0021】
測定電極11を構成する電極11A、11B、11Cは、SSR測定部20に接続されている。SSR測定部20は、測定電極11から得られる信号に基づき、交感神経皮膚反応の情報を測定するものである。SSR測定部20は、刺激に対応する興奮によって発汗が生じることを検出するもので、具体的には電極11A及び電極11Bと電極11Cの間の抵抗変化により発汗を測定して、交感神経皮膚反応の情報を得る。例えば、電極11Aを+電極として発汗の生じやすい(左)手掌HCに貼着し、電極11Bを−電極として発汗の生じ難いまたは発汗のない(左)手背HBに貼着し、電極11Cをアース電極として(左)手首HAに貼着することができる。一方、刺激電極30は、生体Aの(左)ひざLと(左)足甲Fに貼着して、刺激を与えることができる。測定結果は、出力部21に出力され表示される。
【0022】
実際の測定においては、刺激電極30として図4に示す3極電極(日本光電工業株式会社製の表面刺激電極NM−980W)を、刺激電源部10として同社製の携帯型末梢神経刺激装置PNS−7000を、SSR測定部20として同社製の筋電図・誘発電位検査装置MEB−2300シリーズニューロパックX1を用いた。また、刺激条件は、パルスについて、rise(立ち上がり)=0.3ms、rise(立ち下がり)=0.3ms、pla(平坦部)=0ms、ISI(継続時間)=20ms、train(パルス数)=10とし、刺激強度は0.10mAとした。刺激電源部10により、第1電極である針状電極31の電気的極性を+極とし、第2電極である接触電極32の電気的極性を−極としたパルス信号を供給する。即ち、陽極刺激を行う。このような刺激を、約1分間の間隔を空けて同じ刺激条件で3回繰り返し、SSR測定を行った。また、同時に押しボタンによる応答時間測定を行った。
【0023】
図5(a)に、第1回のひざ刺激による測定波形を示す。図5(b)に第1回の足甲刺激による測定波形を示す。また、SSR測定部20は、測定時にこれらを出力部21へ出力して表示すると共に、SSRオンセット潜時を求めて表示する。また、押しボタンによる応答時間測定の結果を操作部13から入力して、次の表1に示すような結果の対比表の内容と、刺激からの時間差を、SSR測定部20に求めさせて出力部21へ出力させて表示するように構成しても良い。
【0024】
【表1】
【0025】
更に、操作部13から足甲とひざの距離を入力して、オフセット潜時の平均による時間差を用いてC線維による痛覚の伝導速度CVをSSR測定部20に求めさせて出力部21へ出力させて表示するように構成しても良い。表1の結果を用いると、伝導速度CV=1.04m/sとなり、良く知られているC線維による痛覚の伝導速度CV=1m/sに近い値が得られた。本実施形態に係る交感神経皮膚反応測定装置によれば、皮膚感覚の神経線維のうち、C線維のみを刺激して交感神経に関する評価を客観的且つ適切に行うことが可能であることが分かる。
【符号の説明】
【0026】
10 刺激電源部
11 測定電極
11A 電極
11B 電極
11C 電極
13 操作部
20 SSR測定部
21 出力部
30 刺激電極
31 針状電極
32 接触電極
33 スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5