【実施例】
【0043】
〔試験例1〕本発明のモノクローナル抗体の製造方法
1.免疫用抗原の調製
ヒトインスリン(Fitzgerald社製 30−AI51)をコンプリートフロインドアジュバント(Wako社製)と1:1で混合後、連結シリンジを用いてエマルジョンを作製し、免疫用抗原とした。
【0044】
2.ハイブリドーマの作製
上記、免疫用抗原を雌のBALB/cマウスの背部皮下に注入した(1匹当たり20〜50μg)。この操作(免疫)を1週間毎に2回繰り返した。免疫開始3週間後、試験採血にて高い抗体価が確認されたマウスから脾臓を摘出し、50%−PEG1450(シグマ社製)を用いた常法により細胞融合を行った。ミエローマ細胞はSP2/Oを用いた。得られた融合細胞は、脾臓細胞として2.5×10
6個/mLになるようにHAT、15%ウシ胎児血清及び10%のBM−Condimed H1 Hybridoma Cloning Supplement(Roche社製)を含むRPMI1640培地に懸濁し、96穴培養プレートに0.2mLずつ分注した。これを5%CO
2インキュベーター中で37℃にて培養した。
【0045】
3.第1のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング
細胞融合7日後に1次スクリーニングとして、培養上清を用いて後述する抗原固相化ELISA法を行い、インスリンに対し高い反応性を示したwellを1次陽性wellとして選別した。該1次陽性well中の細胞は、24穴プレートにおいて継代した。継代2日後、2次スクリーニングとして、培養上清を用いて後述する競合ELISA法を行い、インスリンに対し高い反応性を示すwellを2次陽性wellとして選択した。
3−1.抗原固相化ELISA用プレートの作製
150mM塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液(pH7.2;以下、PBSという)で1μg/mLの濃度に調製したインスリンをスクリーニング用抗原として、50μL/wellずつ96穴プレートに固相化し、4℃で一晩静置した。0.05%Tween(登録商標)20及び0.1%プロクリン300(SUPELCO社製)を含むPBS溶液(以下、PBSTという)400μL/wellで3回洗浄後、1%BSAを含むPBST(以下、BSA-PBSTという)を100μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行い、ELISA用プレートを作製した。該ELISA用プレートは、PBSTで3回洗浄後、各試薬を添加して実施例記載の各ELISA法試験に用いた。
3−2.抗原固相化ELISA法
(i)抗原固相化したELISA用プレートに、BSA−PBSTにより段階希釈した各マウス抗血清、あるいは融合細胞の培養上清を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(ii)PBSTで3回洗浄後、HRP−Gt F(ab’)
2−Anti−Mouse Ig’s(BIOSOURCE社製 AMI4404)をBSA−PBSTで5000倍希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iii)PBSTで3回洗浄後、0.02%過酸化水素水を含む0.2Mクエン酸緩衝液(以下、基質溶解液という)にOPD(東京化成工業社製)を2mg/mLにて溶解し、50μL/wellずつ添加して室温で1時間静置した。
(iv)1mM EDTAを含む1.5N硫酸(以下、反応停止液という)を50μL/wellずつ添加し、タイターテック(登録商標)マルチスキャンプラスMKII(Flow Laboratories社製)を用いて波長492nmにて吸光度を測定した。
3−3.競合ELISA法
(i)抗原固相化したELISA用プレートにヒトインスリン(Fitzgerald社製30−AI51)をBSA−PBSTで各0μg/mL、2.5μg/mL、5μg/mL、10μg/mLに希釈した溶液を25μL/wellずつ分注した。
(ii)次いで、BSA−PBSTで各5倍、25倍に希釈した融合細胞の培養上清あるいはその原液を25μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iii)以降の操作は、前記3−2.抗原固相化ELISA法の工程(ii)〜(iv)と同様に行った。
【0046】
4.第2のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニング
細胞融合7日後に、培養上清を用いて後述のサンドイッチELISA法を行い、後述のクローニング及びモノクローナル抗体採取にて、予め採取したF(ab’)
2処理化した第1のモノクローナル抗体と結合させたインスリンに対し高い反応性を示すwellを選択した。
4−1.サンドイッチELISA法
(i)Immuno Pure(登録商標) F(ab’)
2 Preparation Kit(PIERCE社製 Prod#44888)を使用して第1のモノクローナル抗体(ここでは66221抗体)をF(ab’)
2処理化した。
(ii)PBS溶液に2μg/mLの濃度に調製したF(ab’)
2処理化済み第1のモノクローナル抗体を50μL/wellずつ96穴プレートに固相化し、4℃で一晩静置した。PBST400μL/wellで3回洗浄後、BSA-PBSTを100μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行い、ELISA用プレートを作製した。
(iii)ELISA用プレートに、ヒトインスリン(Fitzgerald社製 30−AI51)をBSA−PBSTで0.5μg/mLに希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iv)PBSTで3回洗浄後、BSA−PBSTで段階希釈した融合細胞の培養上清を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(v)PBSTで3回洗浄後、HRP−Gt−Anti−Mouse IgG−Fc(BETHYL LABORATORIES社製 A90―131P)をBSA−PBSTで10000倍希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(vi)PBSTで3回洗浄後、基質溶解液にOPD(東京化成工業社製)を2mg/mLにて溶解し、50μL/wellずつ添加して室温で1時間静置した。
(vii)反応停止液を50μL/wellずつ添加し、タイターテック(登録商標)マルチスキャンプラスMKII(Flow Laboratories社製)を用いて波長492nmにて吸光度を測定した。
5.クローニング及びモノクローナル抗体採取
上記3.及び4.のスクリーニングで選択したハイブリドーマを限界希釈法にてクローニングし、それぞれハイブリドーマ66221、66226を得た。次いで各ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体を採取するため、2週間前にプリスタン0.5mLを腹腔内に注射しておいた12週齢の雌BALB/cマウスに、ハイブリドーマを細胞数0.5×10
6個の量で腹腔内に投与した。14日後に腹水を採取し、遠心処理して上清を得た。上清を等量の吸着用緩衝液(3mol/L NaCl、1.5mol/L Glycine−NaOH緩衝液、pH8.5)と混和後、ろ過した。該ろ液を、吸着用緩衝液で平衡化したプロテインAセファロースカラムに通し、ろ液中の抗体をカラムに吸着させた後、0.1mol/Lクエン酸緩衝液(pH3.0)で溶出させた。該溶出液を、1mol/L Tris−HCl緩衝液(pH8.0)で中和後、PBSで透析を行い、抗体を採取した。
以下、66221抗体、66226抗体としてそれぞれ試験に用いた。
【0047】
66221抗体及び66226抗体を産生するハイブリドーマは、出願人によって独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(住所:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に2009年4月8日に寄託手続がされ、受託番号(FERM P−21800、FERM P−21801)が付与され、その後2010年2月17日に原寄託に基づくブタペスト条約に基づく寄託へ移管され、受託番号(FERM BP−11233、FERM BP−11234)が付与されている。
【0048】
〔試験例2〕本発明のモノクローナル抗体のプロインスリン及びインスリン類似化合物との交差反応性
66221抗体及び66226抗体のプロインスリン及びインスリン類似化合物との交差反応性についてBiacore(登録商標)T100を用いて試験を行った。インスリン類似化合物としては、インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミルなどのインスリンアナログ製剤を用いた。
1.試薬及び器具
1−1.モノクローナル抗体
(i)66221抗体:2.30mg/mL
(ii)66226抗体:3.99mg/mL
1−2.アナライト
(i)リコンビナントヒトインスリン:Fitzgerald社製 30−AI51
(ii)プロインスリン:IRR社製 Proinsulin, Human, for Immunoassay, NIBSC code: 84/611
(iii)インスリンアナログ製剤
(1)インスリンリスプロ100単位/mL:日本イーライリリー社製、
(2)インスリンアスパルト100単位/mL:ノボノルディスクファーマ社製
(3)インスリングラルギン100単位/mL:サノフィ・アベンティス社製
(4)インスリンデテミル100単位/mL:ノボノルディスクファーマ社製
1−3.Biacore(登録商標)機器及び専用試薬類一式(Biacore社製:現GE Healthcare社製、次の(i)〜(viii)はBiacore社製当時の製品及びカタログNo.であるが、現在はGE Healthcare社より入手可能である。)
(i)Biacore(登録商標) T100:Biacore社製 JJ−1037−02
(ii)Series S Sensor Chip CM5:Biacore社製 BR−1005−30
(iii)Amine Coupling Kit:Biacore社製 BR−1000−50
(iv)Acetate 5.0:Biacore社製 BR−1003−51
(v)α−Mouse Immunoglobulins:Biacore社製 BR−1005−14
(vi)Glycine 1.5:Biacore社製 BR−1003−54
(vii)Glycine 2.0:Biacore社製 BR−1003−55
(viii)HBS−EP+ 10×(ランニングバッファー):Biacore社製 BR−1006−69(使用時、NaOHでpH8.5に調製後、精製水にて10倍希釈して用いる。)
【0049】
2.試験方法
Sensor Chipに固定化したα−Mouse Immunoglobulinsに66221抗体あるいは66226抗体をキャプチャーさせ、アナライトとしてインスリン、プロインスリン、各種インスリンアナログ製剤を添加することでそれぞれの反応性を評価した。具体的な操作手順は以下のとおりである。
(i)Sensor Chip CM5にα−Mouse Immunoglobulinsを固定化した(付属の取扱説明書に従った)。
(ii)HBS−EP+ (pH8.5)で66221抗体あるいは66226抗体を5μg/mLとなるよう希釈し、流速30μL/minで300秒間添加した。
(iii)HBS−EP+ (pH8.5)で各種抗原を10ng/mLに希釈し、0ng/mL、10ng/mLの2濃度につき各120秒間添加した。またその際にフリーランニングによる解離時間を120秒間と設定した。
(iv)Glycine 1.5とGlycine 2.0を1:1で混合して再生溶液とし、再生処理を180秒間行った。
【0050】
3.結果
3−1.インスリンとの反応結果
66221抗体及び66226抗体について、Biacore(登録商標)T100を用いてインスリンとの反応性を確認した。結果を
図2及び
図3に示す。インスリン濃度10ng/mLにおいて、66221抗体では8.5RUの反応性が認められた(
図2)。一方、66226抗体では全く反応性が認められなかった(
図3)。なお、縦軸「RU」とはBiacore(登録商標)測定系における独自の単位を示しており、センサー表面上での反応による質量変化を表している。
【0051】
3−2.プロインスリン及びインスリンアナログ製剤との反応結果
66221抗体及び66226抗体について、Biacore(登録商標)T100を用いてプロインスリンあるいは各種インスリンアナログ製剤(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル)との反応性を確認した。結果を
図4−1、
図4−2、
図5−1及び
図5−2に示す。抗原濃度10ng/mLにおいて、66221抗体ではいずれも5.5〜13RUのレスポンスが認められた。一方、66226抗体では全く反応性が認められなかった。
【0052】
〔実施例1〕本発明のモノクローナル抗体の組み合わせによるインスリンの測定1<LTIA法>
1.ラテックス粒子の作製
攪拌機、還流用冷却器、温度検出器、窒素導入管及びジャケットを備えたガラス製反応容器 (容量2L) に、蒸留水1100g、スチレン200g、スチレンスルホン酸ナトリウム0.2g、及び、蒸留水50gに過硫酸カリウム1.5gを溶解した水溶液を仕込み、容器内を窒素ガスで置換した後、70℃で攪拌しながら48時間重合した。
重合終了後、上記溶液をろ紙にてろ過処理し、ラテックス粒子を取り出した。得られたラテックス粒子の粒子径を透過型電子顕微鏡装置 (日本電子社製、「JEM−1010型」) を用いて10000倍の倍率でラテックス粒子を撮影し、最低100個以上の粒子について画像解析することにより平均粒子径を測定した。得られた平均粒子径は0.3μmであった。
【0053】
2.抗インスリン抗体感作ラテックス粒子の調製
2−1.66221抗体感作ラテックス粒子溶液の作製
平均粒子径0.3μmの1.0%ラテックス溶液(5mM トリス緩衝液(以下、Tris−HClという)(pH8.5)に、等量の5mM Tris−HCl(pH8.5)で0.60mg/mLに希釈した66221抗体溶液を添加して4℃2時間攪拌した。その後、等量の0.5%BSA含有5mM Tris−HCl(pH8.5)を添加して4℃1時間攪拌した。次に、これを遠心して上清を除去後、沈殿を5mM Tris−HCl(pH8.5)で再懸濁し、66221抗体感作ラテックス粒子溶液を作製した。
2−2.66226抗体感作ラテックス粒子溶液の作製
平均粒子径0.3μmのラテックスを用いて上記と同じ方法により66226抗体感作ラテックス粒子溶液を作製した。
【0054】
3.試薬の調製
3−1.第一試薬の調製
500mMの塩化ナトリウム及び0.2%BSAを含む5mM Tris−HCl(pH8.5)を調製し第一試薬とした。
3−2.第二試薬の調製
66221抗体感作ラテックス粒子溶液及び66226抗体感作ラテックス粒子溶液を等量混合し、5mM Tris−HCl(pH8.5)で波長600nmでの吸光度が5.0Absとなるように希釈して第二試薬とした。
【0055】
4.測定方法
第一試薬と第二試薬を組合せ、日立7170形自動分析装置を用いてインスリン濃度依存的な粒子凝集塊の形成を確認した。具体的には、濃度0μU/mL、5μU/mL、25μU/mL、50μU/mL、100μU/mL、200μU/mLのインスリン溶液10μLに、第一試薬150μLを加えて37℃で5分間加温後、第二試薬50μLを加えて攪拌した。その後5分間の凝集形成に伴う吸光度変化を、主波長570nm、副波長800nmにて測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
5.測定結果
表1よりインスリン濃度依存的に感度が上昇し定量が可能であることが確認された。
【0058】
〔実施例2〕本発明のモノクローナル抗体の組み合わせによるインスリンの測定2<ELISA法>
66221抗体及び66226抗体をそれぞれ固相化し、2次抗体としてそれぞれ別の抗体を組み合わせてインスリン、プロインスリン及びインスリン類似化合物の反応性についてELISA法を用いて試験を行った。
1.使用した抗体及び抗原種
(1)モノクローナル抗体
66221抗体:2.30mg/mL
66226抗体:3.99mg/mL
(2)抗原種
インスリン、プロインスリン、インスリンアナログ製剤(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル)は、試験例2と同じものを用いた。
【0059】
2.ELISA測定方法
(i)PBSに66221抗体あるいは66226抗体を2μg/mLに希釈した溶液を96穴プレートに50μL/wellずつ固相化し、室温で2時間静置した。
(ii)PBST400μL/wellで3回洗浄後、BSA−PBSTを100μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置してブロッキングを行い、ELISA用プレートを作製した。
(iii)ELISA用プレートに、ヒトインスリン、プロインスリン及びインスリンアナログ製剤をBSA−PBSTで各0ng/mL、1ng/mL、5ng/mL、10ng/mLに希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(iv)PBSTで3回洗浄後、ビオチン標識化した66221抗体あるいは66226抗体をBSA−PBSTで1μg/mLに希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(v)PBSTで3回洗浄後、Immuno Pure(登録商標)Streptavidin,HRP Conjugated(PIERCE社製 Prod#21126)をBSA−PBSTで5000倍に希釈した溶液を50μL/wellずつ分注し、室温で1時間静置した。
(vi)PBSTで3回洗浄後、基質溶解液にOPD(東京化成工業社製)を2mg/mLにて溶解し、50μL/wellずつ添加して室温で1時間静置した。
(vii)反応停止液を50μL/wellずつ添加し、タイターテック(登録商標)マルチスキャンプラスMKII(Flow Laboratories社製)を用いて波長492nmにて吸光度を測定した。
【0060】
3.結果
3−1.66221抗体固相化プレート測定結果
試験結果を表2及び
図6に示す。
66221抗体を1次抗体、66226抗体を2次抗体とした場合、インスリンでは濃度依存的な吸光度の上昇が認められたものの、プロインスリン及びインスリンアナログ製剤(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル)では濃度依存的な吸光度の上昇がまったく認められなかった。
【0061】
【表2】
【0062】
3−2.66226抗体固相化プレート測定結果
試験結果を表3及び
図7に示す。
66226抗体を1次抗体、66221抗体を2次抗体とした場合、インスリン、プロインスリン及びインスリンアナログ製剤(インスリンリスプロ、インスリンアスパルト、インスリングラルギン、インスリンデテミル)のいずれに対しても濃度依存的な吸光度の上昇が全く認められなかった。
【0063】
【表3】
【0064】
4.考察
前記結果より、66221抗体を1次抗体、66226抗体を2次抗体とした場合、プロインスリン及びインスリンアナログ製剤とは交差反応性を示さないことから、それらの影響を受けずにインスリンのみを定量できることがわかる。また、66226抗体を1次抗体、66221抗体を2次抗体とした場合には、インスリンを測定できなかったことから、66226抗体は、インスリンとは反応性を示さず、66221抗体が結合したインスリンと反応することがわかる。一方、前記試験例2のBiacore(登録商標)T100を用いた本発明のモノクローナル抗体の交差反応性試験結果では、66221抗体は、インスリン、プロインスリン及びインスリンアナログ製剤のいずれとも反応するものの、66226抗体では、それらいずれとも反応しなかった。
これらのことから、本測定系の反応機序としては、66221抗体が先にインスリンに結合することで、インスリンに何らかの構造変化が起こり、66226抗体は当該構造変化部位を特異的に認識することでサンドイッチが成立するものと考えられる。
【0065】
〔試験例3〕本発明のモノクローナル抗体のインスリン類似化合物との交差反応性
66221抗体及び66226抗体のインスリン類似化合物との交差反応性についてBiacore(登録商標)T100を用いて試験を行った。インスリン類似化合物として、インスリンアナログ製剤であるインスリングルリジンを用いた。
1.試薬及び器具
1−1.モノクローナル抗体
(i)66221抗体:2.30mg/mL
(ii)66226抗体:3.99mg/mL
1−2.アナライト
インスリンアナログ製剤
(i)インスリングルリジン 100単位/mL:サノフィ・アベンティス社製
1−3.Biacore(登録商標)機器及び専用試薬類一式
Biacore(登録商標)機器及び専用試薬類一式は、試験例2と同じものを用いた。
【0066】
2.試験方法
アナライトとしてインスリンアナログ製剤であるインスリングルリジンを用いた以外は試験例2に記載の方法と同様に行った。
【0067】
3.結果
3−1.インスリンアナログ製剤との反応結果
66221抗体及び66226抗体について、Biacore(登録商標)T100を用いてインスリンアナログ製剤・インスリングルリジンとの反応性を確認した。結果を
図8に示す。66221抗体及び66226抗体のいずれも全く反応性が認められなかった。なお、縦軸「RU」とはBiacore(登録商標)測定系における独自の単位を示しており、センサー表面上での反応による質量変化を表している。
【0068】
〔実施例3〕本発明のモノクローナル抗体の組み合わせによるインスリンの測定3<ELISA法>
66221抗体及び66226抗体をそれぞれ固相化し、2次抗体としてそれぞれ別の抗体を組み合わせてインスリン、プロインスリン及びインスリン類似化合物の反応性についてELISA法を用いて試験を行った。
1.使用した抗体及び抗原種
(1)モノクローナル抗体
66221抗体:2.30mg/mL
66226抗体:3.99mg/mL
(2)抗原種
インスリン、プロインスリン、インスリンアナログ製剤(インスリングルリジン)。
【0069】
2.ELISA測定方法
インスリンアナログ製剤としてインスリングルリジンを用いた以外は、すべて実施例2と同様の方法で行った。
【0070】
3.結果
3−1.66221抗体固相化プレート測定結果
試験結果を表4及び
図9に示す。
実施例2と同様、66221抗体を1次抗体、66226抗体を2次抗体とした場合、インスリンでは濃度依存的な吸光度の上昇が認められたものの、プロインスリン及びインスリンアナログ製剤(インスリングルリジン)では濃度依存的な吸光度の上昇がまったく認められなかった。
【0071】
【表4】
【0072】
3−2.66226抗体固相化プレート測定結果
試験結果を表5及び
図10に示す。
実施例2と同様、66226抗体を1次抗体、66221抗体を2次抗体とした場合、インスリン、プロインスリン及びインスリンアナログ製剤(インスリングルリジン)のいずれに対しても濃度依存的な吸光度の上昇が全く認められなかった。
【0073】
【表5】
【0074】
4.考察
前記結果より、66221抗体を1次抗体、66226抗体を2次抗体とした場合、66226抗体を1次抗体、66221抗体を2次抗体とした場合のいずれも、インスリンアナログ製剤・インスリングルリジンとは交差反応性を示さないことがわかった。