特許第5661574号(P5661574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中村 勇の特許一覧

<>
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000002
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000003
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000004
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000005
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000006
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000007
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000008
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000009
  • 特許5661574-ウイング式車両荷室 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661574
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】ウイング式車両荷室
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/08 20060101AFI20150108BHJP
   B62D 33/04 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   B60J7/08 P
   B62D33/04 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-167154(P2011-167154)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2013-28313(P2013-28313A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2013年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390033776
【氏名又は名称】中村 勇
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−161177(JP,A)
【文献】 実開平05−056541(JP,U)
【文献】 特開昭62−203818(JP,A)
【文献】 特開2001−121971(JP,A)
【文献】 特開平10−119579(JP,A)
【文献】 実開平06−061543(JP,U)
【文献】 特開昭62−083230(JP,A)
【文献】 実開平06−067139(JP,U)
【文献】 実開昭62−123416(JP,U)
【文献】 実開昭62−123417(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/08
B62D 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイング式車両荷室であって、
前壁と、前記前壁に対向する後壁と、前記前壁と前記後壁の間を延出する梁と、前記梁に回転可能に取付けられる一対のウイングと、前記各ウイングを前記梁に対して上下方向に回転させる各油圧シリンダと、電力から油圧を生成する油圧ユニットと、前記油圧ユニットと前記各油圧シリンダを連結する油圧パイプを有し、
前記梁は、前記前壁に左右方向に移動可能に取付けられる前部と、前記後壁に左右方向に移動可能に取付けられる後部を有し、
前記梁の前記前部に前記前部を前記前壁に対して移動可能に保持するスライド体が設けられ、前記スライド体は、前記梁の前記前部から前記前壁よりも前方に突出するベースを有し、
前記スライド体の前記ベースにブラケットが設けられ、前記ブラケットは、前記ベースに取付けられる取付部と、前記取付部から下方に延出しかつ前記前壁との間に隙間を有して前記前壁の前方に位置する延出部と、前記延出部の下部に設けられて前記油圧ユニットが取付けられる受部を有し、
前記ブラケットを介して前記梁に前記油圧ユニットが取付けられ、前記梁とともに前記油圧ユニットと前記各油圧パイプと前記各油圧シリンダが移動するウイング式車両荷室。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイング式車両荷室に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のウイング式車両荷室は、特許文献1を参照するように前壁、後壁、前壁と後壁の間を延出する梁、梁に回転可能に設けられる一対のウイング、各ウイングを梁に対して回転させる各油圧シリンダを有する。梁の前部は、前壁の上部に左右方向に移動可能に取付けられ、梁の後部は、後壁の上部に左右方向に移動可能に取付けられる。前壁には、油圧シリンダに油圧を供給する油圧装置が固定される。油圧装置と油圧シリンダは、油圧パイプによって接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−161177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし油圧シリンダが前壁に固定され、油圧シリンダが梁とともに左右方向に移動する。そのため油圧パイプの長さは、油圧シリンダが移動する量を考慮して十分に長くする必要がある。また梁が移動した際、油圧パイプの延出方向が変わるために、油圧パイプが他の部材と干渉することを避けるためのキャタピラを設け、キャタピラ内に油圧パイプを設置する等の構造が必要である。したがってウイング式車両荷室をより簡易な構造にしたいという要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備えるウイング式車両荷室であることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、前壁と、前壁に対向する後壁と、前壁と後壁の間を延出する梁と、梁に回転可能に取付けられる一対のウイングと、各ウイングを梁に対して上下方向に回転させる各油圧シリンダと、電力から油圧を生成する油圧ユニットと、油圧ユニットと各油圧シリンダを連結する油圧パイプを有する。梁は、前壁に左右方向に移動可能に取付けられる前部と、後壁に左右方向に移動可能に取付けられる後部を有する。梁に油圧ユニットが取付けられ、梁とともに油圧ユニットと各油圧パイプと各油圧シリンダが移動する。
【0006】
したがって梁を左右に移動させると、梁とともに油圧パイプが移動するために、梁の移動量を考慮して油圧パイプの長さを長くする必要がない。そのため油圧パイプの長さを従来の構造に比べて短くし得る。また油圧パイプは、梁が移動しても延出方向が大きく変わらないため、油圧パイプが他の部材と干渉し難い。そのため油圧パイプが他の部材と干渉することを抑制するキャタピラ等が不要である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】荷室と車両の斜視図である。
図2】荷室の一部前面図である。
図3図2のIII―III線断面矢視図である。
図4】上方に回転させた際の左ウイングの後面図である。
図5】ロック装置の拡大図である。
図6】荷室と車両の後面図である。
図7】右のウイングを上方に回転させかつ梁を左へ移動させた際の荷室と車両の後面図である。
図8】左のウイングを上方に回転させかつ梁を右へ移動させた際の荷室と車両の後面図である。
図9】ロック装置をロック状態にしてウイングを上方に回転させた際の荷室と車両の後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一つの実施の形態を図1〜9にしたがって説明する。図1に示すように車両20は、トラックであって車体20aと運転台20bを有する。運転台20bは、車体20aの前部に設けられ、車体20aの中央および後部に荷室1が設置される。
【0009】
荷室1は、図1に示すようにウイング式でかつ箱型である。荷室1は、床10と前壁2と後壁3を有する。床10は、板状で車体20aの上部に設置され、荷物が床10の上に設置される。前壁2は、運転台20bの後側に位置し、床10の前端縁に起立する。後壁3は、床10の後端縁に起立し、前壁2に対向する。後壁3は、フレーム3aと2つの開閉扉3bを備える。開閉扉3bは、フレーム3aの左右の柱に回転可能に取付けられる。
【0010】
荷室1は、さらに図1に示すように一対のあおり11と梁4と一対のウイング5,6を有する。あおり11は、床10の側縁にヒンジ11aによって上下方向に回転可能に取付けられる。あおり11は、上方に回転されて床10に対し起立して荷室1の左右壁の下部を構成する。
【0011】
梁4は、図1,2に示すように前壁2と後壁3の間を延出する。梁4の前部には、前壁2に移動可能に取付けられるスライド体13が設けられる。前壁2には、スライド体13が移動可能に装着されるレール2cが設けられる。梁4の後部には、後壁3に移動可能に取付けられるスライド体13が設けられる。後壁3には、スライド体13が移動可能に装着されるレール3cが設けられる。
【0012】
スライド体13は、図2,3に示すようにベース13aと車輪ベース13bと車輪13cを有する。ベース13aは、梁4の端部に取付けられて、梁4の端部を覆う。ベース13aの下部には、左右方向に張出す張出部13dが設けられる。張出部13dには、ウイング5,6を回転させる油圧シリンダ12の一端部が回転可能に取付けられる。車輪ベース13bは、ベース13aの下部に取付けられて下方に延出する。車輪13cは、車輪ベース13bの左右各部に一対取付けられ、車輪ベース13bの前側と後側に位置する。
【0013】
前壁2は、図2,3に示すように一対のパネル2a,2bと上部材2dを有する。上部材2dは、パネル2aの上部とパネル2bの前面に装着され、左右方向に延出する。上部材2dの上面には、前壁2の全長に渡って左右方向に延出するレール2cが取付けられる。レール2cには、スライド体13の車輪13cが転動可能に設置され、車輪13cがレール2cに沿って左右方向に移動可能に保持される。
【0014】
前壁2と梁4の間には、図2,3に示すように梁4を左右方向に移動させる移動装置14が設けられる。移動装置14は、モータ14aとピニオン14bとチェーン14cを有する。モータ14aは、スライド体13のベース13aに取付けられる。ピニオン14bは、モータ14aの動力によって回転する。チェーン14cは、前壁2に取付けられた取付部材2eの上面に装着され、前壁2の全長に渡って左右方向に延出する。ピニオン14bは、チェーン14cに噛合いつつ回転することでチェーン14cに沿って左右方向に移動する。これにより移動装置14は、梁4を左右方向に移動させ得る。
【0015】
梁4の前部には、図2,3に示すようにブラケット7が取付けられる。ブラケット7は、スライド体13のベース13aの前面に取付けられる取付部7aと、取付部7aから下方に延出する延出部7bと、延出部7bの下端縁から前方に延出する受部7cを有する。受部7cの上面に油圧ユニット8が取付けられる。
【0016】
油圧ユニット8は、図2,3に示すように電気モータ8aとポンプ8bを有する。電気モータ8aは、車体に搭載されたバッテリから延出する電気配線16と接続され、電気配線16からの電力によってポンプ8bを駆動させる。ポンプ8bは、駆動することで油に圧力を加える。ポンプ8bは、油圧シリンダ12と油圧パイプ17によって連結され、油圧を油圧シリンダ12に供給する。
【0017】
ウイング5は、図1,2に示すように天井左部5aと左壁上部5bを有する。天井左部5aの一端部は、ヒンジ5fによって梁4の左部に上下方向に回転可能に連結される。左壁上部5bは、上領域5cと下領域5dを有する。上領域5cは、天井左部5aの先端部に固定されて天井左部5aから略直角方向に延出する。下領域5dは、ヒンジ5eによって上領域5cの先端部に回転可能に連結される。
【0018】
ウイング6は、図1,2に示すように天井右部6aと右壁上部6bを有する。天井右部6aの一端部は、ヒンジ6fによって梁4の右部に上下方向に回転可能に連結される。右壁上部6bは、上領域6cと下領域6dを有する。上領域6cは、天井右部6aの先端部に固定されて天井右部6aから略直角方向に延出する。下領域6dは、ヒンジ6eによって上領域6cの先端部に回転可能に連結される。
【0019】
上領域5cと下領域5dの間には、図4,5に示すように下領域5dを解除可能に上領域5cにロックするロック装置15が設けられる。ロック装置15は、上筒体15aと下筒体15bとピン15cを有する。上筒体15aは、上領域5cの内側面に取付けられ、下筒体15bは、下領域5dの内側面に取付けられる。ピン15cは、上筒体15aにスライド可能に取付けられる。
【0020】
ピン15cには、図5に示すようにピン15cの延出方向に対して直交する方向に突出する突出部15dが設けられる。上筒体15aには、突出部15dを上下方向にスライド可能に受入れる長穴15a1が形成される。突出部15dを操作することでピン15cが上筒体15aに対してスライドする。
【0021】
ピン15cは、図5に示すようにピン15cの先端部が下筒体15bに挿入されるロック位置と、先端部が下筒体15bから外れるアンロック位置の間でスライドする。ピン15cがロック位置に位置することで下領域5dが上領域5cに対して回転不能にロックされる。ピン15cがアンロック位置に位置することで下領域5dが上領域5cに対して回転可能になる。
【0022】
ロック装置15は、左のウイング5の前部分と後部分に設けられる。右のウイング6の前部分と後部分にもロック装置15が設けられ、ウイング6の上領域6cと下領域6dがロック装置15によって解除可能にロックされる。
【0023】
油圧シリンダ12は、図4に示すようにシリンダ12aとロッド12bを有する。シリンダ12aの一端部12cは、梁4に対して回転可能に連結される。ロッド12bは、シリンダ12aに対して移動可能に設けられ、シリンダ12a内の油圧によって進退する。ロッド12bは、ウイング5の天井左部5aあるいはウイング6の天井右部6aに回転可能に連結される取付端部12dを有する。
【0024】
油圧シリンダ12は、図1に示すように梁4の前部と後部に設けられる。前部の油圧シリンダ12は、梁4の前部に設けられた油圧ユニット8に対して油圧パイプ17によって近距離で接続される。後部の油圧シリンダ12は、梁4の中を前後に通る油圧パイプ17によって油圧ユニット8に対して接続される。
【0025】
左右のウイング5,6を下方に回転させた図6の閉じ位置から右のウイング6を上方に回転させると右のウイング6は、図7の仮想線に示す開き位置に移動する。右壁上部6bは、折り畳んだ状態になり、梁4よりも左側に位置する。梁4を左方向に移動させると、梁4とウイング5,6が左方向に移動する。これにより荷室1の略上方全体が開放される。
【0026】
左右のウイング5,6を図6の閉じ位置から左のウイング5を上方に回転させると左のウイング5は、図8の仮想線に示す開き位置に移動する。左壁上部5bは、折り畳んだ状態になり、梁4よりも右側に位置する。梁4を右方向に移動させると、梁4とウイング5,6が左方向に移動する。これにより荷室1の略上方全体が開放される。
【0027】
ロック装置15をロック状態にした状態で、左右のウイング5,6を図6の閉じ位置から上方に回転させると、ウイング5,6の先端が荷室1よりも外方に位置する。これによりウイング5,6によって雨除け用の庇が形成され得る。左右のウイング5,6の1つを閉じ位置から開き位置に回転させても同様の効果が得られる。
【0028】
以上のように荷室1は、図1,2に示すように前壁2と、前壁2に対向する後壁3と、前壁2と後壁3の間を延出する梁4と、梁4に回転可能に取付けられる一対のウイング5,6と、各ウイング5,6を梁4に対して上下方向に回転させる各油圧シリンダ12と、電力から油圧を生成する油圧ユニット8と、油圧ユニット8と各油圧シリンダ12を連結する油圧パイプ17を有する。梁4は、前壁2に左右方向に移動可能に取付けられる前部と、後壁3に左右方向に移動可能に取付けられる後部を有する。梁4に油圧ユニット8が取付けられ、梁4とともに油圧ユニット8と各油圧パイプ17と各油圧シリンダ12が移動する。
【0029】
したがって梁4を左右に移動させると、梁4とともに油圧パイプ17が移動するために、梁4の移動を考慮して油圧パイプ17の長さを長くする必要がない。そのため油圧パイプ17の長さを従来の構造に比べて短くし得る。また油圧パイプ17は、梁4が移動しても延出方向が大きく変わらないため、油圧パイプ17が他の部材と干渉し難い。そのため油圧パイプ17が他の部材と干渉することを抑制するキャタピラ等が不要である。
【0030】
梁4の前部には、図2に示すように前部から下方に延出するブラケット7が設けられる。ブラケット7に油圧ユニット8が取付けられ、油圧ユニット8が前壁2よりも前方に位置する。したがって油圧ユニット8は、ブラケット7によって梁4に対して吊り下げられる。そのため油圧ユニット8を梁4よりも上方に位置させる場合に比べて、油圧ユニット8が安定良く梁4に取付けられ得る。油圧ユニット8は、前壁2よりも前方に位置する。そのため油圧ユニット8は、荷室1の外側に位置して荷室内の空間を狭くしない。
【0031】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、油圧ユニット8は、ブラケット7を介して梁4に取付けられても良いし、ブラケット7を介さずに梁4に取付けられても良い。
【0032】
油圧ユニット8は、梁4の前端部に取付けられても良いし、梁4の中央部あるいは後部に取付けられても良い。油圧ユニット8は、荷室1の外側に位置しても良いし荷室1の内側に位置しても良い。
【符号の説明】
【0033】
1 荷室
2 前壁
3 後壁
4 梁
5,6 ウイング
7 ブラケット
8 油圧ユニット
10 床
12 油圧シリンダ
15 ロック装置
16 電気配線
17 油圧パイプ
20 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9