【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる構造形態およびさらなる発展形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
実施形態によると、半導体ボディは、n型導電半導体層とp型導電半導体層とを備えている。p型導電半導体層はp型ドーパントを含んでいる。n型導電半導体層は、n型ドーパントおよびさらなるドーパントを含んでいる。
【0008】
さらなるドーパントによって、p型導電半導体層の活性化率を本質的に高めることができ、すなわち、電荷キャリアとしての正孔を供給するp型ドーパントの原子の割合が増大する。
【0009】
特に、n型導電半導体層は、少なくとも局所的に水素の透過性が高められる。n型導電半導体層における水素の溶解度を、さらなるドーパントによって高めることができる。p型導電半導体層を活性化させるとき、水素は、p型導電層の上に配置されているn型導電半導体層を通り抜けることができる。n型導電半導体層を通じての水素の拡散は、さらなるドーパントによって単純化することもできる。
【0010】
一構造形態においては、p型導電半導体層とn型導電半導体層との間に、放射の発生を目的とする活性領域、もしくはトンネル接合(tunnel contact)、またはその両方が形成されている。言い換えれば、重要な機能を果たすpn接合は、p型導電半導体層とn型導電半導体層との間に位置している。このような機能pn接合は、放射を発生させる役割を果たす(活性領域の場合)、または、p型ドープ層とn型ドープ層とを電気的に接続する役割を果たす(トンネル接合の場合)。この場合、トンネル接合は、例えば、高濃度にp型ドープされたトンネル層および高濃度にn型ドープされたトンネル層を備えていることができる。
【0011】
半導体ボディの実施形態においては、p型導電半導体層は、少なくとも1層のさらなる半導体層によって覆われている。このさらなる半導体層は、例えば、放射を発生させる目的で設けられている活性領域を有する半導体層、またはトンネル接合を有する半導体層である。いずれにしても、p型導電半導体層は埋め込まれた位置にあり、半導体ボディの外側には位置していない、すなわち、p型導電半導体層は露出していない。
【0012】
半導体ボディの一構造形態においては、p型導電半導体層は、活性領域とキャリアの間、または活性領域と成長基板の間に配置される。n型ドーパントおよびさらなるドーパントを有するn型導電半導体層は、p型導電半導体層とは反対側の活性領域の面に配置される。いずれの場合にも、p型導電半導体層は埋め込まれた位置にあり、半導体ボディの外側から自由にはアクセスできない。
【0013】
半導体ボディの一構造形態においては、n型導電半導体層は、少なくとも5nm、好ましくは少なくとも10nm、特に好ましくは少なくとも20nmの厚さを有する。さらなるドーパントを含んでいない(すなわちn型ドーパントのみを含んだ)n型導電半導体層は、水素に対して不透過性である。さらなるドーパントを加えることによってのみ、この層が水素に対して透過性になる。この実施形態の場合、n型導電半導体層の厚さを20nm以上とすることができ、これによって、例えばn型導電半導体層の横方向導電率が向上し、これは有利である。
【0014】
半導体ボディは、窒化物化合物半導体材料をベースとしていることが好ましい。
【0015】
本文書において、「窒化物化合物半導体をベースとしている」とは、エピタキシャル活性積層体またはその少なくとも1層が、III−V族窒化物化合物半導体材料、好ましくはAl
nGa
mIn
1−n−mN(0≦n≦1、0≦m≦1、n+m≦1)を備えていることを意味する。この材料は、上の化学式に従った数学的に正確な組成を有する必要はない。そうではなく、この材料は、Al
nGa
mIn
1−n−mN材料の物理特性を実質的に変化させることのない1つまたは複数のドーパントと追加の構成成分とを備えていることができる。しかしながら、説明を簡潔にする目的で、上の化学式は、結晶格子の本質的な構成成分(Al、Ga、In、N)のみを含んでおり、これらの構成成分は、その一部分をわずかな量のさらなる物質によって置き換えることができる。
【0016】
好ましい構造形態においては、さらなるドーパントは、n型導電半導体層において、この層の水素に対する透過性が増大するように、材料および濃度に関して設定されている。p型導電半導体層を活性化させるとき、水素はn型導電半導体層を容易に通り抜けることができる。このようにすることで、p型導電半導体層の活性化率を高めることができる。この場合、さらなるドーパントによって、n型導電半導体層における水素の溶解度を高めることができる。
【0017】
さらなる好ましい構造形態においては、n型導電半導体層におけるさらなるドーパントは、アクセプタとしての役割を果たす。
【0018】
窒化物化合物半導体材料におけるアクセプタとして適している元素は、元素周期表の第I族および第II族の元素である。第III族の元素の格子位置(lattice site)においてこのような元素を結晶に組み入れることによって、半導体材料のp型導電性を高めることができる。
【0019】
さらなるドーパントがアクセプタとしての役割を果たす結果として、n型ドーピングの一部分がさらなるドーパントによって中和される。n型導電半導体層においてはn型ドーピングの一部分が中和されるが、さらなるアクセプタとしてのさらなるドーパントによって、p型導電半導体層においてはp型ドーパントの活性化率が高まるため、全体として半導体ボディのオプトエレクトロニクス特性が向上することが判明した。
【0020】
好ましい構造形態においては、さらなるドーパントはマグネシウムである。n型導電半導体層に導入されるマグネシウム原子によって、特に、n型導電半導体層における水素の溶解度が局所的に上昇する。水素はn型導電半導体層を通ってより容易に拡散し、したがって成長基板とは反対側の半導体ボディの端面に達し、さらに好ましくは端面から出て行く。
【0021】
さらなる構造形態においては、n型導電半導体層のさらなるドーパントは、p型導電半導体層のp型ドーパントと同じである。特に、さらなるドーパントおよびp型ドーパントは、いずれもマグネシウムである。
【0022】
さらなるドーパントの濃度は、n型ドーパントの濃度の最大で50%であることが好ましい。さらなるドーパントのドーパント濃度がn型ドーパントの最大で50%であるとき、n型ドーピングが過度に中和される結果として半導体ボディのオプトエレクトロニクス特性が大きく低下することを回避できる。
【0023】
さらには、n型導電半導体層におけるさらなるドーパントの濃度は、少なくとも1×10
16cm
−3であることが好ましい。特に、この濃度は、1×10
17cm
−3〜5×10
18cm
−3の範囲(両端値を含む)、特に好ましくは1×10
17cm
−3〜2×10
18cm
−3の範囲(両端値を含む)である。このようにすることで、n型導電半導体層の光学品質が大きく損なわれることなく、n型導電半導体層の水素に対する透過性を高めることができる。
【0024】
半導体ボディは、放射の発生を目的とする活性領域を備えていることが好ましい。この活性領域は、特に、p型導電半導体層とn型導電半導体層との間に設けることができる。
【0025】
好ましいさらなる発展形態においては、半導体ボディはさらなる活性領域を備えており、活性領域およびさらなる活性領域のそれぞれが、放射の発生を目的としている。さらなる活性領域によって、半導体ボディのベース領域(base area)を同じままで、発生させることのできる総放射出力を増大させることができる。
【0026】
特に、活性領域とさらなる活性領域との間にn型導電半導体層を設けることができる。半導体ボディの作製時、n型導電半導体層によって覆われているp型導電半導体層の活性化率が高まる。
【0027】
半導体チップは、半導体ボディによって形成することができる。半導体チップは、例えば、発光ダイオードチップとして、またはレーザダイオードチップとして具体化することができる。
【0028】
好ましい構造形態においては、半導体ボディの成長基板が、完全に、または少なくとも一部分が除去されている。このような半導体チップは、薄膜半導体チップとしても知られている。
【0029】
薄膜半導体チップ、例えば薄膜発光ダイオードチップは、本出願の目的において、以下の特徴的な構造形態の少なくとも1つによって、さらに区別することができる。
− 活性領域を有する半導体積層体を備えている半導体ボディの(特に、エピタキシャル積層体の)第1の主面(キャリア要素に面している)に、ミラー層が堆積または形成されており(例えば半導体層にブラッグミラーとして組み込まれている)、このミラー層が、半導体積層体において発生する放射の少なくとも一部分を半導体積層体の方に反射する。
− 半導体積層体の厚さは、20μm以下の範囲、特に10μm以下の範囲である。
− 半導体積層体は、少なくとも一面が混合構造(intermixing structure)を備えている少なくとも1層の半導体層を含んでおり、これによって、理想的には半導体積層体における近似的に光のエルゴード分布につながり、すなわち、実質的にエルゴード的確率過程である散乱挙動を示す。
【0030】
薄膜発光ダイオードチップの基本原理は、例えば非特許文献1に記載されており、この点に関するこの文書の開示内容は、参照によって本出願に組み入れられている。
【0031】
n型導電半導体層およびp型導電半導体層を有する半導体ボディを製造する方法においては、一実施形態によると、p型ドーパントおよび水素を含んでいる半導体層を堆積させる。好ましくはこのp型導電半導体層の上にn型導電半導体層を堆積させ、n型導電半導体層はn型ドーパントおよびさらなるドーパントを含んでいる。p型導電半導体層を形成するため、半導体層のp型ドーパントを活性化させ、p型導電半導体層からの水素はn型導電半導体層を通り抜ける。
【0032】
このようにすることで、p型導電半導体層の活性化率が高い半導体チップの製造方法が、簡単に達成される。
【0033】
活性化は、熱的に行うことが好ましい。半導体ボディを加熱することによって、半導体ボディから水素を簡単に追い出すことができる。
【0034】
半導体層の上にn型導電半導体層を堆積させることができ、この場合、n型導電半導体層は半導体層を完全に覆うことができる。n型導電半導体層の水素に対する透過性が高められているため、特に完全に埋め込まれた位置にあるp型導電半導体層も極めて効率的に活性化させることができる。このようにして、p型導電半導体層が活性領域およびn型導電半導体層より前に堆積される半導体ボディを、より容易に堆積させることができる。したがって、この場合、p型導電半導体層は、n型導電半導体層よりも成長基板に近い位置にある。
【0035】
半導体ボディの一構造形態においては、半導体ボディは、以下の積層体を有する極性が逆の構造、を備えている。すなわち、半導体ボディは成長基板を備えており、成長基板の上にp型導電半導体層が配置されている。成長基板とは反対側のp型導電半導体層の面に、活性領域が配置されている。p型導電半導体層とは反対側の活性領域の面に、n型ドーパントおよびさらなるドーパントを有するn型導電半導体層が配置されている。このような「極性が逆の」構造は、例えば、特許文献1に記載されており、この文書の開示内容は参照によって本出願に組み入れられている。
【0036】
極性が逆の構造の場合にも、p型導電半導体層は埋め込まれた状態にあり、すなわち、さらなる半導体層によって覆われている。したがって、p型導電半導体層を活性化させるとき、水素は、半導体ボディから出て行くためには、さらなる半導体層、特に、n型導電半導体層を通り抜けなければならない。この通り抜けは、n型導電半導体層を、さらなるドーパント(例えば、p型導電半導体層においても使用されるp型ドーパント)によって共ドープする結果として可能になっている。
【0037】
特に、窒化物半導体材料をベースとする半導体ボディの場合、積層体として、最初にn型導電半導体層、次に活性領域、次にp型導電半導体層が堆積されている結果として、ピエゾ電界が発生し、これによって活性領域の中への電荷キャリアの注入がより困難になる。この結果として、このような半導体ボディを有する半導体チップの内部量子効率は、半導体チップに印加される電流の密度に伴って急激に低下する。
【0038】
それに対して、最初にp型導電半導体層、次に活性領域、次にn型導電半導体層が堆積されている積層体では、活性領域における電荷キャリアの閉じ込めを促進する目的で、ピエゾ電界の極性を利用することができる。したがって、この順序の多層構造では、ピエゾ電界によって、活性領域における電荷キャリアの閉じ込めが改善される。これによって、内部量子効率が電流密度とは実質的に無関係になる。
【0039】
特に、埋め込まれた位置にあるp型導電半導体層がマグネシウムによってドープされている場合、この層の上に位置するn型導電半導体層の水素に対する透過性が高められているため、p型導電半導体層の活性化を改善することができる。
【0040】
上に説明した方法は、その前に説明した半導体ボディを製造するのに特に適している。したがって、半導体ボディに関連して記載した特徴・形状は、製造方法においても使用することができ、その逆も同様である。
【0041】
さらなる特徴、有利な構造形態、および有利な態様は、図面を参照しながらの以下の例示的な実施形態の説明によって明らかになるであろう。