特許第5661614号(P5661614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5661614半導体ボディおよび半導体ボディの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661614
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】半導体ボディおよび半導体ボディの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/06 20100101AFI20150108BHJP
【FI】
   H01L33/00 112
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-512826(P2011-512826)
(86)(22)【出願日】2009年5月28日
(65)【公表番号】特表2011-523219(P2011-523219A)
(43)【公表日】2011年8月4日
(86)【国際出願番号】DE2009000756
(87)【国際公開番号】WO2009149687
(87)【国際公開日】20091217
【審査請求日】2012年1月18日
(31)【優先権主張番号】102008028345.2
(32)【優先日】2008年6月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】オスラム オプト セミコンダクターズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Osram Opto Semiconductors GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ストラスバーク マルチン
(72)【発明者】
【氏名】ルガウアー ハンス−ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】グロリア ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ハーン ベルトホールド
(72)【発明者】
【氏名】フローテル リチャード
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−242586(JP,A)
【文献】 特開2005−268739(JP,A)
【文献】 特開2003−068745(JP,A)
【文献】 特開2004−134750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01S 5/00− 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ボディ(2)であって、
− n型導電半導体層(21)と、
− p型導電半導体層(22)と、
を備えており、
− 前記p型導電半導体層(22)がp型ドーパントを含んでおり、
− 前記n型導電半導体層(21)がn型ドーパントおよびさらなるドーパントを含んでおり、前記さらなるドーパントの濃度が、少なくとも1×1017cm−3であり、
− 前記p型導電半導体層(22)と前記n型導電半導体層(21)との間に、放射の発生を目的とする活性領域(20)が形成されており、
− 前記p型導電半導体層(22)が、前記活性領域(20)と、キャリア(5)または成長基板(50)との間に配置されており
前記さらなるドーパントが、前記n型導電半導体層(21)において、前記n型導電半導体層(21)の水素に対する透過性が増大するように、材料および濃度に関して設定されている、
半導体ボディ(2)。
【請求項2】
半導体ボディ(2)であって、
− n型導電半導体層(21)と、
− p型導電半導体層(22)と、
を備えており、
− 前記p型導電半導体層(22)がp型ドーパントを含んでおり、
− 前記n型導電半導体層(21)がn型ドーパントおよびさらなるドーパントを含んでおり、前記さらなるドーパントの濃度が、少なくとも1×1017cm−3であり、
− 前記p型導電半導体層(22)と前記n型導電半導体層(21)との間に、放射の発生を目的とする活性領域(20)が形成されており、
− 前記p型導電半導体層(22)が、前記活性領域(20)と、キャリア(5)または成長基板(50)との間に配置されており、
前記n型導電半導体層(21)における前記さらなるドーパントが、アクセプタとしての役割を果たす、
半導体ボディ(2)。
【請求項3】
半導体ボディ(2)であって、
− n型導電半導体層(21)と、
− p型導電半導体層(22)と、
を備えており、
− 前記p型導電半導体層(22)がp型ドーパントを含んでおり、
− 前記n型導電半導体層(21)がn型ドーパントおよびさらなるドーパントを含んでおり、前記さらなるドーパントの濃度が、少なくとも1×1017cm−3であり、
− 前記p型導電半導体層(22)と前記n型導電半導体層(21)との間に、放射の発生を目的とする活性領域(20)が形成されており、
− 前記p型導電半導体層(22)が、前記活性領域(20)と、キャリア(5)または成長基板(50)との間に配置されており、
前記さらなるドーパントが、前記p型導電半導体層(22)の前記p型ドーパントと同じである、
半導体ボディ(2)。
【請求項4】
以下の積層体、すなわち、
− 前記成長基板(50)と、
− 前記成長基板(50)の上の前記p型導電半導体層(22)と、
− 前記p型導電半導体層(22)の上の前記活性領域(20)と、
− 前記活性領域(20)の上の前記n型導電半導体層(21)と、
を有する、極性が逆の構造、
を備えている、
請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体ボディ(2)
【請求項5】
前記n型導電半導体層(21)における前記さらなるドーパントの濃度が、1×1017cm−3〜5×1018cm−3の範囲(両端値を含む)である、
請求項1から請求項のいずれかに記載の半導体ボディ(2)
【請求項6】
前記n型導電半導体層(21)における前記さらなるドーパントの濃度が、前記n型ドーパントの濃度の最大で50%である、
請求項1から請求項のいずれかに記載の半導体ボディ(2)
【請求項7】
前記半導体ボディ(2)が、前記活性領域(20)とさらなる活性領域(25)とを備えており、前記活性領域(20)および前記さらなる活性領域(25)のそれぞれが、放射の発生を目的としており、前記活性領域(20)と前記さらなる活性領域(25)との間に前記n型導電半導体層(21)が設けられている、
請求項1から請求項のいずれかに記載の半導体ボディ(2)
【請求項8】
前記半導体ボディ(2)が窒化物化合物半導体材料をベースとしている、
請求項1から請求項のいずれかに記載の半導体ボディ(2)
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれかに記載の半導体ボディ(2)を有する半導体チップ(1)であって、
発光ダイオードチップとして、またはレーザダイオードチップとして具体化されている、
半導体チップ(1)。
【請求項10】
請求項に記載の半導体ボディ(2)を有する半導体チップ(1)であって、薄膜半導体チップとして具体化されている、
半導体チップ(1)。
【請求項11】
n型導電半導体層(21)およびp型導電半導体層(22)を有する半導体ボディ(2)、を製造する方法であって、
a)p型ドーパントおよび水素を含んでいる半導体層(220)を堆積させるステップと、
b)n型ドーパントおよびさらなるドーパントを含んでおり、前記さらなるドーパントの濃度が少なくとも1×1017cm−3でありかつ前記さらなるドーパントが前記n型導電半導体層(21)において前記n型導電半導体層(21)の水素に対する透過性が増大するように材料および濃度に関して設定されている、前記n型導電半導体層(21)を堆積させるステップと、
c)前記半導体層(220)の前記p型ドーパントを活性化させて前記p型導電半導体層(22)を形成するステップであって、前記半導体層(220)からの水素が前記n型導電半導体層(21)を通り抜ける、前記ステップと、
を含んでおり、
前記p型導電半導体層(22)と前記n型導電半導体層(21)との間に、放射の発生を目的とする活性領域(20)を形成する、方法。
【請求項12】
ステップc)における前記活性化を熱的に行う、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップc)において、前記n型半導体層(21)は前記半導体層(220)を完全に覆う、
請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップc)において、水素が、前記活性領域(20)及び前記n型導電半導体層(21)を通って拡散し、前記半導体ボディ(2)から放出される、
請求項11から請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
請求項1から請求項のいずれかに記載の半導体ボディ(2)が製造される、
請求項11から請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、半導体ボディと、半導体ボディを製造する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
窒化物化合物半導体をベースとする発光ダイオードの場合、p型導電性のためのマグネシウムによってドープされた半導体層がしばしば使用される。製造時、半導体層に対して活性化ステップを行うことができ、活性化では、層に入り込んだ水素をマグネシウムから分離する。特に、埋め込まれた位置にある半導体層の場合に、マグネシウムの活性化が不十分であると、発光ダイオードの動作電圧が上昇することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2007/012327号パンフレット
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】I. Schnitzer et al., Appl. Phys. Lett. 63 (16), 18 October 1993, 2174-2176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、改良されたオプトエレクトロニクス特性を示す半導体ボディを提供することである。特に、p型導電半導体層(p-conductive semiconductor layer)の活性化率(degree of activation)が向上するように意図されている。本発明のさらなる目的は、半導体ボディを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、独立請求項の主題によって達成される。さらなる構造形態およびさらなる発展形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
実施形態によると、半導体ボディは、n型導電半導体層とp型導電半導体層とを備えている。p型導電半導体層はp型ドーパントを含んでいる。n型導電半導体層は、n型ドーパントおよびさらなるドーパントを含んでいる。
【0008】
さらなるドーパントによって、p型導電半導体層の活性化率を本質的に高めることができ、すなわち、電荷キャリアとしての正孔を供給するp型ドーパントの原子の割合が増大する。
【0009】
特に、n型導電半導体層は、少なくとも局所的に水素の透過性が高められる。n型導電半導体層における水素の溶解度を、さらなるドーパントによって高めることができる。p型導電半導体層を活性化させるとき、水素は、p型導電層の上に配置されているn型導電半導体層を通り抜けることができる。n型導電半導体層を通じての水素の拡散は、さらなるドーパントによって単純化することもできる。
【0010】
一構造形態においては、p型導電半導体層とn型導電半導体層との間に、放射の発生を目的とする活性領域、もしくはトンネル接合(tunnel contact)、またはその両方が形成されている。言い換えれば、重要な機能を果たすpn接合は、p型導電半導体層とn型導電半導体層との間に位置している。このような機能pn接合は、放射を発生させる役割を果たす(活性領域の場合)、または、p型ドープ層とn型ドープ層とを電気的に接続する役割を果たす(トンネル接合の場合)。この場合、トンネル接合は、例えば、高濃度にp型ドープされたトンネル層および高濃度にn型ドープされたトンネル層を備えていることができる。
【0011】
半導体ボディの実施形態においては、p型導電半導体層は、少なくとも1層のさらなる半導体層によって覆われている。このさらなる半導体層は、例えば、放射を発生させる目的で設けられている活性領域を有する半導体層、またはトンネル接合を有する半導体層である。いずれにしても、p型導電半導体層は埋め込まれた位置にあり、半導体ボディの外側には位置していない、すなわち、p型導電半導体層は露出していない。
【0012】
半導体ボディの一構造形態においては、p型導電半導体層は、活性領域とキャリアの間、または活性領域と成長基板の間に配置される。n型ドーパントおよびさらなるドーパントを有するn型導電半導体層は、p型導電半導体層とは反対側の活性領域の面に配置される。いずれの場合にも、p型導電半導体層は埋め込まれた位置にあり、半導体ボディの外側から自由にはアクセスできない。
【0013】
半導体ボディの一構造形態においては、n型導電半導体層は、少なくとも5nm、好ましくは少なくとも10nm、特に好ましくは少なくとも20nmの厚さを有する。さらなるドーパントを含んでいない(すなわちn型ドーパントのみを含んだ)n型導電半導体層は、水素に対して不透過性である。さらなるドーパントを加えることによってのみ、この層が水素に対して透過性になる。この実施形態の場合、n型導電半導体層の厚さを20nm以上とすることができ、これによって、例えばn型導電半導体層の横方向導電率が向上し、これは有利である。
【0014】
半導体ボディは、窒化物化合物半導体材料をベースとしていることが好ましい。
【0015】
本文書において、「窒化物化合物半導体をベースとしている」とは、エピタキシャル活性積層体またはその少なくとも1層が、III−V族窒化物化合物半導体材料、好ましくはAlGaIn1−n−mN(0≦n≦1、0≦m≦1、n+m≦1)を備えていることを意味する。この材料は、上の化学式に従った数学的に正確な組成を有する必要はない。そうではなく、この材料は、AlGaIn1−n−mN材料の物理特性を実質的に変化させることのない1つまたは複数のドーパントと追加の構成成分とを備えていることができる。しかしながら、説明を簡潔にする目的で、上の化学式は、結晶格子の本質的な構成成分(Al、Ga、In、N)のみを含んでおり、これらの構成成分は、その一部分をわずかな量のさらなる物質によって置き換えることができる。
【0016】
好ましい構造形態においては、さらなるドーパントは、n型導電半導体層において、この層の水素に対する透過性が増大するように、材料および濃度に関して設定されている。p型導電半導体層を活性化させるとき、水素はn型導電半導体層を容易に通り抜けることができる。このようにすることで、p型導電半導体層の活性化率を高めることができる。この場合、さらなるドーパントによって、n型導電半導体層における水素の溶解度を高めることができる。
【0017】
さらなる好ましい構造形態においては、n型導電半導体層におけるさらなるドーパントは、アクセプタとしての役割を果たす。
【0018】
窒化物化合物半導体材料におけるアクセプタとして適している元素は、元素周期表の第I族および第II族の元素である。第III族の元素の格子位置(lattice site)においてこのような元素を結晶に組み入れることによって、半導体材料のp型導電性を高めることができる。
【0019】
さらなるドーパントがアクセプタとしての役割を果たす結果として、n型ドーピングの一部分がさらなるドーパントによって中和される。n型導電半導体層においてはn型ドーピングの一部分が中和されるが、さらなるアクセプタとしてのさらなるドーパントによって、p型導電半導体層においてはp型ドーパントの活性化率が高まるため、全体として半導体ボディのオプトエレクトロニクス特性が向上することが判明した。
【0020】
好ましい構造形態においては、さらなるドーパントはマグネシウムである。n型導電半導体層に導入されるマグネシウム原子によって、特に、n型導電半導体層における水素の溶解度が局所的に上昇する。水素はn型導電半導体層を通ってより容易に拡散し、したがって成長基板とは反対側の半導体ボディの端面に達し、さらに好ましくは端面から出て行く。
【0021】
さらなる構造形態においては、n型導電半導体層のさらなるドーパントは、p型導電半導体層のp型ドーパントと同じである。特に、さらなるドーパントおよびp型ドーパントは、いずれもマグネシウムである。
【0022】
さらなるドーパントの濃度は、n型ドーパントの濃度の最大で50%であることが好ましい。さらなるドーパントのドーパント濃度がn型ドーパントの最大で50%であるとき、n型ドーピングが過度に中和される結果として半導体ボディのオプトエレクトロニクス特性が大きく低下することを回避できる。
【0023】
さらには、n型導電半導体層におけるさらなるドーパントの濃度は、少なくとも1×1016cm−3であることが好ましい。特に、この濃度は、1×1017cm−3〜5×1018cm−3の範囲(両端値を含む)、特に好ましくは1×1017cm−3〜2×1018cm−3の範囲(両端値を含む)である。このようにすることで、n型導電半導体層の光学品質が大きく損なわれることなく、n型導電半導体層の水素に対する透過性を高めることができる。
【0024】
半導体ボディは、放射の発生を目的とする活性領域を備えていることが好ましい。この活性領域は、特に、p型導電半導体層とn型導電半導体層との間に設けることができる。
【0025】
好ましいさらなる発展形態においては、半導体ボディはさらなる活性領域を備えており、活性領域およびさらなる活性領域のそれぞれが、放射の発生を目的としている。さらなる活性領域によって、半導体ボディのベース領域(base area)を同じままで、発生させることのできる総放射出力を増大させることができる。
【0026】
特に、活性領域とさらなる活性領域との間にn型導電半導体層を設けることができる。半導体ボディの作製時、n型導電半導体層によって覆われているp型導電半導体層の活性化率が高まる。
【0027】
半導体チップは、半導体ボディによって形成することができる。半導体チップは、例えば、発光ダイオードチップとして、またはレーザダイオードチップとして具体化することができる。
【0028】
好ましい構造形態においては、半導体ボディの成長基板が、完全に、または少なくとも一部分が除去されている。このような半導体チップは、薄膜半導体チップとしても知られている。
【0029】
薄膜半導体チップ、例えば薄膜発光ダイオードチップは、本出願の目的において、以下の特徴的な構造形態の少なくとも1つによって、さらに区別することができる。
− 活性領域を有する半導体積層体を備えている半導体ボディの(特に、エピタキシャル積層体の)第1の主面(キャリア要素に面している)に、ミラー層が堆積または形成されており(例えば半導体層にブラッグミラーとして組み込まれている)、このミラー層が、半導体積層体において発生する放射の少なくとも一部分を半導体積層体の方に反射する。
− 半導体積層体の厚さは、20μm以下の範囲、特に10μm以下の範囲である。
− 半導体積層体は、少なくとも一面が混合構造(intermixing structure)を備えている少なくとも1層の半導体層を含んでおり、これによって、理想的には半導体積層体における近似的に光のエルゴード分布につながり、すなわち、実質的にエルゴード的確率過程である散乱挙動を示す。
【0030】
薄膜発光ダイオードチップの基本原理は、例えば非特許文献1に記載されており、この点に関するこの文書の開示内容は、参照によって本出願に組み入れられている。
【0031】
n型導電半導体層およびp型導電半導体層を有する半導体ボディを製造する方法においては、一実施形態によると、p型ドーパントおよび水素を含んでいる半導体層を堆積させる。好ましくはこのp型導電半導体層の上にn型導電半導体層を堆積させ、n型導電半導体層はn型ドーパントおよびさらなるドーパントを含んでいる。p型導電半導体層を形成するため、半導体層のp型ドーパントを活性化させ、p型導電半導体層からの水素はn型導電半導体層を通り抜ける。
【0032】
このようにすることで、p型導電半導体層の活性化率が高い半導体チップの製造方法が、簡単に達成される。
【0033】
活性化は、熱的に行うことが好ましい。半導体ボディを加熱することによって、半導体ボディから水素を簡単に追い出すことができる。
【0034】
半導体層の上にn型導電半導体層を堆積させることができ、この場合、n型導電半導体層は半導体層を完全に覆うことができる。n型導電半導体層の水素に対する透過性が高められているため、特に完全に埋め込まれた位置にあるp型導電半導体層も極めて効率的に活性化させることができる。このようにして、p型導電半導体層が活性領域およびn型導電半導体層より前に堆積される半導体ボディを、より容易に堆積させることができる。したがって、この場合、p型導電半導体層は、n型導電半導体層よりも成長基板に近い位置にある。
【0035】
半導体ボディの一構造形態においては、半導体ボディは、以下の積層体を有する極性が逆の構造、を備えている。すなわち、半導体ボディは成長基板を備えており、成長基板の上にp型導電半導体層が配置されている。成長基板とは反対側のp型導電半導体層の面に、活性領域が配置されている。p型導電半導体層とは反対側の活性領域の面に、n型ドーパントおよびさらなるドーパントを有するn型導電半導体層が配置されている。このような「極性が逆の」構造は、例えば、特許文献1に記載されており、この文書の開示内容は参照によって本出願に組み入れられている。
【0036】
極性が逆の構造の場合にも、p型導電半導体層は埋め込まれた状態にあり、すなわち、さらなる半導体層によって覆われている。したがって、p型導電半導体層を活性化させるとき、水素は、半導体ボディから出て行くためには、さらなる半導体層、特に、n型導電半導体層を通り抜けなければならない。この通り抜けは、n型導電半導体層を、さらなるドーパント(例えば、p型導電半導体層においても使用されるp型ドーパント)によって共ドープする結果として可能になっている。
【0037】
特に、窒化物半導体材料をベースとする半導体ボディの場合、積層体として、最初にn型導電半導体層、次に活性領域、次にp型導電半導体層が堆積されている結果として、ピエゾ電界が発生し、これによって活性領域の中への電荷キャリアの注入がより困難になる。この結果として、このような半導体ボディを有する半導体チップの内部量子効率は、半導体チップに印加される電流の密度に伴って急激に低下する。
【0038】
それに対して、最初にp型導電半導体層、次に活性領域、次にn型導電半導体層が堆積されている積層体では、活性領域における電荷キャリアの閉じ込めを促進する目的で、ピエゾ電界の極性を利用することができる。したがって、この順序の多層構造では、ピエゾ電界によって、活性領域における電荷キャリアの閉じ込めが改善される。これによって、内部量子効率が電流密度とは実質的に無関係になる。
【0039】
特に、埋め込まれた位置にあるp型導電半導体層がマグネシウムによってドープされている場合、この層の上に位置するn型導電半導体層の水素に対する透過性が高められているため、p型導電半導体層の活性化を改善することができる。
【0040】
上に説明した方法は、その前に説明した半導体ボディを製造するのに特に適している。したがって、半導体ボディに関連して記載した特徴・形状は、製造方法においても使用することができ、その逆も同様である。
【0041】
さらなる特徴、有利な構造形態、および有利な態様は、図面を参照しながらの以下の例示的な実施形態の説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】半導体ボディの第1の例示的な実施形態の概略的な断面図である。
図2】半導体ボディを有する半導体チップの第1の例示的な実施形態の概略的な断面図である。
図3】半導体ボディの第2の例示的な実施形態の概略的な断面図である。
図4A】半導体ボディを製造する方法の例示的な実施形態を中間ステップによって示しており、各ステップは概略的な断面図として示してある。
図4B】半導体ボディを製造する方法の例示的な実施形態を中間ステップによって示しており、各ステップは概略的な断面図として示してある。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図面において、同じ要素、類似する要素、または同じ機能の要素には、同じ参照数字を付してある。
【0044】
各図は概略的に描いてあり、したがって、必ずしも正しい縮尺ではない。むしろ、比較的小さい要素、特に層の厚さは、明確性を目的として誇張した大きさで描いてある。
【0045】
図1は、半導体ボディの第1の例示的な実施形態を断面図として概略的に示している。半導体ボディ2は、n型導電半導体層21およびp型導電半導体層22を備えている。n型導電半導体層とp型導電半導体層との間には、放射の発生を目的とする活性領域20が設けられている。
【0046】
図1に関連して上述した積層体は、例えば、前に説明したように極性が逆の構造を備えており、すなわち、成長方向における層の順序は、p型導電層22、活性領域20、n型導電層21である。この場合、成長方向は、半導体ボディの結晶のc軸に平行であることが好ましい。
【0047】
この積層体では、活性領域20における電荷キャリアの閉じ込めを促進するため、半導体ボディ10に形成されるピエゾ電界の極性を利用する。この積層体では、ピエゾ電界によって、活性領域20における電荷キャリアの閉じ込めが改善される。これによって、活性領域20における例えば多重量子井戸の内部量子効率が、電流密度とは実質的に無関係になる。
【0048】
半導体ボディ2の半導体層は、成長基板50の上にエピタキシャルに(例えばMOVPEまたはMBEによって)堆積されていることが好ましい。
【0049】
半導体ボディ2は、窒化物化合物半導体材料をベースとしており、例えば、紫外放射、青色放射、または緑色放射を発生させる目的で設けることができる。
【0050】
成長基板としては、サファイア、炭化ケイ素、窒化ガリウム、シリコン、透明酸化物(例えばZnO)、またはガラスが適している。
【0051】
p型導電半導体層22は、p型ドーパントとしてマグネシウムを含んでいる。n型導電半導体層21は、n型ドーパント(例えばシリコン)を含んでいる。
【0052】
さらには、n型導電半導体層21はさらなるドーパントを含んでいる。具体的には、n型導電半導体層のさらなるドーパントとしては、マグネシウムが特に適している。n型導電半導体層21の水素に対する透過性が、さらなるドーパントによって高まる。このように、さらなるドーパントは、p型導電半導体層22のp型ドーパントに相当するものでよい。
【0053】
したがって、半導体層220に入り込んでいる水素は、n型導電半導体層21を容易に通り抜けて半導体ボディ2から出て行くことができる。このようにすることで、p型導電半導体層22の活性化率を、単純かつ再現可能な方法で向上させることができる。
【0054】
n型導電半導体層21におけるさらなるドーパントの濃度は、好ましくは少なくとも1×1016cm−3、特に好ましくは1×1017cm−3〜5×1018cm−3の範囲(両端値を含む)、最も好ましくは1×1017cm−3〜2×1018cm−3の範囲(両端値を含む)である。このようにして、n型導電半導体層の水素に対する良好な透過性と、n型導電半導体層の良好な光学品質とを同時に達成することが可能である。
【0055】
さらなるドーパントの濃度は、n型ドーパントの濃度に対して最大で50%であることが好ましい。このようにして、さらなるドーパントによるn型ドーパントの過度な中和を回避することができる。
【0056】
p型導電半導体層22は、成長基板50とn型導電半導体層21との間に配置されている。n型導電半導体層は、成長基板50とは反対側のp型導電半導体層22の面を覆っている。したがって、p型導電半導体層は、活性領域20およびn型導電半導体層の両方より前に堆積されている埋め込まれた状態の半導体層として実施されている。
【0057】
p型導電半導体層22、活性領域20、n型導電半導体層21という順序の結果として、電荷キャリアが活性領域の中により容易に注入され、さらには、発生するピエゾ電界によって活性領域における電荷キャリアの再結合が促進されるように、半導体ボディを具体化することができる。さらには、p型導電半導体層が高い活性化率を有することができ、したがって、このような半導体ボディを有する半導体チップは、改良されたオプトエレクトロニクス特性を示すことができる。
【0058】
図2は、半導体ボディの例示的な実施形態を断面図として概略的に示している。半導体チップ1は、半導体ボディ2を備えている。この半導体ボディは、特に、図1に関連して説明したような構造とすることができる。
【0059】
半導体ボディ2はキャリア5の上に配置されており、キャリア5は、半導体ボディ2の半導体積層体の成長基板とは異なる。半導体ボディ2は、結合層6によってキャリア5に機械的に安定的な状態に結合されている。結合層6は、例えば、はんだ層または導電性の接着層とすることができる。
【0060】
さらには、半導体チップ1は、第1のコンタクト71および第2のコンタクト72を備えている。これらのコンタクトは、半導体チップ1に外側から電気的に接続することを目的としており、半導体チップの動作時、電荷キャリアが互いに異なる面から活性領域20の中に注入されてそこで再結合して放射を放出することができるように、配置されている。
【0061】
p型導電半導体層22と第2のコンタクト72の間に電流拡散層を設けることができる(図に明示的には示していない)。これによって、単純な方法で、電流をp型導電半導体層を介して活性領域20の中に横方向に一様に印加することが可能である。
【0062】
電流拡散層は、第2のコンタクトを横方向に超えて延在していることが好ましい。電流拡散層は、p型導電半導体層22を完全に、または実質的に完全に覆っていることが好ましい。
【0063】
電流拡散層は、さらなるn型導電半導体層として具体化することができ、p型導電半導体層よりも高い横方向導電率を示すことがさらに好ましい。このさらなるn型導電半導体層は、自身とp型導電半導体層22との間にトンネル接合が形成されるような構造であることが好ましく、半導体チップの動作時、電荷キャリアは第2のコンタクト72からこのトンネル接合を介してp型導電半導体層22の中に入ることができる。
【0064】
これに代えて、電流拡散層を半導体ボディの外側に配置することができる。このような電流拡散層は、あらかじめ作製された半導体ボディに、例えば蒸着またはスパッタリングによって堆積させることができる。
【0065】
この場合、電流拡散層は、例えば、TCO(透明導電性酸化物)材料(例:ITO(インジウムスズ酸化物)、ZnO)を含んでいる、またはこのような材料から成ることができる。
【0066】
金属の電流拡散層であって、活性領域において発生する放射に対して透明である、または少なくとも半透明であるような程度まで十分に薄い電流拡散層も実施可能である。
【0067】
当然ながら、電流拡散層は、多層構造とする、例えば、TCO層および金属層を備えていることもできる。
【0068】
半導体ボディ2とキャリア5との間にはミラー層8が形成されている。半導体チップ1の動作時に活性領域20において発生してキャリア5の方向に放出される放射を、ミラー層で反射することができる。したがって、放射がキャリアにおいて吸収される危険性を回避することができる。
【0069】
ミラー層8は、例えば、金属(例:銀、アルミニウム、ロジウム、パラジウム)を含んでいる、またはこのような材料から成ることができる。
【0070】
キャリア5は、導電性であることが好ましい。例えば、キャリア5は、半導体材料(例:ゲルマニウム、ガリウムヒ素、シリコン)を含んでいる、またはこのような材料から成ることができる。これに代えて、キャリア5は、セラミック(例:窒化アルミニウム、窒化ホウ素)を含んでいる、またはこのような材料から成ることもできる。
【0071】
図2に示した例示的な実施形態においては、半導体チップ1は、単なる一例として、薄膜発光ダイオードチップの形をとっている。記載した例示的な実施形態とは異なる形態として、半導体ボディ2の成長基板を半導体チップに残しておくこともできる。例えば、成長基板を、その一部分または全体を薄くする、あるいは一部分を除去することができる。
【0072】
さらには、外側からの半導体チップとの電気的接続が片側からのみ形成されるように、コンタクト71およびコンタクト72を半導体チップの同じ側に配置することもできる。
【0073】
コンタクト71,72は、導電性であることが有利であり、金属、例えば、チタン、白金、ニッケル、金、アルミニウム、ロジウム、パラジウム、あるいはこれらの金属の少なくとも1つを有する金属合金を含んでいることがさらに好ましい。
【0074】
図3は、半導体ボディの第2の例示的な実施形態を断面図として概略的に示している。この第2の例示的な実施形態は、図1に関連して説明した第1の例示的な実施形態に実質的に対応している。
【0075】
第1の例示的な実施形態とは異なり、半導体ボディ2は、さらなる活性領域25と、さらなるn型導電半導体層26と、さらなるp型導電半導体層27とを備えている。活性領域20とさらなる活性領域25との間には、第1のトンネル層23および第2のトンネル層24が配置されている。第1のトンネル層および第2のトンネル層はトンネル接合を形成しており、活性領域20,25はこのトンネル接合を介して互いに直列に電気的に相互接続されている。さらなる活性領域によって、半導体ボディにおいて発生させることのできる総放射出力を増大させることができる。トンネル層23およびトンネル層24は、導電型に関して互いに異なっていることが好ましく、高いドーピング濃度、特に好ましくは少なくとも1×1019cm−3を示すことがさらに好ましい。
【0076】
図1に関連して説明した第1の例示的な実施形態とは異なり、p型導電半導体層22は、成長基板50とは反対のn型導電半導体層21の側に配置されている。n型導電半導体層21は、この例示的な実施形態においては、成長基板50とは反対のp型導電半導体層27の側を覆っている。したがって、p型導電半導体層22は、成長基板上にn型導電半導体層21より後に堆積されている。
【0077】
この場合、さらなるp型導電半導体層27は、p型導電半導体層22と実質的に同じ構造とすることができる。p型導電半導体層22は、活性化するとき露出しており、したがって、水素はこの半導体層から妨げられることなく出て行くことができる。
【0078】
さらなるp型導電半導体層27は、成長基板50とは反対の側がn型導電半導体層21によって覆われている。n型導電半導体層21は、自身に含まれているさらなるドーパントのため水素に対する高い透過性を示し、したがって、さらなるp型導電半導体層27の活性化時、水素はn型導電半導体層21を通り抜けることができる。
【0079】
その一方で、さらなるn型導電半導体層26と成長基板50との間には、p型導電半導体層が設けられてない。したがって、さらなるn型導電半導体層26については、水素の透過性の重要性は低い。したがって、このさらなるn型導電半導体層においては、さらなるドーパントを省くことができる。
【0080】
図4Aおよび図4Bは、半導体ボディを製造する方法の例示的な実施形態を、中間ステップによって概略的に示している。この方法は、一例として、図1に関連して説明したように具体化される半導体ボディの製造に関連して説明する。
【0081】
p型ドーパントおよび水素を含んでいる半導体層220を成長基板50の上に堆積させる。この半導体層の上に、活性領域20とn型導電半導体層21とを堆積させる。半導体層、活性領域20、およびn型導電半導体層21は、半導体ボディ2を形成している。半導体ボディを堆積させた後、半導体層220を活性化させる。このステップは、例えば熱的に行うことができる。活性化時、図4Bに矢印によって概略的に示したように、水素は半導体層から出て活性領域およびn型導電半導体層21を通って拡散することができる。このようにして、成長基板とは反対側において半導体ボディ2から水素を追い出すことができる。
【0082】
本特許出願は、独国特許出願第102008028345.2号(2008年6月13日)の優先権を主張し、この文書の開示内容は参照によって本出願に組み入れられている。
【0083】
ここまで、本発明について例示的な実施形態に関連して説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明は、任意の新規の特徴および特徴の任意の組合せを包含しており、特に、請求項における特徴の任意の組合せを含んでいる。これらの特徴または特徴の組合せは、それ自体が請求項あるいは例示的な実施形態に明示的に記載されていない場合であっても、本発明に含まれる。
図1
図2
図3
図4A
図4B