(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661620
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】かさ歯車の製造
(51)【国際特許分類】
B23F 9/08 20060101AFI20150108BHJP
B23F 9/02 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
B23F9/08
B23F9/02
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-516284(P2011-516284)
(86)(22)【出願日】2009年6月23日
(65)【公表番号】特表2011-525433(P2011-525433A)
(43)【公表日】2011年9月22日
(86)【国際出願番号】US2009003720
(87)【国際公開番号】WO2009157988
(87)【国際公開日】20091230
【審査請求日】2012年4月5日
(31)【優先権主張番号】61/132,804
(32)【優先日】2008年6月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500094370
【氏名又は名称】ザ グリーソン ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100089897
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正
(74)【代理人】
【識別番号】100072822
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100087217
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100123180
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 克則
(74)【代理人】
【識別番号】100137475
【弁理士】
【氏名又は名称】金井 建
(74)【代理人】
【識別番号】100160266
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140028
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 義光
(72)【発明者】
【氏名】シュタットフェルト、ヘルマン、ジェイ.
【審査官】
大川 登志男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−269816(JP,A)
【文献】
特開2005−262439(JP,A)
【文献】
特開昭61−168420(JP,A)
【文献】
特開昭56−015920(JP,A)
【文献】
特公昭16−001860(JP,B1)
【文献】
特開2007−326213(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第00793831(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 9/08
B23F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機械軸を有する金属除去機械の工具軸の周りで、工作物に係合するようにされ、回転可能な加工工具を用いたかさ歯車の製造方法であって、前記金属除去機械は、CNC自由形状かさ歯車機械、又は5軸を有するCNCフライス盤であり、
かさ歯車創成機械で前記歯車が製造されるように、工具中心位置を含む機械セットアップ位置を定義するステップと、
前記工具軸が作成すべき歯溝の基準プロファイル中心線と一致する又は当該基準プロファイル中心線に対してある工具傾斜角度で配向されるように、前記加工工具を前記工具中心位置からオフセット工具位置に位置決めするステップと、
前記加工工具を回転させ、前記加工工具を前記工作物と係合させるステップと、
前記加工工具と前記工作物の間の相対運動をもたらして、前記加工工具を前記工作物の歯幅に沿って複数の経路で横断させることによって歯溝を漸次形成するステップと、
を含み、
前記加工工具は、前記各経路において円弧を辿る、
方法。
【請求項2】
前記加工工具は、テーパ・フライス工具である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記角度は、0度である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属除去機械は、CNC自由形状かさ歯車製造機械である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属除去機械は、CNC5軸フライス盤である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記各経路に先立って、前記加工工具及び工作物は、異なる創成回転位置に相対位置決めされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の経路は、前記加工工具と工作物の連続的な相対位置決めによって定義される連続創成回転運動と同時に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記工作物の前記歯幅に沿った前記加工工具の横断速度とタイミング合わせされた状態で、前記工作物を回転させるステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記加工工具は、円筒状工具である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記加工工具は、ペリフェラル工具である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記加工工具は、切削工具である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記加工工具は、研削工具である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記角度は、0度〜−90度の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記オフセット工具位置は、前記工具中心位置から前記工作物の前記すくい面幅の中心まで延びるオフセット・ベクトルによって定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記各経路は、前記工作物の前記歯幅に沿った前記加工工具の往復方向の横断を含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、かさ歯車の製造方法に関し、特にテーパ工具を用いたかさ歯車の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
まがりばかさ歯車及びハイポイド・ギヤの製造は、いくつかの手法で実現することができる。とりわけ、以下の方法が一般に知られている。
1.ワークが回転しているときに回転する(連続割り出し)円形フェース・カッタを用いた正面ホブ切り
2.ワークが回転しているときに回転する(連続割り出し)テーパ・ホブ(
周辺カッタ)を用いた正面ホブ切り
3.ワークが回転しているときに直線的に移動する(連続割り出し又は単歯割り出し)1つ又は2つの工具を用いた成形方法
4.ワークが回転していないときに回転する(非創成式)、又はワークがロールのみを行い(創成式)連続割り出し運動を行わない(単歯割り出し)ときに回転する円形フェース・カッタを用いた正面フライス削り
5.ペンシル形状エンド・ミルを用いたユニバーサル5軸フライス削り(シングル・スロット製造)
【0003】
正面フライス削り(間欠割り出し又は単歯割り出し)プロセスでは、回転工具を工作物の所定の深さまで送り、工具を引き抜き、工作物を別の(通常は次の)歯溝位置に割り出すことにより、個々の歯溝が連続的に形成される。このような送り、引き抜き、及び割り出しの工程は、すべての歯溝が形成されるまで繰り返される。このようなタイプの正面フライス削りプロセスは、非創成プロセスとして知られている。工作物上の歯のプロファイル形状は、工具上のプロファイル形状から直接作成される。
【0004】
非創成式正面フライス削りの別法として、正面フライス削り創成プロセスが実行され得る。この創成プロセスでは、工具が所定の深さに送られた後、工作物が理論上の創成歯車と噛合して回転するようにして、工具と工作物とが創成回転(generating roll)として知られる所定の相対回転運動で共に回転する。理論上の創成歯車の歯は、工具の材料除去面によって表される。歯のプロファイル形状は、創成回転中に工具と工作物の相対運動によって形成される。このような送り、回転、引き抜き、及び割り出しの工程は、すべての歯溝が形成されるまで各歯溝毎に繰り返される。
【0005】
正面ホブ切り(連続割り出し)プロセス(非創成式又は創成式)では、工具及び工作物をタイミング合わせをして回転させ、工具を深く送ることにより、工具の1回のプランジ加工ですべての歯溝が形成される。十分な深さに達した後、創成回転が実行され得る。
【0006】
上記の方法1乃至4はよく知られており、50年以上にわたって実施されている。方法5は、複雑な自由曲面を5軸ユニバーサル・フライス盤のコンピュータ制御を用いることによって実現される。製造時間は通常、上記のプロセス1乃至4の100倍〜1000倍であり、確度は一般に、方法1乃至4を実施するのに使用される専用機械のそれよりも低くなるが、ユニバーサル・フライス盤における5軸かさ歯車機械加工の利点は、その柔軟性にある。特殊な切削工具は必要なく、かさ歯車のサイズは、利用可能な5軸フライス盤のサイズのみによって制限される。
【0007】
ユニバーサル・フライス盤上では、歯のフランク面を成形するために球状又は円筒状ミルが使用される。データ・ポスト処理では、フランク面の点と場合によっては法線ベクトルも使用して機械加工経路が計算される。機械加工経路は、ターゲット面を合理的な精度で近似する包絡経路(enveloping path)を実現するために十分正確である必要がある。包絡経路(フラット(flat))の向きは、機械加工時間及びターゲット・フランク面からの偏差を最小限に抑えるために、機械加工戦略のみと結び付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,981,402号明細書
【特許文献2】米国特許第6,669,415号明細書
【特許文献3】米国特許第6,712,566号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、テーパ工具を用いたかさ歯車の製造方法に関するものである。本方法では、テーパ・フライス工具は、従来の正面フライスの中心位置からずれた位置に配置され、機械加工中は円弧経路を辿ることになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】従来の正面フライス又は研削砥石によって形成される切削又は研削チャネルを示す図である。
【
図4】従来の正面フライスと本発明のテーパ・フライスの機械セットアップ図である。
【
図5】ある瞬間の回転位置における正面フライスをシミュレーションしたときのテーパ・フライスを示す図である。
【
図6】工具の創成フラット・セクションと歯のフランク面上の創成フランクとの関係を示す図である。
【
図7】類似する正面フライスの不均等な内側ブレード角及び外側ブレード角を表す傾斜したフライス工具を示す図である。
【
図8】
図7の傾斜したフライス工具によって作成される非対称切削チャネルを示す図である。
【
図9】テーパ・フライス工具の非傾斜位置及び傾斜位置を示す図である。
【
図10】従来の正面フライス及び本発明のテーパ・フライス工具の各工具軸ベクトルの位置を示す図である。
【
図11】本発明に従って歯のフランク面を切削する円筒状フライス工具を示す図である。
【
図12】歯元の面の切断に関する工具直径及び工具曲率半径の影響を示す図である。
【
図13】歯元の面の切断が回避されるように工具直径を
図12の場合よりも増加させた様子を示す図である。
【
図14】様々なフライス工具取り付け角(inclination angle)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では単なる例示として、本発明を表す好ましい諸実施形態及び添付図面を参照しながら本発明の論述を行う。本発明の文脈では、「かさ」歯車という用語は、かさ歯車として知られるタイプの歯車、「ハイポイド」ギヤ、ならびに「冠」歯車又は「フェース」ギヤとして知られる歯車を含むような十分に広い範囲のものと理解すべきである。
【0012】
本発明の方法は、フェース・カッタ・ヘッドと創成歯車軸とワーク軸との間の相対的位置、ならびにそれらの3つの構成部品間の運動学的関係を定義する理論上の歯車創成機械の基本機械設定に応じて、歯のフランク面を画定する。
【0013】
工作物と創成歯車の関係は、基本機械設定として知られる一群のパラメータによって定義することができる。これらの基本設定は、創成歯車及び工作物に関するサイズ及び比率を明らかにするとともに、歯車設計の共通の出発点を提供し、したがって多様なモデルの機械間で設計手順が統一されることになる。このような基本設定は、任意の時点の工具と工作物の相対位置決めをすべて記述する。
【0014】
歯車形成のための基本機械設定は当業界で知られており、以下のように特定することができる。
1.ラジアルS:クレードル軸と工具軸の間の距離;
2.傾斜角P
i:クレードル軸と工具軸の間の角度;
3.旋回角P
j:クレードル上の固定基準に対する工具軸の向き;
4.クレードル角度q:クレードル軸の周りの工具の角度位置;
5.歯底角Σ:クレードル軸に対するワーク支持体の向きを表わす;
6.摺動ベースX
b:機械の中心からワーク軸とクレードル軸の見かけの交点までの距離;
7.ヘッド設定X
p:ワーク軸とクレードル軸の見かけの交点から、工作物から一定距離に位置する点までのワーク軸に沿った距離;
8.ワーク・オフセットE
m:ワーク軸とクレードル軸の間の距離;
9.回転比率R
a:工作物の回転とクレードルの回転の比(創成プロセスで使用される);
10.工作物の回転位置W
g、及び工具の回転位置W
t(正面ホブ切りで使用される)。
【0015】
従来のスプレッド・ブレード正面フライスは、円形チャネルを共に形成する外側円錐及び内側円錐を包絡する。歯溝は一般に、円形チャネルの所定の長さを表すことが理解されるだろう。椀状の研削砥石は、1つの特定の歯車設計では切削チャネルを再現する(切削代を考慮に入れた)寸法とされる。
【0016】
図1には典型的な切削又は研削チャネル10が示され、
図2にはその断面が基準プロファイル中心線11と共に示されている。特に、大型の(例えば外径が800mmを超える)まがりばかさ歯車セットに関しては、凹凸フランクのそれぞれについて20°の圧力角を使用することが一般的である。この場合、切削チャネルの外側シルエット12及び内側シルエット14は、回転軸A
Rに対して+20°及び−20°の角度を有する円錐となる。
【0017】
円錐角が20°であり、歯先円直径が正面フライス・ヘッドと同等の点幅値P
wを有するテーパ・フライス工具16(
図3)は、切削チャネル10に嵌合する。適切な刃先半径及び直線又は曲線プロファイルをフライス工具16に与えることにより、フライス工具16の断面によって切削チャネル10の断面が再現される。工具上にはプロチュバランスのような追加的な特徴を含めることもできる。
【0018】
このようなフライス工具は、米国特許第4,981,402号明細書、同第6,669,415号明細書、同第6,712,566号明細書等に開示される自由形状かさ歯車切削又は研削機械の工具スピンドル内に位置決めされ得る。これらの米国特許の開示内容は、本明細書に援用するものとする。切削又は研削機械軸は、既知の正面フライス又は研削砥石を利用した従来のプロセスでかさ歯車を創成するのに実行される様式と同じ(又はほぼ同じ)様式で、ワークと工具の運動学的関係を含めた運動サイクルを実行することができる。
【0019】
一方、本発明のテーパ・フライス工具は、従来の方法における正面フライスの中心と同じ位置に配置される。フランク面形成(切削及び創成)作用を再現するために、本テーパ・フライス工具を適応させるにあたっては標準的なセットアップ及び切削サイクルへの2つの追加事項が必要となる。第1に、フライス工具をオフセット位置(
図4の「a」)に移動させる必要がある。オフセット・ベクトルは、平均カッタ・ポイント動径(average cutter point radius vector)と同一であり、すくい面幅の中心(
図4の点「a」)に配置され得る。第2に、フライス工具は、正面フライスの平面内の円弧を辿る必要がある。
図4は、正面フライスの回転面が平面X−Zと同一である場合を示している。
【0020】
従来の切削機械セットアップでは、ベクトルE
xの先端の位置にカッタ中心が位置決めされる(
図4)。本発明に係るテーパ・フライスによる切削を行うために、カッタ・スピンドルの中心は、
図4の弧b−a−cの経路に沿って位置決めされ、切削機械が1つの創成回転位置にあるときに位置b−a−c間(及びその逆)で移動可能である。次の回転位置でもb−a−cに沿った移動を繰り返す必要がある。機械軸がb−a−c間の工具中心の高速振り子運動を実行する間に、連続的な低速創成回転運動を使用することも可能である。無論、非創成プロセス(即ち創成回転がない場合)では、歯溝の切削時に単一の創成回転位置のみが利用されることが理解される。
【0021】
本発明の方法は、標準的な切削サイクルの標準的な自由形状切削機械を利用することができる。部品加工プログラムは、次式に示す各フライス位置b、a、cに関する付加項を含む。
【数1】
【0022】
歯のプロファイルを創成するために、理論上の創成歯車を回転させる必要がある。この回転は、
図4のY軸(紙面垂直方向)の周りのベクトルE
xの回転に等しい。
【0023】
本発明のプロセスは、自由形状かさ歯車切削機械を用いて、あるいはかさ歯車切削機械の動程を修正した上で実行することができる。動程を修正することにより、非常に大きいかさ歯車を比較的小さい機械上で製造することを可能にする。
【0024】
本発明のプロセスは、5軸フライス盤上で実施することも可能である。しかしながら、自由形状かさ歯車機械の基本的な構造及び精密さは、かさ歯車切削にとって望ましいものである。
【0025】
本発明の方法の1つの利点は、従来の正面フライスによって作成されるかさ歯車の形状と同一の形状のかさ歯車が製造されることである。本発明の方法と正面フライス方法は、創成フラットの特徴及び角度方向も同じである。
図5は、ある瞬間の回転位置18におけるフェース・カッタをシミュレーションしたときの円錐状フライス工具16の3次元表現を示す。フェース・カッタはこの回転位置においてフランク毎に1つの創成フラット(
図5の外側シルエット上に示すとおり)を作成するので、これと同一のフラットがテーパ・フライス工具によって作成される。回転運動の進行に従って更なるフラットが作成される。
図6は、工具シルエットの創成フラット・セクションがフランク面上の実際の創成フラットとどのような関係を有するかを示す。
【0026】
ユニバーサル5軸機械(上記の従来技術の方法5)の創成フラット方向は、正面フライス方法のフラット方向と異なる。ユニバーサル5軸機械方法では、多くの場合様々な表面構造が導入され、その結果望ましくない回転状態がもたらされる。
【0027】
本発明の方法の2つ目の利点は、例えばソフト切削に標準的なサイクルを適用する(振り子運動に重ね合わせる)ことができ、その結果、製造時間が従来のプロセス1及び4の約10倍〜100倍となることである。この製造時間は、殆どの場合、既知のプロセス5に従ってエンド・ミルを使用するときに要する5軸ユニバーサル・フライス盤の製造時間の約10%にすぎない。同時に、本発明の方法による歯車の精密さは、5軸ユニバーサルCNCフライス・センタに対する歯車機械工具コンセプトの使用により、従来のプロセス1及び4に匹敵するものとなる。
【0028】
本発明の3つ目の利点は、フェース・カッタを用いる切削と研削の互換性である。すべての既存の設計及び最適化コンピュータ・プログラムが使用可能である。また、公称データ計算、補正マトリクス、及び定評と実績のある補正ソフトウェア(例えばニューヨーク州ロチェスター所在のGleason Works社が販売するG−AGE(商標)歯車補正ソフトウェア)を適用することができる。
【0029】
類似するフェース・カッタ・プロセスの内側ブレード角及び外側ブレード角が不均等な場合も、フライス工具がκ
mill−tool=−(α
IB+α
OB)/2だけ傾けられた場合に、それ自体に含まれるブレード角の半分(α
IB+α
OB)/2を円錐角としてテーパ・フライスを使用することができる。
【0030】
一般的な場合におけるテーパ・フライス工具の位置の計算は、
図7、
図8、及び
図9に示される幾何学的関係に基づいて以下のように計算することができる。
【0031】
入力:
−カッタ傾斜=Wx
−カッタ旋回=Wy
−平均カッタ半径=Rw
−カッタ位相角基準値=α
0
−カッタ位相角=α
x
−回転位置=q
−ブレード基準高さ=H
R
−平均円錐距離=R
m
−摺動ベース位置=X
B
−追加的なフライス工具傾斜=κ
Mill_Tool
−ラジアル設定=S
−基準位置のカッタ半径ベクトル=Rw(α
0)
−歯車面角=A
F
【0032】
【数2】
上式で、
【数3】
w
X=傾斜角
w
Y=旋回角−q
i
【0033】
従来のカッタ軸ベクトル
【数4】
からのフライス工具軸ベクトル
【数5】
の計算は、次式及び
図10に示すとおりである。
【数6】
上式で、
【数7】
【数8】
上式で、
【数9】
【0034】
従来の基本設定からテーパ・フライス工具の設定への変換を実行した後は、5軸CNC機械のすべてのデータを準備するために以下のステップを適用することができる。
【0035】
q
start〜q
endの範囲の回転位置増分数(例えば50増分)を選択する。即ち、
q
1,q
2,q
3,...,q
51
ただし、
q
1=q
start;
q
2=q
start+Δq;
q
3=q
start+2Δq;
q
51=q
start+50Δq
且つ
Δq→Δq=(q
end−q
start)/50
【0036】
回転位置毎に工具位置の式を適用する(例えば工具位置増分を200とする)。即ち、
α
1,α
2,α
3,...,α
201
ただし、
α
1=α
0−A
F/2;
α
2=α
1+Δα;
α
3=α
1+2Δα;
α
201=α
1+200Δα
且つ
Δα=A
F/200
【0037】
ここで説明した方法は、単歯割り出しプロセスに関して示したものである。本方法は、連続割り出しプロセスに適用することもできる。カッタ回転ωは、回転及びカッタ回転角(等しいテーパ・ミル位置)が離散的な増分において観察された上記の場合(5軸又は6軸機械の機能にとって現実的である)と同様、次式に示すように、ワークの回転とタイミング合わせをした関係でワーク上の回転運動に重ね合わされ(連続モード)、又は離散的な回転位置で適用される。
ω
work=Ω
Cradle/R
a+ω
Cutter(Z
tool/Z
work) (25)
上式で、
ω
work=ワークの角速度
Ω
Cradle=クレードルの角速度
R
a=回転比率
ω
Cutter=カッタの角速度
Z
tool=工具の開始数
Z
work=ワークの歯数
又は
δ
work,i,j=δ
work,start+q
i/R
A+α
j(Z
tool/Z
work) (26)
上式で、
δ
work,i,j=実際のワーク回転角
δ
work,start=開始位置のワーク回転角
q
i=クレードル角度
R
a=回転比率
α
j=カッタ位相角
Z
tool=工具の開始数
Z
work=ワークの歯数
【0038】
しかしながら、回転位置の離散的な観察及び処理により、例えば以下のようなループ・データ及び位置決め処理が導かれる。
【数10】
【0039】
最後に提示した数式は、連続割り出し機械加工と単回割り出し機械加工のいずれにおいても有効であり、どちらの場合にも適用可能である。これらの式は、非対称切削チャネル20(
図8)の場合にも対称切削チャネル10(
図1)の場合にも適用可能である。対称切削チャネル10は、より一般的な非対称切削チャネル(κ
mill_tool=0)の特殊なケースにすぎない。
【0040】
テーパ・フライス工具の位置決め及び移動のための式の導出には、いくつかの可能性が存在する。しかしながら、三角法計算は、その解法において回転、工具回転、及びワーク回転角、ならびに線形定数に依存する組み込み関数を示す。ここで示される導関数は、創成歯車に関する基本機械設定を使用する。結果として得られるベクトルE
x mill及びY
cut millは、以下の基本設定に変換することができる。
【数11】
【0041】
例えば以下のような追加的な基本設定は、従来の工具からテーパ・ミルへの変換の際も変化しない。
X
P(ヘッド設定)
E
M(オフセット)
γ
M(歯底角)
R
a(回転比率)
【0042】
上述した基本設定は、その開示内容を本明細書に援用する米国特許第4,981,402号に開示される式を使用して5軸機械調整システムに変換することができる。
【0043】
本発明の機械加工方法は、
図11に示すように、非テーパ・フライス工具(例えば円筒状工具)を用いた切削、及び片側のフランク面(例えば外側フランク)のみの機械加工も考慮している。本例の工具取り付け角は、−α
OBである。かかる工具の最大直径は、
図11に示すように制限される。
図11に示す直径を超えると、反対側のフランク(内側フランク)の切断が起きる。このような円筒状工具を用いると、工具取り付け角の符号を変更すれば(+α
OB)、第2セットの機械加工経路(pass)において反対側のフランクを機械加工することが可能となる。正しい定義のために、ベクトルR
w2は基準プロファイルの中心線を指すことを確認しておく。その好ましい位置は、それ自体が配置される非対称圧力角がラジアルである場合、基準プロファイルの点幅を2等分するために歯の中心にくることになる。点幅は、正面フライスの場合は軸平面、正面ホブ切りカッタの場合はオフセット平面における基準チャネルの底部の幅である。フライス工具は、本発明の方法の機能に影響を与えない様々な基準を使用して配置することができる。
【0044】
工具直径をある程度まで増加させると、第1のフランク(OB−flank:
図12参照)と同時に第2のフランク(IB)も機械加工することが可能となる。しかしながら、フランクの切断のない機械加工を実現するにあたり、曲率半径に関する要件は以下のようになる。
ρ
OB Tip≦ρ
min OB (
図12で与えられている)
ρ
OB Flank≦ρ
max OB (
図12で与えられている)
ρ
IB Tip≧ρ
max IB (
図12で与えられていない)
ρ
IB Flank≧ρ
min IB (
図12で与えられていない)
【0045】
切削工具の直径は、回転軸が原点ρ
min OB(当初の切削工具軸A
FCとの交点)と交わるまで増加させる必要がある。この場合は、ρ
IB Tip=ρ
max IB、且つρ
IB Flank>ρ
min IBが成り立つ(
図13)。
図13のκ
mill_toolは、
図11の場合と同様−α
OBである。
【0046】
回転軸が当初の工具軸と点P
ρで交わる場合は、κ
mill_toolの様々な角度が実現され得る。P
ρは、ρ
min OBの原点と決定される。その場合は、ρ
IB>ρ
max IBが常に与えられる。
図14は、κ
mill_tool=−60°,−70°,−90°のそれぞれに基づく機械加工工具ジオメトリを示す。なお、κ
mill_tool=−90°は
周辺工具を定義する。
図14のどのケース(ケース5、6、7)においても、ベクトルρ
min OBが最初に構築されている。このベクトルとフェース・カッタ工具軸A
FCとの交点は、点P
ρである。選択されたフライス工具取り付け角κ
mill_toolにより、
図14では工具軸がフェース・カッタ工具軸と点P
ρで交わることになる。これにより、可能な最小フライス工具直径は、以下の要件を満足することになる。
ρ
OB Tip≦ρ
min OB (
図14ではρ
OB Tip=ρ
min OB)
ρ
OB Flank≦ρ
max OB (
図14で与えられている)
ρ
IB Tip≧ρ
max IB (
図14で与えられている)
ρ
IB Flank≧ρ
min IB (
図14で与えられている)
【0047】
以上、本発明について好ましい諸実施形態を参照しながら説明してきたが、本発明はそれらの詳細に限定されないことを理解していただきたい。本発明は、本発明の主題に関連する技術分野の当業者に明らかとなる諸種の修正形態を含むものとする。