特許第5661636号(P5661636)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661636
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】加圧された気体媒体を貯蔵する圧力容器
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/06 20060101AFI20150108BHJP
   F17C 13/02 20060101ALI20150108BHJP
   F17C 13/12 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   F17C1/06
   F17C13/02 301Z
   F17C13/12 301Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-532517(P2011-532517)
(86)(22)【出願日】2009年10月6日
(65)【公表番号】特表2012-506519(P2012-506519A)
(43)【公表日】2012年3月15日
(86)【国際出願番号】EP2009007164
(87)【国際公開番号】WO2010046027
(87)【国際公開日】20100429
【審査請求日】2011年11月17日
(31)【優先権主張番号】102008053244.4
(32)【優先日】2008年10月25日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルド・フリードルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ポシュマン
(72)【発明者】
【氏名】エーベルハルト・シュミット‐イーン
(72)【発明者】
【氏名】ヨゼフ・ツィーガー
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−261414(JP,A)
【文献】 特開2009−216133(JP,A)
【文献】 特開2008−190699(JP,A)
【文献】 特開2009−174700(JP,A)
【文献】 特開2011−025497(JP,A)
【文献】 米国特許第03565275(US,A)
【文献】 西独国特許出願公開第02358295(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00−13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体媒体を収納する内部空間(14)を画定するライナ(12)と、該ライナ(12)を取り囲み、圧力容器(10)を形状的に安定させる被覆(16)と、を備える、加圧された気体媒体を貯蔵する圧力容器(10)であって、
前記圧力容器(10)の前記被覆(16)が少なくとも部分的に気体透過性に形成され、前記ライナ(12)を通り抜ける気体が前記被覆(16)を通って前記圧力容器(10)から漏れ出ることができること、
前記圧力容器(10)の前記被覆(16)が多孔質に形成されていること、および
前記圧力容器(10)の前記被覆(16)が、樹脂材料により結合されている繊維材料から形成され、硬化した状態の前記樹脂材料は多孔質であり、前記多孔質の前記樹脂材料は、その硬化の際に内部の応力により形成されるものであることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記圧力容器(10)の前記被覆(16)の外側にコーティング(26)が施されており、該コーティングは、少なくとも気体を通す前記被覆(16)部分において、気体透過性に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された気体媒体を貯蔵する圧力容器に関する。本発明は、特に、請求項1又は請求項5の前提部分に基づく、そのような圧力容器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような圧力容器は、複合圧力容器とも呼ばれ、例えば特許文献1から知られている。これらは、気体媒体を収納する内部空間を区切るライナと、このライナを取り囲み、圧力容器の形状安定に作用する被覆とを有している。このライナは、通常、プラスチック材からなり、被覆は繊維複合材料から形成されている。
【0003】
このような種類の圧力容器は、例えば、燃料電池システムの水素タンクとして用いられ、気体状の水素を数百バールの正圧で貯蔵することができる。
【0004】
長期間の使用年数を経て、このような複合圧力容器を処分する際、気体水素が圧力容器の被覆から比較的高い割合で流出することが確認されている。このことから、流出する水素による危険度を軽減する圧力容器が必要となる。
【0005】
さらに、特許文献2から高温の水素を収納する多層の圧力容器が知られており、この場合、壁の最内部の金属層を通り抜ける水素は、容器壁の外側の金属層の水素浸食及び/又は脆化を防ぐために、最内部の金属層の間にあるスペースから排出される。
【0006】
特許文献3は、内部タンクと外部タンクとを備える複合圧力容器を説明している。内部タンクを通り抜ける水素の浸食から外部タンクを保護し、それによって圧力容器全体の耐久性を向上させるため、内部タンクと外部タンクとの間に触媒層が設けられており、この触媒層が水素を安定した化合物に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0753700A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3308276A1号明細書
【特許文献3】特開第2007−278482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、高率で流出する気体による周辺部への危険を排除する、冒頭に述べた種類の複合圧力容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、ライナを通り抜ける気体媒体が、継続的に、低率で圧力容器から周辺に排出されることにより、長期の使用年数を経て圧力容器を処分する際に、高率で気体媒体が一気に流出するのを防ぐことによって解決される。すなわち、ライナを通過する気体がライナと被覆との間にあるポケットの中に集まっており、次に、圧力容器を処分する際にライナと被覆とが分離されて、高い割合で気体が一気に圧力容器から周辺に流出することが防止される。
【0010】
本発明の第1の視点に基づき、加圧された気体媒体を貯蔵する圧力容器は、気体媒体を収納する内部空間を限定するライナと、このライナを取り囲み、圧力容器を形状的に安定させる被覆と、を有している。本発明に基づき、この圧力容器の被覆は少なくとも部分的に気体透過性に形成されているため、ライナを通り抜ける気体は、被覆を通って圧力容器から漏れ出ることができる。
【0011】
少なくとも部分的に気体透過性の被覆を備える、このような圧力容器の構造により、ライナを通過する気体を、継続的に、低率で圧力容器から周辺へ排出することができるようになる。この方法により、ライナを通過する気体がライナと被覆との間に溜まり、その気体が圧力容器を処分する際に、高率で一気に周辺に排出されるのを防止する。
【0012】
本 発明の実施形態では、圧力容器の被覆が、少なくとも部分的に多孔質に形成されている。例えば、圧力容器の被覆は、樹脂材料により結合されている繊維材料から形成され、硬化した状態の樹脂材料は、少なくとも部分的に多孔質である。
【0013】
代替又は追加の方法として、圧縮容器の被覆には、決められた箇所に穴が設けられており、この穴は、被覆の内側とその外側とをつないでいる。
【0014】
本発明のもう1つの実施形態では、圧力容器の被覆の外側にコーティング(ラッカコートなど)が施されており、このコーティングは、少なくとも気体を通す被覆部分において同様に気体透過性に形成されている。
【0015】
本発明の第2の視点に基づき、加圧された気体媒体を貯蔵する圧力容器は、気体媒体を収納する内部空間を限定するライナと、このライナを取り囲み、圧力容器の形状を安定させる被覆と、を有している。本発明に基づき、ライナと被覆との間に気体透過性の中間層が設けられており、この中間層は、少なくとも1箇所において被覆の外側と接続されているため、ライナを通り抜ける気体は、この中間層を通って圧力容器から漏れ出ることができる。
【0016】
ライナと被覆との間に少なくとも部分的に気体透過性の中間層が備えられている圧力容器の構造により、ライナを通過する気体を、継続的に、低率で圧力容器から周辺へ排出させることができるようになる。この方法により、ライナを通過する気体がライナと被覆との間に集まって、その気体が圧力容器を処分する際に、高率で周辺に一気に排出されることを防止する。
【0017】
本発明の実施形態では、中間層が、少なくとも部分的に多孔質に形成されている。
【0018】
本発明のもう1つの実施形態では、中間層と被覆外側との接続部分に気体処理手段が配置されており、これは、例えば、該当する気体処理剤を中間層に含浸させることによって形成されている。
この気体処理手段は、例えば、酸化触媒コンバータを有することができる。圧縮容器に貯蔵されている気体媒体が水素である場合、ライナを通過し、中間層を通って流れる水素は、この酸化触媒コンバータにより酸化されて水になるため、危険なく周辺に排出することができる。
【0019】
本発明のもう1つの実施形態では、中間層と被覆の外側とをつなぐ接続部分が、圧縮容器のネック部分に設けられている。この場合、それは、圧縮容器の充填開口部及び/又は排出開口部であるのが好ましい。
【0020】
本発明の上述した特徴及び利点並びにその他の特徴及び利点は、以下に、添付の図を用いて好ましい実施例を説明することにより、より分かりやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の複合圧力容器の断面図である。
図2】従来の複合圧力容器(処分前)の部分断面の拡大図である。
図3】従来の複合圧力容器(処分後)の部分断面の拡大図である。
図4】本発明の第1の実施例に基づく複合圧力容器(処分前)の部分断面の拡大図である。
図5】第1の実施例に基づく複合圧力容器(処分後)の部分断面の拡大図である。
図6】本発明の第2の実施例に基づく、複合圧縮容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
例えば700バールの圧力下で気体水素を貯蔵する圧縮容器に基づき、以下に本発明を説明する。この圧縮容器は、例えば燃料電池システムに使用可能である。しかし、本発明は、この気体媒体、圧縮容器内部におけるこの圧力およびこの適用例に限定されない。
【0023】
図1を用いて、まず、本発明を適用することのできる複合圧力容器の基本構造を詳しく説明する。
【0024】
この複合圧力容器10は、気体水素を収納する内部空間14を画定しているライナ12から形成されている。ライナ12の製造には、例えば、プラスチック材料が使用される。このライナ12は、被覆16によって取り囲まれており、この被覆は、例えば樹脂含浸処理された炭素繊維などの繊維複合材料から形成され、圧力容器10に必要な形状安定性を与えている。ライナ12と被覆16の製造材料は、しかし、前述のこれらの材料に限定されない。同様に、本発明は、被覆16の特殊な形状(例えば、軸方向及び/又は接線方向及び/又はある角度に調整された繊維の巻付け方向など)及びライナ12と被覆16の特殊な厚さ寸法に限定されない。圧力容器の基本構造が、当業者にはすでに従来の技術から知られているため、当業者は、それぞれの要求(例えば、気体の種類、圧力、適用領域など)に対応する実施形態を問題なく設計することができるであろう。
【0025】
図1の実施形態においては、圧力容器10が、2つのネック部分(図の上部又は下部)を有しており、それぞれに開口部22が設けられ、この開口部はネックピース18または20によってシールされているか、又は塞がれている。ネックピースによって塞がれていない開口部22(図の上部)には、好ましくはバルブ24が配置されている。本発明は、ネックピース18、20の特殊な実施形態に限定されない。さらに、圧力容器10の両方のネック部分に、圧力容器10を補助的に安定させるキャップを設けることもできる。また、圧力容器10は、選択的に、バルブ24が取り付けられた2つの開口部22を用いて形成することもできる。さらに、圧力容器10の形状も、図1に示されている2つのネック部分を備えるものに限定されない。
【0026】
また、被覆16の外側には、例えばラッカコートの形でコーティング26が施されている。
【0027】
図2及び3に基づいて、次に、従来の圧縮容器から流出する水素の問題を説明する。
【0028】
圧力容器10の内部空間14には、例えば、約700バールの圧力において気体水素が貯蔵される。時間の経過とともに、ある程度の量の水素がライナ12から放散する(図2の矢印28を参照)。ライナ12を通過する気体水素の大部分は、ライナ12と被覆16との間にあるポケット30の中に集まる。僅かな量の水素が、おそらく被覆16の細孔又は穴32を通って周辺へ達する。巨視的には被覆16がライナ12に同一平面状に接していることにより、ライナ12の内部空間14内が高圧の場合、この溜まった水素が被覆内に僅かしかない小さい穴32へ自由に入り込むことは強く妨げられる。
【0029】
圧力容器10の使用年数が長い場合、ライナ12と被覆16との間のポケット30に水素が溜まって圧力が上昇し、極端な場合、ライナ12が変形する可能性もある。
【0030】
長期の使用年数の後に、圧力容器10が処分されるか、又は特定の量の水素が内部空間14から抜き出されると、内部空間14の圧力が低下するため、ライナ12と被覆16との間のポケット30に溜まった水素によって正圧が生じる。この正圧は、図3に示されているように、ライナ12を被覆16の内側から分離する作用があり、やはりライナ12の変形を引き起こすおそれがある。この分離(図3の二重矢印を参照)により、ポケット30から細孔/穴32へ、さらに被覆16の外側へ通じる気体水素の流路が生じるため、ライナ12を通過する水素は圧力容器10から漏れ出ることができる。
【0031】
このようにして、長期間の使用年数の後で圧力容器10を処分する際には、ライナ12を通って放散した水素が、比較的高率で圧力容器10から一気に流出することになる。
【0032】
圧力容器10から高率で流出する水素による周辺への危険を防ぐため、本発明に基づき、圧力容器10の使用期間が長期である場合は、ライナ12と被覆16間の上述の圧力上昇を防止することが提案される。この目的のため、本発明においては、様々な対策が実施される。
【0033】
本発明に基づく圧力容器の第1の実施例を、図4及び図5に基づいて説明する。
【0034】
この実施例の圧力容器10は、従来の圧力容器同様に、気体水素を収納する内部空間14を画定するライナ12と、このライナ12を取り囲む被覆16から形成されている。この圧力容器10の構造でも、使用期間が長期の場合には、内部空間14が高圧である理由から、少量の水素がライナ12を通って放散し(図4の矢印28を参照)、まずライナ12と被覆16との間のポケット30に集まる。
【0035】
上述した従来の複合圧力容器と比べ、本実施例の圧力容器10の場合は、被覆が少なくとも部分的に気体透過性に形成されている。そのために、被覆16は、例えば多孔質に形成されている。追加又は代替の方法として、被覆16の特定の箇所に穴34が設けられており、これらの穴は、被覆16の内側からその外側につながっている。この方法により、ライナ12を通り抜ける気体水素は、継続的に、低率で被覆16から外部へ排出される。水素が高い割合で突然放出される場合と比べ、外に出る気体水素によって圧力容器10が周辺にもたらす危険度は、明らかに低下する。
【0036】
この場合でも圧力容器10を処分する際に、ライナ12が被覆16から多少剥がれて、それぞれのポケット30の間で流路が生じても、図5に示されているように、長期間のうちに水素はすでに被覆16から均等に流出しているため、ライナ12と被覆16との間で特記すべき圧力の上昇は起こらないため、この状態で大量の水素が放出されることはない。
【0037】
被覆16は、少なくとも部分的に気体透過性に形成されている。しかし、本発明の好ましい実施形態では、この被覆が、実質的に被覆全体にわたって気体透過性に形成されている。
【0038】
図1に示されているように、被覆16がラッカコート26または同様のものでコーティングされている場合、この実施例においても、当然、このラッカコート26も気体透過性でなければならない。これは、少なくとも、被覆16が気体透過性に形成されている部分に該当する。
【0039】
多孔質の被覆16は、例えば、次のように形成することができる。被覆16は、実質的に、被覆自体の圧縮強さを生み出す例えば炭素繊維と、この炭素繊維を結合させるための樹脂とから形成されている繊維複合材料からなる。この樹脂は、少なくとも部分的に多孔質に形成されている必要がある。それでも、当然ながら、被覆16全体の強度及び圧力安定性が保証されている状態にしなければならない。結合に用いられる樹脂は、圧力容器10の圧力安定性に貢献するためではなく、炭素繊維の結合を決定的要素とする。
【0040】
多孔質の被覆16の製造には、例えば、硬化の際に、内部の強い応力により、十分な数の微小亀裂を形成する樹脂が使用される。しかし、これらの微小亀裂が、被覆16の完全な破損を引き起こしてしまってはならない。さらに、これらの微小亀裂は、水素を周辺に排出するのに不可欠であるため、被覆16全体を通り抜ける接続が形成されていなければならない。
【0041】
必要に応じて設けられる外側のラッカコート26にも同様の仕様が当てはまる。このラッカコートは、同じく、上述の方法に従って製造することができ、水素排出に関して同じ条件を満たしていなければならない。
【0042】
十分な数の適切な穴34をあらかじめ指定した箇所に取り付けることは、詳細な説明を必要としない。これは、基本的に、任意の方法を用いることができる。
【0043】
被覆16の気体透過性は、もちろん、圧力容器10の内部空間14内にある気体に左右される。圧力容器10に貯蔵されている気体媒体の種類に応じて、気体透過特性、すなわち細孔及び/又は孔34などを適合させる必要がある。
【0044】
本発明に基づく複合圧力容器の第2の実施例を、図6を用いて詳しく説明する。
【0045】
こ の実施例の圧力容器10は、従来の圧力容器同様に、気体水素を収納する内部空間14を画定するライナ12と、このライナ12を取り囲む被覆16から形成されている。この圧力容器10の構造でも、内部空間14内の圧力が高いことにより、使用期間が長期の場合には、少量の水素がライナ12を通って放散する。
【0046】
上述した従来の複合圧力容器と比べ、図6による実施例の圧力容器10の場合は、ライナ12と被覆16との間に気体を通す中間層36が設けられている。この中間層36は、例えば、圧力容器10のネック部分(図6の上下)で、被覆16の外側、すなわち圧力容器10の周辺とつながっている。この方法により、ライナ12を通り抜ける気体水素は、継続的に、低率で中間層36から周辺へ排出される。水素が高い割合で突然放出される場合と比べ、外に出る気体水素によって圧力容器10が周辺にもたらす危険度は、明らかに低下する。
【0047】
被覆16自体は、従来の圧力容器と同じように気密性に形成することができ、代替の方法として、例えばラッカコートの形でコーティング26を施すこともできる。本発明に基づいて設けられている中間層36は、例えば、少なくとも部分的に多孔質に形成されている。
【0048】
さらに、中間層36と圧力容器10の周辺との接続部分、すなわち図6の実施例では充填開口部又は排出開口部22のある圧力容器10のネック部分に、気体処理手段38が配置されている。この気体処理手段38は、例えば、該当する気体処理剤を多孔質の中間層36に含浸させることによって形成されている。
【0049】
圧力容器10の内部空間14の中に気体水素を貯蔵する場合、この気体処理手段38は、前述の接続部分で、水素を酸化して水にする酸化触媒コンバータを含んでいることが好ましい。このようにして発生する水は、液体又は蒸気の形で、後から中間層36を通って流れ込む水素によって流出する。流出する水素による圧力容器10の周辺への危険は、この実施例では完全に防止される。
【0050】
多孔質の中間層36の酸化触媒作用のある部品38は、圧力容器10の周辺への中間層36の出口部分にのみに取り付けられており、この部分ではこの気体処理手段38がなければ、水素が流出するようになっている。触媒作用のある部分38は、例えば、多孔質の中間層36に、溶解又は懸濁した形で触媒を含む液体を含浸させることによって製造することができる。この含浸処理した部分38を熱によって後処理することにより、触媒の活性をさらに高めることができる。多孔質の中間層36がすでにライナ12の上に取り付けられている場合、このような熱による後処理は、ライナ12が損傷を受けない温度範囲でのみ行われなければならない。
【0051】
酸化触媒コンバータ38は、水素を周辺に排出する通常出口の接続部分に配置されているため、触媒酸化に必要な酸素の十分な供給が保証されている。
【0052】
ライナ12を通り抜ける水素が常に排出されることにより、さらに、圧力容器10を処分して、内部空間14内の圧力が低下しても、ライナ12と被覆16との間には正圧が生じないため、ライナ12の不均一な変形が防止される。
【0053】
このとき、多孔質の中間層36をライナ12の上に取り付ける方法は、そのプロセスにおいても、次に被覆16を取り付けるプロセスにおいても、ライナ12を通り抜ける水素が気体処理手段38の方へ排出されるように、多孔質の中間層36を水素が触媒作用のある部品38まで自由に通り抜けられることを保証しなければならない。
【0054】
同様のことは、多孔質の中間層36の塞がれていない端部に取り付けられる、含浸などによって製造される酸化触媒コンバータ38にも該当し、それによって触媒コンバータ38で発生する水を周辺に障害なく排出させることができる。
図1
図4
図5
図6
図2
図3