(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】フィラメント上の例示的なテクスチャ加工された表面を示す図である。
【
図1B】フィラメント上の例示的なテクスチャ加工された表面を示す図である。
【
図2A】コーティングより上に突出している頂部を有する例示的なテクスチャ部を示す図である。
【
図2B】表面の変形に反応して生じるコーティング断片の脱離を示す図である。
【
図3A】コーティングが頂部を覆う例示的なテクスチャ部を示す図である。
【
図3B】表面の変形に反応して生じる、圧力による断裂を示す図である。
【
図3C】表面の変形に反応して生じるコーティング断片の脱離を示す図である。
【
図4A】コーティングが谷部を覆う例示的なテクスチャ部を示す図である。
【
図4B】表面の変形に反応して生じる、圧力による断裂を示す図である。
【
図4C】表面の変形に反応して生じるコーティング断片の脱離を示す図である。
【
図5A】
図5A〜5Dの他の図と同様に、頂部および谷部の両方を有する例示的なテクスチャ部を示す図である。
【
図5B】
図5A〜5Dの他の図と同様に、頂部および谷部の両方を有する例示的なテクスチャ部を示す図である。
【
図5C】
図5A〜5Dの他の図と同様に、頂部および谷部の両方を有する例示的なテクスチャ部を示す図である。
【
図5D】
図5A〜5Dの他の図と同様に、頂部および谷部の両方を有する例示的なテクスチャ部を示す図である。
【
図6A】表面の変形に応じた、頂部−谷部・テクスチャ部からのコーティング断片の脱離を示す図である。
【
図6B】表面の変形に応じた、頂部−谷部・テクスチャ部からのコーティング断片の脱離を示す図である。
【
図7A】
図7A〜7Bの他の図と同様に、表面の変形に反応して生じる、頂部−谷部・テクスチャ部に付着したコーティング断片の反応を示す図である。
【
図7B】
図7A〜7Bの他の図と同様に、表面の変形に反応して生じる、頂部−谷部・テクスチャ部に付着したコーティング断片の反応を示す図である。
【
図8A】
図8A〜8Dの他の図と同様に、頂部と頂部との間に高い平坦部を含む、頂部−谷部・テクスチャ部を示す図である。
【
図8B】
図8A〜8Dの他の図と同様に、頂部と頂部との間に高い平坦部を含む、頂部−谷部・テクスチャ部を示す図である。
【
図8C】
図7A〜7Bの他の図と同様に、頂部と頂部との間に高い平坦部を含む、頂部−谷部・テクスチャ部を示す図である。
【
図8D】
図7A〜7Bの他の図と同様に、頂部と頂部との間に高い平坦部を含む、頂部−谷部・テクスチャ部を示す図である。
【
図9A】テクスチャ部による、細胞膜および細胞の貫通の様子を示す図である。
【
図9B】テクスチャ部によって組織に閉じ込められて保持された脱離したコーティング断片を示す図である。
【0014】
発明の詳細な説明
本発明のデバイスおよび方法を開示および説明する前に、この発明がステント等に限定されず、したがって、変更し得るものであることを理解されたい。また、本明細書中で使用される用語は、特定の態様を説明するためのみのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0015】
本デバイスおよび本方法は、インプラントから分離し得るコーティング物質の断片の大きさおよび形を制御する表面テクスチャを有する血管インプラント、例えばステント等、およびこうしたデバイスを製造する方法に関する。このデバイスおよび方法は、構造的な変形の後に医療用インプラントの表面から破壊されて剥離する傾向が極めて高い硬質および半硬質のコーティングから生じるコーティング断片の大きさおよび形を制御するのに特に有用である。
【0016】
このデバイスおよび方法は、添付の図面を参照することによって極めてよく理解することができる。同様な特徴部分(features)は、同じ参照番号を使用して識別する。
【0017】
定義
本明細書中で使用される「医療用インプラント」または「インプラント」の語は、ステント、ピン、ネジ、プレート、メッシュ構造、整形装具、RFIDタグ、ペースメーカー、胃バンド/環、美容用インプラント、または哺乳動物の対象の体内に埋め込むのに適切な他のデバイスを指す。例示的なインプラントは、拡展可能な血管ステントである。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「テクスチャ部」または「テクスチャ要素」とは、形、体積、面積および/または寸法について定義され得る表面テクスチャ内の個別の表面領域である。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「谷部」の語は、くぼみ、へこみ、谷またはテクスチャ部の一部を形成するデバイスの下部表面に向かって延伸する特徴的な部分を指す。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「頂部」の語は、突出、突起、高くなった部分またはテクスチャ部の一部を形成する、デバイスの上部表面に向かって延伸する特徴的な部分を指す。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「比較的テクスチャ加工されていない」の語は、医療用インプラントの表面へのコーティングの付着のための領域に対して適用される場合、テクスチャ加工された領域の谷部から頂部までの高さの20%未満、好ましくは10%未満を有するテクスチャ部を指す。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「剥離」または「剥離する」の語は、例えば構造的な変形または処理に応じた、医療用インプラントの表面からのコーティングの一部(すなわち、断片)の脱離、放出または分離を指す。特定の医療用インプラントおよび関係するコーティングにより、こうした剥離が意図された処置効果をもたらすことに基づくものである場合もあり、または特定の医療用のインプラントと共に特定のコーティング物質を使用することによる意図しないまたは不可避な結果である場合もある。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「破損」、「亀裂」および「断裂」の語は、構造的な変形または処理を受けた医療用インプラントの硬質または半硬質のコーティングにおいて、圧力による断裂がそれによって開始および/または伝播する過程を指すことを意図するものである。破壊および亀裂は、圧力上昇部(stress riser)を使用することによってコーティング中の予め選択された部位で促進させることもできる。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「圧力上昇部」は、コーティング中の特定の部位に構造的な変形の圧力を集中させ、それによって、その部位で破損または亀裂を生じさせてそこから伝播させる、コーティングされた医療用インプラントの表面に関連した特徴部である。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「構造的な変形」の語は、歪み、屈曲、伸張、伸縮、または、硬質または半硬質のコーティングの少なくとも一部を表面から分離させ得る、医療用インプラントの表面に対する他の物理的な変化を指す。
【0026】
本明細書中で使用される場合、「硬質または半硬質」の語は、それがコーティングを指す場合、比較的弾性がなく、かつそれ故に、コーティングされたステントが配置時にその半径方向または縦軸に沿って放射状に拡展または変形されるときのような構造的な変形時に断裂しおよび剥離し得るコーティングを広く包含することを意図するものである。
【0027】
表面テクスチャ加工されたインプラント
本発明の第1の側面は、対象の体内に導入して有益な効果を生じさせるための表面テクスチャ加工されたインプラントである。一態様では、該インプラントは、放射状に拡展可能なステントのよく知られた構築法に従って、例えば金属またはポリマーのワイヤーまたはフィラメント等の、拡展可能な、相互に連結した要素から形成された本体を有するステントである。こうしたステントは、例えば、円筒形の金属またはポリマーの管をレーザー切断することによって形成される。以下に説明する図面において、示した構造は、ステントを構成している個々のフィラメントまたは領域の代表的な一部であることを意図するものである。こうしたフィラメント構造は、ステントが展開されると血管壁と接触する上部表面、側面、および展開された状態ではステントの内面部を形成する下面を有する。この構造はインプラントの他の表面部も例示し得ることが理解されるであろう。
【0028】
この背景を考慮に入れて、
図1Aは、相互に連結した他のフィラメントと共にステントの本体を構成するステントフィラメント10の一部を示している。このフィラメントは、ステントの外表面の一部を形成している第1の上部表面12、ステントの内面の一部を形成している第2の下面15(破線矢印)、および1つまたは2つの側面14を有する。前述のように、インプラントが血管ステントである場合には、この第2の表面は、血管の内腔に存在する血液と接触し得る。
【0029】
フィラメント10の第1の表面12は、フィラメントに適用された(後の図面に示す)コーティングと相互に作用するように設計された1つまたは2つの個別のテクスチャ部16を含むテクスチャを有する。これらのテクスチャ部は、フィラメント表面の全てまたは一部のみを覆っていてもよく、かつ格子(
図1A)、蜂巣模様(
図1B)の形状または、テクスチャ部16がフィラメント10の上部表面12上に高い密度で一緒に集められることを可能にすることが好ましい他の形状で配置されていてもよい。テクスチャ部の例示的な規則的な形としては、長方形、六角形、幾何学的な形、魚鱗、アルキメデス、ダイヤモンド、網目、数学的にモデル化された形等が挙げられるが、これらに限定されない。また、数学によって定義するまたは表すことができない形等を含むがこれらに限定されない、テクスチャ部用の不規則な形も本発明と共に使用される。以下で、追加のテクスチャ部を更に説明する。便宜上同様な特徴部分は同じ参照番号を使用して識別する。
【0030】
剥離を制御するための頂部または谷部を有するテクスチャ部
図2A、3Aおよび4Aは、頂部および/または谷部を含むテクスチャ部のいくつかの態様の側面の断面図を示している。これらの全ての図面において、フィラメント20の上部表面22は、この図の上の領域によっておおまかに表している体組織24と接触する。
図2Aおよび3Aにおいて、幅(W)を有する個別のテクスチャ部26、27は、フィラメントの上部表面から突出している頂部28、29によって定義される。
図4Aにおいて、幅(W)を有するテクスチャ部30は、フィラメントの表面にある谷部32によって画定される。テクスチャ部が不規則な形を有する場合、この幅(W)は、頂部と頂部との間または谷部と谷部との間の最長の寸法として規定される。いずれの場合も、テクスチャ部は、頂部と頂部との間または谷部と谷部との間のいずれか該当する方に平坦部領域34を更に含んでいてもよい。この平坦部領域は、実質的にテクスチャ加工されていなくてもよく、または図面中に更に図示しているコーティング36の付着性を増大するために追加のテクスチャを有していてもよい。
【0031】
図2A、3Aおよび4Aにおいて例示したように、頂部の高さまたは谷部の深さは、テクスチャ部の高さ(H)を更に規定する。テクスチャ部はフィラメントの表面(すなわち、平坦部)および周辺の頂部または谷部によって囲まれていてもよく、かつ一度埋め込まれるとそれが接触する体組織に開放されることのみを必要とするために、テクスチャ部は体積(V)も規定し、その一部または全てをコーティング物質で充填することができる。
【0032】
テクスチャ部26、27が頂部28によって画定される場合、1つまたは2つの頂部の少なくとも一部は、コーティングより上に突出していてもよく(
図2A)、またはコーティングで覆われていてもよい(
図3A)。テクスチャ部30が谷部32によって画定される場合、コーティングは、最初は谷部を覆っていてもよい(
図4A)。
【0033】
頂部および谷部によって定義されるテクスチャ部は、コーティングの付着性および剥離の制御に関していくつかの利点を提供する。第一に、このテクスチャ部は、インプラントの表面に対するコーティングの付着性を増大させて、それによって表面の変形に応じたコーティングの剥離を減少させ得る。第二に、このテクスチャ部はインプラントの表面上に圧力上昇部を導入することができ、その結果、インプラント表面に対する構造的な変形の量がインプラントの表面に対するコーティングの少なくとも一部の付着性を十分に上回るかまたはそうなった場合に、テクスチャ部が、インプラントの表面から剥離するコーティング断片の大きさ、形および量を制御する。こうした表面の歪みは、埋め込み部位における血管ステントの放射状の拡展の結果として一般に生じる。
【0034】
テクスチャ部がコーティング断片の大きさ、形および量を制御するこの方法を後の図面に例示しており、このとき、同様な構造は、上記で使用したのと同じ参照番号で表している。
図2Aに示すように、テクスチャ部26がコーティング36より上に突出している頂部28によって画定される場合には、
図2Bに示すように、放出されるコーティング断片38の大きさ、形および量は、テクスチャ部の寸法によって予め決定されている。
図3Aに示すように、テクスチャ部27がコーティング36に覆われる頂部29によって画定される場合には、これらの頂部は、コーティングにおける圧力による断裂44の開始および伝播を制御する圧力上昇部として機能し(
図3B)、これにより、これらの頂部から生じる圧力による断裂44に沿ってコーティング断片40の剥離が誘導される(
図3C)。
【0035】
図4Aに示すように、テクスチャ部30が谷部32によって画定される場合には、これらの谷部は、コーティングにおける圧力による断裂46の開始および伝播を制御する圧力上昇部として機能し(
図4B)、圧力による断裂(
図4C)に沿ったコーティング断片42の剥離を誘導する。このコーティングは、谷部の中にわずか一部のコーティング48を残すように脱離してもよく、または完全にそのため谷部の中のコーティング部分を含めて脱離してもよい。
【0036】
剥離を制御するための頂部および谷部を有するテクスチャ部
コーティングの剥離を制御するのに使用する特定の型のテクスチャ部は、頂部および谷部の双方を含む。
図5Aに例示しているように、こうしたテクスチャ部52は、フィラメント50の第1の表面58にある谷部56に隣接する頂部54によって定義される。これらの頂部および谷部は、コーティングの剥離を制御するための圧力上昇部(破線矢印)として役割を果たす。上記のように、このテクスチャ部は平坦部60を含み、これは、比較的テクスチャ加工されていなくてもよく、またはコーティングの付着性を増大するために追加のテクスチャを含んでいてもよい。各々のテクスチャ部は、頂部と頂部との間で測定される幅(W)、および頂部の頂上と谷部の底との間で測定される高さ(H)によって説明することができる。上記のように、フィラメントの第1の表面は、第1の表面の一部上に1つまたは2つの近接するテクスチャ部を有していてもよく、または、代替的に、第1の表面は、こうした特徴部によって実質的にまたは完全に覆われていてもよい。
【0037】
図5Cおよび5Dは、硬質または半硬質のコーティング72、74の適用後の、フィラメント70の第1の表面68上のテクスチャ部64、66を例示している。このコーティングは、頂部78の間および谷部80の間の平坦部76と接触して、これらの谷部を充填または部分的に充填し、かつこれらの頂部の内面の少なくとも一部と接触している。このコーティングの厚さは、
図5Cに示すように、頂部がコーティングによって覆われていてもよく、または、
図5Dに示すように、1つ以上の頂部の少なくとも一部がコーティングより上に突出していてもよいようなものである。
図5Aおよび5Cに独立したテクスチャ部52、64、66を例示しているが、これまでの図面で示したように、フィラメントの表面が複数のテクスチャ部を有してもよいことは明らかであろう。
【0038】
同様な構造を示すために
図5Aにおいて使用したのと同じ参照番号を使用して、
図5Bは、頂部−谷部型のテクスチャ部52によって多数の圧力上昇部が導入される結果として、コーティング84における圧力により断裂82が開始および伝播されることを例示している。
【0039】
図6Aおよび6Bは、
図5Aにおおまかに例示したように、所定の大きさおよび形を有するコーティング86、88の断片が頂部−谷部型のテクスチャ部90から脱離し得る態様を例示している。本明細書において特に例示していないテクスチャ部からコーティング断片が脱離し得る更なる態様も本発明の範囲内に含まれることを理解されたい。放出は、フィラメント94の第1の表面92の構造的な変形により、表面92に対する付着性に打ち勝つのに十分な圧力がコーティング上に生じたときに起こる。コーティングは、テクスチャ部の1つまたは2つの谷部96の全てまたは一部の中にコーティング89の比較的小さな一部を残すように脱離してもよく(この例は、
図6Aに示した)、または(
図6Bに示したように)完全に脱離してもよい。谷部に残るコーティングの量は、たとえあるとしても、剥離するコーティングの量と比べて比較的少ない。
【0040】
図7Aおよび7Bは、フィラメント100の第1の表面104の変形によって生じる特定の形態の圧力に応じた、コーティング112と頂部−谷部・テクスチャ部102との間の相互作用の態様を更に例示している。
図7Aにおいて、フィラメントの末端は、矢印で示される下方向に引かれ、テクスチャ部の頂部106をコーティング112から引き離している。圧力が増大するにつれて、このコーティングは、テクスチャ部の平坦部110の部分のみに付着しているようになり、最終的には
図6Aおよび6Bに示したように脱離する。この種の表面変形、およびこの変形によって引き起こされる結果として生じる圧力は、例えば、血管内への挿入およびそれに続く血管部位における放射状の拡展後のステントの表面で見出すことができる。
【0041】
図7Bにおいて、フィラメント100の末端は、矢印で示される上方向に引かれ、コーティング112に向かって(すなわち、中へ)テクスチャ部の頂部を押し込んでいる。フィラメントの第1の表面104における変形の量が増大すると、コーティング112は、内側に引かれた頂部106によって最初は固定および維持され得る。しかし、変形が増大するにつれて、テクスチャ部によって画定される空間(すなわち、体積)は、最初にフィラメントの表面に適用された量のコーティングを含有するには不十分となり、
図6Aおよび6Bに示すように、最終的にこのコーティングの断片が脱離する。この種の表面変形、およびこの変形によって引き起こされ結果として生じる圧力は、例えば、血管内への挿入およびそれに続く血管部位における放射状の拡展後のステントの支柱または延性のヒンジで見出すことができる。
【0042】
高い平坦部領域を有するテクスチャ部
本テクスチャ部の更なる変形は、閉じ込められたコーティングの部位を保持して剥離および脱離を更に減少させるのに適する断面の形を提供する。例示的なテクスチャ部を
図8A〜8Dに例示している。これまでの図面に例示したように、テクスチャ部116、118、120は、血管ステントフィラメント122の表面上に配置されて示される。上記のように、テクスチャ部は、より低い平坦部領域に隣接している頂部または頂部および谷部を含む。しかし、
図8A〜8Dに例示している態様は、より低い平坦部領域に隣接している頂部または頂部および谷部を含み、かつ更に、追加の高い平坦部領域を通して連結されている。
【0043】
例えば、
図8Aは、より低い平坦部領域128に隣接している高さHの頂部124、126を有するテクスチャ部116を示しており、これらの頂部は、高い平坦部領域130を通して更に連結されている。結果として生じるテクスチャ部は、(1つ以上のテクスチャ部の少なくとも一部を充填していることを示す)コーティング132の各部分が所定位置に保持されてテクスチャ部から容易に脱離することができないように、より低い平坦部領域128のレベル(すなわち、W
1)において、高い/より上の平坦部領域130のレベル(すなわち、W
2)よりもより広い断面を有する。
【0044】
図8Bに示している態様は、テクスチャ部の断面が異なる形を有することを除いては、
図8Aに示したものと同様である。例えば、
図8Aにおいて、テクスチャ部の一方の側面134は実質的に垂直であり、もう一方の側面136はコーティング142の一部に向かって内側に傾斜している。対照的に、
図8Bに示すように、テクスチャ部118の両方の側面138、140は、コーティングの一部に向かって内側に傾斜している。
図8Aおよび8Bに共通する特徴部は、同じ参照番号を使用して識別していることに注意されたい。
【0045】
図8Cは、
図8Aおよび
図8Bに示したものと同様に、高い平坦部領域142を有するテクスチャ部を示しているが、
図5A〜7Bを参照しながら説明したような、より低い平坦部領域148に隣接している谷部144、146を更に含む。
図8Aおよび8Bにそれぞれ示すように、テクスチャ部のうち150、152の少なくとも一方の側面および場合により双方の側面は、コーティング154の一部の方向へ内側に傾斜していてもよい。更に、
図8Aに示すように、一方の側面が垂直であってもよい。
【0046】
テクスチャ部が高い平坦部領域を含む場合、コーティングの少なくとも一部が、
図8A〜Cに示すように、高い平坦部のレベルより低くてもよく、または、
図8Dに示すように、高い平坦部のレベルを越えていてもよい。
図8Dにおいて高い平坦部142を越えるコーティング155の層を別に示していることを除いては、
図8Cおよび8Dにおいて同じ参照番号を使用していることに注意されたい。剥離は、コーティングのレベルが、高い平坦部のレベルよりも下の場合に最も大きく減少するが、血管壁等の体組織との間の接触は、コーティングのレベルが、高い平坦部のレベルよりも上の場合に最大となる。高い平坦部より上のコーティングの部分であっても、テクスチャ部によって導入される多様な圧力上昇部からコーティングを通して伝播し得る圧力による断裂の結果として制御された剥離を受けることに注意されたい(例えば
図5Bを参照されたい)。
【0047】
テクスチャ部の設計
テクスチャ部は、インプラントの表面が構造的な変形を受けていないときにはコーティングを維持し、インプラントの表面がコーティングとテクスチャ加工されたインプラントの表面との間の付着性に打ち勝つのに十分な構造的な変形を受けたときには、制御された大きさおよび形を有するコーティングの断片を放出するように設計される。特に、インプラントの表面における構造的な変形は、テクスチャ部中の頂部および/または谷部によって生じる圧力上昇部の部位に割れ目線を広めさせて、コーティングを破損させて割れ目線に従った断片にする。このことにより、放出されるコーティング断片の大きさおよび形は、予め選択されたテクスチャ部の寸法、特に幅(W)によって制御される。
【0048】
以下の説明は、特定の用途のための表面テクスチャ部を選択する際に考慮されるパラメータを設計することに関する。
【0049】
テクスチャ部の設計パラメータ
テクスチャ部の設計パラメータは、一般に、振幅パラメータ、空間パラメータまたは混成パラメータに分類することができるが、こうした分類は限定するためではなく説明のためであることが意図される。振幅パラメータは、主に、テクスチャ部の深さまたは高さ(H)に関係する。空間パラメータは、主に、フィラメントの表面上のテクスチャ部の配置(例えば、密度および近接度)に関係する。混成パラメータは、振幅パラメータおよび空間パラメータの双方に関係する。いくつかのパラメータは、インプラントの表面に対するコーティングの付着性を最大にするためにより重要であり得る一方、他のパラメータは、剥離した断片の数および/または大きさを調節するためにより重要であり得る。
【0050】
テクスチャ部の設計に使用するのに好ましい設計パラメータについては、表1に一覧を示す。この表は、各パラメータの簡単な説明、その一般的な記号/略語、参照または二次元空間若しくは三次元空間において適用可能な基準、および省略時の単位を提供する。示している表面粗度パラメータは、任意の適切なデバイスを使用して測定することができ、任意の適切なソフトウェアを使用して算出することができる。例示的なデバイスは、Image Metrology A/S社(ホースホルム、デンマーク)によって市販されるような走査型プローブイメージプロセッサー(SPIP(商標))と共に使用するように適合された顕微鏡である。SPIP(商標)は、電子顕微鏡、干渉顕微鏡および光学顕微鏡からの画像を使用した詳細な表面特徴解析を可能にする。SPIP(商標)パラメータは、粗度およびマイクロ硬度の測定のための欧州8CRプロジェクト走査型トンネル顕微鏡法(Barbatoら、(1995))の推奨基準および他の基準を取り入れる。
【表1】
【0051】
表に記載しておりかつ以下で更に詳細に説明する大部分のパラメータは、寸法M×Nを有するあらゆる矩形の表面特徴部に有効である。しかし、いくつかのパラメータ、特にフーリエ変換に関するものは、テクスチャが四角形(すなわち、M=N)であることを想定している。
【0052】
これらのパラメータのうちのいくつかは、極小および極大の定義に依存する。本明細書中で使用される場合、極小は、隣接している8個のピクセルが全てそれより高いピクセルとして定義され、極大は、隣接している8個のピクセルが全てそれより低いピクセルとして定義される。画像の境界外にピクセルがない場合には、境界上に極小または極大はない。場合によっては、極小および/または極大に基づくパラメータは、他のパラメータよりもノイズに影響されやすいこともある。
【0053】
粗度パラメータに関する計算を行う前に、例えば、二次または三次の多項式の面適合を使用した、傾斜補正が推奨される。粗度データを報告する場合には、スキャン範囲および試料密度も考慮に入れるべきである。
【0054】
例示的な表面テクスチャパラメータは、以下に詳述するいくつかの部類に分けることができる。当業者は、これらのパラメータの変形および組合せも、たとえそれが本明細書中で特に説明していないものであっても、本発明の範囲に含まれることを理解するであろう。
【0055】
振幅パラメータ
振幅は、平均特性、極値、および高さ(H)分布ヒストグラムの形についての情報を提供する6種類のパラメータによって説明される。これらのパラメータは、三次元に拡展される二次元の基準に基づいている。
【0056】
粗度平均(すなわち、Sa)は、以下のように定義される:
【数1】
【0057】
二乗平均平方根(RMS)パラメータ(すなわち、Sq)は、以下のように定義される:
【数2】
【0058】
表面歪度(すなわち、Ssk)は、高さ分布ヒストグラムの非対称性を説明するものであり、以下のように定義される:
【数3】
【0059】
対称性の高さ分布は、Ssk=0で表され、ガウス様であってもよい。谷部を主な特徴とする表面テクスチャは、Ssk<0で表される。頂部を主な特徴とする表面テクスチャは、Ssk>0で表される。値は、より極端な表面テクスチャは1.0より大きい値>1を有し得るが、典型的には<1である。
【0060】
表面尖度(すなわち、Sku)は、表面のトポグラフィにおける「とがり」を説明するものであり、以下のように定義される:
【数4】
【0061】
Sku値は、ガウスの高さ分布のために3.0に近づき得るが、より小さな値によって高さ分布のより幅広い範囲が表される。
【0062】
頂部−頂部高さは、表示したISOおよびASMEの基準並びにStoutら(1994)(表1)に従って、3種類のパラメータ(すなわち、Sz、St、Sy)によって定義される。これらのパラメータは、画像中の最も高いピクセルと最も低いピクセルとの間の高さの相違に関する。
S
z=S
t=S
y=Z
max−Z
min 式5
【0063】
最大ピット深さ(すなわち、Sv)は、最も大きなピット深さの値として定義される。
【0064】
最大頂部高さ(すなわち、Sp)は、最も大きな頂部高さの値として定義される。
【0065】
混成パラメータ
3種類の混成パラメータは、局所的なz−傾斜に基づいた傾斜勾配を反映する。
【0066】
平均頂上曲率(すなわち、Ssc)は、表面上の極大の主曲率の平均であり、全ての極大について以下のように定義され、δxおよびδyはピクセルの離間距離である:
【数5】
【0067】
面積二乗平均平方根傾斜(すなわち、Sdq6)は、Sdqと同様であるが、以下(式7)のように定義されるように、各ピクセルについての傾斜の計算においてより近くのピクセルを含む:
【数6】
【0068】
表面積比(すなわち、Sdr)は、投影されたx−y(平)面の面積と比較した界面の表面積の増分を表す:
【数7】
ここで、Aklは、以下(式9)のように定義される:
【数8】
平らな表面の場合には、表面積とx−y面の面積とは等しく、Sdr=0%である。
【0069】
投影面積(すなわち、S2A)は、式7の分母に示したように、x−y平面の面積に関するものである。
【0070】
表面積(すなわち、S3A)は、式7の分子に示したように、高さzを考慮した表面領域の面積を表す。
【0071】
空間パラメータ
表面テクスチャの空間特性は、5種類のパラメータ、すなわち、頂点の密度、テクスチャ方向、主波長、および2種類の指数パラメータによって説明される。第1の指数パラメータは画像から直接算出するのに対し、他方はフーリエスペクトルに基づいている。これらのパラメータのために、画像は、二次でなければならない。
【0072】
頂点の密度、Sdsは、領域当たりの極大の数である:
【数9】
【0073】
テクスチャ方向(すなわち、Std)は、特定のインプラントの主な構造的な特徴、例えば、血管ステントのフィラメント、に対する画像中の主なテクスチャ部の角度として定義される。この方法では、フィラメントがX−スキャン方向に垂直に配置される場合、Std=Oである。フィラメントが時計回りに回転された場合には、この角度は正であり、フィラメントが反時計回りに回転された場合には、この角度は負である。このパラメータは、表面テクスチャが主な方向特徴を有する場合のみに意味があることに注意されたい。
【0074】
Stdは、フーリエスペクトルから算出することもできる。フィラメント方向に関して異なる角度の相対振幅は、Stoutら(1994)に記載されているように、等角に区分した放射状直線Mに沿った振幅の合計によって算出する。このフーリエスペクトルは、DC成分が(M/2,M/2)にあるように変換される。i番目の直線の角度αは、π/Mに等しく、このとき、i=0、1、..、M−1である。
【0075】
角スペクトルは、以下の式によって算出する:
【数10】
【0076】
非整数値のp=M/2+icos(α)およびq=M/2+isin(α)の場合、F(u(p),v(q))の値は、2×2の隣接しているピクセルにおけるF(u(p),v(q))値の間の線形補間によって見出される。振幅合計が最大の角を有する直線(すなわち、Amax)は、そのフーリエ変換画像における主方向であり、画像上のテクスチャ方向に対して垂直である。
【0077】
テクスチャ方向指数(すなわち、Stdi)は、主方向の優位性の尺度であり、主方向の振幅合計で割った平均振幅合計として定義される:
【数11】
【0078】
このStdi値は、0と1との間であり、主方向を有する表面は低いStdi値を有し、主方向のない表面は高いStdi値を有する。
【0079】
放射状波長(すなわち、Srw)は、等距離に区分された半円M/(2−1)の周囲の振幅値の合計によって算出される放射状スペクトルにおいて見出される主波長である。この半円の(ピクセルで測定される)半径rは、r=1、2、..、M/(2−1)の範囲にある。放射状スペクトルは、以下の式によって算出する:
【数12】
【0080】
非整数値のp=M/2+r cos(iπ/M)およびq=M/2+r sin(iπ/M)の振幅は、2×2の隣接しているピクセルにおけるF(u(p),v(q))の値の間の線形補間によって算出する。
【0081】
主な放射状波長(すなわち、Srw)は、最大振幅合計βmaxを有する、半径rmaxの半円に相当する:
【数13】
【0082】
テクスチャアスペクト比パラメータ(すなわち、Str20およびStr37)は、テクスチャ強度(テクスチャ側面の均一性)を同定するために使用される。これは、自己相関関数のそれぞれ相関20%および37%までの最も遅い減衰に対する最も速い減衰の比として定義される。原理では、テクスチャアスペクト比は、0と1との間の値を有し、このとき、主方向を有する表面は0に近いテクスチャアスペクト比を有し、一方、空間的により等方性のテクスチャ部は1に近いテクスチャアスペクト比を有する。
【0083】
選択されるパラメータの例示的な範囲
放出されるコーティング断片が極めて小さいために血栓または塞栓を引き起こさないように、テクスチャ部の寸法を選択することが好ましい。特に、コーティング断片の幅(すなわち、側面から側面までの長さ)が約1mmを超えない(すなわち、Wは約1mm以下である)ように、テクスチャ部の寸法を選択する。剥離したコーティング断片の最大幅(W)の例示的な値は、約0.01ミクロン(μm)から約1mmまでであり、好ましくは、約0.1μmから約50μm、約5μmから約25μm、または約5μmから約20μmまでである。場合によっては、コーティング断片の最大の大きさは、埋め込みの部位にある天然に存在する粒子、例えば赤血球等の最大寸法以下であるように選択される。同様に、テクスチャ部の表面積は、好ましくは、約1から約10,000μm
2まで、約10から約2,500μm
2まで、約20から約2,000μm
2まで、約25から約1,500μm
2まで、約30から約1,000μm
2まで、約40から約500μm
2までなどである。
【0084】
テクスチャ部の高さ(H)は、約50μm、30μm、25μm、20μm、15μm、10μm未満、または更に約0.1μm未満であることが好ましい。天然には、より薄いコーティングはより薄い断片を生じる。しかし、コーティングの厚さは、典型的には、テクスチャ部の最大幅(W)よりも小さいので、Wは、コーティング断片の大きさを制御することに関して最も重要な寸法のうちの1つである。高さ(H)に対するコーティングの厚さの比は、それほど重要ではない。コーティングの厚さは、H未満またはHの数倍であってもよく、例えば、コーティングが表面特徴部の頂部を覆うかどうかに依存している。
【0085】
表面テクスチャ部設計パラメータおよび当業者に明らかであろう他のパラメータについての上記の記載に関して、表2は、記載した特徴および利点を有する表面テクスチャ加工された血管内ステントフィラメントを設計するのに適した値の例示的な範囲を特定するものである。
【表2】
【0086】
表面テクスチャ加工されたインプラントの利点
背景のセクションにおいて述べたように、構造的な変形を受けた医療用インプラントから剥離するコーティングの問題に対処するためのこれまでの努力は、インプラントの表面に対するコーティングの付着性を増大することを目的としてきた。しかし、最適未満の、現実世界の条件下では、従来技術の付着性改良の利点は、塞栓を誘発する、望ましくないかつ無制御なコーティングの断片化および脱離を生じる結果となることで相殺される。
【0087】
インプラント表面の表面に対する弾性コーティングの付着性を増大することは、特に、表面の歪みの量がコーティングの弾性限度内である場合に、剥離を減少させるのに有効となり得る。しかし、硬質および半硬質のコーティングは、例えば根本的な表面構造の歪みによって引き起こされるような、圧力に応じた破損および亀裂の傾向を依然として有する。結果として生じる圧力による断裂が伝播して、コーティングの付着性を増大させる努力に反してインプラントの表面から脱離し得る小さなコーティング断片を生じる。
【0088】
本発明は、インプラントの表面から脱離するコーティング断片の大きさおよび形を制御する表面テクスチャを含む。コーティング断片の大きさおよび形を制御することは、特に、コーティングされたステントの場合のように、インプラントが血流と接触している場合に、塞栓形成のリスクを低減する。従来のコーティングを使用した血栓形成および塞栓形成の臨床的なリスクを低減することに加えて、本発明は更に、破損および亀裂の傾向があるためにインプラントのコーティングとしての使用にこれまで適していなかったまたは望ましくなかった硬質および半硬質のコーティングの使用を可能にする。こうしたコーティングとしては、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、エチレンビニルアルコール、ε−カプロラクトン、グリコリド、水酸化酢酸エチルビニル(ethylvinyl hydroxylated acetate)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸)、ポリエチレングリコールヒアルロン酸、ポリエステルアミド、ポリ(グリセロール−セバケート)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酪酸吉草酸、ポリカーボネート、チロシン誘導ポリカーボネート、並びにこれらのコポリマーおよび混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
コーティング断片の大きさおよび形を制御することが本発明の一側面である一方で、別の一側面は医療用インプラントの表面上のコーティングと接触するまたはそれに隣接した組織への処置剤の送達を改良することに関する。血管ステントの場合、該組織は血管壁であってもよい。整形インプラントの場合、該組織は骨であってもよい。これらのインプラントおよび他のインプラントに関して、テクスチャ部の頂部は、コーティングを越えて突出していてもよく、または、埋め込みと同時にまたは埋め込み後のいつか、例えば、コーティングの一部が侵食または分解されたときのいずれかに、頂部が組織と接触できるように、コーティングのレベルのちょうど下にあってもよい。これらの頂部は、組織内の細胞膜または細胞の層を貫通するように選択されてもよく、それによって、作用する組織への到達を増大させることによってコーティング中に存在する処置剤の運搬を改良する。
【0090】
本発明の特徴部を、
図9Aに例示しており、これは、細胞166、168、170の層を含む組織164に隣接して配置されたインプラント160の第1の表面162を示している。本発明の一態様において、該インプラントはステントであってもよく、該組織は血管壁であってもよい。テクスチャ部180の頂部172は、細胞166の膜を貫通していてもよい。代替的に、テクスチャ部180の頂部174は、細胞168を貫通し、組織内の更なる細胞または細胞の層と接触していてもよい。インプラントに隣接した組織内の細胞膜または細胞を貫通することにより、任意選択でコーティング176に存在する薬剤が表層細胞膜に入ることおよび/または組織内のより深部の細胞表面と接触することが可能となる。
【0091】
また、本発明の更なる利点は、コーティングの領域または断片を、作用する組織に近接した部位に限定することである。
図9Bに例示したように、インプラント184のテクスチャ部190の頂部182は、例えば、断片を体内の組織188の表面186に対して閉じ込めて保持することによって、コーティング184の剥離断片が埋め込みの部位から離れることを予防し得る。コーティングの断片は、テクスチャ部の平坦部192、頂部182、および/または(存在する場合)谷部194にもはや付着せず、かつ、したがって、テクスチャ部に対して自由に動く(交差した破線矢印によって示される)一方、これらの頂部は、組織の表面に近接する当初の部位からのコーティング断片の移動を妨げる。この特徴は、コーティングの対応する断片がインプラントにもはや接着していない場合であっても、インプラントに近接する組織の領域が、該コーティング中に存在する有益な作用剤の正確な用量を受け続けることを確実にする。
【0092】
本発明の更にもう1つの利点は、コーティングと接触しているデバイスの表面積を増大させることである。特に、テクスチャ部を形成する頂部、谷部および/または平坦部は、実際に、該デバイスの表面積を増大させる。結果として、該コーティングは、より大きなデバイスの表面積と接触し、これによりコーティングの付着性、コーティングの断片化および脱離並びに、最終的には、組織への薬剤送達にわたる更なる制御を提供し得る。例えば、テクスチャ部を有するステントの実際に測定された表面積は、テクスチャ部のないステントの実際に測定された表面積よりも1.5から10倍大きい場合もある。
【0093】
本発明のこれらおよび他の特徴は、そのうちの1つまたは2つが異なる態様において存在していてもよく、当業者によって評価されるであろう。
【0094】
コーティングおよび処置剤
本発明のコーティングは、弾性コーティングとは区別される、硬質または半硬質のコーティングであることが好ましい。本発明を弾性コーティングと組み合わせて使用することもできるが、こうしたコーティングは、一般に、亀裂および剥離を生じる傾向が少なく、したがって、インプラントの表面上にテクスチャ部が存在することによって得られる利益は少ない。
【0095】
上記のように、例示的な硬質または半硬質のコーティングとしては、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、ポリ乳酸とポリエチレンオキシドとのコポリマー、ポリ乳酸とポリ(カプロラクトン)とのコポリマー、ポリブチルメタクリレート、ポリメチル(メタ)アクリレート、および他のアクリルポリマー、ポリエチレン−コ−酢酸ビニル/ポリブチルメタクリレート)、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ−b−ヒドロキシアルカン酸、ポリ−b−ヒドロキシ酪酸、ポリ酸無水物等が挙げられるが、これらに限定されない。該コーティングは、架橋されていてもよく、または架橋されていなくてもよい。
【0096】
該コーティングは、典型的には、埋め込み部位に送達するための少なくとも1種類の処置有効剤を含む。例示的な処置剤としては、血栓溶解剤、抗再狭窄剤、血管拡展剤、抗高血圧剤、抗菌剤、抗生物質、抗有糸分裂剤、抗増殖剤、抗分泌剤、非ステロイド性抗炎症薬、免疫抑制剤、成長因子および増殖因子のアンタゴニスト、抗腫瘍剤および/または化学療法剤、抗ポリメラーゼ剤、抗ウイルス剤、光線力学療法剤、抗体標的療法剤、抗血栓剤、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、抗炎症性ステロイド、プロドラッグ、性ホルモン、フリーラジカル捕捉剤、抗酸化剤、生物学的薬剤、放射線療法剤、放射線不透物質、および放射線標識剤、細胞毒性剤または細胞増殖抑制剤等が挙げられるが、これらに限定されない。特に、抗再狭窄剤としては、タキソール(パクリタキセル)、ドキソルビシン、クラドリビン、コルヒチン、ビンカアルカロイド、ヘパリン、ヒルジン、およびこれらの誘導体等が挙げられる。代替態様において、薬剤または処置剤は、ポリマーコーティング中に分散していてもよく、またはポリマーコーティング中に共有結合で組み込まれていてもよい。
【0097】
いくつかの態様において、該コーティングは、例えば架橋ポリマーまたは他の構造担体等の付加的な担体物質の利点なしで、主に処置剤からなっていてもよい。したがって、本発明の更なる1つの利点は、処置剤の構造担体のために必要とされる処置用コーティングの要素としてポリマーを使用しないインプラントを作り出す可能性である。インプラントの表面上にコーティングされたポリマーは、望ましくない急性および慢性の組織反応を引き起こすことが知られている。望ましくない反応は、薬剤を送達するために使用される担体ポリマーの量を減少させることによって、または担体ポリマーを完全に排除することによって、回避することができる。
【0098】
特定のクラスの抗再狭窄剤は、ラパマイシンおよび他のリムス薬、例えば、シロリムス、エベロリムス、ミオリムス、ノボリムス、ピメクロリムス、タクロリムス、およびゾタロリムス等によって例証される、大環状トリエンである。更に、特定のリムス薬は、40−O−(2−エトキシエチル)ラパマイシンまたは42−O−(2−エトキシエチル)ラパマイシン(すなわち、BA9TM)である。大環状トリエン化合物、およびその合成は、例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,650,803号、第5,288,711号、第5,516,781号、第5,665,772号、第6,153,252号、および第6,273,913号、PCT公開第WO97/35575号、並びに米国特許出願第2000021217号、第2001002935号、第20080097591号、第20080097568号、および第20050211680号に記載されている。
【0099】
本発明はインプラントの表面に対するコーティングの付着性を増大し得るので、下層またはプライマーは不要であるが、本発明の目的を無効にすることなく使用することもできる。例示的なアンダーコーティング物質としては、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、エチレンビニルアルコール、ε−カプロラクトン、水酸化酢酸エチルビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリ(ジクロロ−パラ−キシリレン)、シラン系コーティング、例えばオルガノシラン、アミノシラン、ビニルシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、アルキルシラン、フェニルシラン、およびクロロシラン等、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標))および他のフルオロポリマー、並びにこれらのコポリマーおよびこれらの混合物等が挙げられるが、これらに限定されない。下層は、プラズマコーティングによって、または他のコーティング若しくは沈着の方法によって、溶媒系溶液から沈着させることができる(例えば、米国特許第6,299,604号を参照されたい)。下層は、典型的には約0.5ミクロンおよび5ミクロンの間の厚さを有し、かつテクスチャ部において体積の20%未満、15%未満、または更に10%未満を占めるべきである。
【0100】
製造方法
本発明のもう1つの側面は、表面テクスチャ加工されたインプラントを作製する製造方法である。この方法は、インプラントの表面から剥離するコーティングの断片の大きさおよび形を制御する1つまたは2つのテクスチャ部を作製するために、インプラントの表面上の物質を除去および/または再分配することを必要とする。表面テクスチャは、化学エッチング、フォトリソグラフィー、マイクロ/ナノ−アブレージョン、レーザー彫刻、型転写印刷、ウォータジェット切断、電食ガスプラズマエッチング、コロナ法、並びに他の化学機械的、化学光学的、化学電気的、および電気機械的な技術等の技術によって作製することができる。
【0101】
テクスチャ部における谷部(すなわち、表面に対するくぼみ)は、典型的には、物質を除去することによって作製されるが、成形または押出しによって作製されてもよい。頂部は、インプラントの表面に物質を添加することによって、または成形若しくは押出しによって作製されてもよく、このとき、頂部を形成する物質は、インプラントの表面上の他の(典型的には近接する)部位に由来する。
【0102】
本発明は、特定のインプラント素材に限定されず、インプラントおよび医療用デバイスを作製するために通常使用される多くの素材を利用することができる。例示的な素材としては、金属、ポリマー、およびセラミック等が挙げられるが、これらに限定されない。金属としては更に、ステンレス鋼、コバルトクロム、ニチノール、インコネル、モリブデン、白金、チタン、タンタル、タングステン、金、白金、イリジウム、および他の医療用グレードの金属等が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーとしては更に、ポリ(d,l−乳酸)、ポリ(l−乳酸)、ポリ(d−乳酸)、例えばポリブチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のメタクリレートポリマー、エチレンビニルアルコール、ε−カプロラクトン、グリコリド、水酸化酢酸エチルビニル、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリエステルアミド、ポリ(グリコール酸)、ポリエチレングリコールヒアルロン酸、ポリエステルアミド、ポリ(グリセロール−セバケート)、ナノスケール構造のカーボン、アセタールコポリマー、アセタールホモポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリアリールスルホン、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、スチレンアクリロニトリル、カーボンまたはカーボンファイバー;酢酸セルロース、硝酸セルロース、シリコーン、ポリエチレンテラフタレート(polyethylene teraphthalate)、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、高分子量ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ酸無水物、ポリヒドロキシ酪酸吉草酸、コポリマーおよびこれらの混合物、並びにインプラントを作製する際に使用するのに適切な他のポリマー等が挙げられるが、これらに限定されない。セラミック素材としては更に、ヒドロキシアパタイト、ジルコニアセラミック、およびパイロカーボンセラミック類似素材等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
上記の説明および例は、例示のためのものであって限定するためのものではない。本デバイスおよび本方法の他の特徴および態様は、本開示に鑑みて明らかであろう。