特許第5661641号(P5661641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000002
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000003
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000004
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000005
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000006
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000007
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000008
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000009
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000010
  • 特許5661641-磁極ホイールを備えた電気機械 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661641
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】磁極ホイールを備えた電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20150108BHJP
   H02K 1/27 20060101ALI20150108BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   H02K1/22 A
   H02K1/27 501A
   H02K1/27 502A
   H02K15/02 K
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-539991(P2011-539991)
(86)(22)【出願日】2009年11月17日
(65)【公表番号】特表2012-511304(P2012-511304A)
(43)【公表日】2012年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2009065305
(87)【国際公開番号】WO2010076081
(87)【国際公開日】20100708
【審査請求日】2011年6月8日
(31)【優先権主張番号】102008054381.0
(32)【優先日】2008年12月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト マイアー
(72)【発明者】
【氏名】フーベルト グライフ
(72)【発明者】
【氏名】クルト ロイトリンガー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ハイドリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト カルロス レタナ エルナンデス
【審査官】 西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03330975(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0214194(US,A1)
【文献】 米国特許第04998084(US,A)
【文献】 特開2004−064966(JP,A)
【文献】 特開平10−075560(JP,A)
【文献】 特開平11−155248(JP,A)
【文献】 特開2007−110873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/00−1/34
H02K15/00−15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側ロータ(2)または内側ロータ(57)として構成される磁極ホイール(1)を備え、該磁極ホイールが長手軸線(27,39,52)を有する少なくとも1つの帰磁路リング(7)を有し、該帰磁路リングに、それぞれ角度をずらされた複数の永久磁石(3,31,44,58)が交互に磁極性(14,32)を変化させて配置されている、
電気機械において、
前記帰磁路リング(7)は、長手軸線(27,39,52)方向に沿って組み合わされた少なくとも2つの部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)を有しており、
前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)は、ガイドレールに配設された少なくとも1つの固定凹部と組み合わせて使用される少なくとも1つの固定凸部(42)を有し、
前記固定凸部及び前記固定凹部は、心合わせ装置(47)を形成しており、それによって、第1の部分帰磁路リングの永久磁石が第2の部分帰磁路リングの永久磁石の間の空隙(17)に配置され、
前記固定凸部(42)と前記固定凹部とが、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)の回転安全装置(47’)も形成しており、これによって、前記部分帰磁路リングは、第1の部分帰磁路リングの永久磁石が第2の部分帰磁路リングの永久磁石へ押しつけられることがないように相互に位置決めされており、
前記固定凸部(42)は、前記長手軸線(27,39,52)に関して放射方向に、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)に形成され、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)のリング状開口(40)内への前記ガイドレールの挿入により前記固定凸部(42)は前記固定凹部に収容されている、
ことを特徴とする電気機械。
【請求項2】
前記ガイドレールは、前記電気機械の駆動シャフトとして構成されている、請求項1記載の電気機械。
【請求項3】
前記駆動シャフトは、前記リング状開口(40)に対応する直径を有している、請求項2記載の電気機械。
【請求項4】
外側ロータ(2)または内側ロータ(57)として構成される磁極ホイール(1)を備え、該磁極ホイールが長手軸線(27,39,52)を有する少なくとも1つの帰磁路リング(7)を有し、該帰磁路リングに、それぞれ角度をずらされた複数の永久磁石(3,31,44,58)が交互に磁極性(14,32)を変化させて配置されている、
電気機械において、
前記帰磁路リング(7)は、長手軸線(27,39,52)方向に沿って組み合わされた少なくとも2つの部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)を有しており、
前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)は、少なくとも1つの心合わせ突起(53)と少なくとも1つの心合わせ開口(54)とを有し、
前記心合わせ突起及び前記心合わせ開口は、心合わせ装置(54’)を形成しており、それによって、第1の部分帰磁路リングの永久磁石が第2の部分帰磁路リングの永久磁石の間の空隙(17)に配置され、
前記心合わせ突起(53)と前記心合わせ開口(54)とが、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)の回転安全装置(53’)を形成しており、これによって、前記部分帰磁路リングは、第1の部分帰磁路リングの永久磁石が第2の部分帰磁路リングの永久磁石へ押しつけられることがないように相互に位置決めされており、
前記心合わせ突起(53)は、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)にて前記長手軸線(27,39,52)に平行な軸線方向に沿って前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)から突出するように形成され、前記心合わせ開口(54)は、前記長手軸線(27,39,52)に平行な軸線方向に沿って前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)に形成されており、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,35,43,50,51,60,61)の組合せにより、前記心合わせ突起(53)は、前記心合わせ開口(54)に挿入されている、
ことを特徴とする電気機械。
【請求項5】
前記少なくとも2つの部分帰磁路リング(5,6,35,43,50,51,60,61)がロータの軸線方向で並べられて配置されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気機械。
【請求項6】
前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)のうち少なくとも1つは複数のリング状部材を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の電気機械。
【請求項7】
前記永久磁石は柱形磁石(8)である、請求項1からまでのいずれか1項記載の電気機械。
【請求項8】
外側ロータ(2)または内側ロータ(57)として構成される磁極ホイール(1)を備え、該磁極ホイールが長手軸線(27,39,52)を有する少なくとも1つの帰磁路リング(7)を有し、該帰磁路リングにそれぞれ角度をずらされた複数の永久磁石(3,31,44,58)が交互に磁極性(14,32)を変化させて配置されている、
電気機械の製造方法において、
(a)磁化可能な複数の磁束部材(24)を少なくとも2つの部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)に配置するステップと、
(b)各部分帰磁路リングの各磁束部材(24)をそれぞれ同じ磁極性で磁化して複数の永久磁石(3,31,44,58)を形成するステップと、
(c)該永久磁石を備えた各部分帰磁路リングを相互に配向するステップと、
(d)前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)の相互に配向された位置決めのために、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)の長手軸線(27,39,52)に関して放射方向に、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)に配設された少なくとも1つの固定凸部(42)と、少なくとも1つのガイドレールに配設された固定凹部とから形成される、心合わせ装置(47)及び回転安全装置(47’)を用いて、永久磁石を備えた前記部分帰磁路リングを磁極ホイール(1)に組み合わせ、第1の部分帰磁路リングの永久磁石が第2の部分帰磁路リングの永久磁石へ押しつけられることなく、交番する磁極(14,32)が形成されるようにしたステップと、
を含むことを特徴とする電気機械の製造方法。
【請求項9】
外側ロータ(2)または内側ロータ(57)として構成される磁極ホイール(1)を備え、該磁極ホイールが長手軸線(27,39,52)を有する少なくとも1つの帰磁路リング(7)を有し、該帰磁路リングにそれぞれ角度をずらされた複数の永久磁石(3,31,44,58)が交互に磁極性(14,32)を変化させて配置されている、
電気機械の製造方法において
(a)磁化可能な複数の磁束部材(24)を少なくとも2つの部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)に配置するステップと、
(b)各部分帰磁路リングの各磁束部材(24)をそれぞれ同じ磁極性で磁化して複数の永久磁石(3,31,44,58)を形成するステップと、
(c)該永久磁石を備えた各部分帰磁路リングを相互に配向するステップと、
(d)前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)の相互に配向された位置決めのために、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)の長手軸線(27,39,52)に平行な軸線方向に沿って、前記部分帰磁路リング(5,6,28,29,43,50,60,61)に配設された少なくとも1つの心合わせ突起(53)と少なくとも1つの心合わせ開口(54)とから形成される、心合わせ装置(54’)及び回転安全装置(53’)を用いて、永久磁石を備えた前記部分帰磁路リングを磁極ホイール(1)に組み合わせ、第1の部分帰磁路リングの永久磁石が第2の部分帰磁路リングの永久磁石へ押しつけられることなく、交番する磁極(14,32)が形成されるようにしたステップと、
を含むことを特徴とする電気機械の製造方法。
【請求項10】
前記ステップ(a)において、各磁束部材の長手部分を、前記複数の部分帰磁路リングの軸線方向に配置する、請求項8又は9記載の電気機械の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)において、各磁束部材を前記部分帰磁路リングの外周(15,59)および/または内周(4)に配置する、請求項8から10までのいずれか1項記載の電気機械の製造方法。
【請求項12】
前記ステップ(a)において、各磁束部材を1つのホールドパターン(21,22)によって、同時に、配置する、請求項から11までのいずれか1項記載の電気機械の製造方法。
【請求項13】
前記ステップ(b)において、各部分帰磁路リングの各磁束部材を同時に磁化する、請求項から12までのいずれか1項記載の電気機械の製造方法。
【請求項14】
前記ステップ(d)において、永久磁石を備えた前記部分帰磁路リングを、前記組み合わせの前に、実装装置(66)によって、ロータの軸線方向で並ぶように配向する、請求項から13までのいずれか1項記載の電気機械の製造方法。
【請求項15】
前記実装装置として少なくとも1つの心合わせ装置(47,54)を用いる、請求項14記載の電気機械の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側ロータまたは内側ロータとして構成された磁極ホイールを備え、この磁極ホイールが長手軸線を有する少なくとも1つの帰磁リングを有しており、この帰磁リングに、それぞれ角度をずらされた複数の永久磁石が交互に磁極性を変化させて配置されている、電気機械、特に横断磁束型電気機械に関する。
【0002】
従来技術
前述のタイプの電気機械は公知である。特に、横断磁束型電気機械は、銅の利用率およびトルク密度が高いことによる高い効率を特長としている。電気機械の磁極ホイールは内側ロータまたは外側ロータの形態のロータとして構成される。横断磁束型電気機械のステータは、磁極ホイールを中心とした周方向、あるいは、磁極ホイールの内部に、少なくとも1つのリング状コイルまたは少なくとも1つのリング状磁石の形態で設けられる。磁極ホイールの磁極は、典型的には、多数の小さな永久磁石から形成されるか、あるいは、磁束を伝導する多数のクローによって包囲された大きな1つのリング状磁石から形成される。横断磁束型電気機械の磁極ホイールの磁束はリング状コイルに対して横断方向に延在する。横断磁束型電気機械はモータまたはジェネレータとして駆動可能な電気機械を形成する。
【0003】
特に、横断磁束型電気機械の製造は、磁極ホイールにおいて、磁極歯が多数必要なために多数の個別部材を取り付けなければならないので、きわめて煩雑である。磁極ホイールの多極的な磁化、すなわち、磁極ホイールのセクションごとに磁極性を交番させる磁化は、磁石の寸法が小さい場合にしか行えないので、実装時には各永久磁石は既に極性づけられている。横断磁束型電気機械は磁極ホイールの軸線方向で多相となるが、これは、個別の複数の系(複数の相)が軸線方向で積層されることによって生じる。一方、個別の系は、相互影響を回避するために、周方向で見て相互にずれていなければならない。このように、個別の系の正確な配向はきわめて複雑である。
【0004】
1つの磁極ホイールに多数の磁極を設けるために、それぞれ磁極性の異なる多数の永久磁石が小さな空間に配列されるので、先に磁化された永久磁石の実装も前述の場合と同様に複雑である。
【0005】
したがって、本発明の課題は、簡単に製造可能であり、かつ、電気機械での高いトルク密度を形成するために強く磁化された永久磁石を配置した磁極ホイールを有する電気機械を提供することである。
【0006】
本発明の開示
本発明によれば、帰磁リングは、軸線方向で組み合わされた少なくとも2つの部分帰磁リングを有し、この少なくとも2つの部分帰磁リングは、第1の部分帰磁リングの永久磁石が第2の部分帰磁リングの永久磁石のあいだの空隙に配置されるように組み合わされる。これにより、有利には、磁極ホイールを製造する際に、まず、少なくとも1つの部分帰磁リングおよび少なくとも1つの永久磁石から成り簡単に製造可能なモジュール群が形成される。続いて、当該のモジュール群が組み合わされて、磁極ホイールが形成される。つまり、各モジュール群は、相互に距離を置いて部分帰磁リングに配置された所定数の永久磁石を有する。組み合わせによって形成された磁極ホイールは磁極性が交番するように配置された磁極を有しており、全体的な製造がいちじるしく簡単となる。磁極ホイールは特にステータの内側またはステータの周で回転するロータを形成し、ここで、ステータとロータとのあいだには動作空隙が形成される。有利には、磁極ホイールの永久磁石は電気機械内部の動作空隙で動作中に相互に接するように配置される。本発明では、電気機械とは、特に、回転する電気機械すなわちロータを有する電動機であると理解されたい。
【0007】
本発明の有利な実施形態によれば、永久磁石は柱形磁石、特に四角柱形磁石である。柱形磁石を用いることにより、複数の永久磁石を有する部分帰磁リングを簡単に組み合わせることができ、その際に各モジュール群に変形や撓みが生じない。また、柱形磁石は簡単に製造および処理できる。さらに、柱形磁石であれば、永久磁石の部分帰磁リングへの配置を特に密に行うことができる。四角柱磁石とはほぼ直方体状に構成された磁石であると解されたい。また、永久磁石を強磁性セラミック材料および/または希土類から製造してもよい。
【0008】
本発明の別の有利な実施形態によれば、部分帰磁リングは位置決めのために回転安全装置および/または心合わせ装置を有している。有利には、回転安全装置は、2つの部分帰磁リングを組み合わせた後に、各部分帰磁リングが周方向で相互に回転しないように係止する手段である。これにより、磁極ホイールの使用時に第1の部分帰磁リングの永久磁石が第2の部分帰磁リングの永久磁石に押し付けられて磁極ホイールが損傷する事態が回避される。心合わせ装置は、磁極ホイールの製造時に、2つの部分帰磁リングを正確に位置決めして簡単、迅速かつ確実に組み合わせるための手段である。
【0009】
本発明の別の有利な実施形態によれば、回転安全装置および/または心合わせ装置は、ロータの円断面で見て、部分帰磁リングに、少なくとも1つの固定凸部(舌状部)および/または少なくとも1つの固定凹部(溝部)を有する。固定凸部および/または固定凹部は、有利には、部分帰磁リングの内部領域に配置されている。当該の固定凸部および/または固定凹部は心合わせ装置すなわちマーキングとして用いられる。この場合、モジュール群は、長手軸線を中心として、2つの部分帰磁リングの固定凸部および/または固定凹部が相互に重なるまで回転されなければならない。その後、2つの部分帰磁リングが正確に組み合わされる。また、固定凸部および/または固定凹部は、対応する固定凹部および/または対応する固定凸部を備えたガイドレールと協働する回転安全装置として用いることもできる。ガイドレールは、実装時のみに用いられる部材であってもよいし、電気機械の駆動シャフトとして構成されていてもよい。
【0010】
本発明の別の有利な実施形態によれば、回転安全装置および/または心合わせ装置は、第1の部分帰磁リングに配置され、軸線方向に延在する少なくとも1つの心合わせ突起と、第2の部分帰磁リングに配置され、心合わせ突起に対応する少なくとも1つの心合わせ開口とによって形成される。回転安全装置としての利点は、部分帰磁リング間できわめて大きな力を伝送でき、その際にも部分帰磁リングが回転して周方向で相互にずれない。心合わせ突起の長手方向に対して横断方向に存在する断面は円形または多角形に形成できる。断面を多角形にすることにより、個々の心合わせ突起が部分帰磁リング相互間での回転ずれを阻止する。断面を円形にした場合、有利には、対応する心合わせ開口を有する2つ以上の心合わせ突起が利用される。心合わせ装置として心合わせ突起を用いることにより、部分帰磁リングの組み合わせに際して、各部分帰磁リングを相互に厳密に配向しなくてよくなる。なぜなら、心合わせ突起を心合わせ開口へ案内することにより、各部分帰磁リングが自動的に正確に配向されるからである。
【0011】
本発明の別の実施形態によれば、少なくとも1つの部分帰磁リングは複数のリング状部材から成る。これにより、全ての部分帰磁リングを個々の小さな部材として成形し、これらの小さな部材をまとめることによって製造できるので有利である。こうした製造は、部分帰磁リングの組み合わせ前に行われる。
【0012】
なお、本発明の電気機械を単相または多相に構成することもできる。電気機械が多相の場合は、冒頭に言及した形式の磁極ホイールが複数個用いられる。
【0013】
また、本発明は、外側ロータまたは内側ロータとして構成される磁極ホイールを備え、磁極ホイールが長手軸線を有する少なくとも1つの帰磁リングを有し、帰磁リングに複数の永久磁石が、それぞれ角度をずらされ、交互に磁極性を変化させた状態で、配置される(以下ではこれを磁極性の交番配置とも称する)、電気機械の製造方法、特に、横断磁束型電気機械の製造方法に関する。本発明の方法は、磁化可能な複数の磁束部材を少なくとも2つの部分帰磁リングに配置するステップと、各部分帰磁リングの各磁束部材をそれぞれ同じ磁極性で磁化して複数の永久磁石を形成するステップと、永久磁石を有する各部分帰磁リングを相互に配向するステップと、各部分帰磁リングを各永久磁石の磁極性が交互に変化するように組み合わせて磁極ホイールを形成するステップとを含む。
【0014】
これらの方法ステップでは、まず、少なくとも1つの部分帰磁リングと少なくとも部分的に磁化された複数の永久磁石とから成る少なくとも2つのモジュール群が形成される。磁化はモジュール群ごとに同じ磁極性で行われるので、1つのモジュール群の全ての永久磁石の磁化方向が等しくなる。このように、磁化方向が等しいため、製造プロセスが大幅に簡単化される。続いて、各モジュール群すなわち複数の永久磁石を備えた各部分帰磁リングが、各磁極が交互に変化するように相互に配向され、磁極ホイールとしての組み合わせが簡単化される。組み合わせは特に各モジュール群を相互に押し嵌めることによって行われる。磁化可能な磁束部材が部分帰磁リングに配置される際に、各磁束部材は部分帰磁リングに固定される。部分帰磁リングの組み合わせは、2つの部分帰磁リングの各永久磁石の極性が軸線方向で対向するように行われる。これにより、各モジュール群を同じ形状に構成でき、同様に磁化できる。なお、本発明における磁束部材とは、磁化可能な硬磁性材料から成る部材であると解されたい。
【0015】
本発明の別の有利な実施形態によれば、各磁束部材の長手部分が、各部分帰磁リングの軸線方向に配置される。特に有利には、磁束部材の長手方向は、部分帰磁リングの軸線方向に相当する。
【0016】
本発明の別の有利な実施形態によれば、各磁束部材は、部分帰磁リングの外周および/または内周に配置される。外周および/または内周での配置により、磁束部材(後に永久磁石となる部材)を、ロータとステータとのあいだの動作空隙に特に密に配置することができる。磁束部材を構成する場合、各磁束部材は部分帰磁リングの外縁および/または内縁から軸線方向で突出するように配置され、それぞれ他方の部分帰磁リングに対する支承部材として用いられる。当該の構成に基づいて、各モジュール群は全体として凹凸構造を有することになる。各モジュール群を組み合わせることにより、凹凸構造が相互にかみ合うので、一方では磁極性の交番配置が達成され、他方では磁束部材相互の回転ずれが阻止される。
【0017】
本発明の別の有利な実施形態によれば、各磁束部材がホールドパターンを用いて特に同時に配置される。特に有利には、磁化されていない磁束部材をホールドパターン内に配置し、これを部分帰磁リングへ簡単に配置することができる。この場合、有利には、ホールドパターンは、磁束部材が部分帰磁リングに固定されるまでのあいだ、磁束部材を支承する。各磁束部材が部分帰磁リングに配置された後、ホールドパターンは取り外されるので、当該のホールドパターンは実装補助手段である。このようにすれば、磁極ホイールの製造作業の手間が低減される。なぜなら、複数の磁束部材をモジュール群ごとに配置でき、従来技術のごとく個々に部分帰磁リングに配置しなくてよくなるからである。ホールドパターンは有利には凹凸部分としてまたは熊手状部分として構成することができる。
【0018】
本発明の別の有利な実施形態によれば、各部分帰磁リングの磁束部材が同時に磁化される。この実施形態では、個々の部分帰磁リングの磁束部材全体が共通に等しい方向で磁化される。このため、唯一の磁化装置を用いた1回のステップのみで磁化が行えるので有利である。この利点は、磁極性の交番配置がモジュール群の組み合わせによって生じ、多極的な磁化を行う必要がないことに由来する。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、磁化された永久磁石を有する各部分帰磁リングが、組み合わせの前に、実装装置によって、相互に配向される。多数の磁束部材ひいては多様な方向の磁力が存在するため、組み合わせに際してモジュール群を正確に配向しなければならないが、このことは、磁化された磁束部材すなわち第1の部分帰磁リングの永久磁石が第2の部分帰磁リングの永久磁石のあいだの空隙に挿入されることによって達成される。このために、有利には、2つのモジュール群を相互に分離して正確に配向して収容し、組み合わせを可能にする実装装置が設けられる。
【0020】
本発明の別の有利な実施形態によれば、実装装置として少なくとも1つの心合わせ装置が用いられる。
【0021】
本発明の別の有利な実施形態によれば、実装装置として、各磁束部材に対する複数のガイド溝を周方向に備えたガイドリングが用いられる。ガイドリングは、第1のモジュール群が一方側から当該のガイドリング内またはガイドリング上へ押し込まれた際に、磁化された磁束部材の一部がガイド溝に収容され、これにより第1のモジュール群がガイドされるように構成されている。同様に、第2のモジュール群は他方側から当該のガイドリング内またはガイドリング上へ押し込まれ、ガイド溝に収容される。つまり、2つのモジュール群はガイドリング内またはガイドリング上でガイドリングの軸線方向に押し込まれることによって組み合わされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】磁極ホイールの一部を示す斜視図である。
図2】組み合わせの際の磁極ホイールの一部を示す斜視図である。
図3】磁束部材を部分帰磁リングに配置する様子を示す図である。
図4】磁極ホイールの別の実施例を示す図である。
図5】心合わせ突起および心合わせ開口を有する2つの部分帰磁リングを示す図である。
図6】永久磁石を備えた2つの部分帰磁リングをガイドリング内で組み合わせる様子を示す図である。
図7】固定凸部を有する第1の部分帰磁リングを示す図である。
図8】固定凸部を有する第2の部分帰磁リングを示す図である。
図9】固定凸部を有する第1の部分帰磁リングの別の実施例を示す図である。
図10】固定凸部を有する第2の部分帰磁リングの別の実施例を示す図である。
【0023】
以下に本発明を図示の実施例に則して詳細に説明する。
【0024】
図1には、図示されていない横断磁束型電気機械の磁極ホイール1の部分図が示されている。磁極ホイール1は外側ロータ2として構成されている。外側ロータ2は、複数の永久磁石3を2つの部分帰磁リング5,6の内周4に配置した形態で構成されている。部分帰磁リング5,6は協働して1つの帰磁リング7を形成している。各永久磁石3は、四角柱形9の柱形磁石8として構成されている。また、各永久磁石3は、N極10およびS極11を有する。各永久磁石3は、軸線方向(図1の矢印12の方向)に長手部分を有しており、周方向(図1の矢印13の方向)に磁極性の交番配置14を有している。部分帰磁リング5,6あるいは帰磁リング7はそれぞれリング状に構成されている。磁極ホイール1は、各永久磁石3を部分帰磁リング5,6の外周15の側に配置することによって内側ロータとして構成することもできるが、こうした構成は図1には示されていない。
【0025】
図2には、図1の永久磁石3およびその他の要素を有する部分帰磁リング5,6の詳細が示されている。図1とは異なり、図2では、部分帰磁リング5,6の一部のみが組み合わされ、磁極ホイール1が形成される途中である。図2から、複数の永久磁石3と第1の部分帰磁リング5または第2の部分帰磁リング6とがそれぞれのモジュール群16を形成し、2つのモジュール群が組み合わされる様子が明らかである。ここでは、第1の部分帰磁リング5の永久磁石が第2の部分帰磁リング6の永久磁石間の空隙17に入るように、2つのモジュール群16が軸線方向で相互に押し込まれており、そのことが矢印18〜20で示されている。ここから、各モジュール群16がそれぞれ同じ向きに配向された磁極(N極10またはS極11)を有することがわかる。このように、2つのモジュール群16、すなわち、複数の永久磁石3を備えた部分帰磁リング5,6を組み合わせることにより、図1に示されている磁極性の交番配置14が形成される。
【0026】
図3には、図1の部分帰磁リング5,6と、部分帰磁リング5,6にそれぞれ1つずつ対応するホールドパターン21,22とが側面図で示されている。ホールドパターン21,22は部分帰磁リング5,6を中心として延在し、ガイド栓23によって凹凸部を有するように構成されている。各ホールドパターンの2つのガイド栓23のあいだに、磁化可能な磁束部材24が配置されている。磁束部材24はホールドパターン21,22によって対応する部分帰磁リング5,6に支承されており、そこに配置されている。特に、磁束部材24は図示の位置で部分帰磁リング5,6に固定されている。各部分帰磁リング5,6は長手軸線25を有しており、この長手軸線25を中心として回転対称に延在している。各部分帰磁リング5,6の構造に依存して、ホールドパターン21,22は、凹凸部材21’,22’としてまたは熊手状部材として構成することができる。ホールドパターン21,22は磁束部材24を部分帰磁リング5,6に配置した後に除去される実装補助手段である。実装補助手段を用いることにより、磁束部材24が正確に位置決めされ、その長手部分が部分帰磁リングの軸線方向に配向される。また、図3には、円断面方向で磁極性が交番するように配置された複数の磁極も示されている。
【0027】
図4には、長手軸線27および部分帰磁リング28,29を有する磁極ホイール1の別の実施例26が示されている。部分帰磁リング28,29は、軸線方向すなわち長手方向27で、部分帰磁リング28,29が組み合わせによってかみ合うように成形されている。部分帰磁リング28,29の外周30にはそれぞれ複数の永久磁石31が被着されており、これらの永久磁石31が長手軸線27を中心とした周方向で磁極性の交番配置32を形成する。各永久磁石31は円断面方向に配向されるN極33およびS極34を有している。
【0028】
図5には、軸線方向で長手軸線52に沿って配置された2つの部分帰磁リング50,51が示されている。部分帰磁リング50,51はそれぞれ心合わせ突起53および心合わせ開口54を有している。各心合わせ突起53は他方の部分帰磁リングの相応の心合わせ開口54に対応している。部分帰磁リング50,51を矢印55に沿って組み合わせることにより、心合わせ突起53が心合わせ開口54へ挿入される。これらの心合わせ突起53および心合わせ開口54は、一方では長手軸線52を中心とした周方向で回転安全装置53’を形成しており、他方では心合わせ装置54’となっている。なぜなら、部分帰磁リング50,51は組み合わせにより相互に配向されるからである。
【0029】
図6には、永久磁石58を磁極ホイール1の外套面59に配置することにより内側ロータ57として構成された磁極ホイール1の別の実施例56が示されている。磁極ホイール1は矢印62に沿って組み合わされた2つの部分帰磁リング60,61から成る。組み合わせを容易にするために、軸線方向のガイド溝64を有するガイドリング63が設けられており、ガイド溝64はガイドリング63の内周65に構成されている。ガイド溝64は永久磁石58と同様に周方向に延在している。これにより、各部分帰磁リング60,61の永久磁石58は遊びなしにガイドリング63に案内される。したがって、第1の部分帰磁リング62をその永久磁石58とともにガイドリング63の軸線方向の一方側から、第2の部分帰磁リング61をその永久磁石58とともにガイドリング63の軸線方向の他方側から、載置することができる。その後、2つの部分帰磁リング62,61を相互に押し込んで、組み合わせる。なお、ガイドリング63は実装の後に除去される実装装置66であって、磁極ホイール1の動作にとっては必要ない。
【0030】
図7には、外周36に複数の永久磁石37を備えた部分帰磁リング35が示されている。各永久磁石37はそれぞれ1つずつS極38を有する。S極38に対応するN極は、図の平面に対して直交して延在する長手軸線39の方向でS極38の下方に配置されている。リング状開口40を形成する部分帰磁リング35の内周41には固定凸部42が構成されている。当該の固定凸部42は円断面方向で見てリング状開口40内へ突出している。
【0031】
図8には、図7の部分帰磁リング35に対応する部分帰磁リング43が示されている。図8の部分帰磁リング43は図7の部分帰磁リング35と同じ要素を有している。図7の実施例とは異なり、図8の部分帰磁リング43では、図で見えているほうの側の外周36にN極45を有する永久磁石44が配置されている。N極45に対応するS極は、長手方向39で見てN極45の下方に配置されている。ここでの永久磁石44は、図7の部分帰磁リング35の永久磁石38に対して角度がずらされている。
【0032】
図7の永久磁石38を備えた部分帰磁リング35と図8の永久磁石44を備えた部分帰磁リング43とを組み合わせることにより、磁極性の交番配置14が形成される。ここで、固定凸部42は心合わせ装置47として用いられる。つまり、固定凸部42は、部分帰磁リング35,43を軸線方向で相互に重ね合わせ、正確に配向するためのマーキング46として用いられる。特に、永久磁石44,37は相互に角度がずらされた状態で正確に配置される。また、図示されていないガイドレールに沿って配向を行うための固定凸部42を用いることもできる。ガイドレールは固定凸部42に対応する固定凹部を有しており、リング状開口40内に挿入され、これにより部分帰磁リング35,43が正確に配向される。さらに、固定凸部42は、横断磁束型電気機械の駆動シャフトとして構成されたガイドレールと協働することにより、回転安全装置47’としても利用される。駆動シャフトは有利には部分帰磁リング35,43の内径としての径を有しており、固定凸部42を収容する対応の固定凹部を有している。駆動シャフトは部分帰磁リング35,43を確実に固定するためにリング状開口40内へ挿入される。
【0033】
図9には、図7の部分帰磁リングの別の実施例48の部分図が示されている。この実施例48の部分帰磁リングでは、図7の部分帰磁リング35と異なり、多数の小さな永久磁石38が外周36に配置されている。
【0034】
図10には、永久磁石44およびその他の要素を備えた図8の部分帰磁リング43の別の実施例49が示されている。なお、ここでの部分リング43は図9の部分帰磁リング35に対応する部分帰磁リングである。図10の実施例49では、図8の実施例とは異なり、多数の小さな永久磁石44が外周に配置されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10