特許第5661649号(P5661649)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5661649-電解液を供給する装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661649
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】電解液を供給する装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/36 20060101AFI20150108BHJP
【FI】
   H01M2/36 101J
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-547335(P2011-547335)
(86)(22)【出願日】2010年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2010007571
(87)【国際公開番号】WO2011080918
(87)【国際公開日】20110707
【審査請求日】2013年8月30日
(31)【優先権主張番号】特願2009-298357(P2009-298357)
(32)【優先日】2009年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598142014
【氏名又は名称】長野オートメーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】山浦 誠司
(72)【発明者】
【氏名】平井 健一
【審査官】 渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−055238(JP,A)
【文献】 特開2007−213816(JP,A)
【文献】 特開2004−247120(JP,A)
【文献】 特開平5−325944(JP,A)
【文献】 特開2008−59973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ内の計量空間をピストンが第1の方向に沿って動く計量ユニットを含む供給装置により減圧室内に配置されたバッテリ容器内に電解液を供給することを含む方法であって、
前記供給装置は、前記バッテリ容器に対し上方から電解液を注入するディスペンサと、
前記計量ユニットの前記計量空間の上端部と前記ディスペンサとをつなぐ第1の管路と、
前記第1の管路に配置された背圧弁と、
前記ディスペンサは、前記減圧室内に配置された先端から電解液を吐出する吐出ノズルであって、前記バッテリ容器内または前記バッテリ容器の上端近傍に配置される吐出ノズルと、
前記吐出ノズルの内側に配置され、前記吐出ノズルを開閉するニードル弁とを含み、
前記電解液を供給することは、
制御ユニットが、前記ピストンを動作させて前記背圧弁に背圧を加え、前記計量空間の上端部から前記第1の管路の前記背圧弁および前記ニードル弁を介して電解液を前記減圧室内の前記バッテリ容器に注入することと、
前記ピストンを止めて前記背圧弁を閉じることとを含む、方法。
【請求項2】
請求項1において、前記背圧弁は前記背圧弁の上流の第1の管路の静圧に対抗するように設定されており、
前記注入することは、前記ピストンを動作させると即座に前記背圧弁が開かれることを含み、
前記背圧弁を閉じることは、前記ピストンの動作を止めると即座に前記背圧弁が閉じられることを含む、方法。
【請求項3】
請求項2において、前記電解液を供給することは、前記ピストンの動作を止めるとともに前記ニードル弁を閉じることをさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記供給装置は、さらに、前記計量空間の電解液の流入をオンオフする入口弁と、
前記入口弁と前記計量空間の下端部とを接続する第2の管路とを有し、
前記電解液を供給することは、
前記制御ユニットが、前記入口弁を開き、前記ピストンを動作させて前記第2の管路を介して前記計量空間の下端部から電解液を前記計量空間に流入させることと、
前記注入することの前に、前記入口弁を閉じることとを含む、方法。
【請求項5】
減圧室内に配置されたバッテリ容器内に電解液を供給する装置であって、
シリンダ内の計量空間をピストンが第1の方向に沿って動く計量ユニットと、
前記バッテリ容器に対し上方から電解液を注入するディスペンサと、
前記計量ユニットの前記計量空間の上端部と前記ディスペンサとをつなぐ第1の管路と、
前記第1の管路に配置された背圧弁とを有し、
前記ディスペンサは、前記減圧室内に配置された先端から電解液を吐出する吐出ノズルであって、前記バッテリ容器内または前記バッテリ容器の上端近傍に配置される吐出ノズルと、
前記吐出ノズルの内側に配置され、前記吐出ノズルを開閉するニードル弁と、
前記ニードル弁を上下に駆動するアクチュエータとを含む、装置。
【請求項6】
請求項5において、前記ディスペンサは、前記吐出ノズルが下端に装着され、上下に延びたシリンジと、
前記シリンジを上下に貫通し、前記ニードル弁を前記アクチュエータにより上下に動かすための弁制御棒とを含み、
前記第1の管路は、L字型で、一方の端が前記シリンジの側方に接続され、他方の端が前記計量空間の上端部に接続され、コーナー近傍の上下に延びた部分に前記背圧弁が配置されている、装置。
【請求項7】
請求項6において、前記シリンジは、前記計量空間の下端部より下側に延びている、装置。
【請求項8】
請求項5ないし7のいずれかにおいて、前記第1の管路は、少なくとも前記計量空間の下端部の近傍まで延び、前記背圧弁は、前記第1の管路の前記計量空間の下端部の近傍に相当する位置に配置されている、装置。
【請求項9】
請求項5において、前記第1の方向は上下方向であり、
さらに、前記計量空間の電解液の流入をオンオフする入口弁と、
前記入口弁と前記計量空間の下端部とを接続する第2の管路とを有する、装置。
【請求項10】
請求項5において、前記背圧弁は、ボールと前記ボールを付勢するコイルばねとを含む弁である、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ容器内に電解液を供給する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッテリ容器内に電解液を供給する工程において、電解液を浸透させる時間を短縮するなどの目的で、バッテリ容器を真空雰囲気(減圧雰囲気)内に配置することが行われている。
【0003】
日本国特許公開公報2008−59973号には、電池ケース内を、有機電解液の沸点以下の−70kpa〜−95kpaの範囲内の真空度に真空引きする工程と、所定量の有機電解液を注入した注液ホッパー内の一時貯液室を電池ケース内の圧力に対し0.1kpa〜5kpaだけ高い圧力差が生じる真空度に真空引きする工程と、注液ホッパーの注液口を開いて一時貯液室内の有機電解液を圧力差により注液口およびこれに連接させた注液ノズルを介して電池ケース内に注液する工程とを有する、リチウム二次電池の注液方法が開示されている。
【発明の開示】
【0004】
電解液をバッテリ容器(電池ケース)に注入する時間(注液時間)を短縮するために、電池ケース内を負圧にしたり、所定量ずつ分割して注液(分注)したり、負圧雰囲気で分注したりすることが行われている。いずれの場合も、電解液の飛散を抑制し、注液精度を確保することが重要である。
【0005】
本発明の一態様は、減圧室内に配置されたバッテリ容器内に電解液を供給する装置(供給装置)である。この装置は、シリンダ内の計量空間をピストンが第1の方向に沿って動く計量ユニットと、バッテリ容器に対し上方から電解液を注入するディスペンサと、計量ユニットの計量空間の上端部とディスペンサとをつなぐ第1の管路と、第1の管路に配置された背圧弁とを有する。ディスペンサは、減圧室内に配置された先端から電解液を吐出する吐出ノズルであって、バッテリ容器内またはバッテリ容器の上端近傍に配置される吐出ノズルと、吐出ノズルの内側に配置され、吐出ノズルを開閉するニードル弁と、ニードル弁を上下に駆動するアクチュエータとを含む。



【0006】
本発明の他の態様の1つは、上記の供給装置により減圧室内に配置されたバッテリ容器内に電解液を供給することを含む方法である。電解液を供給することは、以下のステップを含む。
・制御ユニットが、ピストンを動作させて背圧弁に背圧を加え、計量空間の上端部から第1の管路の背圧弁およびニードル弁を介して電解液を減圧室内のバッテリ容器に注入すること。
・ピストンを止めて背圧弁を閉じること。
【0007】
電解液を供給(注入、分注)するバッテリ容器は減圧室内に配置される。一方、電解液は減圧室外、典型的には大気圧雰囲気から供給される。さらに、電解液の飛散を抑制するために、電解液をポンプなどで加圧して注入する代わりに液柱の圧力(静圧、液圧)でバッテリ容器内に注入する。しかしながら、バッテリ容器への注入口には、バッテリ容器が収納されている室内が減圧されていることによる差圧と、電解液の静圧とが加わり、電解液が減圧室側へ強く吸引される。このため、注液量の制御が難しい。さらに、注入口からの液漏れ(液だれ)を停止させにくい。すなわち、液切りが悪い。これらの原因で液だれが収まるまで時間がかかることが、注液時間を短縮することを難しくしている理由の1つであることを本願の発明者らは見出した。
【0008】
本発明の一態様の供給装置(注液装置)においては、ディスペンサの上流に計量ユニットを配置し、計量空間の上端部をディスペンサと連通させている。したがって、注液量を計量ユニットで計量できる。それとともに、計量空間の容積は配管より大きくなるので、ディスペンサに印加される静圧を小さくできる。さらに、計量空間の上端部においてディスペンサと接続することにより、計量空間の静圧はディスペンサに実質的に印加されず、計量空間の流入側を入口弁などで遮断することにより計量空間より上流の静圧の影響を抑制できる。このため、計量空間およびディスペンサをつなぐ管路における静圧と、ディスペンサ内の静圧と、減圧されていることによる差圧とが実質的に吐出ノズルに加わることになるが、それらの圧力の和は、管路およびディスペンサ内を電解液が流れる際の圧力損失にほぼ匹敵する程度となる。したがって、電解液のオンオフを容易に制御できる条件を提供できる。
【0009】
さらに、計量空間の上端部がディスペンサに連通しているので計量空間内に圧縮性流体である気体が溜まりにくい。したがって電解液の飛散を抑制でき、注液精度の向上に寄与する。
【0010】
これらに加え、この注液装置は、計量ユニットの計量空間の上端部とディスペンサとをつなぐ第1の管路に背圧弁を設けている。このため、計量空間内をピストンが動いて背圧弁に所定の背圧が加わることにより、ピストンの動きに対応する量の電解液を吐出ノズルの先端から精度良く吐出できる。また、ピストンの動きによる背圧弁の出口(ディスペンサ側)の圧力上昇は小さい。したがって、ピストンの動きにより注液量の制御が容易となり、液切れ性が改善される。このため、注液精度を向上し、注液時間を短縮できる。
【0011】
背圧弁を、背圧弁の上流の第1の管路の静圧に対抗するように設定することにより、注入する際にピストンを動作させると即座に背圧弁は開かれ、ピストンの動作を止めると即座に背圧弁は閉じられる。
【0012】
さらに、吐出ノズルにおける圧力差が小さいので、ピストンの動作を止めるとともにニードル弁を閉じることにより液切れ性はいっそう改善される。したがって、注液精度を確保しやすく、注液時間も短縮しやすい装置および方法を提供できる。
【0013】
この装置において、ピストンが動く第1の方向は、典型的には上下方向である。この装置は、さらに、計量空間への電解液の流入をオンオフする入口弁と、入口弁と計量空間の下端部とを接続する第2の管路とを有することが好ましい。また、電解液を供給することは、制御ユニットが入口弁を開き、ピストンを動作させて第2の管路を介して計量空間の下端部から電解液を計量空間に流入させることと、注入する前に入口弁を閉じることとを含むことが好ましい。ピストンが上下方向に動き、計量空間の下端部から電解液を供給することにより、計量空間内において電解液が比較的スムーズに流入し、気泡の発生を抑制できる。
【0014】
背圧弁の典型的なものは、ボールと、このボールを付勢するコイルばねとを含む弁である。このタイプの背圧弁であっても、第1の管路中に配置されるため、コイルばねは電解液に浸り、空気と接触する機会は少ないので腐食による損傷を抑制することができる。
【0015】
さらに、この装置において、第1の管路は、少なくとも計量空間の下端部の近傍まで延び、背圧弁は、第1の管路の計量空間の下端部の近傍に相当する位置に配置されていることが好ましい。背圧弁により、背圧弁の上流、すなわち、計量空間に相当する静圧がディスペンサ側に印加されるのを抑制できる。したがって、液切れをさらに改善でき、注液精度を確保しやすく、注液時間も短縮しやすい。
【0016】
この装置において、ディスペンサは、吐出ノズルが下端に装着され、上下に延びたシリンジと、シリンジを上下に貫通し、ニードル弁をアクチュエータにより上下に動かすための弁制御棒とを含むものであることが好ましい。また、第1の管路は、L字型で、一方の端がシリンジの側方に接続され、他方の端が計量空間の上端部に接続され、コーナー部分に背圧弁が配置されているものであることが好ましい。このような構成は、本発明の装置の好適な形態の1つである。
【0017】
また、この場合、減圧室内に配置されたバッテリ容器内に良好に電解液を供給するためには、ディスペンサのシリンジが計量空間の下端より下側に延びていることが好ましい。さらに、背圧弁は、コーナー部分の近傍であって、第1の管路の上下に延びた部分に配置されていることが好ましい。背圧弁が、ボールとこのボールを付勢するコイルばねとを含む弁などである場合には、特にこのような構成は好ましい。背圧弁を第1の管路の上下に延びた部分に配置することにより、コイルばねの動作を上下方向の動作とすることができるため、弁としての機能(動作)がより安定する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかる電解液供給装置(注液装置)の概略構成を示す図。
図2】注液装置の動作を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の一実施形態にかかる装置の概略構成を示している。この装置1は、減圧室100内の減圧雰囲気102に配置されたバッテリ容器200の内部に電解液19を供給(注液、注入)するシステム(電解液供給装置、注液装置、注入装置)である。なお、このシステム1は、以下において注液装置と称する。減圧室100の内部は真空ポンプ110により所定の圧力(負圧)になるように減圧される。
【0020】
注液装置1は、減圧室100の上壁(天板)101の上に配置された計量ユニット10と、計量ユニット10の上流に配置されたリザーバー(リザーバータンク)2と、計量ユニット10の下流に配置されたディスペンサ20と、注液装置1による電解液19の注入を制御する制御ユニット30とを備えている。典型的な制御ユニット30は、CPUおよびメモリを含むハードウェア資源を備え、プログラム(プログラム製品)を実行することにより注液装置1を制御し、バッテリを製造する過程においてバッテリ容器200に電解液19を供給するものである。
【0021】
図1において、太線は電解液19の流路(管路)、太い破線は制御用空気の流路(管路)、斜線付きの細線は制御用の電気信号を伝達する配線をそれぞれ示す。電解液19は可燃性の有機溶媒を含むものがあり、減圧室100の周囲、すなわち、注液装置1の計量ユニット10が設置される領域は一般的に防爆領域Hに含まれる。
【0022】
計量ユニット10の上流のリザーバー2は、電解液供給手段のヘッダー3に接続され、計量ユニット10が数回分注する液量を一時的に確保する。リザーバー2は、ヘッダー3と計量ユニット10と間のバッファとなり、ヘッダー3の供給能力に対して計量ユニット10の消費量が一時的にオーバーすることをカバーする。したがって、計量ユニット10は高速に動作できる。また、リザーバー2は気液分離機構を兼ねており、ベント弁4からリザーバー2の上部に溜まった気体を排出できる。ベント弁4は、防爆を考慮し、空気作動弁(エアー駆動弁)が用いられ、防爆領域H外に設けられた第1の電磁弁31および制御ユニット30により制御用空気を介して制御される。なお、制御用空気は、コンプレッサーに繋がった制御用空気ヘッダー39を介して供給される。
【0023】
計量ユニット10は、シリンダ11とピストン12とを有する。シリンダ11は上下に延びており、シリンダ内をピストン12が上下方向(鉛直方向、第1の方向)に沿って動く。細い破線で示すようにシリンダ11の内部のピストン12が出入りする領域が計量空間Sとなっており、ピストン12の出入りする量(ストローク)を制御することにより計量空間Sで計量される電解液19の量を自在に制御(調整)できる。
【0024】
計量ユニット10は、さらに、ピストン12を上下に駆動するサーボモータ13を含む。サーボモータ13の回転量、回転速度および回転方向を制御ユニット30により制御することによりピストン12のストロークを変え、ピストン12を上下に移動できる。たとえば、サーボモータ13としてステッピングモータを用い、パルス制御することにより高分解能な容量可変制御を行うことができる。計量ユニット10として、ストロークを可変制御可能なプランジャーポンプを用いることができる。
【0025】
注液装置1は、計量ユニット10の計量空間Sへの電解液19の流入をオンオフ(開閉)する入口弁5を含む。入口弁5は、計量ユニット10の計量空間Sの下端部S1に設けられた入口ポートP1と管路(第2の管路)42により接続されている。入口弁5は、入口ポートP1の近傍に配置され、第2の管路42をできるだけ短くし、計量空間Sにおける計量精度の低下を防いでいる。入口弁5とリザーバー2とは管路(第3の管路)43により接続されている。入口弁5も、防爆領域H内であることを考慮し空気作動弁(エアー駆動弁)が用いられ、防爆領域H外に設けられた第2の電磁弁32および制御ユニット30により制御用空気を介して制御される。
【0026】
注液装置1は、バッテリ容器200に対し上方から電解液19を注入するディスペンサ20を含む。ディスペンサ20は、バッテリ容器200内またはバッテリ容器200の上端近傍に配置される吐出ノズル21と、この吐出ノズル21が下端に装着された単管(円筒またはシリンジ、以降においてはシリンジ)22と、吐出ノズル21の内側に配置されてこの吐出ノズル21の先端を開閉するニードル弁23と、シリンジ22の内部を上下に貫通するように設けられた弁制御棒25と、弁制御棒25を介してニードル弁23を上下に駆動し、ニードル弁23を開閉制御する空気駆動型のアクチュエータ24とを含む。ニードル弁23はノーマルオフ(ノーマル閉)であり、弁制御棒25を介してニードル弁23を吐出ノズル21の先端に付勢する手段(例えば、コイルばね)26を含む。
【0027】
シリンジ22は、減圧室100の上壁101を貫通して上下に延びており、先端は減圧室100の内部102に配置されたバッテリ容器200に到達している。したがって、シリンジ22の先端(下端)となる吐出ノズル21の周りは減圧雰囲気となっている。シリンジ22の下端は、上壁101の上に配置された計量ユニット10の計量空間Sの下端部S1よりも下側まで延びている。
【0028】
シリンジ22の内部を弁制御棒25が貫通しており、シリンジ22の弁制御棒25に沿った部分が、電解液19が流れる空間となっている。したがって、シリンジ22の内径に対し適当な外径の弁制御棒25を選択することにより、計量ユニット10からシリンジ22の先端の吐出ノズル21に至る管路の面積を調整できる。このため、適切な内径のシリンジ22と適切な外径の弁制御棒25を選択することにより、電解液19の粘度、減圧室100の内圧(負圧)、電解液19の流量などの注入条件に合わせて、計量ユニット10から吐出ノズル21までの圧力損失を制御できる。したがって、この構成をもちいて、バッテリ容器200にスムーズに電解液19を注入できる条件を設定できる。
【0029】
弁制御棒25は、吐出ノズル21の内側を開閉するニードル弁(カット弁)23をアクチュエータ24により上下に動かすためのものである。弁制御棒25の先端(下端)にニードル弁23が接続され、他端(上端)がアクチュエータ24と接続されている。ニードル弁23は、コイルばね26によりノーマルオフに設定されている。アクチュエータ24は空気作動であり、第3の電磁弁33により制御空気を送ることによりニードル弁23はオン(開)され、制御空気を排出することによりオフ(閉)される。シリンジ22の内部に設けられたニードル弁23により吐出ノズル21の直上を閉じることにより、吐出ノズル21が減圧雰囲気に面している場合においても、吐出ノズル21からの電解液19の液漏れを抑制でき、液切れ性を改善できる。
【0030】
ディスペンサ20は、計量ユニット10の計量空間Sの上端部S2に設けられた出口ポートP2と管路(第1の管路)41により接続されている。この第1の管路41は、少なくとも計量空間Sの下端部の近傍まで鉛直方向(上下)に延びる第1の部分41aと、第1の部分41aの下端からディスペンサ20の上端に向かって水平方向に延びる第2の部分41bとを有する。すなわち、第1の管路41は、全体としてL字型に形成されており、水平に延びた部分の一方の端(第2の部分41bの端)がシリンジ22の側方に接続され、垂直(鉛直)に延びた部分の他方の端(第1の部分41aの端)が計量空間Sの上端部S2に接続されている。
【0031】
第1の管路41の途中であって、第1の管路41の計量空間Sの下端部の近傍に相当する位置に、背圧弁50が配置されている。本例では、背圧弁50は、第1の管路41の第1の部分41aと第2の部分41bとのコーナー部分の、上下に延びた第1の部分41aの側に配置されている。
【0032】
背圧弁50は、ボール51と、このボール51を上方に付勢し、この背圧弁50を閉(オフ)に維持するコイルばね52とを含む。コイルばね52は、計量ユニット10のピストン12が動作(ストローク、この場合は下側に移動)しない限り、背圧弁50を介して電解液19が流れない程度の圧力をボール51に与えるように設定されている。たとえば、減圧室内102の最大負圧(真空度)と大気圧との差圧が背圧として加わっても電解液19が流れない設定になっている。この背圧弁50は、減圧室内102の負圧がブレークして大気圧となったり、あるいは逆に加圧されることによる、シリンジ22の内圧が計量空間Sの内圧よりも高くなる異常事態では逆止弁としても作用する。
【0033】
図2に、バッテリを製造する過程において、制御ユニット30の制御により、注液装置1がバッテリ容器200に電解液19を供給する方法の一例を示している。この例においては、注液装置1は、バッテリ容器200に電解液19を複数回に分けて注入(分注)する。まず、分注開始する時刻t0にいったんベント弁4を開閉し、リザーバー2をベントする。
【0034】
時刻t1に入口弁5を開き、ニードル弁(カット弁)23が閉じた状態で、リザーバー2と計量ユニット10の計量空間Sとを連通させる。時刻t2にピストン12のストローク(上方への動作)を開始し、時刻t3にストロークを停止することにより所定の量の電解液19を計量空間S内に流入させる(電解液を計量空間に流入させる工程)。ピストン12が上方へストロークしている間は、背圧弁50を開にする背圧が背圧弁50には加わらず、背圧弁50は閉じた状態に維持される。
【0035】
この注液装置1においては、ピストン12の動きを、サーボモータ13を介してパルス制御しているので、ピストン12の移動速度は可変である。このため、図2において電解液19の引き込み速度を示す角度θ1を任意に変えることができる。したがって、電解液19の特性、引き込み条件などにより引き込み速度θ1を上昇できる環境であれば、引き込み速度θ1を早くして注液時間を短縮することが可能である。
【0036】
電解液19を計量空間Sに引き込む際、計量空間Sをピストン12が上方に移動するのに応じて、電解液19は、入口弁5および第2の管路42を経由して計量空間Sの下端部S1の入口ポートP1から流入する。したがって、ピストン12の動きと、電解液19の流入するポートP1とは離れる方向になるので、電解液19は比較的スムーズに、乱流が起こりにくい状況で計量空間Sに流入する。このため、計量空間Sの内部で気液分離が起こりにくい。
【0037】
ピストン12のストロークが停止した後、時刻t4に入口弁5を閉じる(入口弁を閉じる工程)。入口弁5が閉じた後、時刻t5にニードル弁23を開く(ニードル弁を開く工程)。入口弁5を閉じているので、計量空間Sは入口弁5の上流の系から遮断され、リザーバー2を含む上流の系の静圧は計量空間Sに加わらない。したがって、ニードル弁23に計量ユニット10の上流、すなわち、入口弁5より上流のシステムの静圧が印加されるのを防止できる。
【0038】
また、シリンダ11およびピストン12により構成される計量空間Sの断面積は配管の断面積の1桁以上、通常は2桁〜3桁以上大きい。したがって、分注する電解液19を断面積の大きな計量空間Sにいったん蓄積することにより、分注する電解液19の静圧(液柱による圧力)がニードル弁23に印加されるのを最小限に抑えることができる。さらに、この注液装置1においては、背圧弁50によりニードル弁23に加わる圧力をさらに抑制している。
【0039】
ニードル弁23を開いた後、時刻t6にピストン12のストローク(下方へ動作)を開始する。計量ユニット10の計量空間Sの上端部S2とディスペンサ20とをつなぐ第1の管路41に背圧弁50を設けている。このため、バッテリ容器200に電解液19を供給する際にディスペンサ20の吐出ノズル21のニードル弁23を時刻t5において開いても、この時点では電解液19は吐出されない。時刻t6にピストン12が動いて背圧弁50に所定の背圧が加わることにより背圧弁50が開き、ピストン12の動きに対応する量の電解液19が吐出ノズル21の先端から精度良く吐出される(電解液を注入する工程)。
【0040】
また、背圧弁50が設けられた第1の管路41は、計量空間Sの上端部S2の出口ポートP2に接続されており、出口ポートP2に加わる静圧(液柱による圧力)は基本的にはゼロであり、ピストン12の位置(上下の位置)が変化しても変動しない。したがって、背圧弁50には、背圧弁50の上流の第1の管路(配管)41の内部の電解液19の静圧と、ピストン12の動き(下側へのストローク)による圧力のみが加わる。背圧弁50の上流の第1の管路41の内部の電解液19の静圧(管路の静圧)は一定なので、この管路の静圧、あるいは管路の静圧よりも若干高い圧力に対抗するように背圧弁50を設定しておくことにより、背圧弁50はピストン12の動きに瞬時(即座)に反応して開かれる(背圧弁が即座に開かれる工程)。
【0041】
したがって、時刻t7にピストン12がストロークを停止すると、背圧弁50により、非常に短い時間で、ほぼ瞬時に計量ユニット10とディスペンサ20とを圧力的に分離できる(背圧弁を閉じる工程、背圧弁が即座に閉じられる工程)。このため、ディスペンサ20の先端が減圧(真空)状態に置かれていても、計量空間Sの電解液19が減圧に引っ張られて大量に流出してしまう事態を未然に防止できる。
【0042】
この注液装置1においては、ピストン12の動きを、サーボモータ13を介してパルス制御しているので、ピストン12の移動速度は可変である。このため、図2において電解液19の吐出速度を示す角度θ2を任意に、引き込み速度θ1とは独立して変えることができる。したがって、電解液19の特性、引き込み条件などにより引き込み速度θ1に対して吐出速度θ2を遅くすることも可能であり、また、吐出速度θ2を引き込み速度θ1に対して早くすることも可能である。このため、吐出速度θ2を早くできる環境であれば、注液時間をさらに短縮することが可能である。また、引き込み速度θ1に対して吐出速度θ2を遅くしてニードル弁23の液切れ性をさらに改善したり、バッテリ容器200における電解液19の含浸時間を確保したりすることも可能である。
【0043】
背圧弁50を圧力変動により瞬時に開閉させるには、ある程度の一定の背圧が加わっていることが望ましい。このため、注液装置1においては、第1の管路41の形状をL字型にして、そのコーナー部の垂直(鉛直)方向に延びた部分に背圧弁50を設置し、第1の管路41の上部の静圧が常に背圧弁50に背圧として加わるようにしている。さらに、背圧弁50のコイルばね52が鉛直方向に延び、コイルばね52と配管あるいは弁ケースとの間に機械的な摩擦が発生しにくい状態で配置している。したがって、この点でも、背圧弁50がピストン12の動き(ストローク)に連動して敏感にオンオフするようにしている。
【0044】
また、背圧弁50を第1の管路41の管路内に配置することにより、背圧弁50のボール51およびコイルばね52は、常に電解液19に浸される。このため、ボール51およびコイルばね52が空気中に晒されることがないので、電解液19の成分と空気中の成分とによりボール51およびコイルばね52が腐食されたり、ボール51およびコイルばね52に析出物が付着したりすることは少ない。このため背圧弁50の動作は安定しており、背圧弁50をピストン12の動き(ストローク)に連動して敏感に開閉させることができる。したがって、計量ユニット10のピストン12の動きによりディスペンサ20への電解液19の供給量を極めて精度よく制御できる。
【0045】
所定の量の電解液19を計量した時刻t7に、ピストン12のストロークを停止する。それとともに(同時に)ニードル弁23を閉にする(ニードル弁を閉じる工程)。ニードル弁23を閉にすることによりディスペンサ20の吐出ノズル21から電解液19が漏れ出すことを防止できる。したがって、時刻t7に計量ユニット10における計量を終了するとともに、ニードル弁23によりディスペンサ20からバッテリ容器200に対する注入も停止でき、吐出ノズル21からの液漏れを防止できる。
【0046】
時刻t7にピストン12の停止とともに、背圧弁50が動作して背圧弁50の上流の静圧を遮断する。このため、ニードル弁23に加わる差圧は小さくなる。したがって、同時にあるいはほとんど時間差なくニードル弁23を閉じることにより、ニードル弁23で電解液19を容易に遮断でき、液切れを改善できる。このため、注液装置1の注液精度を改善できる。さらに液だれが止まるのを待つ時間が基本的には不要であるので、注液時間も短縮できる。
【0047】
さらに、背圧弁50が設けられた第1の管路41に繋がる出口ポートP2を計量空間Sの上端部S2に設けているので、計量空間Sには気体が溜まりにくい。計量空間S内の電解液19が気液分離しやすい状況になっても、気泡が生成される以前に気液分離直前の状態の液層が計量空間Sの上方から電解液19とともに排出されるので、計量空間Sには気泡が生成されにくい。気泡が生成されると、気体は圧縮性なので、計量空間Sの計量精度に影響を与え、さらに、減圧により気体が膨張するとディスペンサ20の吐出ノズル21から電解液19が飛散する要因となる。したがって、この注液装置1においては計量空間Sに気泡が生成されにくいので、計量精度、すなわち注液精度を確保でき、液だれも抑制でき、さらに、電解液19が減圧室内102で飛散するような事態も未然に防止できる。
【0048】
減圧室内102に複数のバッテリ容器200がセットされている場合には、バッテリ容器200とディスペンサ20とを相対的に移動させ、ディスペンサ20の下に次のバッテリ容器200を移動することにより、注液装置1により複数のバッテリ容器200に対し分注が次々と行われる。この場合、この注液装置1においては、液切れがよく液だれが停止する待ち時間が殆ど不要であり、さらに、吐出ノズル21からの飛散も殆どない。したがって、殆ど待ち時間なしに次の分注を開始できる。すなわち、時刻t7に前のバッテリ容器200への分注が終了すると、バッテリ容器200の移動時間をおいて、時刻t11に入口弁5を開け、時刻t12にピストンのストローク(上方)を開始し、以降、上記のサイクルと同様に分注を繰り返すことができる。
【0049】
さらに、吐出ノズル21の先からの液漏れが基本的にないので、計量ユニット10で計量している間、すなわち、時刻t13あるいは時刻t14までをバッテリ容器200の移動時間に使用することが可能である。したがって、さらに注液時間を短縮することが可能となる。また、引き込み速度θ1を変更することも可能なので、バッテリ容器200の移動時間と同期させてピストン12の移動時間を設定することも可能である。
【0050】
また、この注液装置1においては、計量ユニット10のピストン12のストロークを調整することにより注液量(分注量)をほぼ自在に制御できる。たとえば、図2において、最初のサイクルのピストン12のストロークの時間t2〜t3に対して、次のサイクルのピストン12のストロークの時間t12〜t13を短縮することにより、注液量をΔqだけ少なくできる。したがって、この注液装置1は、様々なパターンの分注に対し極めてフレキシブルに対応でき、さらに、注液精度も高く分注に要する時間も短縮できる。
【0051】
また、電解液を計量空間に流入させる工程と、電解液を注入する工程とが一対一に対応していなくてもよく、電解液19を計量空間Sに流入させた後、複数回に分けて電解液19をバッテリ容器200に注入してもよい。
【0052】
なお、上記の計量ユニット10は、シリンダ11が上下に延び、ピストン12が上下に移動するタイプであるが、シリンダ11が左右方向(水平方向)に沿って配置され、ピストン12を左右方向(水平方向)に沿って移動するタイプであってもよい。計量空間Sへの電解液19の流入および流出をスムーズに行えるように配管をアレンジする必要があるが、上下方向の寸法を小さくできるので、よりコンパクトな注液装置に適している。
【0053】
また、上記の計量ユニット10はサーボモータ駆動であるが、駆動方式はサーボモータに限定されない。注液量をフレキシブルに可変させる要求がなければ、ピストンをソレノイドタイプのアクチュエータで駆動することも可能である。さらに、上記の入口弁、ベント弁およびニードル弁は、防爆領域であることを考慮し、空気作動のアクチュエータを採用しているが、防爆領域でなければ、電磁弁あるいはソレノイドタイプのアクチュエータを採用することも可能であり、アクチュエータには様々なタイプのものを使用できる。上記の装置(システム)では、ボールタイプの背圧弁は簡易な構造で配管への組み込みが容易であり、動作も安定しているので好適なものであるが、ダイアフラムタイプなどの他のタイプであってもよい。
図1
図2