【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、帯水層又は貯蔵層を貫通する少なくとも一つの注入井を介して、帯水層又は枯渇した炭化水素貯蔵層へCO
2を注入する方法であって、注入井が、注入井と密閉した状態で係合する注入管を備え、帯水層の圧力又は枯渇した炭化水素貯蔵層の貯蔵層圧力がCO
2の臨界圧力より低く、方法は、CO
2の臨界圧力より高い圧力で、注入設備を操作してCO
2流を注入井の注入管の下へ注入し、流が液状態又は超臨界状態である方法において、注入管は、CO
2が注入される帯水層又は貯蔵層のインターバル上で終結し、注入管は、その底面又はその近くに液体注入制御バルブを備え、前記バルブは、バルブの上の圧力が予め設定された圧力値より低いときには、閉じられ又は閉じ、バルブの上の圧力が予め設定された圧力値以上であるときには、開き又は再び開き、予め定設定された圧力値は、注入管のCO
2が液体又は超臨界状態に維持されるように選択されている。
【0016】
典型的には、液体注入制御バルブは、一方向弁(バルブ)であり、例えば、バルブ要素を作動させる弾性的にバイアスされた要素を取り入れるバルブであり、バルブは、予め設定された圧力以上の場合には開き、予め設定された圧力より低い場合には閉じる。典型的には、弾性的にバイアスされた部材は、窒素ドーム又はバネ、例えば、金属バネから成る。
【0017】
前記方法は、バルブが、予め設定された圧力以上で開き、予め設定された圧力より低いと閉まるように、バルブ要素を作動させる弾性的にバイアスされた要素を取り入れるいずれかの適切なバルブによって使用されることが理解される。特に、発明の態様は、特定のバルブ又は図及び下記に述べられるバルブのタイプに限定されるものではない。
【0018】
好ましくは、バルブは、バルブを閉じる閉位置とバルブが開く開位置との間で移動可能な可動部材を含む。好ましくは、部材は、使用されているときCO
2流が可動部材の一部に直接力を加えるように、配置される。加えられた力が閾値より高いときには、可動部材は開位置に移動し又は開位置のままであり、加えられた力が閾値より低いときには、可動部材は閉位置のままであり又は閉位置に移動する。好ましくは、可動部材は閉位置にバイアスされる。
【0019】
一方向弁の予め設定された圧力値は、注入井の注入チューブにおける液体又は超臨界CO
2のカラムの静水ヘッド圧力に依存し、同じく、注入井により貫通される帯水層又は枯渇した炭化水素貯蔵層の深さに依存する。典型的には、予め設定された圧力値は、200乃至300絶対バールの範囲内であり、好ましくは、225乃至275絶対バール、例えば、240乃至255絶対バールである。
【0020】
液体注入制御バルブの使用は、注入された液体又は超臨界液体CO
2が、バルブの上で注入管においてガス状態へ相転移することを防ぐ点で有利である。
【0021】
また、液体注入制御バルブは、井戸先端での圧力をある圧力、例えば、45絶対バールより高く維持することにより、閉止装置にわたる圧力を低下させ、それに続きドライアイス形成のリスクを減らす。
【0022】
液体注入制御バルブは、注入の初期段階での送り込まれた液体のフローを抑制する必要を減らす又は実質的になくす。
【0023】
典型的には、隔離されるべきCO
2は、75乃至250絶対バールの範囲の圧力で大気温度、例えば、0乃至40℃、例えば、0乃至20℃の範囲の温度で、注入設備に送られる。従って、送られている間、CO
2は、液体又は超臨界状態にある。コンプレッサーが必要ないため、液体又は超臨界液体を帯水層又は炭化水素貯蔵層の注水設備へ送ることは、ガスCO
2よりも効率的である。その代り、液体又は超臨界CO
2は、パイプライン配送圧力に送られる。
【0024】
パイプラインでの圧力低下は低く、例えば、25絶対psi(1.7絶対バール)より少ない圧力低下である。そのため、CO
2は、実質的にパイプライン配送圧力で帯水層又は炭化水素貯蔵層の注入設備に到達する。当業者であれば、パイプラインにおける何れかの圧力低下の程度は、パイプラインの長さに沿う大気温度の変化、パイプライン長の変化、パイプラインに横切られる地形の変化などの要因に依存することを理解するだろう。
【0025】
必要であれば、CO
2の圧力を所望の注入圧力に引き上げるため、注入設備は、少なくとも一つ以上のポンプを含む。
【0026】
典型的には、注入管は、注入井へ、CO
2が注入される帯水層又は貯蔵層の間隔に近接した又は真上の位置に、延びる。注入管は、3乃至7.0インチ(7.6乃至17.78cm)の範囲、好ましくは、4乃至5.5インチ(10.2乃至13.97cm)の範囲の内径を有する。
【0027】
注入管と注入井の壁との間に環状の空間があるときには、密閉しなければならない。好ましくは、この目的のために注入管の底面又は近くにパッカーを設けてもよい。
【0028】
当業者であれば、注入井におけるダウンホール圧力が二つの要素(a)井戸ヘッド圧力と、(b)注入井の液体CO
2又は超臨界CO
2のカラムの静的ヘッド又は重さと、を有することが理解されるであろう。
【0029】
従って、一般的に、液体又は超臨界液体CO
2のカラムが注入井の注入管に維持されることが望まれる。液体のこのカラムのヘッド圧力が、枯渇した炭化水素貯蔵層に隣接する注入井の圧力に寄与するからである。それゆえ、本発明は、
液体注入制御バルブ上の注入管における液体が液体又は超臨界状態に維持され、液体のカラムがかなりの圧力ヘッドを有する、という利点がある。
【0030】
液体CO
2又は超臨界CO
2のような濃い液体のカラムの静的ヘッドは、掘削孔の下にガスCO
2が注入されるときよりも、より低い井戸先端圧力が使用されるガスCO
2のカラムの静的ヘッドより、著しく高いことが望ましいであろう。従って、本発明のプロセスは、ガス状態への相転移をなす注入管におけるCO
2のいかなるリスクをも減らす又はなくすことによって、注入コストを減らす。
【0031】
炭化水素貯蔵層は、石油、ガス又はガス凝縮物が天然に堆積される、地質構造、地層、オイルサンド、貯蔵層岩などである。典型的には、複数の注入井及び複数の生産井が炭化水素貯蔵層を貫通する。生産井は、枯渇した貯蔵層へのCO
2の注入中、稼働中のままである。あるいは、生産井は閉じられ又は放棄されてもよい。少なくともいくつかの生産井、好ましくは、全ての生産井が、注入井に変換され残りの生産井が閉じられ又は放棄されることも、想像される。低圧力帯水層へのCO
2の注入の場合、多くの場合、注入井のみである。
【0032】
典型的には、貯蔵層圧力が元の貯蔵層圧力となるまで、CO
2は石油又はガス貯蔵層へ注入される。石油又はガス貯蔵層が生産中のままでも、注入井及び生産井は放棄され、そのためCO
2の配置容積が隔離される。もちろん、貯蔵層がもはや炭化水素を生産しない場合、いずれの生産井は、CO
2の注入開始前に閉じられ又は放棄されてもよく、又は、注入井に変換されてもよい。
【0033】
CO
2が低圧力帯水層に注入されると、帯水層の圧力は、注入井が閉じ又は放棄された後に帯水層がCO
2を含むことができないほどは、上がらない。従って、帯水層の最終圧力は、ロック層、特に、帯水層のふたをするロック層の地質に依存する。
【0034】
当業者であれば、一旦、CO
2注入が、帯水層又は貯蔵層の近接する掘削孔領域の圧力の原因となり、1000絶対psi(ca.69絶対バール)より高い値に増加させ、液体注入制御バルブは、注入管から取り除かれる、ことが理解されるであろう。もはや注入管のCO
2がガス状態への層転移する重大なリスクがないからである。しかしながら、散逸しそのためおよそ1000絶対psi(およそ69絶対バール)以下の値に低下する帯水層又は貯蔵層の近接した掘削孔領域の圧力のリスクがないときのみ、液体注入制御バルブは取り除かれる。この閾値圧力値は、貯蔵層温度又は帯水層の温度に依存する。
【0035】
従って、液体注入制御バルブは、好ましくは、回収可能な有線である。
【0036】
好ましくは、液体注入フロー制御バルブは、使用中は、注入管に設けられ
るニプルに据え付けられる。
【0037】
取り入れられたCO
2流は、一つ所以上の現存する注入井(たとえば、水注入井又は水交互ガス(WAG)注入井)の下に注入され、及び/又はフロー制御バルブを注入管の底又は近くに設けることによって改良された変換された生産井の下に注入され、及び/又は注入管の底又は近くにフロー制御バルブを有する取り入れられたCO
2流のため特にデザインされた一つ以上の注入井へ注入される。
【0038】
取り入れられたCO
2流は、発電所からの副産物(例えば、燃料ガスから回収された)又は水素プラントからの副産物(例えば、水素とCO
2から成り、その後水素が発電所で電気を生成するのに使用される流から分離された)であってもよい。取り入れられたCO
2流は、天然ガスプロダクト流からCO
2が分離される天然ガスプラントから得てもよい。加えて、取り入れられたCO
2がアンモニア製造の副産物であってもよい。
【0039】
本発明の態様は、その起源とは関係なく、何れのCO
2流に適用してもよい。
【0040】
取り入れられたCO
2流は、無水ベースで、少なくとも95%、例えば、98%のCO
2から成る。したがって、取り入れられたCO
2流は、水素、一酸化炭素、窒素及びそれらの混合物から選択される微量の追加成分を含んでもよい。例えば、取り入れられたCO
2流が、水素プラントから得られる場合、追加成分は主に水素及び一酸化炭素である。典型的には、取り入れられたCO
2流における水素の量は、1重量%未満である。
【0041】
必ずしも取り入れられたCO
2流が単一成分流ではないが、多くの例では取り入れられたCO
2流における不純物の量はとても少ないため、この流の層挙動は、純粋CO
2の層挙動と同じである。他の例では、CO
2流における不純物の量は、より高い。
【0042】
本発明の態様は、流の組成に関係なく、何れかの適切なCO
2流に適用可能であると理解されるであろう。流が少なくとも90%、好ましくは95%、好ましくは98%のCO
2を含むことが予想される。しかしながら、本発明は、より少ないCO
2含有の流に関して適用される。例えば、含有量は、80%、70%又はさらに低い。しかしながら、枯渇した貯蔵層に注入されるそのような低いCO
2含有流は、多くの例で、経済的に有利であるとは考えられない。好ましくは、CO
2流は、少なくとも95モル%のCO
2を含む。しかしながら、多くの場合、流におけるCO
2のモル%は、注入方法に影響を及ぼさない。
【0043】
取り入れられたCO
2が、所望の井戸ヘッド圧力より低いときには、注入設備の注入ポンプ(例えば、一個、連続する二個、三個、又は四個のポンプ)に供給され、所望の井戸ヘッド圧力とする。好ましくは、取り入れられたCO
2は、CO
2を一つ以上の注入井及び帯水層又は貯蔵層に流れ込ますことができる連結菅に送られてもよい。
【0044】
当業者に良く知られているように、帯水層又は炭化水素貯蔵層の平均圧力(それゆえ帯水層又は炭化水素貯蔵層へCO
2流を注入するための必須のダウンホール圧力)は、とりわけ、貯蔵層の深さ及び岩のタイプにより変化する。例えば、ダウンホール圧力は、帯水層又は炭化水素貯蔵層が深くなるほど、高くなる。概説すると、炭化水素貯蔵層の平均圧力は、注入井の圧力又は生産井の圧力により制御される(貯蔵層が稼動中のままであるとき)。一般的に、CO
2が帯水層又は貯蔵層に注入されることを確実にするため、注入井におけるダウンホール圧力が、帯水層又は炭化水素貯蔵層の平均圧力より高い圧力値に維持することを確実にすることが必要である。
【0045】
本発明の一態様によると、CO
2を帯水層又は枯渇した炭化水素貯蔵層に注入するシステムにおいて、前記システムは、貯蔵層又は帯水層を貫通する注入井であって、注入管の底面又は近くの注入井の壁と密閉して係合する注入管を備える注入井と、炭化水素貯蔵層又は帯水層の近位にある注入井内に位置する液体注入インターバルと、液体又は超臨界CO
2から成るCO
2流を注入井へ及び注入管の下へ流し込む注入設備とを備え、注入管が液体注入インターバル内又は液体注入インターバルの真上で終結し、前記システムは、さらに、注入管内又はその底面又は近くに配置された液体注入制御バルブを備え、前記液体注入制御バルブは、バルブ上の圧力が予め設定された圧力値より低いときには、閉じられ又は閉じ、バルブ上の圧力が予め設定された圧力値以上であるときには、開けられ又は再び開けられ、予め設定された圧力値が注入管におけるCO
2が液体又は超臨界状態に維持されるように選択されることを特徴とするシステム。
【0046】
本発明の他の態様によると、CO
2を低圧力炭化水素貯蔵層又は低圧力帯水層に注入するシステムにおいて、前記システムは、貯蔵層又は帯水層を貫通する注入井であって、注入井の壁と密閉して係合する注入管を備える注入井と、炭化水素貯蔵層又は帯水層の近位にある注入井内に位置する液体注入インターバルと、液体又は超臨界CO
2から成るCO
2流を注入井へ及び注入管の下へ流し込む注入設備とを備え、注入管が液体注入インターバル内又は真上で終結し、前記システムは、さらに、注入管内又はその底面又は近くに配置された液体注入制御バルブを備え、前記液体注入制御バルブは、バルブ閉鎖要素、バルブシート及び作動手段を備え、前記作動手段はバルブ閉鎖要素にバイアス力を与え、該力は、注入管における液体又は超臨界CO
2のカラムによりバルブ閉鎖要素に加えられる力により反作用され又は超えられ、使用中、注入管における液体又は超臨界CO
2のカラムにより加えられた力が作動手段により与えられたバイアス力より少なく、バルブ閉鎖要素が作動手段によって付勢されバルブシートと係合することにより注入されたCO
2は注入井の液体注入インターバルが到達するのを防ぎ、バルブが閉じ、また、使用中、注入管における液体又は超臨界CO
2のカラムにより加えられた力が作動手段により与えられたバイアス力以上であるとき、バルブが開くことを特徴とするシステム。
【0047】
バルブ作動手段により与えられるバイアス力は、バルブが予め決められ又は予め設定された圧力値で閉まるように選択され、この予め決められた値は、注入管におけるCO
2が液体又は超臨界状態を維持するように選択されている。
【0048】
典型的には、注入管は、密閉手段、例えば、注入管と注入井の壁との間の環状空間を密閉するパッカーを備える。
【0049】
注入井は、ケーシングに沿って並べられる。液体注入範囲を囲むケーシングの一部が、井戸と貯蔵層との液体連結を可能にする穿孔を備えてもよい。あるいは、注入井は裸坑仕上を有しても良い。
【0050】
注入設備は、表面、例えば、陸上又は海でのプラットホームに配置されてもよい。もしくは、注入設備は、海中のロケーションに配置されてもよい。CO
2は、注入組立ラインを介して注入設備から注入井に送られる。典型的には、注入井は井戸先端を備え、注入組立ラインは井戸先端で終結する。
【0051】
CO
2は、所望の配送圧力で注入設備に到着してもよい。あるいは、注入設備は、CO
2の圧力を所望の配送圧力に上げる一つ以上のブースターポンプを備えてもよい。
【0052】
システムは、少なくとも一つのダウンホール安全バルブを備えても良い。
【0053】
システムは、典型的には井戸先端に配置されるチョークバルブを備えてもよい。
【0054】
本発明の別の態様によれば、ダウンホールに使用される液体注入制御バルブにおいて、
・ 入口と出口とを有する本体と、
・ 入口と出口との間のバルブ手段であって、バルブシートとバルブ閉鎖要素を備えたバルブ手段と、
・ バルブシートに対してバルブ閉鎖要素を付勢してバルブを閉じることにより、注入された液体がバルブを通過するのを防ぐバイアス力を提供する作動手段とを備え、
使用中、注入された液体の圧力のため、バルブ閉鎖要素への力がバイアス力より大きいときのみ、バルブを開くことを特徴とする液体注入制御バルブ。
【0055】
作動手段は、注入された液体の圧力が注入井の深さに依存する予め設定された値より低いときにはいつでも、使用中、バルブを閉じるように選択されてもよい。上述したように、予め設定された値は、典型的には、200乃至300絶対バール、例えば、225乃至275絶対バール、特に、240乃至255絶対バールの範囲にある。
【0056】
作動手段は、バネ又はガス充填ベローズ若しくはドームなどの弾性バイアス手段を備えてもよい。典型的には、ガス入りのベローズ又はドームは、窒素などの不活性ガスで満たされる。
【0057】
バルブは、さらに、バルブを使用の目的部位に固定する係合手段、例えば、好ましくは、使用中、開放可能なようにバルブを壁、ケーシング又は注入管に取り付ける手段を含んでもよい。係合手段は、注入管内のニプルプロファイルと係合するために適用されてもよい。
【0058】
バルブは、さらに、井戸に挿入されたとき又は取り戻されるとき、バルブを、そこからつる下げられる有線に、好ましくは、開放可能なように取り付ける手段を含んでもよい。したがって、バルブは有線で回収可能としてもよい。
【0059】
バルブは、さらに、バルブを通してとは対照的に、バルブの周りの液体フローを防ぐように操作可能な一つ以上の密閉要素を備えても良い。必要であれば、密閉要素はインフレータブル又は膨張可能である。
【0060】
バルブは、本発明の一つ以上の方法で使用されてもよい。加えて又はあるいは、バルブは、本発明の注入システムに組み入れられてもよい。
【0061】
本発明の液体注入制御バルブの使用は、閉じた期間後、特に短い閉じた期間後、安全で安定した注入井開始を可能にする。長い閉じた期間後、補助ガス供給、例えば、窒素の供給は、表面チョークの下流側の背圧を造るために必要とされうる。そのような長い閉じた期間中、注入システム内の他のバルブを閉める必要があるからである(ダウンホール安全バルブ並びに、マスターバルブ、ウイングバルブ及び表面チョークなどの井戸先端と関連するバルブ)。
【0062】
それゆえ、必要であれば、窒素注入ラインを、表面チョーク(井戸先端)の下流に窒素を注入井に注入するために備え、長期間閉じられた期間中、表面チョークの下流に十分な背圧を形成することにより、注入管におけるCO
2がガス状態に相転移するリスクをやわらげることができる。
【0063】
本発明がより理解されるように、ほんの一例として、図面を参照して説明する。