特許第5661655号(P5661655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661655
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】液体注入
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20150108BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20150108BHJP
   E21B 34/06 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   B01J19/00 A
   E21B43/00 A
   E21B34/06
【請求項の数】19
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-553510(P2011-553510)
(86)(22)【出願日】2010年3月10日
(65)【公表番号】特表2012-520169(P2012-520169A)
(43)【公表日】2012年9月6日
(86)【国際出願番号】GB2010000433
(87)【国際公開番号】WO2010103275
(87)【国際公開日】20100916
【審査請求日】2013年2月12日
(31)【優先権主張番号】09250710.2
(32)【優先日】2009年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503061913
【氏名又は名称】ビーピー オルタネイティブ エナジー インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(74)【代理人】
【識別番号】100173587
【弁理士】
【氏名又は名称】西口 克
(74)【代理人】
【識別番号】100173602
【弁理士】
【氏名又は名称】赤津 悌二
(74)【代理人】
【識別番号】100177080
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 涼子
(72)【発明者】
【氏名】コーリー,スティーブン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ガリック,ホルボーイェ
(72)【発明者】
【氏名】メイスン,ジョン,ニジェル,エリス
【審査官】 増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−003326(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00669216(GB,A)
【文献】 米国特許第04372386(US,A)
【文献】 特開2009−011964(JP,A)
【文献】 特開2008−229494(JP,A)
【文献】 特開2008−006367(JP,A)
【文献】 特開平06−182191(JP,A)
【文献】 特開平06−170215(JP,A)
【文献】 特開2004−188247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
E21B 34/06
E21B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯水層又は貯蔵層を貫通する少なくとも一つの注入井を介してCOを帯水層又は枯渇した炭化水素貯蔵層に注入する方法において、注入井は、注入井と密閉係合する注入管を備え、帯水層の圧力又は枯渇した炭化水素貯蔵層の貯蔵層圧力は、COの臨界圧力より低く、前記方法は、注入設備を操作してCO流をCOの臨界圧力より高い圧力で注入井の注入管の下に注入し、流は液体状態又は超臨界状態であって、
注入管は、COが注入される帯水層又は貯蔵層のインターバルで又は真上で終結し、注入管は液体注入制御バルブをその底面又はその底面の近くに備え、バルブ上の圧力が予め設定された圧力値未満のときには、閉じられ又は閉じ、バルブ上の圧力が予め設定された圧力値以上であるときには、開き又は再び開き、予め設定された圧力値は、注入管におけるCOが液体又は超臨界状態に維持されるように選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
液体注入制御バルブは、バルブの閉鎖をもたらす閉位置とバルブが開く開位置との間で移動可能な可動部材と合体させる一方向バルブであり、バルブは、予め設定された圧力値以上で開き、予め設定された圧力値未満で閉じることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予め設定された圧力値が200乃至300絶対バールの範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
密閉手段が注入管の底面又はその底面の近くに設けられ、注入管は注入井の壁と密閉係合すること特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
複数の注入井及び複数の生産井は、枯渇した炭化水素貯蔵層を貫通し、COの枯渇した炭化水素貯蔵層への注入中は生産井のいずれかが生産中のままであり、又は生産井が閉じられ若しくは放棄されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
液体注入制御バルブは、有線で回収可能であり、使用中、注入管に設けられたニプルに固定され、一旦、帯水層又は貯蔵層の近接掘削孔範囲での圧力が1000絶対psiより高く増加すると、液体制御バルブは、注入井から回収されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
COを帯水層又は枯渇した炭化水素貯蔵層に注入するシステムにおいて、前記システムは、
貯蔵層又は帯水層を貫通する注入井であって、注入管の底面又はその底面の近くの注入井の壁と密閉係合する注入管を備える注入井と、
炭化水素貯蔵層又は帯水層の近位にある注入井内に位置する液体注入インターバルと、
液体又は超臨界COから成るCO流を注入井へ及び注入管の下へ流し込む注入設備とを備え、
注入管が液体注入インターバル内又は真上で終結し、前記システムは、さらに、注入管内のその底面又はその底面の近くに配置された液体注入制御バルブを備え、前記液体注入制御バルブは、バルブ上の圧力が予め設定された圧力値未満のときには、閉じられ又は閉じ、バルブ上の圧力が予め設定された圧力値以上であるときには、開けられ又は再び開けられ、予め設定された圧力値が注入管におけるCOが液体又は超臨界状態に維持されるように選択されることを特徴とするシステム。
【請求項8】
バルブは、バルブの閉鎖をもたらす閉位置とバルブが開く開位置との間で移動可能な可動部材を含むことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記可動部材は、使用中、CO流が可動部材の一部に直接的に力をかけ、かけられた力が閾値より大きいときは、可動部材が開位置に移動し又は開位置のままであり、かけられた力が閾値より小さいときは、可動部材が閉位置のままであり又は閉位置に移動することを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項10】
可動部材は閉位置にバイアスされることを特徴とする請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
COを低圧力炭化水素貯蔵層又は低圧力帯水層に注入するシステムにおいて、前記システムは、
貯蔵層又は帯水層を貫通する注入井であって、注入管の底面又はその底面の近くで注入井の壁と密閉係合する注入管を備える注入井と、
炭化水素貯蔵層又は帯水層の近位にある注入井内に位置する液体注入インターバルと、
液体又は超臨界COから成るCO流を注入井へ及び注入管の下へ流し込む注入設備とを備え、
注入管が液体注入インターバル内又は真上で終結し、前記システムは、さらに、注入管内でその底面又は近くに配置された液体注入制御バルブを備え、前記液体注入制御バルブは、バルブ閉鎖要素、バルブシート及び作動手段を備え、前記作動手段はバルブ閉鎖要素にバイアス力を与え、該力は、注入管における液体又は超臨界COのカラムによりバルブ閉鎖要素に加えられる力により反作用され又は超えられ、使用中、注入管における液体又は超臨界COのカラムにより加えられた力が作動手段により与えられたバイアス力より少なく、バルブ閉鎖要素が作動手段によって付勢されバルブシートと係合することにより、注入されたCOが注入井の液体注入インターバルが到達するのを防ぎ、バルブが閉じ、また、使用中、注入管における液体又は超臨界COのカラムにより加えられた力が作動手段により与えられたバイアス力以上であるとき、バルブが開くことを特徴とするシステム。
【請求項12】
注入管は、注入管の底面と注入井の壁との間の環状空間を密閉する密閉手段、を備えることを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
注入井は、井戸先端を備え、COは注入設備から注入井に、井戸先端で終結する注入組立ラインを介して送られることを特徴とする請求項7から12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
システムは、更に少なくとも一つのダウンホール安全バルブ及びチョークバルブを備え、チョークバルブは井戸先端に配置されることを特徴とする請求項7から13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
注入井に使用される液体注入制御バルブは、
入口と出口を有する本体と、
入口と出口との間のバルブ手段であって、バルブシート及びバルブ閉鎖要素を備えたバルブ手段と、
バルブシートに対してバルブ閉鎖要素を付勢するバイアス力を与えてバルブを閉じることにより、注入された液体がバルブを介して通過するのを防ぐ作動手段と、を備え、
バルブは、使用中、注入された液体の圧力のためバルブ閉鎖要素への力がバイアス力より大きいときのみ開くことを特徴とする液体注入制御バルブ。
【請求項16】
作動手段は、使用中、注入された液体の圧力が注入井の深さに依存する予め設定された値より低く低下したときはいつでも、バルブを閉じるように選択され、予め設定された値は、200乃至300絶対バールの範囲であることを特徴とする請求項15に記載の液体注入制御バルブ。
【請求項17】
作動手段は、バネ、ガス充填ベローズ及びガス充填ドームから選択される弾性のあるバイアス手段を備え、ガス充填ベローズ又はドームは不活性ガスで満たされることを特徴とする請求項15または16に記載の液体制御バルブ。
【請求項18】
バルブは、さらに、(a)注入井に配置された注入管におけるニプルプロファイルにバルブを解放可能に固定する係合手段と、(b)有線に解放可能に取り付けられ、挿入され又は注入井の注入管から回収されるとき、そこから吊るされる手段を備えることを特徴とする請求項15から17のいずれかに記載の液体制御バルブ。
【請求項19】
バルブは、さらに、バルブの周りで、液体フローを防止するように操作可能な一つ以上の密閉要素を備えることを特徴とする請求項15から18のいずれかに記載の液体制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧炭化水素貯蔵層又は低圧力帯水層への低温液体注入の方法及び装置に関する。特に、本発明は、浸透性及び透過性の地下炭化水素貯蔵層、特に、CO貯蔵用の枯渇ガス貯蔵層への二酸化炭素(CO)の注入に関する。
【背景技術】
【0002】
COは、石炭、石油又はガスなど化石燃料を燃やす発電所及び炭化水素原料の改良により水素を生産する水素プラントにおいて、ある生産工程、例えば、アンモニアを製造する工程で、多量に副産物として生産されるガスである。この副産物を大気中に放出することは、温室化ガスとなるため、好ましくない。大気中への放出以外の方法でCOを除去する方法の開発に、多くの努力が注がれている。特に興味深い技術の一つとして、COの浸透層への地中処分がある。
【0003】
従って、地下にある炭化水素貯蔵層は、COの地中処分に適しているだろう。COが浸透性・透過性炭化水素貯蔵層に注入された場合、注入されたCOは、貯蔵層中の炭化水素(例えば、石油)を生産井(炭化水素が抽出される井戸)に向ける働きをし、これにより、炭化水素の増産回収及びCOの隔離を達成することができる。
【0004】
枯渇した石油及びガス田がCO貯蔵層に有利な条件を示すことも想像される。典型的には、石油又はガス田が複数の貯蔵層を有する。炭化水素生産が貯蔵層圧力をその初期(試作)値未満に低下させるときには、フィールド又は貯蔵層が枯渇するかもしれないものの、フィールド又は貯蔵層は依然として炭化水素を生産する。石油及び/又はガスがもはやそこから生産されないとき(例えば、生産井が封鎖されるか放棄されたとき)、生産される前に石油及び/又はガスにより前もって占められた貯蔵層の岩石層内の空間が、COが隔離される空間となるだろう。枯渇した貯蔵層は、陸上又は海上フィールドで見つけ出されるだろう。
【0005】
液体、例えば、水を炭化水素貯蔵層に注入するシステムであって、注入井の壁との密閉関係の注入管を含むシステムが知られている。ポンプ設備は、液体をパイプラインに沿って井戸先端及び注入管に送り込む。表面チョークは、パイプラインから注入管へ送り込まれるフローを規制するために設けられている。ダウンホール安全バルブは、注入管内に設けてもよい。
【0006】
しかしながら、COを枯渇したフィールド又は貯蔵層に注入することは難しい。低貯蔵層圧力条件でのCOの相転移挙動のため、例えば、典型的には枯渇したガス田と関連するためである。
【0007】
COの相挙動は、図1に示す相図を参照して理解することができる。この相図は、COが、ガス、液体、固体、又は超臨界流体として存在するエリアを示す。カーブは、温度及び圧力を示し、二つの相が平衡で共存する(三重点で、固体相、液体相及びガス相が共存する)。ガス・液体共存カーブは、沸騰曲線として知られている。沸騰曲線に沿って上方に移動すると(温度及び圧力が上昇すると)、液体は、熱膨張のため密度が低くなり、圧力が上昇するにつれて、ガスの密度は濃くなる。最終的には、二層の密度は収束し同じになり、ガスと液体との間の差異はなくなり、沸騰曲線は臨界点で終結する。COの臨界点は、73.8絶対バール(Pc)の圧力で31.1℃(Tc)の温度で生ずる。液体COが臨界温度(Tc)及び臨界圧力(Pc)より高い場合、それは超臨界流体である。COが臨界温度より低く臨界圧力より高い場合、それは液体又は固体状態である(その温度及び圧力に依存する)。
【0008】
隔離されたCOが、収納庫を最大にする状態、特に、単位体積当たりのCO最大モル数を有する高密度材料(液体又は超臨界液体)の形態であることが、一般的に望まれる。従って、液体状態又は超臨界状態の貯蔵層へCOが注入されること(及び続いて格納されること)が好ましい。
【0009】
しかしながら、枯渇した炭化水素貯蔵層は、1000絶対psi(ポンド平方インチ)(69絶対バール)未満、特に、500絶対psi(34絶対バール)未満、例えば、200乃至300の絶対psi(14乃至21絶対バール)の初期貯蔵層圧力を有するかもしれない。理解されるように、注入井内の典型的に経験される温度では(例えば、0乃至100℃の温度)、そのような圧力はCOの臨界圧力未満である。従って、注入された液体又は超臨界COは、注入井内で、おそらく注入管内で、注入井の圧力がCOの臨界圧力未満に低下すると、気体状態に変化する。
【0010】
例えば、注入井が、注入井に送られる以上に液体を取り込むことができる場合に、問題が起こるだろう。水注入井の場合、注入システム安定性を維持するため井戸先端の注入圧力を減らすことにより、問題は解決されるであろう(井戸を「抑制すること(チョーキング・バック)」と呼ばれる)。しかしながら、COの注入のため、井戸先端圧力の約45絶対バール未満への低下(外気温条件で)は、井戸先端のすぐ下流でCOがガス状態に相転移することから、井戸が井戸先端で抑制される程度の限界がある。そのような相転移は、一般的には望ましくない。液体からガス状態への相転移は、液体密度の重大な変化となり、それゆえ閉止装置(チョーク)にわたる圧力の重大な変化となるからである。例えば、閉止装置にわたる圧力傾斜が、十倍に低下し(例えば、0.35psi/ftから0.035psi/ftへ)、注入不安定の原因となりうる。
【0011】
そのため、注入システムを単純に抑制することが、COの枯渇ガス貯蔵層への安定した注入とならない、ことが認められる。例えば、液体からガスへの相転移を避けるため、井戸先端で(大気中で)圧力が約45絶対バールより高く維持されていても、貯蔵層圧力は、注入されたCOが膨張して、注入管又は井戸内でガス状態へ相転移するに十分なほど依然として低い。
【0012】
上述した公知の注入システムでは、開始時にCO注入とともに他の重大な問題が生ずる。典型的には、液体COは、70絶対バール程度の圧力で送り出される。非常に低い貯蔵層圧力(例えば、200乃至300絶対psi、14乃至20絶対バール)は、非常に低い井戸先端圧力となり、例えば、井戸先端における初期注入圧力は、約45絶対バールとなる。従って、閉止装置にわたる重大な圧力低下、例えば、液体CO注入開始間の70から10絶対バールへの圧力低下がある。ジュール・トムソン効果のため、そのような圧力低下は、温度低下と同時に起こり、COが固体状態(ドライアイス)への相転移をし、パイプラインを介する液体フローの妨げとなる。従って、枯渇した貯蔵層へのCO注入の開始中に注入井におけるドライアイス形成のささいでないリスクがないことが望ましい。同様の問題は、井戸が閉じられた期間後の井戸へのCO注入の回収について現れる。低い貯蔵層圧力は、低い閉鎖井戸先端圧力となり、ドライアイスの高まるリスクを呈すからである。
【0013】
当業者であれば、注入管内で液体又は超臨界COの安定カラムを維持することが重要であることを、認識するであろう。このカラムに関連する静水ヘッド圧力は、ダウンホールへの重大な寄与を示すからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、枯渇した貯蔵層へのCOの十分な注入を確実にすると同時に、注入管における液体又は超臨界液体の安定的なカラムを維持する問題を扱うものである。また、CO注入中の井戸先端又はそのちょうど下流における固体COの沈殿を実質的に減らす又は避けることを追及するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、帯水層又は貯蔵層を貫通する少なくとも一つの注入井を介して、帯水層又は枯渇した炭化水素貯蔵層へCOを注入する方法であって、注入井が、注入井と密閉した状態で係合する注入管を備え、帯水層の圧力又は枯渇した炭化水素貯蔵層の貯蔵層圧力がCOの臨界圧力より低く、方法は、COの臨界圧力より高い圧力で、注入設備を操作してCO流を注入井の注入管の下へ注入し、流が液状態又は超臨界状態である方法において、注入管は、COが注入される帯水層又は貯蔵層のインターバル上で終結し、注入管は、その底面又はその近くに液体注入制御バルブを備え、前記バルブは、バルブの上の圧力が予め設定された圧力値より低いときには、閉じられ又は閉じ、バルブの上の圧力が予め設定された圧力値以上であるときには、開き又は再び開き、予め定設定された圧力値は、注入管のCOが液体又は超臨界状態に維持されるように選択されている。
【0016】
典型的には、液体注入制御バルブは、一方向弁(バルブ)であり、例えば、バルブ要素を作動させる弾性的にバイアスされた要素を取り入れるバルブであり、バルブは、予め設定された圧力以上の場合には開き、予め設定された圧力より低い場合には閉じる。典型的には、弾性的にバイアスされた部材は、窒素ドーム又はバネ、例えば、金属バネから成る。
【0017】
前記方法は、バルブが、予め設定された圧力以上で開き、予め設定された圧力より低いと閉まるように、バルブ要素を作動させる弾性的にバイアスされた要素を取り入れるいずれかの適切なバルブによって使用されることが理解される。特に、発明の態様は、特定のバルブ又は図及び下記に述べられるバルブのタイプに限定されるものではない。
【0018】
好ましくは、バルブは、バルブを閉じる閉位置とバルブが開く開位置との間で移動可能な可動部材を含む。好ましくは、部材は、使用されているときCO流が可動部材の一部に直接力を加えるように、配置される。加えられた力が閾値より高いときには、可動部材は開位置に移動し又は開位置のままであり、加えられた力が閾値より低いときには、可動部材は閉位置のままであり又は閉位置に移動する。好ましくは、可動部材は閉位置にバイアスされる。
【0019】
一方向弁の予め設定された圧力値は、注入井の注入チューブにおける液体又は超臨界COのカラムの静水ヘッド圧力に依存し、同じく、注入井により貫通される帯水層又は枯渇した炭化水素貯蔵層の深さに依存する。典型的には、予め設定された圧力値は、200乃至300絶対バールの範囲内であり、好ましくは、225乃至275絶対バール、例えば、240乃至255絶対バールである。
【0020】
液体注入制御バルブの使用は、注入された液体又は超臨界液体COが、バルブの上で注入管においてガス状態へ相転移することを防ぐ点で有利である。
【0021】
また、液体注入制御バルブは、井戸先端での圧力をある圧力、例えば、45絶対バールより高く維持することにより、閉止装置にわたる圧力を低下させ、それに続きドライアイス形成のリスクを減らす。
【0022】
液体注入制御バルブは、注入の初期段階での送り込まれた液体のフローを抑制する必要を減らす又は実質的になくす。
【0023】
典型的には、隔離されるべきCOは、75乃至250絶対バールの範囲の圧力で大気温度、例えば、0乃至40℃、例えば、0乃至20℃の範囲の温度で、注入設備に送られる。従って、送られている間、COは、液体又は超臨界状態にある。コンプレッサーが必要ないため、液体又は超臨界液体を帯水層又は炭化水素貯蔵層の注水設備へ送ることは、ガスCOよりも効率的である。その代り、液体又は超臨界COは、パイプライン配送圧力に送られる。
【0024】
パイプラインでの圧力低下は低く、例えば、25絶対psi(1.7絶対バール)より少ない圧力低下である。そのため、COは、実質的にパイプライン配送圧力で帯水層又は炭化水素貯蔵層の注入設備に到達する。当業者であれば、パイプラインにおける何れかの圧力低下の程度は、パイプラインの長さに沿う大気温度の変化、パイプライン長の変化、パイプラインに横切られる地形の変化などの要因に依存することを理解するだろう。
【0025】
必要であれば、COの圧力を所望の注入圧力に引き上げるため、注入設備は、少なくとも一つ以上のポンプを含む。
【0026】
典型的には、注入管は、注入井へ、COが注入される帯水層又は貯蔵層の間隔に近接した又は真上の位置に、延びる。注入管は、3乃至7.0インチ(7.6乃至17.78cm)の範囲、好ましくは、4乃至5.5インチ(10.2乃至13.97cm)の範囲の内径を有する。
【0027】
注入管と注入井の壁との間に環状の空間があるときには、密閉しなければならない。好ましくは、この目的のために注入管の底面又は近くにパッカーを設けてもよい。
【0028】
当業者であれば、注入井におけるダウンホール圧力が二つの要素(a)井戸ヘッド圧力と、(b)注入井の液体CO又は超臨界COのカラムの静的ヘッド又は重さと、を有することが理解されるであろう。
【0029】
従って、一般的に、液体又は超臨界液体COのカラムが注入井の注入管に維持されることが望まれる。液体のこのカラムのヘッド圧力が、枯渇した炭化水素貯蔵層に隣接する注入井の圧力に寄与するからである。それゆえ、本発明は、液体注入制御バルブ上の注入管における液体が液体又は超臨界状態に維持され、液体のカラムがかなりの圧力ヘッドを有する、という利点がある。
【0030】
液体CO又は超臨界COのような濃い液体のカラムの静的ヘッドは、掘削孔の下にガスCOが注入されるときよりも、より低い井戸先端圧力が使用されるガスCOのカラムの静的ヘッドより、著しく高いことが望ましいであろう。従って、本発明のプロセスは、ガス状態への相転移をなす注入管におけるCOのいかなるリスクをも減らす又はなくすことによって、注入コストを減らす。
【0031】
炭化水素貯蔵層は、石油、ガス又はガス凝縮物が天然に堆積される、地質構造、地層、オイルサンド、貯蔵層岩などである。典型的には、複数の注入井及び複数の生産井が炭化水素貯蔵層を貫通する。生産井は、枯渇した貯蔵層へのCOの注入中、稼働中のままである。あるいは、生産井は閉じられ又は放棄されてもよい。少なくともいくつかの生産井、好ましくは、全ての生産井が、注入井に変換され残りの生産井が閉じられ又は放棄されることも、想像される。低圧力帯水層へのCOの注入の場合、多くの場合、注入井のみである。
【0032】
典型的には、貯蔵層圧力が元の貯蔵層圧力となるまで、COは石油又はガス貯蔵層へ注入される。石油又はガス貯蔵層が生産中のままでも、注入井及び生産井は放棄され、そのためCOの配置容積が隔離される。もちろん、貯蔵層がもはや炭化水素を生産しない場合、いずれの生産井は、COの注入開始前に閉じられ又は放棄されてもよく、又は、注入井に変換されてもよい。
【0033】
COが低圧力帯水層に注入されると、帯水層の圧力は、注入井が閉じ又は放棄された後に帯水層がCOを含むことができないほどは、上がらない。従って、帯水層の最終圧力は、ロック層、特に、帯水層のふたをするロック層の地質に依存する。
【0034】
当業者であれば、一旦、CO注入が、帯水層又は貯蔵層の近接する掘削孔領域の圧力の原因となり、1000絶対psi(ca.69絶対バール)より高い値に増加させ、液体注入制御バルブは、注入管から取り除かれる、ことが理解されるであろう。もはや注入管のCOがガス状態への層転移する重大なリスクがないからである。しかしながら、散逸しそのためおよそ1000絶対psi(およそ69絶対バール)以下の値に低下する帯水層又は貯蔵層の近接した掘削孔領域の圧力のリスクがないときのみ、液体注入制御バルブは取り除かれる。この閾値圧力値は、貯蔵層温度又は帯水層の温度に依存する。
【0035】
従って、液体注入制御バルブは、好ましくは、回収可能な有線である。
【0036】
好ましくは、液体注入フロー制御バルブは、使用中は、注入管に設けられるニプルに据え付けられる。
【0037】
取り入れられたCO流は、一つ所以上の現存する注入井(たとえば、水注入井又は水交互ガス(WAG)注入井)の下に注入され、及び/又はフロー制御バルブを注入管の底又は近くに設けることによって改良された変換された生産井の下に注入され、及び/又は注入管の底又は近くにフロー制御バルブを有する取り入れられたCO流のため特にデザインされた一つ以上の注入井へ注入される。
【0038】
取り入れられたCO流は、発電所からの副産物(例えば、燃料ガスから回収された)又は水素プラントからの副産物(例えば、水素とCOから成り、その後水素が発電所で電気を生成するのに使用される流から分離された)であってもよい。取り入れられたCO流は、天然ガスプロダクト流からCOが分離される天然ガスプラントから得てもよい。加えて、取り入れられたCOがアンモニア製造の副産物であってもよい。
【0039】
本発明の態様は、その起源とは関係なく、何れのCO流に適用してもよい。
【0040】
取り入れられたCO流は、無水ベースで、少なくとも95%、例えば、98%のCOから成る。したがって、取り入れられたCO流は、水素、一酸化炭素、窒素及びそれらの混合物から選択される微量の追加成分を含んでもよい。例えば、取り入れられたCO流が、水素プラントから得られる場合、追加成分は主に水素及び一酸化炭素である。典型的には、取り入れられたCO流における水素の量は、1重量%未満である。
【0041】
必ずしも取り入れられたCO流が単一成分流ではないが、多くの例では取り入れられたCO流における不純物の量はとても少ないため、この流の層挙動は、純粋COの層挙動と同じである。他の例では、CO流における不純物の量は、より高い。
【0042】
本発明の態様は、流の組成に関係なく、何れかの適切なCO流に適用可能であると理解されるであろう。流が少なくとも90%、好ましくは95%、好ましくは98%のCOを含むことが予想される。しかしながら、本発明は、より少ないCO含有の流に関して適用される。例えば、含有量は、80%、70%又はさらに低い。しかしながら、枯渇した貯蔵層に注入されるそのような低いCO含有流は、多くの例で、経済的に有利であるとは考えられない。好ましくは、CO流は、少なくとも95モル%のCOを含む。しかしながら、多くの場合、流におけるCOのモル%は、注入方法に影響を及ぼさない。
【0043】
取り入れられたCOが、所望の井戸ヘッド圧力より低いときには、注入設備の注入ポンプ(例えば、一個、連続する二個、三個、又は四個のポンプ)に供給され、所望の井戸ヘッド圧力とする。好ましくは、取り入れられたCOは、COを一つ以上の注入井及び帯水層又は貯蔵層に流れ込ますことができる連結菅に送られてもよい。
【0044】
当業者に良く知られているように、帯水層又は炭化水素貯蔵層の平均圧力(それゆえ帯水層又は炭化水素貯蔵層へCO流を注入するための必須のダウンホール圧力)は、とりわけ、貯蔵層の深さ及び岩のタイプにより変化する。例えば、ダウンホール圧力は、帯水層又は炭化水素貯蔵層が深くなるほど、高くなる。概説すると、炭化水素貯蔵層の平均圧力は、注入井の圧力又は生産井の圧力により制御される(貯蔵層が稼動中のままであるとき)。一般的に、COが帯水層又は貯蔵層に注入されることを確実にするため、注入井におけるダウンホール圧力が、帯水層又は炭化水素貯蔵層の平均圧力より高い圧力値に維持することを確実にすることが必要である。
【0045】
本発明の一態様によると、COを帯水層又は枯渇した炭化水素貯蔵層に注入するシステムにおいて、前記システムは、貯蔵層又は帯水層を貫通する注入井であって、注入管の底面又は近くの注入井の壁と密閉して係合する注入管を備える注入井と、炭化水素貯蔵層又は帯水層の近位にある注入井内に位置する液体注入インターバルと、液体又は超臨界COから成るCO流を注入井へ及び注入管の下へ流し込む注入設備とを備え、注入管が液体注入インターバル内又は液体注入インターバルの真上で終結し、前記システムは、さらに、注入管内又はその底面又は近くに配置された液体注入制御バルブを備え、前記液体注入制御バルブは、バルブ上の圧力が予め設定された圧力値より低いときには、閉じられ又は閉じ、バルブ上の圧力が予め設定された圧力値以上であるときには、開けられ又は再び開けられ、予め設定された圧力値が注入管におけるCOが液体又は超臨界状態に維持されるように選択されることを特徴とするシステム。
【0046】
本発明の他の態様によると、COを低圧力炭化水素貯蔵層又は低圧力帯水層に注入するシステムにおいて、前記システムは、貯蔵層又は帯水層を貫通する注入井であって、注入井の壁と密閉して係合する注入管を備える注入井と、炭化水素貯蔵層又は帯水層の近位にある注入井内に位置する液体注入インターバルと、液体又は超臨界COから成るCO流を注入井へ及び注入管の下へ流し込む注入設備とを備え、注入管が液体注入インターバル内又は真上で終結し、前記システムは、さらに、注入管内又はその底面又は近くに配置された液体注入制御バルブを備え、前記液体注入制御バルブは、バルブ閉鎖要素、バルブシート及び作動手段を備え、前記作動手段はバルブ閉鎖要素にバイアス力を与え、該力は、注入管における液体又は超臨界COのカラムによりバルブ閉鎖要素に加えられる力により反作用され又は超えられ、使用中、注入管における液体又は超臨界COのカラムにより加えられた力が作動手段により与えられたバイアス力より少なく、バルブ閉鎖要素が作動手段によって付勢されバルブシートと係合することにより注入されたCOは注入井の液体注入インターバルが到達するのを防ぎ、バルブが閉じ、また、使用中、注入管における液体又は超臨界COのカラムにより加えられた力が作動手段により与えられたバイアス力以上であるとき、バルブが開くことを特徴とするシステム。
【0047】
バルブ作動手段により与えられるバイアス力は、バルブが予め決められ又は予め設定された圧力値で閉まるように選択され、この予め決められた値は、注入管におけるCOが液体又は超臨界状態を維持するように選択されている。
【0048】
典型的には、注入管は、密閉手段、例えば、注入管と注入井の壁との間の環状空間を密閉するパッカーを備える。
【0049】
注入井は、ケーシングに沿って並べられる。液体注入範囲を囲むケーシングの一部が、井戸と貯蔵層との液体連結を可能にする穿孔を備えてもよい。あるいは、注入井は裸坑仕上を有しても良い。
【0050】
注入設備は、表面、例えば、陸上又は海でのプラットホームに配置されてもよい。もしくは、注入設備は、海中のロケーションに配置されてもよい。COは、注入組立ラインを介して注入設備から注入井に送られる。典型的には、注入井は井戸先端を備え、注入組立ラインは井戸先端で終結する。
【0051】
COは、所望の配送圧力で注入設備に到着してもよい。あるいは、注入設備は、COの圧力を所望の配送圧力に上げる一つ以上のブースターポンプを備えてもよい。
【0052】
システムは、少なくとも一つのダウンホール安全バルブを備えても良い。
【0053】
システムは、典型的には井戸先端に配置されるチョークバルブを備えてもよい。
【0054】
本発明の別の態様によれば、ダウンホールに使用される液体注入制御バルブにおいて、
・ 入口と出口とを有する本体と、
・ 入口と出口との間のバルブ手段であって、バルブシートとバルブ閉鎖要素を備えたバルブ手段と、
・ バルブシートに対してバルブ閉鎖要素を付勢してバルブを閉じることにより、注入された液体がバルブを通過するのを防ぐバイアス力を提供する作動手段とを備え、
使用中、注入された液体の圧力のため、バルブ閉鎖要素への力がバイアス力より大きいときのみ、バルブを開くことを特徴とする液体注入制御バルブ。
【0055】
作動手段は、注入された液体の圧力が注入井の深さに依存する予め設定された値より低いときにはいつでも、使用中、バルブを閉じるように選択されてもよい。上述したように、予め設定された値は、典型的には、200乃至300絶対バール、例えば、225乃至275絶対バール、特に、240乃至255絶対バールの範囲にある。
【0056】
作動手段は、バネ又はガス充填ベローズ若しくはドームなどの弾性バイアス手段を備えてもよい。典型的には、ガス入りのベローズ又はドームは、窒素などの不活性ガスで満たされる。
【0057】
バルブは、さらに、バルブを使用の目的部位に固定する係合手段、例えば、好ましくは、使用中、開放可能なようにバルブを壁、ケーシング又は注入管に取り付ける手段を含んでもよい。係合手段は、注入管内のニプルプロファイルと係合するために適用されてもよい。
【0058】
バルブは、さらに、井戸に挿入されたとき又は取り戻されるとき、バルブを、そこからつる下げられる有線に、好ましくは、開放可能なように取り付ける手段を含んでもよい。したがって、バルブは有線で回収可能としてもよい。
【0059】
バルブは、さらに、バルブを通してとは対照的に、バルブの周りの液体フローを防ぐように操作可能な一つ以上の密閉要素を備えても良い。必要であれば、密閉要素はインフレータブル又は膨張可能である。
【0060】
バルブは、本発明の一つ以上の方法で使用されてもよい。加えて又はあるいは、バルブは、本発明の注入システムに組み入れられてもよい。
【0061】
本発明の液体注入制御バルブの使用は、閉じた期間後、特に短い閉じた期間後、安全で安定した注入井開始を可能にする。長い閉じた期間後、補助ガス供給、例えば、窒素の供給は、表面チョークの下流側の背圧を造るために必要とされうる。そのような長い閉じた期間中、注入システム内の他のバルブを閉める必要があるからである(ダウンホール安全バルブ並びに、マスターバルブ、ウイングバルブ及び表面チョークなどの井戸先端と関連するバルブ)。
【0062】
それゆえ、必要であれば、窒素注入ラインを、表面チョーク(井戸先端)の下流に窒素を注入井に注入するために備え、長期間閉じられた期間中、表面チョークの下流に十分な背圧を形成することにより、注入管におけるCOがガス状態に相転移するリスクをやわらげることができる。
【0063】
本発明がより理解されるように、ほんの一例として、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】COの相挙動を示す。
図2】本発明によるCO注入システムを示す。
図3】本発明による液体注入制御バルブの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図2は、COを地下貯蔵層に注入するシステム2を示す。システム2は、ケーシングに沿って並べられた井戸202を備える。井戸202は、表面から下流に延び、枯渇した炭化水素貯蔵層211を貫通する。ケーシングは、井戸202から貯蔵層211への液体フローを可能にする穿孔210を備える。貯蔵層211は、近接する掘削孔範囲212、すなわち、穿孔210に近接する貯蔵層の範囲を備える。
【0066】
システム2は、表面の位置にCOポンプ設備201も備えている。ポンプ設備201は、パイプライン204に接続され、パイプラインはポンプ設備201を井戸先端213に接続する。表面チョーク205は、パイプライン204内に配置される。
【0067】
井戸先端213は、注入管203の上端に配置され、管203が井戸202内を走り、注入範囲209の下端、すなわち、穿孔210に近接する井戸202の範囲に達する。ダウンホール安全バルブ206及び液体注入制御バルブ208は、管203内に配置される。ダウンホール安全バルブ206は、液体注入制御バルブ208の上に離れて配置される。液体注入制御バルブ208は、枯渇した炭化水素貯蔵層又は低圧帯水層の近位にある、管203の下端に比較的近く配置されている。液体注入制御バルブ208は、閉鎖位置にバイアスされていることにより、十分な圧力が液体注入制御バルブ208上の液体で強まらない限り、COの注入範囲209へのフローを防ぐことができる。
【0068】
井戸先端213は、当業者に知られている、例えば、ウイングバルブ、スワブバルブ、キルウイングバルブ、及び上下マスターバルブなどの、連続するバルブ(不図示)208を備える。
【0069】
井戸202の管203とケーシングとの間には、環状通路がある。パッカー207は、この通路を密閉するために設けられ、パッカー207は、井戸202の残りの部分から注入範囲209を密閉する。
【0070】
その下端で又は向かって、注入管は、好ましくは、ランディング・ニプル(不図示)を備え、液体注入制御バルブ208のシートを設けてもよい。液体注入制御バルブ208は、ニプルで注入管と係合する密閉部材を備えてもよい。
【0071】
注入管203は、システムで使用されるために導入されてもよく、あるいは、従来の管、例えば、他の注入プロセス又は炭化水素生成中に井戸内で導入される管を備えてもよい。従来の管が使用されるときには、システムを導入するコストを減らすことができるという利点がある。
【0072】
液体注入制御バルブ208は、好ましくは、有線で回収可能である。それゆえ、比較的素早く簡単に配置される。
【0073】
任意に、システムは、一つ以上のブースターポンプを備えて、送り込まれたCOの圧力を上げること、例えば、開始時に液体注入制御バルブ208を開けることを助ける。
【0074】
システムの動作方法について説明する。ポンプ設備201が、パイプライン204に沿っておよび表面チョーク205を介して、液体又は超臨界COを井戸先端213に送り込む。送り込まれたCOは、注入管203に入り、管203を液体注入制御バルブ208へ押し下げる。液体注入制御バルブ208上の流し込まれたCOの圧力は、その後上昇し、一旦、この圧力が十分になると(閾値圧力)十分に大きな力をもたらし、液体注入制御バルブ208が開く。
【0075】
液体注入制御バルブ208上の流し込まれたCOの圧力がこの閾値圧力より下がると、液体注入制御バルブ208が閉じる。
【0076】
液体注入制御バルブ208が開けられると、流し込まれたCOは注入範囲209に流れ込む。注入範囲は、典型的には、注入管203における流し込まれたCOよりも、かなり低い圧力である。それゆえ、流し込まれたCOは、注入範囲209に入ると、ガス相に変化する。パッカー207は、COが、井戸202の注入管203とケーシングとの間の環状通路の上に、注入範囲から逃げることを防ぐ。
【0077】
穿孔210は、COが枯渇した炭化水素貯蔵層211に入るのを可能にする。圧力条件により、COは貯蔵層211に入るため、液又はガス相になる。COは、そこでの隔離のため貯蔵層211に浸透する。
【0078】
当然ながら、貯蔵層211内で異なる圧力があり、注入されたCOの相挙動に影響を及ぼす。特に、CO注入が進むと、近接する掘削孔範囲212内の圧力が増加する。貯蔵層211へのCOの流入割合が貯蔵層内のCO浸透割合を超えるからである。従って、COは液相の貯蔵層211に入るもののガスになる。近接する掘削孔範囲212から離れて、貯蔵層のより遠い低い圧力範囲に浸透するからである。
【0079】
どのようにシステムが実際に動作するかを想像させる実施例を図2を参照して説明する。本実施例では、ポンプ設備201は陸上、例えば、イギリスに配置される一方で、貯蔵層211は海底よりおおよそ3000メータ低い、例えば、北海に配置される。本実施例では、貯蔵層211は、200乃至300絶対psi(14乃至20絶対バール)の範囲の初期貯蔵層圧力の枯渇したガス貯蔵層である。
【0080】
COは、たとえば、発電所から捕えられる。捕えられたCOは、捕獲プラントからポンプ設備へ、例えば、70絶対バールの圧力と大気温度で、例えば、イギリスの場合0乃至20℃の温度で、捕えられる。この条件では、COは液相であることが明らかである。
【0081】
そして、液体COは、パイプライン204に沿って井戸先端213へ沖合で送り込まれる。井戸先端の周囲条件は、季節により変化する海底での温度による。従って、井戸先端213での圧力は70絶対バールより低い。
【0082】
送り込まれたCOは注入管203に入るが、注入管203に沿う進行は、最初は、注入開始で閉じるようにバイアスされた液体注入制御バルブ208によって停止される。
【0083】
したがって、COのカラムは、液体注入制御バルブ208上の注入管203において強まる。液体注入制御バルブ208上で築かれたCOのカラムは、液体注入制御バルブ208の閉鎖要素の力を用いる。カラムの圧力が、注入管203への継続するポンピングにより増えるにつれて、この力は増える。
【0084】
本実施例では、液体注入制御バルブ208は、バルブ上の圧力が250絶対バールを超える場合には開くように設計されている。
【0085】
本実施例では、典型的ダウンホール温度(例えば、0乃至100℃)でCOは250絶対バールの液体又は超臨界液体相となることが認められる。従って、液体又は超臨界COの安定的カラムは、注入管に築かれる。
【0086】
液体注入制御バルブ208が開き、COが液体又は超臨界流体相で注入範囲209に流れることを可能にする。そして、COは、穿孔210を介して貯蔵層211を通過する。
【0087】
本実施例では、液体注入制御バルブ208上のCOの圧力が約250絶対バール未満に低下すると、液体注入制御バルブ208は閉じる。それゆえ、液体注入制御バルブ208は、液体又は超臨界流体状態からガス相のCOの相転移が注入管203で起こることを防ぐ。送り込まれたCOのカラムが不安定となるため望ましくないからである。
【0088】
当業者であれば、液体注入制御バルブが、バルブ上の液体で強まったCOの適切な圧力に応じて開くように設計されていることは、理解されるだろう。例えば、液体注入制御バルブは、弾力性のあるバイアス手段を含み、バルブ上の圧力、つまり、105、110、120、150絶対バール又はいくつかの他の所定の圧力、例えば、100乃至500絶対バール、例えば、100乃至200絶対バールに対抗できるように設計されている。
【0089】
本発明は垂直掘削孔について説明したが、当業者であれば、本発明のプロセス及びシステムを偏位又は水平掘削孔に組み込まれてもよいことを理解するだろう。
【0090】
図3の部分断面図に示される液体注入制御バルブ3は、幅広の上部31aと幅の狭い下部31bとから成る略円断面の細長い本体を備える。上部31aと下部31bとの間には、中間テーパ部35が設けられている。上部31aは、入口(不図示)を備える上面32を有する。テーパ部35は、少なくとも一つの出口34を備える。入口は、本体31の上部31a内で通路33へ開く。通路33は、バルブシート37を有するその下端で終結する。バルブシート37は、入口と出口との間に位置される。バルブシート37は、出口への液体フローを防ぐためバルブ閉鎖要素38を受けるのに適用される。
【0091】
バルブ閉鎖要素38は、軸39に取り付けられる。軸39は、本体の下部31b内でバルブ閉鎖要素38から下方に延びている。トータルで、バルブ閉鎖要素38及び軸39はポペットと呼ばれる。軸39は、バルブ閉鎖要素38と下部31bの低い部分に配置される窒素充填金属ベローズ36との間に延びている。
【0092】
金属ベローズ36内に含まれる窒素の圧力は、ポペットをバイアスし、バルブ閉鎖要素38がバルブシート37と係合することにより、十分な液体圧力がバルブ上で強まりさえしない限り、バルブを介する液体フローを止めることができる。
【0093】
図3は、開状態の液体注入制御バルブ3を示す。バルブ3へ及びバルブ3からのCOフローの方向は、実線の矢印で示される。
【0094】
使用中、バルブ3はダウンホールに設置され、好ましくは、注入管の下部と密閉係合することにより、上部31aと注入管との間の密閉を形成する。出口から流れるCOは、バルブの本体の下部31bの周りの空間、例えば、バルブ3の本体の下部31bと注入管との間の環状空間に流れることが可能となる。
【0095】
本発明のバルブは、特に、液体又は超臨界液体COの注入の使用に適している。明らかなように、この位置のような低温液体は、バルブに、特に、原料の選択について、要求する。例えば、バルブのある部分、例えば、ハウジングが金属でできている場合には、適切な治金を、機械加工できるステンレス又はクロム若しくはニッケル合金鋼などから選択される必要がある。また、バルブシールの原料の選択は、低温液体、特にCOの使用に適切であることが必要である。
【0096】
予想される井戸条件に基づくと、液体COを枯渇した炭化水素、例えば、ガス貯蔵層に注入する典型的な運転パラメータは、下記の表1に示されるものと同じである。
【0097】
【表1】
【0098】
また、枯渇した炭化水素貯蔵層への注入及びそれに続く保存について本発明が述べられるとともに、低圧システムへ注入する限り注入安定性の維持が望まれるいかなる状況にも、本発明の原理を利用されることが想像される。特に、低圧システムは、所定の温度で注入される液体の臨界圧Pcより低い圧力である、いかなるシステムを意味すると理解される。例えば、液体相又は超臨界流体COを枯渇したガス貯蔵層に注入する場合、貯蔵層圧力は、液体温度のPc(CO)より低い。
図1
図2
図3