(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、無線通信用のアンテナを搭載した携帯型情報処理装置において、簡単な方法で電波に関する法令に定められる基準を満たすことが可能な携帯型情報処理装置、そのアンテナ制御方法、及びコンピュータが実行可能なプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、その筐体に無線通信用のチューナブルアンテナを搭載した携帯型情報処理装置において、前記チューナブルアンテナの利得を制御する利得制御部と、前記チューナブルアンテナに人体が近接したか否かを判断する判断部と、を備え、前記利得制御部は、前記判断部が前記チューナブルアンテナに人体が近接したと判断した場合には、前記アンテナの利得が小さくなるように制御することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記判断部は、前記チューナブルアンテナの近傍に配置され、前記チューナブルアンテナに人体が近接したか否かを検出する人感センサであることが望ましい。
【0009】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記判断部は、画面の表示方向に基づいて、前記チューナブルアンテナに人体が近接したか否かを判断することが望ましい。
【0010】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記利得制御部は、チャネルの選択を指示する制御信号を出力する制御信号出力部と、前記制御信号と前記判断部の判断結果とに基づいた選択信号を出力する選択部と、前記選択信号に従って前記チューナブルアンテナのインピーダンスを切り替えるインピーダンス切替部と、を備え、前記選択信号は、前記判断結果が前記人体の近接を示す場合は、前記制御信号が指示するチャネルよりも前記チューナブルアンテナの利得が小さくなるチャネルの選択を指示する信号であり、前記判断結果が前記人体の近接を示さない場合は、前記制御信号と同じ信号であることが望ましい。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記インピーダンス切替部は、容量の異なる複数のリアクタンス素子と、前記選択信号に基づいて前記複数のリアクタンス素子の中から1つのリアクタンス素子を選択し、選択したリアクタンス素子で前記チューナブルアンテナとグランドを接続するスイッチ回路と、を含むことが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記リアクタンス素子がコンデンサであることが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記筐体は、ディスプレイ装置が搭載されていることが望ましい。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記携帯型情報処理装置は、タブレットPCであることが望ましい。
【0015】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、その筐体に無線通信用のチューナブルアンテナを搭載した携帯型情報処理装置のアンテナ制御方法において、前記チューナブルアンテナの利得を制御する工程と、前記チューナブルアンテナに人体が近接したか否かを判断する工程と、を含み、前記制御する工程では、前記判断する工程で前記チューナブルアンテナに人体が近接したと判断した場合には、前記チューナブルアンテナの利得が小さくなるように制御することを特徴とする。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、その筐体に無線通信用のチューナブルアンテナを搭載した携帯型情報処理装置に搭載されるプログラムであって、前記チューナブルアンテナの利得を制御する工程と、前記チューナブルアンテナに人体が近接したか否かを判断する工程と、を含み、前記制御する工程では、前記判断する工程で前記チューナブルアンテナに人体が近接したと判断した場合には、前記チューナブルアンテナの利得が小さくなるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アンテナを搭載した携帯型情報処理装置において、簡単な方法で電波に関する法令に定められる基準を満たすことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、この発明に係る携帯型情報処理装置、そのアンテナ制御方法、及びコンピュータが実行可能なプログラムを図面に基づいて詳細に説明する。本発明の構成要素は、本明細書の図面に一般に示してあるが、様々な構成で広く多様に配置し設計してもよいことは容易に理解できる。したがって、本発明の装置、システム及び方法の実施形態についての以下のより詳細な説明は、特許請求の範囲に示す本発明の範囲を限定するものではなく、単に本発明の選択した実施形態の一例を示すものであって、本明細書の特許請求の範囲に示す本発明と矛盾無く装置、システム及び方法についての選択した実施形態を単に示すものである。当業者は、特定の細目の1つ以上が無くても、又は他の方法、部品、材料でも本発明を実現できることが理解できる。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの又は実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
以下、本発明に係る携帯型情報処理装置を適用したタブレットPCについて説明する。
図1〜
図3は、本実施の形態に係るタブレットPC1の外観図である。
図1において、タブレットPC1はキーボードを内蔵したいわゆるコンバーチブル型であり、いずれも略直方体であるシステム側筐体2及びディスプレイ側筐体3を備えている。システム側筐体2はキーボード及びポインティング・デバイスを備えた入力部10を備える。ディスプレイ側筐体3はタッチパネル入力部を液晶表示装置(LCD)の上に重ねて表示と指示体(タッチペンや指等)による入力を可能にした入力表示パネル11を備える。
【0021】
システム側筐体2及びディスプレイ側筐体3は、それぞれの端部の中央で連結部(ヒンジ)4によって連結されている。連結部4は、これらの筐体を互いに開閉する方向に回動自在に支持している。システム側筐体2に対してディスプレイ側筐体3を開いた状態で、ディスプレイ側筐体3を、連結部4を中心にして少なくとも180度回転させることが可能となっている。タブレットPC1は、
図1に示すPC使用モードでは、通常のノートPCのように、入力部10に対して操作して使用することができる。さらに、
図2に示すようにディスプレイ側筐体3を回転させて、システム側筐体2の上にディスプレイ側筐体3を重ねるように折り畳み、入力表示パネル11が表を向くようにすれば、
図3に示すタブレット使用モードとなる。タブレット使用モードでは、タブレットPC1を入力表示パネル11に対して操作することで使用することができる。
【0022】
図1〜
図3において、ディスプレイ側筐体3は、入力表示パネル11の周辺部に4つの縁辺12a、12b、12c、12dを有している。縁辺12aには、表示方向回転ボタン16が設けられている。ユーザが表示方向回転ボタン16を1回押すごとに、所定の方向に入力表示パネル11に表示される画面の方向が90度ずつ回転する。回転の方向は、時計方向、反時計方向、又はいずれかの選択された方向とすることができる。さらに180度回転させるときは、90度ずつ回転させないで、1回で180度回転させるようにしてもよい。なお、加速度センサ等により、タブレットPC1の方向(縦、横)を検出して、自動的に画面を回転させることにしてもよい。
【0023】
縁辺12cには、無線WANに使用するアンテナ100が取り付けられている。アンテナ100は、チューナブルアンテナであり、インピーダンスを所定の値に調節することで、同調周波数(共振周波数)を希望する周波数に一致させることが可能となっている。また、ディスプレイ側筐体3の端面14には、アンテナ100と近接する位置に人感センサ17が設けられている。人感センサ17は、人体がアンテナ100に近接しているか否かを判断するための判断部として機能する。
【0024】
詳細を後述するように、本実施の形態では、人感センサ17でアンテナ100に人体が近接したことを検出した場合には、SARの問題を回避するために、アンテナ100のインピーダンスを切替えてアンテナ利得を下げている(電波出力を弱める)。ここでは、アンテナ100を縁辺12cに設けることにしたが、他の縁辺12a、12b、及び12dに設け、人感センサ17をその近傍に設けることにしてもよい。
【0025】
図4は、タブレットPC1のハードウェアの概略構成を示すブロック図である。CPU21は、ノートPCの中枢機能を担う演算処理装置で、例えば、Windows(登録商標)等のOS、BIOS、デバイス・ドライバ、あるいはアプリケーション・プログラムなどを実行する。CPU21は、CPUブリッジ22及びI/Oブリッジ23を中心に構成されるチップ・セットにさまざまなバスを経由して接続された各デバイスを制御する。
【0026】
CPUブリッジ22は、メイン・メモリ24へのアクセス動作を制御するためのメモリ・コントローラ機能や、CPU21と他のデバイスとの間のデータ転送速度の差を吸収するためのデータ・バッファ機能などを含む。メイン・メモリ24はCPUブリッジ22に接続され、CPU21が実行するプログラムの読み込み領域、処理データを書き込む作業領域として利用される書き込み可能メモリである。ビデオ・コントローラ28はCPUブリッジ22に接続され、ビデオ・チップ(図示せず)及びVRAM(図示せず)を実装しており、CPU21からの描画命令を受けて描画すべきイメージを生成してVRAMに書き込み、VRAMから読み出したイメージを描画データとして入力表示パネル11を構成するLCDに送る。
【0027】
無線WANモジュール30は、I/Oブリッジ23、選択モジュール31、及びアンテナ100に接続されている。無線WANは、割り当てられた周波数帯域の中に複数のチャネル(CH)が設定されており、各々のチャネルには中心周波数と帯域幅が規定されている。無線WANモジュール30は、例えば、704MHz〜960MHzの周波数帯域で4つのチャネルを使用して無線通信を行うことが可能となっている。無線WANモジュール30は、選択したチャネルを示す制御信号を選択モジュール31に出力する。
【0028】
また、I/Oブリッジ23は、シリアルATAインターフェース及びUSBインターフェース(図示せず)としての機能も含み、シリアルATAを介してハードディスク・ドライブ(HDD)29、及び光学ドライブ(図示せず)などと接続される。HDD29には、OS、デバイス・ドライバ、あるいはアプリケーション・プログラムなどが格納される。さらにI/Oブリッジ23には、LPCバス30を介してエンベデッド・コントローラ(EC)25、I/Oコントローラ27などが接続されている。I/Oコントローラ27には入力表示パネル11を構成するタッチパネル入力部が接続されている。I/Oコントローラ27はタッチパネル入力部の動作を制御する。エンベデッド・コントローラ(EC)25には入力部10及び電源装置26等が接続されている。エンベデッド・コントローラ25は、入力部10及び電源装置26等の動作を制御する。
【0029】
人感センサ17は選択モジュール31に接続されている。人感センサ17は、アンテナ100に人体が近接したか否かを検出し、判断結果である検知結果(近接検出「1」、近接不検出「0」)を選択モジュール31に出力する。
【0030】
選択モジュール31は、本体側筐体2又はディスプレイ側筐体3に設けられ、無線WANモジュール30から出力される制御信号と人感センサ17から出力される検出結果とに基づいて選択信号を生成して、アンテナ100のインピーダンス切替回路(
図5参照)に出力する。
【0031】
図5は、本実施の形態に係るタブレットPC1のアンテナ100の全体的な構造を示す斜視図である。アンテナ100は、印刷回路基板に対してフォト・リソグラフィとエッチング処理を行い、誘電体基板101の主体面103に形成したアンテナ・パターンと、主体面103上のアンテナ・パターンにそれぞれ半田で接続される水平延長部パターン109cとグランド・プレーン115の3つの部材で構成している。水平延長部パターン109cが存在する平面は誘電体基板101の主体面103と90度で交差する。
【0032】
誘電体基板101の形状は、アンテナ・パターンを形成する領域を提供する主体面103と、4つの側面105を有する薄板状の直方体となっている。主体面103には、励振素子107、放射素子109、及びグランド素子113のパターンが形成されている。グランド素子113はグランド・プレーン115の1つの直線状の縁に平行に延びる直線状のパターンでグランド・プレーン115を接続する領域を有する。グランド素子113には、長手方向のほぼ中央部にグランド側の給電部121bが形成されている。
【0033】
アンテナ・パターンは704MHz〜960MHzの範囲で無線WANの4つのチャネルに適応する無給電型の放射素子109と、放射素子109に静電結合及び電磁結合で電磁波エネルギーを供給する励振素子107を含む。
【0034】
放射素子109は、後述するようにグランド素子113との間に接続するリアクタンスを変更することで4つのチャネルの周波数帯に適応することができる。一例として、第1チャネルは704MHzから746MHz、第2チャネルは747MHzから787MHz、第3チャネルは790MHzから862MHz、及び第4チャネルは860MHzから960MHzとする。
【0035】
励振素子107は、1/4波長で共振する直線状のモノポール・アンテナでグランド素子113に平行に延びている。励振素子107の開放端107aは、放射素子109の垂直部109aから所定の間隔が空くように長さを短くして電波干渉を抑制している。励振素子107は、放射素子109の全体の帯域の中心である基本周波数(832MHz)の3次高調波の1/4波長で共振するように長さが設定されている。なお、本明細書においては、垂直と水平の方向はグランド素子113に対する方向を示すものとする。
【0036】
開放端107aと反対側の位置における励振素子107には、電圧側の給電部121aが形成されている。給電部121a、121bは、線WANモジュール30と同軸ケーブルで接続され、無線WANモジュール30から給電される。
【0037】
グランド素子113の一方の端部の近辺には、垂直に延びる放射素子109の垂直部パターン109aが配置されている。垂直部パターン109aとグランド素子113とは直接連絡しておらず、両者の間にはインピーダンス切替回路201が設けられている。インピーダンス切替回路201の周囲には
図2に示すように複数の異なる静電容量のコンデンサが配置されている。インピーダンス切替回路201は、選択モジュール31から選択信号を受け取って、垂直部パターン109aとグランド素子113との間を異なる複数のコンデンサのいずれかと接続する。
【0038】
垂直部パターン109aには水平部パターン109bが連絡している。水平部パターン109bは、グランド素子113に平行に開放端109dまで延びている。水平部パターン109bは、主体面103に対して90度で交差する平面上に配置された水平延長部パターン109cを含む。なお、交差角度の90度はノートPCに収納する際の最も好ましい例であり、水平延長部パターン109cが主体面103に対して90度より大きな角度で交差する平面上に配置されていてもよい。
【0039】
水平延長部パターン109cは平坦な薄板状の導体で形成され、誘電体基板101の側面105に沿って配置されている。水平延長部パターン109cは、水平部パターン109bに半田で接続されている。水平延長部パターン109cは、グランド素子113に平行に水平部パターン109bの開放端109dよりさらに先にある開放端109eまで延びている。本実施例では別の部材として製作した水平延長部パターン109cと水平部パターン109bを半田で接続しているが、両者を一体化したパターンとして形成してから折り曲げるようにしてもよい。放射素子109はグランド素子113から開放端109eまでのパターンの長さとそのとき接続されるコンデンサの容量に応じた電気長で共振周波数が決まり、逆L型1/4波長モノポール・アンテナとして電磁波を放射又は受信する。
【0040】
水平部パターン109bは励振素子107と主体面103上で平行になるように配置されており静電結合及び電磁結合をして励振素子107から電磁波エネルギーを受け取る。放射素子109は、励振素子107が共振する3次高調波の周波数で共振する。放射素子109の垂直部パターン109aのグランド素子113側の開放端から水平延長部パターン109cの開放端109eまでの長さは、放射素子109が放射する第4チャネルの基本周波数よりやや高い周波数の波長の1/4波長で共振するように設定されている。そして、接続するコンデンサの容量を増やすことで同調周波数をより低い方向にシフトさせる。
【0041】
グランド素子113にそれぞれ平行な2つのパターンがグランド素子113に対して垂直な方向からみたときに重なりあるように延びていることをオーバーラップしているという。水平部パターン109bと励振素子107は電気的に結合し電磁波エネルギーの送受が可能なように主体面103上にオーバーラップして配置されている。
【0042】
つぎに
図6を参照して周波数シフト回路を説明する。周波数シフト回路は主として、インピーダンス切替回路201と5個のコンデンサで構成されている。コンデンサ203は、一端が垂直部パターン109aに接続され他端がインピーダンス切替回路201に接続されている。コンデンサ205a〜205dは、それぞれ一端がインピーダンス切替回路201に接続され他端がグランド素子113に接続されている。インピーダンス切替回路201の内部は、コンデンサ203と4つのコンデンサ205a〜205dの中から選択したいずれかのコンデンサを接続するマルチプレクサで構成されている。
【0043】
それぞれのコンデンサの容量は、コンデンサ203は200pF、コンデンサ205aは1.5pF、コンデンサ205bは2.4pF、コンデンサ205cは4.7pF、コンデンサ205dは6.8pFとしている。コンデンサ203は、放射素子109に流れる直流成分を遮断する目的で挿入している。コンデンサ205a〜コンデンサ205dは、放射素子109の容量性のリアクタンスを調整して、同調周波数をシフトさせる。
【0044】
端子251a、251bは選択モジュール31に接続される。端子251c、251dにはインピーダンス切替回路201を動作させるための直流電源が接続される。端子251a〜251dは、誘電体基板101の図示しない主体面103上のパターン及びビアで接続された裏面のパターンによりインピーダンス切替回路201及びグランド素子113に接続される。なお、この周波数シフト回路にはさらに抵抗やコンデンサが接続されるが、動作の説明には必要がないため図からは省略している。
【0045】
インピーダンス切替回路201は、端子251a、251bで選択モジュール31から受け取った選択信号に基づいて、コンデンサ205a〜205dから選択したいずれかのコンデンサとコンデンサ203を接続する。その結果、垂直部パターン109aとグランド素子113との間はコンデンサ203とコンデンサ205a〜205dのいずれかのコンデンサの直列回路で接続されることになる。
【0046】
コンデンサ205a〜205dは、容量が大きくなるほど放射素子109の同調周波数を低い方にシフトさせる。コンデンサ205aは第4チャネルに対応し、コンデンサ205bは第3チャネルに対応し、コンデンサ205cは第2チャネルに対応し、コンデンサ205dは第1チャネルにそれぞれ対応する。
【0047】
つぎに、アンテナ100の挙動を説明する。給電点121a、121bに同軸ケーブルを接続して無線WANモジュール30から高周波電圧を給電する。無線WANを利用するときは、無線WANモジュール30が例えば第1チャネルを選択するための制御信号を選択モジュール31に送出し、無線モジュール31は、無線WANモジュール30から出力される制御信号と人感センサ17から出力される検出結果(例えば、近接不検出「0」)とに基づいて選択信号を生成して端子251a、251bに送る。インピーダンス切替回路201は、垂直部パターン109aをコンデンサ205dでグランド素子113に接続する。
【0048】
無線WANモジュール30は、給電点121a、121bに高周波電圧を給電する。励振素子107は共振し、水平部パターン109bに電磁結合及び静電結合で電磁波エネルギーを供給する。放射素子109は、コンデンサ205aから開放端109eまでの電気的な長さにおいて、水平部パターン109bが受け取った電磁波エネルギーにより共振する。
【0049】
図7は、ユーザがタブレットPC1を操作するときの人体とアンテナ100の位置関係を説明するための図である。ユーザがタブレットPC1を操作する場合には、人体が(1)〜(4)に位置する場合がある。(2)〜(4)の状態では、人体がアンテナ100に近接していないので、アンテナ利得が大きくなるような周波数特性を選択する。(1)の状態では、人体がアンテナ100に近接しているので、アンテナ利得が低くなるような周波数特性を選択して、人体に対するSARの影響を低減させる。
【0050】
図8及び
図9を参照して、アンテナ100に人体が近接した場合にSARを低減する処理を説明する。
図8は、アンテナ100に関連するソフトウェア及びハードウェアの機能構成を示す概略図である。
図9は、アンテナ100の周波数特性とアンテナ利得の関係を説明するための図である。
【0051】
図8において、HDD29(
図4参照)に格納された無線WANアプリケーション51、OS52、無線WANドライバ53は、タブレットPC1が起動されるとメイン・メモリ24に読み込まれ、CPU21によって実行される。無線WANアプリケーション51は、OS52上で動作するアプリケーション・プログラムであり、メイン・メモリ51に常駐して以下に説明する処理の中心的な役割を果たす。なお、無線WANアプリケーション51と各デバイス・ドライバの間のデータもしくはコマンドの送受信には、OS52が介在する。
【0052】
無線WANドライバ53は、無線WANモジュール30に対応したデバイス・ドライバである。無線WANアプリケーション51は、無線WANドライバ53を経由して無線WANモジュール30を制御することにより無線WANへの接続、切断、及び再接続などを行うことができる。
【0053】
無線WANモジュール30は、無線WANアプリケーション51の指示に従って、チャネルを選択するための制御信号を選択モジュール31に送出する。
【0054】
人感センサ17は、アンテナ100に人体が近接したか否かを検出し、検知結果(近接検出「1」、近接不検出「0」)を選択モジュール31に出力する。人感センサ17は、例えば、静電容量検出式のセンサであり、検出した静電容量が所定値以上の場合に、アンテナ100に人体が近接しているとして、近接検出「1」を出力し、他方、検出した静電容量が所定値以上でない場合に、アンテナ100に人体が近接していないとして、近接不検出「0」を出力する。なお、人感センサ17として赤外線検出式のセンサを使用することにしてもよい。
【0055】
選択モジュール31は、無線WANモジュール30から出力される制御信号と人感センサ17から出力される検出結果とに基づいて選択信号を生成してアンテナ100のインピーダンス切替回路201に出力する。選択モジュール31は、例えば、論理回路やコントローラで構成することができる。なお、無線WANモジュール30が選択モジュール31の機能を担うことにしてもよい。
【0056】
インピーダンス切替回路201は、選択モジュール31から入力される選択信号に従って、アンテナ100のインピーダンスを変化させることで、アンテナ100の同調周波数を変化させることができる。ここでは、アンテナ100のインピーダンスを変化させるために、接続するコンデンサを切り替えてそのインダクタンスを変更しているが、本発明はこれに限られるものではなく、他の方法を使用してインピーダンスを切り替えることにしてもよい。
【0057】
上記構成において、無線WANアプリケーション51、OS52、無線WANドライバ53、無線WANモジュール30、選択モジュール31、及びインピーダンス切替回路201は、アンテナ100の利得を制御する利得制御部を構成する。
【0058】
図9において、横軸は周波数(第1〜第4チャネル)、縦軸はアンテナ利得[Gain]を示している。アンテナ100のインピーダンスは上述したように、4段階に切り替え可能となっており、アンテナ100の周波数特性は、(a)〜(d)の4つのポジションを取ることができる。
【0059】
つぎに、アンテナ100の周波数特性の切替え動作を具体的に説明する。無線WANモジュール30は、第1チャネルを選択する場合は制御信号「00」を、第2チャネルを選択する場合は制御信号「01」を、第3チャネルを使用する場合は制御信号「10」を、第4チャネルを使用する場合は制御信号「11」を選択モジュール31に出力する。
【0060】
選択モジュール31は、人感センサ17の検出結果が近接不検出「0」の場合は、制御信号をそのまま選択信号としてインピーダンス切替回路201に出力する。他方、選択モジュール31は、人感センサ17の検出結果が近接検出「1」の場合は、制御信号「00」を「01」、制御信号「01」を「10」、制御信号「10」を「11」、制御信号「11」を「10」に変更して、選択信号としてインピーダンス切替回路201に出力する。
【0061】
インピーダンス切替回路201は、選択信号が「00」の場合にはコンデンサ205dを選択する。これにより、アンテナ100の周波数特性は(a)に示す特性となる。また、インピーダンス切替回路201は、選択信号が「01」の場合にはコンデンサ205cは選択する。これにより、アンテナ100の周波数特性は(b)に示す特性となる。また、インピーダンス切替回路201は、選択信号が「10」の場合にはコンデンサ205bを選択する。これにより、アンテナ100の周波数特性は(c)に示す特性となる。また、インピーダンス切替回路201は選択信号が「11」の場合にはコンデンサ205aを選択する。これにより、アンテナ100の周波数特性は(d)に示す特性となる。
【0062】
すなわち、人体の近接を検出していない状態では、選択したチャネルの中心周波数とアンテナ100の同調周波数が一致するようにして、アンテナ利得が最大となるようにしているが、人体の近接を検出した場合は、SARを低減するために、選択したチャネルの中心周波数とアンテナ100の同調周波数が一致しないように周波数特性を切り替えて、アンテナ利得を低下させている。例えば、同図において、無線WANモジュール30が第2チャネルを選択した場合は、人体の近接が検出されない状態では、周波数特性(b)を選択して、アンテナ利得が最大となるようにしているが、人体の近接を検出した状態では、周波数特性(c)を選択して、アンテナ利得を低くしている。
【0063】
図10は、人感センサ17の他の配置例を示す図である。上記実施の形態(
図1参照)では、人感センサ17をディスプレイ側筐体3のアンテナ100近傍の端面14に配置しているが、さらに、ディスプレイ側筐体3を折り畳んだ状態で、本体側筐体2の底面(裏面)のアンテナ100に対向する位置に配置することにしてもよい。これにより、ユーザが膝にタブレットPC1を載せて操作する場合にアンテナ100に膝が近接したことを検出して、アンテナ100の利得を低減することができる。
【0064】
また、上記実施の形態では、人体がアンテナ100に近接しているか否かを判断するための判断部として人感センサ17を使用する例を説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば、画面の表示方向を判別してアンテナ100に人体が近接しているか否かを判断することにしてもよい。
図11は、ユーザがタブレットPC1を操作するときの人体とアンテナ100の位置関係の例を説明するための図である。例えば、(a)に示すような画面の表示方向の場合は、人体がアンテナ100に近接している可能性が高いので、人体がアンテナ100に近接していると判断してもよい。他方、(b)〜(e)に示すような画面の表示方向の場合は、人体がアンテナ100に近接している可能性が低いので、人体がアンテナ100に近接していないと判断してもよい。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態によれば、筐体に無線通信用のチューナブルアンテナであるアンテナ100を搭載したタブレットPC1において、アンテナ100の利得を制御する利得制御部と、アンテナ100に人体が近接したか否かを判断する判断部と、を備え、利得制御部は、判断部がアンテナ100に人体が近接したことと判断した場合には、アンテナ100の利得が小さくなるように制御することとしたので、簡単な方法でSARの基準を満たすことが可能となる。付言すると、チューナブルアンテナは本来、小型の構成でワイドバンド化することを目的とするものであるが、本実施の形態では、アンテナ利得の調整にも流用している。
【0066】
また、利得制御部は、所望のチャネルの選択を指示する制御信号を出力する無線WANモジュール30と、無線WANモジュール30から出力される制御信号と人感センサ17の検出結果とに基づいた選択信号を出力する選択モジュール31と、選択信号に従ってアンテナ100のインピーダンスを切り替えるインピーダンス切替回路201と、を備え、選択信号は、検出結果が人体の近接を示す場合は制御信号が指示するチャネルよりもアンテナ100の利得が小さくなるチャネルの選択を指示する信号であり、検出結果が人体の近接を示さない場合は制御信号と同じ信号であることとしたので、小型のアンテナを使用して簡単な方法でSARの基準を満たすことが可能となる。
【0067】
なお、上記実施の形態では、無線WANについて説明したが、本発明はこれに限られるわけではなく、無線LAN、WiMAX(登録商標)、WiFi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、ワンセグ、UWB等の他の規格(他の周波数バンド)にも適用可能である。また、規格の異なる複数のチューナブルアンテナを搭載することにしてもよい。
【0068】
また、上記実施の形態では、携帯型情報処理装置としてコンバーチブル型のタブレットPCについて説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、キーボードを内蔵しないピュアタブレット型のタブレットPC、PDA、携帯電話等にも適用可能である。