(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動取引装置(ATM)に代表される紙葉類取引装置は、顧客により投入される紙葉類(紙幣、小切手)を内部で搬送して、紙葉類の鑑定、分類あるいは収納等を行う。この紙葉類の投入に際して、誤って異物、特に硬貨が投入される場合が少なくないため、紙葉類取引装置には、硬貨等の異物を排除して返却する異物排出装置が設けられる。
【0003】
図6及び7は、従来の硬貨排出機構(異物排出装置)の概略を説明する図である。
図5において、自動取引装置(ATM)の投入口100の下に、硬貨を排出するための異物排出装置であるコンベアモジュール200が設けられている。コンベアモジュール200は、自動取引装置内部の一対のフレーム300に取り付けられる。
【0004】
コンベアモジュール200は、落下した硬貨160を乗せて搬送するベルト240と、ベルト240を駆動する駆動プーリ230と、駆動プーリ230を駆動する駆動モータ220と、駆動プーリ230の反対側に設けられベルト240の走行に従って回転する従動プーリ250を有する。
【0005】
紙幣150に混じって硬貨160が投入口100に投入されると、櫛歯形状等に形成された投入口100の底部のすきまから、投入された硬貨160がその自重により、コンベアモジュール200に落下する。駆動モータ220の回転によりベルト240は搬送面がp方向に駆動され、右側のフレーム300に形成された出口260まで、硬貨160を搬送する。出口260まで送られた硬貨160は、ベルト240から落とされ図示なき返却口に戻される。
【0006】
図6に示すように、落下した硬貨160が単独である場合には、硬貨160は出口260をスムースに通過して返却口に排出される。しかし、
図7に示すように、複数枚の硬貨160が同時に落下して硬貨160が硬貨塊160aの状態になると、硬貨塊160aのまま搬送されてしまう。すると、硬貨塊160aが出口260に衝突し、出口260手前で硬貨160が詰まってしまうことが起きる。こうなると、硬貨160を排出することができなくなる。
【0007】
そこで、ベルト搬送で硬貨を詰まらせない構造として、特許文献1では、搬送用のタイミングベルトの途中にベルトを上下動させるような振動片を取り付けて、塊になった硬貨を崩すような機構が提案されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に従って本発明の実施形態を説明する。なお、以下では、紙葉類取引装置としてATMの紙幣ユニットを例にする。そして、硬貨等の異物の塊を崩す異物塊崩し機構を、ATMの紙幣ユニットに設けられた異物排出装置に適用して説明する。
【0015】
図1Aは、本発明の実施の形態に係るATMの側面図で、ATMの紙幣ユニット部分の構成を示す図である。ATMには、紙幣ユニット以外の印字部、入力部あるいは表示部等が含まれるが、説明の煩雑さを避けるために紙幣ユニット以外の説明は省略する。
図1Bは、ATMの正面図で、コンベアモジュール10に関係する部分だけを抽出して示す図である。コンベアモジュール10が異物排出装置に相当する。
【0016】
紙幣ユニット1は、コンベアモジュール10、投入口100、入出金部102、紙幣判別部104、リジェクトボックスA(RJ−A)106、リジェクトボックスB(RJ−B)108、紙幣カセットA110、紙幣カセットB112、スタッカーA114、スタッカーB116、リジェクトボックスC(RJ−C)118、バックアッププール120、排出口130を有する。
【0017】
投入口100は、顧客がATMに入金する紙幣を投入するよう設けられた開口である。投入口100は、ATMから支払(出金)われる紙幣が排出される開口でもある。投入口100には、不図示のシャッターが設けられ、通常はシャッターにより閉鎖されていて、入出金時にのみ開放される。
【0018】
入出金部102は、投入口100から入金された紙幣や出金される紙幣を一時的に保管するためのものである。入出金部102の下部にコンベアモジュール10が設けられる。コンベアモジュール10は、投入口100から紙幣に混じって投入された異物を排除するためのものである。顧客が投入口100に紙幣の束を投入する際に、紙幣に混じって異物を投入してしまうことがあり、この異物を顧客に返却する必要があるからである。異物の代表例が、硬貨で、その他、ボタンやクリップである。また、顧客が紙幣の投入口100を硬貨投入口と間違えて、硬貨を入れてしまうこともあり、この場合にも適切に返却する必要がある。紙幣に混じって投入された異物は、例えば入出金部102の底部に形成された隙間から自重で、コンベアモジュール10に落下する。
【0019】
図1Bに示すように、コンベアモジュール10は、ベルトの搬送方向が正面に平行になるような向きで、ATM内部に配置される。コンベアモジュール10の詳細は後述する。ATMの正面側であって、投入口100の右端の下には、排出口130が設けられる。排出口130は、コンベアモジュール10で搬送された硬貨(異物)を顧客に返却する返却口である。
【0020】
コンベアモジュール10の右端と排出口130の間には、傾斜した通路132が設けられ、ベルトで右端まで搬送された硬貨等が傾斜面を滑り落ちて排出口130に排出される。なお、
図1Bの矢印で示すように、以下のコンベアモジュール10の説明では、「左右」および「前後」をATMを正面から見た方向を基準として表示する。
【0021】
紙幣判別部104は、紙幣の判別(金種の判別や正常紙幣か否かの判別等)を行うものである。リジェクトボックスA106およびリジェクトボックスB108は、紙幣判別部104によってリジェクトするよう判別された紙幣が収納されるものである。紙幣判別部104では、運用時の取引で損券となった紙幣、その他の不良紙幣或いは二枚重ね等の紙幣をリジェクト対象と判別する。
【0022】
紙幣カセットA110及び紙幣カセットB112は、スタッカーへの補充のための紙幣、或いは回収した紙幣を、紙幣の種別で収納するものである。紙幣カセットA110は、スタッカーA114用のカセットで、例えば1万円紙幣を収納する。紙幣カセットB112は、スタッカーB116用のカセットで、例えば千円紙幣を収納する。紙幣カセットA110及び紙幣カセットB112は、いずれも係員により着脱可能なように設けられる。
【0023】
スタッカーA114及びスタッカーB116は、種類別に紙幣を収納し、出金時には、紙幣を繰り出して払出し、入金時には預入れた紙幣を収納する。前述のように、スタッカーA114は例えば1万円札、スタッカーB116は例えば千円札を収納する。
【0024】
リジェクトボックスC118は、取忘れ取込みリジェクトボックスである。取引が終了した際に顧客が取忘れ、入出金部102内に残留した紙幣を収納するボックスである。バックアッププール120は入金された紙幣を一時収納したり、入金された紙幣や出金される紙幣の表裏をターンするものである。
【0025】
図1Aでは、入金される紙幣の流れを実線で示し、出金(支払)される紙幣の流れを破線で示す。投入口100から入金された紙幣は、入出金部102から内部に搬送され、まず紙幣判別部104で、金種の判別や正常紙幣等の判別が行われ、問題のある紙幣はリジェクトボックスA106あるいはリジェクトボックスB108に収納される。紙幣判別部104で正常と判断された紙幣のうち、例えば1万円札は、紙幣カセットA110あるいはスタッカーA114に収納され、例えば千円札は、紙幣カセットB112あるいはスタッカーB116に収納される。
【0026】
出金(支払)の場合には、スタッカーA114から必要枚数分の1万円札が入出金部102に搬送され、スタッカーB116から必要枚数の千円札分が入出金部102に搬送される。入出金部102に紙幣が集められた後に、投入口100のシャッターが開放される。また、シャッターが開放された後一定時間内に、出金された紙幣が取り出されたかを検出して、取出されない紙幣は回収されてリジェクトボックスC118に収納される。
【0027】
図2は、本実施形態のコンベアモジュール10の全体図である。
図2(B)は、コンベアモジュール10の正面図である。
図1Bと同方向から見た図である。
図2(A)は、コンベアモジュール10を上から見た図である。なお、
図2(B)では、案内ガイド14aと案内ガイド14bを透過した状態で、駆動モータ20等の配置を示す。
【0028】
紙幣ユニット1の内部には、奥行き方向に向かって、左側にフレーム12a、右側に12bが設けられる。フレーム12a、12bは、コンベアモジュール10を取り付けるための部材である。フレーム12a、12bは、平行に設けられ、例えば金属板からなる。
【0029】
コンベアモジュール10は左側のフレーム12aと右側のフレーム12bの間に挟まれて配置される。コンベアモジュール10は、コンベアの搬送方向が左から右(P方向)になるような向きに配置される。また、コンベアの搬送姿勢は水平な姿勢である。なお、搬送の左側を上流側、搬送の右側を下流側とも呼ぶ。
【0030】
コンベアモジュール10は、コンベアモジュール10の左端がフレーム12aに当て付くよう配置される。コンベアモジュール10は、コンベアモジュール10の右端より少し内側でフレーム12bに交差するよう配置される。
【0031】
コンベアモジュール10は、案内ガイド14a、案内ガイド14b、駆動モータ20、駆動プーリ30、ベルト40、従動プーリ50、偏心ローラ56、当て板60等を有する。
【0032】
案内ガイド14aと案内ガイド14bは、コンベアモジュール10全体のフレームを構成する。案内ガイド14a、14bは、コンベアの搬送方向に沿ってベルト40を挟むように設けられた、平行な2枚の板状部材である。案内ガイド14a、14bは、略長方形形状で鉛直方向に立てて設けられる。
【0033】
また、案内ガイド14a、14bは、ベルト40の搬送方向に沿って側壁を構成する。案内ガイド14a、14bの高さは、ベルト40上で硬貨塊160aが外側にあふれない程度の高さに設けられる。案内ガイド14a、14bの左側の位置には、駆動プーリ30を回転自在に保持するための軸受けA34が設けられる。案内ガイド14a、14bの右側の位置には、従動プーリ50を上下方向に移動自在にガイドするためのガイド溝(ガイド部材)16が設けられる。
【0034】
案内ガイド14a、14bの左端部には、フレーム12aに平行で、ベルト40の外側方向に突出する面が設けられる。案内ガイド14a、14bは、この突出する面でフレーム12aに不図示のねじ等で固定される。また、案内ガイド14a、14bは、フレーム12bと交差する部分で、L字断面の取付部材18を介して、フレーム12bに固定される。
【0035】
駆動モータ20は、駆動プーリ30を回転させる駆動源である。駆動モータ20は、例えばステップモータあるいはDCモータ等である。駆動モータ20は、駆動モータ20の回転軸22が、コンベアの搬送方向に直交する方向、つまり前後方向の向きで、案内ガイド14bの奥側に配置される。駆動モータ20は、案内ガイド14bに不図示の中継部材を介して取り付けられる。
【0036】
駆動モータ20の回転軸22の先端には、回転伝達用のギヤ24が組み付けられる。ギヤ24には伝達用のギヤ26が噛み合う。ギヤ26は、駆動プーリ30に回転を伝達するためのギヤである。
【0037】
駆動プーリ30は、ベルト40が架け渡され、ベルト40を回転駆動するものである。駆動プーリ30は、搬送方向の上流側に、回転中心が前後方向の向きで、案内ガイド14aと案内ガイド14bの間に配置される。伝達用のギヤ26は、駆動プーリ30の回転軸32に組み付けられる。駆動プーリ30は、軸受けA34に回転軸32が嵌合して回転可能に支持される。また、駆動プーリ30は、ベルト40を駆動する駆動面に、ベルト40に対応する凹凸(歯)を有する。
【0038】
ベルト40は 投入された硬貨(異物)を上面(搬送面)に乗せて、排出口130まで搬送するものである。ベルト40は、ループ状につながったもので、搬送面の逆の面に一定ピッチで歯溝が形成されている、いわゆるタイミングベルトである。ベルト40の搬送面は、フラットな面で、かつ硬貨160との間に適当な摩擦を生じるような面で構成される。
【0039】
従動プーリ50は、ベルト40が架け渡され、ベルト40による搬送方向の下流側に配置されて、ベルト40の搬送によって回転されるものである。従動プーリ50は、架け渡されるベルト40の適当なテンションを与えるものである。
【0040】
従動プーリ50は、コンベアモジュール10の右端に、案内ガイド14a、14bの間に、駆動プーリ30と平行になるような向きで配置される。従動プーリ50は、フレーム12bの右側に隣接するように配置される。従動プーリ50は、駆動プーリ30と同様に、ベルト40を駆動する駆動面にベルト40に対応する対応する凹凸(歯)が有する。
【0041】
フレーム12bには、ベルト40が通過する位置に、硬貨を通過させるための開口13が形成される。従動プーリ50がフレーム12bの右側に隣接する位置に配置されるので、
開口13を通過した直後がベルト40の終点になる。搬送された硬貨160は、終点でベルト40からこぼれて、通路132(
図1)に落下して、排出口130に到達する。
【0042】
従動プーリ50の中心には回転軸52が設けられ、回転軸52の両端には、軸受けB54および偏心ローラ56がそれぞれ取付けられる。従動プーリ50の軸端の構成は、両端共通であるので、手前側の軸端であるM部について説明する。
図3,4を参照して説明する。
図3は、
図2(A)のM部を拡大して、軸端の構成を断面で示した図である。
図4は、
図2(A)のM部近傍を斜視図で示すものである。
【0043】
従動プーリ50には、軸受けB54が取付けられる。軸受けB54は、従動プーリの回転を支持し、かつガイド溝16に嵌合して、従動プーリ50の移動を支持するものである。
図3、
図4に示すように、軸受けB54は、中心に貫通孔54aが設けられた、2段の円筒形状である。軸受けB54は、中心の貫通孔54aで従動プーリの回転軸を回転自在に支持する。さらに、軸受けB54は、径の小さい側である小径円筒部54cがガイド溝16に嵌合して、従動プーリの変位(移動)を支持する。そして、軸受けB54の径の大きい側の面54bが、案内ガイド14aの内面と摺動する。摺動面は低摩擦の材料で形成されるのが望ましい。従動プーリ50の反対側の軸も同様に構成されるので、従動プーリ50のスラスト方向のがたつきが防止される。
【0044】
次に、従動プーリの回転に応じて従動プーリ50を一定方向に変位(移動)させるための変位部材について説明する。変位部材は、回転角度に応じて周面までの距離が変化するローラ(偏心ローラ56)と前記ローラの周面が当接する当接部材(当て板60)から主に構成される。
【0045】
従動プーリ50の回転軸52で、軸受けB54の外側には、偏心ローラ56が組み付けられる。偏心ローラ56は、当該従動プーリの中心からの距離が変化するような周面からなるローラである。
図2に示すように、偏心ローラ56の下部には、偏心ローラ56の周面に当接(接触)する当て板60が設けられる。当て板60は、案内ガイド14a、14bの右端の下部に水平方向にそれぞれ設けられる。当て板60は、回転する前記ローラの周面が当接する当接部材である。当接部材は、板状ではなく、ブロック形状でもよい。また、従動プーリ50の変位方向は、前記ベルトの搬送方向に対し交差する方向で、おおよそ上下方向である。
【0046】
偏心ローラ56は、例えば、
図4に示すように、片側が細いたまご型の形状である。従動プーリ50の自重によって、偏心ローラ56はその周面で常に当て板60に接触することになる。これにより、偏心ローラ56の回転角に応じて、従動プーリ50の位置が変位する。
【0047】
前述のように、案内ガイド14a、14bには、従動プーリ50の移動をガイドするガイド溝16がそれぞれ設けられる。ガイド溝16は、従動プーリ50が搬送方向に交差する方向へ変位することをガイドする。ガイド溝16は、駆動プーリ30の回転中心を中心(支点)とする半径rの円弧sに沿った形状を基本とする(
図2(B))。そして、ガイド溝16は、この円弧sを中心線とした一定幅の溝をベースとして、上下端は、軸受けB54の小径円筒部54cに適合する形状から構成される。これにより、従動プーリ50が移動しても、駆動プーリ30と従動プーリ50間の距離を一定にできる。つまり、従動プーリ50の変位に関わらず、ベルト40のテンションを一定にすることができる。
【0048】
以上により、従動プーリ50は、軸受けB54によってガイド溝16の円弧sに沿った移動が支持されているので、従動プーリ50は、偏心ローラ56の回転角度に応じて、ベルト40のテンションを一定に保持しつつ、略上下方向に変位する。
【0049】
図5は、上端位置にある場合と下端位置にある場合の従動プーリ50を対比して示す図である。
図5(A)は、上端と下端にある従動プーリ50とベルトの位置を示す図である。上端位置にある従動プーリ50uとベルト40uを実線で示す。また、下端位置にある従動プーリ50dとベルト40dを破線で示す。なお、2点鎖線は、上端位置での偏心ローラ56uの形状の一部である。
【0050】
図5(B)は、偏心ローラ56の形状を詳細に示す図である。上端位置での偏心ローラ56uを実線で示し、下端位置での偏心ローラ56dを破線で示す。
図5(B)に示すように、偏心ローラ56uは、回転軸52の回転中心から偏心ローラ56の周面までの距離が最も長くなるような角度で、当て板60に接触する状態である。偏心ローラ56が、偏心ローラ56uの角度になった状態で、従動プーリ50は上端の位置にくる。
【0051】
逆に、偏心ローラ56dは、回転軸52の回転中心から偏心ローラ56の周面までの距離が最も短くなるような角度で、当て板60に接触する状態である。偏心ローラ56が、偏心ローラ56dの角度になった状態で、従動プーリ50は下端の位置にくる。偏心ローラ56が、偏心ローラ56uの位置から約90度時計方向に回転した位置が、偏心ローラ56dの位置になる。偏心ローラ56が
図5のような形状の場合には、従動プーリ50は、1回転につき1回の上下変位を行う。
【0052】
また、ベルト40は、一番上に上がった位置であるベルト40uの位置で、水平状態になるよう設定される。これにより、ベルト40は、水平な状態(ベルト40u)から、下流側に向かって下った状態(ベルト40d)の間、つまり、水平と傾斜した角度間を変位する。
以上の構成により、従動プーリ50は、ベルト40の走行によって、ベルト40の搬送方向に対して交差方向(上下方向)に往復変位し、ベルト40もベルト40u〜ベルト40dの間を繰り返し変位する。このように、変位部材によって前記従動プーリが上下に変位し、前記ベルトの異物を乗せる搬送面が水平と下流側に傾いた状態を往復変位する。この搬送中のベルト40の上下変位によって、搬送面に乗った硬貨160が硬貨塊160aの状態になっても、硬貨塊160aが確実に崩され、硬貨は160bに示すような状態になる。ベルトが上下変位するような搬送をさせても、ガイド溝16と軸受けB54の組み合わせにより、ベルト40のテンションが一定に保持され、従動プーリ50の上下変位もスムースに行われる。なお、ベルト40は、搬送中に往復的に変位(上下動)して、振動が与えられるので、変位部材は、加振部材と呼ぶこともできる。
【0053】
上記実施形態では、下流側に設けられる従動プーリを、ベルトを上下動させるプーリとして説明したが、以下の組み合わせも可能である。
1)上流側に従動プーリ、下流側に駆動プーリを設け、下流側の駆動プーリを上下動させる。
2)上流側に駆動プーリ、下流側に従動プーリを設け、上流側の駆動プーリを上下動させる。
3)上流側に従動プーリ、下流側に駆動プーリを設け、上流側の従動プーリを上下動させる。
そして、変位部材やガイド部材は、上下動されるプーリに取り付けられる。なお、2)、3)のように上流側のプーリを上下動させる場合にも、ベルトが水平状態から下流側(排出口)に向かって傾斜するように設定することが望ましい。
【0054】
以上から、ベルトの搬送方向の一端(上流あるいは下流)にあるプーリを第1のプーリ、ベルトの搬送方向の他端(上流あるいは下流)にあって上下動させるプーリを第2のプーリと称して、上記の組み合わせをまとめると、
異物塊崩し機構は、前記ベルトが架け渡され、前記ベルトによる搬送方向の一端に配置される第1のプーリと、同じく、前記ベルトが架け渡され、前記ベルトによる搬送方向の他端に配置される第2のプーリと、前記第2のプーリの回転に応じて、前記ベルトの搬送方向に対し交差する方向に当該第2のプーリを変位させる変位部材と、前記変位部材による前記第2のプーリの交差する方向への変位をガイドするガイド部材と備え、前記ベルトが前記第1のプーリを支点として前記搬送方向に交差する方向に変位しながら、前記異物を搬送する という構成になる。
【0055】
以上説明した実施形態により、少なくとも以下の効果が奏せられる。
1)従動プーリの上下変位によってベルトの搬送面に硬貨塊を崩す変位を発生させるので、機構が単純化できる。
2)従動プーリに偏心ローラを取り付けることで従動プーリに上下変位が発生するので、専用の駆動源が不要になり、コストやスペースを抑えることができる。
3)ベルトの上下変位を、水平位置と搬送方向に下がる方向の位置間で、変化させるようにしたので、崩された硬貨が下流側に転がり、崩された硬貨が上流側に戻ってくることがない。
4)従動プーリに偏心ローラ等を設けるという簡単な構成なので、従来の異物排出装置を改良することも容易である。
5)ベルトの終点で最も変位が大きくなるので、開口付近に滞留する硬貨塊をより効果的に崩すことができる。
【0056】
また、上記説明した実施形態につき、以下の変形が可能である。
1)ベルトとして、歯付ベルトの例に示したが、歯の付いていない、いわゆる平ベルトにも適用可能である。
2)偏心ローラは、たまご型形状ではなく、多角形形状、例えば4角形あるいは6角形であってもよい。硬貨塊を崩すためには、ベルトの上下変位が緩やかであるよりも、衝撃的である方が望ましいので、偏心ローラの形状も、大きな加速度を発生する形状が望ましい。
3)変位部材としてローラを示したが、これに限らない。従動プーリに対して、回転に応じて変位を与える形状であれば良いからである。従って、ローラではなく、従動プーリの周囲に一定角度で突起物を取り付けたような構成であってもよい。
4)ガイド溝の形状は、円弧形状ではなく直線形状で代用してもよい。例えば、上下変位のストロークが短く、ベルトのテンション変化が許容できれば、直線形状であってもよい。
5)ベルトは、水平状態から下流側に下がる方向で上下動(上下変位)させる例を説明したが、これに限定されるものではない。水平状態を中心にして上下動させるよう構成してもよいし、場合によっては、水平状態から下流側に上がる方向で上下動させるようにしてもよい。具体的な角度は、ベルト長や硬貨塊の状態に応じて選択すればよい。
6)上下変位を発生させる従動プーリは、ベルトの終端のプーリでなくてもよい。ベルトの途中に設けられた従動プーリ(アイドラプーリ)に変位部材を設けて、その位置の近傍でベルトを上下に変位させるようにしてもよい。また、複数の従動プーリ、例えば、ベルトの中間位置にある従動プーリとベルトの終端にある従動プーリの両方で、上下変位を発生させるようにしてもよい。ベルト長が長い場合に、有効である。この場合に、複数の従動プーリの上下の位相関係を最適に調整することで、硬貨塊をより効果的に崩すことができる。
7)軸受けBの小径円筒部の形状を円形で示したが(
図3、
図4)、例えば、長円形状にしてもよい。長円がガイド溝の円弧方向に沿うように嵌合させておけば、軸受けBはガイド溝で上下移動のみ可能で回転しないようにガイドされる。これにより、従動プーリの移動をより滑らかになる。軸受けBをガイド溝内で回転させないようにするには、軸受けのガイド溝に嵌合する部分で、変位方向に沿った長さが変位方向に直交する方向の長さより長くなっていればよい。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではく、実施段階でのその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素を適宜組合わせても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組合わせてもよい。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。