(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
シートバック(2)と、このシートバック(2)に軸支されて、シートバック(2)のクッションパッド(11)を貫通して形成される収容凹部(4)に収容される格納位置(A)及び、シートバック(2)の前方へ突出する突出位置(B)間を回動し得る付属部材(7)と、前記収容凹部(4)の後方開口面を閉鎖するインナボード(26)とを備え、そのインナボード(26)の下端部が上方への移動を抑制された状態でシートバック(2)に支持される、乗り物用シート装置において、
前記インナボード(26)の上端部に、前方へ屈曲する係止爪(28)を設け、この係止爪(28)と係合して該係止爪(28)の前方及び下方への移動をいずれも抑制するストッパ部材(30)をシートバック(2)のフレーム(10)に設けたことを特徴とする、乗り物用シート装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される乗り物用シート装置では、収容凹部の後方開口面を閉鎖するインナボードを支持するために、シートバックの後部に収容凹部を横切るクロスメンバを設け、このクロスメンバの前面でインナボードの中間部を支持している。このようなインナボードの支持構造では、例えばシートバックの後部に搭載される荷物が車両の急制動により前方へ勢いよく移動してきた場合、上記クロスメンバがその荷物を受け止めて、インナボードの前方移動を抑制することができ
る。
【0005】
本発明は
、上記乗り物用シート装置を改良したものであって、後方からの荷重の作用によるインナボードの前方への過度の移動及び変形を簡単に規制することができるようにした前記乗り物用シート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、シートバックと、このシートバックに軸支されて、シートバックのクッションパッドを貫通して形成される収容凹部に収容される格納位置及び、シートバックの前方へ突出する突出位置間を回動し得る付属部材と、前記収容凹部の後方開口面を閉鎖するインナボードとを備え
、そのインナボードの下端部が上方への移動を抑制された状態でシートバックに支持される、乗り物用シート装置において、前記インナボードの上端部に、前方へ屈曲する係止爪を設け、この係止爪と係合して該係止爪の前方及び下方への移動を
いずれも抑制するストッパ部材をシートバックのフレームに設けたことを第1の特徴とする。尚、前記付属部材は、後述する本発明の実施形態中のアームレスト7に対応する。
【0007】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記インナボードの上端部をシートバックのクッションパッドの後面に支承させると共に、該インナボードが前記クッションパッドの弾性反発力を受けて当接するバックパネルを前記フレームに固着し、前記ストッパ部材を、通常時、前記係止爪に所定距離を存して対向するように配置し、前記インナボードが後方からの荷重の作用で前方へ押動されたとき、前記係止爪が前記クッションパッドを変形させた後、前記ストッパ部材に係合するようにしたことを第2の特徴とする。
【0008】
さらに本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記係止爪を前記インナボードに一体成形したことを第3の特徴とする。
【0009】
さらにまた本発明は、第3の特徴に加えて、前記インナボード及び前記係止爪間に、それらを連結する補強リブを形成したことを第4の特徴とする。
【0010】
さらにまた本発明は、第4の特徴に加えて、前記インナボードを、バックパネルに当接する平板部と、シートバックのフレームの上部に固設されるヘッドレスト用の支持筒を回避するように前記平板部の上端から前方へ屈曲する傾斜部と、この傾斜部の上端から起立する起立部とで構成すると共に、前記起立部の上端に前記係止爪を一体に形成し、前記係止爪、起立部及び平板部の三部分を前記補強リブにより連続的に連結したことを第5の特徴とする。
【0011】
さらにまた本発明は、第5の特徴に加えて、前記補強リブを、これが前記傾斜部及び起立部間の谷部を横切るように複数条直線的に形成し、これら補強リブを左右一対の前記支持筒間に配置したことを第6の特徴とする。
【0012】
さらにまた本発明は、第1又は第3の特徴に加えて、前記ストッパ部材を断面円形に形成する一方、このストッパ部材の外周面に当接係合する前記係止爪の内側面を円弧面に形成したことを第7の特徴とする。
【0013】
さらにまた本発明は、第1〜第7の特徴の何れかに加えて、前記係止爪を、前記ストッパ部材にその半周にわたり係合し得るように形成したことを第8の特徴とする。
【0014】
さらにまた本発明は、第1〜第8の特徴の何れかに加えて、前記クッションパッドの表面を被覆する表皮が、前記係止爪を覆う袋状部を有しており、前記インナボードが後方からの荷重の作用で前方へ押動されたときに前記係止爪が前記袋状部を介して前記ストッパ部材に係合するようにしたことを第9の特徴とする。
【0015】
さらにまた本発明は、第1〜第9の特徴の何れかに加えて、前記ストッパ部材は、これが前記収容凹部の後方開口部上縁に沿うようにして前記シートバックに内蔵されることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴によれば、インナボードの上端部に、前方へ屈曲する係止爪を設け、この係止爪と係合して該係止爪の前方及び下方への移動を
いずれも抑制するストッパ部材をシートバックのフレームに設けたので、インナボードが後方からの荷重により前方へ撓むことがあっても、係止爪がストッパ部材に当接係合することで、インナボードの上端部の前方及び下方への移動が
いずれも規制され、これによりインナボードの前方への過度の移動及び撓みを抑えることができ、インナボードの耐久性を確保することができ
る。
【0017】
本発明の第2の特徴によれば、インナボードの上端部をクッションパッドの後面に支承させると共に、インナボードがクッションパッドの弾性反発力を受けて当接するバックパネルをシートバックのフレームに固着し、ストッパ部材を、通常時、係止爪に所定距離を存して対向するように配置し、インナボードが後方からの荷重の作用で前方へ押動されたとき、係止爪がクッションパッドを変形させた後、ストッパ部材に係合するようにしたので、シートバックが本来備えるクッションパッド及びバックパネルを利用して、インナボードを支持することができ、乗り物用シート装置の構造の一層の簡素化を図ることができる。しかもインナボードが後方からの荷重の作用で前方へ押動されたときから、係止爪がストッパ部材に係合するまでの間に、係止爪がクッションパッドを変形させることになり、その変形により係止爪のストッパ部材との係合衝撃を緩和し、係止爪の耐久性の向上を図ることができる。
【0018】
本発明の第3の特徴によれば、係止爪をインナボードに一体成形したので、係止爪による部品点数の増加もなく、構造の簡素化、コストの低減に一層寄与し得る。
【0019】
本発明の第4の特徴によれば、インナボード及び係止爪間に、それらを連結する補強リブを形成したので、インナボード及び係止爪間の撓みを効果的に抑制することができる。
【0020】
本発明の第5の特徴によれば、インナボードを、バックパネルに当接する平板部と、シートバックのフレームの上部に固設されるヘッドレスト用の支持筒を回避するように平板部の上端から前方へ屈曲する傾斜部と、この傾斜部の上端から起立する起立部とで構成したので、インナボードとヘッドレスト用の支持筒との干渉を回避することができる。しかも起立部の上端に前記係止爪を一体に形成し、前記係止爪、起立部及び平板部の三部分を前記補強リブにより連続的に連結したので、前記係止爪、起立部及び平板部の三部分の撓みを効果的に抑制すると共に、係止爪の剛性の強化を図ることができる。
【0021】
本発明の第6の特徴によれば、補強リブを、これが前記傾斜部及び起立部間の谷部を横切るように複数条直線的に形成し、これら補強リブを左右一対の前記支持筒間に配置したので、高さが高い補強リブが前記支持筒に干渉するのを回避しながら、係止爪及びその根元周辺部の剛性を効果的に強化することができる。
【0022】
本発明の第7の特徴によれば、ストッパ部材を断面円形に形成する一方、このストッパ部材の外周面に当接係合する係止爪の内側面を円弧面に形成したので、係止爪及びストッパ部材の係合面積を充分確保して、係合圧力の上昇を抑え、係止爪の耐久性を確保し得る。
【0023】
本発明の第8の特徴によれば、係止爪を、前記ストッパ部材にその半周にわたり係合し得るように形成したので、係止爪のストッパ部材との係合時、インナボードが前方へ大きく撓んでも、係止爪のストッパ部材からの離脱を抑制し、インナボードの過度の移動及び変形を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下の説明中、前後、左右とは、本発明を適用する乗り物としての自動車を基準にしていうことにする。
【0026】
図1において、シートSは、図示例では、自動車の床に設置される乗員三人用のリヤシートであって、シートクッション1と、その後端部から上方に起立したシートバック2とよりなっており、シートバック2の上部には、乗員三人用の三個のヘッドレスト3a,3b,3cが左右方向に並んで装備される。またシートバック2の中央部には収容凹部4が設けられ、この収容凹部4内の下部に配設される左右一対のブラケット5,5(
図2及び
図4参照)に枢軸6を介して支持されるアームレスト7が、収容凹部4に収まる格納位置A(
図3参照)と、前方へ突出してシートクッション1上に載置される突出位置Bとの間を回動し得るようになっている。このアームレスト7には、その突出位置Bでの上面にカップホルダ8が設けられている。
【0027】
図1〜
図3、
図5及び
図6において、シートバック2は、フレーム10と、このフレーム10に支持されるクッションパッド11とよりなっており、クッションパッド11の表面は皮革又は合成皮革製の表皮12で被覆される。前記収容凹部4は、クッションパッド11の中央部を貫通しており、この収容凹部4の上方及び下方には、クッションパッド11の上側パッド部11a及び下側パッド部11bが残存する。
【0028】
前記フレーム10は、シートバック2の背面の輪郭に沿うよう、略長方形に形成される主枠13と、前記収容凹部4の左右両側で主枠13の上辺部13a及び下辺部13b間を連結する左右一対のクロスパイプ14,14とで構成され、前記ブラケット5,5は、主枠13の下辺部13bに溶接等により固着され、またこのフレーム10の背面に薄肉鋼板製のバックパネル15が溶接等により固着される。
【0029】
また上辺部13aには、前記三個のヘッドレスト3a,3b,3cの各左右一対のピラー16,16を支持する左右一対の支持筒17,17が三組、溶接等により固着される。
【0030】
図3〜
図11において、前記収容凹部4には、その奥壁を構成するインナボード26が次のように取り付けられる。
【0031】
図5及び
図6に示すように、前記バックパネル15の、前記収容凹部4の下方に対応する部分に後方からの切り起こしにより、前方上向きに突出した複数の支持片25,25が形成され、これら支持片25,25とバックパネル15との間に、収容凹部4の左右全幅の範囲に収まる長さのボード支持部材20が挟持される。
【0032】
ボード支持部材20は、合成樹脂製であって、底壁部20aと、この底壁部20aの前後両側縁から起立する前壁部20b及び後壁部20cとで構成され、これら底壁部20a、前壁部20b及び後壁部20cにより上面を開放したU字状の保持溝21が画成される。後壁部20cの上端部には、保持溝21側へ屈曲するようにして突出する係止突起22が左右方向に延びるリブ状に一体成形される。
【0033】
前壁部20b及び後壁部20cは、前記支持片25,25よりも高く上方へ延び、また前壁部20bは、後壁部20cよりも高く上方へ延びている。バックパネル15には、支持片25,25の切り起こしの際に形成される複数の開口部23,23が残る。
【0034】
上記保持溝21には、シートバック2の前方から収容凹部4を通してインナボード26の下端部が上方から嵌合される。その際、インナボード26の後面には、その左右方向全幅にわたり延びる係止溝24が形成されており、その係止溝24に前記係止突起22が係合するようになっている。即ち、インナボード26の下端部を保持溝21に挿入すると、前壁部20b及び後壁部20c間が一旦弾性的に開いてインナボード26の下端部を受け入れ、係止溝24が係止突起22の位置に来ると、前壁部20b及び後壁部20c間がそれらの原形復帰力により狭まって係止突起22が係止溝24に係合することになる。これらの係合により、インナボード26の係止溝24からの上方への抜け出しが抑制されるようになっている。
【0035】
下側パッド部11bの上面を覆う表皮12の後端部は、前記ボード支持部材20の前壁部20bに縫着される。
【0036】
図7に示すように、主枠13の上辺部13aに支持される上側パッド部11aでは、その前面を覆う表皮12の下端部が収容凹部4の裏側へ延びて袋状部12aを形成しており、保持溝21に下端部を嵌合させたインナボード26の上端部に上記袋状部12aを被せた後、インナボード26の中間部を前方へ大きく撓ませながらその上端部を収容凹部4の裏側へ移してから、インナボード26を、それ自体の弾性復元力により原形に復帰させる。すると、インナボード26の上端部が前記袋状部12aと共にクッションパッド11の上側パッド部11aの下部後面に弾性的に支承されると共に、その上側パッド部11aの反力によりインナボード26はバックパネル15に当接するように押圧される。その際、
図9に示すように、バックパネル15の前面には、比較的浅い位置決め凹部27が形成されており、この位置決め凹部27にインナボード26が係合することにより、インナボード26の左右方向の動きが規制される。こうして、インナボード26は収容凹部4の奥壁となる。
【0037】
クッションパッド11の全上面を覆う表皮12の後端部は、バックパネル15の裏側へ回されて、バックパネル15の上部の後面に取り付けられる上部表皮支持部材34に縫着される。
【0038】
図7〜
図11に示すように、インナボード26は、前記保持溝21(
図6)に嵌合しながらバックパネル15に当接する平板部26aと、この平板部26aの上端から、中央位置の前記ヘッドレスト3bを支持する左右一対の支持筒17,17を避けるように、前方上向きに屈曲する傾斜部26bと、この傾斜部26bの上端から上方へ起立する起立部26cとよりなっており、その起立部26cの上端には、前方へ円弧状に屈曲する係止爪28が一体に形成される。上記起立部26c及び係止爪28が上側パッド部11aの下部後面に支承される。
【0039】
前記フレーム10における左右のクロスパイプ14,14間には、上側パッド部11aの下面を覆う表皮12に接
するように前記収容凹部4の後方開口部上縁に沿って延びていて前記係止爪28の下面に対向するストッパ部材30の両端が溶接等により固着されており、インナボード26が後方からの荷重により収容凹部4側へ押圧され、撓み変形したとき、係止爪28が表皮12の袋状部12aを介してストッパ部材30に係合すること(
図8参照)で、インナボード26の上端部の前方及び下方移動が
いずれも抑制されるようになっている。ストッパ部材30は、断面円形の鋼線よりなっており、一方、これに係合し得る前記係止爪28の内面は円弧面になっていて、ストッパ部材30と係止爪28との係合面積を広く確保するようになっている。
【0040】
またインナボード26の後面には、傾斜部26b及び係止爪28間の剛性を強化すべく、傾斜部26b及び係止爪28間を一体に連結する複数条の補強リブ31,31…が形成される。これら補強リブ31,31…は、傾斜部26b及び係止爪28間の剛性を効果的に強化すべく、傾斜部26b及び起立部26c間の谷部32を埋めるよう側面視で三角形状に形成される。その際、これら補強リブ31,31…は、中央位置のヘッドレスト3bを支持する左右一対の支持筒17,17との干渉を避けて、それら支持筒17,17間に配置される。
【0041】
さらにインナボード26の後面には、その全体に適度な剛性を付与すべく、前記補強リブ31,31…より低い複数条のリブ33,33…がその上下方向の略全長にわたり一体に形成される。
【0042】
下側パッド部11bの上面を覆う表皮12の後端部は、前記ボード支持部材20の前壁部20bに縫着される(
図5参照)。またクッションパッド11の全下面を覆う表皮12は、バックパネル15の下部の後面に固着される下部表皮支持部材35に縫着される。また前記上部及び下部表皮支持部材34,35には、バックパネル15の後面を覆うカバーシート36の上下両端部が縫着される(
図3、
図5、
図7参照)。
【0043】
次に、この実施形態の作用について説明する。
【0044】
アームレスト7を使用すべく、これをシートバック2の収容凹部4から前方への突出位置Bへと引き出すと、車室側から収容凹部4の内部が見えるようになるが、収容凹部4の後方開口面はインナボード26により閉鎖されているので、収容凹部4に小物を落としても、インナボード26によって小物がシートバック2の裏側へ侵入するのを防ぐことができると共に、外観を良好にすることができる。
【0045】
また自動車の急制動時など、リヤシートS後方の荷物室の荷物が慣性力により勢いよく前方へ移動して、薄肉鋼板のバックパネル15に衝突し、その衝撃荷重がバックパネル15を前方へ変形させながら、インナボード26を前方へ押圧した場合には、インナボード26は、その下端部の係止溝24とボード支持部材20の係止突起22との係合により上方移動が抑制されているため、ボード支持部材20を支点として前方へ回動し、インナボード26の上端部の係止爪28が、表皮12の袋状部12aと共に、上側パッド部11aを変形させながらストッパ部材30に係合する(
図8参照)ことで、前方及び下方への移動が
いずれも抑制される。これによりインナボード26の前方への過度の回動及び撓みを抑えることができ、インナボード26の耐久性を確保することができ
る。その際、係止爪28がストッパ部材30に係合するまでの間に、係止爪28がクッションパッド11を変形させることにより、係止爪28のストッパ部材30との係合衝撃が緩和され、係止爪28の耐久性の向上を図ることができる。
【0046】
またインナボード26の上端部をクッションパッド11の後面に支承させると共に、インナボード26がクッションパッド11の弾性反発力を受けて当接するバックパネル15をシートバック2のフレーム10に固着したので、シートバック2が本来備えるクッションパッド及びバックパネルを利用して、インナボード26を支持することができ、乗り物用シート装置の構造の一層の簡素化を図ることができる。
【0047】
さらに係止爪28は、インナボード26に一体成形されるので、係止爪28による部品点数の増加もなく、構造の簡素化及びコストの低減に一層寄与し得る。
【0048】
さらにまたインナボード26及び係止爪28間に、それらを連結する補強リブ31,31…を形成したので、インナボード26及び係止爪28間の撓みを効果的に抑制することができる。
【0049】
さらにまたインナボード26は、バックパネル15に当接する平板部26aと、シートバック2のフレーム10の上部に固設されるヘッドレスト3b用の支持筒17,17を回避するように平板部26aの上端から前方へ屈曲する傾斜部26bと、この傾斜部26bの上端から起立する起立部26cとで構成され、起立部26cの上端に係止爪28を一体に形成し、係止爪28、起立部26c及び平板部26aの三部分を前記補強リブ31,31…により連続的に連結したので、係止爪28、起立部26c及び平板部26aの三部分の撓みを効果的に抑制すると共に、係止爪の剛性の強化を図ることができ、これにより係止爪28のストッパ部材30との係合を良好にすることができる。
【0050】
さらにまた前記補強リブ31,31…は、前記傾斜部26b及び起立部26c間の谷部32を横切るように複数条直線的に形成され、これら補強リブ31,31…を左右一対の前記支持筒17,17間に配置したので、高さが高い補強リブ31,31…がヘッドレスト3b用の支持筒17,17に干渉するのを回避しながら、係止爪28及びその根元周辺部の剛性を効果的に強化することができる。
【0051】
さらにまた前記ストッパ部材30を断面円形に形成する一方、このストッパ部材30の外周面に当接係合する前記係止爪28の内側面を円弧面に形成して、係止爪28及びストッパ部材30の係合面積を極力広くしたので、係止爪28及びストッパ部材30の係合圧力の上昇を抑え、係止爪28の耐久性を確保し得る。
【0052】
またインナボード26の上方移動を抑制するために、ボード支持部材20の保持溝21と、それに嵌合したインナボード26の下端部との相対向する側面の一方と他方とに、相互に係合してインナボード26の上方移動を抑制する係止突起22と係止溝24とをそれぞれ形成したので、インナボード26の下端部を保持溝21に嵌合するだけで、係止突起22及び係止溝24の係合が得られ、インナボード26の上方移動を簡単に抑制することができ、したがって、インナボード26の保持溝21からの離脱を抑制するための特別な固着部材が不要となり、乗り物用シート装置の構造の簡素化と組立性が向上し、コストの低減に寄与し得る。
【0053】
また係止溝24をインナボード26の側面に、その左右方向全幅にわたり形成し、係止突起22を保持溝21の内側面に形成したので、インナボード26の左右方向に沿うどの位置においても係止溝24に係止突起22を係合させることができ、組立性を良好にすることができる。
【0054】
さらに係止突起22をリブ状にボード支持部材20に一体成形したので、係止突起22による部品点数の増加を回避するのみならず、係止突起が補強リブとなってボード支持部材20の剛性を強化し、係止溝24との係合力を高めることができる。
【0055】
さらにまたボード支持部材20を、底壁部20aと、この底壁部20aの前後両側縁から起立して相互間に保持溝21を画成する前壁部20b及び後壁部20cとで構成し、その前壁部20b及び後壁部20cの一方の上端部から保持溝21側へ屈曲するようにして係止突起22を形成し、ボード支持部材20及び係止突起22を一体成形したので、係止突起22付きのボード支持部材20が一部品を構成して、乗り物用シート装置の構造の簡素化に寄与することができる。しかも底壁部20a、前壁部20b及び後壁部20cよりなる一体のボード支持部材20は、剛性の高いチャンネル断面構造をなし、インナボード26を強固に支持することができる。
【0056】
さらにまたボード支持部材20において、係止突起22を後壁部20cに形成し、前壁部20bを後壁部20cより高く延びるように形成したので、インナボード26の中間部が後方からの荷重の作用で前方へ撓むと、ボード支持部材20において、インナボード26は、背丈の高い前壁部20bの上端を支点として前方へ傾き、それに応じてインナボード26後面の係止溝24が背丈の低い後壁部20c上端部の係止突起22に一層強く係合することになり、インナボード26の上方への離脱を効果的に抑制することができる。
【0057】
さらにまたフレーム10に固着されてシートバック2の後面を覆うバックパネル15に、後方からの切り起こし成形により前方上向きに突出した支持片25,25を設け、これら支持片25,25とバックパネル15との間でボード支持部材20を挟持したので、特別な支持部材を使用することなく、インナボード26をフレーム10に取り付けることができ、乗り物用シート装置の構造の簡素化に一層寄与することができ、しかもバックパネル15には、支持片25,25の切り起こし跡の開口部23,23を通して、支持片25,25及びバックパネル15によるボード支持部材20の挟持状態を目視確認し得るようにしたので、バックパネル15に専用の覗き窓を設けることなく、インナボード26の支持状態を目視確認することができ、組立不良を防ぐことができる。
【0058】
次に、
図12に示す本発明の別の実施形態について説明する。
【0059】
この別の実施形態では、インナボード26の上端部に形成される係止爪28には、U字状の折り返し部28aが設けられ、この係止爪28がストッパ部材30にその半周にわたり係合し得るようになっている。その他の構成は、前実施形態と同様であるので、
図12中、前実施形態に対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0060】
その別の実施形態によれば、係止爪28のストッパ部材30との係合時、係止爪28がストッパ部材30にその半周にわたり係合することで、インナボード26が前方へ大きく撓んでも、係止爪28のストッパ部材30からの離脱を抑制し、インナボード26の過度の移動及び変形を抑制することができる。
【0061】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、前記アームレスト7に代えて、カップホルダ8を備えるサイドテーブルを収容凹部4に収容することもできる。また本発明のシート装置は、自動車用に限らず、鉄道車両、航空機等にも適用可能である。