特許第5661707号(P5661707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5661707
(24)【登録日】2014年12月12日
(45)【発行日】2015年1月28日
(54)【発明の名称】化合物半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3205 20060101AFI20150108BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 27/095 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20150108BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20150108BHJP
【FI】
   H01L21/88 M
   H01L29/80 E
   H01L29/80 H
   H01L27/06 102A
   H01L27/08 102D
   H01L27/04 A
【請求項の数】16
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-204394(P2012-204394)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-60265(P2014-60265A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2012年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】512098588
【氏名又は名称】ウィン セミコンダクターズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(72)【発明者】
【氏名】高谷 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】シャオ シェン・フー
(72)【発明者】
【氏名】ウー ユー・カイ
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−033837(JP,A)
【文献】 特開2010−073904(JP,A)
【文献】 特開2009−071045(JP,A)
【文献】 特開2009−273090(JP,A)
【文献】 特開2010−232400(JP,A)
【文献】 特開2010−161215(JP,A)
【文献】 特開2010−251662(JP,A)
【文献】 特開2011−100989(JP,A)
【文献】 特開2012−039073(JP,A)
【文献】 特開2003−045965(JP,A)
【文献】 特表2007−521659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/338
H01L 21/768
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 23/532
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 27/095
H01L 29/778
H01L 29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される少なくとも1つの化合物半導体電子デバイスと、
前記化合物半導体電子デバイス上に形成され、少なくとも部分的に当該化合物半導体電子デバイスに電気的に接続された、Auを含む第1金属層と、
SiNからなり、前記化合物半導体電子デバイス及び前記第1金属層の少なくとも一部を覆う保護層と、
各層が少なくともCu層を含む複数の第2金属層であって、前記保護層上に形成され、少なくとも1層が部分的に前記第1金属層に電気的に接続された複数の第2金属層と、
PBO(ポリベンゾオキサゾール)からなり、隣接する第2金属層を分離する少なくとも1つの誘電層からなり、
前記各層が少なくともCu層を含む金属層の全ては、前記保護層上に形成される化合物半導体集積回路。
【請求項2】
前記基板はGaAs,SiC又はサファイアからなる請求項1記載の化合物半導体集積回路。
【請求項3】
前記化合物半導体電子デバイスはFET又はHBTである請求項1記載の化合物半導体集積回路。
【請求項4】
前記化合物半導体電子デバイスはGaN FETである請求項1記載の化合物半導体集積回路。
【請求項5】
Cuの厚さが3μm以上である請求項1記載の化合物半導体集積回路。
【請求項6】
前記複数の第2金属層は少なくとも1つのグラウンドを形成する請求項1記載の化合物半導体集積回路。
【請求項7】
前記誘電層の厚さが10μmから30μmの範囲である請求項記載の化合物半導体集積回路。
【請求項8】
前記第2金属層はマイクロストリップライン,カプラ又はインダクタを形成する請求項1記載の化合物半導体集積回路。
【請求項9】
さらに裏面金属層を有し、前記基板はさらに少なくとも1つの基板貫通ビアホールを有する請求項1記載の化合物半導体集積回路であって、
前記基板貫通ビアホールは前記基板を貫通しており、
前記裏面金属層は、前記基板貫通ビアホールの内側表面と、前記基板の裏側の少なくとも一部とを覆う化合物半導体集積回路。
【請求項10】
前記裏面金属層は、少なくとも部分的にCuからなる請求項記載の化合物半導体集積回路。
【請求項11】
前記基板はGaAs,SiC又はサファイアからなる請求項記載の化合物半導体集積回路。
【請求項12】
前記化合物半導体電子デバイスはFET又はHBTである請求項記載の化合物半導体集積回路。
【請求項13】
前記化合物半導体電子デバイスはGaN FETである請求項記載の化合物半導体集積回路。
【請求項14】
Cuの厚さが3μm以上である請求項記載の化合物半導体集積回路。
【請求項15】
前記誘電層の厚さが10μmから30μmの範囲である請求項記載の化合物半導体集積回路。
【請求項16】
前記第2金属層はマイクロストリップライン,カプラ又はインダクタを形成する請求項記載の化合物半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物半導体集積回路に関し、特に、それぞれ少なくともCu層からなる多数の金属層を備えた化合物半導体集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動体通信及びセンサデバイスに化合物半導体モノリシックマイクロ波集積回路(MMIC)が幅広く応用されており、これにより、高集積且つ高性能なMMICの需要が高まっている。従来、MMICにおける電子部品、例えば、トランジスタ,キャパシタ,抵抗器,インダクタ及び伝送線路などは、二次元的に配設されている。デバイスの高集積化のために、3次元的に受動部品を化合物半導体デバイス上に配置した3DMMICが開発されている。化合物半導体MMICでは、クロスコンタミネーションの防止のために、一般に受動部品や相互配線にはAuを用いる。しかしながら、Auの高コストにより受動部品の厚さが制限される。例えば、伝送線路については、3DMMICで用いられるAu伝送線路は従来のMMICで用いられるものよりも幅が小さく、これにより、抵抗が大きくなり、信号損失や過剰雑音を引き起こすことがある。電力増幅器における電力利得や低雑音増幅器における雑音指数などの回路性能は、伝送線路の抵抗の増加により低下する。回路性能を改善するには、Au層の厚さを大きくしなければならないが、そうすると全体の製造コストが著しく増大する。したがって、Au金属層を用いた回路性能はAuの価格により制限される。Cuの価格は、Auに比べて非常に安価であり、Cuの電気伝導率及び熱伝導率も非常に良好である。したがって、AuをCuに置き換えた3DMMIC構造を発展させることが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主な目的は、各層が少なくとも1つのCu層からなる多数の金属層からなる化合物半導体集積回路の提供である。前記多数の金属層は、他のデバイス上に3次元的に形成される受動電子部品の形成に用いることができる。化合物半導体集積回路にCuを用いることにより、伝導率を向上させ材料費を減少させることができる。さらに、Cuは低コストであるため、金属層の抵抗をかなり減少させるより厚い金属層の製造が実現可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述した目的を達成するための本発明は、基板と、少なくとも1つの化合物半導体電子デバイスと、第1金属層と、保護層と、複数の第2金属層と、少なくとも1つの誘電層からなる化合物半導体集積回路を提供する。前記第1金属層は、Auを含み、かつCuは含まず、少なくとも部分的に前記化合物半導体電子デバイスと電気的に接続されている。前記保護層は、前記化合物半導体電子デバイスと、前記第1金属層の少なくとも一部とを覆っている。前記複数の第2金属層の各層は、少なくともCu層を含み、また、前記第2金属層の少なくとも一部は前記第1金属層に電気的に接続されている。隣接する第2金属層の各組は誘電層により分離されている。
【0005】
本発明の他の目的は、各層が少なくとも1つのCu層からなる多数の金属層と、基板貫通ビアホールによる前記電子デバイスの接地接続に用いられる裏面金属層からなる化合物半導体集積回路の提供である。このように、デバイスの近傍でこの接地接続を行うことができ、これにより電子デバイスの電力利得が向上する。
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明により提供される化合物半導体集積回路はさらに裏面金属層を有し、前記基板はさらに少なくとも1つの基板貫通ビアホールを有し、前記基板貫通ビアホールは前記基板を貫通しており、前記裏面金属層は前記基板貫通ビアホールの内側表面と、前記基板の裏面の少なくとも一部とを覆っている。
【0007】
実施において、上述した基板はGaAs,SiC又はサファイアからなる。
【0008】
実施において、上述した化合物半導体電子デバイスはFET又はHBTである。
【0009】
実施において、上述した化合物半導体電子デバイスはGaN FETである。
【0010】
実施において、上述したCu層の厚さは3μm以上である。
【0011】
実施において、上述した複数の第2金属層は少なくとも1つのグラウンドを形成する。
【0012】
実施において、上述した誘電層はPBO(ポリベンゾオキサゾール)誘電性材料からなる。
【0013】
実施において、上述したPBOからなる誘電層の厚さは10μm以上30μm以下である。
【0014】
実施において、上述した保護層はSiNからなる。
【0015】
実施において、上述した第2金属層は、マイクロストリップライン、カプラ又はインダクタを形成する。
【0016】
実施において、上述した裏面金属層は少なくとも部分的にCuからなる。
【0017】
本発明は、以下の図面及び好ましい実施形態の詳細な説明を参照することにより、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の断面図を示す概略図である。
図2】本発明の他の実施形態の断面図を示す概略図である。
図3】本発明により提供される低雑音増幅器の回路図である。
図4A図3に示す低雑音増幅器のレイアウトの上面図を示す概略図である。
図4B図3に示す低雑音増幅器のレイアウトの上面図を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、基板101と、少なくとも1つの化合物半導体電子デバイス110と、第1金属層120と、保護層130と、複数の第2金属層140と、少なくとも1つの誘電層150とからなる、本発明にかかる化合物半導体集積回路の一実施形態の断面図を示す概略図である。前記基板101は、GaAs,SiC又はサファイアなどの半絶縁性又は絶縁性の材料からなる。前記化合物半導体電子デバイス110は、前記基板101上に形成される。前記化合物半導体電子デバイス110は、主にGaAsからなるFET又はHBTとすることができる。また、前記化合物半導体電子デバイス110は、GaN FETであってもよい。前記第1金属層120は、前記化合物半導体電子デバイス110上に形成され、少なくとも部分的に当該化合物半導体電子デバイス110に電気的に接続される。前記第1金属層120は、前記化合物半導体電子デバイス110の電極121,キャパシタ122又は抵抗器などの受動電子部品の形成に用いることができる。前記第1金属層120はAuを含み、当該第1金属層120と前記化合物半導体電子デバイス110との接触領域は、Au、或いはその下にTiなどの薄い接着性金属を備えたAuからなる。CuはGaAs等の化合物半導体中に容易に拡散し、キャリアトラップ準位を形成するため、Cuを含む金属層を直接化合物半導体電子デバイスに接触させるとデバイスの特性劣化を引き起こす。しかし電気的接続を主としてAuからなりCuを含まない金属層を介して形成することにより、Cuによる前記化合物半導体電子デバイスのコンタミネーションを防止することができる。前記保護層130は、前記化合物半導体電子デバイス110と、前記第1金属層120の少なくとも一部とを覆っており、当該電子デバイス110をその上の他の材料からなる層、特にCuを含む層である前記複数の第2金属層140から切り離している。前記保護層130はSiNからなることが好ましい。前記複数の第2金属層140のうちの少なくとも1層は、少なくとも部分的に前記第1金属層120と電気的に接続されており、第2金属層140におけるCu層の厚さは、3μm以上とすることができる。前記第2金属層140は、少なくとも1つのグラウンド141及び他の受動電子部品、例えば、マイクロストリップライン142,カプラ143又はインダクタ144などの形成に用いることができる。隣接する2つの第2金属層140は誘電層150により分離される。前記誘電層150の厚さは、デバイス性能に対する容量結合又は誘導結合の影響が軽減されるように、前記電子デバイス110,122及び123と前記金属層とを十分に隔離できる程度の厚さでなければならない。PBO(ポリベンゾオキサゾール)誘電性材料の被膜厚さはキュアリング後においても大きい厚さにすることができる。加えて、PBOの耐湿性及び層応力抵抗は、ポリイミドやBCBなどの典型的な誘電性材料よりも優れている。前記誘電層150は、PBO(ポリベンゾオキサゾール)誘電性材料からなることが好ましく、2つの第2金属層140間の好ましい間は10〜30μmの範囲である。
【0020】
図2は、図1に示す構造に、さらに裏面金属層160と少なくとも1つの基板貫通ビアホール161を供えた、本発明にかかる化合物半導体集積回路の他の実施形態の断面図を示す概略図である。前記基板貫通ビアホール161は前記基板101を貫通している。前記裏面金属層160は、前記基板貫通ビアホール161の内側表面と、前記基板101の裏面の少なくとも一部とを覆っている。前記裏面金属層160は、少なくとも部分的にCuからなることが、電気抵抗低減及び材料費低減の観点から好ましい。この実施形態において、前記裏面金属層160は、前記基板貫通ビアホール161を介して接続される前記電子デバイスの接地接続として用いることができる。
【0021】
図3は、本発明により提供される二段低雑音増幅器の回路図である。この回路は、2つの能動電子デバイス110と、マイクロストリップライン142a乃至142gと、キャパシタ122と、抵抗器123と、RF入力端子と、RF出力端子と、グラウンド141と、接地接続に用いられる裏面金属層160とを有する。前記電子デバイスは、0.15μmゲートpHEMTである。前記マイクロストリップラインは、インピーダンス・雑音整合及び直流バイアスに用いられる。図4A及び4Bは、図3の破線領域及び一点鎖線領域における低雑音増幅器回路のレイアウトの上面図を示す概略図である。図4Aは、前記増幅器の第1段(破線領域)のレイアウトの上面図を示している。マイクロストリップライン142aは、前記pHEMTのゲート電極にバイアスを印加するためのショートスタブである。マイクロストリップライン142b及び142cは雑音整合を得るために用いられる。マイクロストリップライン142dは、pHEMTの出力におけるインピーダンス整合を得るために用いられる。マイクロストリップライン142a,142c及び142dは、前記グラウンド141の上方に形成される。小さい領域にマイクロストリップラインを密集させたレイアウトは、このようにして達成される。図4Bは、前記増幅器の第2段(一点鎖線領域)のレイアウトの上面図を示している。マイクロストリップライン142e及び142fは、それぞれ前記pHEMTの入力時及び出力時のインピーダンス整合を得るために用いられる。マイクロストリップライン142gは、pHEMTのドレインにバイアスを印加するためのショートスタブである。また、これらのマイクロストリップラインは、前記グラウンドの上方に形成され、小さい領域での密集したレイアウトを可能にしている。前記pHEMTは、前記電子デバイスの近傍における前記裏面金属層160上でのソース接地接続の形成を容易にする基板貫通ビアホール161を用いる。本実施形態における前記グラウンド141と前記マイクロストリップラインとの間の距離は、約10μmである。前記グラウンド141と前記マイクロストリップラインのCu層の厚さは約3μmであり、前記マイクロストリップラインの幅は、約15μmである。この場合は、2つの隣接するマイクロストリップライン間の間隔は30μmの小ささにすることができる。金属シート抵抗は、2μmのAu層と比べて、3μmのCu層については2分の1に減少する。Auマイクロストリップラインを用いた従来の設計においては、低雑音増幅器は3.0dBの雑音指数で15dBの利得を有する。本発明により提供される、Cuマイクロストリップラインを用いた低雑音増幅器では、雑音指数の改善が従来の設計と比べて1dBを越える。
【0022】
要約すると、本発明は、確かに、各層が少なくとも1つのCu層からなる多数の金属層からなる化合物半導体集積回路を提供するという前述した目的を達成する。本発明は、以下の利点を有する:
1.本発明により提供される厚いCu層は、従前の技術においてAuを用いて形成された細いマイクロストリップラインの抵抗を低減することができる。高抵抗により引き起こされる過剰損失及び過剰雑音を低減させることができ、またこの他にも、Cuの高い伝導率により集積回路の性能がさらに向上する。
2.Auの使用に比べ、Cuの使用により、金属板製造の製造コストが、著しく、大体50%以上減少する。
3.化合物半導体デバイスとの電気的接続にAuを用いることにより、Cuによるコンタミネーションでその性能が低下するのが防止される。
4.金属層の層間絶縁にPBO誘電性層を用いることにより、厚膜の被膜が可能となり、上部金属層の下部電子デバイスへの影響を抑えると共に耐湿性及び機械的安定性を向上させることができる。
5.電子デバイスの接地接続に基板貫通ビアホールを用いることでデバイスの近傍で接地接続を行うことが可能となり、これにより当該電子デバイスの電力利得を高めることができる。
【0023】
上述の図面を参照した記述は本発明の好ましい実施形態に対するものにすぎない。本発明の関連分野における当業者により多くの同等の局所的な変形や変更が可能であり、これは本発明の趣旨を逸脱しておらず、添付の特許請求の範囲により定義される範囲に含まれるとみなされるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B