【実施例】
【0061】
実施例I−NiColl/MPC IPNヒドロゲル
[NiColl/MPC,バイオポリマー/合成ポリマーの完全IPN]
材料
ニッポンコラーゲン(ブタ皮膚);
0.625Mモルホリノエタンスルホン酸
[バッファー](AalizarinRed S pH指示薬(6.5mg/100ml水)を含有するMES);
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)と、N−ヒドロキシ−スクシンイミド(NHS)と、MPC(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)
[生体適合性合成モノマー]は、Biocompatibles International社(英国)から購入した。
NaOH溶液(2N)と、PEG−ジアクリレート
[架橋剤](Mw=575ダルトン)と、過硫酸アンモニウム(APS)と、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)は、シグマ・アルドリッチ社から購入した。
【0062】
NiColl/MPC IPNヒドロゲルの調製
まず、氷水浴中の、プラスチック製T字管で連結された2つのシリンジにおいて、13.7重量%ニッポンコラーゲン溶液0.3mlおよび0.625M MES0.1mlを混合した。続いて、MPC12.9mg(コラーゲンとMPCの比は4:1(w/w))をMES0.25mlに溶解し、得られた溶液の0.2mlを、100μlマイクロシリンジで上記の混合物中に注入した。次いで、PEG−ジアクリレート4.6μlを、500μlマイクロシリンジを使用して注入し、PEG−ジアクリレートとMPCとの重量比を1:2にした。別段の指定がない限り、PEG−ジアクリレート
[生体適合性合成モノマー]とMPCの比は、1:2で一定である。次いで、その溶液を完全に混合した。次に、2%APSおよびTEMED溶液(MES中)25μlを、100μlマイクロシリンジで注入し
[MPCが重合し、PEG−ジアクリレートの架橋により合成ネットワークが形成される]、続いてEDC/NHS溶液(MES中)57μlを注入し
[連続的なIPN]、EDC:NHS:コラーゲンNH
2のモル比を3:3:1にした
[バイオポリマーが形成される]。この研究では、EDCとコラーゲンの比も一定に維持した。NaOH(2N)を使用して、pHを約5に調整した。均一な混合物をガラス製の型に流し込み、室温にて湿度100%で16時間インキュベートした。後硬化するために、その型を37℃で5時間インキュベータに移した。
同様の方法で、コラーゲンとMPCの比1:1、2:1、3:1を有する「NiColl/MPCIPNヒドロゲル」と示されるIPNを調製した。
[連続的なIPN:コラーゲン→合成モノマーの重合→合成ポリマーの架橋→コラーゲンの架橋]
【0063】
本発明の実施例で使用される、「NiColl/MPC IPN4−3」、「NiColl/MPC IPN3−3」、「NiColl/MPC IPN2−3」および「NiColl/MPC IPN1−3」という用語は、コラーゲン:MPC比4/1、3/1、2/1および1/1をそれぞれ有する、13.7%ニッポンコラーゲンから得たIPNゲルを意味する。
【0064】
特性解析
屈折率(RI)
VEE GEE屈折計を使用して、試料の屈折率を測定した。
光の透過率
特注設計の装置を使用して、白色の波長、450、500、550、600および650nmで試料の光の透過率を測定した。
機械的性質
インストロン電気機械式試験機(3340モデル)を使用して、試料の応力、破断ひずみおよびモジュラスを測定した。試料のサイズは、5mm×5mm×0.5mmであった。
含水率
以下の式によって、試料の含水率を計算した。
(W−W
0)/W%
(式中、W
0およびWはそれぞれ、乾燥試料および膨潤試料の重量を示す)
【0065】
結果
屈折率
表1は、コラーゲンヒドロゲル屈折率値を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
光の透過率
表2は、光の透過率の結果を示す。
【0068】
【表2】
【0069】
機械的性質
表3は、IPN試料の機械的性質を示す。NiColl/MPC IPN4−3によって、360KPaと高い破断応力が実証された。
【表3】
【0070】
平衡含水率
コラーゲンゲルの平衡含水率も測定した(表4)。
【0071】
【表4】
【0072】
生体適合性アッセイ
in vitroでの生体適合性アッセイから、上述のIPNヒドロゲルが、上皮の適切な成長を、対照(培養プレート)よりも大幅に促進することが示された。in vivoの研究によって、IPNを含有するコラーゲン/MCPが神経成長を支持することが実証された。
【0073】
図19は、術後6ヶ月の一般的な移植片の生体内共焦点画像を示しており、未処理角膜の画像(対側の対照角膜の画像)と比較している。(EDC/NHS)架橋組換えヒトコラーゲンおよび医療用のブタコラーゲン−MPC IPNのいずれにおいても、神経が基質および上皮下神経網目へ再成長したこと(矢印)を示す。
これは、IPN(右側のカラム)を、架橋組換えヒトコラーゲン(中央のカラム)、および未処理対照(左側のカラム)と比較している。これらの結果から、合成成分を有するにもかかわらず、IPNは、コラーゲンのみ(つまり、完全に天然のポリマー)と比較して、同程度の神経再生の効果を有することが示された。
【0074】
参考文献
1. Schrader ME and Loeb GL (Eds), Modern approaches to wettabilty: theory and applications, Plenum Press, New York, pp 231-248 (1992).
2. Konno T, Hasuda H, Ishihara K, Ito Y. Photo-immobilization of a phospholipid polymer for surface modification. Biomaterials 2005, 26 :1381-1388.
3. Lewis AL, Crosslinkable coatings from phosphorylcholine-based polymers. Biomaterials 2001, 22: 99-111.
【0075】
実施例II
[NiColl/MPC,バイオポリマー及び合成ポリマーの双方がネットワークを形成しているIPN]
−NiColl/MPC IPNヒドロゲル
本実施例では、コラーゲン溶液濃度を13.7%から20%に上げることによって、EDC/コラーゲンNH
2比を1.5:1にし、実施例Iと同様に製造されたIPNの特性を変化させる能力を実証することを目的に実験を行った。さらに、pH指示薬を含有しないMESを使用した。
【0076】
材料
ニッポンコラーゲン(ブタ皮膚);
0.625Mモルホリノエタンスルホン酸[pH指示薬を含有しないMES];
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC);
N−ヒドロキシ−スクシンイミド(NHS):
MPCは、Biocompatibles International社(英国)から購入した。
NaOH溶液(2N)、PEG−ジアクリレート(Mw=575ダルトン)、過硫酸アンモニウム(APS)、およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)をシグマ・アルドリッチ社から入手した。
【0077】
NiColl/MPC IPNヒドロゲルの調製
まず、氷水浴中の、プラスチック製T字管で連結された2つのシリンジにおいて、20.0重量%ニッポンコラーゲン溶液0.3mlおよびMES(0.625M)0.1mlを混合した。次に、MPC12.9mg(コラーゲンとMPCの比4:1(w/w))をMES0.25mlに溶解した。得られた溶液の0.2mlを、100μlマイクロシリンジで上記の混合物中に注入した。次いで、PEG−ジアクリレート4.6μlを500μlマイクロシリンジで注入し、PEG−ジアクリレートとMPCとの重量比を1:2にした。その溶液を完全に混合した。次に、2%APSおよびTEMED溶液(MES中)25μlを100μlマイクロシリンジで注入し、続いてEDC/NHS溶液(MES中)86μlを注入し、EDC:NHS:コラーゲンNH
2のモル比を1.5:1.5:1にした。均一な混合物をガラス製の型またはプラスチック製の型(厚さ500μm)に流し込み、室温にて湿度100%で16時間インキュベートした。後硬化するために、その型を37℃で5時間インキュベータに移した。
[連続的なIPN:コラーゲン→合成モノマーの重合→合成ポリマーの架橋→コラーゲンの架橋]
【0078】
本明細書で使用される、NiColl20/MPC IPNとは、20%コラーゲン溶液から製造されたIPNを意味する。
【0079】
特性の測定
屈折率(RI)
VEE GEE屈折計を使用して、試料の屈折率を測定した。
光の透過率
特注設計の装置を使用して、白色の波長、450、500、550、600および650nmでヒドロゲル試料の透過率を測定した。
機械的性質
インストロン電気機械式試験機(3340モデル)を使用して、ヒドロゲル試料の引張り強さ、破断点伸びおよび弾性率を測定した。試料のサイズは、5mm×5mm×0.5mmであった。
含水率
以下の式によって、ヒドロゲル(WA)の含水率を計算した。
(W−W
0)/W×100%
(式中、W
0およびWはそれぞれ、乾燥試料および膨潤試料の重量を示す)
【0080】
結果
屈折率
20%溶液から得たIPNヒドロゲルは、透明かつ均一であった(
図1に示すように)。その屈折率は約1.3519であった。
【0081】
光の透過率
表5は、光の透過率の結果を示す。
【0082】
【表5】
【0083】
機械的性質
表6には、ゲルの機械的性質を示す。NiColl20/MPC IPNの引張り強さおよび弾性率は、実施例1で製造されたヒドロゲルと比較して向上した。重要なことには、このゲルは、柔軟であるが硬い(例えば、鉗子を使用して破壊されない)。
【0084】
【表6】
【0085】
平衡含水率
この平衡含水率は88.97%であった。
【0086】
in vitroでの生体適合性アッセイによって、NiColl20/MPC IPNヒドロゲルが、上皮の適切な成長を、対照(培養プレート)より大幅に促進することが示された。
【0087】
実施例III
[コラーゲン/キトサン]
−視力向上眼用デバイスのための新規な生合成素材
この実施例における組織工学素材は、従来から知られている素材と比較して、向上した靱性および弾性を有する、本質的に頑丈な移植素材である。この素材はコラーゲンをベースとするが、キトサンなどのバイオミメティック分子(biomimetic molecule)も組み込まれる。バイオミメティック分子は、ヒト角膜中で発見された天然細胞外マトリックス分子(ECM)に匹敵し、それと同時に引張り強さを著しく向上させる。さらに、コラーゲン/キトサン足場を安定化するため、ハイブリッド架橋システムが開発されて使用され、素材の弾性および靱性がさらに向上した。これらの向上した素材の機械的性質、光学的性質、および生物学的性質を試験した。その結果から、足場は、強靭、弾性であり、かつ光学的透明性においてアイバンクのヒト角膜よりも優れており、in vitroでの角膜細胞および神経の再生を可能にすることが示唆されている。
【0088】
材料および方法
[2種のバイオポリマー;キトサンは多糖(ポリマー)である]
ベース材料は、I型アテロコラーゲン10%(w/v)とキトサン3%(w/v)の混合物を含む。日本ハム株式会社(日本)から入手した凍結乾燥されたブタコラーゲン粉末を冷水(滅菌dd H
2O)に溶解し、4℃で攪拌して、濃度10%(w/v)を得た。0.2N塩酸(HCl)にキトサン粉末(フルカ社から入手、MW40000)を溶解し、4℃で攪拌することによって、3%(w/v)キトサン溶液も調製した。次いで、架橋前に均一なブレンドを調製するために、2つの溶液を所定の比で、シリンジシステム中で混合した。様々な架橋剤(つまり、PEGジアルデヒドおよびEDC/NHS)を使用して、架橋剤およびバイオミメティック成分(biomimetic component)の種類および濃度に基づく特有の性質を有する相互侵入ネットワーク(IPN)を形成した(表7参照)。
[2種のバイオポリマーの同時架橋]
【0089】
コラーゲンベースの角膜移植片(IPN−I)の作製
一般に、ルアーガラス製シリンジにおいて、3%キトサン溶液0.12mLを、10%コラーゲン溶液[モル比0.5:1のキトサン:コラーゲン]0.6mLに添加した。次いで、テフゼル(Tefzel)T字管を使用して、この組成物をMESバッファー0.4mlと混合した。次いで、MESバッファー0.35ml中にて約0〜4℃で気泡捕捉せず、その混合物をEDC/NHS架橋剤[コラーゲン/キトサン中でのEDC:NH
2のモル当量比が3:1であり、EDC:NHSのモル当量比が1:1である]と混合した。T字管を通して第1シリンジと第2シリンジの間で繰り返しポンピング(pumping)することによって、その組成物を完全に混合した。
【0090】
実質的に均一な各溶液のアリコートを直ちに、500ミクロンの移植片型に分配し、湿度100%の環境下において、まず室温で16時間、次いで37℃で16時間かけて硬化させた。リン酸緩衝液(PBS)に2時間浸した後、それぞれの最終移植片試料をその型から慎重に外した。最後に、架橋した移植片ヒドロゲルを20℃のPBS溶液(PBS中0.5%、クロロホルム1%を含有する)に浸漬し、反応性残基(reactive-residue)を停止させ、反応副生成物を抽出除去した。
【0091】
IPN−I(EP10−2):
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて、コラーゲン/キトサンブレンドを架橋した。コラーゲン/キトサンブレンド、およびEDC/NHS架橋剤を酸性pH約5にて共に混合し、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)バッファーを使用してpHの急上昇(surge)を防いだ。十分に混合した後、混合組成物の一部を型に注ぎ、型で硬化させて、ネットワークを形成した。
【0092】
コラーゲンベースの角膜移植片(IPN−II)の作製
[コラーゲン/キトサン]
ルアーガラス製シリンジにおいて、3%キトサン溶液0.02mlを10%コラーゲン溶液0.6mlに添加した[モル比0.1:1のキトサン:コラーゲン]。次いで、テフゼル(Tefzel)T字管を使用して、この組成物をMESバッファー0.4mlと混合した。次いで、MESバッファー0.35ml中にて約0〜4℃で気泡捕捉せず、その混合物をハイブリッド架橋剤[PEG:NH
2のモル当量比が0.25:1であり、EDC:NH
2のモル当量比が4.5:1であり、EDC:NHSのモル当量比が1:1である]と混合した。T字管を通して第1シリンジと第2シリンジの間で繰り返しポンピング(pumping)することによって、その組成物を完全に混合した。
【0093】
実質的に均一な各溶液のアリコートを直ちに、500ミクロンの移植片型に分配し、湿度100%の環境下において、まず室温で16時間、次いで37℃で16時間かけて硬化させた。リン酸緩衝液(PBS)に2時間浸した後、それぞれの最終移植片試料をその型から慎重に外した。最後に、架橋した移植片ヒドロゲルを20℃のPBS溶液(PBS中0.5%、クロロホルム1%を含有する)に浸漬し、反応性残基(reactive residue)を停止させ、反応副生成物を抽出除去した。
【0094】
IPN−II(EP10−11):
PEG−ジブチルアルデヒド(MW4132ダルトン、ネクター社から入手)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で構成されるハイブリッド架橋システムを使用して、コラーゲン/キトサンブレンドを架橋した。コラーゲン/キトサンブレンド、およびPEG−EDC/NHSハイブリッド架橋剤を酸性pH約5にて共に混合し、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)バッファーを使用してpHの急上昇(surge)を防いだ。十分に混合した後、混合組成物の一部を型に注ぎ、型内で硬化させて、IPN−IIを形成した。
[実施例IIIにおいて、IPN−II,PEG−ジアクリレート,EDC/NHSを添加]
【0095】
結果
ハイブリッド架橋を用いて製造されたIPNヒドロゲルは、縫合、組み込み後の摩耗および引き裂きを含み得るハンドリング、移植に耐えるのに十分な機械的または構造的性質を有する。
図2に示すように、そのIPNヒドロゲルは、EDC/NHSによって架橋された10%コラーゲン(対照Iおよび対照II)から作製された、以前に報告されている眼科素材よりも機械的に強い。例えば、IPN−IおよびIPN−IIをそれぞれ対照Iおよび対照IIと比較した場合に、最終引張り強さ、および靱性は、著しく向上していた。
【0096】
特に、架橋剤の増加により誘導される引張り強さの向上は、一般的に最終伸び率を低下させる(
図2における対照Iと比較したIPN−Iの値を参照)。その一因はおそらく、高分子ネットワークの移動度の付加的制限である。この挙動は、対照IIおよびIPN−Iと比較して、IPN−IIヒドロゲルには認められなかった。IPN−IIヒドロゲルでは、弾性を含むすべての機械的性質が向上した。これは、おそらくキトサンおよびPEGをコラーゲン足場に組み込んだときの相互浸入ネットワークの形成によるものである。EDC/NHSにより生成される架橋長さがゼロであるのに対し、PEGで生成されるか架橋長さは長い。これは、コラーゲン分子がより自由に移動することを可能にし、その結果、より弾性の高い足場が生じる。
表7に要約し、かつ
図3に図示するように、IPNヒドロゲルは、光学的に透明である。IPNヒドロゲルは、健康なヒト角膜およびウサギ角膜に等しい、またはそれより優れた、可視光に対する所望の光学的透明度、光の透過率および光散乱を提供する。これら2種類の素材は、非細胞毒性でもある。
図4Aおよび
図4Bに示すように、これらの素材は、角膜上皮細胞の再生を可能にする。
図5には、IPN−II上での神経成長が実証されている。この素材は、神経に親和的であり(nerve-friendly)、ヒドロゲル上で、かつおそらくヒドロゲル内部で神経が成長することを可能にすると思われる。
【0097】
【表7】
【0098】
EP10−11では、アルブミンおよびグルコースに対するヒドロゲルの透過性はそれぞれ、1.67×10
−7および2.8×10
−6であることが判明した。
【0099】
生体適合性/安定性を実証するためにもEP10−11ヒドロゲルを研究した。ラットの皮下に移植片を30日間挿入し、生体適合性および安定性を測定した。免疫細胞のいくらかの浸潤が3つの試料のうちの1つで観察されたが、試料は30日後でもまだ損なわれておらず、安定性が示された。
【0100】
3種の細菌種(黄色ブドウ球菌、肺炎連鎖菌および緑膿菌)の成長を評価する実験を行った。製造された角膜基質は、天然角膜の光学的透明度と共に、ヒト角膜と同じ曲率および寸法に成形された、タンパク質コラーゲンと合成N−イソプロピルアクリルアミドをベースとするポリマーとの複合素材であった。各合成角膜をin vitroで死後ヒト角膜の縁に縫合し、その角膜の引張り強さおよび縫合性を評価した。異なる相対パーセンテージの水、コラーゲンおよびポリマーを使用して、10通りの異なる角膜作成物を作製した。各構造物を5つ、3セット複製し、記載の細菌を各セットにそれぞれ100μl(0.1mL)を注入した。注入後、角膜を室温で24〜48時間インキュベートし、細菌の成長を評価した。
【0101】
結果
アイバンクから入手したヒト角膜と比較して、EP10−11ベースの角膜作成物では、細菌数が少ないことが確認された。
【0102】
図7は、表層角膜移植(分層移植)によりユカタンミニブタの角膜に移植されたEP10−11の写真である。厚さ500μm、直径5mmの移植片をブタの角膜内に挿入した(ブタ角膜の平均厚は、約700〜1000μmである)。
【0103】
実施例IV−コラーゲン/PAA IPNヒドロゲル
[バイオポリマー及び合成ポリマーの双方がネットワークを形成しているIPN]
材料
ニッポンコラーゲン(ブタ皮膚)
0.625Mモルホリノエタンスルホン酸[Aalizarin Red SpH指示薬(6.5mg/100ml水)を含有するMES]
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)、N−ヒドロキシ−スクシンイミド(NHS)
アクリル酸(AA)をアルドリッチ社から購入した。
PEG−ジアクリレート(Mw575)、過硫酸アンモニウム(APS)およびN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)は、アルドリッチ社によって提供された。
【0104】
コラーゲン/PAA IPNヒドロゲルの調製
第1に、氷水浴中の、プラスチック製T字管で連結された2つのシリンジにおいて、10.0重量%ニッポンコラーゲン溶液0.3mlおよびMES(0.625M)0.1mlを混合した。第2に、AA30μl(コラーゲンとAAの比1/1(w/w))を上記混合物中に100μlマイクロシリンジで注入した。第3に、PEG−ジアクリレート5.0μlを50μlマイクロシリンジで注入し、PEG−ジアクリレートとAAとの重量比を1:5にした。別段の指定がない限り、PEG−ジアクリレートとAAの比は、1:5で一定である。次いで、その溶液を完全に混合した。第4に、2%APSおよびTEMED溶液(MES中)25μlを100μlマイクロシリンジで注入し、続いて、EDC/NHS溶液(MES中)57μlを注入し、EDC:NHS:コラーゲンNH
2のモル比を6:6:1にした。本実施例では、EDCとコラーゲンの比も一定に維持した。均一な混合物をガラス製の型に流し込み、室温にて湿度100%で16時間インキュベートした。次いで、後硬化するために、得られた型を37℃で5時間インキュベータに移した。得られたヒドロゲルは、頑丈かつ透明であった。
[連続的なIPN:コラーゲン→合成モノマーの重合→合成ポリマーの架橋→コラーゲンの架橋]
【0105】
実施例V
[素材の潜在的な用途のみ記載]
−角膜に対する、眼への、薬物、生理活性因子送達システムにおける素材の適用
生理活性ペプチドまたは成長因子が組み込まれた生合成素材が開発されている。これらの素材は、主に角膜代替物として有用であり、特に、生理活性YIGSR(ラミニン)ペプチドを組み込んだ後に、角膜細胞の再生および切断された角膜神経の再成長を促進することが示されている(Li et al. 2003, 2005)。素材は、成長因子の送達に適応させることもできる(Klenker et al. 2005)。
【0106】
本実施例の目的は、角膜に生理活性因子を治療的に送達する2つの異なる様式:1)移植可能な送達システム(例えば、ベニア、アンレー、インレー、層状移植片);2)治療用コンタクトレンズ;による様式のうちの1つに使用することができる素材を開発することである。
【0107】
コラーゲン角膜シールドが、1984に角膜包帯レンズとして開発され、現在では、白内障および屈折矯正手術(refractive surgery)、外傷性上皮欠損後の眼球表面保護のために市販されている。それらは、ブタまたはウシのコラーゲンから製造され、12、24、および72時間の溶解時間を有する、3種の異なるコラーゲンシールドが現在入手可能である。理論的、実験的および臨床的証拠から、薬物送達デバイスとしての、かつ上皮および基質の治癒の促進における、コラーゲン角膜シールドの役割が裏付けられる。
【0108】
しかしながら、これらのデバイスの欠点としては、その比較的短い寿命が挙げられる。これらのデバイスの多くの最長使用時間は72時間である。さらに、これらは本質的に不透明であり、視覚的に閉鎖的(occlusive)である。このため、かかるデバイスは、広く普及していないと思われる。
【0109】
光学的適用に加えて、コンタクトレンズデバイスは、痛みの緩和、機械的な保護および構造的な支え、薬物送達などのために、現代の眼科診療において広範囲の治療用途を有する。
【0110】
これらの完全に合成されたヒドロゲルレンズは、天然生体素材で構成されていないことから、完全に生体適合性ではない。合成包帯コンタクトレンズに伴う合併症は、軽症から重症の範囲である。その例としては、上皮、基質、および内皮の損傷を引き起こし得る角膜生理機能の変化、レンズの沈着、アレルギー性結膜炎、巨大乳頭結膜炎、末梢神経浸潤、細菌性角膜炎、および新生血管形成が挙げられる。
【0111】
したがって、薬物を充填することもできる、高い生体適合性を有し連続装用に適した治療用コンタクトレンズが非常に望まれている。適切なレンズは、2つの主なグループの素材をベースとして製造することができる。
【0112】
・キトサン−合成ポリマーIPNヒドロゲルレンズ
甲殻類の外骨格の主要成分であるキトサンは近年、医療および薬学分野において高い関心を集めている。創傷治癒を促進し、静菌作用を有することも報告されている。約20年前、キトサンは、コンタクトレンズの製造に関して優れた素材として提案されたが、中性の水に可溶性ではなく、キトサンゲルの機械的強度が良くないことから、成果を挙げていなかった。
【0113】
本明細書で記述される、キトサンおよびキトサン誘導体は、移植の角膜代替物として使用するための素材の開発に使用された。これらの素材は、ヒドロゲルにおいて優れた機械的強度および弾性を有することが判明した。その素材は、in vitroにて、かつ動物の皮下においても試験され、LKP手術(LKP surgeries)におけるげっ歯類およびブタモデルで現在、試験されている。
【0114】
治療用コンタクトレンズデバイスの開発
本発明の一態様に従って、治療用途の高生体適合性包帯コンタクトレンズは、以下の特徴を有する。
1.創傷治癒の促進
2.静菌性
3.神経栄養性角膜炎の治療のための、NGF−βなどの様々な薬物を充填可能
4.2〜3週間またはそれ以上の連続装用
5.視覚を与える、透過性(光透過率>90%、散乱率<3%)
【0115】
これは、合成ヒドロゲルと生合成ポリマーとを結合し相互侵入ネットワークを形成し、合成ヒドロゲルの機械的性質とキトサンの生物学的性質とを組み合わせることで達成された。これらの素材の特性は、コラーゲンを添加することによって高めることができる。コラーゲンとは、動物源から抽出される糖タンパク質(例えば、ブタアテロコラーゲン、または、例えばフィブロジェン社から市販のI型およびIII型コラーゲンのような組換えヒトコラーゲン)を意味する。さらに、以前に開発された方法を用いて、様々な生理活性因子(例えば、ペプチド、成長因子または薬物)を組み込むことができる。
【0116】
製造方法
水溶性キトサンと部分カルボキシメチル化キトサンを使用した。合成モノマーまたは架橋剤、例えば、アクリル酸、PEG−ジアクリレート、メタクリル酸およびビニルピロリドン等が使用される。
【0117】
・コラーゲンベースの生合成レンズ
含水率88.9%、屈折率1.35、光透過率約88%(厚さ500μmの試料に関して;
図6参照)を有する、ある種類のコラーゲン合成コポリマーIPNが現在、開発されている。
【0118】
これらのヒドロゲルで達成された機械的性質は以下の通りである。
引張り強さ(KPa) 破断点伸び(%) 弾性率(MPa)
566.0±243.9 49.08±6.73 2093±1157
【0119】
例えば、屈折率、光透過率を高めることによって、または機械的強度を向上させることによって、これらのヒドロゲルの特徴をさらに改善することが可能である。機械的強度を高めるためには、コラーゲンおよび合成モノマーなどの成分を高濃度で使用しIPNを形成したり、または1種または複数種のモノマーを含有する溶液にヒドロゲルを浸漬して、1種または複数種の更なる高分子ネットワークを形成することができる。それにより、ヒドロゲルの強度が高められるはずである。この素材は、in vitroで、および皮下移植片としてin vivoで、生体適合性であることが判明し;角膜代替物として、かつ生理活性因子を組み込むためのベース素材として、移植することができる。
【0120】
本明細書に記載の素材を使用して、生体適合性であり、かつ創傷治癒を促進し、かつ/または静菌性である、コンタクトレンズを製造することが可能である。かかるコンタクトレンズは、様々な充填薬物、生理活性ペプチドおよび/または神経栄養性角膜炎の治療のためのNGFなどの成長因子を含有することができる。さらに、このキトサン合成レンズにコラーゲンを組み込み、生体適合性および充填される薬物の容量を高めることができる。製造されるコンタクトレンズは任意に、2〜3週間またはそれ以上の連続装用に適している。
【0121】
実施例VI
[開示ハイドロゲルの用途のみ記載]
−眼の前区画(anterior compartment)および後区画(posterior compartment)のための接着剤
角膜断裂などの角膜穿通性創傷を修復するために、縫合は、有効な方法であった。しかしながら、縫合には、手術時間が長くなったり、外科技術が必要とされるなど、いくつかの不利点がある。縫合は、著しい局所的な歪みおよび高レベルの乱視も生じさせる恐れがある。緩い縫合は、細菌の温床となり、炎症および組織の壊死を起こす恐れがある。さらに、縫合によって、著しい不快感が起こり得る。さらに、非生分解性縫合糸は、除去する必要があり、そのため患者の経過観察が長くなる。
【0122】
様々な種類の組織接着剤において同様な用途が見出されている接着剤は、合成接着剤(例えば、シアノアクリレート誘導体)と生物学的接着剤(例えば、フィブリンベースの接着剤)とに分けることができる。シアノアクリレート誘導体は、水または血液などの基礎物質と接触して迅速に重合し、強い結合を形成する、極めて高い引張り強さを有する化合物である。シアノアクリレート誘導体は人工合成物であり非生分解性であるため、通常、外面上で使用され、新生血管形成および組織壊死などの炎症性異物反応を誘発し得る。眼科学において、シアノアクリレート誘導体は、様々な他の眼科手術において試されているが、主に角膜穿孔および重篤な角膜菲薄化(severe thinning)の管理に使用されている。
【0123】
それに対して、フィブリンベースの接着剤は、引張り強さが低く、重合が遅いが、生体由来かつ生分解性であり、表面被覆層下(例えば、結膜や羊膜)で使用することができ、誘発される炎症は極めてわずかである。これらの接着剤は、角膜菲薄化および角膜穿孔、眼球表面の障害および緑内障を治療するために眼科で使用されている。ごく最近には、フィブリンベースの接着剤が、無縫合の表層角膜移植を実施するため、かつ露出強膜に羊膜を取り付けるために、使用されている。残念なことに、フィブリン接着剤にはヒトトロンビンが使用されているため、この血液製剤は依然として、汚染されたドナープールからの感染およびウイルス伝達のリスクを有する。さらに、フィブリンベースの糊の製造および適用は、シアノアクリレート糊よりも極めて複雑である。
【0124】
天然生体高分子またはその誘導体を使用して、生体適合性、生分解性、高い引張り強さの、非毒性および安全な組織接着剤を製造することができる。二成分系接着剤(two-component glue)として、そのゲル化速度をペンダント基の修飾によって調整することができる。薬物、生理活性ペプチドおよび成長因子も、徐放用のゲル化システムに組み込むことができる。さらに、ゲル化速度ならびに粘度も制御することができるため、このシステムは、幹細胞および前駆細胞の送達に使用することもできる。
【0125】
この組織接着剤は、2つの成分:1)酸化コンドロイチン硫酸塩、2)水溶性キトサンを有する。これらの2つの成分を混合すると、これらの2つの成分は、コンドロイチン硫酸塩のアルデヒド基とキトサンのアミン基との反応によって、糊またはゲルを形成する。コンドロイチン硫酸塩の隣接ヒドロキシル基の酸化度を調整することによって、ゲル化速度を調節することができる。
【0126】
薬物、成長因子(例えば、NGF−β)および生理活性ペプチド(例えば、ラミニン、フィブロネクチン、syngistic物質PおよびIGF様ペプチドの組み合わせ)もまた、徐放用ゲル化システムに組み込むことができる。
【0127】
コンドロイチン硫酸塩ベースの素材を使用して、
図8に示されるように、内皮前駆細胞(EPC)を筋試験システム中に送達し、血管形成により血管内に標識EPC(以下の図において標識グリーン)の取り込みを誘導できる。
図8は、硫酸コンドロイチンベースの素材が内皮前駆細胞(EPC)を筋試験システム中に送達し、血管形成により血管内に標識EPC(以下の図において標識グリーン)の取り込みを誘導している様子を示す。
図8は、(A)ラットの虚血後肢からの骨格筋におけるEPC(グリーン標識された)の注入部位(矢印)、(B)注入されたマトリックスから組織中へ移動するEPC(矢印)の拡大画像、(C)血管構造内で観察されたEPC(矢印)を示す。
【0128】
参考文献
Klenkler B.J., Griffith M., Becerril C., West-Mays J., Sheardown H. (2005) EGF-grafted PDMS surfaces in artificial cornea applications. Biomaterials 26: 7286-7296.
Li, F., Carlsson, D.J., Lohmann, C.P., Suuronen, E.J., Vascotto, S., Kobuch, K., Sheardown, H., Munger, M. and Griffith, M. (2003) Cellular and nerve regeneration within a biosynthetic extracellular matrix: corneal implantation. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 15346-15351.
Li, F., Griffith, M., Li, Z., Tanodekaew, S., Sheardown, H., Hakim, M. and Carlsson, D.J. (2005) Recruitment of multiple cell lines by collagen-synthetic copolymer matrices in corneal regeneration. Biomaterials 26:3039-104.
【0129】
実施例VII
[RHC−III/MPCの双方がネットワークを形成しているIPN]
−コラーゲン12.1%(w/w)を有する組換えヒトIII型コラーゲン−MPCIPN
第1に、氷水浴中の、プラスチック製T字管で連結された2つのシリンジにおいて、12.1重量%III型コラーゲン溶液0.3mlおよびMES(0.625M)0.1mlを混合した。第2に、MPC(コラーゲンとMPCの比1/1(w/w))50mgをMES0.138mlに溶解し、その0.1mlを100μlマイクロシリンジで上記混合物中に注入した。第3に、PEG−ジアクリレート(Mn=575)16μlを100μlマイクロシリンジで注入し、PEG−ジアクリレートとMPCとの重量比を1:2にした。次いで、その溶液を完全に混合した。第4に、2%APSおよびTEMED溶液(MES中)25μlを100μlマイクロシリンジで注入し、続いて、EDC/NHS溶液(MES中)57μlを注入し、EDC:NHS:コラーゲンNH
2のモル比を3:3:1にした。均一な混合物をガラス製またはプラスチック製の型(厚さ500μm)に流し込み、室温に湿度100%で16時間放置した。次いで、後硬化するために、その型を37℃で5時間インキュベータに移した。
[連続的なIPN:コラーゲン→合成モノマーの重合→合成ポリマーの架橋→コラーゲンの架橋]
【0130】
得られたヒドロゲルは、頑丈かつ光学的に透明であるのに対して、同じ条件で製造されたニッポンコラーゲン/MPCコラーゲンは不透明であった。rhcIII型の利点は、広範囲のpHおよび架橋剤含有率で透明性を維持する性能である。
【0131】
実施例VIII
[コラーゲン/キトサン、バイオポリマー/バイオポリマー]
−コラーゲンまたはコラーゲンヒドロゲル
実施例IIIと同様に、このセクションに記載の眼科素材は、従来から知られている素材と比較して、向上した靱性および弾性を有する、本質的に頑丈な移植可能な素材である。この素材はコラーゲンをベースとするが、ヒト角膜中で発見された天然細胞外マトリックス分子(ECM)に匹敵し、それと同時に引張り強さを著しく向上させる、キトサンなどのバイオミメティック分子(biomimetic molecule)も組み込まれる。さらに、架橋システムが開発され、コラーゲンおよびコラーゲン/キトサン足場を安定化するために使用され、素材の弾性および靱性がさらに向上した。これらの向上した素材の機械的性質、光学的性質、および生物学的性質に関して試験した。その結果から、足場は、強靭、弾性であり、かつ光学的透明性においてアイバンクのヒト角膜よりも優れており、in vitroでの角膜細胞および神経の再生を可能にすることが示唆されている。
【0132】
材料および一般法
ベース材料は、I型アテロコラーゲン10%(w/v)とキトサン3%(w/v)の混合物を含む。日本ハム株式会社(日本)から入手した凍結乾燥されたブタコラーゲン粉末を冷水(滅菌dd H
2O)に溶解し、4℃で攪拌して、濃度10%(w/v)とした。0.2N塩酸(HCl)にキトサン粉末(フルカ社から入手、MW40000)を溶解し、4℃で攪拌することによって、3%(w/v)キトサン溶液も調製した。次いで、架橋前に均一なブレンドを調製するために、2つの溶液を所定の比でシリンジシステムにおいて混合した。PEG−ジブチルアルデヒド(MW3400ダルトン、ネクター社)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などの様々な架橋剤を使用して、架橋剤およびバイオミメティック成分(biomimetic component)の種類および濃度に基づいた特有の性質を有する相互侵入ネットワークを形成した(表8参照)。
[PEG−ジブチルアルデヒド及びEDC/NHSを添加]
【0133】
実施例IX
[コラーゲン/キトサン、バイオポリマー/バイオポリマー]
−EDC/NHSおよびPEG−ジブチルアルデヒドによって架橋されるコラーゲンヒドロゲル(HPN−3)の製造
ルアーガラス製シリンジにおいて、テフゼル(Tefzel)T字管を使用して、10%コラーゲン溶液0.6mLをMESバッファー0.4mlと混合した。PEG−ジブチルアルデヒドおよびEDC/NHS[PEG:NH
2のモル当量比が0.36:1であり、EDC:NH
2のモル当量比が5.4:1であり、EDC:NHSのモル当量比が1:1である]で構成される架橋システムを使用して、MESバッファー0.35ml中にて約0〜4℃で気泡捕捉せず、コラーゲンブレンドを架橋した。MESバッファーを使用して、架橋反応中、pH5を維持した。T字管を通して第1シリンジと第2シリンジの間で繰り返しポンピング(pumping)することによって、その組成物を完全に混合した。
[PEG−ジブチルアルデヒド及びEDC/NHSを添加]
【0134】
実質的に均一な各溶液のアリコートを直ちに、500ミクロンの移植片型に分配し、湿度100%の環境下において、まず室温で16時間、次いで37℃で16時間かけて硬化させ、HPN−3を作製した。リン酸緩衝液(PBS)に2時間浸した後、それぞれの最終移植片試料をその型から慎重に外した。最後に、架橋した移植片ヒドロゲルを20℃のPBS溶液(PBS中0.5%、クロロホルム1%を含有する)に浸漬し、反応性残基(reactive residue)を停止させ、反応副生成物を抽出除去した。
【0135】
実施例X
[コラーゲン/キトサン;2種の架橋剤;バイオポリマー/バイオポリマー]
−EDC/NHSおよびPEG−ジブチルアルデヒドで架橋されるコラーゲン−キトサンヒドロゲルの製造(HPN−4)
ルアーガラス製シリンジにおいて、15%コラーゲン溶液0.6mLに3%キトサン0.036mLを添加した[キトサン:コラーゲンのモル比を0.01:1とした]。次いで、テフゼルT字管を使用して、この組成物をMESバッファー0.4mlと混合した。MESバッファー0.35ml中にて約0〜4℃で気泡捕捉せず、PEG−ジブチルアルデヒドおよびEDC/NHS[PEG:NH
2のモル当量比は0.3:1であり、EDC:NH
2のモル当量比は4.5:1であり、EDC:NHSのモル当量比は1:1である]で構成されるハイブリッド架橋システムを使用して、コラーゲン/キトサンブレンドを架橋した。MESバッファーを使用して、架橋反応中、pH5を維持した。T字管を通して第1シリンジと第2シリンジの間で繰り返しポンピング(pumping)することによって、その組成物を完全に混合した。
【0136】
実質的に均一な各溶液のアリコートを直ちに、500ミクロンの移植片型に分配し、湿度100%の環境下において、まず室温で16時間、次いで37℃で16時間かけて硬化させ、HPN−4を作製した。リン酸緩衝液(PBS)に2時間浸した後、それぞれの最終移植片試料をその型から慎重に外した。最後に、架橋した移植片ヒドロゲルを20℃のPBS溶液(PBS中0.5%、クロロホルム1%を含有する)に浸漬し、反応性残基(reactive residue)を停止させ、反応副生成物を抽出除去した。
【0137】
実施例XI
[15%コラーゲンのみ;2種の架橋剤]:
EDC/NHSおよびPEG−ジブチルアルデヒドによって架橋されるコラーゲンヒドロゲルの製造(HPN−5)
テフゼルT字管を使用して、ルアーガラス製シリンジ中の15%コラーゲン溶液0.6mLをMESバッファー0.4mlと混合した。MESバッファー0.35ml中にて約0〜4℃で気泡捕捉せず、PEG−ジブチルアルデヒドおよびEDC/NHS[PEG:NH
2のモル当量比が0.36:1であり、EDC:NH
2のモル当量比が5.4:1であり、EDC:NHSのモル当量比が1:1である]で構成されるハイブリッド架橋システムを使用して、コラーゲンブレンドを架橋した。MESバッファーを使用して、架橋反応中、pH5を維持した。T字管を通して第1シリンジと第2シリンジの間で繰り返しポンピング(pumping)することによって、その組成物を完全に混合した。
【0138】
実質的に均一な各溶液のアリコートを直ちに、500ミクロンの移植片型に分配し、湿度100%の環境下において、まず室温で16時間、次いで37℃で16時間かけて硬化させ、HPN−5を作製した。リン酸緩衝液(PBS)に2時間浸した後、それぞれの最終移植片試料をその型から慎重に外した。最後に、架橋した移植片ヒドロゲルを20℃のPBS溶液(PBS中0.5%、クロロホルム1%を含有する)に浸漬し、反応性残基(reactive residue)を停止させ、反応副生成物を抽出除去した。
【0139】
実施例XII
[20%コラーゲンのみ]:
PEG−ジブチルアルデヒドによって架橋されるコラーゲンヒドロゲルの製造(HPN−6)
テフゼルT字管を使用して、ルアーガラス製シリンジ中の20%コラーゲン溶液0.6mLをMESバッファー0.4mlと混合した。MESバッファー0.35ml中にて約0〜4℃で気泡捕捉せず、PEG−ジブチルアルデヒド[PEG:NH
2のモル当量比が1:1である]を使用して、コラーゲンブレンドを架橋した。MESバッファーを使用して、架橋反応中、pH5を維持した。T字管を通して第1シリンジと第2シリンジの間で繰り返しポンピング(pumping)することによって、その組成物を完全に混合した。
【0140】
実質的に均一な各溶液のアリコートを直ちに、500ミクロンの移植片型に分配し、湿度100%の環境下において、まず室温で16時間、次いで37℃で16時間かけて硬化させ、HPN−6を作製した。リン酸緩衝液(PBS)に2時間浸した後、それぞれの最終移植片試料をその型から慎重に外した。最後に、架橋した移植片ヒドロゲルを20℃のPBS溶液(PBS中0.5%、クロロホルム1%を含有する)に浸漬し、反応性残基(reactive residue)を停止させ、反応副生成物を抽出除去した。
【0141】
実施例XIII
[20%コラーゲンのみ;1種の架橋剤;実施例XIIの架橋剤:ポリマー比の半分;非IPN]:
PEG−ジブチルアルデヒドによって架橋されるコラーゲンヒドロゲルの製造(HPN−7)
一般に、テフゼルT字管を使用して、ルアーガラス製シリンジ中の20%コラーゲン溶液0.6mLをMESバッファー0.4mlと混合した。MESバッファー0.35ml中にて約0〜4℃で気泡捕捉せず、PEG−ジブチルアルデヒド[PEG:NH
2のモル当量比が2:1である]を使用して、コラーゲンブレンドを架橋した。MESバッファーを使用して、架橋反応中、pH5を維持した。T字管を通して第1シリンジと第2シリンジの間で繰り返しポンピング(pumping)することによって、その組成物を完全に混合した。
【0142】
実質的に均一な各溶液のアリコートを直ちに、500ミクロンの移植片型に分配し、湿度100%の環境下において、まず室温で16時間、次いで37℃で16時間かけて硬化させ、HPN−7を作製した。リン酸緩衝液(PBS)に2時間浸した後、それぞれの最終移植片試料をその型から慎重に外した。最後に、架橋した移植片ヒドロゲルを20℃のPBS溶液(PBS中0.5%、クロロホルム1%を含有する)に浸漬し、反応性残基(reactive residue)を停止させ、反応副生成物を抽出除去した。
【0143】
【表8】
【0144】
実施例XIV
[12.7%RHC−Iのみ;1種の架橋剤]:
組換えヒトI型コラーゲンおよびEDC/NHSから製造されるコラーゲンマトリックス
気泡を含有しないシリンジ混合システム中に、組換えヒトI型コラーゲン溶液(12.7%(w/w))のアリコートを添加した。第2のシリンジからセプタム(septum)を通して、計算量のEDCおよびNHS(どちらも10%(w/v)、EDC:コラーゲン−NH
2比=0.4:1;EDC:NHS比=1:1)を添加し、再び0℃で完全に混合した。最終溶液を直ちに、ガラスプレート上に分配し、平坦なフィルムを形成した。その平坦なフィルムを湿度100%で硬化させた(21℃で24時間、次いで37℃で24時間)。フィルムを新たなPBSで3回洗浄し、クロロホルム1%を含有するPBS中に保存し、無菌に維持した。他の比のEDC/コラーゲンNH
2を有するゲルを同じ方法で製造した。
【0145】
【表9】
【0146】
実施例XV
[12.7%RHC−IIIのみ;1種の架橋剤]:
組換えヒトIII型コラーゲンおよびEDC/NHSから製造されるコラーゲンマトリックス
気泡を含有しないシリンジ混合システム中に、組換えヒトIII型コラーゲン溶液(12.7%(w/w))のアリコートを添加した。第2のシリンジからセプタム(septum)を通して、計算量のEDCおよびNHS(どちらも10%(w/v)、EDC:コラーゲン−NH
2比=0.4:1;EDC:NHS比=1:1)を添加し、再び0℃で完全に混合した。最終溶液を直ちに、ガラスプレート上に分配し、平らなフィルムを形成した。その平らなフィルムを湿度100%で硬化させた(21℃で24時間、次いで37℃で24時間)。フィルムを新たなPBSで3回洗浄し、クロロホルム1%を含有するPBS中に保存し、無菌に維持した。他の比のEDC/コラーゲンNH
2を有するゲルを同じ方法で製造した。
【0147】
【表10】
【0148】
実施例XVI
[12.7%RHC−IIIおよび12.7%RHC−III;1種の架橋剤]:
組換えヒトI型およびIII型デュアルコラーゲンおよびEDC/NHSから製造される角膜マトリックス
気泡を含有しないシリンジ混合システム中に、組換えヒトI型コラーゲン溶液(12.7%(w/w))のアリコートを添加し、計量した。等量の組換えヒトコラーゲンIII型溶液(12.7%(w/w))のアリコートを同じシリンジ混合システム中に添加し、シリンジ混合システムにおいてコラーゲンI型およびIII型溶液の50/50(wt/wt)%溶液を得た。第2のシリンジからセプタム(septum)を通して、計算量のEDCおよびNHS(どちらも10%(w/v)、EDC:NH
2比=0.4:1;EDC:NHS比=1:1)を添加し、再び0℃で完全に混合した。最終溶液を直ちに、ガラスプレート上に分配し、平らなフィルムを形成した。その平らなフィルムを湿度100%で硬化させた(21℃で24時間、次いで37℃で24時間)。フィルムを新たなPBSで3回洗浄し、クロロホルム1%を含有するPBS中に保存し、無菌に維持した。他の比のEDC/コラーゲンNH
2を有するゲルを同じ方法で製造した。最終ゲルの含水率は、93.3%であった。
【0149】
【表11】
【0150】
【表12】
【0151】
【表13】
【0152】
実施例XVII
[Coll−DMA,バイオポリマー及び合成ポリマーの双方がネットワークを形成しているIPN]:
コラーゲン−合成相互侵入高分子ネットワーク
材料
ニッポンコラーゲン(ブタ皮膚);
0.625Mモルホリノエタンスルホン酸[Aalizarin Red SpH指示薬(6.5mg/100ml水)を含有するMES];
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(EDC)、N−ヒドロキシ−スクシンイミド(NHS)、NaOH溶液(2N)、PEG−ジアクリレート(Mw575)、過硫酸アンモニウム(APS)およびN,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)をシグマ・アルドリッチ社から購入した。
【0153】
N,N−ジメチルアクリルアミド(99%)をシグマ・アルドリッチ社から購入した。シグマ・アルドリッチ社から購入した抑制剤除去剤を使用して、抑制剤を除去した。
【0154】
コラーゲン−DMAIPNヒドロゲルの製造
第1に、氷水浴中の、プラスチック製T字管で連結された2つのシリンジにおいて、13.7重量%ニッポンコラーゲン溶液0.3mlおよびMES(0.625M)0.3mlを混合した。第2に、DMA(コラーゲンとDMAとの比3/1(w/w))14.2mlを50μlマイクロシリンジで上記混合物中に注入した。第3に、PEG−ジアクリレート(Mn=575)6.14μlを100μlマイクロシリンジで注入し、PEG−ジアクリレートとDMAとの重量比を1:2にした。別段の指定がない限り、PEG−ジアクリレートとDMAの比は1:2で一定である。次いで、その溶液を完全に混合した。第4に、DMAに対して1%APSおよび1%TEMED溶液(MES25μl中)を100μlマイクロシリンジで注入し、続いて、EDC/NHS溶液(MES中)57μlを注入し
[連続的なIPN]、EDC:NHS:コラーゲンNH
2のモル比を3:3:1にした。本実施例では、EDCとコラーゲンの比も一定に維持した。均一な混合物をガラス製の型に流し込み、室温にて湿度100%で16時間放置した。次いで、後硬化するために、その型を37℃で5時間インキュベータに移した。コラーゲンとDMAの比1:1、2:1および4:1を有するコラーゲン−DMAIPNヒドロゲルを製造した。
[連続的なIPN:コラーゲン→合成モノマーの重合→合成ポリマーの架橋→コラーゲンの架橋]
【0155】
ヒドロゲルの特性
図12、
図13および
図14は、DMA:コラーゲン=1:1、1:2、1:3および1:4(w/w)から得たゲルすべての引張り、ひずみおよびモジュラス試験の結果を示す。
【0156】
図15は、コラーゲン−DMAヒドロゲルの白色光透過率の結果を示す。1:1のゲルを除いて、いずれの比率のゲルも、白色光透過は90%を超え、ヒト角膜と同等またはヒト角膜よりも優れていた。
【0157】
コラーゲン−DMAヒドロゲルは、極めて高い生体適合性を有し、上皮の過成長を支持する(
図16参照)。上皮細胞は、3日間の培養でコンフルエント(confluent)になった。
【0158】
実施例XVIII
[開示ハイドロゲルの用途のみ]:
生理活性剤を含有する眼科デバイス
抗菌剤、抗ウイルス剤などの生理活性剤または神経栄養因子などの成長因子を組み込んだヒドロゲル素材は、例えば、角膜移植に有用な、または薬物送達または創傷治癒のための治療用レンズとして有用である、改良型デバイスを構成する。IPNヒドロゲル中に組み込まれる抗菌性ペプチドの例としては、限定されないが:
ペプチド番号1:
酸−CGSGSGGGZZQOZGOOZOOZGOOZGY−NH
2
ペプチド番号2:
酸−GZZQOZGOOZOOZGOOZGYGGSGSGC−NH
2
【0159】
これらのペプチドは、Giangasperoら(Giangaspero, A., Sandri, L., and Tossi, A. , Amphipathic alpha helical antimicrobial peptides. A systematic study of the effects of structural and physical properties on biological activity. Eur. J. Biochem. 268, 5589-5600, 2001)によって報告されている基本ペプチド配列を含む。その代わりとして、またはさらに、角膜マトリックス中にデフェンシンを組み込むことができる。
【0160】
角膜マトリックス中への生理活性剤の組み込み方法
以下の方法を使用することができる:
1.吸収および放出(absorption and release)
生理活性剤で飽和した溶液中にIPNヒドロゲル素材を添加し、生理活性剤を角膜マトリックス中に浸透させる。平衡に達したら、角膜マトリックスは、眼球包帯レンズまたは移植片として使用される。
2.マトリックス内/上への化学的グラフト化
この手順は、上記の手順1と同様であるが、IPNヒドロゲル素材中/上へのペプチドの化学結合を促進するために、1種(または複数種)の化学物質が使用される。生理活性ペプチド充填角膜マトリックスは、移植片および薬物送達用の包帯レンズの両方に優れている。
3.ナノスフェアまたはミクロスフェア(nano- or microspheres)中への生理活性剤の組み込み、およびマトリックス中へのナノスフェアまたはミクロスフェアの組み込み
この手順によって、生理活性剤の徐放性を有するIPNヒドロゲルが生成される。得られたマトリックスは、移植片および薬物送達用の包帯レンズの両方に優れている。
図17は、生理活性剤を封入するために作られたアルジネートミクロスフェアの走査型電子顕微鏡(SEM)画像である。生理活性剤を充填した後、これらのミクロスフェアは、薬物の徐放のためにマトリックス中に組み込まれる。
【0161】
アルジネートミクロスフェアを製造する手順
アルジネートスフェアは、文献(C.C. Ribeiro, C.C. Barrias, M.A. Barbosa Calcium phosphate-alginate microspheres as enzyme delivery matrices, Biomaterials 25 4363-4373, 2004)に従って製造される。
【0162】
実施例XIX
[コラーゲン/MPCハイドロゲルの分解のみ記載]:
コラーゲン−MPC IPNヒドロゲルのin vitroでの生分解
手順:
水和ヒドロゲル50〜80mgを0.1M PBS(pH7.4)5mlを含有するバイアルに入れ、続いてコラゲナーゼ(ヒストリチクス菌、EC3.4.24.3、シグマケミカル社)(1mg/mL)60μlを添加した。次いで、バイアルを37℃で異なる時間間隔にてオーブン内でインキュベートし、表面の水を拭き取って計量するためにゲルを取り出した。初期膨潤重量に基づいて、ヒドロゲルの残存量の時間経過を追跡した。各ヒドロゲル試料において、3つの試験片を試験した。ヒドロゲルの残存量%を以下の等式で計算した:
残存量%=W
t/W
o
(上記式中、W
oは、ヒドロゲルの初期重量であり、W
tは、各時点でのヒドロゲルの重量である。)
【0163】
結果および考察
コラーゲンおよびIPNヒドロゲルのin vitroでの生分解の時間経過
図18に示すように、EDC/NHSで架橋されたブタコラーゲンヒドロゲルは非常に急速に分解した。3時間後には、完全に分解した。MPCおよびPEGの組み込みによって、分解速度が遅くなり、IPN−4−1およびIPN−3−1の完全分解はそれぞれ10時間後および15時間後であった。ヒドロゲル中のMPC含有率をさらに増加すると(つまり、IPN−2−1およびIPN−1−1では)、分解は著しく抑えられた。48時間以内に、IPN−2−1の残存量は約79%のままであったのに対して、IPN−1−1は、質量が6%減少しただけだった。48時間後、その残存量をさらに7日間追跡した。IPN−2−1およびIPN−1−1ヒドロゲルのどちらも、その残存量が一定のままであることが判明した。したがって、相互浸入ネットワークは、コラーゲンヒドロゲルの生物学的安定性の向上に有効である。
【0164】
実施例XX
[RHC−III/MPCバイオポリマー/合成ポリマーのIPNの製造及び分解]:
III型コラーゲン−MPC IPNヒドロゲルの特性およびin vitroでの生分解
III型組換えヒトコラーゲン(rhc)−MPC IPNヒドロゲルの製造
第1に、氷水浴中の、プラスチック製T字管で連結された2つのシリンジにおいて、13.7重量%rhcIII溶液0.3mlおよびMES(0.625M)0.1mlを混合した。第2に、MPC溶液(MES中、MPC/コラーゲン=2/1(w/w))250μlを500mlマイクロシリンジで上記混合物中に注入した。第3に、PEG−ジアクリレート9.3mlを100mlマイクロシリンジで注入し、PEG−ジアクリレートとMPCとの重量比を1:2にした。次いで、その溶液を完全に混合した。第4に、2%APSおよびTEMED溶液(MES中)25mlを100mlマイクロシリンジで注入し、続いて、EDC/NHS溶液(MES中)19mlを注入し
[連続的なIPN]、EDC:NHS:コラーゲンNH
2のモル比を1:1:1にした。均一な混合物をガラス製の型に流し込み、室温、湿度100%でN
2下にて24時間放置した。次いで、後硬化するために、型を37℃で24時間インキュベータに移した。生成物は、Coll−III−MPCIPN2−1−1とコード化した。
[連続的なIPN:コラーゲン→合成モノマーの重合→合成ポリマーの架橋→コラーゲンの架橋]
【0165】
EDC/NHS/コラーゲンNH
2=3/3/1であることを除いて同じ条件で、他のrhcIII/MPC IPNを製造した。コードColl−III−MPC IPN4−1−3、Coll−III−MPC IPN3−1−3、Coll−III−MPC IPN2−1−3、Coll−III−MPC IPN1−1−3はそれぞれ、rhcIII/MPC=4/1、3/1、2/1および1/1(w/w)であるIPNを意味する。
【0166】
機械的性質および光学的性質
表14および15は、III型コラーゲン−MPC IPNヒドロゲルの機械的性質および光学的性質を示す。
【0167】
【表14】
【0168】
【表15】
【0169】
in vitroでの生分解:
III型コラーゲン−MPC IPNヒドロゲルのin vitroでの生分解手順は、ブタコラーゲン−MPC IPNヒドロゲルと同じである。in vitroでの生分解試験は、Coll−III−MPC IPN2−1−1のみ行った。ゲルは、少なくとも20日間、コラゲナーゼ溶液(12μg/mL)中で安定であった。
【0170】
実施例XXI
[以前のコラーゲン/キトサンハイドロゲルの製造方法であり、人工角膜後面の修飾を行う]:
アルジネートグラフト化巨大分子
この実施例において、本発明者らは、コラーゲンベースの人工角膜マトリックスの後面にアルジネート巨大分子を共有結合でグラフトし、内皮細胞付着および増殖を防ぐ、二段階プラズマ補助表面改質技術(two-stage plasma-assisted surface modification technique)を開発した。
【0171】
凍結乾燥されたブタI型コラーゲン粉末を日本ハム株式会社(日本)から入手し、冷水(滅菌
dd H
2O)に容易に溶解し、4℃で攪拌して、濃度10%(w/v)を得た。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)をシグマ・アルドリッチ社から購入した。0.2N塩酸(HCl)にキトサン粉末(フルカ社から入手、MW40000ダルトン)を溶解し、4℃で攪拌することによって3%キトサン溶液を調製した。
【0172】
表16に示すように、均一なブレンドを調製するために、10%コラーゲン溶液、3%(w/w)キトサン溶液、およびEDC/NHS架橋剤を所定の比でシリンジシステム(syringe system)において混合した。
【0173】
【表16】
【0174】
内皮細胞成長試験から得られた結果から、アルジネート表面グラフト化は、角膜ヒドロゲルの後面への内皮細胞移動および付着を阻止することが示された。
図20は、基質素材、プラズマ電力(plasma power)、およびアルジネート溶液濃度の関数として、播種後5日目の角膜素材の後面に付着した内皮細胞の数を示す。内皮細胞成長の一般的な抑制は、対照表面と比較した場合に、すべてのアルジネートグラフト化表面で認められた。対照の非修飾表面は、すべての図および表においてRF電力およびアルジネート濃度ゼロによって示される。
【0175】
図20に図示されるように、各群の変動を示す区間プロットは、信頼区間をプロットする。プラズマ電力100W、アルジネート濃度5%で処理された表面が、内皮細胞成長を99%有効に抑制することを示し、一方、プラズマ電力40W、アルジネート濃度5%で処理された表面が、内皮細胞成長を約89%抑制することを示す。
【0176】
本明細書に記載のすべての出版物、特許および特許出願は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものであり、あたかも個々の出版物、特許または特許出願が具体的かつ個々に、参照により組み込まれることを意味されるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0177】
本発明はこのように述べられているが、多くの点でそれを変更することができることは明らかであるだろう。このような変更は、本発明の精神および範囲からの逸脱とみなされず、当業者には明らかであろう、このようなすべての修正は、以下の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。